説明

半田材検査装置および半田材検査方法

【課題】簡便に半田材の劣化度の測定精度を向上させることができる半田材検査装置および半田材検査方法を提供する。
【解決手段】基材の上に塗布され平坦化された半田材の表面に照射光を照射する投光部と、投光部から照射された光の拡散反射光を受光する受光部と、投光部と受光部とを収容し、照射光および拡散反射光が通過可能な窓部が設けられた筐体と、平坦化された半田材の表面から所定高さに筐体を支持する支持部と、受光部の出力信号を処理する処理部とを備え、処理部は、筐体と半田材の表面の水平位置が相対的に変化したことに応じて、受光部に半田材の表面の異なる複数の領域から得られる拡散反射光を受光させて複数の受光データを収集し、複数の受光データに基づいて半田材の劣化度を検査する半田材検査装置と半田検査方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田材検査装置および半田材検査方法に関し、特に、簡便に半田材の劣化度の測定精度を向上させることができる半田材検査装置および半田材検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板への電子部品の実装は、たとえば、プリント基板上に半田材を印刷する印刷工程、印刷された半田材上に電子部品を搭載するマウント工程、およびプリント基板に電子部品を半田付けするリフロー工程などの工程を経て行なわれている。
【0003】
ここで、プリント基板上への半田材の印刷は、たとえば、以下のようにして行なわれる。まず、プリント基板の配線パターンに対応した開口部が形成されている印刷用マスクをプリント基板上に設置した後に、印刷用マスクの表面上に半田材を供給する。次に、印刷用マスクの表面にスキージを当接して摺動させ、半田材を印刷用マスクの表面でスキージにより押圧して回転移動させることにより、スキージの押圧力で半田材を印刷用マスクの開口部からプリント基板上に押し出す。これにより、プリント基板の配線パターンに対応した形状の半田材がプリント基板上に印刷されることになる。
【0004】
一般的に、半田材は、印刷用マスクの表面上に同一ショットのクリーム状半田材が載せられた状態で、大量のプリント基板上に連続して印刷される。そのため、印刷用マスクの表面上に載せられた半田材は、半田材のプリント基板上への印刷が繰り返されるたびにスキージによって繰り返して回転移動させられることになる。
【0005】
その結果、半田材は、徐々に劣化していくことになるが、この劣化した半田材は、プリント基板において不良をもたらす原因になるとともに、上記の印刷工程における印刷品質の劣化をもたらす原因にもなる。したがって、印刷用マスクの表面上に載せられた半田材の劣化度を分析し、半田材の劣化度が高くなった場合には、印刷用マスクの表面上の半田材を交換する作業が非常に重要となる。
【0006】
従来、たとえば粘度計などにより半田材の粘度を測定することによって、半田材の劣化度を評価していた。しかしながら、この半田材の粘度の測定は時間と手間がかかるという問題があった。
【0007】
また、半田材の粘度の測定に時間と手間がかかるため、所定時間の経過後に半田材を廃棄したり、半田材を目視して半田材の粘度が増加したと判断した場合に半田材を廃棄することもあった。しかしながら、このように半田材を廃棄した場合には、半田材が劣化していないにも関わらず半田材を廃棄してしまうという問題もあった。
【0008】
また、特許文献1には、プリント基板の製造ライン外、いわゆるオフラインで、半田付け用フラックスの酸値を計測する方法が開示されている。しかしながら、この方法においても、試薬の調整などの工程が必要となるため、余計な手間や時間がかかるという問題が生じる。
【0009】
また、特許文献2には、半田材の劣化の計測のための余計な手間や時間を削減すべく、プリント基板の製造ライン内、いわゆるインラインで、スキージ表面を流動する半田材に対し、レーザセンサからレーザを照射して半田材の流動速度を測定することにより、半田材の粘度を測定する方法が開示されている。しかしながら、この特許文献2に記載の方法においては、スキージの駆動状態によって計測される半田材の流動速度の測定ばらつきが大きくなって、半田材の粘度の測定精度が低くなるため、その結果として半田材の粘度の劣化度の測定精度が低くなるという問題があった。
【0010】
さらに、特許文献3には、インラインにおける半田材の劣化度の測定精度を高めるために、印刷用マスクに設けられた検査孔に充填された半田材に光を照射してその反射光を受光する方法が開示されている。しかしながら、この特許文献3に記載の方法においては、1枚のプリント基板上への半田材の印刷で、様々な箇所の半田材の劣化度の測定が困難であるため、半田材の劣化度の測定精度が未だ高いものとは言えなかった。
【特許文献1】特公平8−20434号公報
【特許文献2】特開平5−99831号公報
【特許文献3】特開2007−139727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、簡便に半田材の劣化度の測定精度を向上させることができる半田材検査装置および半田材検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、フラックスと粒状半田が混合された半田材の劣化を検査する半田材検査装置であって、基材の上に塗布され平坦化された半田材の表面に照射光を照射する投光部と、投光部から照射された光の拡散反射光を受光する受光部と、投光部と受光部とを収容し、照射光および拡散反射光が通過可能な窓部が設けられた筐体と、平坦化された半田材の表面から所定高さに筐体を支持する支持部と、受光部の出力信号を処理する処理部とを備え、処理部は、筐体と半田材の表面の水平位置が相対的に変化したことに応じて、受光部に半田材の表面の異なる複数の領域から得られる拡散反射光を受光させて複数の受光データを収集し、複数の受光データに基づいて半田材の劣化度を検査する半田材検査装置である。
【0013】
ここで、本発明の半田材検査装置において、基材は、プリント基板に半田材を印刷するための印刷用マスクであり、複数の領域は、印刷用マスクのプリント基板が当接する印刷領域の周囲の検査領域内にあることが好ましい。
【0014】
また、本発明の半田材検査装置において、支持部は、筐体をスキージと連動するように支持することが好ましい。
【0015】
また、本発明の半田材検査装置において、支持部は、スキージが印刷用マスクを摺動する時に、進行方向に向かってスキージの後方かつ印刷領域の側方において、筐体を所定高さに支持し、スキージは印刷用マスクを摺動して印刷領域内のプリント基板上に半田材の印刷を行なうとともに、印刷領域の側方の検査領域上の半田材を平坦化することが好ましい。
【0016】
また、本発明の半田材検査装置において、受光部は、拡散反射光のうちの特定波数の検査対象光強度を検出し、特定波数は、半田材に含まれる塩が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数であることが好ましい。ここで、塩は、カルボン酸塩であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の半田材検査装置において、受光部は、拡散反射光のうちの特定波数の検査対象光強度を検出し、特定波数は、半田材に含まれる酸が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数であることが好ましい。ここで、酸は、カルボン酸であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の半田材検査装置において、受光部は、拡散反射光のうちの特定波数の検査対象光強度を検出し、特定波数は、半田材に含まれる金属酸化物が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数であることが好ましい。ここで、金属酸化物は、酸化錫であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の半田材検査装置は、半田材が劣化したことを報知する報知部をさらに備え、処理部は、印刷回数毎の半田材の劣化度を示す特性値を監視し、特性値が予め設定された値より大きくなったことに応じて報知部に報知させることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、フラックスと粒状半田が混合された半田材の劣化を検査する半田材検査方法であって、基材の上に塗布された半田材を平坦化する工程と、平坦化された半田材の表面の異なる複数の領域に照射光を照射する工程と、複数の領域への照射光の照射により生じた拡散反射光をそれぞれ受光する工程と、受光した拡散反射光に基づいて複数の領域のそれぞれについての受光データを作成する工程と、受光データを収集する工程と、収集した複数の受光データに基づいて半田材の劣化度を検査する工程とを含む半田材検査方法である。
【0021】
ここで、本発明の半田材検査方法において、基材は、プリント基板に半田材を印刷するための印刷用マスクであり、複数の領域は、印刷用マスクのプリント基板が当接する印刷領域の周囲の検査領域内にあることが好ましい。
【0022】
また、本発明の半田材検査方法において、スキージが印刷用マスクを摺動することによって印刷領域内のプリント基板上に半田材の印刷を行なうとともに、印刷領域の側方の検査領域上の半田材を平坦化することが好ましい。
【0023】
また、本発明の半田材検査方法において、受光データは、拡散反射光のうちの特定波数の検査対象光強度を含み、特定波数は、半田材に含まれる塩が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数であることが好ましい。ここで、塩は、カルボン酸塩であることが好ましい。
【0024】
また、本発明の半田材検査方法において、受光データは、拡散反射光のうちの特定波数の検査対象光強度を含み、特定波数は、半田材に含まれる酸が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数であることが好ましい。ここで、酸は、カルボン酸であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の半田材検査方法において、受光データは、拡散反射光のうちの特定波数の検査対象光強度を含み、特定波数は、半田材に含まれる金属酸化物が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数であることが好ましい。ここで、金属酸化物は、酸化錫であることが好ましい。
【0026】
また、本発明の半田材検査方法は、印刷回数毎の半田材の劣化度を示す特性値を監視する工程と、特性値が予め設定された値より大きくなったことを報知する工程とを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡便に半田材の劣化度の測定精度を向上させることができる半田材検査装置および半田材検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0029】
<実施の形態1>
一般に、良質な半田材は、低粘度、低酸化度および高還元力であり、半田材が劣化した場合には、粘度および酸化度が高くなり、還元力が低くなることが知られている。これは、半田材を使用し続け、半田材を外気に曝し続けると、半田材に含有されている金属粒子である粒状半田が酸化していき、半田材に含有されているフラックス中の酸(たとえば、カルボン酸など)が塩に変化していくためである。
【0030】
すなわち、半田材を使用し続け、外気に曝し続けることにより半田材が劣化した場合には、半田材中の金属酸化物が増加し、フラックス中の酸の含有量が減少し、フラックス中の塩の含有量が増加する。そして、フラックス中の塩の含有量が増加することによって半田材の粘度が増加し、金属酸化物の含有量が増加することによって酸化度が増加し、フラックス中の酸の含有量が低下することによって還元力が低くなる。
【0031】
ここで、半田材に含有されている金属酸化物の含有量の増加、フラックス中の酸の含有量の減少およびフラックス中の塩の含有量の増加については、たとえば、半田材の表面に赤外線を照射し、その反射光の光強度を測定することによって得られる特定波数の光の吸光度差などによって判断することができる。これは、半田材に含有されている金属酸化物、フラックス中の酸およびフラックス中の塩のそれぞれの物質には、それぞれの物質が吸収する互いに異なる特定波数の赤外線が存在するためである。
【0032】
したがって、半田材の劣化度は、半田材の表面に赤外線を照射して、特定波数の光の吸光度差などにより、半田材に含有されている金属酸化物の含有量の増加、フラックス中の酸の含有量の減少およびフラックス中の塩の含有量の増加の少なくとも1項目を判断することによって可能である。
【0033】
しかしながら、上記のように赤外線の照射により半田材の劣化度を測定する方法においても半田材の劣化度の測定精度が不十分であった。
【0034】
図1(a)および図1(b)に、印刷された後の半田材の表面を示す。ここで、図1(a)は印刷直後の半田材の表面画像を示し、図1(b)は図1(a)に示す半田材の表面画像を二値化した画像を示す。ここでは、半田材として、従来から公知のフラックスと粒状半田とを混合したものを用いている。
【0035】
ここで、図1(a)および図1(b)に示すように、印刷直後の半田材の表面においては、フラックスが粒状半田の表面をまだらに覆っており、半田材の表面にはフラックスの塗布箇所と、フラックスの非塗布箇所との間で凹凸が形成されており、このような凹凸が形成されている半田材の表面に赤外線などの光を照射した場合には、その多くが正反射光(散乱をせずに反射する光)ではなく、拡散反射光(少なくとも1回散乱した後に反射する光)となることがわかった。
【0036】
そこで、本発明者は、半田材の表面における拡散反射光を利用して半田材の劣化度をより簡便にかつ測定精度高く評価することができるか否かについて鋭意検討を重ねた。
【0037】
図2(a)および図2(b)に、新品の半田材とそれを2000回印刷した劣化品の半田材のそれぞれの半田材の表面の5つの異なる領域のそれぞれに様々な波数の光を照射してその拡散反射光を受光することによって、それぞれの波数の光の吸光度差を測定した結果を示す。なお、図2(a)および図2(b)に示す結果は、表面状態の差異以外のばらつきを低減するために、半田材の表面の5つの異なる領域のそれぞれについて22回の試験を行なって、その結果を示している。
【0038】
また、図2(a)および図2(b)において、横軸は波数(cm-1)を示し、縦軸は吸光度差(劣化品の半田材における吸光度−新品の半田材における吸光度)を示している。また、図2(a)は、波数1200〜1800(cm-1)における吸光度差を示しており、点線で囲まれた部分がフラックス中の酸の含有量に対応する吸光度差を示している。また、図2(b)は、波数500〜1000(cm-1)における吸光度差を示しており、点線で囲まれた部分が金属酸化物の含有量に対応する吸光度差を示している。
【0039】
図2(a)および図2(b)に示すように、半田材の表面の5つの異なる領域における測定結果には、ばらつきがあることがわかる。したがって、半田材の劣化度の測定精度を向上させるためには、拡散反射光の受光により半田材の劣化度を評価する際に、なるべく多くの箇所で測定するとともに、その表面状態の差異に起因する測定結果のばらつきを低減するためになるべく平坦な表面の領域で測定することが重要であると考えられる。
【0040】
たとえば図3の模式的平面図に示すように、スキージ6を用いて半田材をプリント基板などの基板81に印刷する際には、まず、基板81の表面上に基板81の表面よりも大きな表面を有する印刷用マスクなどの基材3が設置される。ここで、基材3には、印刷パターンと同形状にパターンニングがされた開口部が形成されており、その開口部が基板81の表面上に位置するように基材3が設置される。そして、基材3の表面上に半田材を塗布した後にスキージ6を基材3の表面上をたとえば図3のXの方向に摺動させることによって、基板81が基材3に当接する印刷領域7においては、半田材が基材3の開口部に充填されて、半田材が基材3の開口部の形状に基板81の表面上に印刷されることになる。
【0041】
ここで、たとえば、スキージ6の幅(図3のXの方向に直交する方向の長さ)を基板81の幅(図3のXの方向に直交する方向の長さ)よりも大きくした場合には、スキージ6の両端部の基材3の領域においては基板81からの圧力が加わらないことから、基板81が基材3に当接していない領域(以下、「検査領域4」という。)においてはスキージ6の摺動により平坦化された半田材40aのみが基材3の表面上に薄く残る。
【0042】
そこで、本発明者は、この検査領域4に残る平坦化された半田材40aを半田材の劣化度の評価に用い、かつこの領域に残る半田材40aの複数箇所で上記の拡散反射光を利用した測定を行なうことによって、簡便に半田材の劣化度の測定精度を向上させることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0043】
図4に、本発明の半田材検査装置の一例の模式的な斜視図を示す。この半田材検査装置1は、基材3を設置するための台座2と、台座2の上方を水平方向に移動自在な水平方向移動体12と、水平方向移動体12に取り付けられて鉛直方向に昇降自在なスキージ支持部11と、スキージ支持部11の一端に固定されて取り付けられた第1のスキージ6aと、第1のスキージ6aとは別のスキージ支持部11の一端に固定されて取り付けられた第2のスキージ6bと、スキージ支持部11の中間部に固定されて取り付けられた筐体位置決め用部材支持部13と、筐体位置決め用部材支持部13の側面に固定用ネジ15で固定されるとともに第1のスキージ6aの上面に位置決め用ネジ9で固定された筐体位置決め用部材14と、第1のスキージ6aの上面に筐体位置決め用部材14とともに位置決め用ネジ9で固定された筐体支持部8と、筐体支持部8に固定されて取り付けられた筐体5とを有している。
【0044】
なお、筐体位置決め用部材14の上面には複数のネジ穴10が設けられており、位置決め用ネジ9を異なるネジ穴10に固定することにより、筐体5が取り付けられた筐体支持部8および筐体支持部8の位置を変えることができる。
【0045】
図5に、本発明の半田材検査装置の一例を俯瞰した構成を簡略的に図示した模式的な平面図を示す。ここで、プリント基板などの基板が当接する基材3の領域である印刷領域7は、その周囲を検査領域4で取り囲まれており、第1のスキージ6aに筐体支持部8を介して取り付けられた筐体5は、第1のスキージ6aと連動して検査領域4の上方を水平方向に移動することとなる。
【0046】
図6に、本発明の半田材検査装置の一例の構成の模式的な側面図を示す。なお、図6においては、説明の便宜のため、基板や台座などの一部の部材については表記していない。
【0047】
ここで、図6に示すように、半田材40の印刷時においては、水平方向移動体12は水平方向移動用レール33上を図6のXの方向に水平移動する。そして、この水平方向移動体12の水平移動によりスキージ支持部11を介して固定された2つのスキージ(第1のスキージ6aおよび第2のスキージ6b)も水平方向移動体12に連動して図6のXの方向に水平移動する。そして、この水平移動により、第1のスキージ6aが半田材40とともに基材3の表面上を摺動することによって、図5の印刷領域7においてはプリント基板などの基板上に半田材40の印刷が行なわれるとともに、印刷領域7の側方の検査領域4においては半田材40の平坦化が行なわれる。
【0048】
なお、筐体支持部8は、筐体5が第1のスキージ6aと連動するように第1のスキージ6aに取り付けられていることが好ましい。この場合には、筐体5は、第1のスキージ6aが基材3を摺動すると、第1のスキージ6aの進行方向(図6のXの方向)に沿って、第1のスキージ6aの後方かつ印刷領域7の側方の検査領域4から所定高さの位置を第1のスキージ6aに付き従って移動することになる。
【0049】
このように、筐体5が第1のスキージ6aと連動するように第1のスキージ6aに取り付けられている場合には、以下の(i)〜(v)のような効果を得ることができる。
(i)筐体5の測定により印刷工程のタクトタイムを伸ばさない。
(ii)スキージによって平坦化された直後のより平坦な半田材の表面の領域について測定することができる。
(iii)1個の筐体5によって、1回の印刷で異なる複数の領域を測定することができる。
(iv)スキージによる印刷から常に一定時間後に測定を行なうことができる。
(v)スキージによる印刷直後に劣化度を検査することができる。
【0050】
また、筐体5は、基材3の印刷領域7の側方の検査領域4において平坦化された半田材40の表面に照射光44を照射する投光部41と、投光部41から照射された光の拡散反射光45を受光する受光部43と、当該照射光44および拡散反射光45が通過可能な窓部46とを備えている。
【0051】
筐体5は、印刷領域7の側方の検査領域4上においてスキージにより平坦化された直後の半田材40の表面に投光部41から照射光44を照射し、その照射光44が半田材40の表面で拡散して反射することにより得られた拡散反射光45をまずバンドパスフィルタ42に通して特定波数以外の拡散反射光45を取り除き、その後特定波数の拡散反射光45のみを受光部43で受光する。そして、受光部43において受光した特定波数の拡散反射光45の光強度(特定波数の検査対象光強度)などの情報の出力信号を半田材検査装置1の処理部31に送信する。
【0052】
そして、処理部31は、受光部43から送信されてきた出力信号に基づいて半田材40の表面の領域ごとに受光データを作成する。なお、本発明においては、検査領域4の複数の領域において測定が行なわれることから、処理部31は、筐体5と半田材40の表面の水平位置が相対的に変化したことに応じて、受光部43に検査領域4上の半田材40の表面の異なる複数の領域から得られた拡散反射光45を受光させて複数の受光データを収集することになる。
【0053】
そして、処理部31においては、収集した複数の受光データに基づいて、たとえば複数の受光データの平均を採るなどの測定結果を算出する処理を行ない、その処理後の出力信号を出力部32に送信する。その後、出力部32において、上記の処理部31で算出された測定結果が出力される。そして、出力部32から出力された測定結果に基づいて、半田材40が劣化しているか否かについての判断を行なうことによって、半田材40の劣化度についての検査が行なわれる。
【0054】
なお、処理部31は、たとえば、受光部43から送信されてきたアナログ信号からなる出力信号を処理して、測定結果を出力部32に送信するように構成されており、たとえば、受光部43から送信されてきたアナログ信号からなる出力信号をデジタル信号に変換するA/D(Analog to Digital)コンバータと、当該デジタル信号に基づいてデータ処理を行うコンピュータとを含む構成とすることができる。
【0055】
また、この処理部31は、CPUなどの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶手段に記憶されたプログラムを実行し、キーボードなどの入力手段、ディスプレイなどの出力手段、あるいは、インターフェース回路などの通信手段を制御することにより実現することも可能である。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記のプログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、処理部31の各種機能および各種処理を実施することができる。また、上記のプログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能および各種処理を実施することができる。
【0056】
また、出力部32は、たとえば、処理部31から送信されてくる測定結果を表示する表示パネルと、当該測定結果を外部に出力することが可能な通信装置とを含む構成とすることができる。
【0057】
図7に、本発明に用いられる筐体の一例の模式的な斜視透視図を示す。ここで、筐体5の底部には、照射光44およびその照射光44の拡散反射光45が通過可能な窓部46が備えられている。さらに、筐体5には、窓部46ととともに、正反射光を筐体5の外部に取り出すための正反射光透過用窓部47が備えられていることが好ましい。
【0058】
投光部41から窓部46を通して半田材40の表面に照射された照射光44は、半田材40の表面で少なくとも1回散乱することによって、バンドパスフィルタ42および受光部43側に反射する拡散反射光45となるが、照射光44が半田材40の表面で散乱せずにそのまま反射する正反射光は、半田材40の劣化度を検査するのに用いられる特定波数の光の反射前後の光強度変化が乏しい。したがって、正反射光に関する情報についてはなるべく排除すべく、照射光44の正反射光については、受光部42で受光しないように正反射光透過用窓部47から筐体5の外部に取り出すことが好ましい。
【0059】
図8(a)〜(d)に、本発明の半田材検査装置の動作の一例を図解する模式的な側面図を示す。なお、図8(a)〜(d)においては、説明の便宜のため、台座2上に設置される基板および基板上に設置される基材などの部材については図示していない。
【0060】
まず、図8(a)に示すように、台座2の一端により近く位置している第1のスキージ6aの鉛直方向における高さを第2のスキージ6bよりも低い位置に配置し、より低い位置に配置された第1のスキージ6aの近傍に半田材40を塗布する。
【0061】
次に、図8(b)に示すように、水平方向移動用レール33上において水平方向移動体12を水平移動させることにより、これに連動して第1のスキージ6aが半田材40とともに基材3の表面上を摺動する。これにより、印刷領域7においてはプリント基板などの基板の表面上に半田材40の印刷が行なわれるとともに、印刷領域7の側方の検査領域4においては半田材40の平坦化が行なわれる。このとき、第2のスキージ6bは、第1のスキージ6aによる半田材40の印刷および平坦化を阻害しないように鉛直方向の高い位置に保持された状態で第1のスキージ6aと連動して水平移動する構成とされることが好ましい。
【0062】
次に、図8(c)に示すように、第1のスキージ6aが台座2の他端まで到達すると、第1のスキージ6aは筐体5とともに鉛直方向上方に移動させられ、第2のスキージ6bが鉛直方向下方に移動させられる。また、上記の工程により、基板の表面上への半田材の印刷が完了しているため、印刷後の基板から未印刷の新たな基板への交換が行なわれる。
【0063】
次に、図8(d)に示すように、水平方向移動用レール33上において、水平方向移動体12を上記と逆方向に水平移動させることにより、これに連動して第2のスキージ6bが半田材40とともに基材3の表面上を摺動する。これにより、印刷領域7において新たな未印刷の基板上に半田材40の印刷が行なわれるとともに、印刷領域7の側方の検査領域4においては半田材40の平坦化が行なわれる。このとき、第1のスキージ6aは、第2のスキージ6bによる半田材40の印刷および平坦化を阻害しないように鉛直方向の高い位置に保持された状態で第2のスキージ6bと連動して水平移動する構成とされることが好ましい。
【0064】
ここで、筐体5における照射光44の照射および拡散反射光45の受光による半田材40の受光データの収集は、検査領域4上の半田材40の表面の複数箇所で行なわれていれば、たとえば図8(b)に示すような第1のスキージ6aの摺動時、たとえば図8(d)に示すような第2のスキージ6bの摺動時、およびこれらの双方の摺動時のいずれのときにも行なわれてもよい。しかしながら、たとえば図8(b)に示される場合と図8(d)に示される場合のように、筐体5と半田材40との間の距離が大きく異なっている場合には、筐体5の受光部43で受光する光強度が異なることから、この光強度の差異を考慮して半田材40の受光データが作成されることが好ましい。
【0065】
図9に、筐体5の受光部43で受光する光強度が異なる場合の処理の一例のフローチャートを示す。まず、ステップS90において、処理部31は、筐体5の投光部に照射光44を検査領域4上の半田材40の表面に照射させる。次に、ステップS91において、受光部43に受光させた拡散反射光45の光強度を示す出力信号を処理部31が受信する。そして、ステップS92において、処理部31が、受光部43で受光した拡散反射光45の光強度が一定値以上であるかどうかについて判断する。
【0066】
そして、ステップS92において、処理部31が受光部43で受光した拡散反射光45の光強度が一定値以上でないと判断した場合には、再度、受光部43に拡散反射光45を受光させて、その光強度を示す出力信号を処理部31で受信する。なお、ステップS91における処理とステップS92における処理は、処理部31が受光部43で受光した拡散反射光45の光強度が一定値以上であると判断するまで繰り返される。
【0067】
そして、ステップS92において、処理部31が受光部43で受光した拡散反射光45の光強度が一定値以上であると判断した場合には、ステップS93において、処理部31が受光部43で受光した拡散反射光45の光強度から状態変化度を算出する。
【0068】
次に、ステップS94において、処理部31は、出力部32に上記の状態変化度の出力信号を送信する。次に、ステップS95において、出力部32により上記の状態変化度を加味して測定結果が出力される。
【0069】
なお、図9に示すフローチャートによる光強度が異なる場合の処理はあくまでも一例であり、本発明において光強度が異なる場合の処理として図9に示すフローチャート以外の処理を用いてもよいことは言うまでもない。
【0070】
また、筐体5における照射光44の照射および拡散反射光45の受光による半田材40の受光データの収集は、第1のスキージ6aの摺動時および/または第2のスキージ6bの摺動時において、第1のスキージ6aおよび第2のスキージ6bの移動に伴って連続して行なわれることが効率的な測定の向上などの観点から好ましい。
【0071】
また、本発明の半田材検査装置は、半田材40が劣化したことを報知する報知部をさらに備えていることが好ましい。図10に、本発明の半田材検査装置が報知部を備えているときのシステム構成の一例を示す。
【0072】
図10を参照して、この半田材検査装置は、図6に示した筐体5、処理部31および出力部32に加えて、半田材40が劣化したことを工場のオペレータ等に報知する報知部103をさらに備える。図示しないが、図6に示した筐体5が取付けられる筐体支持部8や、その周辺に配置されるスキージ支持部11、スキージ6a、基材3、水平移動用レールおよび水平方向移動体12は、同様に図10の筐体5に対しても適用することができる。
【0073】
ここで、まず、筐体5の投光部41から照射光44を検査領域4上の半田材40の表面の照射して生じた拡散反射光45を受光部43で受光する。そして、処理部31が、受光部43で受光した拡散反射光45の光強度などの出力信号を受信して受光データを作成するとともに収集して、収集した受光データから測定結果を算出する処理を行ない、測定結果の出力信号を出力部31に送信する。その一方で、処理部31は、その測定結果から印刷回数毎の半田材40の劣化度を示す特性値を監視しており、半田材40の劣化度を示す特性値が予め設定された値より大きくなっているか否かについて監視している。そして、処理部31は、上記の特性値が予め設定された値より大きくなっていると判断した場合には、上記の測定結果の出力信号とともにその旨の出力信号を出力部31に送信する。なお、半田材40の劣化度を示す特性値は、半田材40の劣化度が上昇するに伴って大きくなる値であれば特に限定はされない。
【0074】
そして、出力部31は、半田材40の劣化度を示す特性値が予め設定された値より大きくなっている旨の出力信号を受信したときには、その旨の出力信号を報知部103に送信する。
【0075】
図11に、上記の報知部における処理のフローチャートの一例を示す。ここで、ステップS111において、報知部が上述のように半田材40の劣化度を示す特性値が予め設定された値より大きくなっている旨の出力信号を出力部31から受信したときには、ステップS112において報知部はオペレータにその旨を通知する。
【0076】
一方、ステップS111において、報知部が上述のように半田材40の劣化度を示す特性値が予め設定された値より大きくなっている旨の出力信号を出力部31から受信していないときには、ステップS113において報知部はオペレータにその旨を通知しない。
【0077】
以上のように、本発明においては、台座2の表面上に半田材の被印刷体となるたとえばプリント基板などの基板(図示せず)を設置し、たとえば印刷パターンの形状などに開口部を有する印刷用マスクなどの基材3を当該基板の表面を覆うようにして設置した後に、フラックスと粒状半田が混合された半田材40を基材3の表面上に塗布する。そして、水平方向移動体12を水平移動させ、水平方向移動体12にスキージ支持部11を介して固定されたスキージ(たとえば、第1のスキージ6aおよび第2のスキージ6bであるがこの構成には限定されない。)を水平移動させる。これにより、プリント基板などの基板81が当接する基材3の領域である印刷領域7においては基材3の表面に設置された半田材40が基材3の開口部に充填されて、半田材40が基材3の開口部の形状に基板81の表面上に印刷される。一方、印刷領域7の周囲の基材3の領域である検査領域4においては半田材40がスキージの移動前の状態よりも平坦化される。
【0078】
そして、上記のスキージの移動に追随する筐体5を用いて検査領域4上の平坦化された半田材40の表面の複数の領域のそれぞれから拡散反射光45を受光して半田材40の受光データを収集し、その収集した複数の受光データに基づいて半田材40が劣化しているか否かの判断を行ない、半田材40の劣化度の検査を行なうことができる。
【0079】
したがって、本発明の半田材検査装置および半田材検査方法によれば、簡便に半田材の劣化度の測定精度を向上させることができるのである。
【0080】
なお、本発明において用いられる半田材40は、従来から公知のフラックスと従来から公知の粒状半田とが混合されている半田材であれば特に限定なく用いることができる。なお、粒状半田とは、粒子が球状のものに限られず、様々な形状、たとえばフレーク状、スポンジ状などの粒子形状であってもよく、粉状あるいはパウダー状のものであっても良い。
【0081】
また、本発明において用いられるスキージ(第1のスキージ6aおよび第2のスキージ6b)も特に限定されず、摺動により印刷領域7において半田材40を印刷することができるとともに、検査領域4において半田材40を平坦化することができる部材であれば特に限定されない。
【0082】
また、本発明において、半田材40の表面に照射される照射光44としては、たとえば、特定波数の赤外線、若しくは特定波数の赤外線とともに特定波数以外の波数の赤外線を含む光などを用いることができる。なお、半田材40の劣化度を検査できるものであれば、照射光44は赤外線に限定されるものではない。
【0083】
また、本発明において、投光部41としては、半田材40の表面に照射光44を照射することができるものであれば特に限定なく用いることができ、たとえば、セラミック光源などを用いることができる。
【0084】
また、本発明において、受光部42としては、拡散反射光45を受光して、その受光した拡散反射光45の光強度を示す出力信号を生成し、この出力信号を処理部31に送信することができるものであれば特に限定なく用いることができ、たとえば、焦電素子やサーモパイルなどの熱型素子、またはMCT(光導電素子:HgCdTe)などの量子型素子を用いることができる。
【0085】
また、本発明において、筐体5としては、上記の投光部41および受光部42を収容することができるものであれば特に限定はされない。
【0086】
また、本発明において、窓部46としては、投光部41から照射される照射光44およびその拡散反射光45を通過可能なものであれば特に限定はされない。
【0087】
また、本発明において、筐体5を支持する筐体支持部8としては、検査領域4において平坦化された半田材40の表面から所定高さに筐体5を支持することができるものであれば特に限定はされない。
【0088】
また、本発明において、バンドパスフィルタ42としては、たとえば、特定波数の赤外線のみを透過させる機能を有するものであれば、特に限定なく用いることができる。なお、特定波数とは、金属酸化物が吸収する赤外線の波数帯域、フラックス中の酸が吸収する赤外線の波数帯域およびフラックス中の塩が吸収する赤外線の波数帯域のうちの少なくとも1つの波数帯域に含まれる波数のことである。
【0089】
また、本発明において、金属酸化物としては、たとえば酸化錫および/または酸化亜鉛などを挙げることができる。なお、金属酸化物がたとえば酸化錫および/または酸化亜鉛である場合には、上記の金属酸化物が吸収する赤外線の波数帯域は、520cm-1〜700cm-1となる。
【0090】
また、本発明において、フラックス中の酸としては、たとえばカルボン酸などを挙げることができる。なお、フラックス中の酸がたとえばカルボン酸である場合には、上記のフラックス中の酸が吸収する赤外線の波数帯域は、1665cm-1〜1730cm-1となる。
【0091】
また、本発明において、フラックス中の塩としては、たとえばカルボン酸塩などを挙げることができる。なお、フラックス中の塩がたとえばカルボン酸塩である場合には、上記のフラックス中の塩が吸収する赤外線の波数帯域は、1270cm-1〜1430cm-1および/または1500cm-1〜1650cm-1となる。
【0092】
以下に、本発明において半田材の劣化度を検査する方法の一例について説明する。この例においては、表1に示す各物質を含有成分とする半田材を検査に用いている。この半田材は、表1に示すように、80〜90質量%の錫と、1〜3質量%の銀と、1質量%未満の銅と、2〜4質量%のジエチレングリコールモノへキシルエーテルと、1質量%未満の2−エチル−1,3−ヘキサンジオールと、4〜6質量%のロジンとを含んでおり、含有成分の総含有量(質量%)は100質量%となっているが、本発明における半田材はこの構成に限定されないことは言うまでもない。
【0093】
また、この半田材のフラックスに含まれているロジンにはC1929COOHの化学式で表わされるカルボン酸が含まれており、この半田材の粒状半田には錫(Sn)が含まれている。
【0094】
【表1】

【0095】
また、未使用で新品の状態の半田材を比較対象とし、プリント基板の印刷工程において使用された後の半田材を検査対象とした。なお、以下では、比較対象の半田材を単に「比較対象」と言い、検査対象の半田材を単に「検査対象」と言うこともある。
【0096】
そして、この比較対象および検査対象のそれぞれに、上記の投光部41から同一光強度の赤外線を照射し、比較対象および検査対象のそれぞれの拡散反射光を上記の受光部43で受光して、波数500cm-1〜3000cm-1の各波数の拡散反射光の光強度を検出した。
【0097】
また、受光部43で受光した拡散反射光の各波数の光強度に基づいて、処理部31において、比較対象の拡散反射光の各波数の吸光度(第2赤外線吸光度)と、検査対象の拡散反射光の各波数の吸光度(第1赤外線吸光度)とを算出した。
【0098】
なお、上記の吸光度は、波数hに対応するブランク値(照射した赤外線の波数hにおける光強度)をBLとし、比較対象からの拡散反射光の波数hにおける光強度をAとし、検査対象からの拡散反射光の波数hにおける光強度をBとして、下記の式(1)および(2)により波数毎に演算することによってそれぞれ算出することができる。
【0099】
比較対象の拡散反射光の各波数の吸光度(波数hに対応する吸光度)A’=−log(A/BL) …(1)
検査対象の拡散反射光の各波数の(波数hに対応する吸光度)B’=−log(B/BL) …(2)
図12に、上記の比較対象と検査対象のそれぞれの拡散反射光の各波数の吸光度を上記の式(1)および(2)により算出したスペクトルチャートを示す。なお、図12において、横軸は比較対象と検査対象のそれぞれの拡散反射光の波数(cm-1)を示しており、縦軸は比較対象と検査対象のそれぞれの拡散反射光の各波数の吸光度を示している。
【0100】
図12に示すように、比較対象の拡散反射光の吸光度(破線)と、検査対象の拡散反射光の吸光度(実線)とでは、吸光度に相違があることが観測される。
【0101】
次に、拡散反射光の各波数毎に、下記の式(11)により、検査対象の拡散反射光の吸光度と比較対象の拡散反射光の吸光度との差分(「吸光度差」)を算出した。
吸光度差=B’−A’ …(11)
図13に、検査対象の拡散反射光の吸光度と比較対象の拡散反射光の吸光度との吸光度差を上記の式(11)により拡散反射光の各波数毎に算出したチャートを示す。なお、図13において、横軸は拡散反射光の各波数(cm-1)を示しており、縦軸は拡散反射光の各波数毎に検査対象の拡散反射光の吸光度から比較対象の拡散反射光の吸光度を差し引いた吸光度差を示している。
【0102】
図13に示すように、波数600cm-1付近、波数1300cm-1付近、波数1600cm-1付近および波数1700cm-1付近のそれぞれにおいて吸光度差が大きくなっていることがわかる。具体的には、波数600cm-1付近、波数1300cm-1付近および波数1600cm-1付近においては、検査対象の拡散反射光の吸光度が比較対象の拡散反射光の吸光度よりも大きくなっている。また、波数1700cm-1付近においては、検査対象の拡散反射光の吸光度が比較対象の拡散反射光の吸光度よりも小さくなっている。
【0103】
ここで、赤外線スペクトルチャートにおいて、波数600cm-1付近で観測される吸収は、酸化錫における酸素−錫結合の振動によるものであることが知られている。また、波数1300cm-1付近で観測される吸収は、カルボン酸塩の対称伸縮振動によるものであり、波数1600cm-1付近で観測される吸収は、カルボン酸塩における逆対称伸縮振動によるものであることが知られている。さらに、波数1700cm-1付近で観測される吸収は、カルボン酸の炭素−酸素の二重結合の伸縮振動による吸収を示すものであることが知られている。
【0104】
図13に示すチャートにおいては、波数600cm-1付近では、検査対象の拡散反射光の吸光度が比較対象の拡散反射光の吸光度よりも大きくなっていることを示すピークが出現している。したがって、検査対象には比較対象よりも酸化錫が多く含まれていると考えられることから、検査対象は比較対象よりも酸化度が高くなっていると考えられる。
【0105】
また、図13に示すチャートにおいて、波数1300cm-1付近および波数1600cm-1付近でも、検査対象の拡散反射光の吸光度が比較対象の拡散反射光の吸光度よりも大きくなっていることを示すピークが出現している。したがって、検査対象には比較対象よりもカルボン酸塩が多く含まれていると考えられることから、検査対象は比較対象よりも粘度が高くなっていると考えられる。
【0106】
さらに、図13に示すチャートにおいて、波数1700cm-1付近では、検査対象の拡散反射光の吸光度が比較対象の拡散反射光の吸光度よりも小さくなっていることを示すピークが出現している。したがって、検査対象には比較対象よりもカルボン酸の含有量が少なくなっていると考えられることから、検査対象は比較対象よりも還元力が低くなっていると考えられる。
【0107】
したがって、上記のように、検査対象の拡散反射光の吸光度と比較対象の拡散反射光の吸光度との吸光度差を拡散反射光の各波数毎に算出し、金属酸化物、フラックス中の酸およびフラックス中の塩による吸収を示す特定波数帯域のピークの出現を確認することにより、半田材の劣化に伴う金属酸化物の含有量の増加、フラックス中の酸の含有量の低下およびフラックス中の塩の含有量の増加を相対的に把握することができる。
【0108】
次に、未使用で新品の状態の半田材を比較対象とし、プリント基板への印刷をそれぞれ200回、400回、600回、800回、1000回および1200回行なった後の半田材をそれぞれ検査対象とした。
【0109】
そして、この比較対象および検査対象のそれぞれに、上記の投光部41から同一光強度の赤外線を照射し、比較対象および検査対象のそれぞれの拡散反射光を上記の受光部43で受光して、上記と同様にして、比較対象とそれぞれの検査対象との波数1200cm-1〜1800cm-1の各波数における拡散反射光の吸光度差を算出した。
【0110】
図14に、上記のようにして算出した比較対象とそれぞれの検査対象との波数1200cm-1〜1800cm-1の各波数における拡散反射光の吸光度差のチャートを示す。なお、図14において、横軸は拡散反射光の各波数(cm-1)を示しており、縦軸は拡散反射光の各波数毎に200回、400回、600回、800回、1000回および1200回の各印刷後のそれぞれの検査対象の拡散反射光の吸光度から比較対象の拡散反射光の吸光度を差し引いた吸光度差を示している。
【0111】
図14に示すように、半田材の印刷回数が増大するにつれて、波数1300cm-1付近および波数1600cm-1付近の吸光度差は増加し、波数1700cm-1付近の吸光度差は減少する傾向にあることがわかる。これにより、半田材の印刷回数が増大するにつれて、半田材においてカルボン酸が減少し、カルボン酸塩が増加する傾向にあることがわかる。そして、このカルボン酸塩の増加という結果から、半田材の印刷回数が増大するにつれて、半田材の粘度が上昇することがわかる。
【0112】
各検査対象について実際に粘度を測定したところ、表2に示すように、半田材の印刷回数と半田材の粘度とは正の相関関係がある。
【0113】
また、表2に示すように、半田材の波数1600cm-1付近の拡散反射光の吸光度差と半田材の粘度とは正の相関関係があり、半田材の波数1700cm-1付近の拡散反射光の吸光度差と半田材の粘度とは負の相関関係がある。このような相関関係が成立するのは、半田材の印刷回数が増大するほど、半田材に含有されるカルボン酸が減少して波数1700cm-1付近の拡散反射光の吸収が少なくなり、半田材に含有されるカルボン酸塩が増加して波数1700cm-1付近の拡散反射光の吸収が大きくなるため、カルボン酸塩の増加に応じて半田材の粘度が高くなるからである。
【0114】
【表2】

【0115】
また、上記のように検査対象と比較対象との吸光度差を算出する方法以外にも、検査対象の拡散反射光の光強度と比較対象の拡散反射光の光強度とをそれぞれ求め、拡散反射光の各波数について、下記の式(21)により、光強度差を算出する方法も用いることができる。
【0116】
光強度差=B−A …(21)
A:比較対象の拡散反射光の波数hにおける光強度
B:検査対象の拡散反射光の波数hにおける光強度
ここで、「光強度差」とは、検査対象の拡散反射光の波数hにおける光強度から比較対象の拡散反射光の波数hにおける光強度を差し引いたものであり、検査対象の拡散反射光の波数hにおける光強度と比較対象の拡散反射光の波数hにおける光強度との差分である。
【0117】
そして、波数600cm-1付近、波数1300cm-1付近、波数1600cm-1付近および波数1700cm-1付近のそれぞれにおける上記の光強度差を参照した場合には、比較対象に対する検査対象の酸化錫、カルボン酸、カルボン酸塩のそれぞれに対応する波数の拡散反射光の吸収量の差異を把握することができる。それゆえ、検査対象に含まれる金属酸化物の含有量、フラックス中の酸の含有量およびフラックス中の塩の含有量を相対的に把握することができる。
【0118】
また、上記の吸光度差や光強度差ではなく、比較対象と検査対象の拡散反射光の各波数における光強度比や吸光度比によっても、検査対象に含まれる金属酸化物の含有量、フラックス中の酸の含有量およびフラックス中の塩の含有量を相対的に把握することができる。
【0119】
たとえば、比較対象と検査対象の拡散反射光の各波数における光強度比については、各波数毎に、検査対象の拡散反射光の光強度Bと比較対象の拡散反射光の光強度Aとから、下記の式(31)により算出することができる。
光強度比=B/A …(31)
また、たとえば、比較対象と検査対象の拡散反射光の各波数における吸光度比については、各波数毎に、検査対象における拡散反射光の吸光度B’と比較対象における拡散反射光の吸光度A’とから、下記の式(41)により算出することができる。なお、吸光度A’およびB’の算出方法については、上記の式(1)および(2)と同様である。
吸光度比=B’/A’ …(41)
また、上記においては、かなり広い波数帯域の波数毎に、拡散反射光の光強度、吸光度、吸光度差、吸光度比、光強度差または光強度比などを算出することになるが、酸化錫、カルボン酸およびカルボン酸塩のうち少なくとも1つの吸収が認められる赤外線の波数帯域に含まれる波数である特定波数のみについて算出してもよい。ここで、特定波数としては、たとえば、波数600cm-1、波数1300cm-1、波数1600cm-1および波数1700cm-1のうちの少なくとも1つを一例として挙げることができる。
【0120】
また、投光部41から照射される照射光44の光強度にばらつきがある場合には、比較対象に照射される照射光44の光強度と検査対象に照射される照射光44の光強度とで若干の相違が生じる。そして、この相違が、受光部42で受光される拡散反射光の光強度に悪影響を及ぼすことがある。
【0121】
そこで、特定波数における上記の光強度差、光強度比、吸光度差または吸光度比などを求めるにあたって補正を行なうことが好ましい。以下、上記の光強度差を補正した補正光強度差、上記の光強度比を補正した補正光強度比、上記の吸光度差を補正した補正吸光度差、上記の吸光度比を補正した補正吸光度比を求める手順についてそれぞれ説明する。
【0122】
まず、表1に示す構成の半田材の劣化度の指標となる酸化錫、カルボン酸およびカルボン酸塩の赤外線吸収が観測される波数帯域以外であって、比較対象と検査対象とで反射赤外線の光強度がほとんど相違しない波数を参照波数とする。
【0123】
そして、比較対象の拡散反射光における上記参照波数の光強度と、検査対象の拡散反射光における上記参照波数の光強度とを検出する。さらに、比較対象の拡散反射光における上記特定波数の光強度と、検査対象の拡散反射光における上記特定波数の光強度とを検出する。
【0124】
ここで、比較対象の拡散反射光における上記参照波数の光強度(比較対象参照光強度)をAref、検査対象の拡散反射光における上記参照波数の光強度(検査対象参照光強度)をBref、比較対象の拡散反射光における上記特定波数の光強度(比較対象光強度)をAtar、検査対象の拡散反射光における上記特定波数の光強度(検査対象光強度)をBtarとする。
【0125】
また、比較対象における上記参照波数の赤外線吸光度(第4赤外線吸光度)をA'ref、検査対象における上記参照波数の赤外線吸光度(第3赤外線吸光度)をB’ref、比較対象における上記特定波数の赤外線吸光度(第2赤外線吸光度)をA’tar、検査対象における上記特定波数の赤外線吸光度(第1赤外線吸光度)をB’tarとする。
【0126】
なお、各吸光度は、上記の式(1)および(2)によって算出する。すなわち、比較対象に照射する赤外線における参照波数に対応する光強度をBLrefとし、検査対象に照射する赤外線における特定波数に対応する光強度をBLtarとして、下記の式(61)、(62)、(63)および(64)により、上記のA'ref、B’ref、A’tarおよびB’tarをそれぞれ求めることができる。
A’ref=−log(Aref/BLref) …(61)
B’ref=−log(Bref/BLref) …(62)
A’tar=−log(Atar/BLtar) …(63)
B’tar=−log(Btar/BLtar) …(64)
また、以下の補正光強度差、補正光強度比、補正吸光度差および補正吸光度比は、下記の式(71)、(72)、(73)および(74)により、それぞれ求めることができる。
補正光強度差=(Btar−Bref)−(Atar−Aref) …(71)
補正光強度比=(Btar−Bref)/(Atar−Aref) …(72)
補正吸光度差=(B’tar−B’ref)−(A’tar−A'ref) …(73)
補正吸光度比=(B’tar−B’ref)/(A’tar−A'ref) …(74)
これにより、比較対象に照射される照射光の光強度と検査対象に照射される照射光の光強度とで若干の相違が生じていたとしても、各光強度、各吸光度について、上記相違分に対応する参照波数の光強度または吸光度が差し引かれているため、この相違をほぼ解消した補正光強度差、補正光強度比、補正吸光度差および補正吸光度比を求めることができる。
【0127】
また、上記の補正光強度差、補正光強度比、補正吸光度差および補正吸光度比は、下記の式(75)、(76)、(77)および(78)によってもそれぞれ求めることができる。この方法は、Aref/Bref、またはA'ref/B’refを上記相違分の補正用係数としたものである。
補正光強度差=(Btar×Aref/Bref)−Atar …(75)
補正光強度比=(Btar×Aref/Bref)/Atar …(76)
補正吸光度差=(B’tar×A'ref/B’ref)−A’tar …(77)
補正吸光度比=(B’tar×A'ref/B’ref)/A’tar …(78)
また、上記以外にも、下記の式(79)によって求められる検査対象光強度比および/または下記の式(80)によって求められる検査対象光強度比(対数)を用いて簡易的に半田材40の劣化度の測定を行なってもよい。
検査対象光強度比=−(Btar/Bref) …(79)
検査対象光強度比(対数)=−log(Btar/Bref) …(80)
また、上記した各々の特定波数(波数600cm-1、波数1300cm-1、波数1600cm-1および波数1700cm-1)はそれぞれ変更が可能である。すなわち、特定波数は、波数600cm-1、波数1300cm-1、波数1600cm-1および波数1700cm-1に限定されるものではなく、特定波数としての有効範囲を設定することが可能である。この点について、具体的に説明する。
【0128】
まず、未使用で新品の状態の半田材を比較対象とし、プリント基板への印刷をそれぞれ200回、400回、600回、800回、1000回および1200回行なった後の半田材をそれぞれ検査対象とした。そして、この比較対象および検査対象のそれぞれに、上記の投光部41から同一光強度の赤外線を照射し、比較対象および検査対象のそれぞれの拡散反射光を上記の受光部43で受光して、上記と同様にして、比較対象とそれぞれの検査対象との波数520cm-1〜1730cm-1の各波数における拡散反射光の吸光度差を算出した。その結果を図15〜図18に示す。
【0129】
なお、図15には、波数520cm-1〜波数700cm-1の波数帯域についての上記吸光度差のチャートが示されており、図16には、波数1270cm-1〜波数1430cm-1の波数帯域についての上記吸光度差のチャートが示されている。また、図17には、波数1500cm-1〜波数1650cm-1の波数帯域についての上記吸光度差のチャートが示されており、図18には、波数1665cm-1〜波数1730cm-1の波数帯域についての上記吸光度差のチャートが示されている。
【0130】
半田材に含まれる酸化錫(二酸化錫)の吸収ピークは波数600cm-1付近で検出されるが、図15に示すように、波数520cm-1〜波数700cm-1に注目した場合には、検査対象ごとの吸光度差の相違を区別することができ、また波数557cm-1〜波数613cm-1に注目した場合には、検査対象ごとの吸光度差の相違をさらに顕著に区別することができる。したがって、波数520cm-1〜波数700cm-1にの間の少なくとも1つの波数を上記特定波数とすれば、各検査対象の酸化錫の含有量を相対的に把握することが可能となる。
【0131】
また、カルボン酸塩の対称伸縮振動の吸収ピークは波数1300cm-1付近(厳密には、波数1323cm-1)で検出されるが、図16に示すように、波数1270cm-1〜波数1430cm-1に注目した場合には、検査対象ごとの吸光度差の相違を区別することができ、また波数1282cm-1〜波数1382cm-1に注目した場合には、検査対象ごとの吸光度差の相違をさらに顕著に区別することができる。したがって、波数1270cm-1〜波数1430cm-1の間の少なくとも1つの波数を上記特定波数とすれば、各検査対象のカルボン酸塩の含有量を相対的に把握することが可能となる。
【0132】
また、カルボン酸塩の逆対称伸縮振動の吸収ピークは波数1600cm-1付近(厳密には、1590cm-1)で検出されるが、図17に示すように、波数1500cm-1〜波数1650cm-1に注目した場合には、検査対象ごとの吸光度差の相違を区別することができ、また波数1562cm-1〜波数1624cm-1に注目した場合には、検査対象ごとの吸光度差の相違をさらに顕著に区別することができる。したがって、波数1500cm-1〜波数1650cm-1の間の少なくとも1つの波数を上記特定波数とすれば、各検査対象のカルボン酸塩の含有量を相対的に把握することが可能となる。
【0133】
さらに、カルボン酸の炭素−酸素の2重結合の吸収ピークは、波数1700cm-1付近で検出することができるが、図18に示すように、波数1665cm-1〜波数1730cm-1に注目した場合には、検査対象ごとの吸光度差の相違を区別することができ、また波数1683cm-1〜波数1710cm-1に注目した場合には、検査対象ごとの吸光度差の相違をさらに顕著に区別することができる。したがって、波数1665cm-1〜波数1730cm-1の間の少なくとも1つの波数を上記特定波数とすれば、各検査対象のカルボン酸の含有量を相対的に把握することが可能となる。
【0134】
なお、本発明においては、上述したような測定を、半田材40の表面の単一の領域で行なうのではなく、検査領域4上の平坦化された半田材40の表面の複数の領域で行ない、たとえば図13〜図18に示すような受光データを検査領域4上の半田材40の表面の複数の領域のそれぞれの領域ごとに作成して収集する。そして、収集した複数の受光データからその平均値を採ることなどの手法により測定結果を算出して、その測定結果によって半田材40の劣化度の検査を行なう。したがって、本発明においては、半田材40の劣化度の測定精度が向上する。
【0135】
また、本発明においては、金属酸化物の含有量に関しては、接触式のATR(Attenuated Total Reflection)法を用いて測定を行なうこともできるが、接触式のATR法を用いて測定を行なうよりも、非接触式の拡散反射法を用いて測定を行なうことがより測定精度をより向上することができる点で好ましい。
【0136】
図19(a)および図19(b)に、非接触式の拡散反射法による測定原理を図解する模式的な断面図を示し、図20(a)および図20(b)に、接触式のATR法による測定原理を図解する模式的な断面図を示す。
【0137】
図19(a)および図19(b)に示すように、非接触式の拡散反射法においては、半田材40のフラックス193は粒状半田191の表面をまだらに覆っており、粒状半田191の表面にはフラックス193が存在していない箇所と存在している箇所とが混在している。ここで、半田材40が劣化すると、粒状半田191の表面には金属酸化物192が形成され、半田材40の表面のうちフラックス193が存在していない箇所からはたとえば図21の模式的上面図に示すように金属酸化物192の表面が露出することになる。
【0138】
このような状況の半田材40の表面に、非接触式の拡散反射法を用いて、投光部41から照射光44を照射した場合には、図19(b)に示すように、照射光44は金属酸化物192の表面に衝突して、金属酸化物192が特定波数帯域の赤外線を吸収する確率が増加するため、金属酸化物192の吸光に起因する特定波数帯域の拡散反射光45の光強度の低下が大きくなり、結果として測定精度の向上につながる。
【0139】
一方、図20(a)および図20(b)に示すように、接触式のATR法においては、半田材40の表面にプリズム201を押し付けて金属酸化物192に染み込むエバネッセント波202を利用して測定するものであるため、投光部41からの照射光44が照射される金属酸化物192の表面は、たとえば図22の模式的上面図に示すようにプリズム201と接触する1点のみであり、非常に狭いものとなる。したがって、接触式のATR法においては、非接触式の拡散反射法と比較して、金属酸化物192が特定波数帯域の赤外線を吸収する確率が大幅に低くなるため、金属酸化物192の吸光に起因する特定波数帯域の拡散反射光45の光強度の低下が小さくなり、結果として測定精度の向上にはあまりつながらない傾向にある。また、金属酸化物192に染み込むエバネッセント波202の染み込み深さも数μm程度であるため、この観点からも、測定精度の向上にはあまりつながらない傾向にある。
【0140】
なお、図23に、非接触式の拡散反射法における半田材40の表面画像を示し、図24に、接触式のATR法における半田材40の表面画像を示す。図23と図24とを比較してみると、フラックスを表している白い箇所は、図23においては、所定のばらつきを持って存在しているのに対し、図24においては、図23と比べて全体に均一に存在していることがわかる。
【0141】
次に、非接触式の拡散反射法を用いた場合と接触式のATR法を用いた場合とでどのような相違があるかについて以下のような検討を行なった。
【0142】
まず、未使用で新品の状態の半田材を比較対象(印刷回数0回)とし、プリント基板への印刷をそれぞれ200回、400回、600回、800回、1000回、1200回、1400回および1600回行なった後の半田材をそれぞれ検査対象とした。そして、この比較対象および検査対象のそれぞれに、上記の投光部41から同一光強度の赤外線を照射し、比較対象および検査対象のそれぞれの拡散反射光を上記の受光部43で受光して、上記と同様に、比較対象とそれぞれの検査対象について、フラックス中の塩(カルボン酸塩)が吸収する拡散反射光の特定波数における吸光度と、金属酸化物(酸化錫)が吸収する拡散反射光の特定波数における吸光度とを求めた。図25に、比較対象および検査対象のそれぞれのフラックス中の塩(カルボン酸塩)が吸収する拡散反射光の特定波数における吸光度と印刷回数との関係を示し、図26に、比較対象および検査対象のそれぞれの金属酸化物(酸化錫)が吸収する拡散反射光の特定波数における吸光度と印刷回数との関係を示す。
【0143】
図25に示すように、フラックス中の塩(カルボン酸塩)が吸収する拡散反射光の特定波数における吸光度については、非接触式の拡散反射法を用いた場合と接触式のATR法を用いた場合とでそれほど相違は見られなかった。
【0144】
一方、図26に示すように、金属酸化物(酸化錫)が吸収する拡散反射光の特定波数における吸光度については、非接触式の拡散反射法を用いた場合の方が、接触式のATR法を用いた場合と比べて、ばらつきが少なく、測定精度に優れていることがわかる。
【0145】
なお、図25および図26においては、横軸は印刷回数(回数)を示し、縦軸は拡散反射法特性値およびATR法特性値をそれぞれ示しているが、比較対象および検査対象のそれぞれの拡散反射法特性値は上記の式(80)で算出した検査対象光強度比(対数)の値を用い、比較対象および検査対象のそれぞれのATR法特性値は下記の式(81)で算出した補正吸光度差の値を用いている。
補正吸光度差=(D’tar−D’ref) …(81)
なお、上記の式(81)におけるD’refは下記の式(82)により算出され、上記の式(81)におけるD’tarは下記の式(82)により算出される。
D’ref=−log(Dref/Cref) …(82)
D’tar=−log(Dtar/Ctar) …(83)
ここで、上記の式(82)および(83)において、Crefは接触式のATR法において測定対象(比較対象および検査対象)にプリズムを設置していない状態での反射光の上記参照波数の光強度であり、Ctarは接触式のATR法において測定対象(比較対象および検査対象)にプリズムを設置していない状態での反射光の上記特定波数の光強度である。
【0146】
また、上記の式(82)および(83)において、Drefは接触式のATR法において測定対象(比較対象および検査対象)にプリズムを設置した状態での反射光の上記参照波数の光強度であり、Dtarは接触式のATR法において測定対象(比較対象および検査対象)にプリズムを設置した状態での反射光の上記特定波数の光強度である。
【0147】
図27(a)に未使用で新品の半田材を1回印刷した後の表面画像を示し、図27(b)に図27(a)に示す新品の半田材を上記の印刷から20分間空気中で放置した後の表面画像を示す。また、図28(a)に未使用で新品の半田材を2000回印刷した後の劣化品の半田材をさらに1回印刷した後の表面画像を示し、図28(b)に図28(a)に示す劣化品の半田材を上記の印刷から20分間空気中で放置した後の表面画像を示す。
【0148】
また、図29(a)に図27(a)の半田材の表面画像を二値化した画像を示し、図29(b)に図27(b)の半田材の表面画像を二値化した画像を示す。また、図30(a)に図28(a)の半田材の表面画像を二値化した画像を示し、図30(b)に図28(b)の半田材の表面画像を二値化した画像を示す。なお、図29および図30において、白い箇所がフラックスを示し、黒い箇所が粒状半田を示している。
【0149】
また、図31(a)に、新品の半田材および劣化品の半田材(新品の半田材を1600回印刷した後の半田材)についての印刷からの経過時間とフラックス中の酸の含有度との関係を示し、図31(b)に、新品の半田材および劣化品の半田材(新品の半田材を1600回印刷した後の半田材)についての印刷からの経過時間とフラックス中の酸の含有度差の変化率との関係を示す。
【0150】
ここで、図31(a)において、縦軸はフラックス中の酸の含有度を示し、横軸は印刷からの経過時間(分)を示している。また、図31(b)において、縦軸はフラックス中の酸の含有度差の変化率を示し、横軸は印刷からの経過時間(分)を示している。
【0151】
また、図31(a)および図31(b)において、横軸の印刷からの経過時間(分)は、スキージが新品または劣化品の半田材を通過した時点からの経過時間(分)であることを意味している。また、図31(a)において、縦軸のフラックス中の酸の含有度は上記の式(80)により算出した値を用いている。また、図31(b)において、縦軸の新品の半田材と劣化品の半田材とのフラックス中の酸の含有度差の変化率は、図31(a)における劣化品の半田材のフラックス中の酸の含有度から新品の半田材のフラックス中の酸の含有度を差し引いた値をフラックス中の酸の含有度差とし、印刷からの経過時間(分)が0の時点の当該フラックス中の酸の含有度差を1としたときの相対値で表わされている。
【0152】
また、図32(a)に、新品の半田材および劣化品の半田材(新品の半田材を1600回印刷した後の半田材)についての印刷からの経過時間と金属酸化物の含有度との関係を示し、図32(b)に、新品の半田材および劣化品の半田材(新品の半田材を1600回印刷した後の半田材)についての印刷からの経過時間と金属酸化物の含有度差の変化率との関係を示す。
【0153】
ここで、図32(a)において、縦軸は金属酸化物の含有度を示し、横軸は印刷からの経過時間(分)を示している。また、図32(b)において、縦軸は金属酸化物の含有度差の変化率を示し、横軸は印刷からの経過時間(分)を示している。
【0154】
また、図32(a)および図32(b)において、横軸の印刷からの経過時間(分)は、スキージが新品または劣化品の半田材を通過した時点からの経過時間(分)であることを意味している。また、図32(a)において、縦軸の金属酸化物の含有度は上記の式(80)により算出した値を用いている。また、図32(b)において、縦軸の新品の半田材と劣化品の半田材との金属酸化物の含有度差の変化率は、図32(a)における劣化品の半田材の金属酸化物の含有度から新品の半田材の金属酸化物の含有度を差し引いた値を金属酸化物の含有度差とし、印刷からの経過時間(分)が0の時点の当該金属酸化物の含有度差を1としたときの相対値で表わされている。
【0155】
図27〜図30に示すように、印刷からの経過時間が進行するにつれて、新品の半田材および劣化品の半田材の表面からはともにフラックスが減少していることがわかる。この現象は、印刷直後は半田材の表面に浮き出ていたフラックスが、フラックスの自重により粒状半田の間に入り込んでいくことによるものであると考えられる。
【0156】
また、図31(b)および図32(b)に示すように、印刷からの経過時間が短い、特に印刷直後においては、新品の半田材と劣化品の半田材との間のフラックス中の酸の含有度差および金属酸化物の含有度差が最も大きくなる。したがって、半田材の劣化度を検査する観点からは、スキージが半田材を通過してから経過時間がなるべく短い時点で上記の測定を行なうことが好ましく、スキージが半田材を通過した直後に上記の測定を行なうことが好ましい。
【0157】
以上の理由により、本発明においては、半田材の劣化度を測定するための筐体をスキージの後方に位置するように取り付け、スキージが通過して平坦化された直後の半田材の表面における劣化度を筐体により測定することが好ましい構成となる。
【0158】
<実施の形態2>
図33に、本発明の半田材検査装置の他の一例の構成の模式的な側面図を示す。図33に示される実施の形態2における半田材検査装置1は、筐体5の内部にバンドパスフィルタ42a,42bと受光部43とをそれぞれ複数個備えている構成としている点に特徴がある。なお、図33においても、説明の便宜のため、基板や台座などの一部の部材については表記していない。
【0159】
このような構成とすることによって、たとえば、あるバンドパスフィルタ42aに、半田材40中の金属酸化物が吸収する特定波数の拡散反射光のみを透過させるものを用いるとともに、それとは別のバンドパスフィルタ42bに、半田材40に含まれるフラックス中の酸が吸収する特定波数の拡散反射光のみを透過させるものを用いることなどによって、半田材40の劣化度の測定精度をより向上させることができる傾向にある。
【0160】
上記以外の説明は実施の形態1と同様であるため、その説明については省略する。
<実施の形態3>
図34に、本発明の半田材検査装置の他の一例の構成の模式的な側面図を示す。図34に示される実施の形態3における半田材検査装置1は、筐体5の内部にバンドパスフィルタを複数備えた回転部材341を有しており、回転部材341は処理部31からの指示によって回転自在な構成とされている点に特徴がある。
【0161】
このような構成とすることによって、たとえば、金属酸化物が吸収する特定波数の照射光44のみを通すバンドパスフィルタ42a、フラックス中の酸が吸収する特定波数の照射光44のみを通すバンドパスフィルタ42b、フラックス中の塩が吸収する特定波数の照射光44のみを通すバンドパスフィルタ42cおよび上記の参照波数を有する照射光44のみを通すバンドパスフィルタ42dを回転部材341にそれぞれ設置することができる。
【0162】
そして、処理部31からの指示によって回転部材341を回転させながら照射光44を順次照射していくことによって、金属酸化物が吸収する特定波数の拡散反射光45、フラックス中の酸が吸収する特定波数の拡散反射光45、フラックス中の塩が吸収する特定波数の拡散反射光45および上記の参照波数の拡散反射光45をそれぞれ受光部43で受光することができる。
【0163】
さらに、上記の参照波数の拡散反射光45を受光部43で受光することができることから、上記の補正光強度差、補正光強度比、補正吸光度差および補正吸光度比などに基づいて、半田材40の劣化度を検査することができる。
【0164】
したがって、実施の形態3における半田材検査装置1においては、半田材40の劣化度の測定精度をさらに向上させることができる傾向にある。
【0165】
上記以外の説明は実施の形態1と同様であるため、その説明については省略する。
<実施の形態4>
図35に、本発明の半田材検査装置の他の一例の構成の模式的な側面図を示す。図35に示される実施の形態4における半田材検査装置1においては、第1のスキージ6aだけでなく、第2のスキージ6bにも筐体支持部8を介して筐体5が取り付けられている構成とされている点に特徴がある。
【0166】
このような構成とすることによって、1回の印刷で、検査領域上の半田材40の表面のさらに多くの異なる領域について受光データを収集することができるため、半田材40の劣化度の測定精度をさらに向上させることができる傾向にある。
【0167】
<実施の形態5>
図36に、本発明の半田材検査装置の他の一例の構成の模式的な側面図を示す。図36に示される実施の形態5における半田材検査装置1においては、筐体5がスキージ(第1のスキージ6aおよび第2のスキージ6b)と連動することなく筐体支持部8によって半田材40の表面から所定高さの位置に保持されている構成とされている点に特徴がある。
【0168】
このような構成とすることによっても、筐体支持部8によって筐体5の水平位置をX方向に移動させれば、検査領域上の半田材40の表面の複数の異なる領域について劣化度を測定することができるため、半田材40の劣化度の測定精度を向上させることができる。
【0169】
<実施の形態6>
図37に、本発明における筐体5を用いてオフラインで検査台371上の半田材40の劣化度を測定する方法を図解する模式的な側面図を示す。図37に示される形態においては、筐体支持部8によって筐体5の水平位置をX方向に移動させれば、プリント基板などの基板が当接しない検査台371上の複数の領域について半田材40の劣化度を測定することが可能となるため、半田材40の劣化度の測定精度を向上させることができる。なお、筐体支持部8で筐体5を移動させなくても、検査台371の水平位置を移動させ複数の領域を測定しても良い。
【0170】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明によれば、簡便に半田材の劣化度の測定精度を向上させることができる半田材検査装置および半田材検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】(a)は印刷直後の半田材の表面画像であり、(b)は(a)に示す半田材の表面画像を二値化した画像である。
【図2】(a)および(b)は新品の半田材とそれを2000回印刷した劣化品の半田材のそれぞれの表面の5つの異なる領域における様々な波数の光の吸光度差を測定した結果であり、(a)は波数1200〜1800(cm-1)における吸光度差を示しており、(b)は波数500〜1000(cm-1)における吸光度差を示している。
【図3】スキージを用いて半田材をプリント基板などの基板に印刷する工程の一例を図解する模式的な平面図である。
【図4】本発明の半田材検査装置の一例の模式的な斜視図である。
【図5】本発明の半田材検査装置の一例を俯瞰した構成を簡略的に図示した模式的な平面図である。
【図6】本発明の半田材検査装置の一例の構成の模式的な側面図である。
【図7】本発明に用いられる筐体の一例の模式的な斜視透視図である。
【図8】(a)〜(d)は、本発明の半田材検査装置の動作の一例を図解する模式的な側面図である。
【図9】本発明において筐体の受光部で受光する光強度が異なる場合の処理の一例のフローチャートである。
【図10】本発明の半田材検査装置が報知部を備えているときのシステム構成の一例のブロック図である。
【図11】本発明の報知部における処理のフローチャートの一例である。
【図12】比較対象と検査対象のそれぞれの拡散反射光の各波数の吸光度のスペクトルチャートである。
【図13】検査対象の拡散反射光の吸光度と比較対象の拡散反射光の吸光度との吸光度差を拡散反射光の各波数毎に算出したチャートである。
【図14】比較対象とそれぞれの検査対象との波数1200cm-1〜1800cm-1の各波数における拡散反射光の吸光度差のチャートである。
【図15】比較対象と検査対象との波数520cm-1〜700cm-1の各波数における拡散反射光の吸光度差のチャートである。
【図16】比較対象と検査対象との波数1270cm-1〜波数1430cm-1の各波数における拡散反射光の吸光度差のチャートである。
【図17】比較対象と検査対象との波数1500cm-1〜波数1650cm-1の各波数における拡散反射光の吸光度差のチャートである。
【図18】比較対象と検査対象との波数1665cm-1〜波数1730cm-1の各波数における拡散反射光の吸光度差のチャートである。
【図19】(a)および(b)は、非接触式の拡散反射法による測定原理を図解する模式的な断面図である。
【図20】(a)および(b)は、接触式のATR法による測定原理を図解する模式的な断面図である。
【図21】非接触式の拡散反射法における半田材の表面の一例の模式的な平面図である。
【図22】接触式のATR法における半田材の表面の一例の模式的な平面図である。
【図23】非接触式の拡散反射法における半田材の表面画像である。
【図24】接触式のATR法における半田材の表面画像である。
【図25】比較対象および検査対象のそれぞれのフラックス中の塩の含有量と印刷回数との関係を示す図である。
【図26】比較対象および検査対象のそれぞれの金属酸化物の含有量と印刷回数との関係を示す図である。
【図27】(a)は新品の半田材を1回印刷した後の表面画像であり、(b)は(a)に示す新品の半田材を上記の印刷から20分間空気中で放置した後の表面画像である。
【図28】(a)は新品の半田材を2000回印刷した後の劣化品の半田材をさらに1回印刷した後の表面画像であり、(b)は(a)に示す劣化品の半田材を上記の印刷から20分間空気中で放置した後の表面画像である。
【図29】(a)は図27(a)の半田材の表面画像を二値化した画像であり、(b)は図27(b)の半田材の表面画像を二値化した画像である。
【図30】(a)は図28(a)の半田材の表面画像を二値化した画像であり、(b)は図28(b)の半田材の表面画像を二値化した画像である。
【図31】(a)は新品の半田材と劣化品の半田材についての印刷からの経過時間とフラックス中の酸の含有度との関係を示す図であり、(b)は新品の半田材と劣化品の半田材についての印刷からの経過時間とフラックス中の酸の含有度差の変化率との関係を示す図である。
【図32】(a)は新品の半田材と劣化品の半田材についての印刷からの経過時間と金属酸化物の含有度との関係を示す図であり、(b)は新品の半田材と劣化品の半田材についての印刷からの経過時間と金属酸化物の含有度差の変化率との関係を示す図である。
【図33】本発明の半田材検査装置の他の一例の構成の模式的な側面図である。
【図34】本発明の半田材検査装置の他の一例の構成の模式的な側面図である。
【図35】本発明の半田材検査装置の他の一例の構成の模式的な側面図である。
【図36】本発明の半田材検査装置の他の一例の構成の模式的な側面図である。
【図37】本発明における筐体を用いてオフラインで半田材の劣化度を測定する方法を図解する模式的な側面図である。
【符号の説明】
【0173】
1 半田材検査装置、2 台座、3 基材、4 検査領域、5 筐体、6 スキージ、6a 第1のスキージ、6b 第2のスキージ、7 印刷領域、8 筐体支持部8、9 位置決め用ネジ、10 ネジ穴、11 スキージ支持部、12 水平方向移動体、13 筐体位置決め用部材支持部、14 筐体位置決め用部材、15 固定用ネジ、31 処理部、32 出力部、33 水平方向移動用レール、40,40a 半田材、41 投光部、42,42a,42b,42c,42d バンドパスフィルタ、43 受光部、44 照射光、45 拡散反射光、46 窓部、47 正反射光透過用窓部、81 基板、103 報知部、191 粒状半田、192 金属酸化物、193 フラックス、201 プリズム、202 エバネッセント波、371 検査台。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスと粒状半田が混合された半田材の劣化を検査する半田材検査装置であって、
基材の上に塗布され平坦化された半田材の表面に照射光を照射する投光部と、
前記投光部から照射された光の拡散反射光を受光する受光部と、
前記投光部と受光部とを収容し、前記照射光および前記拡散反射光が通過可能な窓部が設けられた筐体と、
前記平坦化された半田材の表面から所定高さに前記筐体を支持する支持部と、
前記受光部の出力信号を処理する処理部とを備え、
前記処理部は、前記筐体と前記半田材の表面の水平位置が相対的に変化したことに応じて、前記受光部に前記半田材の表面の異なる複数の領域から得られる拡散反射光を受光させて複数の受光データを収集し、前記複数の受光データに基づいて前記半田材の劣化度を検査する、半田材検査装置。
【請求項2】
前記基材は、プリント基板に前記半田材を印刷するための印刷用マスクであり、
前記複数の領域は、前記印刷用マスクの前記プリント基板が当接する印刷領域の周囲の検査領域内にある、請求項1に記載の半田材検査装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記筐体をスキージと連動するように支持する、請求項1または2に記載の半田材検査装置。
【請求項4】
前記支持部は、前記スキージが前記印刷用マスクを摺動する時に、進行方向に向かって前記スキージの後方かつ前記印刷領域の側方において、前記筐体を前記所定高さに支持し、
前記スキージは前記印刷用マスクを摺動して前記印刷領域内のプリント基板上に半田材の印刷を行なうとともに、前記印刷領域の側方の検査領域上の前記半田材を平坦化する、請求項3に記載の半田材検査装置。
【請求項5】
前記受光部は、前記拡散反射光のうちの特定波数の検査対象光強度を検出し、
前記特定波数は、半田材に含まれる塩が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半田材検査装置。
【請求項6】
前記塩は、カルボン酸塩である、請求項5に記載の半田材検査装置。
【請求項7】
前記受光部は、前記拡散反射光のうちの特定波数の検査対象光強度を検出し、
前記特定波数は、半田材に含まれる酸が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半田材検査装置。
【請求項8】
前記酸は、カルボン酸である、請求項7に記載の半田材検査装置。
【請求項9】
前記受光部は、前記拡散反射光のうちの特定波数の検査対象光強度を検出し、
前記特定波数は、半田材に含まれる金属酸化物が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半田材検査装置。
【請求項10】
前記金属酸化物は、酸化錫である、請求項9に記載の半田材検査装置。
【請求項11】
前記半田材が劣化したことを報知する報知部をさらに備え、
前記処理部は、印刷回数毎の前記半田材の前記劣化度を示す特性値を監視し、前記特性値が予め設定された値より大きくなったことに応じて前記報知部に報知させる、請求項2〜10のいずれか1項に記載の半田材検査装置。
【請求項12】
フラックスと粒状半田が混合された半田材の劣化を検査する半田材検査方法であって、
基材の上に塗布された半田材を平坦化する工程と、
前記平坦化された半田材の表面の異なる複数の領域に照射光を照射する工程と、
前記複数の領域への前記照射光の照射により生じた拡散反射光をそれぞれ受光する工程と、
前記受光した拡散反射光に基づいて前記複数の領域のそれぞれについての受光データを作成する工程と、
前記受光データを収集する工程と、
前記収集した複数の受光データに基づいて前記半田材の劣化度を検査する工程とを含む、半田材検査方法。
【請求項13】
前記基材は、プリント基板に前記半田材を印刷するための印刷用マスクであり、
前記複数の領域は、前記印刷用マスクの前記プリント基板が当接する印刷領域の周囲の検査領域内にある、請求項12に記載の半田材検査方法。
【請求項14】
スキージが前記印刷用マスクを摺動することによって前記印刷領域内のプリント基板上に半田材の印刷を行なうとともに、前記印刷領域の側方の検査領域上の前記半田材を平坦化する、請求項13に記載の半田材検査方法。
【請求項15】
前記受光データは、前記拡散反射光のうちの特定波数の検査対象光強度を含み、
前記特定波数は、半田材に含まれる塩が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の半田材検査方法。
【請求項16】
前記塩は、カルボン酸塩である、請求項15に記載の半田材検査方法。
【請求項17】
前記受光データは、前記拡散反射光のうちの特定波数の検査対象光強度を含み、
前記特定波数は、半田材に含まれる酸が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の半田材検査方法。
【請求項18】
前記酸は、カルボン酸である、請求項17に記載の半田材検査方法。
【請求項19】
前記受光データは、前記拡散反射光のうちの特定波数の検査対象光強度を含み、
前記特定波数は、半田材に含まれる金属酸化物が吸収する赤外線の波数帯域に含まれる波数である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の半田材検査方法。
【請求項20】
前記金属酸化物は、酸化錫である、請求項19に記載の半田材検査方法。
【請求項21】
印刷回数毎の前記半田材の前記劣化度を示す特性値を監視する工程と、
前記特性値が予め設定された値より大きくなったことを報知する工程とを含む、請求項12〜20のいずれか1項に記載の半田材検査方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図25】
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【図26】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図1】
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【図23】
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【図24】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2010−38545(P2010−38545A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197984(P2008−197984)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】