説明

単結晶材料の面方位合わせ装置および面方位合わせ方法

【課題】顕微鏡を使用せず、作業効率を向上させ、かつ、高精度で切断面に結晶方位面を得ることができる単結晶材料の面方位合わせ装置および単結晶材料のスライス方法を提供する。
【解決手段】面方位合せ装置(12)の回転部(12a)は、回転変位量が調整可能かつ固定可能に、固定部(12b)に対して回転可能であり、かつ、ワイヤソー(4)の走行方向と同じ方向に直線状の往復移動が可能である。単結晶材料(10)の保持テーブル(11)に設けられた回転部(11a)は、単結晶材料(10)を固定可能であり、固定部(11b)に対し、回転変位量が調整可能かつ固定可能に取り付けられる。モニタ装置(5)は、画面を2分割して使用し、第1カメラ(6a)が撮影する視野を第1画面に映し出し、かつ、第2カメラ(6b)が撮影する視野を第2画面に映し出す。並んだ画像が一直線状となるように、回転部(11a)または回転部(12a)を回動調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望のウェハを得るために、ワイヤソーにより単結晶材料を切断する際に、切断面が所定の結晶方位面となるように、単結晶材料の結晶方位合わせを行うための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶材料、特に酸化物単結晶インゴットからなる単結晶材料から、ウェハを得る際には、ウェハの切断面が所定の結晶方位であることが必要である。まず、単結晶材料の結晶方位面を、単結晶材料の長手方向に対して垂直となるように結晶端部を切断、調整する。この端面加工によって、単結晶材料を、その加工端面と平行に切断すれば、結晶方位面に合わせて切断されたウェハが得られる。
【0003】
このためには、ワイヤソーの切断方向と、単結晶材料の結晶面の方位、即ち加工端面を一致させる必要がある。このため、従来より、単結晶材料の面方位を合わせるための装置が用いられている。
【0004】
従来の単結晶材料の面方位合わせ装置としては、ワイヤソーの走行方向に垂直な軸(θ軸)周りの角度調整機構を介して台座に備えられるX・Y・Z軸位置決めステージと、該ステージ上に設けられた顕微鏡とを一体的に備えている。
【0005】
単結晶材料の面合わせ方法の具体的な手順としては、まず、ワイヤの走行方向と、X軸方向に関する位置決めステージ(X軸位置決めステージ)の移動方向との平行度合いを、顕微鏡を用いて測定する。このため、顕微鏡の視野の中にあるヘアーカーソルとワイヤの側端面像を合わせておき、ワイヤの走行方向に沿って、X軸位置決めステージをX軸方向に移動させ、ヘアーカーソルに対してワイヤの像がX軸と垂直方向に変位する量を測り、X軸方向に関するワイヤの移動量との比から、ワイヤの走行方向のX軸に対する傾き(勾配)を求める。
【0006】
次に、単結晶材料の加工端面に、接着剤を用いてゲージブロックを取り付け、前述と同様に顕微鏡を用いて、ゲージブロックのエッジ部がX軸位置決めステージの移動方向となす傾き(勾配)を求める。
【0007】
得られた2つの勾配に基づいて、単結晶材料を保持する自在テーブルに設けている微調整テーブルをその角度調整機構により調整旋回させることで、ゲージブロックをワイヤの走行方向と合わせ、これにより該ワイヤの走行方向を単結晶材料の加工端面に平行とする。
【0008】
なお、単結晶材料の加工端面における上下方向の平行性は、加工端面の上下にダイヤルゲージを当てて確認し、単結晶材料を保持する自在テーブルの角度調整機構により調整される。
【0009】
しかしながら、顕微鏡を用いた従来の方法では、立体的なワイヤの側端面に焦点を合わせ、位置を読み取ることが困難である。また、ワイヤの表面には凹凸があるため、直径方向にバラツキが生じている。このため、ワイヤの走行方向とX軸位置決めステージの移動方向とがなす傾きを求めるには、熟練の技術が必要とされ、かつ、作業効率が悪いという問題がある。また、単結晶材料の加工端面に貼り合わせたゲージブロックのエッジ部に、顕微鏡の焦点を合わせる際にも、熟練の技術が必要とされ、かつ、作業効率が悪いという問題がある。
【0010】
特許文献1は、棒状の単結晶材料の中心線を正確に位置決めして該単結晶材料を接着した接着治具を、切断装置の取り付け治具に正確に位置決めして取り付け、さらに予め測定しておいた単結晶材料の中心線からの結晶方位のズレ情報に基づいて単結晶材料を傾動機構で傾けて補正する単結晶材料切断時の結晶方位合わせ方法を開示する発明である。しかし、当該発明において最終的に必要なのはワイヤソーの走行方向と結晶方位の一致であるが、これらの間に、単結晶材料の結晶方位と単結晶材料の中心線を調整する傾動操作の精度、単結晶材料の中心線と接着治具の位置精度、接着治具と取り付け治具の位置精度、取付治具と傾動機構の位置精度、傾動機構とワイヤソーの位置精度といった多くの精度上の要素が介在し、これら個々の要素の組み合わせにおいて位置出し誤差が累積するといった問題があった。また、ワイヤソーと上記各治具との具体的位置出し方法や測定器具が十分開示されていないといった問題もある。
【0011】
特許文献2は、柱状の単結晶インゴットの基準断面に接合した他の単結晶の劈開片の2つの劈開面が交差する稜とワイヤソーの走行方向をいずれも顕微鏡で測定してこれらの間の平行出しを行った上で単結晶インゴットの切断を行う切断方法を開示する発明である。この発明は、上記の背景技術に記載した顕微鏡を用いた従来技術のかかえる問題を解消していない。
【0012】
特許文献3は、実施手段として、ワイヤソーの走行方向を顕微鏡で測定し、単結晶インゴットの端面をダイヤルゲージで測定する単結晶インゴットの切断方法を開示する発明である。ワイヤソーの測定に関しては、上記の背景技術に記載した顕微鏡を用いた従来技術のかかえる問題を解消していない。
【特許文献1】特開平7−308920号公報
【特許文献2】特開2002−331518号公報
【特許文献3】特開2004−268509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、かかる顕微鏡を用いた目視による位置合わせ作業を除去することにより、作業効率を向上させ、かつ、高精度で切断面を単結晶材料の結晶面と一致させうる単結晶材料の面方位合わせ装置および面方位合わせ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る単結晶材料の面方位合わせ装置は、保持テーブルに保持された単結晶材料の加工端面の面方位と、該単結晶材料を切断するワイヤソーの走行方向とを合わせるために用いられる。
【0015】
特に、本発明に係る装置は、台座と、該台座上に、所定の間隔をおいて一直線上に配置され、前記ワイヤソーのワイヤのうちの1つ、および/または、前記単結晶材料の加工端面に貼着されているブロックゲージの端縁を、鉛直方向から撮影する第1カメラおよび第2カメラと、画面の略中心を通る線で第1画面および第2画面に分割され、前記第1カメラによる撮像を該第1画面に表示し、かつ、前記第2カメラによる撮像を該第2画面に表示するモニタ装置とを備えることを特徴とする。
【0016】
かかる装置を使用することにより、所定間隔にある前記第1のカメラおよび第2のカメラにより前記ワイヤソーのワイヤのうち1つを撮影し、前記第1画面および前記第2画面に表示されたワイヤの撮像が一直線状であれば、前記ワイヤソーの走行方向と、該面方位合わせ装置の前記2つのカメラの伸長方向とが平行であると判断することができる。一方、上記のワイヤの撮像が一直線状になければ、前記ワイヤソーの走行方向と、該装置のX軸とが平行となっていないと判断することができる。
【0017】
本発明の装置では、前記面方位合せ装置が、台座と、該台座に載置され、該台座に対する垂直軸周りの回転変位量が調整可能な回転部とからなり、前記第1カメラおよび第2カメラが、所定の間隔をおいて一直線上にあって、該回転部に配置されていることが好ましい。
【0018】
かかる態様の装置を用いて、所定間隔にある前記第1のカメラおよび第2のカメラにより前記ワイヤソーのワイヤのうち1つを撮影し、前記台座に対して前記回転部を回転させることにより、前記第1画面および前記第2画面に表示される前記ワイヤの撮像が一直線状となるように調整することが可能となる。
【0019】
また、所定間隔にある前記第1のカメラおよび第2のカメラにより前記単結晶材料の加工端面に貼着されているブロックゲージの端縁を撮影し、前記単結晶材料を保持する保持テーブルの垂直軸周りの角度調整機構により、前記第1画面および前記第2画面に表示される前記ブロックゲージの端縁の撮像が一直線状となるように調整することが可能となる。
【0020】
前記第1カメラおよび第2カメラが、前記台座または前記回転部に取り付けられる一方のカメラと他方のカメラが前記一直線上において相互にスライドでき、前記2つのカメラの間隔が拡縮可能となっていることが好ましい。
【0021】
これにより、かかる装置を任意の大きさの単結晶材料について適用できる。また、ダイヤルゲージを該カメラが配置される一直線上にスライド可能に備えることにより、前記ワイヤソーの走行方向とダイヤルゲージのスライド方向を一致させた上で、前記ダイヤルゲージの測定子を前記単結晶材料の加工端面に当接させた状態で、前記ダイヤルゲージをスライドさせて、該加工端面の直径方向のワイヤ走行方向に対する勾配を測定し、該勾配に基づいて、前記単結晶材料を保持する保持テーブルの垂直軸周りの角度調整機構により、ワイヤ走行方向に一致するように調整することが可能となる。この場合において、前記2台のカメラとダイヤルゲージを回転台に載置し、所定間隔にある前記第1のカメラおよび第2のカメラにより前記ワイヤソーのワイヤのうち1つを撮影し、前記台座に対して前記回転部を回転させることにより、前記第1画面および前記第2画面に表示される前記ワイヤの撮像が一直線状となるように調整できる。これによって、容易に該カメラが配置される一直線とワイヤの走行方向を平行とすることができる。
【0022】
なお、本発明の装置を用いて、所定間隔にある前記第1のカメラおよび第2のカメラにより前記ワイヤソーのワイヤのうち1つおよび前記単結晶材料の加工端面に貼着されているブロックゲージの端縁を同時あるいは順次撮影し、ワイヤおよびブロックゲージの端縁の撮像を、前記第1画面および前記第2画面に同時に重ねて表示させて、該ワイヤおよびブロックゲージの端縁の撮像相互の間隔が、第1画面と第2画面で同一となるように、前記単結晶材料を保持する保持テーブルもしくは前記カットソーが載置されるテーブルの垂直軸周りの角度調整機構を調整することにより、ワイヤソーの走行方向と単結晶材料の結晶方位とを工程数少なく一致させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の装置および方法により、予め測定された結晶方位に沿って形成された加工端面を基準として、効率的、かつ、高精度で、切断面が単結晶材料の結晶面方位と一致するウェハを得ることができる。このように、所定の結晶方位を有する高精度なウェハを、従来と比べて短縮された作業時間で、効率よく製造することができる。
【0024】
また、従来は顕微鏡を使用し、無理な姿勢で測定を行っていた作業が、カメラを使用することで、撮影画像を見るのみの作業で済み、作業者への負担を軽減することができる。さらに、所定精度において作業者の個人差がなく、正確かつ安定した制御を行うことができる。
【0025】
また、ワイヤとブロックゲージとを同時あるいは順次撮影して同時に重ねて画面に表示する態様では、ワイヤとブロックゲージの相対的平行度を直接的に把握して単結晶材料保持テーブルの角度調整機構を操作し、これらの平行出しを行うので、面方位合せ装置とワイヤの走行方向との平行出しを行う必要がなく、このため、面方位合せ装置操作手順の簡略化や所定の勾配の計算の省略化がなされ、さらなる効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図面を参照して、本発明の一実施例の単結晶材料の面方位合わせ装置を説明する。図1には、本発明に係る装置の一実施例を斜視図で示す。図2に、図1のモニタを斜視図で示す。
【0027】
図1には、ワイヤソー(4)と、単結晶材料(10)を保持する、回転変位量が調整可能な回転部(11a)を備える保持テーブル(11)とを合わせて示す。なお、保持テーブル(11)は、鉛直方向に移動して、単結晶材料(10)を切断可能とする。また、その他の方向に関する移動機構、回転機構を備えていてもよい。また、ワイヤソー(4)が載置されるテーブル(図示せず)に回転機構を備えてもよい。
【0028】
図1に示される面方位合わせ装置(12)は、回転部(12a)と、該回転部(12a)上に、所定の間隔をおいて一直線上に配置された、第1カメラ(6a)および第2カメラ(6b)からなる2つのカメラとを基本的に備える。かかる第1カメラ(6a)および第2カメラ(6b)は、いずれも鉛直方向に視野を有している。図示の例では、下方から上方に向けて視野を有しているが、ワイヤソーと単結晶材料の位置が上下逆になる構成においては、下方に向けて視野を有するようにしてもよい。あるいは、2台のカメラを、上下に位置する単結晶材料とワイヤソーの加工端面の間に設置し、ワイヤを撮影する際にはカメラを下方に向けて、また、単結晶材料の加工端面を撮影するときにはカメラを上方に向けて撮影するといったように、カメラの位置を変えないで、向きを変えながら順次撮影してもよい。
【0029】
第1カメラ(6a)および第2カメラ(6b)としては、CCDカメラを使用することが好ましいが、CCDカメラに限定されることなく、撮影の機能を有するCMOSカメラなど各種のカメラを使用することができる。
【0030】
また、本発明のモニタ装置(5)は、画面の略中心を通る線で第1画面および第2画面に分割され、第1カメラ(6a)による撮像(4a)または撮像(7a)を第1画面に表示し、かつ、第2カメラ(6b)による撮像(4b)または撮像(7b)を第2画面に表示するモニタ装置を備える。かかるモニタも公知のものでよく、上記情報処理を行うハードウェアないしはソフトウェアを内部もしくは外部に備えていればよい。
【0031】
具体的には、面方位合せ装置(12)を、たとえば、直径76.2mm(3インチ)の単結晶インゴットからなる単結晶材料(10)について適用する場合、両カメラの間隔を75mmにセットし、モニタ装置(5)に映し出す倍率を30倍に設定する。
【0032】
本発明に係る面方位合せ装置(12)において、回転部(12a)およびカメラ(6a、6b)は固定式でもよいが、カメラ(6a、6b)が取り付けられる面方位合せ装置(12)は、台座(12b)と、台座(12b)に対する垂直軸周りの回転変位量が調整可能な回転部(12a)とからなることが好ましい。具体的には、垂直軸周りの角度調整機構を介したX・Y・Z軸位置決めステージが採用できる。少なくとも、X軸位置決めステージ(12d)を備え、カメラ(6a、6b)をX軸位置決めステージ(12d)に配置し、2台のカメラの伸長方向をX軸方向と平行に設定することが好ましい。
【0033】
X軸位置決めステージ(12d)は、一方のカメラと他方のカメラを前記X軸に平行な一直線上において相互にスライドでき、2つのカメラ(6a、6b)の間隔を拡縮可能としていることが好ましい。
【0034】
使用の際における、面方位合せ装置(12)と、ワイヤソー(4)と、単結晶材料(10)の位置関係は次の通りである。すなわち、面方位合せ装置(12)の第1カメラ(6a)および第2カメラ(6b)は、略鉛直方向に上向きとなっている。また、ワイヤソー(4)は、略水平に走行し、たとえば、2つのカメラ(6a、6b)は、ワイヤソー(4)のうち同じ1つのワイヤの下に配置される。一方、単結晶材料(10)は、加工端面は上下方向に略鉛直であり、加工端面の左右方向は、ワイヤソー(4)の進行方向とほぼ同じ方向を向いている。このうち、加工端面の左右方向における結晶方位と、ワイヤソー(4)の進行方向とのズレ(勾配)を補正するために、本発明の面方位合せ装置(12)が使用されることになる。
【0035】
なお、ワイヤソー(4)における切断機構は、図示しない一方のリールから送り出されたワイヤが、複数の溝が入ったワークローラー(3a、3b)に巻付けられることにより、平行な複数のワイヤの配列が形成され、図示しない他方のリールに、高速走行して巻き取られる。単結晶インゴットからなる単結晶材料(10)を切断する際には、冷却液が供給されつつ高速走行しているワイヤ配列に、単結晶材料(10)を押し当てる。さらに、単結晶材料(10)を保持する保持テーブル(11)を鉛直方向に一定の速度で降下させることで、単結晶材料(10)が多数枚の薄板状のウェハに切断される。
【0036】
また、単結晶インゴットからなる単結晶材料(10)には、薄板状のウェハになった際、結晶方位がわからなくならないように、単結晶材料(10)の側面の一部の長手方向にオリエンテーションフラットが形成されている。
【0037】
本発明に係る面方位合せ装置(12)を使用して、単結晶材料の面方位合わせを行う方法は次の通りである。
【0038】
まず、第1カメラ(6a)と第2カメラ(6b)とを所定間隔に設定し、ワイヤソー(4)に対して面方位合せ装置(12)を、両方のカメラ(6a、6b)の視野が、平行に配された複数のワイヤ配列のうちの1つの同じワイヤを捉えるように、配置する。
【0039】
面方位合せ装置(12)の2つのカメラ(6a、6b)はX軸方向に間隔を置いて設置されている。したがって、上記ワイヤを撮影し、モニタ装置(5)において、それぞれのカメラからの映像を第1画面および第2画面に表示した場合、ワイヤソー(4)の走行方向がX軸方向を向いている場合、すなわち、2つのカメラ(6a、6b)を結ぶ直線とワイヤソー(4)が平行である場合、両画面におけるワイヤの撮像(4a、4b)は一直線状となる。一方、ワイヤソー(4)と2つのカメラ(6a、6b)を結ぶ直線(あるいはこれに平行なX軸)が平行でない場合には、両画面におけるワイヤの撮像(4a、4b)は図2の左上に示すとおり、一直線状にならず、互いにずれて表示される。
【0040】
なお、X軸位置決めステージ(12d)上の2つのカメラ(6a、6b)の間隔を拡縮させて、その間、モニタ装置(5)に表示される2つのワイヤの撮像(4a、4b)が常に一直線状となっていることを確認してもよい。回転部(12a)を有しない発明の態様において、モニタ装置(5)に表示される2つのワイヤの撮像(4a、4b)を一直線状とするには、2台のカメラの視野位置の、X軸からの距離が2台でそれぞれ等しくなるように精度を持って取付け、調整する。
【0041】
回転部(12a)を有する発明の態様においては、ワイヤの撮像(4a、4b)がずれているときは、面方位合せ装置(12)の調整ツマミ(12c)により、回転部(12a)を垂直軸(θ軸)周りに回動させて、図2に示すように、両者の撮像が一直線状となるようにし、一致後に回転部(12a)を台座(12b)に対して固定する。これにより、ワイヤの走行方向と、第1カメラ(6a)および第2カメラ(6b)の撮影視野の伸長線(X軸方向)を平行とすることができる。
【0042】
一方、単結晶材料(10)の加工端面に、中心を通り、端部からはみ出るようにブロックゲージ(7)を貼り付け、単結晶材料(10)と共にブロックゲージ(7)を下降させ、その端縁がカメラの焦点範囲に入るよう位置決めした後、同様に、所定間隔にある第1のカメラ(6a)および第2のカメラ(6b)により単結晶材料(10)の加工端面に貼着されているブロックゲージ(7)の端縁を撮影し、撮像をモニタ装置(5)に表示させる。そして、固定部(11b)の垂直軸周りの角度調整機構により、単結晶材料(10)が保持される回転部(11a)を回転させ、図2に示すように、第1画面および第2画面に表示されるブロックゲージの端縁の撮像(7a、7b)が一直線状となるように調整する。これにより、第1カメラ(6a)および第2カメラ(6b)の撮影視野の伸長線(X軸方向)と、単結晶材料(10)の加工端面とが平行となり、よって、ワイヤソー(4)の走行方向と、単結晶材料(10)の加工端面が平行、すわわち、単結晶材料(10)の結晶方位とが一致することとなる。なお、ブロックゲージ(7)の撮影に際しても、カメラの間隔をX軸方向に拡縮させてもよい。
【0043】
図面を参照して、本発明の異なる実施態様の単結晶材料の面方位合わせ装置を説明する。図3には、本発明の単結晶材料の面方位合わせ装置の異なる実施態様を斜視図で示す。図4に、図3のモニタを斜視図で示す。
【0044】
図3および図4に示した単結晶材料の面方位合わせ装置では、図1および図2に示した単結晶材料の面方位合わせ装置に加えて、さらに、X軸位置決めステージ(12d)に固定され、単結晶材料(10)の加工端面の平行度を測定するダイヤルゲージ(1)を備える。
【0045】
図3および図4に示した単結晶材料の面方位合わせ装置を使用した方法では、上述と同様に、まず、モニタ装置(5)の両画面に表示されるワイヤの撮像(4a、4b)が一直線状となるように、調整を行う。
【0046】
ダイヤルゲージを用いる場合は、測定時にダイヤルゲージが移動するX軸がワイヤの走行方向と平行である必要がある。上記ワイヤの撮像(4a、4b)が画面上で一直線状になるよう調整した後は、ワイヤの走行方向と2台のカメラの伸長方向が平行となり、後者が測定に用いられるので、2台のカメラの伸長方向とX軸が平行である必要がある。
【0047】
ワイヤの方向とX軸を平行とする調整方法は、一方のカメラで撮影したワイヤの撮像をモニタ装置(5)に表示した状態でX軸位置決めステージ(12d)を移動させ、その画像がワイヤの走行方向に垂直方向に移動しないように回転部(12a)を調整する。これで、ワイヤの走行方向とX軸は平行となる。
【0048】
この状態で、ダイヤルゲージ(1)の測定子(2)を単結晶材料(10)の加工端面に当接させた状態で、X軸位置決めステージ(12d)をX軸方向(水平方向)に移動させて、加工端面の直径方向のX軸に対する勾配を測定する。測定された勾配に基づいて、単結晶材料(10)を保持する固定部(11b)の垂直軸周りの角度調整機構により、回転部(11a)を回動させて、加工端面がX軸方向に一致するように調整する。
【0049】
より具体的には、測定子(2)は、加工端面の水平方向における外径端部から内側に5mm入った位置から、反対側の外径端部から内側に5mm入った位置まで、走査する。最初の位置で測定子(2)が加工端面に接触した状態で、ダイヤルゲージ(1)の目盛を、加工端面のズレが分かるように、0(ゼロ)にしておく。その後、回転部(11a)を回動させて、加工端面がX軸方向に一致するための調整を加えながら、X軸に沿って測定子(2)を往復動させて、ダイヤルゲージ(1)の測定値を読み取る。全測定範囲で測定値が、たとえば2μm以内のような許容値以下となったことを確認したら、平行が得られているので、回転部(11a)を保持テーブル(11b)に対して固定する。
【0050】
図面を参照して、本発明のさらに異なる実施態様の単結晶材料の面方位合わせ装置を説明する。図5には、本発明の単結晶材料の面方位合わせ装置の異なる実施例を斜視図で示す。図6に、図5のモニタを斜視図で示す。
【0051】
図5および図6に示した単結晶材料の面方位合わせ装置および方法では、上述と同様に、面方位合せ装置(12)のカメラ(6a、6b)により、ワイヤのうちの1つを撮影した後、単結晶材料(10)と一体のブロックゲージ(7)を下降させ、単結晶材料(10)の加工端面に貼着したブロックゲージ(7)の端縁をカメラの焦点範囲に入れ、撮影する。なお、図示では、保持テーブル(11)は、上方に上昇した状態になっているが、可能な限り下降させ、ワイヤとブロックゲージ(7)の端縁の両方を近接させた状態で、カメラの焦点範囲内に収め、重ねて同時に撮影することが好ましい。
【0052】
そして、ワイヤおよびブロックゲージ(7)の端縁の撮像が相互に平行となるように、保持テーブル(11)もしくはワイヤソー(4)が載置されるテーブル(図示せず)の垂直軸周りの角度調整機構を調整する。
【0053】
この場合、第1画面および第2画面のそれぞれに重ねて表示される、ワイヤの像(4a、4b)とブロックゲージの像(7a、7b)の左右それぞれの像が一直線状でなく、ズレが生じる場合がある。このズレは、それぞれ、ワイヤの走行方向と2台のカメラの伸長方向、および、ブロックゲージの端縁と2台のカメラの伸長方向がそれぞれ平行でないことを示している。しかし、2台のカメラの伸長方向がどのようであっても、その修正は必要なく、ワイヤの像のズレとブロックゲージの像のズレ、すなわち撮像(4a)と撮像(7a)の間隔と、撮像(4b)と撮像(7b)の間隔とが同じになるように、単結晶材料(10)を保持する保持テーブル(11)の垂直軸周りの角度を調整すればよい。
【0054】
これにより、ワイヤソー(4)の走行方向と、単結晶材料(10)の加工端面の平行性を、それぞれと面方位合せ装置(12)によるX軸方向の調整を図ることなく、担保することができる。よって、面方位合せ装置(12)に垂直軸周りの角度調整機構を設ける必要がなく、また、その手順が省略されるので、作業効率が向上する。ただし、この場合でも、他の実施態様と同様に、面方位合せ装置(12)によるX軸方向の調整を行うプロセス(すなわち、それぞれの撮像を両画面で一直線状となるようにする)を設けてもよい。
【0055】
なお、本発明の装置および方法に、さらに単結晶材料のZ軸方向(鉛直方向)の平行性を担保するために、Z軸ステージに設けられたダイヤルゲージを設けて、単結晶材料の保持方向の調整を図るなど、その他の測定のために必要な要素およびプロセスを追加することには、何らの支障を及ぼすものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の単結晶材料の面方位合わせ装置の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1のモニタを示す斜視図である。
【図3】本発明の単結晶材料の面方位合わせ装置の異なる実施例を示す斜視図である。
【図4】図3のモニタを示す斜視図である。
【図5】本発明の単結晶材料の面方位合わせ装置の異なる実施例を示す斜視図である。
【図6】図5のモニタを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ダイヤルゲージ
2 測定子
3a、3b ワークローラー
4 ワイヤソー
4a 第1カメラで撮影したワイヤの像
4b 第2カメラで撮影したワイヤの像
5 モニタ装置
6a 第1カメラ
6b 第2カメラ
7 ブロックゲージ
7a 第1カメラで撮影したブロックゲージの像
7b 第2カメラで撮影したブロックゲージの像
9 カメラ台
10 単結晶材料
11 保持テーブル
11a 回転部
11b 固定部
11c 調整ツマミ
12 面方位合せ装置
12a 回転部
12b 台座
12c 調整ツマミ
12d X軸位置決めステージ
14 ワークローラーフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持テーブルに保持された単結晶材料の加工端面の面方位と、該単結晶材料を切断するワイヤソーの走行方向とを合わせるための単結晶材料の面方位合わせ装置であって、
台座と、該台座上に、所定の間隔をおいて一直線上に配置され、前記ワイヤソーのワイヤのうちの1つ、および/または、前記単結晶材料の加工端面に貼着されているブロックゲージの端縁を、鉛直方向から撮影する第1カメラおよび第2カメラと、画面の略中心を通る線で第1画面および第2画面に分割され、前記第1カメラによる撮像を該第1画面に表示し、かつ、前記第2カメラによる撮像を該第2画面に表示するモニタ装置とを備える、単結晶材料の面方位合わせ装置。
【請求項2】
前記台座上に載置され、該台座に対する垂直軸周りの回転変位量が調整可能な回転部を備え、該回転部に前記第1カメラおよび第2カメラが配置される、請求項1に記載の単結晶材料の面方位合わせ装置。
【請求項3】
前記第1カメラおよび第2カメラが、前記台座または前記回転部に取り付けられる一方のカメラと他方のカメラが前記一直線上において相互にスライドでき、前記2つのカメラの間隔が拡縮可能となっている、請求項1または2に記載の単結晶材料の面方位合わせ装置。
【請求項4】
保持テーブルに保持された単結晶材料の加工端面の面方位と、該単結晶材料を切断するワイヤソーの走行方向とを合わせるための単結晶材料の面方位合わせ装置であって、
台座と、該台座上に所定の間隔をおいて一直線上にスライド可能に配置され、前記ワイヤソーのワイヤのうちの1つを、鉛直方向から撮影する第1カメラおよび第2カメラと、前記単結晶材料の加工端面のワイヤ走行方向に対する勾配を測定するダイヤルゲージを、該カメラが配置される一直線上にスライド可能に備え、
画面の略中心を通る線で第1画面および第2画面に分割され、前記第1カメラによる撮像を該第1画面に表示し、かつ、前記第2カメラによる撮像を該第2画面に表示するモニタ装置とを備える、単結晶材料の面方位合わせ装置。
【請求項5】
前記台座上に載置され、該台座に対する垂直軸周りの回転変位量が調整可能な回転部を備え、該回転部に前記第1カメラおよび第2カメラと、前記ダイヤルゲージを、それぞれ一直線上にスライド可能に取り付けた請求項4記載の位合わせ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のずれか一項に記載の単結晶材料の面方位合わせ装置を使用して、所定間隔にある前記第1のカメラおよび第2のカメラにより前記ワイヤソーのワイヤのうち1つを撮影し、前記第1画面および前記第2画面に表示されたワイヤの撮像が一直線状であれば、前記ワイヤソーの走行方向と、前記面方位合わせ装置の前記2つのカメラの伸長方向とが平行であると判断する、単結晶材料の面方位合わせ方法。
【請求項7】
請求項2に記載の単結晶材料の面方位合わせ装置を使用して、所定間隔にある前記第1のカメラおよび第2のカメラにより前記ワイヤソーのワイヤのうち1つを撮影し、前記台座に対して前記回転部を回転させることにより、前記第1画面および前記第2画面に表示される前記ワイヤの撮像が一直線状となるように調整する、単結晶材料の面方位合わせ方法。
【請求項8】
請求項2に記載の単結晶材料の面方位合わせ装置を使用して、所定間隔にある前記第1のカメラおよび第2のカメラにより前記単結晶材料の加工端面に貼着されているブロックゲージの端縁を撮影し、前記単結晶材料を保持する保持テーブルの垂直軸周りの角度調整機構により、前記第1画面および前記第2画面に表示される前記ブロックゲージの端縁の撮像が一直線状となるように調整する、単結晶材料の面方位合わせ方法。
【請求項9】
請求項1に記載の単結晶材料の面方位合わせ装置を使用して、所定間隔にある前記第1のカメラおよび第2のカメラにより前記ワイヤソーのワイヤのうち1つおよび前記単結晶材料の加工端面に貼着されているブロックゲージの端縁を同時あるいは順次撮影し、ワイヤおよびブロックゲージの端縁の撮像を、前記第1画面および前記第2画面に同時に重ねて表示させて、該ワイヤおよびブロックゲージの端縁の撮像相互の間隔が、第1画面と第2画面とで同一となるように、前記単結晶材料を保持する保持テーブルもしくは前記カットソーが載置されるテーブルの垂直軸周りの角度調整機構を調整する、単結晶材料の面方位合わせ方法。
【請求項10】
請求項4に記載の単結晶材料の面方位合わせ装置を使用して、所定間隔にある前記第1のカメラおよび第2のカメラにより前記ワイヤソーのワイヤのうち1つを撮影し、前記第1画面および前記第2画面に表示される前記ワイヤの撮像が一直線状であり、前記ワイヤソーの走行方向が前記2つのカメラの伸長方向に一致していることを確認した上で、前記ダイヤルゲージの測定子を前記単結晶材料の加工端面に当接させた状態で、該ダイヤルゲージを前記2つのカメラの伸長方向に移動させて、該加工端面の直径方向の2つのカメラの伸長方向に対する勾配を測定し、該勾配に基づいて、前記単結晶材料を保持する保持テーブルの垂直軸周りの角度調整機構により、該加工端面が前記2つのカメラの伸長方向に一致するように調整する、単結晶材料の面方位合わせ方法。
【請求項11】
請求項5に記載の単結晶材料の面方位合わせ装置を使用して、所定間隔にある前記第1のカメラおよび第2のカメラにより前記ワイヤソーのワイヤのうち1つを撮影し、前記台座に対して前記回転部を回転させることにより、前記第1画面および前記第2画面に表示される前記ワイヤの撮像が一直線状となるように調整し、さらに前記ダイヤルゲージの測定子を前記単結晶材料の加工端面に当接させた状態で、前記ダイヤルゲージを2つのカメラの伸長方向に移動させて、該加工端面の直径方向の2つのカメラの伸長方向に対する勾配を測定し、該勾配に基づいて、前記単結晶材料を保持する保持テーブルの垂直軸周りの角度調整機構により、該加工端面が前記2つのカメラの伸長方向に一致するように調整する、単結晶材料の面方位合わせ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−23233(P2010−23233A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183709(P2008−183709)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】