印刷方法および印刷装置
【課題】 素子形成材料を基板上の凹部に印刷する際に、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出すことを抑制することができる、印刷方法および印刷装置を提供する。
【解決手段】 予め求められたX方向における許容位置ずれ範囲内に、ステージ10に支持された基板90に対して凸版印刷版50を位置決めした状態で、基板90上の複数の凹部9R,9Reに、凸版印刷版50に付着した素子形成材料を、転写機構30により転写し、この転写機構30による転写動作と並行して、素子形成領域よりX方向における基板上の両外側領域90cに、素子形成材料に含まれる溶媒を少なくとも含む補助材料を補助部7により供給する。
【解決手段】 予め求められたX方向における許容位置ずれ範囲内に、ステージ10に支持された基板90に対して凸版印刷版50を位置決めした状態で、基板90上の複数の凹部9R,9Reに、凸版印刷版50に付着した素子形成材料を、転写機構30により転写し、この転写機構30による転写動作と並行して、素子形成領域よりX方向における基板上の両外側領域90cに、素子形成材料に含まれる溶媒を少なくとも含む補助材料を補助部7により供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、有機EL(エレクトロルミネセンス)表示装置用の基板に対して発光材料などの素子形成材料を印刷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許第4280301号公報(特許文献1)には、有機EL表示装置用の基板上に形成された複数のバンク間(凹部)に有機EL材料と溶媒を含む素子形成材料(インク)を凸版印刷法により印刷する技術が記載されている。また、上記凸版印刷法を実施するための印刷装置として、例えば、特開2008−6706号公報(特許文献2)に開示された印刷装置が知られている。この印刷装置は凸版印刷版が装着された版胴と基板を支持するステージを備える。そして、印刷装置は、例えば、赤色発光材料が付着した凸版印刷版をステージ上の基板に当接させて、基板の素子形成領域内にストライプ状に形成された、赤色発光層を形成すべき複数の凹部(赤色用凹部)内に赤色発光材料を印刷する。その後、印刷装置により、赤色用凹部の一方側に隣接する緑色用凹部に緑色発光材料が印刷され、さらに緑色用凹部の一方側に隣接する青色用凹部に青色発光材料が印刷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4280301号公報(例えば、請求項8、図2)
【特許文献2】特開2008−6706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上記印刷装置により赤色用凹部内に赤色発光材料を印刷する際に、基板の端部付近において、赤色用凹部に隣接する緑色用凹部に赤色発光材料が溢れ出す場合がある。その後、緑色用凹部に緑色発光材料を印刷すると、溢れ出した赤色発光材料と、緑色発光材料とが緑色用凹部内で混ざり合い、混色が生じるという問題が発生する。また、例えば、正孔輸送層を形成するための正孔輸送材料を凹部に印刷する際にも、上述のように隣接する凹部に正孔輸送材料が溢れ出すと、凹部内に所望量の正孔輸送材料を印刷することができないという問題が発生する。
【0005】
本発明の目的は、上述のような点に鑑み、発光材料または正孔輸送材料などを含む素子形成材料を基板上の凹部に印刷する際に、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出すことを抑制することができる、印刷方法および印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明(印刷方法)は、第1の方向に延びるとともに第1の方向と直交する第2の方向に沿って互いに平行に基板上に配列された複数のバンクにより、基板上の素子形成領域内に形成された複数の凹部に対して、印刷版に付着した素子形成材料を転写する印刷方法において、基板に対する印刷版の第2方向における許容位置ずれ範囲を求める準備工程と、準備工程で求めた許容位置ずれ範囲内に、基板に対して印刷版を位置決めした状態で、基板上の複数の凹部に対して印刷版に付着した素子形成材料を転写する転写工程と、転写工程と並行して、または、転写工程に先立って実行され、素子形成領域より第2方向における基板上の両外側領域に、素子形成材料に含まれる溶媒を少なくとも含む補助材料を供給する補助材料供給工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載される印刷方法において、準備工程が、転写工程にて印刷版に付着した素子形成材料を転写すべき基板上の凹部の内、第2方向において最も外側にある凹部以外の複数の凹部において、転写工程の際に、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出さない、基板に対する印刷版の第2方向における位置ずれ範囲を前記許容位置ずれ範囲として求めることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載される印刷方法において、印刷版が第2方向に配列された複数の凸部を有し、転写工程にて、当該複数の凸部に付着した素子形成材料を前記凹部に転写することを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載される印刷方法において、補助材料供給工程が、転写工程と並行して、印刷版が有する補助部に付着した補助材料を前記両外側領域に転写する工程であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載される印刷方法において、補助材料供給工程が、転写工程の直前に、前記両外側領域に向けてノズルから補助材料を吐出する工程であることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載される印刷方法において、補助材料が素子形成材料であることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明(印刷装置)は、第1の方向に延びるとともに第1の方向と直交する第2の方向に沿って互いに平行に配列された複数のバンクにより、素子形成領域内に形成された複数の凹部を有する基板を支持する支持手段と、素子形成材料が付着した印刷版と、予め求められた第2方向における許容位置ずれ範囲内に、支持手段に支持された基板に対して印刷版を位置決めした状態で、基板上の複数の凹部に、印刷版に付着した素子形成材料を転写する転写手段と、転写手段による転写動作と並行して、または、転写動作の直前に、素子形成領域より第2方向における基板上の両外側領域に、素子形成材料に含まれる溶媒を少なくとも含む補助材料を供給する補助材料供給手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載される印刷装置において、前記許容位置ずれ範囲が、印刷版に付着した素子形成材料を転写すべき基板上の凹部の内、第2方向において最も外側にある凹部以外の複数の凹部において、転写手段による転写動作の際に、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出さない、基板に対する印刷版の第2方向における位置ずれ範囲であることを特徴とする。
【0014】
請求項9に係る発明は、請求項7または請求項8に記載される印刷装置において、印刷版は第2方向に配列された複数の凸部を有し、転写手段は当該複数の凸部に付着した素子形成材料を基板上の複数の凹部に転写することを特徴とする。
【0015】
請求項10に係る発明は、請求7から請求項9のいずれかに記載される印刷装置において、補助材料供給手段が、転写手段による転写動作と並行して、印刷版に設けた補助部に付着する補助材料を前記両外側領域に転写することを特徴とする。
【0016】
請求項11に係る発明は、請求7から請求項9のいずれかに記載される印刷装置において、補助材料供給手段が、補助材料を吐出するノズルを有し、転写手段による転写動作の直前に、前記両外側領域に向けてノズルから補助材料を吐出することを特徴とする。
【0017】
請求項12に係る発明は、請求項7から請求項11のいずれかに記載される印刷装置において、補助材料供給手段が補助材料として素子形成材料を前記両外側領域に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1から請求項12のいずれかに係る発明によれば、素子形成材料を基板上の凹部に印刷する際に、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出すことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の要部を示す図である。
【図3】基板を説明するための図である。
【図4】凸版印刷版を説明するための図である。
【図5】転写動作の状態を示す図である。
【図6】第1実施形態の動作の流れを示すフロー図である。
【図7】準備工程を説明するための図である。
【図8】素子形成材料が凹部から溢れ出す状態を示す図である。
【図9】転写動作と補助材料供給動作との関係を示す図である。
【図10】補助部の変形例を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態の要部を示す図である。
【図12】第2実施形態の動作の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態を図1、図2に基づいて説明する。図1は本発明に係る印刷装置の第1実施形態を示す斜視図であり、また、図2は第1実施形態の要部を示す図である。
【0021】
印刷装置1は、例えば、有機EL表示装置を製造する過程において、矩形状のガラス基板(以下、単に基板と称す)90の上面に形成された複数のバンク(突起部)8(図3)間(凹部)に素子形成材料(インク)を印刷する。なお、素子形成材料は、例えば、有機EL材料を溶解した溶液であり、有機EL表示装置の素子となる有機層(正孔注入層、正孔輸送層、赤色発光、緑色発光、青色発光の発光層、電子輸送層、電子注入層等のうちで有機物を含む層)を形成するための高分子有機EL材料と、溶媒とを含む。例えば、赤色発光層を形成するための素子形成材料は、赤色発光材料と、溶媒としてのキシレン(主溶媒)およびシクロヘキシルベンゼンなどを含む。なお、キシレンに替えてアニソールを主溶媒として用いても良い。
【0022】
印刷装置1は、主に、基板90を保持するステージ10と、ステージ10を移動させる移動機構20と、ステージ10に保持された基板90に凸版印刷版50に付着した素子形成材料を転写するための転写機構30と、転写機構30に素子形成材料を供給するための供給機構40と、これらを載置する基台60と、昇降テーブル65とを備える。
【0023】
ステージ10は、平板状の外形を有しており、その上面に基板90を水平に支持しつつ図示を省略するチャック機構により固定的に保持する。また、ステージ10は、基台60上に設けられた移動機構20の一対のガイド23に対して主走査方向(Y軸方向)に沿って滑動自在に配置されている。さらに、ステージ10は、保持した基板90をX−Y平面内において位置決めするための図示しない位置決め機構によって、X方向、Y方向およびZ軸周りの回転方向(θ方向)にそれぞれ駆動される。
【0024】
移動機構20は、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)に往復移動させるための機構であって、一対のガイド23、移動駆動部24により構成される。一対のガイド23は、後述する版胴33の軸心に対して直交する水平方向(Y軸方向)に延設されるように、基台60の上面に固定される。
【0025】
移動駆動部24は、一対のガイド23の延設方向を駆動方向とし、例えばリニアモータで構成される。このリニアモータは、一対のガイド23間においてY軸方向に沿って延接されるように基台60の上面に固定された固定子と、この固定子に対して上方から対向するように、ステージ10の下面に設けられた移動子(図示せず)とを備える。そして、移動駆動部24(リニアモータ)は、その駆動力によって、一対のガイドレール23上に滑動自在に支持されたステージ10を版胴33の軸心に対して直交する主走査方向(Y軸方向)に往復移動させる。
【0026】
昇降テーブル65は、後述する転写機構30とステージ10の鉛直方向(Z軸方向)の距離を調整するための機構であって、図示を省略する昇降駆動部および昇降ガイドにより、昇降テーブル65は昇降ガイドに沿って昇降可能となる。昇降テーブル65には、転写機構30および供給機構40が搭載され、この結果、転写機構30および供給機構40は、昇降テーブル65とともに昇降可能となる。
【0027】
転写機構30は、ステージ10に保持された基板90に素子形成材料を転写するための機構である。転写機構30は、凸版印刷版50がその外周面に装着された版胴33と、版胴33を軸支する版胴支持部37と、版胴33に装着された凸版印刷版50を洗浄するための洗浄機構35とを備える。なお、凸版印刷版50は、凸部6(図4)の長手方向が版胴33の外周面方向に沿うように版胴33に装着されている。
【0028】
版胴33は、左右一対の版胴支持部37により、その軸心周りに回転自在に軸支され、図示を省略する回転駆動機構からの駆動力を受けて所定の回転速度で回転する。版胴33の下方空間にはステージ10が移動可能な空間が配設される。上述したように、ステージ10の上面には基板90が保持され水平方向に移動可能に構成されており、移動駆動部24からの駆動力を受けて所定の速度で、版胴33の軸心に対して直交する主走査方向(Y軸方向)に移動し、版胴33の下方空間を通過する。このとき、あらかじめステージ10に保持された基板90と版胴33の外周面に装着された凸版印刷版50との間に生じる隙間または基板90に対する凸部6の押込量が所定の範囲内になるように、昇降テーブル65の位置が調整される。
【0029】
また、版胴33の外周面に装着された凸版印刷版50から基板90に素子形成材料が転写された後、凸版印刷版50の表面は洗浄機構35により洗浄される。なお、洗浄機構35は版胴33から離間した装置の端部と版胴33に近接した位置との間を移動可能となっている。
【0030】
供給機構40は素子形成材料を転写機構30に供給するための機構である。供給機構40は、供給ローラ43と、供給部45と、供給ローラ支持部47と、洗浄機構49とから構成される。供給ローラ43は、その軸心が版胴33の軸心と平行に配置される。例えば、供給ローラ43は、その外周面が平滑な平ローラで構成される。そして、供給ローラ43はその外周面を版胴33に装着された凸版印刷版50に当接させながら互いに反対方向に回転することによって、凸版印刷版50の表面に素子形成材料を供給する。なお、供給ローラ43は、左右一対の供給ローラ支持部47によって軸支されている。そして、供給ローラ支持部47は、版胴支持部37に対して離接可能な構成となっている。
【0031】
供給部45は、図示を省略する供給源と接続されており供給源に貯留される素子形成材料を供給ローラ43に供給する。例えば、供給部45には供給ローラ43の軸心方向を長手方向とするスリットを有するスリットノズルなどが用いられる。そして、供給源から供給される素子形成材料を、供給ローラ43の外周面上に所定の流量で吐出して、当該外周面上に素子形成材料の膜を形成する。なお、供給部45と供給ローラ43の外周面までは所定の距離だけ離間しており、その距離が図示を省略するモータが駆動することによって調整される。
【0032】
洗浄機構49は、供給ローラ43の表面を洗浄する。素子形成材料を凸版印刷版50の表面に供給した後、供給ローラ43の表面に素子形成材料が残存した場合、その上にさらに供給部45から供給ローラ43の表面に素子形成材料が供給されたとき、素子形成材料の膜厚が増加することで膜厚が不均一となり、必要な膜厚を得るための転写が不可能となる。このため、供給ローラ43の表面を洗浄するための機構として洗浄機構49が設けられてもよい。
【0033】
ここで、図3を参照し基板90について説明する。図3(a)は基板90の平面図である。基板90は、周辺部を除く中央部に素子を形成すべき素子形成領域90aを有する。この素子形成領域90a内には、第1方向(図示上下方向)に亘って延びるとともに第1方向と直交する第2方向(図示左右方向)に沿って互いに平行に配列された多数のバンク(突起)8が同一間隔で形成されている。図3(b)は図3(a)に示す領域90bを拡大した平面図であり、図3(c)は図3(b)の断面を模式的に示す断面図である。図3(c),(b)に示すように、複数のバンク8間によって、基板90上には多数の凹部が形成される。複数の凹部は例えば、赤色発光層を形成すべき赤色用凹部9R、緑色発光層を形成すべき緑色用凹部9G、青色発光層を形成すべき青色用凹部9Bが図示左右方向に沿って、素子形成領域90aの全面に亘り、多数、繰り返し形成されている。また、90cはバンク8の長手方向(第1方向)と直交する第2方向における素子形成領域90aの外側領域を示している。なお、図3(b),(c)に示すように、素子形成領域90aの一方側端部(図示、最も右側)に形成された凹部については、赤色用凹部9Re、緑色用凹部9Ge、青色用凹部9Beと符号を変えて表現している。素子形成領域90aの他方側端部(図示、最も左側)についても、図示を省略しているが、赤色用凹部9Re、緑色用凹部9Ge、青色用凹部9Beが存在する。
【0034】
次に、凸版印刷版50について図4を参照して説明する。図4(a)は凸版印刷版50の平面図である。凸版印刷版50は可撓性を有する樹脂製の板状体であり、周辺部を除く中央部にパターン領域51、パターン領域51の図示左右両側に補助領域53を有する。凸版印刷版50のパターン領域51内には、第1方向(図示上下方向)に亘って延びるとともに第1方向と直交する第2方向(図示左右方向)に沿って互いに平行に配列された多数の凸部6が同一間隔で配列されたストライプ状の凸部パターンが形成されている。図4(b)は図4(a)に示す領域50aを拡大した平面図であり、図4(c)は図4(b)の断面を模式的に示す断面図である。なお、図4(b),(c)に示すように、パターン領域51の一方側端部(図示、最も右側)に形成された凸部については、凸部6eと符号を変えて表現している。パターン領域51の他方側端部(図示、最も左側)についても、図示を省略しているが、凸部6eが存在する。凸部6eの図示左右方向における外側には,図4(a)に示す左右一対の補助領域53が存在し、この補助領域53には、図4(b),(c)に示す補助部7が形成されている。補助部7は、その高さ寸法および長さ寸法が、凸部6の高さ寸法および長さ寸法とほぼ等しく、その幅寸法が凸部6の幅寸法より広い、上面がほぼ平坦な凸状の突起である。なお、補助部7は本発明の補助材料供給手段の一部であって、上記転写機構30は補助材料供給手段としても機能する。
【0035】
次に印刷装置1による転写動作について説明する。まず、供給機構40の供給部45から供給ローラ43の外周面に素子形成材料が供給される。素子形成材料が供給された供給ローラ43の外周面は、版胴33に装着された凸版印刷版50のパターン領域51および補助領域53に当接して、供給ローラ43の外周面から凸版印刷版50のパターン領域51および補助領域53に素子形成材料が供給される。一方、移動機構20によって(−Y)方向に移動させられるステージ10に支持(保持)された基板10の前方端(−Y方向端)が版胴33の下方に到達すると、昇降テーブル65によって転写機構30および供給機構40を下降させて、凸版印刷版50の凸部6を基板90の凹部9Rの底面に当接させる。
【0036】
図2(b)は、基板90のX側端部付近において、凸版印刷版50が基板90に当接している状態を模式的に示す部分断面図である。図2(b)に示すように、例えば赤色発光材料を含む素子形成材料が供給された凸版印刷版50の複数の凸部6,6eの下方端が、基板90上に複数のバンク8によって形成された赤色用凹部9R,9Reの底面に当接する。また、凸版印刷版50の(+X)方向端側の補助領域53(図4)に形成された補助部7は、基板90の素子形成領域90aよりも(+X)方向にある基板90の外側領域90cの表面に当接する。なお、図示していない基板90の(−X)方向にある基板90の外側領域90cの表面にも補助部7が当接している。
【0037】
図2(a)に示すように版胴33が図示右回転するに連れて、凸部6,6eの前方端(−Y方向端)が上昇するとともに、赤色用凹部9R,9Reに対する凸部6の当接位置が(+Y)方向に移行していく。この結果、赤色用凹部9R、9ReのY方向に亘って凸部6,6eが当接することとなる。補助部7についても同様に、基板90の外側領域90cに対してY方向に亘って当接する。
【0038】
図5は、凸版印刷版50の凸部6に付着している素子形成材料3が基板90上の赤色用凹部9Rに転写される状態を模式的に示す図である。まず、図5(a)では、凸部6に素子材料3が付着し、凸部6の下方端が赤色用凹部9Rの底面に対して離間している状態を示している。そして、版胴33の回転に伴い凸部6は下降し、図5(b)に示すように、凸部6の下方端が赤色用凹部9Rの底面に当接する。このとき、素子形成材料3は、赤色用凹部9R内の凸部6が占有しない領域に留まり、両側にあるバンク8の上端を越えない。さらに、版胴33の回転に伴い凸部6は上昇し、凸部6の下方端が赤色用凹部9Rの底面から離間して、赤色用凹部9R内から退出する。この結果、図5(c)に示すように赤色用凹部9R内に素子形成材料3が転写され貯留される。
【0039】
次に図6に示すフロー図に基づいて、第1実施形態の全体的な処理の流れを説明する。まず、準備工程であるステップS10にて、上述の転写動作において、ステージ10に支持された基板90に対する凸版印刷版50のX方向における許容位置ずれ範囲を実験的に測定して求める(許容位置ずれ範囲測定工程)。なお、この測定においては、図4に示す凸版印刷版50ではなく、補助領域53(補助部7)がなく、パターン領域51(複数の凸部6,6e)を有する凸版印刷版50aを版胴33に装着して実験する。
【0040】
まず、図7(a)に示すように凸版印刷版50aの凸部6のX方向における中心を、基板90の最も(+X)または(−X)方向側に形成された凹部9Re,9Ge,9Be以外の例えば赤色用凹部9RのX方向における中心SCに合致させるように、ステージ10に支持された基板90と版胴33に装着された凸版印刷版50aとを位置決めした状態で、上述の転写動作を実行する。図7(a)は、当該転写動作の途中の状態を模式的に示している。そして、この転写動作において、赤色用凹部9Rに隣接する緑色用凹部9Gや青色用凹部9Bには素子形成材料3が溢れ出ないことを確認する。また、ステージ10に支持された基板90と版胴33に装着された版胴33とを位置決めする方法や機構については、例えば特開2008−62461号公報に記載された方法や機構を採用すればよい。
【0041】
次に、上述の位置決め機構によって、ステージ10を(−X)方向にずらした状態で上記転写動作を実行する。図7(b)は、当該転写動作の途中の状態を模式的に示し、凸部6のX方向における中心を、例えば赤色用凹部9RのX方向における中心SCよりも(+X)方向(図示右方向)にずらした位置RОに合致させるように、ステージ10に支持された基板90と版胴33に装着された凸版印刷版50aとを位置決めした状態で、上述の転写動作を実行している状態を示している。そして、例えば、この位置RОよりも、さらに(+X)方向(図示右方向)に凸部6を赤色用凹部9Rに対して相対的にずらすと、赤色用凹部9Rの(+X)方向(図示右方向)に隣接する緑色用凹部9Gに素子形成材料3が溢れ出すことを実験的に確認する。
【0042】
次に、上述の位置決め機構によって、ステージ10を(+X)方向にずらした状態で上記転写動作を実行する。図7(c)は、当該転写動作の途中の状態を模式的に示し、凸部6のX方向における中心を、例えば赤色用凹部9RのX方向における中心SCよりも(−X)方向(図示左方向)にずらした位置LОに合致させるように、ステージ10に支持された基板90と版胴33に装着された凸版印刷版50aとを位置決めした状態で、上述の転写動作を実行している状態を示している。そして、例えば、この位置LОよりも、さらに(−X)方向(図示左方向)に凸部6を赤色用凹部9Rに対して相対的にずらすと、赤色用凹部9Rの(−X)方向(図示左方向)に隣接する青色用凹部9Bに素子形成材料3が溢れ出すことを実験的に確認する。
【0043】
上述のようにして求めた位置LОから位置RОの範囲が、ステージ10に支持された基板90に対する凸版印刷版50aのX方向における許容位置ずれ範囲である。すなわち、位置LОから位置RОの範囲(許容位置ずれ範囲)内に、凸版印刷版50の凸部6の中心を合致させれば、素子形成材料3を転写すべき、少なくとも最も端部にある凹部9Re以外の凹部9Rにおいては、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出さないことが担保される。
【0044】
なお、例えば、図8(a)に示すように、補助領域53(補助部7)を備えない凸版印刷版50aの(+X)側端部にある凸部6eの中心を、例えば、基板90の端部にある赤色用凹部9Reの中心SCから(+X)側(図示右側)にずれた位置RОに合致させた状態で転写動作を実行すると、素子形成材料3の一部3aが、赤色用凹部9Reを形成する(+X)側のバンク8の先端を越えてしまう場合がある。そして、転写動作後に、図8(b)に示すように、赤色用凹部9Reの(+X)側に隣接する緑色用凹部9Ge内に微量の素子形成材料3aが付着する。その後、この緑色用凹部9Ge内に緑色発光材料を含む素子形成材料を転写すると、赤色発光材料を含む素子形成材料3aと混ざり合い、混色という問題が発生する。先に緑色用凹部9Ge内に緑色発光材料を含む素子形成材料を転写し、その後、赤色用凹部9Re内に赤色発光材料を含む素子形成材料を転写した場合も、微量の素子形成材料3aが赤色用凹部9Reから緑色用凹部9Ge内に溢れ出すと、同様に混色という問題が発生する。
【0045】
上述のように、基板90の端部にある凹部9Re,9Ge,9Beに対して、補助領域53(補助部7)を備えない凸版印刷版50aにより転写動作を実行すると、凹部9Re,9Ge,9Beを形成するX方向における外側のバンク8の先端を、素子形成材料3の一部が越えてしまうという問題が発生する場合がある。このように素子形成材料3の一部がバンク8の先端を越えてしまうと、上述のような混色という問題が発生する。また、転写動作が実行された凹部が最外の凹部(例えば凹部9Be)であれば、溢れ出た素子形成材料の一部が凹部ではない基板表面に付着するので、混色という問題は生じないが、素子形成領域90aの最外凹部(例えば凹部9Be)に転写すべき素子形成材料が減ってしまうという別の問題が生じる。
【0046】
図6に戻り、準備工程である許容位置ずれ範囲測定工程(ステップS10)以降の動作について説明する。なお、ステップS20の基板搬入工程以降の動作においては、印刷装置1の版胴33には、図4に示す補助領域53(補助部7)を備えた凸版印刷版50が装着されている。ステップS20の基板搬入工程では、図1に示す転写機構30よりも(+Y)方向側に位置するステージ10上に、搬送機構(図示せず)や操作者により、基板90のバンク8の長手方向がY方向と平行になるように基板90を搬入する。
【0047】
次にステップS30において、例えば特開2008−62461号公報に記載された方法や機構によって、ステージ10の位置をX−Y平面内で微調整し、版胴33に装着された凸版印刷版50に対して、ステージ10に支持された基板90の位置を合わせる(位置決め工程)。このとき、少なくともX方向における凸版印刷版50に対する基板90の位置は、許容位置ずれ範囲測定工程(ステップS10)で求めた許容位置ずれ範囲内に収まるように調整される。
【0048】
位置決め工程(ステップS30)後に、図1に示す転写機構30よりも(+Y)方向側に位置し、基板90を支持するステージ10を、移動機構20により(−Y)方向移動させる(ステップS40、ステージ移動工程)。移動機構20によって(−Y)方向に移動させられるステージ10に支持された基板10の前方端(−Y方向端)が版胴33の下方に到達すると、昇降テーブル65によって転写機構30および供給機構40を下降させて、素子形成材料部3が付着した凸版印刷版50に形成された複数の凸部(6,6e)の前方端(−Y方向端)を、例えば、基板90の複数の赤色用凹部(9R,9Re)の前方端(−Y方向端)に当接させる。また、凸版印刷版50のパターン領域51よりX方向における両側に形成され、素子形成材料が付着した補助部7の前方端(−Y方向端)を、基板90の素子形成領域51よりX方向における両側にある一対の外側領域90cの前方端(−Y方向端)に当接させる。
【0049】
そして、移動機構20によるステージ10の(−Y)方向への移動を継続しつつ、版胴33を回転させることにより、複数の凸部(6,6e)を複数の赤色用凹部(9R,9Re)に対して、Y方向に亘って順次、当接させた後、離間させて、複数の凸部(6,6e)に付着した素子形成材料3を、複数の赤色用凹部(9R,9Re)内に転写する。この転写動作と並行して、X方向において一対の補助部7も基板90の一対の外側領域90cに対して、Y方向に亘って順次、当接した後、離間して、複数の補助部7に付着した素子形成材料3も一対の外側領域90cに転写され、外側領域90cに素子形成材料3が供給される(ステップS50、転写および補助材料供給工程)。なお、補助部7に付着した素子形成材料3が本発明の補助材料として機能している。
【0050】
図9は、上述の転写および補助材料供給工程(ステップS50)の実行途中の状態を模式的に示す図である。図9(a)は、最も(+X)方向側にある赤色用凹部9Reの底面に凸版印刷版50の最も(+X)方向側にある凸部6eの下端が当接した後、版胴33の回転に伴い凸部6eが上昇して赤色用凹部9Reから離間していく状態を示している。また、このとき、補助部7も版胴33の回転に伴い上昇し、基板の外側領域90cから離間していく。この結果、図9(a)に示すように、赤色用凹部9Reよりも基板の外側方向(+X方向)にある外側領域90cに素子形成材料の液溜り部3eが形成される。そして、液溜り部3eからの蒸気(例えば、主溶媒であるキシレンの蒸気)が赤色用凹部9Reよりも基板外側(+X側)の空間におよび蒸気雰囲気3bを形成する。このように、蒸気雰囲気3bが形成されると、転写動作の途中において、赤色用凹部9Reから素子形成材料3の一部が(+X)側のバンク8の上端を越えて溢れ出すことが抑制される。これは、蒸気雰囲気3bが存在するために、(+X)側のバンク8の上端にかかる素子形成材料が自然乾燥する際に発生する蒸気が(+X)側に進行することが抑制されるためである。この結果、(+X)側のバンク8の上端にかかる素子形成材料が自然乾燥するに伴って、(+X)側に引っ張られることが抑制される。なお、赤色用凹部9Reの(−X)側の空間には、(−X)側に存在する他の赤色用凹部9Rに転写された素子形成材料3からの蒸気がおよび蒸気雰囲気が形成されているため、赤色用凹部9Reから(−X)側に素子形成材料3が溢れ出すことも抑制されている。
【0051】
そして、図9(b)に示すように、赤色用凹部9Re内に所望量の素子形成材料3を供給することができて、赤色用凹部9Reの(+X)側に隣接する緑色用凹部9Geに素子形成材料が溢れ出すことを防止できる。なお、基板90の外側領域90cに供給された素子形成材料3eは、後工程で溶解、除去しても良いし、有機EL表示装置内に残存していても問題にならない場合は、そのまま放置しておいても良い。
【0052】
上述のように基板90の外側領域90cに補助材料として機能する素子形成材料3eを供給しない場合は、図8に示すように赤色用凹部9Reの(+X)側に蒸気雰囲気3bが存在しないので、(+X)側のバンク8の上端にかかる素子形成材料が自然乾燥するに伴って、(+X)側に引っ張られて、素子形成材料の一部3aが隣接する緑色用凹部9Geに溢れ出すという問題が発生する。なお、本実施形態において、最も外側にある赤色用凹部9Re以外の赤色用凹部9Rについては、その両側に存在する他の赤色用凹部9Rにも素子形成材料3が転写されるため、赤色用凹部9Rの両側空間は素子形成材料の蒸気雰囲気3bで満たされる。この結果、赤色用凹部9Rにおいて、両側のバンク8の上端にかかる素子形成材料が自然乾燥するに伴って、外側に引っ張られることが抑制されている。
【0053】
図6に戻り、上述の転写および補助材料供給工程(ステップS50)後に、継続して移動しているテーブル10が基台60上の(−Y)側の端部に到達すると、テーブル10の移動を停止する(ステップS60、ステージ停止工程)。そして、搬送機構(図示せず)や操作者により、ステージ10上から基板90を取り上げて搬出する(ステップS70,基板搬出工程)。
【0054】
上述の動作によって、基板90上の複数の赤色用凹部(9R、9Re)に赤色発光材料を含む素子形成材料3を印刷することができる。また、連続して基板90上の複数の緑色用凹部(9G、9Ge)に緑色発光材料を含む素子形成材料を印刷するために、図6に示す動作を実行し、その後、基板90上の複数の青色用凹部(9B、9Be)に青色発光材料を含む素子形成材料を印刷するために、図6に示す動作を実行しても良い。
【0055】
上述の第1実施形態における凸版印刷版50の補助部7の上面(当接面)は、図4に示すように平坦であるが、例えば、図10に示すように補助部の上面を凹凸形状としても良い。例えば、図10(a)に示すように凸部6の長手方向と平行に延び、互いに平行な複数の凸部(斜線で示す)を設けた補助部7aを採用しても良い。また、凸部6の長手方向と直交する方向に延び、互いに平行な複数の凸部を設けた補助部7b(図10(b))、凸部の長手方向が傾斜している補助部7c(図10(c))、格子状の凸部を有する補助部7d(図10(d))、または、円柱状の凸部が千鳥配置された補助部7e(図10(e))をそれぞれ採用しても良い。
【0056】
上述の実施形態においては、素子形成材料3を補助材料として補助部7に供給したが、補助部7に素子形成材料3の溶媒、例えば、主溶媒であるキシレンを供給する機構を別途、設けても良い。この変形例によれば、上述の転写および補助材料供給工程(ステップS50)において、基板90の両外側領域90cに補助材料として素子形成材料3の溶媒が供給される。第1実施形態のように素子形成材料3を補助材料として用いる場合は別途、材料を準備する必要がないという利点があり、変形例のように溶媒を補助材料として用いる場合は、溶媒が自然乾燥することによって基板90上から除去されるので、別途、除去機構を設ける必要がないという利点がある。
【0057】
凸版印刷版50の複数の凸部6,6eの一部または全てを基板90(凹部底面)に当接させず、若干、離間させた状態で転写動作を実行しても良い。同様に、補助部7を基板から若干、離間させた状態で補助材料の供給(転写)動作を実行しても良い。
【0058】
また、上記第1実施形態においては、凸版印刷版50の凸部6(図4)の長手方向が版胴33の外周面方向に沿うように凸版印刷版50が版胴33に装着されているが、この装着形態に替えて、凸版印刷版50の凸部6(図4)の長手方向が版胴33の軸心方向(図1のX方向)に沿うように凸版印刷版50を版胴33に装着しても良い。そして、上記ステップS20の基板搬入工程において、図1に示す転写機構30よりも(+Y)方向側に位置するステージ10上に、搬送機構(図示せず)や操作者により、基板90のバンク8の長手方向がX方向と平行になるように基板90を搬入した後、以降の動作を実行する。つまり、基板90上のバンク8の長手方向(第1方向)と、凸版印刷版90の凸部6の長手方向とが平行となる位置関係で、印刷処理が実行されれば良い。そして、上記許容位置ずれ範囲測定工程(ステップS10)においては、上記第1方向と直交する第2方向における基板90に対する凸版印刷版50の許容位置ずれ範囲を実験的に求め、上記位置決め工程(ステップS30)においては第2方向において基板90に対して凸版印刷版50が許容位置ずれ範囲内に収まるように基板90の位置決め動作を実行すれば良い。
【0059】
次に本発明の第2実施形態について図11を参照して説明する。図11に示す第2実施形態に係る印刷装置1aにおいては、版胴33には補助領域53(補助部7)を備えない凸版印刷版50aが装着されている。また、印刷装置1aは供給機構40より(+Y)方向側に一対のノズル70を備えている。また、一対のノズル70は図11(b)に示すようにステージ10に支持された基板90の素子形成領域90aよりもX方向における一対の外側領域90cに対向するように配置されている。一対のノズル70は補助材料の供給源72に流路接続されている。補助材料としては素子形成材料、または、素子形成材料の溶媒が用いられる。その他の装置構成については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0060】
図12は第2実施形態における印刷装置1aの動作の流れを示すフロー図である。図12において、許容位置ずれ範囲測定工程(ステップS10)、基板搬入工程(ステップS20)、位置決め工程(ステップS30)、ステージ移動工程(ステップS40)、ステージ停止工程(ステップS60)および基板搬出工程(ステップS70)については、第1実施形態における動作と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0061】
ステップS45では、ステージ移動工程(ステップS40)後に移動しているステージ10上に支持された基板90の外側領域90cに向けてノズル70から補助材料が吐出される。この結果、図11(b)に示すように基板90の外側領域90cに対して補助材料3eがY方向に亘って供給される(ステップS45、補助材料供給工程)。
【0062】
次にステップS52の転写工程において、第1実施形態と同様に、例えば赤色用凹部(9R,9Re)に対して素子形成材料3が転写される。このとき、第1実施形態のように補助部7による外側領域90cへの素子形成材料(補助材料)の供給動作は実行されないが、本第2実施形態においては、転写工程に先立って(転写動作の直前に)、ステップS45の補助材料供給工程により外側領域90cへの補助材料の供給動作は実行されている。この結果、第1実施形態と同様に、ステップS45の補助材料供給工程により外側領域90cに形成された補助材料の液溜り部3eからの蒸気が、最も外側にある赤色用凹部9Reよりも基板外側(+X側)の空間におよび蒸気雰囲気3b(図9)を形成する。このように、蒸気雰囲気3bが形成されることにより、転写動作の途中において、赤色用凹部9Reから素子形成材料3の一部が(+X)側のバンク8の上端を越えて溢れ出すことを抑制することができる。
【0063】
上述の各実施形態によれば、基板90の外側領域90cに補助材料3eを供給することによって、素子形成材料3を転写すべき最も外側の凹部(例えば凹部9Re)から外側に素子形成材料3が溢れ出すことを抑制することができる。この結果、基板90に対する凸版印刷版50の位置決め処理において、最も外側の凹部(例えば凹部9Re)から外側に素子形成材料3が溢れ出すことを防止できるほどの高い位置決め精度は要求されない。つまり、上述の各実施形態によれば、比較的、低い精度の位置決め処理によって、最も外側の凹部も含めた全ての凹部から素子形成材料3が溢れ出すことを抑制することができる。
【0064】
上述の第1実施形態および第2実施形態に示す印刷装置1,1aは凸版印刷版50,50aを用いた凸版印刷方式を採用しているが、他の方式の印刷方式に本発明を適用しても良い。例えば、グラビアロールからブランケットロールに素子形成材料を供給した後、ブランケットロールに付着した素子形成材料を基板上の凹部に転写する印刷方式に本発明を適用しても良い。この場合はブランケットロールの表面が本発明の印刷版に相当する。
【符号の説明】
【0065】
1,1a 印刷装置
3 素子形成材料
6 凸部
7 補助部
8 バンク
9R 赤色用凹部
20 移動機構
30 転写機構
33 第2圧電素子
50 凸版印刷版
70 ノズル
90 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、有機EL(エレクトロルミネセンス)表示装置用の基板に対して発光材料などの素子形成材料を印刷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許第4280301号公報(特許文献1)には、有機EL表示装置用の基板上に形成された複数のバンク間(凹部)に有機EL材料と溶媒を含む素子形成材料(インク)を凸版印刷法により印刷する技術が記載されている。また、上記凸版印刷法を実施するための印刷装置として、例えば、特開2008−6706号公報(特許文献2)に開示された印刷装置が知られている。この印刷装置は凸版印刷版が装着された版胴と基板を支持するステージを備える。そして、印刷装置は、例えば、赤色発光材料が付着した凸版印刷版をステージ上の基板に当接させて、基板の素子形成領域内にストライプ状に形成された、赤色発光層を形成すべき複数の凹部(赤色用凹部)内に赤色発光材料を印刷する。その後、印刷装置により、赤色用凹部の一方側に隣接する緑色用凹部に緑色発光材料が印刷され、さらに緑色用凹部の一方側に隣接する青色用凹部に青色発光材料が印刷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4280301号公報(例えば、請求項8、図2)
【特許文献2】特開2008−6706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上記印刷装置により赤色用凹部内に赤色発光材料を印刷する際に、基板の端部付近において、赤色用凹部に隣接する緑色用凹部に赤色発光材料が溢れ出す場合がある。その後、緑色用凹部に緑色発光材料を印刷すると、溢れ出した赤色発光材料と、緑色発光材料とが緑色用凹部内で混ざり合い、混色が生じるという問題が発生する。また、例えば、正孔輸送層を形成するための正孔輸送材料を凹部に印刷する際にも、上述のように隣接する凹部に正孔輸送材料が溢れ出すと、凹部内に所望量の正孔輸送材料を印刷することができないという問題が発生する。
【0005】
本発明の目的は、上述のような点に鑑み、発光材料または正孔輸送材料などを含む素子形成材料を基板上の凹部に印刷する際に、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出すことを抑制することができる、印刷方法および印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明(印刷方法)は、第1の方向に延びるとともに第1の方向と直交する第2の方向に沿って互いに平行に基板上に配列された複数のバンクにより、基板上の素子形成領域内に形成された複数の凹部に対して、印刷版に付着した素子形成材料を転写する印刷方法において、基板に対する印刷版の第2方向における許容位置ずれ範囲を求める準備工程と、準備工程で求めた許容位置ずれ範囲内に、基板に対して印刷版を位置決めした状態で、基板上の複数の凹部に対して印刷版に付着した素子形成材料を転写する転写工程と、転写工程と並行して、または、転写工程に先立って実行され、素子形成領域より第2方向における基板上の両外側領域に、素子形成材料に含まれる溶媒を少なくとも含む補助材料を供給する補助材料供給工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載される印刷方法において、準備工程が、転写工程にて印刷版に付着した素子形成材料を転写すべき基板上の凹部の内、第2方向において最も外側にある凹部以外の複数の凹部において、転写工程の際に、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出さない、基板に対する印刷版の第2方向における位置ずれ範囲を前記許容位置ずれ範囲として求めることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載される印刷方法において、印刷版が第2方向に配列された複数の凸部を有し、転写工程にて、当該複数の凸部に付着した素子形成材料を前記凹部に転写することを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載される印刷方法において、補助材料供給工程が、転写工程と並行して、印刷版が有する補助部に付着した補助材料を前記両外側領域に転写する工程であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載される印刷方法において、補助材料供給工程が、転写工程の直前に、前記両外側領域に向けてノズルから補助材料を吐出する工程であることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載される印刷方法において、補助材料が素子形成材料であることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明(印刷装置)は、第1の方向に延びるとともに第1の方向と直交する第2の方向に沿って互いに平行に配列された複数のバンクにより、素子形成領域内に形成された複数の凹部を有する基板を支持する支持手段と、素子形成材料が付着した印刷版と、予め求められた第2方向における許容位置ずれ範囲内に、支持手段に支持された基板に対して印刷版を位置決めした状態で、基板上の複数の凹部に、印刷版に付着した素子形成材料を転写する転写手段と、転写手段による転写動作と並行して、または、転写動作の直前に、素子形成領域より第2方向における基板上の両外側領域に、素子形成材料に含まれる溶媒を少なくとも含む補助材料を供給する補助材料供給手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載される印刷装置において、前記許容位置ずれ範囲が、印刷版に付着した素子形成材料を転写すべき基板上の凹部の内、第2方向において最も外側にある凹部以外の複数の凹部において、転写手段による転写動作の際に、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出さない、基板に対する印刷版の第2方向における位置ずれ範囲であることを特徴とする。
【0014】
請求項9に係る発明は、請求項7または請求項8に記載される印刷装置において、印刷版は第2方向に配列された複数の凸部を有し、転写手段は当該複数の凸部に付着した素子形成材料を基板上の複数の凹部に転写することを特徴とする。
【0015】
請求項10に係る発明は、請求7から請求項9のいずれかに記載される印刷装置において、補助材料供給手段が、転写手段による転写動作と並行して、印刷版に設けた補助部に付着する補助材料を前記両外側領域に転写することを特徴とする。
【0016】
請求項11に係る発明は、請求7から請求項9のいずれかに記載される印刷装置において、補助材料供給手段が、補助材料を吐出するノズルを有し、転写手段による転写動作の直前に、前記両外側領域に向けてノズルから補助材料を吐出することを特徴とする。
【0017】
請求項12に係る発明は、請求項7から請求項11のいずれかに記載される印刷装置において、補助材料供給手段が補助材料として素子形成材料を前記両外側領域に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1から請求項12のいずれかに係る発明によれば、素子形成材料を基板上の凹部に印刷する際に、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出すことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の要部を示す図である。
【図3】基板を説明するための図である。
【図4】凸版印刷版を説明するための図である。
【図5】転写動作の状態を示す図である。
【図6】第1実施形態の動作の流れを示すフロー図である。
【図7】準備工程を説明するための図である。
【図8】素子形成材料が凹部から溢れ出す状態を示す図である。
【図9】転写動作と補助材料供給動作との関係を示す図である。
【図10】補助部の変形例を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態の要部を示す図である。
【図12】第2実施形態の動作の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態を図1、図2に基づいて説明する。図1は本発明に係る印刷装置の第1実施形態を示す斜視図であり、また、図2は第1実施形態の要部を示す図である。
【0021】
印刷装置1は、例えば、有機EL表示装置を製造する過程において、矩形状のガラス基板(以下、単に基板と称す)90の上面に形成された複数のバンク(突起部)8(図3)間(凹部)に素子形成材料(インク)を印刷する。なお、素子形成材料は、例えば、有機EL材料を溶解した溶液であり、有機EL表示装置の素子となる有機層(正孔注入層、正孔輸送層、赤色発光、緑色発光、青色発光の発光層、電子輸送層、電子注入層等のうちで有機物を含む層)を形成するための高分子有機EL材料と、溶媒とを含む。例えば、赤色発光層を形成するための素子形成材料は、赤色発光材料と、溶媒としてのキシレン(主溶媒)およびシクロヘキシルベンゼンなどを含む。なお、キシレンに替えてアニソールを主溶媒として用いても良い。
【0022】
印刷装置1は、主に、基板90を保持するステージ10と、ステージ10を移動させる移動機構20と、ステージ10に保持された基板90に凸版印刷版50に付着した素子形成材料を転写するための転写機構30と、転写機構30に素子形成材料を供給するための供給機構40と、これらを載置する基台60と、昇降テーブル65とを備える。
【0023】
ステージ10は、平板状の外形を有しており、その上面に基板90を水平に支持しつつ図示を省略するチャック機構により固定的に保持する。また、ステージ10は、基台60上に設けられた移動機構20の一対のガイド23に対して主走査方向(Y軸方向)に沿って滑動自在に配置されている。さらに、ステージ10は、保持した基板90をX−Y平面内において位置決めするための図示しない位置決め機構によって、X方向、Y方向およびZ軸周りの回転方向(θ方向)にそれぞれ駆動される。
【0024】
移動機構20は、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)に往復移動させるための機構であって、一対のガイド23、移動駆動部24により構成される。一対のガイド23は、後述する版胴33の軸心に対して直交する水平方向(Y軸方向)に延設されるように、基台60の上面に固定される。
【0025】
移動駆動部24は、一対のガイド23の延設方向を駆動方向とし、例えばリニアモータで構成される。このリニアモータは、一対のガイド23間においてY軸方向に沿って延接されるように基台60の上面に固定された固定子と、この固定子に対して上方から対向するように、ステージ10の下面に設けられた移動子(図示せず)とを備える。そして、移動駆動部24(リニアモータ)は、その駆動力によって、一対のガイドレール23上に滑動自在に支持されたステージ10を版胴33の軸心に対して直交する主走査方向(Y軸方向)に往復移動させる。
【0026】
昇降テーブル65は、後述する転写機構30とステージ10の鉛直方向(Z軸方向)の距離を調整するための機構であって、図示を省略する昇降駆動部および昇降ガイドにより、昇降テーブル65は昇降ガイドに沿って昇降可能となる。昇降テーブル65には、転写機構30および供給機構40が搭載され、この結果、転写機構30および供給機構40は、昇降テーブル65とともに昇降可能となる。
【0027】
転写機構30は、ステージ10に保持された基板90に素子形成材料を転写するための機構である。転写機構30は、凸版印刷版50がその外周面に装着された版胴33と、版胴33を軸支する版胴支持部37と、版胴33に装着された凸版印刷版50を洗浄するための洗浄機構35とを備える。なお、凸版印刷版50は、凸部6(図4)の長手方向が版胴33の外周面方向に沿うように版胴33に装着されている。
【0028】
版胴33は、左右一対の版胴支持部37により、その軸心周りに回転自在に軸支され、図示を省略する回転駆動機構からの駆動力を受けて所定の回転速度で回転する。版胴33の下方空間にはステージ10が移動可能な空間が配設される。上述したように、ステージ10の上面には基板90が保持され水平方向に移動可能に構成されており、移動駆動部24からの駆動力を受けて所定の速度で、版胴33の軸心に対して直交する主走査方向(Y軸方向)に移動し、版胴33の下方空間を通過する。このとき、あらかじめステージ10に保持された基板90と版胴33の外周面に装着された凸版印刷版50との間に生じる隙間または基板90に対する凸部6の押込量が所定の範囲内になるように、昇降テーブル65の位置が調整される。
【0029】
また、版胴33の外周面に装着された凸版印刷版50から基板90に素子形成材料が転写された後、凸版印刷版50の表面は洗浄機構35により洗浄される。なお、洗浄機構35は版胴33から離間した装置の端部と版胴33に近接した位置との間を移動可能となっている。
【0030】
供給機構40は素子形成材料を転写機構30に供給するための機構である。供給機構40は、供給ローラ43と、供給部45と、供給ローラ支持部47と、洗浄機構49とから構成される。供給ローラ43は、その軸心が版胴33の軸心と平行に配置される。例えば、供給ローラ43は、その外周面が平滑な平ローラで構成される。そして、供給ローラ43はその外周面を版胴33に装着された凸版印刷版50に当接させながら互いに反対方向に回転することによって、凸版印刷版50の表面に素子形成材料を供給する。なお、供給ローラ43は、左右一対の供給ローラ支持部47によって軸支されている。そして、供給ローラ支持部47は、版胴支持部37に対して離接可能な構成となっている。
【0031】
供給部45は、図示を省略する供給源と接続されており供給源に貯留される素子形成材料を供給ローラ43に供給する。例えば、供給部45には供給ローラ43の軸心方向を長手方向とするスリットを有するスリットノズルなどが用いられる。そして、供給源から供給される素子形成材料を、供給ローラ43の外周面上に所定の流量で吐出して、当該外周面上に素子形成材料の膜を形成する。なお、供給部45と供給ローラ43の外周面までは所定の距離だけ離間しており、その距離が図示を省略するモータが駆動することによって調整される。
【0032】
洗浄機構49は、供給ローラ43の表面を洗浄する。素子形成材料を凸版印刷版50の表面に供給した後、供給ローラ43の表面に素子形成材料が残存した場合、その上にさらに供給部45から供給ローラ43の表面に素子形成材料が供給されたとき、素子形成材料の膜厚が増加することで膜厚が不均一となり、必要な膜厚を得るための転写が不可能となる。このため、供給ローラ43の表面を洗浄するための機構として洗浄機構49が設けられてもよい。
【0033】
ここで、図3を参照し基板90について説明する。図3(a)は基板90の平面図である。基板90は、周辺部を除く中央部に素子を形成すべき素子形成領域90aを有する。この素子形成領域90a内には、第1方向(図示上下方向)に亘って延びるとともに第1方向と直交する第2方向(図示左右方向)に沿って互いに平行に配列された多数のバンク(突起)8が同一間隔で形成されている。図3(b)は図3(a)に示す領域90bを拡大した平面図であり、図3(c)は図3(b)の断面を模式的に示す断面図である。図3(c),(b)に示すように、複数のバンク8間によって、基板90上には多数の凹部が形成される。複数の凹部は例えば、赤色発光層を形成すべき赤色用凹部9R、緑色発光層を形成すべき緑色用凹部9G、青色発光層を形成すべき青色用凹部9Bが図示左右方向に沿って、素子形成領域90aの全面に亘り、多数、繰り返し形成されている。また、90cはバンク8の長手方向(第1方向)と直交する第2方向における素子形成領域90aの外側領域を示している。なお、図3(b),(c)に示すように、素子形成領域90aの一方側端部(図示、最も右側)に形成された凹部については、赤色用凹部9Re、緑色用凹部9Ge、青色用凹部9Beと符号を変えて表現している。素子形成領域90aの他方側端部(図示、最も左側)についても、図示を省略しているが、赤色用凹部9Re、緑色用凹部9Ge、青色用凹部9Beが存在する。
【0034】
次に、凸版印刷版50について図4を参照して説明する。図4(a)は凸版印刷版50の平面図である。凸版印刷版50は可撓性を有する樹脂製の板状体であり、周辺部を除く中央部にパターン領域51、パターン領域51の図示左右両側に補助領域53を有する。凸版印刷版50のパターン領域51内には、第1方向(図示上下方向)に亘って延びるとともに第1方向と直交する第2方向(図示左右方向)に沿って互いに平行に配列された多数の凸部6が同一間隔で配列されたストライプ状の凸部パターンが形成されている。図4(b)は図4(a)に示す領域50aを拡大した平面図であり、図4(c)は図4(b)の断面を模式的に示す断面図である。なお、図4(b),(c)に示すように、パターン領域51の一方側端部(図示、最も右側)に形成された凸部については、凸部6eと符号を変えて表現している。パターン領域51の他方側端部(図示、最も左側)についても、図示を省略しているが、凸部6eが存在する。凸部6eの図示左右方向における外側には,図4(a)に示す左右一対の補助領域53が存在し、この補助領域53には、図4(b),(c)に示す補助部7が形成されている。補助部7は、その高さ寸法および長さ寸法が、凸部6の高さ寸法および長さ寸法とほぼ等しく、その幅寸法が凸部6の幅寸法より広い、上面がほぼ平坦な凸状の突起である。なお、補助部7は本発明の補助材料供給手段の一部であって、上記転写機構30は補助材料供給手段としても機能する。
【0035】
次に印刷装置1による転写動作について説明する。まず、供給機構40の供給部45から供給ローラ43の外周面に素子形成材料が供給される。素子形成材料が供給された供給ローラ43の外周面は、版胴33に装着された凸版印刷版50のパターン領域51および補助領域53に当接して、供給ローラ43の外周面から凸版印刷版50のパターン領域51および補助領域53に素子形成材料が供給される。一方、移動機構20によって(−Y)方向に移動させられるステージ10に支持(保持)された基板10の前方端(−Y方向端)が版胴33の下方に到達すると、昇降テーブル65によって転写機構30および供給機構40を下降させて、凸版印刷版50の凸部6を基板90の凹部9Rの底面に当接させる。
【0036】
図2(b)は、基板90のX側端部付近において、凸版印刷版50が基板90に当接している状態を模式的に示す部分断面図である。図2(b)に示すように、例えば赤色発光材料を含む素子形成材料が供給された凸版印刷版50の複数の凸部6,6eの下方端が、基板90上に複数のバンク8によって形成された赤色用凹部9R,9Reの底面に当接する。また、凸版印刷版50の(+X)方向端側の補助領域53(図4)に形成された補助部7は、基板90の素子形成領域90aよりも(+X)方向にある基板90の外側領域90cの表面に当接する。なお、図示していない基板90の(−X)方向にある基板90の外側領域90cの表面にも補助部7が当接している。
【0037】
図2(a)に示すように版胴33が図示右回転するに連れて、凸部6,6eの前方端(−Y方向端)が上昇するとともに、赤色用凹部9R,9Reに対する凸部6の当接位置が(+Y)方向に移行していく。この結果、赤色用凹部9R、9ReのY方向に亘って凸部6,6eが当接することとなる。補助部7についても同様に、基板90の外側領域90cに対してY方向に亘って当接する。
【0038】
図5は、凸版印刷版50の凸部6に付着している素子形成材料3が基板90上の赤色用凹部9Rに転写される状態を模式的に示す図である。まず、図5(a)では、凸部6に素子材料3が付着し、凸部6の下方端が赤色用凹部9Rの底面に対して離間している状態を示している。そして、版胴33の回転に伴い凸部6は下降し、図5(b)に示すように、凸部6の下方端が赤色用凹部9Rの底面に当接する。このとき、素子形成材料3は、赤色用凹部9R内の凸部6が占有しない領域に留まり、両側にあるバンク8の上端を越えない。さらに、版胴33の回転に伴い凸部6は上昇し、凸部6の下方端が赤色用凹部9Rの底面から離間して、赤色用凹部9R内から退出する。この結果、図5(c)に示すように赤色用凹部9R内に素子形成材料3が転写され貯留される。
【0039】
次に図6に示すフロー図に基づいて、第1実施形態の全体的な処理の流れを説明する。まず、準備工程であるステップS10にて、上述の転写動作において、ステージ10に支持された基板90に対する凸版印刷版50のX方向における許容位置ずれ範囲を実験的に測定して求める(許容位置ずれ範囲測定工程)。なお、この測定においては、図4に示す凸版印刷版50ではなく、補助領域53(補助部7)がなく、パターン領域51(複数の凸部6,6e)を有する凸版印刷版50aを版胴33に装着して実験する。
【0040】
まず、図7(a)に示すように凸版印刷版50aの凸部6のX方向における中心を、基板90の最も(+X)または(−X)方向側に形成された凹部9Re,9Ge,9Be以外の例えば赤色用凹部9RのX方向における中心SCに合致させるように、ステージ10に支持された基板90と版胴33に装着された凸版印刷版50aとを位置決めした状態で、上述の転写動作を実行する。図7(a)は、当該転写動作の途中の状態を模式的に示している。そして、この転写動作において、赤色用凹部9Rに隣接する緑色用凹部9Gや青色用凹部9Bには素子形成材料3が溢れ出ないことを確認する。また、ステージ10に支持された基板90と版胴33に装着された版胴33とを位置決めする方法や機構については、例えば特開2008−62461号公報に記載された方法や機構を採用すればよい。
【0041】
次に、上述の位置決め機構によって、ステージ10を(−X)方向にずらした状態で上記転写動作を実行する。図7(b)は、当該転写動作の途中の状態を模式的に示し、凸部6のX方向における中心を、例えば赤色用凹部9RのX方向における中心SCよりも(+X)方向(図示右方向)にずらした位置RОに合致させるように、ステージ10に支持された基板90と版胴33に装着された凸版印刷版50aとを位置決めした状態で、上述の転写動作を実行している状態を示している。そして、例えば、この位置RОよりも、さらに(+X)方向(図示右方向)に凸部6を赤色用凹部9Rに対して相対的にずらすと、赤色用凹部9Rの(+X)方向(図示右方向)に隣接する緑色用凹部9Gに素子形成材料3が溢れ出すことを実験的に確認する。
【0042】
次に、上述の位置決め機構によって、ステージ10を(+X)方向にずらした状態で上記転写動作を実行する。図7(c)は、当該転写動作の途中の状態を模式的に示し、凸部6のX方向における中心を、例えば赤色用凹部9RのX方向における中心SCよりも(−X)方向(図示左方向)にずらした位置LОに合致させるように、ステージ10に支持された基板90と版胴33に装着された凸版印刷版50aとを位置決めした状態で、上述の転写動作を実行している状態を示している。そして、例えば、この位置LОよりも、さらに(−X)方向(図示左方向)に凸部6を赤色用凹部9Rに対して相対的にずらすと、赤色用凹部9Rの(−X)方向(図示左方向)に隣接する青色用凹部9Bに素子形成材料3が溢れ出すことを実験的に確認する。
【0043】
上述のようにして求めた位置LОから位置RОの範囲が、ステージ10に支持された基板90に対する凸版印刷版50aのX方向における許容位置ずれ範囲である。すなわち、位置LОから位置RОの範囲(許容位置ずれ範囲)内に、凸版印刷版50の凸部6の中心を合致させれば、素子形成材料3を転写すべき、少なくとも最も端部にある凹部9Re以外の凹部9Rにおいては、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出さないことが担保される。
【0044】
なお、例えば、図8(a)に示すように、補助領域53(補助部7)を備えない凸版印刷版50aの(+X)側端部にある凸部6eの中心を、例えば、基板90の端部にある赤色用凹部9Reの中心SCから(+X)側(図示右側)にずれた位置RОに合致させた状態で転写動作を実行すると、素子形成材料3の一部3aが、赤色用凹部9Reを形成する(+X)側のバンク8の先端を越えてしまう場合がある。そして、転写動作後に、図8(b)に示すように、赤色用凹部9Reの(+X)側に隣接する緑色用凹部9Ge内に微量の素子形成材料3aが付着する。その後、この緑色用凹部9Ge内に緑色発光材料を含む素子形成材料を転写すると、赤色発光材料を含む素子形成材料3aと混ざり合い、混色という問題が発生する。先に緑色用凹部9Ge内に緑色発光材料を含む素子形成材料を転写し、その後、赤色用凹部9Re内に赤色発光材料を含む素子形成材料を転写した場合も、微量の素子形成材料3aが赤色用凹部9Reから緑色用凹部9Ge内に溢れ出すと、同様に混色という問題が発生する。
【0045】
上述のように、基板90の端部にある凹部9Re,9Ge,9Beに対して、補助領域53(補助部7)を備えない凸版印刷版50aにより転写動作を実行すると、凹部9Re,9Ge,9Beを形成するX方向における外側のバンク8の先端を、素子形成材料3の一部が越えてしまうという問題が発生する場合がある。このように素子形成材料3の一部がバンク8の先端を越えてしまうと、上述のような混色という問題が発生する。また、転写動作が実行された凹部が最外の凹部(例えば凹部9Be)であれば、溢れ出た素子形成材料の一部が凹部ではない基板表面に付着するので、混色という問題は生じないが、素子形成領域90aの最外凹部(例えば凹部9Be)に転写すべき素子形成材料が減ってしまうという別の問題が生じる。
【0046】
図6に戻り、準備工程である許容位置ずれ範囲測定工程(ステップS10)以降の動作について説明する。なお、ステップS20の基板搬入工程以降の動作においては、印刷装置1の版胴33には、図4に示す補助領域53(補助部7)を備えた凸版印刷版50が装着されている。ステップS20の基板搬入工程では、図1に示す転写機構30よりも(+Y)方向側に位置するステージ10上に、搬送機構(図示せず)や操作者により、基板90のバンク8の長手方向がY方向と平行になるように基板90を搬入する。
【0047】
次にステップS30において、例えば特開2008−62461号公報に記載された方法や機構によって、ステージ10の位置をX−Y平面内で微調整し、版胴33に装着された凸版印刷版50に対して、ステージ10に支持された基板90の位置を合わせる(位置決め工程)。このとき、少なくともX方向における凸版印刷版50に対する基板90の位置は、許容位置ずれ範囲測定工程(ステップS10)で求めた許容位置ずれ範囲内に収まるように調整される。
【0048】
位置決め工程(ステップS30)後に、図1に示す転写機構30よりも(+Y)方向側に位置し、基板90を支持するステージ10を、移動機構20により(−Y)方向移動させる(ステップS40、ステージ移動工程)。移動機構20によって(−Y)方向に移動させられるステージ10に支持された基板10の前方端(−Y方向端)が版胴33の下方に到達すると、昇降テーブル65によって転写機構30および供給機構40を下降させて、素子形成材料部3が付着した凸版印刷版50に形成された複数の凸部(6,6e)の前方端(−Y方向端)を、例えば、基板90の複数の赤色用凹部(9R,9Re)の前方端(−Y方向端)に当接させる。また、凸版印刷版50のパターン領域51よりX方向における両側に形成され、素子形成材料が付着した補助部7の前方端(−Y方向端)を、基板90の素子形成領域51よりX方向における両側にある一対の外側領域90cの前方端(−Y方向端)に当接させる。
【0049】
そして、移動機構20によるステージ10の(−Y)方向への移動を継続しつつ、版胴33を回転させることにより、複数の凸部(6,6e)を複数の赤色用凹部(9R,9Re)に対して、Y方向に亘って順次、当接させた後、離間させて、複数の凸部(6,6e)に付着した素子形成材料3を、複数の赤色用凹部(9R,9Re)内に転写する。この転写動作と並行して、X方向において一対の補助部7も基板90の一対の外側領域90cに対して、Y方向に亘って順次、当接した後、離間して、複数の補助部7に付着した素子形成材料3も一対の外側領域90cに転写され、外側領域90cに素子形成材料3が供給される(ステップS50、転写および補助材料供給工程)。なお、補助部7に付着した素子形成材料3が本発明の補助材料として機能している。
【0050】
図9は、上述の転写および補助材料供給工程(ステップS50)の実行途中の状態を模式的に示す図である。図9(a)は、最も(+X)方向側にある赤色用凹部9Reの底面に凸版印刷版50の最も(+X)方向側にある凸部6eの下端が当接した後、版胴33の回転に伴い凸部6eが上昇して赤色用凹部9Reから離間していく状態を示している。また、このとき、補助部7も版胴33の回転に伴い上昇し、基板の外側領域90cから離間していく。この結果、図9(a)に示すように、赤色用凹部9Reよりも基板の外側方向(+X方向)にある外側領域90cに素子形成材料の液溜り部3eが形成される。そして、液溜り部3eからの蒸気(例えば、主溶媒であるキシレンの蒸気)が赤色用凹部9Reよりも基板外側(+X側)の空間におよび蒸気雰囲気3bを形成する。このように、蒸気雰囲気3bが形成されると、転写動作の途中において、赤色用凹部9Reから素子形成材料3の一部が(+X)側のバンク8の上端を越えて溢れ出すことが抑制される。これは、蒸気雰囲気3bが存在するために、(+X)側のバンク8の上端にかかる素子形成材料が自然乾燥する際に発生する蒸気が(+X)側に進行することが抑制されるためである。この結果、(+X)側のバンク8の上端にかかる素子形成材料が自然乾燥するに伴って、(+X)側に引っ張られることが抑制される。なお、赤色用凹部9Reの(−X)側の空間には、(−X)側に存在する他の赤色用凹部9Rに転写された素子形成材料3からの蒸気がおよび蒸気雰囲気が形成されているため、赤色用凹部9Reから(−X)側に素子形成材料3が溢れ出すことも抑制されている。
【0051】
そして、図9(b)に示すように、赤色用凹部9Re内に所望量の素子形成材料3を供給することができて、赤色用凹部9Reの(+X)側に隣接する緑色用凹部9Geに素子形成材料が溢れ出すことを防止できる。なお、基板90の外側領域90cに供給された素子形成材料3eは、後工程で溶解、除去しても良いし、有機EL表示装置内に残存していても問題にならない場合は、そのまま放置しておいても良い。
【0052】
上述のように基板90の外側領域90cに補助材料として機能する素子形成材料3eを供給しない場合は、図8に示すように赤色用凹部9Reの(+X)側に蒸気雰囲気3bが存在しないので、(+X)側のバンク8の上端にかかる素子形成材料が自然乾燥するに伴って、(+X)側に引っ張られて、素子形成材料の一部3aが隣接する緑色用凹部9Geに溢れ出すという問題が発生する。なお、本実施形態において、最も外側にある赤色用凹部9Re以外の赤色用凹部9Rについては、その両側に存在する他の赤色用凹部9Rにも素子形成材料3が転写されるため、赤色用凹部9Rの両側空間は素子形成材料の蒸気雰囲気3bで満たされる。この結果、赤色用凹部9Rにおいて、両側のバンク8の上端にかかる素子形成材料が自然乾燥するに伴って、外側に引っ張られることが抑制されている。
【0053】
図6に戻り、上述の転写および補助材料供給工程(ステップS50)後に、継続して移動しているテーブル10が基台60上の(−Y)側の端部に到達すると、テーブル10の移動を停止する(ステップS60、ステージ停止工程)。そして、搬送機構(図示せず)や操作者により、ステージ10上から基板90を取り上げて搬出する(ステップS70,基板搬出工程)。
【0054】
上述の動作によって、基板90上の複数の赤色用凹部(9R、9Re)に赤色発光材料を含む素子形成材料3を印刷することができる。また、連続して基板90上の複数の緑色用凹部(9G、9Ge)に緑色発光材料を含む素子形成材料を印刷するために、図6に示す動作を実行し、その後、基板90上の複数の青色用凹部(9B、9Be)に青色発光材料を含む素子形成材料を印刷するために、図6に示す動作を実行しても良い。
【0055】
上述の第1実施形態における凸版印刷版50の補助部7の上面(当接面)は、図4に示すように平坦であるが、例えば、図10に示すように補助部の上面を凹凸形状としても良い。例えば、図10(a)に示すように凸部6の長手方向と平行に延び、互いに平行な複数の凸部(斜線で示す)を設けた補助部7aを採用しても良い。また、凸部6の長手方向と直交する方向に延び、互いに平行な複数の凸部を設けた補助部7b(図10(b))、凸部の長手方向が傾斜している補助部7c(図10(c))、格子状の凸部を有する補助部7d(図10(d))、または、円柱状の凸部が千鳥配置された補助部7e(図10(e))をそれぞれ採用しても良い。
【0056】
上述の実施形態においては、素子形成材料3を補助材料として補助部7に供給したが、補助部7に素子形成材料3の溶媒、例えば、主溶媒であるキシレンを供給する機構を別途、設けても良い。この変形例によれば、上述の転写および補助材料供給工程(ステップS50)において、基板90の両外側領域90cに補助材料として素子形成材料3の溶媒が供給される。第1実施形態のように素子形成材料3を補助材料として用いる場合は別途、材料を準備する必要がないという利点があり、変形例のように溶媒を補助材料として用いる場合は、溶媒が自然乾燥することによって基板90上から除去されるので、別途、除去機構を設ける必要がないという利点がある。
【0057】
凸版印刷版50の複数の凸部6,6eの一部または全てを基板90(凹部底面)に当接させず、若干、離間させた状態で転写動作を実行しても良い。同様に、補助部7を基板から若干、離間させた状態で補助材料の供給(転写)動作を実行しても良い。
【0058】
また、上記第1実施形態においては、凸版印刷版50の凸部6(図4)の長手方向が版胴33の外周面方向に沿うように凸版印刷版50が版胴33に装着されているが、この装着形態に替えて、凸版印刷版50の凸部6(図4)の長手方向が版胴33の軸心方向(図1のX方向)に沿うように凸版印刷版50を版胴33に装着しても良い。そして、上記ステップS20の基板搬入工程において、図1に示す転写機構30よりも(+Y)方向側に位置するステージ10上に、搬送機構(図示せず)や操作者により、基板90のバンク8の長手方向がX方向と平行になるように基板90を搬入した後、以降の動作を実行する。つまり、基板90上のバンク8の長手方向(第1方向)と、凸版印刷版90の凸部6の長手方向とが平行となる位置関係で、印刷処理が実行されれば良い。そして、上記許容位置ずれ範囲測定工程(ステップS10)においては、上記第1方向と直交する第2方向における基板90に対する凸版印刷版50の許容位置ずれ範囲を実験的に求め、上記位置決め工程(ステップS30)においては第2方向において基板90に対して凸版印刷版50が許容位置ずれ範囲内に収まるように基板90の位置決め動作を実行すれば良い。
【0059】
次に本発明の第2実施形態について図11を参照して説明する。図11に示す第2実施形態に係る印刷装置1aにおいては、版胴33には補助領域53(補助部7)を備えない凸版印刷版50aが装着されている。また、印刷装置1aは供給機構40より(+Y)方向側に一対のノズル70を備えている。また、一対のノズル70は図11(b)に示すようにステージ10に支持された基板90の素子形成領域90aよりもX方向における一対の外側領域90cに対向するように配置されている。一対のノズル70は補助材料の供給源72に流路接続されている。補助材料としては素子形成材料、または、素子形成材料の溶媒が用いられる。その他の装置構成については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0060】
図12は第2実施形態における印刷装置1aの動作の流れを示すフロー図である。図12において、許容位置ずれ範囲測定工程(ステップS10)、基板搬入工程(ステップS20)、位置決め工程(ステップS30)、ステージ移動工程(ステップS40)、ステージ停止工程(ステップS60)および基板搬出工程(ステップS70)については、第1実施形態における動作と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0061】
ステップS45では、ステージ移動工程(ステップS40)後に移動しているステージ10上に支持された基板90の外側領域90cに向けてノズル70から補助材料が吐出される。この結果、図11(b)に示すように基板90の外側領域90cに対して補助材料3eがY方向に亘って供給される(ステップS45、補助材料供給工程)。
【0062】
次にステップS52の転写工程において、第1実施形態と同様に、例えば赤色用凹部(9R,9Re)に対して素子形成材料3が転写される。このとき、第1実施形態のように補助部7による外側領域90cへの素子形成材料(補助材料)の供給動作は実行されないが、本第2実施形態においては、転写工程に先立って(転写動作の直前に)、ステップS45の補助材料供給工程により外側領域90cへの補助材料の供給動作は実行されている。この結果、第1実施形態と同様に、ステップS45の補助材料供給工程により外側領域90cに形成された補助材料の液溜り部3eからの蒸気が、最も外側にある赤色用凹部9Reよりも基板外側(+X側)の空間におよび蒸気雰囲気3b(図9)を形成する。このように、蒸気雰囲気3bが形成されることにより、転写動作の途中において、赤色用凹部9Reから素子形成材料3の一部が(+X)側のバンク8の上端を越えて溢れ出すことを抑制することができる。
【0063】
上述の各実施形態によれば、基板90の外側領域90cに補助材料3eを供給することによって、素子形成材料3を転写すべき最も外側の凹部(例えば凹部9Re)から外側に素子形成材料3が溢れ出すことを抑制することができる。この結果、基板90に対する凸版印刷版50の位置決め処理において、最も外側の凹部(例えば凹部9Re)から外側に素子形成材料3が溢れ出すことを防止できるほどの高い位置決め精度は要求されない。つまり、上述の各実施形態によれば、比較的、低い精度の位置決め処理によって、最も外側の凹部も含めた全ての凹部から素子形成材料3が溢れ出すことを抑制することができる。
【0064】
上述の第1実施形態および第2実施形態に示す印刷装置1,1aは凸版印刷版50,50aを用いた凸版印刷方式を採用しているが、他の方式の印刷方式に本発明を適用しても良い。例えば、グラビアロールからブランケットロールに素子形成材料を供給した後、ブランケットロールに付着した素子形成材料を基板上の凹部に転写する印刷方式に本発明を適用しても良い。この場合はブランケットロールの表面が本発明の印刷版に相当する。
【符号の説明】
【0065】
1,1a 印刷装置
3 素子形成材料
6 凸部
7 補助部
8 バンク
9R 赤色用凹部
20 移動機構
30 転写機構
33 第2圧電素子
50 凸版印刷版
70 ノズル
90 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延びるとともに第1の方向と直交する第2の方向に沿って互いに平行に基板上に配列された複数のバンクにより、基板上の素子形成領域内に形成された複数の凹部に対して、印刷版に付着した素子形成材料を転写する印刷方法において、
基板に対する印刷版の第2方向における許容位置ずれ範囲を求める準備工程と、
準備工程で求めた許容位置ずれ範囲内に、基板に対して印刷版を位置決めした状態で、基板上の複数の凹部に対して印刷版に付着した素子形成材料を転写する転写工程と、
転写工程と並行して、または、転写工程に先立って実行され、素子形成領域より第2方向における基板上の両外側領域に、素子形成材料に含まれる溶媒を少なくとも含む補助材料を供給する補助材料供給工程と、
を含むことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載される印刷方法において、
準備工程が、転写工程にて印刷版に付着した素子形成材料を転写すべき基板上の凹部の内、第2方向において最も外側にある凹部以外の複数の凹部において、転写工程の際に、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出さない、基板に対する印刷版の第2方向における位置ずれ範囲を前記許容位置ずれ範囲として求めることを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載される印刷方法において、
印刷版が第2方向に配列された複数の凸部を有し、転写工程にて、当該複数の凸部に付着した素子形成材料を前記凹部に転写することを特徴とする印刷方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載される印刷方法において、
補助材料供給工程が、転写工程と並行して、印刷版が有する補助部に付着した補助材料を前記両外側領域に転写する工程であることを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載される印刷方法において、
補助材料供給工程が、転写工程の直前に、前記両外側領域に向けてノズルから補助材料を吐出する工程であることを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載される印刷方法において、
補助材料が素子形成材料であることを特徴とする印刷方法。
【請求項7】
第1の方向に延びるとともに第1の方向と直交する第2の方向に沿って互いに平行に配列された複数のバンクにより、素子形成領域内に形成された複数の凹部を有する基板を支持する支持手段と、
素子形成材料が付着した印刷版と、
予め求められた第2方向における許容位置ずれ範囲内に、支持手段に支持された基板に対して印刷版を位置決めした状態で、基板上の複数の凹部に、印刷版に付着した素子形成材料を転写する転写手段と、
転写手段による転写動作と並行して、または、転写動作の直前に、素子形成領域より第2方向における基板上の両外側領域に、素子形成材料に含まれる溶媒を少なくとも含む補助材料を供給する補助材料供給手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項7に記載される印刷装置において、
前記許容位置ずれ範囲が、印刷版に付着した素子形成材料を転写すべき基板上の凹部の内、第2方向において最も外側にある凹部以外の複数の凹部において、転写手段による転写動作の際に、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出さない、基板に対する印刷版の第2方向における位置ずれ範囲であることを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載される印刷装置において、
印刷版は第2方向に配列された複数の凸部を有し、転写手段は当該複数の凸部に付着した素子形成材料を基板上の複数の凹部に転写することを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
請求7から請求項9のいずれかに記載される印刷装置において、
補助材料供給手段が、転写手段による転写動作と並行して、印刷版に設けた補助部に付着した補助材料を前記両外側領域に転写することを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
請求7から請求項9のいずれかに記載される印刷装置において、
補助材料供給手段が、補助材料を吐出するノズルを有し、転写手段による転写動作の直前に、前記両外側領域に向けてノズルから補助材料を吐出することを特徴とする印刷装置。
【請求項12】
請求項7から請求項11のいずれかに記載される印刷装置において、
補助材料供給手段が補助材料として素子形成材料を前記両外側領域に供給することを特徴とする印刷装置。
【請求項1】
第1の方向に延びるとともに第1の方向と直交する第2の方向に沿って互いに平行に基板上に配列された複数のバンクにより、基板上の素子形成領域内に形成された複数の凹部に対して、印刷版に付着した素子形成材料を転写する印刷方法において、
基板に対する印刷版の第2方向における許容位置ずれ範囲を求める準備工程と、
準備工程で求めた許容位置ずれ範囲内に、基板に対して印刷版を位置決めした状態で、基板上の複数の凹部に対して印刷版に付着した素子形成材料を転写する転写工程と、
転写工程と並行して、または、転写工程に先立って実行され、素子形成領域より第2方向における基板上の両外側領域に、素子形成材料に含まれる溶媒を少なくとも含む補助材料を供給する補助材料供給工程と、
を含むことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載される印刷方法において、
準備工程が、転写工程にて印刷版に付着した素子形成材料を転写すべき基板上の凹部の内、第2方向において最も外側にある凹部以外の複数の凹部において、転写工程の際に、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出さない、基板に対する印刷版の第2方向における位置ずれ範囲を前記許容位置ずれ範囲として求めることを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載される印刷方法において、
印刷版が第2方向に配列された複数の凸部を有し、転写工程にて、当該複数の凸部に付着した素子形成材料を前記凹部に転写することを特徴とする印刷方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載される印刷方法において、
補助材料供給工程が、転写工程と並行して、印刷版が有する補助部に付着した補助材料を前記両外側領域に転写する工程であることを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載される印刷方法において、
補助材料供給工程が、転写工程の直前に、前記両外側領域に向けてノズルから補助材料を吐出する工程であることを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載される印刷方法において、
補助材料が素子形成材料であることを特徴とする印刷方法。
【請求項7】
第1の方向に延びるとともに第1の方向と直交する第2の方向に沿って互いに平行に配列された複数のバンクにより、素子形成領域内に形成された複数の凹部を有する基板を支持する支持手段と、
素子形成材料が付着した印刷版と、
予め求められた第2方向における許容位置ずれ範囲内に、支持手段に支持された基板に対して印刷版を位置決めした状態で、基板上の複数の凹部に、印刷版に付着した素子形成材料を転写する転写手段と、
転写手段による転写動作と並行して、または、転写動作の直前に、素子形成領域より第2方向における基板上の両外側領域に、素子形成材料に含まれる溶媒を少なくとも含む補助材料を供給する補助材料供給手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項7に記載される印刷装置において、
前記許容位置ずれ範囲が、印刷版に付着した素子形成材料を転写すべき基板上の凹部の内、第2方向において最も外側にある凹部以外の複数の凹部において、転写手段による転写動作の際に、隣接する凹部に素子形成材料が溢れ出さない、基板に対する印刷版の第2方向における位置ずれ範囲であることを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載される印刷装置において、
印刷版は第2方向に配列された複数の凸部を有し、転写手段は当該複数の凸部に付着した素子形成材料を基板上の複数の凹部に転写することを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
請求7から請求項9のいずれかに記載される印刷装置において、
補助材料供給手段が、転写手段による転写動作と並行して、印刷版に設けた補助部に付着した補助材料を前記両外側領域に転写することを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
請求7から請求項9のいずれかに記載される印刷装置において、
補助材料供給手段が、補助材料を吐出するノズルを有し、転写手段による転写動作の直前に、前記両外側領域に向けてノズルから補助材料を吐出することを特徴とする印刷装置。
【請求項12】
請求項7から請求項11のいずれかに記載される印刷装置において、
補助材料供給手段が補助材料として素子形成材料を前記両外側領域に供給することを特徴とする印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−64482(P2012−64482A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208805(P2010−208805)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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