説明

印刷方法及び印刷装置

【課題】ガラス基材やプラスチックフィルム、特に生産効率の良い長尺状のプラスチックフィルムなどの可撓性基材上へ、連続的に高精細パターンを形成する印刷方法および印刷装置を提供する。
【解決手段】フィルム基材上の一部にインキ剥離層を設けたインキ剥離性フィルム基材のインキ剥離層上にインキ液膜を塗工し、該インキ液膜を予備乾燥した後、必要な画像部パターンを凹部とした凸版を予備乾燥したインキ膜に押し当て、加熱を施すことなく版の凸部に転移させ、インキ剥離層上に残された画像パターンを目的の被印刷基材表面上へ転写することを特徴とする印刷方法のうち、使用する凸版の一部にあらかじめインキを設けておき、版の凸部へのインキ液膜の転移により画像パターンを得ると同時にインキ剥離性フィルム基材のインキ剥離層が設けてられていない領域へのパターン印刷を行なう事を特徴とする印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基材やプラスチックフィルム、特に生産効率の良い長尺状のプラスチックフィルムなどの可撓性基材上へ、位置合わせされた複数の高精細パターンを連続的に形成する印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイは、省エネルギー、省スペース、可搬性などの点から据え置き型、壁掛け型、携帯型の様々な用途の画像表示装置として利用されている。
特に携帯型においては、携帯時に落下させても破損しないような耐衝撃性や、軽量化、薄型化などの点からプラスチック化への要求がある。また、壁掛け型においても円柱状の柱へのディスプレイの設置という点から可撓性のディスプレイへの要求がある。
【0003】
また、表示方式についても、従来用いられてきた液晶ディスプレイ方式だけでなく、EPD(Electrophoretic Display)などの電子ペーパー方式を用いた読書用端末も広く普及しはじめており、端末の薄型化が競われている。
しかしながら、従来のフラットパネルディスプレイは、何れもガラス基板上に製造された物であり、プラスチック基板上に製造することは難しかった。その理由は、従来のフラットパネルディスプレイの部材の作製には高温での加熱工程を用いたフォトリソグラフィー工程が含まれているためである。
【0004】
例えば、液晶ディスプレイ用のカラーフィルタの製造の際には、感光性樹脂のパターニング、現像、洗浄、ベーキングなどの工程があり、汎用のフィルム基材を用いた場合、熱や水洗によるフィルム基材の損傷や伸縮が生じてしまう。また、ディスプレイの駆動電極である薄膜トランジスタの製造工程では、シリコン半導体や、絶縁膜の形成には300℃以上の高温工程を含み、汎用のフィルム基材の耐熱性を上回っていた。その上、フォトリソグラフィー工程は、製膜、露光、現像、剥離を材料毎に行うので、製造設備も大掛かりとなり、製造のコストが高い。
【0005】
フォトリソグラフィー法の他に、現在プラスチック基材やフィルム基材上へのパターニング方法として、インクジェット方式が検討されている。
インクジェット方式は、所定の部分にのみ所定の材料をパターニングできることから材料の利用効率が高く、マスクや版も使用しないことから最も簡便でオンデマンド性に優れたパターニング方法として期待されている。
【0006】
しかしながら、現状のインクジェットのインク液滴の直径は数十μm程度であり、通常では着弾精度も数十μm程度考慮する必要がある。また、インクジェット方式を用いて精密なパターニングをするためには、あらかじめ基板上にフォトリソグラフィー工程により隔壁パターンや選択的にインキが定着するような表面処理パターンを形成しなければならず、カラーフィルターのブラックマトリクスや薄膜トランジスタ配線などの10μm程度のパターンを形成する方法としては、採用することができない。
【0007】
さらに他の方法としては、電子部品における配線や抵抗体、誘電体の印刷などで実用化されているスクリーン印刷方式が挙げられる。しかしながら、スクリーン印刷方式孔版印刷であることからインキはペースト状の高粘度のものに限られ、また、スクリーンメッシュの精細度から数十μm程度の厚膜の印刷法としては採用できても、やはり10μm前後のパターンを形成する方法としては、採用できない。
【0008】
このような問題に鑑み、これら以外の印刷方法として、フィルム基材へ乾燥インキ膜をあらかじめ設けたいわゆるドライフィルムを、熱圧によりパターン除去した後、残ったパターンを目的の基材に転写する転写方法が考案されている(特許文献1参照)。しかしながら、フィルム基材からインキ層を転写する際に熱圧を用いるために、フィルム基材の膨張・収縮や版の膨張、インキ層の溶融・軟化を伴うことから、数十μm程度の微小なパターンの再現性を得る事が困難である。また、熱圧を均一に与える為の装置も複雑になり、大画面への対応も困難となってしまう。
【0009】
また、版胴に巻き付けたブランケット上にインキを塗工・予備乾燥してインキ膜を形成し、その後、非画像部パターンが形成された凸版をインキ膜に押圧することによりブランケット上に画像パターンを形成し、最後に、ブランケット上の画像パターンを被印刷基材上に転写し、被印刷基材上に画像パターンを形成する印刷方法が知られている。(特許文献2参照)
このような、いわゆる反転印刷と呼ばれる印刷方法は、インキ膜厚を調整することが容易であり、インキ剥離性のブランケット上に画像パターンを形成することから、ガラス基材だけでなくフィルム基材などの被印刷基材へのインキ転写性が良好である。また、インキ膜をブランケット上で予備乾燥することで、インキの流動性を抑える事が可能となり、スクリーン印刷や凸版印刷、凹版印刷などの既存の印刷方法に比べて薄膜での微細パターン形成が可能である。
【0010】
ところが、特許文献2の方法は、シリコーンゴムまたはシリコーン樹脂からなるブランケット上でインキの予備乾燥を行う時に、ブランケット表面のインキ濡れ性や転写性が不安定になるという問題点を有していた。これはブランケットが版胴に固定されたまま乾燥を行うために均一な予備乾燥が困難であり、塗工されたインキ中の溶剤がブランケット内に吸収され膨潤していき、部分的な転写性や精度のバラツキができてしまうことが原因である。また印刷する毎に、ブランケットのクリーニングや乾燥による溶剤膨潤量の調整を行う必要があるため、連続加工に不向きであった。さらに、ブランケットが版胴に固定されているので、あるパターンが形成された基材上に転写する場合に、ブランケット上のパターンと基材上のマークとの位置合わせが困難であった。
【0011】
そこで、ブランケットとして透明なインキ剥離性フィルム基材をロール状に巻き取っておき、必要な長さを間欠に繰り出しながら、インキ塗工や乾燥、転写を行う印刷方法を開発した(特許文献3参照)。この印刷方法では、被印刷基材上の既存パターンに対する印刷の位置あわせは、インキ剥離性フィルム基材にパターニングされたパターンと被印刷基材上のパターンを同時に確認しながら位置あわせが可能なため、精度良い印刷を行うことができた。
【0012】
また、印刷毎にインキ剥離性フィルム基材の一定量を送りだして印刷に用いる事で、印刷工程毎にインキ剥離性フィルム基材表面のクリーニングを行う必要が無く、徐々にインキ中の溶剤がインキ剥離性フィルム基材に吸収され、印刷条件が変化していく事も無いため、常に均一な条件での連続印刷が可能となっていた。
【0013】
しかしながら、上記特許文献3の方法においても、フィルム基材に一合わせ用のアライメントパターンを予め設けなければならず、パターンを設ける際にこのアライメントパターンと画像パターンの位置合わせも行わなければならなかったため、結局、製造工程が煩雑化・複雑化する問題を生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−90117号公報
【特許文献2】特開2001−56405号公報
【特許文献3】特開2008−105400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記のような従来の問題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、ガラス基材やプラスチックフィルム、特に長尺状のプラスチックフィルムなどの可撓性基材上へ連続的に高精細パターンを形成する際に、位置合わせ精度が非常に良好で、かつ生産性を犠牲にしない印刷方法及び印刷装置を提供することである。また、このような印刷方法によるカラーフィルタ、有機エレクトロルミネッセンス素子等の微細パターンを含む製品を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、鋭意研究を行なった結果、以下の構成で示される発明により、上記課題が解決できることを見出した。
(請求項1)
(a)フィルム基材上の片面の一部上に設けられたインキ剥離層上に、インキ液膜を塗工する工程、(b)前記フィルム基材上に設けられた前記インキ液膜を予備乾燥する工程、
(c)必要な画像パターンのネガパターンの第1の凸パターンと、前記第1の凸パターンが形成された領域と別の領域に第2の凸パターンが設けられた凸版を用意して、前記第2の凸パターン上に、アライメント用インキを付与する工程と、
(c)前記凸版を、前記フィルム基材上の前記予備乾燥させたインキ液膜に押し当て前記インキ液膜の一部を除去するとともに、前記前記フィルム基材のうち前記予備乾燥させたインキ液膜が塗工されていなかった領域に前記アライメント用インキを転写する工程と、
(d)前記フィルム基材に転写された前記アライメント用インキと、被印刷基材表面にあらかじめ設けられたアライメントマークを重ねることにより、前記フィルム基材と被印刷基材との位置合わせを行う工程と、
(e)除去されずに前記インキ剥離層上に残された前記インキ液膜のパターンを、被印刷基材表面上へ転写して、被印刷基材に必要な画像パターンを印刷する工程を含む印刷方法。
(請求項2)
前記第1の凸パターンに隣接する凹部の版深に対して、前記第2の凸パターンに隣接する凹部の版深が深い事を特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
(請求項3)
前記フィルム基材上には、一部インキ剥離層が設けられていない領域があり、当該領域にインキの定着を容易にし、印刷パターンのつぶれを防ぐインキ受像層が設けられている事を特徴とする請求項1又は2に記載の印刷方法。
(請求項4)
請求項1〜3に記載の印刷方法により、着色層を形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
(請求項5)
請求項1〜3に記載の印刷方法により、ブラックマトリクスを形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
(請求項6)
請求項1〜3に記載の印刷方法により、有機発光層を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
(請求項7)
請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷方法を行うための印刷装置であって、
前記フィルム基材を巻き取りロールの状態で設置する手段と、
前記フィルム基材にインキを供給するインキ供給手段と、
必要な画像パターンのネガパターンの第1の凸パターンと、前記第1の凸パターンが形成された領域と別の領域に第2の凸パターンが設けられた凸版と、
前記第2の凸パターンにインキを付与する手段と、
前記フィルム基材と凸版とを貼り合わせる手段と、
被印刷基材を保持する吸着ステージと、
印刷工程が進む毎に前期フィルム基材を一定量送り出す手段と、
印刷工程が進む毎に被印刷基材を一定量送り出す手段と、
前記フィルム基材と前記被印刷基材の位置合わせと行うためのカメラとを備えることを特徴とする印刷装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明において、フィルム基材上の一部にインキ剥離層を設けたインキ剥離性フィルム基材のインキ剥離層上にインキ液膜を塗工し、該インキ液膜を予備乾燥した後、必要な画像部パターンを凹部とした凸版を予備乾燥したインキ膜に押し当て、加熱を施すことなく版の凸部に転移させ、インキ剥離層上に残された画像パターンを目的の被印刷基材表面上へ転写することを特徴とする印刷方法のうち、使用する凸版の一部にあらかじめインキを設けておき、版の凸部へのインキ液膜の転移により画像パターンを得ると同時にインキ剥離性フィルム基材のインキ剥離層が設けてられていない領域へのパターン印刷を行なう事により、ディスプレイパネル用パターン等、微細パターンが連続したパターン領域と、パネルパターン周辺の位置合わせ用パターンや、センサー認識用マーク等の独立したパターン領域の印刷条件をそろえる必要が無くなり、安定した印刷を可能にした。
【0018】
本発明において、インキ剥離性フィルム基材に設けられたインキ剥離層上に塗工しパターニングを行うインキと、あらかじめ凸版の一部に定着させておき、インキ剥離性フィルム基材のインキ剥離層が設けられていない領域にパターニングを行うインキの種類や色、膜厚が異なる事により、微細なパターニングを行うインキと、微細なパターン同士の位置あわせを行うために、微細なパターンの周辺部に設けられたアライメントマークを設ける為のインキをそれぞれ最適に選択することができ、微細パターンを構成するインキの色が薄く、顕微鏡カメラなどの光学手段による画像認識が困難な場合においても、アライメントマーク用のパターンを画像認識可能な色とすることが可能になった。
【0019】
本発明においては、前記印刷方法において、インキのパターン形成に用いる凸版のインキ剥離性フィルム基材のインキ剥離層上に設けたインキのパターニングに用いる領域の版深に対して、インキ剥離層が設けられていない領域上へパターン印刷を行う領域の版深が深い事で微細パターンと、アライメントマークやセンサ読み取りマーク等の比較的大きな周辺パターンを同時に再現性よく印刷する事が可能となる。
【0020】
本発明においては、前記印刷方法において、被印刷基材上にあらかじめパターニングされたマークと、インキ剥離性フィルム基材のインキ剥離層が設けられていない領域に凸版印刷を用いてパターニングしたマーク形状を観察し、インキ剥離層上に設けられたパターンの印刷位置あわせを行う事で、つぶれや欠けなどの無いマークを認識し、微細パターン同士の位置あわせを安定して行うことが可能になった。
【0021】
また、本発明においては、前記印刷方法において、一部にインキ剥離層を設けたフィルム基材のインキ剥離層が設けられていない領域に、インキの定着を容易にし、パターンのつぶれを防ぐインキ受像層が設けられている事を特徴とする印刷方法を提供する。
【0022】
また、本発明において、フィルム基材上の一部にインキ剥離層を設けたインキ剥離性フィルム基材を、巻き取りロールの状態で設置し、工程が進む毎に一定量を送り出しながら、インキ剥離性フィルム基材上にパターンを設ける事ができ、さらに被印刷基材上のパターンと位置あわせを行って、得られたパターンを被印刷基材上へ印刷を行う印刷装置を提供することで、上記印刷を行うことを可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態の印刷物の製造方法および印刷装置の一例を説明するための断面図である。
【図2】本発明の実施形態の印刷物の製造方法の一例を説明するための断面図である。 2−a ・・・ インキ剥離性フィルム基材の層構成を示した図。 2−b ・・・ インキ剥離性フィルム基材上の剥離層へのインキ塗工を模した図。 2−c ・・・ 版へインキ剥離性フィルムをラミネートする前段階を模した図。 2−d ・・・ インキ膜をパターニングすると同時に凸版印刷を行う様子を模した図。 2−e ・・・ 被印刷基材と向かい合わせて位置あわせを行う様子を説明する図。 2−f ・・・ 本発明の印刷方法により印刷した被印刷基材を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、以下の構成を含むものである
(a)フィルム基材上の片面の一部上に設けられたインキ剥離層上に、インキ液膜を塗工する工程、(b)前記フィルム基材上に設けられた前記インキ液膜を予備乾燥する工程、
(c)必要な画像パターンのネガパターンの第1の凸パターンと、前記第1の凸パターンが形成された領域と別の領域に第2の凸パターンが設けられた凸版を用意して、前記第2の凸パターン上に、アライメント用インキを付与する工程と、
(c)前記凸版を、前記フィルム基材上の前記予備乾燥させたインキ液膜に押し当て前記インキ液膜の一部を除去するとともに、前記前記フィルム基材のうち前記予備乾燥させたインキ液膜が塗工されていなかった領域に前記アライメント用インキを転写する工程と、
(d)前記フィルム基材に転写された前記アライメント用インキと、被印刷基材表面にあらかじめ設けられたアライメントマークを重ねることにより、前記フィルム基材と被印刷基材との位置合わせを行う工程と、
(e)除去されずに前記インキ剥離層上に残された前記インキ液膜のパターンを、被印刷基材表面上へ転写して、被印刷基材に必要な画像パターンを印刷する工程を含む印刷方法。
【0025】
本発明のインキ剥離性フィルム基材201に用いるフィルム基材202は、プラスチック等の可撓性基材を用いることが可能である。
【0026】
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド(PI)、ナイロン、アラミド、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、トリアセチルセルロース(TAC)などのフィルム、シートを用いることができる。
さらに光透過性のフィルム基材を用いることにより、インキ剥離性フィルム基材201越しに被印刷基材を観察することが可能となり、パターンの重ね合わせ時に位置あわせ(アライメント)を容易とすることができる。
【0027】
これら可撓性基材は長尺の巻き取りロールで供給され、インキ剥離層203やインキ受像層204を塗工し、場合によってはポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)の保護フィルムをラミネート加工した後機械に設置される。
【0028】
本発明に用いるインキ剥離性フィルム基材201に設けられるインキ剥離層203は、フィルム基材202へシリコーンオイル、シリコーンワニスで代表される離型剤を塗っても良いし、あるいはシリコーンゴムの薄膜層を形成してもよい。
また同じ目的でフッ素系樹脂、フッ素系ゴムも利用されうるし、フッ素樹脂微粉末をシリコーンゴムあるいは、普通のゴムに混ぜて剥離性を出すなどの使い方をしてもよい。
これらシリコーン系の塗膜は通常フィルム基材との密着が低いが、熱硬化または紫外線硬化性のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、最表面に設けるシリコーン層に対して、より基材との接着性の高い樹脂層を、アンカー層としてあらかじめフィルム基材上に設け、その上層に設けることもできる。
いずれもインキ剥離層203上では適度のインキ受容性を有すると同時に、一度受容したインキの完全なインキ剥離性を有することが望ましい。
シリコーンとしては、付加硬化型、UV硬化型などの硬化反応タイプの剥離フィルム用シリコーンコート材を用いることができ、ジメチルポリシロキサンの各種分子量のもの、その他メチルハイドロジエンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、あるいはこれらポリシロキサンと有機化合物との共重合体など、変成したものを用いることができる。
【0029】
シリコーンゴムとしては、二液型のジオルガノポリシロキサンと架橋剤としての三官能性以上のシラン、またはシロキサン及び硬化触媒を組み合わせたもの、あるいは一液型ではジオルガノポリシロキサンとアセトンオキシム、各種メトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等の組み合わせなどが用いられ、その他ゴム硬度を調節するためのポリシロキサンが適宜用いられる。
具体的なシリコーン系材料としては、東レ・ダウコーニング(株)製 SRX211、LTC750A、LTC760A、BY24−510、信越化学(株)製 KS774、KS847、KS5508、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製 TPR6700、TPR6702、TPR6710、TPR6721、TPR6500、荒川化学工業(株)製 UV−POLY200,UV−POLY201などを用いることができるが、これらは限定されるものではない。
【0030】
また硬化タイプにあわせて、各種硬化触媒や光開始剤が用いられ、適宜添加される。例えば、剥離層形成材料として用シリコーンコート材を用いる場合には、東レ・ダウコーニング(株)製SRX212,NC−25,BY24−835など、信越化学(株)製 PL−50Tなど、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製 CM670、UV9380など、荒川化学工業(株)製UV−CATA211などを硬化触媒、光開始剤として用いることができる。
これらシリコーン材料は、主にトルエンなどの溶剤で希釈し、公知の塗工方法であるグラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター等を用いて基材表面に塗工、次いで乾燥させ本発明の印刷方式に用いる事ができる。
また、本発明に用いるインキ剥離性フィルム基材201のインキ剥離層203として、上記フィルム基材202に無機膜を設けた後、シランカップリング剤による表面処理を施したものを用いることもできる。シランカップリング剤としては、トリメトキシシラン類、トリエトキシシラン類などを用いることができる。このシランカップリング剤の一部位は、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基などの有機化合物との反応性基を持つものから選ぶことができ、あるいはアルキル基やその一部にフッ素原子が置換されたものやシロキサンが結合して、表面自由エネルギーの小さな表面を形成できる置換基が結合したものを用いることができる。
【0031】
前者の反応性基を有するシランカップリング剤を用いる場合には、シランカップリング剤で基材表面を処理した後、所定の表面自由エネルギーになるような他のモノマー成分を塗工して、結合させることができる。反応性基を有するシランカップリング剤としては、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを用いることができ、モノマーとして、スチレン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチルプロパントリグリシジルエーテル、ラウリルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどを用いることができる。また、反応性基を有さないシランカップリング剤としてはメチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシランなどを用いることができる。但し、アルキル基に限定されるものではない。
上記シランカップリング剤を上記基材に固定化する方法としては、シランカップリング剤を使用した公知の表面処理方法を用いることができる。例えば、シランカップリング剤を水、酢酸水溶液、水−アルコール混合液、あるいはアルコール溶液に希釈させた溶液を調製する。
【0032】
前記溶液を公知の塗工方法であるグラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター等を用いて基材表面に塗工し、次いで乾燥させることでシランカップリング剤を固定化できる。
また、反応性基を有するシランカップリング剤を用いた場合には、次いで他のモノマー成分を同様に塗工して結合させることができる。
【0033】
上記シランカップリング剤を基材上に固定化するためには、あらかじめ基材上にSiO2やTiO2、ZrO2もしくはこれらの複合膜が設けられていることが好ましい。これら無機酸化膜は既知の蒸着法やスパッタ法を用いて設けたものを用いることができる。
【0034】
また、上記無機酸化膜を設ける方法として、一般式M(OR)nで表される金属アルコキシド(MはSi,Ti,Al,Zrなどの金属、RはCH3,C2H5などのアルキル基)を水、アルコールの共存下で加水分解反応および縮重合反応させて得られたゲル溶液を表面にコーティング後、加熱することで無機酸化物膜を設ける、いわゆるゾル−ゲル法を用いることができる。
【0035】
さらに、上記ゾル−ゲル法で用いる金属アルコキシド溶液中にあらかじめ上記シランカップリング剤を添加しておくこともできる。この場合、表面性改質に特に効果が得られる。
このようにして得られるインキ剥離性フィルム基材201は、微細加工を行うパターンに応じてインキ剥離層203を塗工する領域を調整することができる。
例えば、ダイコーターを用いてフィルム基材202上にインキ剥離層203を塗工する場合、塗工ヘッド209のインク吐出領域を増減させてフィルム基材幅に対するインキ剥離層203の塗工幅を変更し、フィルム基材202表面が露出する領域を残しておく事ができる。
また、グラビアコーターやロールコーターを用いてインキ剥離層203を形成する場合には、あらかじめ微粘着フィルムなどでフィルム基材202をマスクすることで、フィルム基材202表面の露出部分を設けることができる。
【0036】
また、インキ剥離層203に対するインキ剥離性は、処理面へインキを滴下した際の接触角が、10°以上90°以下となるのが好ましく、より好ましくは20°以上70°以下である。この接触角が小さいと後工程でのインキ剥離性が低下してパターンの欠陥(再現性不良等)が発生しやすくなり、接触角が大きいとインキ膜205を形成する際にハジキが生じて、均一なインキ膜205を形成することが困難になる。
【0037】
本発明における印刷方法では、インキ剥離性フィルム基材201上のインキ剥離層203が設けられていない領域には、凸版印刷のインキをつぶれなく印刷するためのインキ受像層204を設けることが可能である。(図2を見るとインキ剥離層が設けられている領域に、あわせて受像層が設けられていますが、図が間違いでしょうか?)インキ受像層204には公知の材料を用いることができるが、透明であること、受像したインクの変色や褪色がないこと、諸耐性があることなどの性能が要求され、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールなどのビニル樹脂やアクリル共重合体樹脂、ポリエステル、ポリウレタン等の樹脂、またはこれらの混合物を適宜選択して用いる。
【0038】
また、インクの受像性を高めるために、この樹脂に微粒子(フィラー)を含有させることも有効である。フィラーとしては、無機微粒子では微粉末珪酸、有機微粒子ではアクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、フッソ樹脂などから適宜選択して用いる。また、フィラーの添加量は、受像層100重量部に対し1〜10部が好ましい。上記に示したインキ剥離性フィルム基材201のインキ剥離層203上へインキ膜205を形成する方法としては、インキの粘度や溶媒の乾燥性によって公知の塗工方法を用いることができる。すなわち、例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等が挙げられる。中でも、ダイコート、キャップコート、ロールコート、アプリケータは、広い範囲の粘度のインキについて均一なインキ液膜を形成することができ、さらにその中でも可動するインキ剥離性フィルム基材201上へ連続的に形成する場合は、ダイコートが最も効率的で好適な形成方法である。
【0039】
インキ剥離性フィルム基材201上へ前記方法によりインキ膜205を形成した後に、前記インキ膜205を予備乾燥する。この予備乾燥には自然乾燥、冷風・温風乾燥、マイクロ波、減圧乾燥などを用いることができ、また、紫外線、電子線などの放射線を用いることもできる。この予備乾燥では、前記インキ膜205の粘度またはチキソトロピー性、脆性を上げることを目的とする。予備乾燥による乾燥が不十分な場合は、後工程の凸版206の凸部を押し当て剥離する際に、インキ膜205が断裂し不良が発生してしまう。逆に乾燥し過ぎた場合は、インキ膜205表面のタック性が無くなり、凸版206にインキが転写されない。
【0040】
そのため、使用するインキの組成によって乾燥状態を乾燥時間や雰囲気温度により調節するが、乾燥したインキ膜205に対して0.1%から4%の溶剤の残留が認められる状態が好ましい。
いわゆるドライフィルムといわれるppmオーダーの溶剤残留量では乾燥が行き過ぎであり、インキが転写されない不具合や、版の押し付けによりインキ膜205が部分的に剥離してゴミの原因になる不具合があるため、予備乾燥したインキ膜205の条件として適さない。
【0041】
本特許の印刷方式で用いる凸版206としては、無アルカリガラス等の低膨張ガラス表面に感光性樹脂を用いてマスクパターンを形成した後、既存のドライエッチング処理やウエットエッチング処理、もしくはサンドブラスト処理を用いて、2μmから30μmの版深を設けたものを用いることができる。ここで、凸版には、画像パターンを形成するための第1の凸パターンと、後にフィルム基材と被印刷基材とのアライメントに用いるための第2の凸パターンが設けられている。
第2の凸パターンは、第1の凸パターンが設けられた領域とは別の領域に設けられており、好ましくは第1の凸パターンの周辺部を囲むように、線上に、又は点状のパターンとして設けられている。
【0042】
例えば、画像パターンとして、5μm〜200μm程度の微細パターニングを行う場合は、エッチング処理の際に版深方向への加工に応じて幅方向へのエッチングも進んでしまう事から2μm〜10μm程度の版深とし、200μm〜数mm幅のプロセス制御用マークなどの周辺は、版深が浅いと、インキ剥離層203上のインキ膜205が凹部パターンの中央付近に接触してしまうことから、10μm〜30μm程度の版深とするのが良い。
【0043】
また、凸版206の一部に設けられたパターンを用いてインキ剥離性フィルム基材201のインキ剥離層203が設けられていないフィルム基材202表面に凸版印刷を行う場合も、パターン凸部にのみインキの定着が行い易いように、それらパターン周辺は10μm〜30μmの版深とすることが好ましい。また、異なる版深のパターンを同一版中に混在させる為には、それぞれの版深に応じたマスクを用意し、あらかじめ深い版深のエッチング処理を行ってから、浅い版深のエッチング処理を行うのが好ましい。(クレーム及び図面には、画像パターンは浅い版深、アライメントパターンには深い版深となってますが、その効果は何でしょうか?)
【0044】
本発明の印刷方式において使用する凸版206にはナイロン、アクリル、シリコーン樹脂、スチレン−ジエン共重合体などからなるものを用いることもできる。
またエチレン−プロピレン系、ブチル系、ウレタン系ゴムなどのゴム製の版を用いることもできる。このような樹脂製の凸版206は、すでに凸版印刷やフレキソ印刷用に用いられており、予め作製した型に所定の樹脂を流し込んで版とする、あるいは彫刻によっても作製することができるが、感光性樹脂を用いる方法がより高精度のものを作製できる。
【0045】
本発明の印刷方式において使用する凸版206は、さらに前記ガラス基材の一部に各種方式により凹凸を設けた版上に、膜厚0.5μm〜2μmにフォトリソグラフィーを用いて感光性樹脂をパターニングし、十分に硬化させた表面上に、保護層として硬化性樹脂や無機膜をコーティングしたものを用いることができる。
【0046】
本発明の印刷方法は、被印刷基材208としてガラスやプラスチック板などを用いる事ができるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ナイロン、アラミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロースなどのフィルム、シートを用いることもできる。
【0047】
被印刷基材208は印刷に適用するインキの乾燥条件に合わせて選定すればよく、耐熱性が必要な場合ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミドなどが好適である。また、さらに無機フィラーを樹脂に添加して耐熱性を向上させた材料からなる基材でもよい。これら被印刷基材208としてのフィルムおよびシートは、延伸フィルムでもよく、未延伸フィルムでもよい。また、可撓性基材には必要に応じてガスバリア層や平滑化層、インキ受像層が印刷面または他の面に積層されていても良い。
【0048】
インキ膜205を構成するインキ材料としては、画像パターン形成材料に溶媒を溶解又は分散させたものを用いることができる。例えば、カラーフィルターにおいて赤色、緑色、青色からなるカラーパターン(着色層)やブラックマトリックス等を本発明の製造方法により形成する場合、顔料成分と樹脂成分を溶媒中に溶解、分散させることによりインキとなる。
顔料には、例えば、赤、緑、青の各色で使用できる顔料として次のものが挙げられる。顔料の種類は、カラーインデックス(C.I.)No.で示す。まず、赤色顔料として、97、122、123、149、168、177、180、192、208、209、215などが、緑色顔料として7、36などが、青色顔料として、15、15:1、15:3、15:6、22、60、64などが挙げられる。ブラックマトリクスを製造する場合には、墨顔料として、カーボンブラック、チタンブラックなどが材料として、挙げられる。
【0049】
また、これら赤、緑及び青顔料の色調整及びインキの流動性を改善するために、赤色、緑色、青色以外にも、例えば、黄顔料として、17、83、109、110、128などが、紫顔料として、19、23などが、白顔料として、18、21、27、28などが、橙顔料として、38、43などが挙げられる。さらに、顔料は、単体以外に、顔料を予め分散剤、有機溶剤に分散させた顔料分散体であっても良い。樹脂成分には、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上のものが使用される。
【0050】
溶剤には、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤及び炭化水素系溶剤などが使用される。エステル系溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、アルコール系溶剤として、1−ブタノール、3メトキシ−3メチル−1ブタノール、1−ヘキサノール、1,3ブタンジオール、1−ペンタノール、2−メチル1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、エーテル系溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、炭化水素系溶剤として、ソルベッソ100、ソルベッソ150(製品名エクソン化学社製)などが挙げられる。
【0051】
また、本発明により、有機エレクトロルミネッセンス素子の有機発光層を印刷形成する場合、例えば、ポリフェニレンビニレン(PPV)といった高分子発光材料を溶媒としてトルエンやキシレンといった芳香族系有機溶媒に溶解、分散させることによりインキとなる。
【0052】
また、本発明により、回路基材の金属配線を印刷形成する場合、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウム等の金属微粒子分散液を水やアルコール、グリコール系溶媒に溶解、分散させることによりインキとなる。
【0053】
また、これらのインキには必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、レベリング剤等が添加されてもよい。
【0054】
本発明に用いられる凸版印刷用インキ207としては、凸版印刷法、グラビア印刷法(凹版印刷法)、オフセット印刷法、スクリーン印刷法で用いられる公知のインクを用いることができる。
【0055】
本実施形態に係る印刷方法は、巻き取りロール状で供給されたインキ剥離性フィルム基材201へインキ膜205を塗工し(図2:2−b)、該インキ膜205を予備乾燥した後、凸部パターンが非画像パターンである凸版206を押し当て(図2:2−c)、インキ膜205の不要なパターンを版の凸部に転写除去するとともに、インキ剥離性フィルム基材201の一部に設けられたインキ受像層204へ凸版印刷用インキ207による位置あわせマークや管理マークを印刷し(図2:2−d)、該インキ剥離性フィルム基材201上に残った画像パターンを被印刷基材208へ転写することを特徴とする。
【0056】
被印刷基材208への位置あわせ印刷が必要な場合、凸版印刷用インキ207によりパターニングされた位置あわせマークとあらかじめ被印刷基材208上に設けられたパターンとを重ね合わせ、同時にマークを観察しながら位置調整を行い印刷する(図2:2−e)ことを特徴とする。
【0057】
次に、本発明による印刷方法を具体化する印刷装置の一例を、被印刷基材208を可撓性基材とした場合として図1に示し、実際のパターニング工程に従って説明する。
【0058】
印刷装置は、インキ剥離性フィルム基材巻き出し部101、インキ剥離性フィルム基材巻き取り部107、被印刷基材巻き出し部108、被印刷基材巻き取り部110等のインキ剥離性フィルム基材201または、被印刷基材208の搬送に関わる装置部と、塗工部102、乾燥部103、パターン除去部104、アライメント部105、貼りあわせ部106、被印刷基材乾燥部109によって構成される。
【0059】
インキ剥離性フィルム基材巻き出し部101、インキ剥離性フィルム基材巻き取り部107、被印刷基材巻き出し部108、被印刷基材巻き取り部110等の搬送部は、それぞれ巻き取りロールで供給される原反を設置または、巻き取るため直径3インチから30インチの芯を装着できるマウンターを備えたシリンダーと、回転やテンションを制御してフィルム基材を搬送するためのモーターを備える。
【0060】
装着される被印刷基材208としてのフィルム原反幅は100mm〜1000mmが選択できるが、パターンの実用性と転写位置精度を考慮し300mm幅が選択される。
【0061】
また、インキ剥離性フィルム基材201や被印刷基材208等のフィルム基材のテンションの制御は、これら装置以外に搬送系にニップ部を設置して基材を保持することでも調節を行うことができる。
【0062】
ニップ部は、主に搬送ロールに備わったエアー吸着孔による吸着ニップが用いられる。
搬送は、各工程で必要な時間差を緩和し、フィルムの連続搬送を行うためのバッファを備えた場合、5m/sec〜10m/secの連続搬送を行うことができるが、インキ剥離性フィルム基材201や被印刷基材208を、工程毎に必要な長さ繰り出す方式を用いるのが好ましい。
【0063】
塗工部102は、可動ステージと、可動ステージ上に設けられたインキ剥離性フィルム基材201に対しインキ膜205を塗布する塗工装置が設置されている。
【0064】
可動ステージは、ボールねじやリニアモーター等で駆動するものを用いることができ、金属製、石製などのものを用いることができるが少なくとも水平方向に水平を保ったまま往復運動することができ、インキ剥離性フィルム基材201を吸着することができる。
【0065】
吸着による表面の凹凸を防ぐためにフィルムのエッジ付近のみ吸着孔を設ける方法や、多孔質性材料を用いた吸着表面を用いる方法を選択することができる。
【0066】
塗工装置は、連続加工や膜厚の均一性が優れるダイ方式のものについて説明するが、これに限定するものではない。
【0067】
塗工ヘッド209として用いるダイヘッドには、別に用意されたインキ供給用のポンプから所定量のインキを供給することができる。
【0068】
この塗工ヘッド209とインキ剥離性フィルム基材201とのギャップは印刷開始前に設定してもよく、また可動式ステージの搬送に合わせて塗工ヘッド209を上下動させて調整してもよい。
【0069】
乾燥部103は、上記塗工部102でインキ剥離性フィルム基材201へ塗工したインキ膜205を乾燥させるために設置されるもので、ホットプレート、オーブン、温風、減圧乾燥、紫外線照射などの乾燥装置を設けてもよい。
【0070】
パターン除去部104は、可動ステージに樹脂製またはガラス製の凸版206が吸着により装着されており、インキ剥離性フィルム基材201上のインキ膜205面を該凸版206に近づけた後、可動ステージの移動とともに圧胴による加重をかけ、凸版206の凸部と接したインキ膜205を凸版206の凸部表面に転移させる。
【0071】
アライメント部105は、可動性ステージと複数の顕微鏡カメラ210から構成されており、可動性ステージ上に吸着した被印刷基材208上に、インキ剥離性フィルム基材201上のインキ膜205を100〜250μmに近づけた後、インキ剥離性フィルム基材201が透明なことを利用して、インキ剥離性フィルム基材201上に得られたパターンの一部やアライメント用のマークパターンと、被印刷基材208上のパターンを透過画像で認識し、それぞれの基材パターンを認識した画像を基に可動性ステージを動作させ転写位置の補正を行うことができる。
【0072】
また、インキ剥離性フィルム基材201と被印刷基材208の間に顕微鏡カメラ210を挿入し、それぞれの基材上のパターンを認識した画像を基に位置の補正を行う方法も選択できる。
【0073】
上記顕微鏡カメラ210は光学顕微鏡、CCD(Charge Coupled Device)顕微鏡のどちらであっても良いが、オートフォーカス、電気的に制御可能な手動焦点制御機構のいずれか、もしくはその両方の機能を必要とし、観察の為に外部に設置したモニターや位置補正の為の画像処理装置へのインターフェースを持つものとすることができる。
【0074】
貼りあわせ部106には、前記アライメント部105に設置された可動性ステージ上に金属ローラーまたはゴムローラーが設けられる。
【0075】
可動性ステージに固定された被印刷基材208と、わずかな隙間をあけて設置されたインキ剥離性フィルム基材201の上からローラーを押し当て、可動性ステージの移動と共にローラーを回転させながら印圧をかけ、つぎにインキ剥離性フィルム基材201を被印刷基材208から剥がすことにより画像部パターンを被印刷基材208上へ転写することができる。
【0076】
フィルム基材乾燥部109は、被印刷基材208上に転写された画像パターンを乾燥させるために設置されるもので、ホットプレート、オーブン、温風、減圧乾燥、紫外線照射などの乾燥装置を設けることが可能であるが、被印刷基材の巻き取り時のブロッキングを防止する為に必要な乾燥が可能であればよく、具体的には120℃で3分から5分間の熱乾燥を行うのが良い。
【実施例1】
【0077】
カラーフィルター用赤色インキを次の要領で調製した。下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径1mmのガラスビーズを用い、サンドミルで5時間分散し、さらに5μmのフィルタでろ過して赤色顔料の分散体を得た。
[カラーフィルター用赤色顔料分散体の組成]
・赤色顔料:
C.I.Pigment Red 254 (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガーフォーレッドB−CF」) 18重量部
C.I.Pigment Red 177 (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「クロモフタールレッドA2B」) 2重量部
・アクリルワニス(固形分20%)
108重量部
その後、下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルタで濾過して赤色着色インキを得た。
〔赤色着色インキの組成〕
・上記分散体 100重量部
・メチル化メチロールメラミン: MW−30(三洋化成社製) 20重量部
・レベリング剤:メガファックF−483SF(DIC社製)1重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 85重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 45重量部
【0078】
インキ剥離性フィルム基材としては、基材厚約100μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱樹脂株式会社製 ダイヤホイルT600)500mm幅、300m上の中央300mm幅にダイコーターを用い、乾燥後膜厚が10μm程度になるように剥離性シリコーン樹脂(信越化学株式会社製 KS847を硬化剤CAT−PL−50Tを固形分重量比2%加えたもの)を塗工し、140℃で乾燥・硬化させた。巻取りの際には、上記シリコーン塗工部を300mm幅40μm厚PP(ポリプロピレン)フィルムをラミネートしマスクした。
つぎにダイアロマーIJ−2101(大日精化工業社製)50部をイソプロパノール/トルエン=2/1200部に溶解し、ロールコーターにて乾燥膜厚1μmとなるよう塗工したのち、80℃にて乾燥後、マスクに用いたPPフィルムを除去しながら巻き取り、インキ剥離性フィルム基材を得た。
【0079】
パターンを設けるための凸版としては、300mmx300mm×0.7mmのCr付き無アルカリガラス上に、2種のフォトマスクを用いて、位置あわせ用マークおよび表示パネル用パターンをエッチングにより設けた。位置あわせ用マークは版深10μmで、250μm□の4つの角に設け、表示パネル用パターンは版の中心部180mm□の範囲内に、凸部20μm幅、凹部80μm幅の連続したストライプパターンを版深2μmで設けた。
さらに、被印刷基材としてフィルム厚120μmの光透過性PET基材を300mm幅、20mのロール状で用意した。ダイアロマーIJ−2101(大日精化工業社製)50部をイソプロパノール/トルエン=2/1200部に溶解し、乾燥厚さ1μmとなるように全面にコーティングした。
これら部材を用い、図1の装置を用いて加工を行った。
まず、塗工部ステージ上に新しいインキ剥離層表面が来るようにインキ剥離性フィルム基材を繰り出し、300mm幅のヘッドを用いたダイコーターにより、塗工長さ350mm、膜厚0.8μmでインキをコーティングした。
【0080】
つぎに、設置された40℃IR炉中で30秒乾燥を行い、塗工部がパターン除去部ステージ上に設置されるまで搬送を行った後、さらに室温で120秒待機した。
版の位置あわせ用マーク周辺に黒の市販油性墨インキ(東洋インキ社製)を設けた後、装置上の転写ステージに設置し、インキ剥離性フィルム基材上のインキ塗工部を版上に搬送後、ゴムローラーで押し当て非画像部を版の凸部へ転移させると同時にインキ剥離性フィルム基材上に位置あわせマークを印刷した。つぎに、インキ剥離性フィルム基材上に残ったパターン部を、あらかじめ位置あわせマークが印刷された被印刷基材が吸着固定されたアライメント部ステージ上まで搬送した。
2つのアライメント用カメラで対角上のアライメントマークを確認した後、さらにゴムローラーでインキ剥離性フィルム基材と被印刷基材を貼り合わせ、つぎにステージから動かしながらインキ剥離性フィルム基材を被印刷基材から剥がすことによって、被印刷基材への画像パターンの転写を行った。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の印刷方法は、ガラス基材や、プラスチックフィルム等の可撓性基材、とりわけ長尺状の可撓性基材へ高精細パターンの薄膜印刷を連続に安定して行うことができるので、カラーパターン、ブラックマトリクス、ホワイトマトリクス、スペーサー等のカラーフィルター部材、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、ゲート絶縁膜、有機半導体材料等のトランジスタ部材、有機発光層等の有機EL素子の製造に利用できる。
【符号の説明】
【0082】
101 ・・・インキ剥離性フィルム基材巻き出し部
102 ・・・塗工部
103 ・・・乾燥部
104 ・・・凸版貼りあわせ/パターン除去部
105 ・・・アライメント部
106 ・・・吸着ステージ/貼りあわせ部
107 ・・・インキ剥離性フィルム基材巻き取り部
108 ・・・被印刷基材巻き出し部
109 ・・・被印刷基材乾燥部
110 ・・・被印刷基材巻き取り部
201 ・・・インキ剥離性フィルム基材
202 ・・・フィルム基材
203 ・・・インキ剥離層
204 ・・・インキ受像層
205 ・・・インキ層
206 ・・・凸版
207 ・・・凸版印刷用インキ
208 ・・・被印刷基材
209 ・・・塗工ヘッド
210 ・・・位置あわせ用カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)フィルム基材上の片面の一部上に設けられたインキ剥離層上に、インキ液膜を塗工する工程、(b)前記フィルム基材上に設けられた前記インキ液膜を予備乾燥する工程、
(c)必要な画像パターンのネガパターンの第1の凸パターンと、前記第1の凸パターンが形成された領域と別の領域に第2の凸パターンが設けられた凸版を用意して、前記第2の凸パターン上に、アライメント用インキを付与する工程と、
(c)前記凸版を、前記フィルム基材上の前記予備乾燥させたインキ液膜に押し当て前記インキ液膜の一部を除去するとともに、前記前記フィルム基材のうち前記予備乾燥させたインキ液膜が塗工されていなかった領域に前記アライメント用インキを転写する工程と、
(d)前記フィルム基材に転写された前記アライメント用インキと、被印刷基材表面にあらかじめ設けられたアライメントマークを重ねることにより、前記フィルム基材と被印刷基材との位置合わせを行う工程と、
(e)除去されずに前記インキ剥離層上に残された前記インキ液膜のパターンを、被印刷基材表面上へ転写して、被印刷基材に必要な画像パターンを印刷する工程を含む印刷方法。
【請求項2】
前記第1の凸パターンに隣接する凹部の版深に対して、前記第2の凸パターンに隣接する凹部の版深が深い事を特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記フィルム基材上には、一部インキ剥離層が設けられていない領域があり、当該領域にインキの定着を容易にし、印刷パターンのつぶれを防ぐインキ受像層が設けられている事を特徴とする請求項1又は2に記載の印刷方法。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の印刷方法により、着色層を形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3に記載の印刷方法により、ブラックマトリクスを形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3に記載の印刷方法により、有機発光層を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷方法を行うための印刷装置であって、
前記フィルム基材を巻き取りロールの状態で設置する手段と、
前記フィルム基材にインキを供給するインキ供給手段と、
必要な画像パターンのネガパターンの第1の凸パターンと、前記第1の凸パターンが形成された領域と別の領域に第2の凸パターンが設けられた凸版と、
前記第2の凸パターンにインキを付与する手段と、
前記フィルム基材と凸版とを貼り合わせる手段と、
被印刷基材を保持する吸着ステージと、
印刷工程が進む毎に前期フィルム基材を一定量送り出す手段と、
印刷工程が進む毎に被印刷基材を一定量送り出す手段と、
前記フィルム基材と前記被印刷基材の位置合わせと行うためのカメラとを備えることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−78464(P2012−78464A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222071(P2010−222071)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】