印刷用版およびそれを用いた印刷方法
【課題】本発明の印刷用版およびそれを用いた印刷方法は、スキージング法にペースト充填時に版枠のマスクからのペースト落下を防止して、品質の高い回路基板を提供することを目的とするものである。
【解決手段】ペースト充填時に版枠1に設けた隙間吸収部3にスキージを通過させることでマスク2へのペースト残りを減少させることで充填機(図示せず)のステージへのペースト落下を防止することができ品質に優れた回路基板が得られる。
【解決手段】ペースト充填時に版枠1に設けた隙間吸収部3にスキージを通過させることでマスク2へのペースト残りを減少させることで充填機(図示せず)のステージへのペースト落下を防止することができ品質に優れた回路基板が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数層の回路パターンを導電性ペーストでインナービアホール接続してなる両面あるいは多層基板の製造において用いられる印刷用版およびそれを用いた印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高密度化に伴い、産業用にとどまらず民生用の分野においても多層基板が強く要望されるようになってきた。
【0003】
特に多層基板の高密度化は回路パターンの微細化が進み、より複数層の回路パターンとともに基板の薄板化が望まれている。
【0004】
このような回路基板では、複数層の回路パターンの間をインナービアホール接続する接続方法および信頼度の高い構造の新規開発が不可欠なものになっているが、導電性ペーストによりインナービアホール接続した新規な構成の高密度の回路基板製造法が提案されている。
【0005】
ここでは導電ペーストによるインナービアホール接続のベースとなる両面基板の製造方法とペースト充填方法について説明する。
【0006】
図9(a)〜(f)は従来の両面回路基板の製造方法の工程断面図であり、図10は従来例の開口部を有するマスクを取り付けた版枠を示す斜視図である。
【0007】
図11(a)〜(d)はスキージング法による導電性ペースト充填の工程断面図である。
【0008】
図9において、21は300mm×300mm、厚さ約100μmのプリプレグシートであり、例えば不織布の全芳香族ポリアミド繊維に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させた複合材からなる基材が用いられ、プリントシート21の表裏には0.01μm以下の厚みでSi系の離型層部を形成した厚さ約16μm、幅300mmのプラスチックフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートなどからなるマスクフィルム22a,22bが接着されている。
【0009】
プリプレグシート21へのマスクフィルム22a,22bの張り合わせはラミネート装置を用いてプリプレグシート21の樹脂成分を溶融させてマスクフィルム22a,22bが連続的に接着する方法(特開平7−106760)が提案されている。
【0010】
23は貫通孔であり、プリプレグシート21の両面に貼り付ける厚さ18μmの銅などの金属はく25a,25bと電気的に接続する銅などの導電性粒子とエポキシ系樹脂などからなる導電性ペースト24が充填されている。
【0011】
両面回路基板の製造は、まず、図9(a)に示すように、両面にマスクフィルム22a,22bが接着されたプリプレグシート21の所定の箇所に図9(b)に示すように、レーザー加工法などを利用して貫通孔23が形成される。
【0012】
次に図9(c)に示すように、貫通孔23に導電性ペースト24が充填される。導電性ペースト24を充填する方法としては、貫通孔23を有するプリプレグシート21を一般の印刷機(図示せず)のステージ上に設置し、ウレタンゴムなどの2本のスキージを交互に用いて往復させることで直接導電性ペースト24がマスクフィルム22aの上から充填される。
【0013】
このとき、上面のマスクフィルム22a,22bは印刷マスクの役割と、プリプレグシート21a表面の汚染防止の役割を果たしている。
【0014】
導電性ペースト24の充填方法について図10、図11(a)〜(d)を用いて説明する。
【0015】
導電性ペースト24の充填にはスキージング法が用いられているが、プリプレグシート21には専用のマスクフィルム22a,22bが配置されているため、図10に示すように、充填用の版10の版枠1には厚さ約3mmのステンレス製でスキージの通過を容易にするためにスキージ進行方向約15°の傾斜を設けた260mm×260mmの開口部4を有し、かつスキージ進行方向と直交する両側の開口部4の約10mm幅をペースト充填時の圧力損失にならない厚み(薄く)としたマスク2が取り付けられている。
【0016】
導電性ペースト24の充填は、まず、図11(a)に示すように、印刷機(図示せず)のステージ6に載置した両面にマスクフィルム22a,22bが接着され、貫通孔23が形成されたプリプレグシート21にマスク2がセットされ、上方に設けられた上下左右に移動・加圧可能な往側スキージ5aと復側スキージ5bのうち往側スキージ5aのみをマスク2上の所定位置に降下させ、圧力をかけて導電性ペースト24をローリングさせながら前進させる。スキージ5a,5bの材質はウレタンなどの一般のスキージゴムを用いている。
【0017】
そして、図11(b)に示すように、往側スキージ5aをマスク2の傾斜部、プリプレグシート21を通過させ、再度反対側のマスク2の定位置でストップした後、上昇させ導電性ペースト24を自然落下させている。
【0018】
次に、図11(d)に示すように、復側スキージ5bのみをマスク2上に所定位置に下降させる。
【0019】
その後、図11(c)〜(d)に示すように、往側スキージ5aと同様に復側スキージ5bをマスク2とプリプレグシート21上を通過させることで貫通孔23への導電性ペースト24の充填が完了する。
【0020】
次に図9(d)に示すように、プリプレグシート21の両面からマスクフィルム22a,22bが剥離される。
【0021】
そして、図9(e)に示すように、プリプレグシート21の両面に銅などの金属はく25a,25bが重ねられ、この状態で熱プレスで加熱加圧することにより、図9(f)に示すように、プリプレグシート21の厚み(t1=約100が圧縮される(t2=約80μm)とともにプリプレグシート21と金属はく25a,25bとが接着され、両面の金属はく25は所定位置に設けた貫通孔23に充填された導電性ペースト24により電気的に接続される。
【0022】
そして、両面の金属はく25a,25bを選択的にエッチングして回路パターンが形成され(図示せず)両面回路基板が得られる。
【0023】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1および特許文献2が知られている。
【特許文献1】特開平6−268345号公報
【特許文献2】特開平7−106760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明者は、上記の従来の回路基板の製造方法のペースト充填方法における以下の課題を見出した。
【0025】
すなわち、スキージを往復させてペーストを充填する際、スキージが版枠サイズより長くなると版枠に接触して下降ができなくなるため、版枠のサイズよりも1mm程度短くカットして使用している。ところが、ウレタンなどのゴム材は、切断や保管の温度、湿度によってmm単位で変化する。
【0026】
一般のスクリーン印刷では、スクリーン幅の1/3程度が製品の印刷範囲となるため、スキージ長が多少変化しても問題とはならない。
【0027】
しかしながら、本回路基板の製造方法の導電性ペースト充填方法においては、図12に示すように、版枠1とスキージ5aあるいは5bとの隙間8に残った導電性ペースト24は、わずか10mm幅のマスク2上に残ることになる。
【0028】
隙間8が小さい場合は、残る導電性ペースト24も少なくなるため問題とならないが、一定以上の隙間8になると、導電性ペースト充填が終了後、図13に示すように、版枠1の10mm幅のマスク2上の導電性ペースト24が流れ出しステージ6に落下する。
【0029】
導電性ペーストの落下現象は、流動が小さく(静止状態)なると粘度が低下するようなダイラタント性を有する導電性ペースト24ほど落下しやすい。
【0030】
そして、導電性ペースト24が落下したステージ6に次のプリプレグシート21がセットされ、導電性ペースト24充填されると、ステージ6からプリプレグシート21を取り出す際、ステージ6上に落下した導電性ペースト24にプリプレグシート21との貫通孔内の導電性ペースト24が引き抜かれて導電性ペースト24がなくなり断線が発生する、という問題を本発明者は把握した。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記目的を達成するために、本発明のペースト印刷・充填方法は、スキージ進行方向と直交する両側と版枠との隙間ばらつきを吸収することで接続抵抗が安定した高品質な回路基板を提供することを目的とするものである。
【0032】
本発明の請求項1に記載の発明は、開口部と非開口部を有するマスクを少なくとも四辺の版枠に固定した印刷用版において、スキージ進行方向の両側に隙間吸収部を設けた印刷用版というものであり、版枠のスキージ進行方向に隙間吸収部を設けたことで、ペースト充填後、版枠のスキージ進行方向のマスク上へのペースト残りを減少させて、印刷機のステージへのスキージとの接触面にペースト落下を防止できる版を提供できる。
【0033】
本発明の請求項2に記載の発明は、隙間吸収部は、スキージ両端との接触面に平坦部と傾斜部を有する構造である請求項1に記載の印刷用版というものであり、隙間吸収部は平坦部と傾斜部を有する印刷用版を用いることでスキージの両端を隙間吸収部への接触、変形、摺動を円滑に行うことができる印刷方法を提供するものである。
【0034】
本発明の請求項3に記載の発明は、隙間吸収部はスキージ上昇時にスキージ最下点と接触せず、かつ投入したペーストが隙間吸収部から漏れ出さない高さである請求項1に記載の印刷用版というものであり、往側および復側スキージを用いた印刷にも対応し、隙間吸収部の適正高さによって、一方のスキージがペースト充填中に上昇して移動する他方のスキージ一部と隙間吸収部との接触を防止し、使用するペーストが隙間吸収部から版枠のマスク上に漏れ出さない印刷用版を提供することにより、ペースト充填を円滑に行うことができる。
【0035】
本発明の請求項4に記載の発明は、隙間吸収部の表面平滑性がマスクの表面平滑性と同等以上である請求項1に記載の印刷用版というものであり、スキージの摺動を容易にし、さらに磨耗を防止するという作用を有する。
【0036】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の印刷用版を用いてペーストを被印刷物に印刷する方法であって、印刷時にスキージの両端を変形させて前記版枠との隙間を吸収することを特徴とする印刷方法というものであり、スキージの両端を隙間吸収部への接触、変形、摺動を円滑に行うことができ、これにより、ペースト充填後、版枠のスキージ進行方向のマスク上へのペースト残りを減少させて、印刷機のステージへのスキージとの接触面にペースト落下を防止し、さらに、スキージ進行方向と直交する両側と版枠との隙間ばらつきを吸収することで、接続抵抗が安定した高品質な回路基板を提供することができる。
【0037】
本発明の請求項6に記載の発明は、隙間吸収部にスキージを接触、変形させることを特徴とする請求項5に記載の印刷方法というものであり、隙間吸収部にスキージを接触させることにより、印刷時にスキージの両端を容易に変形させることができる。
【0038】
本発明の請求項7に記載の発明は、スキージの両端の一部に変形吸収部を設けた請求項5に記載の印刷方法というものであり、スキージが隙間吸収部に進入する際の負荷を低減し、スキージの変形とスキージ進行時の圧力減衰を小さくすることができる。
【0039】
本発明の請求項8に記載の発明は、スキージの厚み方向の一部を薄くして変形吸収部とした請求項5に記載の印刷方法というものであり、スキージの厚みが厚いことによる隙間吸収部に進入する際の負荷を低減し、ペーストの貫通孔への充填圧力に支障が生じない印刷方法を提供するものである。
【0040】
本発明の請求項9に記載の発明は、ペーストがニュートニアンまたはダイラタント性を有する請求項5に記載の印刷方法というものであり、特にペーストの混練が停止した時粘度が低下するダイラタント性や粘度上昇がないニュートニアン性のペースト使用時の効果が大である。
【0041】
本発明の請求項10に記載の発明は、被印刷物が基材両面にマスクフィルムが張り合わされかつ貫通孔が形成されたものであり、印刷が前記貫通孔にペーストを充填することを特徴とする請求項5に記載の印刷方法というものであり、貫通孔へのペースト充填印刷に使用する低粘度のペーストを用いた場合においても、ペーストが被印刷物の貫通孔上に落下することがない。これにより、ステージ上に落下した導電性ペーストにプリプレグシートの貫通孔内の導電性ペーストが引き抜かれるという問題、あるいは、マスクフィルムを剥がす際の悪影響を解消するという作用を有する。
【0042】
本発明の請求項11に記載の発明は、金属粉末と、熱硬化性樹脂と、硬化剤で構成されたペーストを用いた請求項5に記載の印刷方法というものであり、貫通孔へのペースト充填印刷に使用する金属粉末を含有した導電性ペースト等の低粘度のペーストを用いた場合においても、ペースト品質に悪影響を及ぼす可能性を解消するという作用を有する。
【発明の効果】
【0043】
以上のように、本発明のペースト充填方法は、版枠にスキージとの隙間吸収部を設けてマスク上に残るペーストを減少させることで、ステージ上へのペースト落下防止が可能となり品質に優れた回路基板が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
(実施の形態)
両面回路基板の製造方法の工程断面図については従来法と同一であり、説明を省略し、ペースト充填方法と充填用の版について説明する。
【0045】
図1は本発明の版の斜視図、図2は平面図である。図3は本発明の版の隙間吸収部高さ説明断面図であり、図4(a)〜(d)は本発明のスキージング法によるペースト充填の工程断面図である。図5は本発明のペースト充填時の一部断面図である。
【0046】
本実施の形態において、導電性ペーストが充填されるプリプレグシート(300×300mm、厚さ約100μm)には専用のマスク用フィルムがラミネータを用いて接着され、貫通孔が形成されている。
【0047】
このため、図1、図2に示すように、充填用の版10の版枠1には厚さ約3mmのステンレス製でスキージの通過を容易にするためにスキージ進行方向約15°の傾斜を設けた260mm×260mmの開口部4を有し、かつスキージ進行方向と直交する両側の開口部4の約10mm幅をペースト充填時の圧力損失にならない厚み(薄く)としたマスク2が取り付けられている。
【0048】
さらに、版枠1のスキージ進行方向の両側には隙間吸収部3が接着剤で取り付けられている。
【0049】
本実施の形態では隙間吸収部3の厚みをそれぞれ0.7mmとして、図2に示すように往側スキージ5aの導電性ペースト充填開始下降付近から復側スキージ5b充填下降位置付近までとし、前記隙間吸収部3両側のスキージ5a,5b進入部にスキージ破損・磨耗防止を目的に傾斜部3bを設けている。
【0050】
隙間吸収部3の高さは図3に示すように、上昇して移動するスキージ(図3では復側スキージ5b)が隙間吸収部3と接触しないように、上昇して移動するスキージの最下点より低く、かつ充填中の導電性ペーストが漏れない高さにすることが好ましい。
【0051】
本実施の形態では、隙間吸収部3はステンレス板を加工して板枠1に張り付けたが、材料は他の金属材料や樹脂材料を用いても良く、板枠1本体に直接形成しても良い。
【0052】
また、隙間吸収部3のスキージ両端との接触面となる平坦部3aと傾斜部3bは、スキージの磨耗(ゴミの発生)を防止するためバフ研磨仕上げとし、表面平滑性をマスク2の表面平滑性と同等以上とした。
【0053】
上記充填用の版10を用いての導電性ペーストの充填方法について、図4(a)〜(d)を用いて説明する。
【0054】
この時使用した導電性ペースト24は平均粒径2μmの銅粉末を用い、樹脂としては熱硬化性エポキシ樹脂(無溶剤型)、アミン系の硬化剤をそれぞれ85重量%、12.5重量%、2.5重量%となるように3本ロールにて十分に混練したもので、導電性ペースト24は粘度測定時、回転速度を速くすると粘度が上昇するダイラタント性を有しており、使用前の粘度はE型粘度計で回転数0.5rpmで約50Pa・sである。
【0055】
導電性ペースト24の充填は、まず、図4(a)に示すように印刷機(図示せず)の吸着固定の機能を有するステージ6に載置した両面にマスクフィルムが接着され、貫通孔23が形成されたプリプレグシート21にマスク2をセットする。
【0056】
そして、上方に設けられた上下左右に移動・加圧可能な往側スキージ5aと復側スキージ5bのうち往側スキージ5aのみをマスク2上の所定位置に降下させ、0.1MPaの圧力をかけて50mm/sの速度で導電性ペースト24をローリングさせながら前進させる。
【0057】
スキージ5aの加圧にはエアーを用いている。スキージ5aが前進した直後、図1および図2に示す隙間吸収部3に接触、進入する。
【0058】
本実施の形態ではスキージ5aと隙間吸収部3との隙間をゼロにするため、隙間吸収部3間の寸法より長いものを用いた。
【0059】
隙間吸収部3が従来の版枠の内側に相当する版枠の一部)ため、従来例での版では、下降時に版枠の一部に接触して使用できないスキージ長である。
【0060】
図5にスキージ5aが隙間吸収部3に接触する一部位の断面図を示すように、版枠1とスキージ5a間に隙間8はあるものの、隙間吸収部3よりスキージ5aの方が長く、隙間吸収部3との間には隙間8はない状態である。
【0061】
この状態で隙間吸収部3に進入することになるが、往側スキージ5aをスキージホルダー7より長く設計していることで、隙間吸収部3にスキージ5aが進入する時に、図6に示すように、スキージ5aの一部が変形して通過を可能にすることができる。
【0062】
往側スキージ5aの厚みが厚く隙間吸収部3に進入に負荷がかかり充填圧力に支障が発生するようであれば、図7に示すように、往側スキージ5a両端の一部を加工してスキージの変形吸収部13を設けることで、スキージの変形とスキージ進行時の圧力減衰を小さくすることができる。
【0063】
スキージの変形吸収部13の形状に制限はなく、スキージ両端の厚み方向でかつ充填時に基材と接触する稜線以外を薄くすれば良い。
【0064】
ここでは、往側スキージ5aを例に説明したが、復側スキージ5bについても同様であることは言うまでもない。
【0065】
次に、図4(b)に示すように、往側スキージ5aをマスク2の傾斜部、プリプレグシート21を通過させ、再度反対側のマスク2の定位置でストップした後、上昇させ導電性ペースト24を自然落下させる。
【0066】
そして、図4(c)に示すように、復側スキージ5bのみをマスク2上の所定位置に下降させる。
【0067】
その後、図4(d)に示すように、往側スキージ5aと同様に復側スキージ5bを隙間吸収部(図示せず)を介してマスク2とプリプレグシート21上を通過させることで貫通孔23への導電性ペースト24の充填が完了する。
【0068】
本実施の形態での版を用いて導電性ペーストを充填した結果、図8に示すように、スキージ5a,5b通過後にスキージ進行方向と直交する方向の約10mm幅のマスク2上には導電性ペースト24がほとんど残らず、ダイラタント性を有する導電性ペースト24であってもステージ6上に落下しないことを確認した。
【0069】
実施の形態では隙間吸収部よりスキージを長くしたが、短い場合は従来例と同様レベルまで使用可能となり、2ヵ所の隙間吸収部の総和分(実施の形態の場合は1.4mm)まで吸収できる。
【0070】
また、隙間吸収部の厚みは0.7mmとしたが、充填圧力やスキージ磨耗など品質上問題ない厚みに設定すればよい。
【0071】
なお、実施の形態ではダイラタント性の導電性ペーストを用いたが、ペースト混練が停止しても粘度上昇がないニュートニアン性であっても、版枠とスキージとの隙間が大きい場合は導電性ペーストの落下現象がみられるため、本発明の導電性ペースト落下防止策が有効であることはいうまでもない。
【0072】
また、実施の形態では2層の回路基板に用いる基材への導電性ペーストの充填方法としたが、多層基板に用いる基材への導電性ペースト充填への本発明の導電性ペースト落下防止策が有効であることが容易に推測できる。
【0073】
また、実施の形態では銅導電性ペーストを用いたが、銀、金およびこれらの合金の粉末もしくは半田を主成分とする導電性ペーストや高分子材料を主成分とする導電性ペーストであっても良く、マスク用のフィルムを配置した基材への導電性ペースト充填であれば、本発明の導電性ペースト落下防止策が有効であることが容易に推測できる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように本発明にかかるペースト充填方法は、ペースト充填時のステージへのペースト落下を解消して接続品質の安定化が図れるもので、導電性ペーストでインナービアホール接続を備えた回路基板全般に有用であり、本発明の産業上の利用可能性は大といえる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の版の斜視図
【図2】本発明の版の平面図
【図3】本発明の版の隙間吸収部の高さ説明図
【図4】本発明のスキージング法によるペースト充填の工程断面図
【図5】本発明の版の隙間吸収部にスキージが接触する一部位の断面図
【図6】本発明の版の隙間吸収部をスキージ通過時の一部位平面図
【図7】本発明のスキージ変形吸収部の一部位平面図
【図8】本発明のペースト充填後のペースト残り説明断面図
【図9】従来の両面回路基板の製造方法の工程断面図
【図10】従来例の開口部を有するマスクを取り付けた版枠を示す斜視図
【図11】従来例のスキージング法によるペースト充填の工程断面図
【図12】従来例の版の隙間吸収部にスキージが接触する一部位の断面図
【図13】従来例のペースト充填後のペースト落下説明断面図
【符号の説明】
【0076】
1 版枠
2 マスク
3 隙間吸収部
3a 平坦部
3b 傾斜部
4 開口部
5a 往側スキージ
5b 復側スキージ
6 ステージ
7 スキージホルダー
8 隙間
10 版
21 プリプレグシート
22a,22b マスクフィルム
23 貫通孔
24 導電性ペースト
25a,25b 金属はく
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数層の回路パターンを導電性ペーストでインナービアホール接続してなる両面あるいは多層基板の製造において用いられる印刷用版およびそれを用いた印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高密度化に伴い、産業用にとどまらず民生用の分野においても多層基板が強く要望されるようになってきた。
【0003】
特に多層基板の高密度化は回路パターンの微細化が進み、より複数層の回路パターンとともに基板の薄板化が望まれている。
【0004】
このような回路基板では、複数層の回路パターンの間をインナービアホール接続する接続方法および信頼度の高い構造の新規開発が不可欠なものになっているが、導電性ペーストによりインナービアホール接続した新規な構成の高密度の回路基板製造法が提案されている。
【0005】
ここでは導電ペーストによるインナービアホール接続のベースとなる両面基板の製造方法とペースト充填方法について説明する。
【0006】
図9(a)〜(f)は従来の両面回路基板の製造方法の工程断面図であり、図10は従来例の開口部を有するマスクを取り付けた版枠を示す斜視図である。
【0007】
図11(a)〜(d)はスキージング法による導電性ペースト充填の工程断面図である。
【0008】
図9において、21は300mm×300mm、厚さ約100μmのプリプレグシートであり、例えば不織布の全芳香族ポリアミド繊維に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させた複合材からなる基材が用いられ、プリントシート21の表裏には0.01μm以下の厚みでSi系の離型層部を形成した厚さ約16μm、幅300mmのプラスチックフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートなどからなるマスクフィルム22a,22bが接着されている。
【0009】
プリプレグシート21へのマスクフィルム22a,22bの張り合わせはラミネート装置を用いてプリプレグシート21の樹脂成分を溶融させてマスクフィルム22a,22bが連続的に接着する方法(特開平7−106760)が提案されている。
【0010】
23は貫通孔であり、プリプレグシート21の両面に貼り付ける厚さ18μmの銅などの金属はく25a,25bと電気的に接続する銅などの導電性粒子とエポキシ系樹脂などからなる導電性ペースト24が充填されている。
【0011】
両面回路基板の製造は、まず、図9(a)に示すように、両面にマスクフィルム22a,22bが接着されたプリプレグシート21の所定の箇所に図9(b)に示すように、レーザー加工法などを利用して貫通孔23が形成される。
【0012】
次に図9(c)に示すように、貫通孔23に導電性ペースト24が充填される。導電性ペースト24を充填する方法としては、貫通孔23を有するプリプレグシート21を一般の印刷機(図示せず)のステージ上に設置し、ウレタンゴムなどの2本のスキージを交互に用いて往復させることで直接導電性ペースト24がマスクフィルム22aの上から充填される。
【0013】
このとき、上面のマスクフィルム22a,22bは印刷マスクの役割と、プリプレグシート21a表面の汚染防止の役割を果たしている。
【0014】
導電性ペースト24の充填方法について図10、図11(a)〜(d)を用いて説明する。
【0015】
導電性ペースト24の充填にはスキージング法が用いられているが、プリプレグシート21には専用のマスクフィルム22a,22bが配置されているため、図10に示すように、充填用の版10の版枠1には厚さ約3mmのステンレス製でスキージの通過を容易にするためにスキージ進行方向約15°の傾斜を設けた260mm×260mmの開口部4を有し、かつスキージ進行方向と直交する両側の開口部4の約10mm幅をペースト充填時の圧力損失にならない厚み(薄く)としたマスク2が取り付けられている。
【0016】
導電性ペースト24の充填は、まず、図11(a)に示すように、印刷機(図示せず)のステージ6に載置した両面にマスクフィルム22a,22bが接着され、貫通孔23が形成されたプリプレグシート21にマスク2がセットされ、上方に設けられた上下左右に移動・加圧可能な往側スキージ5aと復側スキージ5bのうち往側スキージ5aのみをマスク2上の所定位置に降下させ、圧力をかけて導電性ペースト24をローリングさせながら前進させる。スキージ5a,5bの材質はウレタンなどの一般のスキージゴムを用いている。
【0017】
そして、図11(b)に示すように、往側スキージ5aをマスク2の傾斜部、プリプレグシート21を通過させ、再度反対側のマスク2の定位置でストップした後、上昇させ導電性ペースト24を自然落下させている。
【0018】
次に、図11(d)に示すように、復側スキージ5bのみをマスク2上に所定位置に下降させる。
【0019】
その後、図11(c)〜(d)に示すように、往側スキージ5aと同様に復側スキージ5bをマスク2とプリプレグシート21上を通過させることで貫通孔23への導電性ペースト24の充填が完了する。
【0020】
次に図9(d)に示すように、プリプレグシート21の両面からマスクフィルム22a,22bが剥離される。
【0021】
そして、図9(e)に示すように、プリプレグシート21の両面に銅などの金属はく25a,25bが重ねられ、この状態で熱プレスで加熱加圧することにより、図9(f)に示すように、プリプレグシート21の厚み(t1=約100が圧縮される(t2=約80μm)とともにプリプレグシート21と金属はく25a,25bとが接着され、両面の金属はく25は所定位置に設けた貫通孔23に充填された導電性ペースト24により電気的に接続される。
【0022】
そして、両面の金属はく25a,25bを選択的にエッチングして回路パターンが形成され(図示せず)両面回路基板が得られる。
【0023】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1および特許文献2が知られている。
【特許文献1】特開平6−268345号公報
【特許文献2】特開平7−106760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明者は、上記の従来の回路基板の製造方法のペースト充填方法における以下の課題を見出した。
【0025】
すなわち、スキージを往復させてペーストを充填する際、スキージが版枠サイズより長くなると版枠に接触して下降ができなくなるため、版枠のサイズよりも1mm程度短くカットして使用している。ところが、ウレタンなどのゴム材は、切断や保管の温度、湿度によってmm単位で変化する。
【0026】
一般のスクリーン印刷では、スクリーン幅の1/3程度が製品の印刷範囲となるため、スキージ長が多少変化しても問題とはならない。
【0027】
しかしながら、本回路基板の製造方法の導電性ペースト充填方法においては、図12に示すように、版枠1とスキージ5aあるいは5bとの隙間8に残った導電性ペースト24は、わずか10mm幅のマスク2上に残ることになる。
【0028】
隙間8が小さい場合は、残る導電性ペースト24も少なくなるため問題とならないが、一定以上の隙間8になると、導電性ペースト充填が終了後、図13に示すように、版枠1の10mm幅のマスク2上の導電性ペースト24が流れ出しステージ6に落下する。
【0029】
導電性ペーストの落下現象は、流動が小さく(静止状態)なると粘度が低下するようなダイラタント性を有する導電性ペースト24ほど落下しやすい。
【0030】
そして、導電性ペースト24が落下したステージ6に次のプリプレグシート21がセットされ、導電性ペースト24充填されると、ステージ6からプリプレグシート21を取り出す際、ステージ6上に落下した導電性ペースト24にプリプレグシート21との貫通孔内の導電性ペースト24が引き抜かれて導電性ペースト24がなくなり断線が発生する、という問題を本発明者は把握した。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記目的を達成するために、本発明のペースト印刷・充填方法は、スキージ進行方向と直交する両側と版枠との隙間ばらつきを吸収することで接続抵抗が安定した高品質な回路基板を提供することを目的とするものである。
【0032】
本発明の請求項1に記載の発明は、開口部と非開口部を有するマスクを少なくとも四辺の版枠に固定した印刷用版において、スキージ進行方向の両側に隙間吸収部を設けた印刷用版というものであり、版枠のスキージ進行方向に隙間吸収部を設けたことで、ペースト充填後、版枠のスキージ進行方向のマスク上へのペースト残りを減少させて、印刷機のステージへのスキージとの接触面にペースト落下を防止できる版を提供できる。
【0033】
本発明の請求項2に記載の発明は、隙間吸収部は、スキージ両端との接触面に平坦部と傾斜部を有する構造である請求項1に記載の印刷用版というものであり、隙間吸収部は平坦部と傾斜部を有する印刷用版を用いることでスキージの両端を隙間吸収部への接触、変形、摺動を円滑に行うことができる印刷方法を提供するものである。
【0034】
本発明の請求項3に記載の発明は、隙間吸収部はスキージ上昇時にスキージ最下点と接触せず、かつ投入したペーストが隙間吸収部から漏れ出さない高さである請求項1に記載の印刷用版というものであり、往側および復側スキージを用いた印刷にも対応し、隙間吸収部の適正高さによって、一方のスキージがペースト充填中に上昇して移動する他方のスキージ一部と隙間吸収部との接触を防止し、使用するペーストが隙間吸収部から版枠のマスク上に漏れ出さない印刷用版を提供することにより、ペースト充填を円滑に行うことができる。
【0035】
本発明の請求項4に記載の発明は、隙間吸収部の表面平滑性がマスクの表面平滑性と同等以上である請求項1に記載の印刷用版というものであり、スキージの摺動を容易にし、さらに磨耗を防止するという作用を有する。
【0036】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の印刷用版を用いてペーストを被印刷物に印刷する方法であって、印刷時にスキージの両端を変形させて前記版枠との隙間を吸収することを特徴とする印刷方法というものであり、スキージの両端を隙間吸収部への接触、変形、摺動を円滑に行うことができ、これにより、ペースト充填後、版枠のスキージ進行方向のマスク上へのペースト残りを減少させて、印刷機のステージへのスキージとの接触面にペースト落下を防止し、さらに、スキージ進行方向と直交する両側と版枠との隙間ばらつきを吸収することで、接続抵抗が安定した高品質な回路基板を提供することができる。
【0037】
本発明の請求項6に記載の発明は、隙間吸収部にスキージを接触、変形させることを特徴とする請求項5に記載の印刷方法というものであり、隙間吸収部にスキージを接触させることにより、印刷時にスキージの両端を容易に変形させることができる。
【0038】
本発明の請求項7に記載の発明は、スキージの両端の一部に変形吸収部を設けた請求項5に記載の印刷方法というものであり、スキージが隙間吸収部に進入する際の負荷を低減し、スキージの変形とスキージ進行時の圧力減衰を小さくすることができる。
【0039】
本発明の請求項8に記載の発明は、スキージの厚み方向の一部を薄くして変形吸収部とした請求項5に記載の印刷方法というものであり、スキージの厚みが厚いことによる隙間吸収部に進入する際の負荷を低減し、ペーストの貫通孔への充填圧力に支障が生じない印刷方法を提供するものである。
【0040】
本発明の請求項9に記載の発明は、ペーストがニュートニアンまたはダイラタント性を有する請求項5に記載の印刷方法というものであり、特にペーストの混練が停止した時粘度が低下するダイラタント性や粘度上昇がないニュートニアン性のペースト使用時の効果が大である。
【0041】
本発明の請求項10に記載の発明は、被印刷物が基材両面にマスクフィルムが張り合わされかつ貫通孔が形成されたものであり、印刷が前記貫通孔にペーストを充填することを特徴とする請求項5に記載の印刷方法というものであり、貫通孔へのペースト充填印刷に使用する低粘度のペーストを用いた場合においても、ペーストが被印刷物の貫通孔上に落下することがない。これにより、ステージ上に落下した導電性ペーストにプリプレグシートの貫通孔内の導電性ペーストが引き抜かれるという問題、あるいは、マスクフィルムを剥がす際の悪影響を解消するという作用を有する。
【0042】
本発明の請求項11に記載の発明は、金属粉末と、熱硬化性樹脂と、硬化剤で構成されたペーストを用いた請求項5に記載の印刷方法というものであり、貫通孔へのペースト充填印刷に使用する金属粉末を含有した導電性ペースト等の低粘度のペーストを用いた場合においても、ペースト品質に悪影響を及ぼす可能性を解消するという作用を有する。
【発明の効果】
【0043】
以上のように、本発明のペースト充填方法は、版枠にスキージとの隙間吸収部を設けてマスク上に残るペーストを減少させることで、ステージ上へのペースト落下防止が可能となり品質に優れた回路基板が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
(実施の形態)
両面回路基板の製造方法の工程断面図については従来法と同一であり、説明を省略し、ペースト充填方法と充填用の版について説明する。
【0045】
図1は本発明の版の斜視図、図2は平面図である。図3は本発明の版の隙間吸収部高さ説明断面図であり、図4(a)〜(d)は本発明のスキージング法によるペースト充填の工程断面図である。図5は本発明のペースト充填時の一部断面図である。
【0046】
本実施の形態において、導電性ペーストが充填されるプリプレグシート(300×300mm、厚さ約100μm)には専用のマスク用フィルムがラミネータを用いて接着され、貫通孔が形成されている。
【0047】
このため、図1、図2に示すように、充填用の版10の版枠1には厚さ約3mmのステンレス製でスキージの通過を容易にするためにスキージ進行方向約15°の傾斜を設けた260mm×260mmの開口部4を有し、かつスキージ進行方向と直交する両側の開口部4の約10mm幅をペースト充填時の圧力損失にならない厚み(薄く)としたマスク2が取り付けられている。
【0048】
さらに、版枠1のスキージ進行方向の両側には隙間吸収部3が接着剤で取り付けられている。
【0049】
本実施の形態では隙間吸収部3の厚みをそれぞれ0.7mmとして、図2に示すように往側スキージ5aの導電性ペースト充填開始下降付近から復側スキージ5b充填下降位置付近までとし、前記隙間吸収部3両側のスキージ5a,5b進入部にスキージ破損・磨耗防止を目的に傾斜部3bを設けている。
【0050】
隙間吸収部3の高さは図3に示すように、上昇して移動するスキージ(図3では復側スキージ5b)が隙間吸収部3と接触しないように、上昇して移動するスキージの最下点より低く、かつ充填中の導電性ペーストが漏れない高さにすることが好ましい。
【0051】
本実施の形態では、隙間吸収部3はステンレス板を加工して板枠1に張り付けたが、材料は他の金属材料や樹脂材料を用いても良く、板枠1本体に直接形成しても良い。
【0052】
また、隙間吸収部3のスキージ両端との接触面となる平坦部3aと傾斜部3bは、スキージの磨耗(ゴミの発生)を防止するためバフ研磨仕上げとし、表面平滑性をマスク2の表面平滑性と同等以上とした。
【0053】
上記充填用の版10を用いての導電性ペーストの充填方法について、図4(a)〜(d)を用いて説明する。
【0054】
この時使用した導電性ペースト24は平均粒径2μmの銅粉末を用い、樹脂としては熱硬化性エポキシ樹脂(無溶剤型)、アミン系の硬化剤をそれぞれ85重量%、12.5重量%、2.5重量%となるように3本ロールにて十分に混練したもので、導電性ペースト24は粘度測定時、回転速度を速くすると粘度が上昇するダイラタント性を有しており、使用前の粘度はE型粘度計で回転数0.5rpmで約50Pa・sである。
【0055】
導電性ペースト24の充填は、まず、図4(a)に示すように印刷機(図示せず)の吸着固定の機能を有するステージ6に載置した両面にマスクフィルムが接着され、貫通孔23が形成されたプリプレグシート21にマスク2をセットする。
【0056】
そして、上方に設けられた上下左右に移動・加圧可能な往側スキージ5aと復側スキージ5bのうち往側スキージ5aのみをマスク2上の所定位置に降下させ、0.1MPaの圧力をかけて50mm/sの速度で導電性ペースト24をローリングさせながら前進させる。
【0057】
スキージ5aの加圧にはエアーを用いている。スキージ5aが前進した直後、図1および図2に示す隙間吸収部3に接触、進入する。
【0058】
本実施の形態ではスキージ5aと隙間吸収部3との隙間をゼロにするため、隙間吸収部3間の寸法より長いものを用いた。
【0059】
隙間吸収部3が従来の版枠の内側に相当する版枠の一部)ため、従来例での版では、下降時に版枠の一部に接触して使用できないスキージ長である。
【0060】
図5にスキージ5aが隙間吸収部3に接触する一部位の断面図を示すように、版枠1とスキージ5a間に隙間8はあるものの、隙間吸収部3よりスキージ5aの方が長く、隙間吸収部3との間には隙間8はない状態である。
【0061】
この状態で隙間吸収部3に進入することになるが、往側スキージ5aをスキージホルダー7より長く設計していることで、隙間吸収部3にスキージ5aが進入する時に、図6に示すように、スキージ5aの一部が変形して通過を可能にすることができる。
【0062】
往側スキージ5aの厚みが厚く隙間吸収部3に進入に負荷がかかり充填圧力に支障が発生するようであれば、図7に示すように、往側スキージ5a両端の一部を加工してスキージの変形吸収部13を設けることで、スキージの変形とスキージ進行時の圧力減衰を小さくすることができる。
【0063】
スキージの変形吸収部13の形状に制限はなく、スキージ両端の厚み方向でかつ充填時に基材と接触する稜線以外を薄くすれば良い。
【0064】
ここでは、往側スキージ5aを例に説明したが、復側スキージ5bについても同様であることは言うまでもない。
【0065】
次に、図4(b)に示すように、往側スキージ5aをマスク2の傾斜部、プリプレグシート21を通過させ、再度反対側のマスク2の定位置でストップした後、上昇させ導電性ペースト24を自然落下させる。
【0066】
そして、図4(c)に示すように、復側スキージ5bのみをマスク2上の所定位置に下降させる。
【0067】
その後、図4(d)に示すように、往側スキージ5aと同様に復側スキージ5bを隙間吸収部(図示せず)を介してマスク2とプリプレグシート21上を通過させることで貫通孔23への導電性ペースト24の充填が完了する。
【0068】
本実施の形態での版を用いて導電性ペーストを充填した結果、図8に示すように、スキージ5a,5b通過後にスキージ進行方向と直交する方向の約10mm幅のマスク2上には導電性ペースト24がほとんど残らず、ダイラタント性を有する導電性ペースト24であってもステージ6上に落下しないことを確認した。
【0069】
実施の形態では隙間吸収部よりスキージを長くしたが、短い場合は従来例と同様レベルまで使用可能となり、2ヵ所の隙間吸収部の総和分(実施の形態の場合は1.4mm)まで吸収できる。
【0070】
また、隙間吸収部の厚みは0.7mmとしたが、充填圧力やスキージ磨耗など品質上問題ない厚みに設定すればよい。
【0071】
なお、実施の形態ではダイラタント性の導電性ペーストを用いたが、ペースト混練が停止しても粘度上昇がないニュートニアン性であっても、版枠とスキージとの隙間が大きい場合は導電性ペーストの落下現象がみられるため、本発明の導電性ペースト落下防止策が有効であることはいうまでもない。
【0072】
また、実施の形態では2層の回路基板に用いる基材への導電性ペーストの充填方法としたが、多層基板に用いる基材への導電性ペースト充填への本発明の導電性ペースト落下防止策が有効であることが容易に推測できる。
【0073】
また、実施の形態では銅導電性ペーストを用いたが、銀、金およびこれらの合金の粉末もしくは半田を主成分とする導電性ペーストや高分子材料を主成分とする導電性ペーストであっても良く、マスク用のフィルムを配置した基材への導電性ペースト充填であれば、本発明の導電性ペースト落下防止策が有効であることが容易に推測できる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように本発明にかかるペースト充填方法は、ペースト充填時のステージへのペースト落下を解消して接続品質の安定化が図れるもので、導電性ペーストでインナービアホール接続を備えた回路基板全般に有用であり、本発明の産業上の利用可能性は大といえる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の版の斜視図
【図2】本発明の版の平面図
【図3】本発明の版の隙間吸収部の高さ説明図
【図4】本発明のスキージング法によるペースト充填の工程断面図
【図5】本発明の版の隙間吸収部にスキージが接触する一部位の断面図
【図6】本発明の版の隙間吸収部をスキージ通過時の一部位平面図
【図7】本発明のスキージ変形吸収部の一部位平面図
【図8】本発明のペースト充填後のペースト残り説明断面図
【図9】従来の両面回路基板の製造方法の工程断面図
【図10】従来例の開口部を有するマスクを取り付けた版枠を示す斜視図
【図11】従来例のスキージング法によるペースト充填の工程断面図
【図12】従来例の版の隙間吸収部にスキージが接触する一部位の断面図
【図13】従来例のペースト充填後のペースト落下説明断面図
【符号の説明】
【0076】
1 版枠
2 マスク
3 隙間吸収部
3a 平坦部
3b 傾斜部
4 開口部
5a 往側スキージ
5b 復側スキージ
6 ステージ
7 スキージホルダー
8 隙間
10 版
21 プリプレグシート
22a,22b マスクフィルム
23 貫通孔
24 導電性ペースト
25a,25b 金属はく
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と非開口部を有するマスクを少なくとも四辺の版枠に固定した印刷用版において、スキージ進行方向の両側に隙間吸収部を設けた印刷用版。
【請求項2】
隙間吸収部は、スキージ両端との接触面に平坦部と傾斜部を有する構造である請求項1に記載の印刷用版。
【請求項3】
隙間吸収部はスキージ上昇時にスキージ最下点と接触せず、かつ投入したペーストが隙間吸収部から漏れ出さない高さである請求項1に記載の印刷用版。
【請求項4】
隙間吸収部の表面平滑性がマスクの表面平滑性と同等以上である請求項1に記載の印刷用版。
【請求項5】
請求項1に記載の印刷用版を用いてペーストを被印刷物に印刷する方法であって、印刷時にスキージの両端を変形させて前記版枠との隙間を吸収することを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
隙間吸収部にスキージを接触、変形させることを特徴とする請求項5に記載の印刷方法。
【請求項7】
スキージの両端の一部に変形吸収部を設けた請求項5に記載の印刷方法。
【請求項8】
スキージの厚み方向の一部を薄くして変形吸収部とした請求項5に記載の印刷方法。
【請求項9】
ペーストがニュートニアンまたはダイラタント性を有する請求項5に記載の印刷方法。
【請求項10】
被印刷物が基材両面にマスクフィルムが張り合わされかつ貫通孔が形成されたものであり、印刷が前記貫通孔にペーストを充填することを特徴とする請求項5に記載の印刷方法。
【請求項11】
金属粉末と、熱硬化性樹脂と、硬化剤で構成されたペーストを用いた請求項5に記載の印刷方法。
【請求項1】
開口部と非開口部を有するマスクを少なくとも四辺の版枠に固定した印刷用版において、スキージ進行方向の両側に隙間吸収部を設けた印刷用版。
【請求項2】
隙間吸収部は、スキージ両端との接触面に平坦部と傾斜部を有する構造である請求項1に記載の印刷用版。
【請求項3】
隙間吸収部はスキージ上昇時にスキージ最下点と接触せず、かつ投入したペーストが隙間吸収部から漏れ出さない高さである請求項1に記載の印刷用版。
【請求項4】
隙間吸収部の表面平滑性がマスクの表面平滑性と同等以上である請求項1に記載の印刷用版。
【請求項5】
請求項1に記載の印刷用版を用いてペーストを被印刷物に印刷する方法であって、印刷時にスキージの両端を変形させて前記版枠との隙間を吸収することを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
隙間吸収部にスキージを接触、変形させることを特徴とする請求項5に記載の印刷方法。
【請求項7】
スキージの両端の一部に変形吸収部を設けた請求項5に記載の印刷方法。
【請求項8】
スキージの厚み方向の一部を薄くして変形吸収部とした請求項5に記載の印刷方法。
【請求項9】
ペーストがニュートニアンまたはダイラタント性を有する請求項5に記載の印刷方法。
【請求項10】
被印刷物が基材両面にマスクフィルムが張り合わされかつ貫通孔が形成されたものであり、印刷が前記貫通孔にペーストを充填することを特徴とする請求項5に記載の印刷方法。
【請求項11】
金属粉末と、熱硬化性樹脂と、硬化剤で構成されたペーストを用いた請求項5に記載の印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−268728(P2007−268728A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94000(P2006−94000)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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