印刷装置および印刷方法
【課題】 ペーストの無駄を無くしつつ、小型化できる印刷装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、基板Wを一対のクランプ片31a,31bにより両側から挟み込んで保持するとともに、その基板上にステンシル51を配置した状態で、スキージ61a,61bをステンシル上における一対のクランプ片間の領域(印刷摺動領域Tc)に摺動させて、ステンシル上のペーストを拡張して基板Wに塗布するようにした印刷装置を対象とする。スキージ61a,61bをステンシル上における印刷摺動領域Tcに対し外側の領域(外側領域Ta,Tb)に当接させて、そのスキージ61a,61bを印刷摺動領域Tcに向けて外側領域Ta,Tbに摺動させるペースト掻き寄せ処理を行う一方、スキージ61a,61bの外側領域Ta,Tbへの印圧を、スキージ61a,61bの印刷摺動領域Tcへの印圧に対し小さく設定する。
【解決手段】 本発明は、基板Wを一対のクランプ片31a,31bにより両側から挟み込んで保持するとともに、その基板上にステンシル51を配置した状態で、スキージ61a,61bをステンシル上における一対のクランプ片間の領域(印刷摺動領域Tc)に摺動させて、ステンシル上のペーストを拡張して基板Wに塗布するようにした印刷装置を対象とする。スキージ61a,61bをステンシル上における印刷摺動領域Tcに対し外側の領域(外側領域Ta,Tb)に当接させて、そのスキージ61a,61bを印刷摺動領域Tcに向けて外側領域Ta,Tbに摺動させるペースト掻き寄せ処理を行う一方、スキージ61a,61bの外側領域Ta,Tbへの印圧を、スキージ61a,61bの印刷摺動領域Tcへの印圧に対し小さく設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クリームはんだなどのペーストを基板に対して印刷するようにした印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板を一対のクランプ片によって両側から挟み込んで保持するとともに、その基板にスクリーン印刷用のステンシル(マスク)を重装し、ステンシル上に供給したクリームはんだなどのペーストをスキージにより移動(ローリング)させることにより、ステンシルに形成された開口部(パターン孔)を介して基板の所定位置にペーストを印刷(塗布)するようにしたスクリーン印刷装置が周知である。
【0003】
このような印刷装置では、ステンシルにおける一対のクランプ片間の領域(印刷摺動領域)をスキージにより摺動させるようにしているが、スキージに付着したペーストが不用意にも、ステンシルにおける印刷摺動領域に対し外側の領域に垂れ落ちることがある。この垂れ落ちたペーストは、印刷摺動領域の外側に付着しているため、スキージなどによって処理されることなく、そのまま残存して無駄になってしまう。
【0004】
そこで特許文献1においては、スキージの印刷摺動範囲を基板上方域の外側となるクランプ片上方まで拡張するとともに、クランプ片の幅を大きく設定して、ステンシルにおける基板上方域の外側に垂れ落ちるペーストが、クランプ片上まで拡張したスキージの摺動範囲内に落下するようにさせ、そのペーストをスキージによって印刷摺動領域内に掻き寄せて、再使用するようにしている。
【特許文献1】特開2003−334925号(請求項1、図3,4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示す従来の印刷装置においては、クランプ片の幅を大きくしているため、その分、装置の大型化を来すという問題が発生する。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ペーストの無駄を無くしつつ、装置の小型化を図ることができる印刷装置および印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記の手段を提供する。
【0008】
[1] 基板を一対のクランプ片により両側から挟み込んで保持するとともに、その基板上にステンシルを配置した状態で、スキージを前記ステンシル上における前記一対のクランプ片間の領域(印刷摺動領域)に摺動させて、ステンシル上のペーストを拡張して基板に塗布するようにした印刷装置であって、
前記スキージを前記ステンシル上における印刷摺動領域に対し外側の領域(外側領域)に当接させて、そのスキージを前記印刷摺動領域に向けて前記外側領域に摺動させるペースト掻き寄せ処理を行う一方、
前記スキージの外側領域への印圧を、前記スキージの印刷摺動領域への印圧に対し小さく設定するようにしたことを特徴とする印刷装置。
【0009】
[2] 前記ペースト掻き寄せ処理と、前記スキージを印刷摺動領域に摺動させる印刷処理とを連続して行うようにした前項1に記載の印刷装置。
【0010】
[3] 前記スキージは、摺動方向に沿って並んで配置された一方側スキージおよび他方側スキージを有し、
前記外側領域における一方側クランプ片側の領域を外側一方領域、他方側クランプ片側の領域を外側他方領域としたとき、
前記ステンシルから離間した前記他方側スキージを先行させつつ、前記一方側スキージを前記外側一方領域から前記印刷摺動領域にかけて摺動させる一方向スキージングと、前記スキージから離間した前記一方側スキージを先行させつつ、前記他方側スキージにより前記外側他方領域から前記印刷摺動領域にかけて摺動させる他方向スキージングと、を行うようにした前項2に記載の印刷装置。
【0011】
[4] 前記スキージにおける外側領域での摺動速度を、印刷摺動領域での摺動速度に対し低速に設定するようにした前項1〜3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【0012】
[5] 基板を一対のクランプ片により両側から挟み込んで保持するとともに、その基板上にステンシルを配置した状態で、スキージを前記ステンシル上における前記一対のクランプ片間の領域(印刷摺動領域)に摺動させて、ステンシル上のペーストを拡張して基板に塗布するようにした印刷方法であって、
前記スキージを前記ステンシル上における印刷摺動領域に対し外側の領域(外側領域)に当接させて、そのスキージを前記印刷摺動領域に向けて前記外側領域に摺動させる工程を含み、
前記スキージの前記外側領域への印圧を、前記スキージの印刷摺動領域への印圧に対し小さく設定するようにしたことを特徴とする印刷方法。
【発明の効果】
【0013】
上記発明[1]にかかる印刷装置によると、スキージをステンシルの外側領域から印刷摺動領域に移動させるものであるため、外側領域に垂れ落ちたペーストを印刷摺動領域内に掻き寄せて、印刷用に再利用することができ、ペーストの無駄をなくすことができる。さらに本発明は、ステンシルの外側領域におけるスキージの印圧を小さく設定しているため、外側領域を支持する必要がない。このためたとえばクランプ片を幅広にして、ステンシルの外側領域を支持するよう構成を採用する必要がなく、その分、小型化を図ることができる。
【0014】
上記発明[2]にかかる印刷装置によると、一回のスキージングによって、ペースト掻き寄せ処理および印刷処理との2つの処理を行うことができ、生産効率をより一層向上させることができる。
【0015】
上記発明[3]にかかる印刷装置によると、一方側スキージおよび他方側スキージにより、一方向スキージングおよび他方向スキージングをそれぞれ行うものであるため、一方向スキージングおよび他方向スキージング間の切換をスムーズに行うことができる。
【0016】
上記発明[4]にかかる印刷装置によると、スキージのステンシルに対する印圧を小さく設定していようとも、スキージの全域でバランス良くペーストを掻き寄せることができ、ペーストを効率良く回収することができる。
【0017】
上記発明[5]によると、上記発明と同様の作用効果を有する印刷方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の一実施形態にかかるスクリーン印刷装置の側面図、図2はその装置の正面図、図3はその装置の平面図、図4はその装置における印刷ステージ10の斜視図、図5はその装置のクランプユニット周辺を示す側面図である。これらの図に示すように、このスクリーン印刷装置の基台2上には、印刷ステージ10が設けられ、この印刷ステージ10を挟んで両側にプリント基板Wを印刷ステージ10上に搬入および搬出するための上流側コンベア11および下流側コンベア12がX軸方向(搬送方向)に沿って配置されている。
【0019】
さらにこの印刷装置は、プリント基板Wをクランプするためのクランプユニット3と、印刷ステージ10の上方に設けられるステンシル保持ユニット5およびスキージユニット6とを備え、後述するようにクランプユニット3によりクランプされた基板Wがステンシル保持ユニット5のステンシル51に重装され、その状態で、スキージユニット6のスキージ61によってスクリーン印刷が施されるようにしている。
【0020】
図1および図2に示すように、基台2上には、水平面内においてX軸方向と直交するY軸方向に沿ってレール211が配設されるとともに、このレール211にY軸テーブル21がY軸方向にスライド自在に取り付けられる。さらにY軸テーブル21および基台2間にはボールねじ機構(図示省略)が設けられており、このボールねじ機構が駆動することによってY軸テーブル21が基台2に対しY軸方向に移動するよう構成されている。
【0021】
Y軸テーブル21の上にはX軸方向に沿ってレール221が配設されるとともに、このレール221にX軸テーブル22がX軸方向にスライド自在に取り付けられる。さらにX軸テーブル22およびY軸テーブル21間にはボールねじ機構(図示省略)が設けられており、このボールねじ機構が駆動することによってX軸テーブル22がY軸テーブル21に対しX軸方向に移動するよう構成されている。
【0022】
X軸テーブル22には回転ユニット231を介して鉛直線(Z軸方向)の軸線回りに回転自在にR軸テーブル23が設けられている。このR軸テーブル23は、図示しない回転駆動手段によってZ軸回りに回転駆動するよう構成されている。
【0023】
R軸テーブル23の四隅にはスライド支柱241が上下方向(Z軸方向)に沿ってスライド自在に取り付けられるとともに、このスライド支柱241の上部には昇降テーブル24が取り付けられ、スライド支柱241のスライドによって昇降テーブル24がR軸テーブル23に対しZ軸方向に昇降自在に取り付けられる。さらに昇降テーブル24およびR軸テーブル23間にはボールねじ機構243が設けられており、このボールねじ機構243が駆動することによって昇降テーブル24がR軸テーブル23に対しZ軸方向(上下方向)に移動するよう構成されている。
【0024】
昇降テーブル24上にはX軸方向に沿って一対のメインコンベア20が設けられている。このメインコンベア20は、昇降テーブル24が降下した状態においては、上流側端部および下流側端部が上記上流側コンベア11の端部および下流側コンベア12の端部にそれぞれ対向して配置される。
【0025】
メインコンベア20は、図1における右側のコンベアが昇降テーブル24に固定され、左側のコンベアが不図示のボールねじ機構によって昇降テーブル24に対してY軸方向に移動可能とされるとともに、基板Wの幅に合わせた位置に保持される。
【0026】
図1〜5に示すように、昇降テーブル24に設けられるクランプユニット3は、一対のメインコンベア20の上方にX軸方向に沿って配置される一対の帯板状のクランプ片31a,31bを具備している。図1における右側のクランプ片31bは、右側コンベアあるいは昇降テーブル24に固定されるとともに、左側クランプ片31aは移動可能な左側コンベアに対し、不図示のエアシリンダなどの駆動手段によりY軸方向にスライド自在に取り付けられ、右側クランプ片31bに対し接離自在に構成されている。
【0027】
この図1における左側クランプ片31aが、Y軸方向に沿って右側クランプ片31bに対し接離する方向に移動して、クランプ片31a,31bが開閉し、基板Wが保持/解除されるよう構成されている。
【0028】
なお両クランプ片31a,31bの上面に、図示しない複数の吸引孔が設けられており、後述するようにクランプ片31a,31b上にステンシル51が重装された状態において、各吸引孔が負圧に設定されることにより、ステンシル51がクランプ片31a,31bの上面に吸着保持されるよう構成されている。
【0029】
図1〜5に示すように昇降テーブル24には、一対のメインコンベア20間に対応し、スライド支柱291を介して上下方向に昇降自在に載置テーブル29が設けられている。さらにこの載置テーブル29および昇降テーブル24間にはボールねじ機構(図示省略)が設けられており、このボールねじ機構が駆動することによって載置テーブル29が昇降テーブル24に対し上下方向に移動するよう構成されている。図5に示すようにこの載置テーブル29の上には、基板Wを支持するためのバックアップピン29aが複数それぞれ所定の位置に配置され、載置テーブル29が上昇することによってメインコンベア20上の基板Wがバックアップピン29a上に移載されて上方へ移動されるとともに、下降することによって載置テーブル29上の基板Wがメインコンベア20側に移載されるよう構成されている。なお図3,4においては、バックアップピン29aの図示は省略している。
【0030】
印刷ステージ10の上方に設けられるステンシル保持ユニット5は、はんだ塗布部分に開口部(パターン孔)を有するステンシル51を水平配置で張り渡した状態に保持できるよう構成されている。
【0031】
ステンシル保持ユニット5の上側に設けられY軸方向に沿って往復移動自在なスキージユニット6はスキージホルダー62を有し、このスキージホルダー62に一対のスキージ61a,61bが設けられている。両スキージ61a,61bは、Y軸方向に沿って並んで配置されるとともに、それぞれ独立して昇降駆動できるよう構成されている。そして一方向スキージングを行う場合には、一方側スキージ61aを降下させてステンシル51に当接させるとともに、他方側スキージ61bを上昇させてステンシル51から離脱させた状態で、他方側スキージ61bを先行させるようにして、スキージユニット6をY軸方向一方側に移動させる。また他方向スキージングを行う場合には、上記とは逆に、他方側スキージ61bを降下させてステンシル51に当接させるとともに、一方側スキージ61aを上昇させてステンシル51から離脱させた状態で、一方側スキージ61aを先行させるようにして、スキージユニット6をY軸方向他方側に移動させる。
【0032】
また図1に示すように、印刷ステージ10とステンシル保持ユニット5との間には水平方向に移動自在なカメラ7と、Y軸方向に移動自在なクリーナー8が設けられている。そしてカメラ7によって、基板Wの位置や種類(品番)およびステンシル51の位置や種類などが識別されて、その識別情報に基づいて、後述するように個体差などに起因する位置の微調整(補正)などが行われるよう構成されている。さらにクリーナー8によって、所定枚数の基板Wを処理する毎などにステンシル51の基板W側の面がクリーニングされるよう構成されている。
【0033】
図6はこの印刷装置の制御系を示すブロック図である。同図に示すように、この装置においては、装置動作を制御する制御手段としてのCPU100が設けられている。
【0034】
CPU100は、モータ駆動部101およびモータ駆動回路111を介して各種サーボモータの駆動を制御する。制御されるモータ駆動部としては例えば、各コンベア11,12,20のモータ駆動部、各テーブル21,22,23,24,29のモータ駆動部、カメラ7、クリーナー8およびスキージ61a,61bのモータ駆動部などがある。
【0035】
さらにCPU100は、I/O処理部102およびI/O駆動回路112を介して、各種シリンダなどの各種アクチュエータの駆動を制御するとともに、各種センサからの情報を取得してその情報を処理する。各種センサとしては例えば、後述する垂れ落ちたクリームはんだを検出するためのクリームはんだ検出センサなどがある。
【0036】
またCPU100は、画像処理部103および画像処理回路113を介して各種カメラから画像情報を取得してその画像情報を処理する。さらにCPU100は、プログラム処理部104を介してプログラム記憶部114からプログラム情報を取得するとともに、入力装置制御部106を介してキーボードなどの各種入力装置から入力情報を取得し、これらの情報を処理し、さらに画像表示出力部105を介して、所定の情報をモニターなどの画像表示装置115上に表示するようにしている。
【0037】
この構成のスクリーン印刷装置は、上記制御手段により制御されて、以下の動作が自動的に行われる。
【0038】
まず上流側コンベア11からプリント基板Wがメインコンベア20に搬入され、その基板Wがメインコンベア20によって所定位置まで搬送される(図7のステップS1)。
【0039】
続いて載置テーブル29が上昇することによってメインコンベア20上の基板Wがバックアップピン29a上に移載され、さらに基板Wの上面高さ位置がクランプ片31a,31bの上面高さ位置と一致するか、一致する直前においてクランプ片31a,31bが閉じて、基板Wがクランプ片31a,31bに挟み込まれて保持される(ステップS2)。
【0040】
次に昇降テーブル24が少量上昇して、メインコンベア20が両側コンベア11,12の上方に抜け出したところで、必要に応じて、Y軸テーブル21、X軸テーブル22およびR軸テーブル23が適宜、Y軸、X軸およびR軸方向に移動し、基板Wのステンシル51に対する水平方向の位置が微調整(補正)される(ステップS3)。
【0041】
こうして位置が補正されると、昇降テーブル24が上昇し、クランプ片31a,31bおよび基板Wの上面がステンシル保持ユニット5のステンシル51の下面に重ね合わされるように重装される。
【0042】
その後スキージング動作が行われる(ステップS4)。本実施形態において、スキージング動作は、通常の印刷動作と、後述のはんだ掻き寄せ動作とを含むものであり、印刷動作およびはんだ掻き寄せ動作の少なくなくともいずれか一方により構成される。ここではまず通常の印刷動作を行う場合について説明する。
【0043】
なお本実施形態においては、ステンシル51上における一対のクランプ片31a,31b間のクランプ片上を含む領域が印刷摺動領域Tcとして構成されるとともに、印刷摺動領域Tcの両外側の領域が外側領域として構成される。さらに外側領域のうち、一方側クランプ片31a側の領域が外側一方領域Taとして構成されるとともに、他方側クランプ片31b側の領域が外側他方領域Tbとして構成される。印刷摺動領域Tcは、ステンシル51に形成された開口部(パターン孔)の領域、その開口部領域の両外側の基板Wの上方領域、さらにそのそれぞれ外側のクランプ片31a,31bの両上方領域からなる。
【0044】
通常の印刷動作を行う場合、つまりはんだ掻き寄せ動作を行わない場合には(図8のステップS41でNO)、図9(a)に示すように一対のスキージ61a,61bのうち一方側スキージ61aが、印刷摺動領域Tcにおける一方側クランプ片31aの外側端部に対応する位置(印刷開始位置)に移動される(図8のステップS45)。なおステンシル51上における一方側クランプ片31a上には、ペーストとしてのクリームはんだSが供給されている。
【0045】
その状態から図9(b)に示すように、一方側スキージ61aが降下してステンシル51に当接する。このとき一方側スキージ61aのステンシル51に対する印圧(圧力)は、通常の印刷動作時の印圧に設定される(ステップS46)。なお他方側スキージ61bは、上昇位置に待機したままでステンシル51から離間されている。
【0046】
続いて図9(c)に示すように、他方側スキージ61bが先行するようにして、両スキージ61a,61bがY軸方向に沿って一方向に移動して、一方側スキージ61aが、印刷摺動領域Tcにおける他方側クランプ片31bに対応する位置(印刷終了位置)に配置される(ステップS47)。この移動時には、ステンシル51上に供給されたクリームはんだSが拡張されて、ステンシル51のパターン孔を介して基板Wの所定位置に塗布される(印刷動作)。
【0047】
なお一方側スキージ61aが印刷終了位置に移動した際には、先行していた他方側スキージ61bは、印刷終了位置よりも外側の位置、つまり外側他方領域Tbの上方位置に配置される。
【0048】
その後図9(d)に示すように一方側スキージ61aが上昇して、ステンシル51から離脱されて(ステップS48)、スキージング動作が終了する。
【0049】
続いて、昇降テーブル24が少量降下して基板Wがステンシル51から離脱して版離れする(図7のステップS5)。その後必要に応じて、Y軸テーブル21、X軸テーブル22およびR軸テーブル23が適宜、Y軸、X軸およびR軸方向に移動し、基板Wの水平位置が元の位置に戻される。
【0050】
次に昇降テーブル24が降下すると同時に、クランプ片31a,31bが開放されて基板Wへの保持が解除される(ステップS6)。そして昇降テーブル24が初期の降下位置まで降下しつつ、載置テーブル29が降下して、載置テーブル29のバックアップピン29a上から基板Wがメインコンベア20に移載される。
【0051】
次に、メインコンベア20によって基板Wが下流側コンベア12に搬送されて、下流側コンベア12を介して次工程に送り出される(ステップS7)。
【0052】
本実施形態の印刷装置においては上記生産動作が、連続して供給される複数の基板Wに対し順次行われる。
【0053】
この生産動作においては、供給される基板W毎に、上記した一方向スキージングによる印刷動作と、他方向スキージングによる印刷動作とが交互に行われる。ここで他方向スキージングによる印刷動作は、上記一方向スキージングによる印刷動作と移動方向が逆になる。
【0054】
すなわち他方向スキージングによる印刷動作においては、図9(e)に示すように、他方側スキージ61bが、印刷摺動領域Tcにおける他方側クランプ片31bの外側端部に対応する位置(印刷開始位置)に移動し(図8のステップS45)、降下して、ステンシル51に通常の印刷動作時の印圧で当接する(ステップS46)。続いて、一方側スキージ61aが先行するようにして、両スキージ61a,61bがY軸方向に沿って他方向に移動して、他方側スキージ61bが、印刷摺動領域Tcにおける一方側クランプ片31aに対応する位置(印刷終了位置)に配置され(ステップS47)、他方側スキージ61bが上昇して(ステップS48)、他方向スキージングによる印刷動作が終了する。なお他方側スキージ61bが印刷終了位置に移動した際には、先行していた一方側スキージ61aは、一方側クランプ片31aよりも外側の位置(外側一方領域Ta)に配置される。
【0055】
一方、上記印刷動作が連続して行われるうちに、クリームはんだSがステンシル51の外側領域Ta,Tbに垂れ落ちて蓄積される。たとえば図10(a)(b)に示すように、一方向スキージングにより一方側スキージ61aが印刷終了位置まで移動して上昇した際には、他方側スキージ61bは他方側クランプ片31bの外側に配置されている。従って他方側スキージ61bにクリームはんだSが付着していると、そのはんだSが垂れ落ちて、ステンシル51上における他方側クランプ片31bの外側の領域Tbに付着する。従ってこの印刷動作が繰り返される毎にその都度はんだSが垂れ落ちて、はんだSが外側他方領域Tbに蓄積する。
【0056】
なお図10においては、外側他方領域TbにはんだSが付着している場合を例に挙げて説明しているが、一方側クランプ片31aの外側における外側一方領域Taにおいても、上記と同様に、はんだSが付着して蓄積するものである。
【0057】
外側領域Ta,Tbに蓄積したはんだSは、通常の印刷動作では処理できず残存してしまう。たとえば一方向スキージングが終了して、他方向スキージングを行う際には図10(c)に示すように、他方側スキージ61bが印刷摺動領域Tcにおける他方側クランプ片31bの上方に移動してから降下し、他方向スキージングを行うものであるため、外側領域Ta,Tbに蓄積したはんだSは、処理できず、無駄になってしまう。
【0058】
そこで本実施形態においては、必要に応じて、外側領域Ta,Tbに蓄積したはんだSを掻き取って再利用するものである。すなわちスキージング動作を行う際に、はんだ掻き寄せ動作を行うか否かが判断される(図8のステップS41)。
【0059】
ここで本実施形態においてはんだ掻き寄せ動作を行うか否かの判断基準としては、はんだ検出装置によるもの、印刷回数や印刷時間によるもの、作業者の判断によるものなどが採用される。
【0060】
はんだ検出装置によるものは、たとえばスキージユニット5に、ステンシル51の外側領域に垂れ落ちたはんだSを検出するはんだ検出センサを設置し、そのはんだ検出センサからの出力情報に基づき、はんだSが垂れ落ちている場合や、あるいは所定量以上のはんだSが蓄積されている場合には、掻き寄せ動作が必要であると判断される。
【0061】
また印刷回数や印刷時間によるものは、印刷回数が、予め設定された回数を超えた場合や、印刷時間が、予め設定された時間を超えた場合に、掻き寄せ動作が必要であると判断される。
【0062】
また言うまでもなく作業者による判断は、作業者が目視などによって、はんだSの垂れ落ち量が多くなった場合など、作業者により掻き寄せ動作が必要であると判断した場合には、その旨の情報を入力手段を介して印刷装置に送信し、掻き寄せ動作を実行させるものである。
【0063】
なお本実施形態において、上記の各判断基準は必ずしも単独で採用する必要はなく、2つ以上の判断基準を併用するようにしても良い。
【0064】
はんだ掻き寄せ動作が必要である場合には(図8のステップS41でYES)、図11(a)に示すように、一方側スキージ61aが、一方側クランプ片31aよりも外側の領域Ta、つまり垂れ落ちたはんだSに対応する位置(はんだ掻き寄せ開始位置)に移動してから(ステップS42)、図8(b)に示すように一方側スキージ61aが降下し、一方側スキージ61aがステンシル51上における、垂れ落ちたはんだSの外側に配置される。このとき一方側スキージ61aのステンシル51に対する印圧は、ステンシル51に軽く接触する程度で、印刷動作時の印圧に比べて小さく設定される(ステップS43)。
【0065】
続いて図11(c)に示すように、両スキージ61a,61bが一方向に移動して、一方側スキージ61aが、印刷摺動領域Tcにおける印刷開始位置に配置される(ステップS44)。この移動時に、外側一方領域Taに蓄積されたはんだSが一方側スキージ61aによって掻き寄せられて、印刷摺動領域Tc内における一方側クランプ片61a上に配置される。
【0066】
ここで本実施形態においては、ステンシル51の外側領域Ta,Tbは支持されず、スキージ61a,61bによる上からの荷重に悪影響を受けるおそれがあるが、本実施形態ではスキージ61aの印圧を小さく設定しているため、スキージ61aの印圧によってステンシル51が損傷するなどの不具合を確実に防止することができ、ステンシル51への悪影響を回避することができる。
【0067】
さらに本実施形態においては、スキージ61aのはんだ掻き寄せ時の移動速度(摺動速度)を、通常の印刷動作における移動速度(摺動速度)よりも遅く設定している。すなわち、スキージ61aにおけるはんだ掻き寄せ時の移動速度を速く設定した場合、上記したようにスキージ61aのステンシル51に対する印圧を小さく設定していると、スキージ61aの全域で偏りなく掻き寄せることが困難になり、部分的に掻き寄せ不良が生じる場合がある。従って本実施形態のようにスキージ61aにおけるはんだ掻き寄せ時の移動速度を遅く設定する場合には、スキージ61aのステンシル51に対する印圧を小さく設定していようとも、スキージ61aの全域でバランス良くはんだSを掻き寄せることができる。
【0068】
こうして外側に垂れ落ちたはんだSが、印刷摺動領域Tc内に掻き寄せられた後、一方側スキージ61aのステンシル51に対する印圧が大きくなり、通常印刷時の印圧に設定される(ステップS46)。
【0069】
その状態で図11(d)に示すように、両スキージ61a,61bが一方向に移動していき、一方側スキージ61aが他方側クランプ片31b上の印刷終了位置に配置された後、図11(e)に示すようにスキージ61aが上昇する(ステップS47,48)。これによりスキージング動作が完了する。
【0070】
このように外側領域Taに垂れ落ちたはんだSを印刷摺動領域Tc内に掻き寄せて印刷するものであるため、外側に垂れ落ちたはんだSを再利用できて無駄をなくすことができる。
【0071】
なお他方側クランプ片31bの他方向側に垂れ落ちたはんだSを掻き寄せる場合は、上記とは逆の動作が行われる。すなわち図11(e)に示すように、他方側スキージ61bが、他方側クランプ片31bよりも外側の領域(外側他方領域Tb)のはんだ掻き寄せ開始位置に移動して降下する(ステップS42,43)。このとき他方側スキージ61bのステンシル51に対する印圧は、ステンシル51に軽く接触する程度で、印刷動作時の印圧に比べて小さく設定される。
【0072】
続いてその小さい印圧で他方側スキージ61bが他方向に移動して、印刷摺動領域Tcにおける他方側クランプ片31b上の印刷開始位置に配置される(ステップS44)。この移動によって、外側他方領域TbのはんだSが印刷摺動領域Tc内に掻き寄せられる。その後、上記と同様に、印刷動作が行われるものである(ステップS45〜48)。
【0073】
以上のように本実施形態によれば、印刷動作を行う際に、ステンシル上の外側領域Ta,Tbにスキージ61a,61bを当接させてその外側領域Ta,Tbから印刷摺動領域Tc内に摺動させるものであるため、外側領域Ta,Tbに垂れ落ちたクリームはんだSを印刷摺動領域Tc内に掻き寄せて、印刷用に再利用することができ、はんだSの無駄をなくすことができ、コストを削減することができる。
【0074】
さらに本実施形態においては、スキージ61a,61bを外側領域Ta,Tbに摺動させるはんだ掻き寄せ処理に続けて、スキージ61a,61bを印刷摺動領域Tcに摺動させる印刷処理を行うようにしているため、一回のスキージングによって、はんだ掻き寄せ処理および印刷処理との2つの処理を行うことができ、生産効率をより一層向上させることができる。
【0075】
なお、それぞれのスキージングにおいて、スキージヘッド6の移動は、掻き寄せ動作から印刷動作にかけて途中停止されることはない。スキージ61aによるスキージングにおいて、スキージ61aがクランプ片31a上に到達した瞬間から、このクランプ片31a上を通過し、スキージ61aがステンシル51に形成された開口部に到達するまでの間に印圧が上昇され、且つ移動速度が増加させられる。すなわち、ステンシル51に形成された開口部(パターン孔)の領域を、外側他方領域Tbにおける印圧より高い印圧でスキージ61aが移動することで確実に基板W上にペーストを印刷でき、移動速度についてはスキージ61aがクランプ片31a上を通過中早い時期に増加するようにすることによって、スキージヘッド6の移動時間を短くでき、印刷時間を短縮できる。このことは、スキージ61bによるスキージングにおいても同様である。
【0076】
また本実施形態においては、既述したようにステンシル51の外側領域Ta,Tbにおけるスキージ61a,61bの印圧を小さく設定しているため、その外側領域Ta,Tbにおいてスキージ61a,61bの印圧による悪影響が及ぶことがなく、ステンシル15の損傷などの不具合を確実に防止することができる。
【0077】
また本実施形態においては、ステンシル51の外側領域Ta,Tbを支持する必要がないので、たとえばクランプ片の幅を大きくして支持領域を拡大するような構成を採用する必要がない。従って本実施形態では、クランプ片31a,31bとして幅の小さいものをそのまま使用することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0078】
さらに本実施形態においては、2つのスキージ61a,61bを交互に用いて、一方向スキージングおよび他方向スキージングを行うものであるため、一方向スキージングおよび他方向スキージング間の切換をスムーズに行うことができ、生産効率を一層向上させることができる。
【0079】
また本実施形態においては、スキージ61a,61bのはんだ掻き寄せ時の移動速度を低速に設定しているため、スキージ61a,61bのステンシル51に対する印圧を小さく設定していようとも、スキージ61a,61bの全域でバランス良くはんだSを掻き寄せることができ、はんだSを効率良く外側領域Ta,Tbから印刷摺動領域Tc内に掻き寄せることができ、はんだSの回収効率を向上させることができる。
【0080】
また上記実施形態においては、一方向スキージングが終了した時点での両スキージ61a,61bの位置が、他方向スキージングを開始する際の位置と等しくなるため、一方向スキージングが完了した際の状態のままで、他方向スキージングを行うことができ、両スキージング間の切換をより一層スムーズに行うことができ、生産効率をさらに向上させることができる。
【0081】
もっとも本発明においては、スキージ61a,61bによりスキージングを開始する際に、スキージ61a,61bを、一旦外側に移動させてから降下させるようにして、より外側の位置からはんだ掻き寄せ動作を開始するようにしても良い。この場合には、垂れ落ちたはんだSを、より一層確実に印刷摺動領域Tc内に掻き寄せて、再利用することができる。
【0082】
なお上記実施形態においては、昇降テーブル24を上昇させてテーブル上の基板をステンシル51に重装する印刷装置を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は、ステンシルを降下させて、ステンシルを印刷ステージ上の基板に重装するようにしたステンシル昇降タイプの印刷装置にも適用することができる。
【0083】
なお、基板の大きさが変更される場合には、メインコンベア20の図1における左側コンベアが昇降テーブル24に対してY方向に移動され、基板Wの幅に合わせた位置に保持される。基板Wを支持するバックアップピン29aの位置も印圧に抗して基板Wを支持できるように配置が変更される。これに対応し、左側のクランプ片31aも基板Wをクランプした状態において左側のコンベアに合わせた位置となり、スキージング範囲が変化させられる。この状態においても、ステンシル51の外側領域Ta,Tbで、印圧が印刷摺動領域Tcにおけるものより低く設定され、さらにスキージ61a,61bの移動速度も低く設定される。また、印圧の変化位置、移動速度の変化位置もクランプ片31a,31b上になるようにされる。
【0084】
また上記実施形態では、載置手段としてバックアップピン29aを用いるようにしているが、バックアップピン29aに加え、載置テーブル29で脚が支持される別のテーブルで基板Wの一部下方を支持させても良い。さらに、バックアップピン29aは取り除き、載置テーブル29で脚が支持される別のテーブルで基板Wの全域下方を支持させても良い。
【0085】
また上記実施形態においては、スキージが2つ設けられた印刷装置を例に挙げて説明したが、本発明は、スキージが1つの印刷装置にも適用することができる。
【0086】
さらに上記実施形態においては、はんだ掻き寄せ処理と印刷処理とを一連の処理として連続して行うようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、はんだ掻き寄せ処理を印刷処理とは別に適当なタイミングで単独で行うようにしても良い。
【0087】
また本発明においては、スキージ61a,61bのステンシル51への当接時におけるスキージ61a,61bの高さ位置を制御することによって、スキージ61a,61bのステンシル51への印圧を調整するようにしても良い。
【0088】
また本発明は、クランプ片31a,31bの上方に進出自在な位置決め片を設けて、基板Wをクランプ片31a,31bにより保持する際に、位置決め片を進出させて基板上面に当接させることにより、基板Wの上下方向の位置決めを図るようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】この発明の一実施形態にかかる印刷装置の側面図である。
【図2】上記印刷装置を示す正面図である。
【図3】上記印刷装置を概略的に示す平面図である。
【図4】上記印刷装置の主要部を示す斜視図である。
【図5】上記印刷装置におけるクランプユニット周辺を示す側面図である。
【図6】上記印刷装置の制御系を示すブロック図である。
【図7】上記印刷装置の生産動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】上記印刷装置の印刷動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】上記印刷装置における通常の印刷動作を説明するための側面図である。
【図10】上記印刷装置におけるはんだ垂れ落ち動作を説明するための側面図である。
【図11】上記印刷装置におけるはんだ掻き寄せ動作を説明するための側面図である。
【符号の説明】
【0090】
31a,31b クランプ片
51 ステンシル
61a,61b スキージ
S クリームはんだ(ペースト)
Ta 外側一方領域(外側領域)
Tb 外側他方領域(外側領域)
Tc 印刷摺動領域
W プリント基板
【技術分野】
【0001】
この発明は、クリームはんだなどのペーストを基板に対して印刷するようにした印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板を一対のクランプ片によって両側から挟み込んで保持するとともに、その基板にスクリーン印刷用のステンシル(マスク)を重装し、ステンシル上に供給したクリームはんだなどのペーストをスキージにより移動(ローリング)させることにより、ステンシルに形成された開口部(パターン孔)を介して基板の所定位置にペーストを印刷(塗布)するようにしたスクリーン印刷装置が周知である。
【0003】
このような印刷装置では、ステンシルにおける一対のクランプ片間の領域(印刷摺動領域)をスキージにより摺動させるようにしているが、スキージに付着したペーストが不用意にも、ステンシルにおける印刷摺動領域に対し外側の領域に垂れ落ちることがある。この垂れ落ちたペーストは、印刷摺動領域の外側に付着しているため、スキージなどによって処理されることなく、そのまま残存して無駄になってしまう。
【0004】
そこで特許文献1においては、スキージの印刷摺動範囲を基板上方域の外側となるクランプ片上方まで拡張するとともに、クランプ片の幅を大きく設定して、ステンシルにおける基板上方域の外側に垂れ落ちるペーストが、クランプ片上まで拡張したスキージの摺動範囲内に落下するようにさせ、そのペーストをスキージによって印刷摺動領域内に掻き寄せて、再使用するようにしている。
【特許文献1】特開2003−334925号(請求項1、図3,4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示す従来の印刷装置においては、クランプ片の幅を大きくしているため、その分、装置の大型化を来すという問題が発生する。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ペーストの無駄を無くしつつ、装置の小型化を図ることができる印刷装置および印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記の手段を提供する。
【0008】
[1] 基板を一対のクランプ片により両側から挟み込んで保持するとともに、その基板上にステンシルを配置した状態で、スキージを前記ステンシル上における前記一対のクランプ片間の領域(印刷摺動領域)に摺動させて、ステンシル上のペーストを拡張して基板に塗布するようにした印刷装置であって、
前記スキージを前記ステンシル上における印刷摺動領域に対し外側の領域(外側領域)に当接させて、そのスキージを前記印刷摺動領域に向けて前記外側領域に摺動させるペースト掻き寄せ処理を行う一方、
前記スキージの外側領域への印圧を、前記スキージの印刷摺動領域への印圧に対し小さく設定するようにしたことを特徴とする印刷装置。
【0009】
[2] 前記ペースト掻き寄せ処理と、前記スキージを印刷摺動領域に摺動させる印刷処理とを連続して行うようにした前項1に記載の印刷装置。
【0010】
[3] 前記スキージは、摺動方向に沿って並んで配置された一方側スキージおよび他方側スキージを有し、
前記外側領域における一方側クランプ片側の領域を外側一方領域、他方側クランプ片側の領域を外側他方領域としたとき、
前記ステンシルから離間した前記他方側スキージを先行させつつ、前記一方側スキージを前記外側一方領域から前記印刷摺動領域にかけて摺動させる一方向スキージングと、前記スキージから離間した前記一方側スキージを先行させつつ、前記他方側スキージにより前記外側他方領域から前記印刷摺動領域にかけて摺動させる他方向スキージングと、を行うようにした前項2に記載の印刷装置。
【0011】
[4] 前記スキージにおける外側領域での摺動速度を、印刷摺動領域での摺動速度に対し低速に設定するようにした前項1〜3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【0012】
[5] 基板を一対のクランプ片により両側から挟み込んで保持するとともに、その基板上にステンシルを配置した状態で、スキージを前記ステンシル上における前記一対のクランプ片間の領域(印刷摺動領域)に摺動させて、ステンシル上のペーストを拡張して基板に塗布するようにした印刷方法であって、
前記スキージを前記ステンシル上における印刷摺動領域に対し外側の領域(外側領域)に当接させて、そのスキージを前記印刷摺動領域に向けて前記外側領域に摺動させる工程を含み、
前記スキージの前記外側領域への印圧を、前記スキージの印刷摺動領域への印圧に対し小さく設定するようにしたことを特徴とする印刷方法。
【発明の効果】
【0013】
上記発明[1]にかかる印刷装置によると、スキージをステンシルの外側領域から印刷摺動領域に移動させるものであるため、外側領域に垂れ落ちたペーストを印刷摺動領域内に掻き寄せて、印刷用に再利用することができ、ペーストの無駄をなくすことができる。さらに本発明は、ステンシルの外側領域におけるスキージの印圧を小さく設定しているため、外側領域を支持する必要がない。このためたとえばクランプ片を幅広にして、ステンシルの外側領域を支持するよう構成を採用する必要がなく、その分、小型化を図ることができる。
【0014】
上記発明[2]にかかる印刷装置によると、一回のスキージングによって、ペースト掻き寄せ処理および印刷処理との2つの処理を行うことができ、生産効率をより一層向上させることができる。
【0015】
上記発明[3]にかかる印刷装置によると、一方側スキージおよび他方側スキージにより、一方向スキージングおよび他方向スキージングをそれぞれ行うものであるため、一方向スキージングおよび他方向スキージング間の切換をスムーズに行うことができる。
【0016】
上記発明[4]にかかる印刷装置によると、スキージのステンシルに対する印圧を小さく設定していようとも、スキージの全域でバランス良くペーストを掻き寄せることができ、ペーストを効率良く回収することができる。
【0017】
上記発明[5]によると、上記発明と同様の作用効果を有する印刷方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の一実施形態にかかるスクリーン印刷装置の側面図、図2はその装置の正面図、図3はその装置の平面図、図4はその装置における印刷ステージ10の斜視図、図5はその装置のクランプユニット周辺を示す側面図である。これらの図に示すように、このスクリーン印刷装置の基台2上には、印刷ステージ10が設けられ、この印刷ステージ10を挟んで両側にプリント基板Wを印刷ステージ10上に搬入および搬出するための上流側コンベア11および下流側コンベア12がX軸方向(搬送方向)に沿って配置されている。
【0019】
さらにこの印刷装置は、プリント基板Wをクランプするためのクランプユニット3と、印刷ステージ10の上方に設けられるステンシル保持ユニット5およびスキージユニット6とを備え、後述するようにクランプユニット3によりクランプされた基板Wがステンシル保持ユニット5のステンシル51に重装され、その状態で、スキージユニット6のスキージ61によってスクリーン印刷が施されるようにしている。
【0020】
図1および図2に示すように、基台2上には、水平面内においてX軸方向と直交するY軸方向に沿ってレール211が配設されるとともに、このレール211にY軸テーブル21がY軸方向にスライド自在に取り付けられる。さらにY軸テーブル21および基台2間にはボールねじ機構(図示省略)が設けられており、このボールねじ機構が駆動することによってY軸テーブル21が基台2に対しY軸方向に移動するよう構成されている。
【0021】
Y軸テーブル21の上にはX軸方向に沿ってレール221が配設されるとともに、このレール221にX軸テーブル22がX軸方向にスライド自在に取り付けられる。さらにX軸テーブル22およびY軸テーブル21間にはボールねじ機構(図示省略)が設けられており、このボールねじ機構が駆動することによってX軸テーブル22がY軸テーブル21に対しX軸方向に移動するよう構成されている。
【0022】
X軸テーブル22には回転ユニット231を介して鉛直線(Z軸方向)の軸線回りに回転自在にR軸テーブル23が設けられている。このR軸テーブル23は、図示しない回転駆動手段によってZ軸回りに回転駆動するよう構成されている。
【0023】
R軸テーブル23の四隅にはスライド支柱241が上下方向(Z軸方向)に沿ってスライド自在に取り付けられるとともに、このスライド支柱241の上部には昇降テーブル24が取り付けられ、スライド支柱241のスライドによって昇降テーブル24がR軸テーブル23に対しZ軸方向に昇降自在に取り付けられる。さらに昇降テーブル24およびR軸テーブル23間にはボールねじ機構243が設けられており、このボールねじ機構243が駆動することによって昇降テーブル24がR軸テーブル23に対しZ軸方向(上下方向)に移動するよう構成されている。
【0024】
昇降テーブル24上にはX軸方向に沿って一対のメインコンベア20が設けられている。このメインコンベア20は、昇降テーブル24が降下した状態においては、上流側端部および下流側端部が上記上流側コンベア11の端部および下流側コンベア12の端部にそれぞれ対向して配置される。
【0025】
メインコンベア20は、図1における右側のコンベアが昇降テーブル24に固定され、左側のコンベアが不図示のボールねじ機構によって昇降テーブル24に対してY軸方向に移動可能とされるとともに、基板Wの幅に合わせた位置に保持される。
【0026】
図1〜5に示すように、昇降テーブル24に設けられるクランプユニット3は、一対のメインコンベア20の上方にX軸方向に沿って配置される一対の帯板状のクランプ片31a,31bを具備している。図1における右側のクランプ片31bは、右側コンベアあるいは昇降テーブル24に固定されるとともに、左側クランプ片31aは移動可能な左側コンベアに対し、不図示のエアシリンダなどの駆動手段によりY軸方向にスライド自在に取り付けられ、右側クランプ片31bに対し接離自在に構成されている。
【0027】
この図1における左側クランプ片31aが、Y軸方向に沿って右側クランプ片31bに対し接離する方向に移動して、クランプ片31a,31bが開閉し、基板Wが保持/解除されるよう構成されている。
【0028】
なお両クランプ片31a,31bの上面に、図示しない複数の吸引孔が設けられており、後述するようにクランプ片31a,31b上にステンシル51が重装された状態において、各吸引孔が負圧に設定されることにより、ステンシル51がクランプ片31a,31bの上面に吸着保持されるよう構成されている。
【0029】
図1〜5に示すように昇降テーブル24には、一対のメインコンベア20間に対応し、スライド支柱291を介して上下方向に昇降自在に載置テーブル29が設けられている。さらにこの載置テーブル29および昇降テーブル24間にはボールねじ機構(図示省略)が設けられており、このボールねじ機構が駆動することによって載置テーブル29が昇降テーブル24に対し上下方向に移動するよう構成されている。図5に示すようにこの載置テーブル29の上には、基板Wを支持するためのバックアップピン29aが複数それぞれ所定の位置に配置され、載置テーブル29が上昇することによってメインコンベア20上の基板Wがバックアップピン29a上に移載されて上方へ移動されるとともに、下降することによって載置テーブル29上の基板Wがメインコンベア20側に移載されるよう構成されている。なお図3,4においては、バックアップピン29aの図示は省略している。
【0030】
印刷ステージ10の上方に設けられるステンシル保持ユニット5は、はんだ塗布部分に開口部(パターン孔)を有するステンシル51を水平配置で張り渡した状態に保持できるよう構成されている。
【0031】
ステンシル保持ユニット5の上側に設けられY軸方向に沿って往復移動自在なスキージユニット6はスキージホルダー62を有し、このスキージホルダー62に一対のスキージ61a,61bが設けられている。両スキージ61a,61bは、Y軸方向に沿って並んで配置されるとともに、それぞれ独立して昇降駆動できるよう構成されている。そして一方向スキージングを行う場合には、一方側スキージ61aを降下させてステンシル51に当接させるとともに、他方側スキージ61bを上昇させてステンシル51から離脱させた状態で、他方側スキージ61bを先行させるようにして、スキージユニット6をY軸方向一方側に移動させる。また他方向スキージングを行う場合には、上記とは逆に、他方側スキージ61bを降下させてステンシル51に当接させるとともに、一方側スキージ61aを上昇させてステンシル51から離脱させた状態で、一方側スキージ61aを先行させるようにして、スキージユニット6をY軸方向他方側に移動させる。
【0032】
また図1に示すように、印刷ステージ10とステンシル保持ユニット5との間には水平方向に移動自在なカメラ7と、Y軸方向に移動自在なクリーナー8が設けられている。そしてカメラ7によって、基板Wの位置や種類(品番)およびステンシル51の位置や種類などが識別されて、その識別情報に基づいて、後述するように個体差などに起因する位置の微調整(補正)などが行われるよう構成されている。さらにクリーナー8によって、所定枚数の基板Wを処理する毎などにステンシル51の基板W側の面がクリーニングされるよう構成されている。
【0033】
図6はこの印刷装置の制御系を示すブロック図である。同図に示すように、この装置においては、装置動作を制御する制御手段としてのCPU100が設けられている。
【0034】
CPU100は、モータ駆動部101およびモータ駆動回路111を介して各種サーボモータの駆動を制御する。制御されるモータ駆動部としては例えば、各コンベア11,12,20のモータ駆動部、各テーブル21,22,23,24,29のモータ駆動部、カメラ7、クリーナー8およびスキージ61a,61bのモータ駆動部などがある。
【0035】
さらにCPU100は、I/O処理部102およびI/O駆動回路112を介して、各種シリンダなどの各種アクチュエータの駆動を制御するとともに、各種センサからの情報を取得してその情報を処理する。各種センサとしては例えば、後述する垂れ落ちたクリームはんだを検出するためのクリームはんだ検出センサなどがある。
【0036】
またCPU100は、画像処理部103および画像処理回路113を介して各種カメラから画像情報を取得してその画像情報を処理する。さらにCPU100は、プログラム処理部104を介してプログラム記憶部114からプログラム情報を取得するとともに、入力装置制御部106を介してキーボードなどの各種入力装置から入力情報を取得し、これらの情報を処理し、さらに画像表示出力部105を介して、所定の情報をモニターなどの画像表示装置115上に表示するようにしている。
【0037】
この構成のスクリーン印刷装置は、上記制御手段により制御されて、以下の動作が自動的に行われる。
【0038】
まず上流側コンベア11からプリント基板Wがメインコンベア20に搬入され、その基板Wがメインコンベア20によって所定位置まで搬送される(図7のステップS1)。
【0039】
続いて載置テーブル29が上昇することによってメインコンベア20上の基板Wがバックアップピン29a上に移載され、さらに基板Wの上面高さ位置がクランプ片31a,31bの上面高さ位置と一致するか、一致する直前においてクランプ片31a,31bが閉じて、基板Wがクランプ片31a,31bに挟み込まれて保持される(ステップS2)。
【0040】
次に昇降テーブル24が少量上昇して、メインコンベア20が両側コンベア11,12の上方に抜け出したところで、必要に応じて、Y軸テーブル21、X軸テーブル22およびR軸テーブル23が適宜、Y軸、X軸およびR軸方向に移動し、基板Wのステンシル51に対する水平方向の位置が微調整(補正)される(ステップS3)。
【0041】
こうして位置が補正されると、昇降テーブル24が上昇し、クランプ片31a,31bおよび基板Wの上面がステンシル保持ユニット5のステンシル51の下面に重ね合わされるように重装される。
【0042】
その後スキージング動作が行われる(ステップS4)。本実施形態において、スキージング動作は、通常の印刷動作と、後述のはんだ掻き寄せ動作とを含むものであり、印刷動作およびはんだ掻き寄せ動作の少なくなくともいずれか一方により構成される。ここではまず通常の印刷動作を行う場合について説明する。
【0043】
なお本実施形態においては、ステンシル51上における一対のクランプ片31a,31b間のクランプ片上を含む領域が印刷摺動領域Tcとして構成されるとともに、印刷摺動領域Tcの両外側の領域が外側領域として構成される。さらに外側領域のうち、一方側クランプ片31a側の領域が外側一方領域Taとして構成されるとともに、他方側クランプ片31b側の領域が外側他方領域Tbとして構成される。印刷摺動領域Tcは、ステンシル51に形成された開口部(パターン孔)の領域、その開口部領域の両外側の基板Wの上方領域、さらにそのそれぞれ外側のクランプ片31a,31bの両上方領域からなる。
【0044】
通常の印刷動作を行う場合、つまりはんだ掻き寄せ動作を行わない場合には(図8のステップS41でNO)、図9(a)に示すように一対のスキージ61a,61bのうち一方側スキージ61aが、印刷摺動領域Tcにおける一方側クランプ片31aの外側端部に対応する位置(印刷開始位置)に移動される(図8のステップS45)。なおステンシル51上における一方側クランプ片31a上には、ペーストとしてのクリームはんだSが供給されている。
【0045】
その状態から図9(b)に示すように、一方側スキージ61aが降下してステンシル51に当接する。このとき一方側スキージ61aのステンシル51に対する印圧(圧力)は、通常の印刷動作時の印圧に設定される(ステップS46)。なお他方側スキージ61bは、上昇位置に待機したままでステンシル51から離間されている。
【0046】
続いて図9(c)に示すように、他方側スキージ61bが先行するようにして、両スキージ61a,61bがY軸方向に沿って一方向に移動して、一方側スキージ61aが、印刷摺動領域Tcにおける他方側クランプ片31bに対応する位置(印刷終了位置)に配置される(ステップS47)。この移動時には、ステンシル51上に供給されたクリームはんだSが拡張されて、ステンシル51のパターン孔を介して基板Wの所定位置に塗布される(印刷動作)。
【0047】
なお一方側スキージ61aが印刷終了位置に移動した際には、先行していた他方側スキージ61bは、印刷終了位置よりも外側の位置、つまり外側他方領域Tbの上方位置に配置される。
【0048】
その後図9(d)に示すように一方側スキージ61aが上昇して、ステンシル51から離脱されて(ステップS48)、スキージング動作が終了する。
【0049】
続いて、昇降テーブル24が少量降下して基板Wがステンシル51から離脱して版離れする(図7のステップS5)。その後必要に応じて、Y軸テーブル21、X軸テーブル22およびR軸テーブル23が適宜、Y軸、X軸およびR軸方向に移動し、基板Wの水平位置が元の位置に戻される。
【0050】
次に昇降テーブル24が降下すると同時に、クランプ片31a,31bが開放されて基板Wへの保持が解除される(ステップS6)。そして昇降テーブル24が初期の降下位置まで降下しつつ、載置テーブル29が降下して、載置テーブル29のバックアップピン29a上から基板Wがメインコンベア20に移載される。
【0051】
次に、メインコンベア20によって基板Wが下流側コンベア12に搬送されて、下流側コンベア12を介して次工程に送り出される(ステップS7)。
【0052】
本実施形態の印刷装置においては上記生産動作が、連続して供給される複数の基板Wに対し順次行われる。
【0053】
この生産動作においては、供給される基板W毎に、上記した一方向スキージングによる印刷動作と、他方向スキージングによる印刷動作とが交互に行われる。ここで他方向スキージングによる印刷動作は、上記一方向スキージングによる印刷動作と移動方向が逆になる。
【0054】
すなわち他方向スキージングによる印刷動作においては、図9(e)に示すように、他方側スキージ61bが、印刷摺動領域Tcにおける他方側クランプ片31bの外側端部に対応する位置(印刷開始位置)に移動し(図8のステップS45)、降下して、ステンシル51に通常の印刷動作時の印圧で当接する(ステップS46)。続いて、一方側スキージ61aが先行するようにして、両スキージ61a,61bがY軸方向に沿って他方向に移動して、他方側スキージ61bが、印刷摺動領域Tcにおける一方側クランプ片31aに対応する位置(印刷終了位置)に配置され(ステップS47)、他方側スキージ61bが上昇して(ステップS48)、他方向スキージングによる印刷動作が終了する。なお他方側スキージ61bが印刷終了位置に移動した際には、先行していた一方側スキージ61aは、一方側クランプ片31aよりも外側の位置(外側一方領域Ta)に配置される。
【0055】
一方、上記印刷動作が連続して行われるうちに、クリームはんだSがステンシル51の外側領域Ta,Tbに垂れ落ちて蓄積される。たとえば図10(a)(b)に示すように、一方向スキージングにより一方側スキージ61aが印刷終了位置まで移動して上昇した際には、他方側スキージ61bは他方側クランプ片31bの外側に配置されている。従って他方側スキージ61bにクリームはんだSが付着していると、そのはんだSが垂れ落ちて、ステンシル51上における他方側クランプ片31bの外側の領域Tbに付着する。従ってこの印刷動作が繰り返される毎にその都度はんだSが垂れ落ちて、はんだSが外側他方領域Tbに蓄積する。
【0056】
なお図10においては、外側他方領域TbにはんだSが付着している場合を例に挙げて説明しているが、一方側クランプ片31aの外側における外側一方領域Taにおいても、上記と同様に、はんだSが付着して蓄積するものである。
【0057】
外側領域Ta,Tbに蓄積したはんだSは、通常の印刷動作では処理できず残存してしまう。たとえば一方向スキージングが終了して、他方向スキージングを行う際には図10(c)に示すように、他方側スキージ61bが印刷摺動領域Tcにおける他方側クランプ片31bの上方に移動してから降下し、他方向スキージングを行うものであるため、外側領域Ta,Tbに蓄積したはんだSは、処理できず、無駄になってしまう。
【0058】
そこで本実施形態においては、必要に応じて、外側領域Ta,Tbに蓄積したはんだSを掻き取って再利用するものである。すなわちスキージング動作を行う際に、はんだ掻き寄せ動作を行うか否かが判断される(図8のステップS41)。
【0059】
ここで本実施形態においてはんだ掻き寄せ動作を行うか否かの判断基準としては、はんだ検出装置によるもの、印刷回数や印刷時間によるもの、作業者の判断によるものなどが採用される。
【0060】
はんだ検出装置によるものは、たとえばスキージユニット5に、ステンシル51の外側領域に垂れ落ちたはんだSを検出するはんだ検出センサを設置し、そのはんだ検出センサからの出力情報に基づき、はんだSが垂れ落ちている場合や、あるいは所定量以上のはんだSが蓄積されている場合には、掻き寄せ動作が必要であると判断される。
【0061】
また印刷回数や印刷時間によるものは、印刷回数が、予め設定された回数を超えた場合や、印刷時間が、予め設定された時間を超えた場合に、掻き寄せ動作が必要であると判断される。
【0062】
また言うまでもなく作業者による判断は、作業者が目視などによって、はんだSの垂れ落ち量が多くなった場合など、作業者により掻き寄せ動作が必要であると判断した場合には、その旨の情報を入力手段を介して印刷装置に送信し、掻き寄せ動作を実行させるものである。
【0063】
なお本実施形態において、上記の各判断基準は必ずしも単独で採用する必要はなく、2つ以上の判断基準を併用するようにしても良い。
【0064】
はんだ掻き寄せ動作が必要である場合には(図8のステップS41でYES)、図11(a)に示すように、一方側スキージ61aが、一方側クランプ片31aよりも外側の領域Ta、つまり垂れ落ちたはんだSに対応する位置(はんだ掻き寄せ開始位置)に移動してから(ステップS42)、図8(b)に示すように一方側スキージ61aが降下し、一方側スキージ61aがステンシル51上における、垂れ落ちたはんだSの外側に配置される。このとき一方側スキージ61aのステンシル51に対する印圧は、ステンシル51に軽く接触する程度で、印刷動作時の印圧に比べて小さく設定される(ステップS43)。
【0065】
続いて図11(c)に示すように、両スキージ61a,61bが一方向に移動して、一方側スキージ61aが、印刷摺動領域Tcにおける印刷開始位置に配置される(ステップS44)。この移動時に、外側一方領域Taに蓄積されたはんだSが一方側スキージ61aによって掻き寄せられて、印刷摺動領域Tc内における一方側クランプ片61a上に配置される。
【0066】
ここで本実施形態においては、ステンシル51の外側領域Ta,Tbは支持されず、スキージ61a,61bによる上からの荷重に悪影響を受けるおそれがあるが、本実施形態ではスキージ61aの印圧を小さく設定しているため、スキージ61aの印圧によってステンシル51が損傷するなどの不具合を確実に防止することができ、ステンシル51への悪影響を回避することができる。
【0067】
さらに本実施形態においては、スキージ61aのはんだ掻き寄せ時の移動速度(摺動速度)を、通常の印刷動作における移動速度(摺動速度)よりも遅く設定している。すなわち、スキージ61aにおけるはんだ掻き寄せ時の移動速度を速く設定した場合、上記したようにスキージ61aのステンシル51に対する印圧を小さく設定していると、スキージ61aの全域で偏りなく掻き寄せることが困難になり、部分的に掻き寄せ不良が生じる場合がある。従って本実施形態のようにスキージ61aにおけるはんだ掻き寄せ時の移動速度を遅く設定する場合には、スキージ61aのステンシル51に対する印圧を小さく設定していようとも、スキージ61aの全域でバランス良くはんだSを掻き寄せることができる。
【0068】
こうして外側に垂れ落ちたはんだSが、印刷摺動領域Tc内に掻き寄せられた後、一方側スキージ61aのステンシル51に対する印圧が大きくなり、通常印刷時の印圧に設定される(ステップS46)。
【0069】
その状態で図11(d)に示すように、両スキージ61a,61bが一方向に移動していき、一方側スキージ61aが他方側クランプ片31b上の印刷終了位置に配置された後、図11(e)に示すようにスキージ61aが上昇する(ステップS47,48)。これによりスキージング動作が完了する。
【0070】
このように外側領域Taに垂れ落ちたはんだSを印刷摺動領域Tc内に掻き寄せて印刷するものであるため、外側に垂れ落ちたはんだSを再利用できて無駄をなくすことができる。
【0071】
なお他方側クランプ片31bの他方向側に垂れ落ちたはんだSを掻き寄せる場合は、上記とは逆の動作が行われる。すなわち図11(e)に示すように、他方側スキージ61bが、他方側クランプ片31bよりも外側の領域(外側他方領域Tb)のはんだ掻き寄せ開始位置に移動して降下する(ステップS42,43)。このとき他方側スキージ61bのステンシル51に対する印圧は、ステンシル51に軽く接触する程度で、印刷動作時の印圧に比べて小さく設定される。
【0072】
続いてその小さい印圧で他方側スキージ61bが他方向に移動して、印刷摺動領域Tcにおける他方側クランプ片31b上の印刷開始位置に配置される(ステップS44)。この移動によって、外側他方領域TbのはんだSが印刷摺動領域Tc内に掻き寄せられる。その後、上記と同様に、印刷動作が行われるものである(ステップS45〜48)。
【0073】
以上のように本実施形態によれば、印刷動作を行う際に、ステンシル上の外側領域Ta,Tbにスキージ61a,61bを当接させてその外側領域Ta,Tbから印刷摺動領域Tc内に摺動させるものであるため、外側領域Ta,Tbに垂れ落ちたクリームはんだSを印刷摺動領域Tc内に掻き寄せて、印刷用に再利用することができ、はんだSの無駄をなくすことができ、コストを削減することができる。
【0074】
さらに本実施形態においては、スキージ61a,61bを外側領域Ta,Tbに摺動させるはんだ掻き寄せ処理に続けて、スキージ61a,61bを印刷摺動領域Tcに摺動させる印刷処理を行うようにしているため、一回のスキージングによって、はんだ掻き寄せ処理および印刷処理との2つの処理を行うことができ、生産効率をより一層向上させることができる。
【0075】
なお、それぞれのスキージングにおいて、スキージヘッド6の移動は、掻き寄せ動作から印刷動作にかけて途中停止されることはない。スキージ61aによるスキージングにおいて、スキージ61aがクランプ片31a上に到達した瞬間から、このクランプ片31a上を通過し、スキージ61aがステンシル51に形成された開口部に到達するまでの間に印圧が上昇され、且つ移動速度が増加させられる。すなわち、ステンシル51に形成された開口部(パターン孔)の領域を、外側他方領域Tbにおける印圧より高い印圧でスキージ61aが移動することで確実に基板W上にペーストを印刷でき、移動速度についてはスキージ61aがクランプ片31a上を通過中早い時期に増加するようにすることによって、スキージヘッド6の移動時間を短くでき、印刷時間を短縮できる。このことは、スキージ61bによるスキージングにおいても同様である。
【0076】
また本実施形態においては、既述したようにステンシル51の外側領域Ta,Tbにおけるスキージ61a,61bの印圧を小さく設定しているため、その外側領域Ta,Tbにおいてスキージ61a,61bの印圧による悪影響が及ぶことがなく、ステンシル15の損傷などの不具合を確実に防止することができる。
【0077】
また本実施形態においては、ステンシル51の外側領域Ta,Tbを支持する必要がないので、たとえばクランプ片の幅を大きくして支持領域を拡大するような構成を採用する必要がない。従って本実施形態では、クランプ片31a,31bとして幅の小さいものをそのまま使用することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0078】
さらに本実施形態においては、2つのスキージ61a,61bを交互に用いて、一方向スキージングおよび他方向スキージングを行うものであるため、一方向スキージングおよび他方向スキージング間の切換をスムーズに行うことができ、生産効率を一層向上させることができる。
【0079】
また本実施形態においては、スキージ61a,61bのはんだ掻き寄せ時の移動速度を低速に設定しているため、スキージ61a,61bのステンシル51に対する印圧を小さく設定していようとも、スキージ61a,61bの全域でバランス良くはんだSを掻き寄せることができ、はんだSを効率良く外側領域Ta,Tbから印刷摺動領域Tc内に掻き寄せることができ、はんだSの回収効率を向上させることができる。
【0080】
また上記実施形態においては、一方向スキージングが終了した時点での両スキージ61a,61bの位置が、他方向スキージングを開始する際の位置と等しくなるため、一方向スキージングが完了した際の状態のままで、他方向スキージングを行うことができ、両スキージング間の切換をより一層スムーズに行うことができ、生産効率をさらに向上させることができる。
【0081】
もっとも本発明においては、スキージ61a,61bによりスキージングを開始する際に、スキージ61a,61bを、一旦外側に移動させてから降下させるようにして、より外側の位置からはんだ掻き寄せ動作を開始するようにしても良い。この場合には、垂れ落ちたはんだSを、より一層確実に印刷摺動領域Tc内に掻き寄せて、再利用することができる。
【0082】
なお上記実施形態においては、昇降テーブル24を上昇させてテーブル上の基板をステンシル51に重装する印刷装置を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は、ステンシルを降下させて、ステンシルを印刷ステージ上の基板に重装するようにしたステンシル昇降タイプの印刷装置にも適用することができる。
【0083】
なお、基板の大きさが変更される場合には、メインコンベア20の図1における左側コンベアが昇降テーブル24に対してY方向に移動され、基板Wの幅に合わせた位置に保持される。基板Wを支持するバックアップピン29aの位置も印圧に抗して基板Wを支持できるように配置が変更される。これに対応し、左側のクランプ片31aも基板Wをクランプした状態において左側のコンベアに合わせた位置となり、スキージング範囲が変化させられる。この状態においても、ステンシル51の外側領域Ta,Tbで、印圧が印刷摺動領域Tcにおけるものより低く設定され、さらにスキージ61a,61bの移動速度も低く設定される。また、印圧の変化位置、移動速度の変化位置もクランプ片31a,31b上になるようにされる。
【0084】
また上記実施形態では、載置手段としてバックアップピン29aを用いるようにしているが、バックアップピン29aに加え、載置テーブル29で脚が支持される別のテーブルで基板Wの一部下方を支持させても良い。さらに、バックアップピン29aは取り除き、載置テーブル29で脚が支持される別のテーブルで基板Wの全域下方を支持させても良い。
【0085】
また上記実施形態においては、スキージが2つ設けられた印刷装置を例に挙げて説明したが、本発明は、スキージが1つの印刷装置にも適用することができる。
【0086】
さらに上記実施形態においては、はんだ掻き寄せ処理と印刷処理とを一連の処理として連続して行うようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、はんだ掻き寄せ処理を印刷処理とは別に適当なタイミングで単独で行うようにしても良い。
【0087】
また本発明においては、スキージ61a,61bのステンシル51への当接時におけるスキージ61a,61bの高さ位置を制御することによって、スキージ61a,61bのステンシル51への印圧を調整するようにしても良い。
【0088】
また本発明は、クランプ片31a,31bの上方に進出自在な位置決め片を設けて、基板Wをクランプ片31a,31bにより保持する際に、位置決め片を進出させて基板上面に当接させることにより、基板Wの上下方向の位置決めを図るようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】この発明の一実施形態にかかる印刷装置の側面図である。
【図2】上記印刷装置を示す正面図である。
【図3】上記印刷装置を概略的に示す平面図である。
【図4】上記印刷装置の主要部を示す斜視図である。
【図5】上記印刷装置におけるクランプユニット周辺を示す側面図である。
【図6】上記印刷装置の制御系を示すブロック図である。
【図7】上記印刷装置の生産動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】上記印刷装置の印刷動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】上記印刷装置における通常の印刷動作を説明するための側面図である。
【図10】上記印刷装置におけるはんだ垂れ落ち動作を説明するための側面図である。
【図11】上記印刷装置におけるはんだ掻き寄せ動作を説明するための側面図である。
【符号の説明】
【0090】
31a,31b クランプ片
51 ステンシル
61a,61b スキージ
S クリームはんだ(ペースト)
Ta 外側一方領域(外側領域)
Tb 外側他方領域(外側領域)
Tc 印刷摺動領域
W プリント基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を一対のクランプ片により両側から挟み込んで保持するとともに、その基板上にステンシルを配置した状態で、スキージを前記ステンシル上における前記一対のクランプ片間の領域(印刷摺動領域)に摺動させて、ステンシル上のペーストを拡張して基板に塗布するようにした印刷装置であって、
前記スキージを前記ステンシル上における印刷摺動領域に対し外側の領域(外側領域)に当接させて、そのスキージを前記印刷摺動領域に向けて前記外側領域に摺動させるペースト掻き寄せ処理を行う一方、
前記スキージの外側領域への印圧を、前記スキージの印刷摺動領域への印圧に対し小さく設定するようにしたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ペースト掻き寄せ処理と、前記スキージを印刷摺動領域に摺動させる印刷処理とを連続して行うようにした請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記スキージは、摺動方向に沿って並んで配置された一方側スキージおよび他方側スキージを有し、
前記外側領域における一方側クランプ片側の領域を外側一方領域、他方側クランプ片側の領域を外側他方領域としたとき、
前記ステンシルから離間した前記他方側スキージを先行させつつ、前記一方側スキージを前記外側一方領域から前記印刷摺動領域にかけて摺動させる一方向スキージングと、前記スキージから離間した前記一方側スキージを先行させつつ、前記他方側スキージにより前記外側他方領域から前記印刷摺動領域にかけて摺動させる他方向スキージングと、を行うようにした請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記スキージにおける外側領域での摺動速度を、印刷摺動領域での摺動速度に対し低速に設定するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
基板を一対のクランプ片により両側から挟み込んで保持するとともに、その基板上にステンシルを配置した状態で、スキージを前記ステンシル上における前記一対のクランプ片間の領域(印刷摺動領域)に摺動させて、ステンシル上のペーストを拡張して基板に塗布するようにした印刷方法であって、
前記スキージを前記ステンシル上における印刷摺動領域に対し外側の領域(外側領域)に当接させて、そのスキージを前記印刷摺動領域に向けて前記外側領域に摺動させる工程を含み、
前記スキージの前記外側領域への印圧を、前記スキージの印刷摺動領域への印圧に対し小さく設定するようにしたことを特徴とする印刷方法。
【請求項1】
基板を一対のクランプ片により両側から挟み込んで保持するとともに、その基板上にステンシルを配置した状態で、スキージを前記ステンシル上における前記一対のクランプ片間の領域(印刷摺動領域)に摺動させて、ステンシル上のペーストを拡張して基板に塗布するようにした印刷装置であって、
前記スキージを前記ステンシル上における印刷摺動領域に対し外側の領域(外側領域)に当接させて、そのスキージを前記印刷摺動領域に向けて前記外側領域に摺動させるペースト掻き寄せ処理を行う一方、
前記スキージの外側領域への印圧を、前記スキージの印刷摺動領域への印圧に対し小さく設定するようにしたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ペースト掻き寄せ処理と、前記スキージを印刷摺動領域に摺動させる印刷処理とを連続して行うようにした請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記スキージは、摺動方向に沿って並んで配置された一方側スキージおよび他方側スキージを有し、
前記外側領域における一方側クランプ片側の領域を外側一方領域、他方側クランプ片側の領域を外側他方領域としたとき、
前記ステンシルから離間した前記他方側スキージを先行させつつ、前記一方側スキージを前記外側一方領域から前記印刷摺動領域にかけて摺動させる一方向スキージングと、前記スキージから離間した前記一方側スキージを先行させつつ、前記他方側スキージにより前記外側他方領域から前記印刷摺動領域にかけて摺動させる他方向スキージングと、を行うようにした請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記スキージにおける外側領域での摺動速度を、印刷摺動領域での摺動速度に対し低速に設定するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
基板を一対のクランプ片により両側から挟み込んで保持するとともに、その基板上にステンシルを配置した状態で、スキージを前記ステンシル上における前記一対のクランプ片間の領域(印刷摺動領域)に摺動させて、ステンシル上のペーストを拡張して基板に塗布するようにした印刷方法であって、
前記スキージを前記ステンシル上における印刷摺動領域に対し外側の領域(外側領域)に当接させて、そのスキージを前記印刷摺動領域に向けて前記外側領域に摺動させる工程を含み、
前記スキージの前記外側領域への印圧を、前記スキージの印刷摺動領域への印圧に対し小さく設定するようにしたことを特徴とする印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−15233(P2007−15233A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199609(P2005−199609)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
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