説明

印刷装置及び印刷装置の制御方法

【課題】各ノズルの使用度を算出する際の処理時間の短縮を図る。
【解決手段】複数のノズルを用いて媒体に画像を印刷する印刷装置であって、画像の各画素が所定の階調数の何れかの階調値である第1階調値で示される状態から、所定の階調数よりも少ない他の階調数の何れかの階調値である第2階調値でありノズルが媒体に表現可能な第2階調値で示される状態に変換し、各ノズルに対応付けられた画素の第2階調値に基づいて、各ノズルから液体を吐出して、媒体に画像を印刷する、印刷装置であって、各ノズルに対応付けられた画像の画素の第1階調値に基づいて、各ノズルの使用度を算出して、算出結果によって印刷装置の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドに複数のノズルが設けられて、各ノズルから媒体(紙、布、OHP用紙など)に液体(例えばインク)を吐出することによって媒体上に画像を印刷するインクジェット方式の印刷装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−68202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような印刷装置では、印刷対象画像の画像データに基づいて、印刷対象画像を印刷するときの各ノズルの使用度を算出することが可能である。例えば、画像の各画素が多階調(例えば256階調)で示される状態から、当該画素にドットを形成するか否かを示す2階調に変換する処理(後述するハーフトーン処理)を行ない、各ノズルに対応付けられた画素の2階調の値に基づいて各ノズルの使用度を算出することができる。しかし、この場合、各ノズルの使用度を算出する際の処理に時間がかかるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、各ノズルの使用度を算出する際の処理時間の短縮を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、複数のノズルを用いて媒体に画像を印刷する印刷装置であって、前記画像の各画素が所定の階調数の何れかの階調値である第1階調値で示される状態から、前記所定の階調数よりも少ない他の階調数の何れかの階調値である第2階調値であり前記ノズルが前記媒体に表現可能な第2階調値で示される状態に変換し、各ノズルに対応付けられた画素の前記第2階調値に基づいて、各ノズルから液体を吐出して、前記媒体に画像を印刷する印刷装置であって、各ノズルに対応付けられた前記画像の画素の前記第1階調値に基づいて、各ノズルの使用度を算出して、算出結果によって印刷装置の制御を行うことを特徴とする印刷装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリンターの構成を示すブロック図である。
【図2】図2Aは印刷領域周辺の概略図であり、図2Bは図2Aを横から見た図である。
【図3】プリンタードライバーの処理のフロー図である。
【図4】プリンタードライバーが取得した印刷対象画像を示す図である。
【図5】比較例における各画像の各ノズルの使用度算出処理のフロー図である。
【図6】図6A及び図6Bは、解像度変換処理の説明図である。
【図7】ハーフトーン処理後の画像データを示す図である。
【図8】ハーフトーン処理後のデータと各ノズルとの対応付けの説明図である。
【図9】回転画像における解像度変換処理の説明図である。
【図10】90度回転画像のハーフトーン処理後のデータを示す図である。
【図11】各ノズルの使用度の算出の説明図である。
【図12】画像選択処理のフロー図である。
【図13】比較例の印刷方法によって印刷される画像の説明図である。
【図14】第1実施形態の各ノズルの使用度の算出方法のフロー図である。
【図15】色変換処理後の画像データを示す図である。
【図16】第1実施形態の改良例1によって印刷される画像の説明図である。
【図17】第1実施形態の改良例2によって印刷される画像の説明図である。
【図18】第1実施形態の改良例2によって印刷される画像の説明図である。
【図19】ノズルの目詰まり検査について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
複数のノズルを用いて媒体に画像を印刷する印刷装置であって、前記画像の各画素が所定の階調数の何れかの階調値である第1階調値で示される状態から、前記所定の階調数よりも少ない他の階調数の何れかの階調値である第2階調値であり前記ノズルが前記媒体に表現可能な第2階調値で示される状態に変換し、各ノズルに対応付けられた画素の前記第2階調値に基づいて、各ノズルから液体を吐出して、前記媒体に画像を印刷する、印刷装置であって、各ノズルに対応付けられた前記画像の画素の前記第1階調値に基づいて、各ノズルの使用度を算出して、算出結果によって印刷装置の制御を行うことを特徴とする印刷装置が明らかとなる。
このような印刷装置によれば、各ノズルの使用度を算出する際の処理時間の短縮を図ることができる。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記第1階調値は、ハーフトーン処理前の階調値であり、前記第2階調値は、ハーフトーン処理後の階調値であることが望ましい。
このような印刷装置によれば、ハーフトーン処理にかかる計算の負荷を軽減でき、各ノズルの使用度を算出する際の処理時間を短縮することができる。
【0012】
かかる印刷装置であって、各ノズルに対応付けられた複数の画素の前記第1階調値の平均値を使って、各ノズルの使用度が算出されることが望ましい。
このような印刷装置によれば、各ノズルの使用確率を求めることができる。
【0013】
かかる印刷装置であって、前記各ノズルの使用度によって、前記印刷装置の制御として前記複数のノズルに対するクリーニング処理の要否を決定してもよい。
このような印刷装置によれば、クリーニング処理の要否を早く判断することができる。
【0014】
かかる印刷装置であって、前記各ノズルの使用度によって、前記印刷装置の制御として前記クリーニング処理の対象となるノズルを決定してもよい。
このような印刷装置によれば、クリーニングによるインクの無駄を軽減することができる。
【0015】
かかる印刷装置であって、前記各ノズルの使用度によって、前記印刷装置の制御として前記複数のノズルに対する目詰まりの検査の要否を決定してもよい。
このような印刷装置によれば、目詰まり検査の要否を早く判断することができる。
【0016】
かかる印刷装置であって、前記各ノズルの使用度によって、前記印刷装置の制御として目詰まりの検査の対象となるノズルを決定してもよい。
このような印刷装置によれば、目詰まり検査によるインクの無駄を軽減できる。
【0017】
また、複数のノズルを用いて媒体に画像を印刷する印刷装置の制御方法であって、前記印刷装置は、前記画像の各画素が所定の階調数の何れかの階調値である第1階調値で示される状態から、前記所定の階調数よりも少ない他の階調数の何れかの階調値である第2階調値であり前記ノズルが前記媒体に表現可能な第2階調値で示される状態に変換し、各ノズルに対応付けられた画素の前記第2階調値に基づいて、各ノズルから液体を吐出して、前記媒体に画像を印刷する、印刷装置であって、各ノズルに対応付けられた前記画像の画素の前記第1階調値に基づいて、各ノズルの使用度を算出して、算出結果によって印刷装置の制御を行うことを特徴とする印刷装置の制御方法が明らかとなる。
【0018】
以下の実施形態では、インクジェットプリンター(以下、プリンター1ともいう)を例に挙げて説明する。
【0019】
===第1実施形態===
<プリンターの構成について>
図1は、プリンター1の全体構成のブロック図である。また、図2Aは、印刷領域周辺の概略図であり、図2Bは図2Aを横から見た図である。
プリンター1は、紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する印刷装置であり、外部装置であるコンピューター110と通信可能に接続されている。
【0020】
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、表示装置(不図示)にユーザーインターフェイスを表示させ、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピューター読み取り可能な記録媒体)に記録されている。また、プリンタードライバーは、インターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
【0021】
そして、コンピューター110は、プリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。
なお、「印刷装置」とは、媒体に画像を印刷する装置を意味し、例えばプリンター1が該当する。また、「印刷制御装置」とは、印刷装置を制御する装置を意味し、例えば、プリンタードライバーをインストールしたコンピューター110が該当する。
【0022】
本実施形態のプリンター1は、液体の一例として、紫外線(以下、UV)の照射によって硬化する紫外線硬化型インク(以下、UVインク)を吐出することにより、媒体に画像を印刷する装置である。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むインクであり、UVの照射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。なお、本実施形態のプリンター1は、CMYKの4色のUVインク(カラーインク)を用いて画像を印刷する。
【0023】
本実施形態のプリンター1は、搬送ユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット20、ヘッドユニット30、照射ユニット40)を制御して、印刷データに従って媒体に画像を印刷する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0024】
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、上流側搬送ローラ23A及び下流側搬送ローラ23Bと、ベルト24とを有する。不図示の搬送モータが回転すると、上流側搬送ローラ23A及び下流側搬送ローラ23Bが回転し、ベルト24が回転する。給紙ローラ(不図示)によって給紙された媒体は、ベルト24によって、印刷可能な領域(ヘッドと対向する領域)まで搬送される。ベルト24が媒体を搬送することによって、媒体がヘッドユニット30に対して搬送方向に移動する。印刷可能な領域を通過した媒体は、ベルト24によって外部へ排紙される。なお、搬送中の媒体は、ベルト24に静電吸着又はバキューム吸着されている。
【0025】
ヘッドユニット30は、媒体にUVインクを吐出するためのものである。なお、本実施形態では、UVインクとして、画像を形成するためのカラーインクを用いる。ヘッドユニット30は、搬送中の媒体に対して各インクを吐出することによって、媒体にドットを形成し、画像を印刷する。本実施形態のプリンター1はラインプリンターであり、ヘッドユニット30の各ヘッドは媒体幅分のドットを一度に形成することができる。なお、ヘッドユニット30には、図2に示すように、搬送方向の上流側から順に、ブラックのUVインクを吐出するブラックインクヘッドK、シアンのUVインクを吐出するシアンインクヘッドC、マゼンダのUVインクを吐出するマゼンダインクヘッドM、イエローのUVインクを吐出するイエローインクヘッドYの各ヘッドが設けられている。各ヘッドには、紙幅方向に複数のノズルが所定のノズルピッチで並ぶノズル列が設けられている。
【0026】
照射ユニット40は、媒体に着弾したUVインクに向けてUVを照射するものである。媒体上に形成されたドットは、照射ユニット40からのUVの照射を受けることにより、硬化する。本実施形態の照射ユニット40は、仮硬化用照射部42、及び本硬化用照射部44を備えている。
【0027】
仮硬化用照射部42は、媒体に形成されたドットを仮硬化させるためのUVを照射する。なお、本実施形態において、仮硬化とは、ドット間の滲みを防止するために行なう硬化のことである。但し、仮硬化のUVの照射量は少なく、仮硬化の後もドットは広がり続けている。
仮硬化用照射部42は、第1照射部42a、第2照射部42b、第3照射部42c、第4照射部42dを備えている。これらの各照射部は、UV照射の光源として発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を備えている。LEDは入力電流の大きさを制御することによって、照射エネルギーを容易に変更することが可能である。
第1照射部42aは、ブラックインクヘッドKの搬送方向下流側に設けられており、ブラックインクヘッドKによって形成されたドットの仮硬化を行なう。第2照射部42bは、シアンインクヘッドCの搬送方向下流側に設けられており、シアンインクヘッドCによって形成されたドットの仮硬化を行なう。第3照射部42cは、マゼンダインクヘッドMの搬送方向下流側に設けられており、マゼンダインクヘッドMによって形成されたドットの仮硬化を行なう。第4照射部42dは、イエローインクヘッドYの搬送方向下流側に設けられており、イエローインクヘッドYによって形成されたドットの仮硬化を行なう。
【0028】
本硬化用照射部44は、媒体に形成されたドットを本硬化させるためのUVを照射する。なお、本実施形態において、本硬化とは、ドットを完全に固化させるために行なう硬化のことであり、本硬化のUVの照射量は、仮硬化のUVの照射量よりも多い。本実施形態の本硬化用照射部44は、UV照射の光源として、ランプ(メタルハライドランプ、水銀ランプなど)を備えている。
本硬化用照射部44は、仮硬化用照射部42の第4照射部42dよりも搬送方向下流側に設けられている。また、本硬化用照射部44の媒体幅方向の長さは媒体幅以上である。そして、本硬化用照射部44は、ヘッドユニット30の各ヘッドによって媒体上に形成されたドットにUVを照射し、各ドットを完全に固化させる。
【0029】
検出器群50には、ロータリー式エンコーダ(不図示)、紙検出センサ(不図示)などが含まれる。ロータリー式エンコーダは、上流側搬送ローラ23Aや下流側搬送ローラ23Bの回転量を検出する。ロータリー式エンコーダの検出結果に基づいて、媒体の搬送量を検出することができる。紙検出センサは、給紙中の媒体の先端の位置を検出する。
【0030】
コントローラー60は、プリンターの制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェイス部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0031】
<印刷動作について>
プリンター1がコンピューター110から印刷データを受信すると、コントローラー60は、まず、搬送ユニット20によって給紙ローラ(不図示)を回転させ、印刷すべき媒体をベルト24上に送る。媒体はベルト24上を一定速度で停まることなく搬送され、ヘッドユニット30、及び照射ユニット40の下を通る。この間に、コントローラー60は、ヘッドユニット30の各ヘッドのノズルからインクを断続的に吐出させるとともに、照射ユニット40の各照射部からUVを照射させる。こうして、ドットの形成とUV照射が順次行なわれて媒体に画像が印刷される。そして、最後にコントローラー60は、画像の印刷が終了した媒体を排紙する。
【0032】
<比較例の印刷方法>
次に、比較例の印刷方法について説明する。
ここでは、説明の簡略化のため、印刷対象となる画像の大きさを横8画素×縦10画素とし、各色インクを吐出するノズル数を10個(ノズル#1〜#10)とする。また、説明の簡略化のため、印刷対象画像はカラー画像ではなくモノクロ画像とし、使用ノズルとしてブラックだけに着目する。また、UV照射についての説明は省略する。
【0033】
(プリンタードライバーの処理)
図3は、プリンタードライバーの処理のフロー図である。
プリンタードライバーは、印刷対象画像の画像データをアプリケーションプログラムから印刷対象画像の画像データを取得する(図3、S101)。図4はプリンタードライバーが取得した印刷対象画像を示す図である。
そして、プリンタードライバーは、印刷対象画像、及び、後述する回転画像のそれぞれについて、各ノズルの使用度を算出する(図3、S102)。
【0034】
図5は、比較例における各画像の各ノズルの使用度算出処理のフロー図である。
まず、印刷対象画像を取得すると、プリンタードライバーは、その印刷対象画像を紙に印刷する際の解像度(印刷解像度)に変換する(解像度変換処理:S201)。図6A及び図6Bは、解像度変換処理の説明図である。ここでは、図4の印刷対象画像が図6Aのように8画素×10画素に変換される。なお、解像度変換処理後の画像データの各画素データは、多階調数(例えば256階調)の何れかの階調値を示すデータであり、図6Bの各画素中の数字は、解像度変換処理後の画素の階調値を示している。例えば、図6Aのモノクロ画像のうち、黒色の画素は階調値が255であり、白色の画素は階調値が0である。また、灰色の画素は階調値が127である。なお、印刷対象画像がカラー画像の場合、解像度変換処理後の画像データの各画素データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。
【0035】
その後、プリンタードライバーは、解像度変換後の各画素データをCMYKデータに変換する処理(色変換処理)を行なう(S202)。この例ではモノクロ画像であるので、Kデータのみが得られる。
色変換処理後、プリンタードライバーは、ハーフトーン処理を行なう(S203)。ハーフトーン処理とは、多階調数(例えば256階調)の何れかの階調値を示すデータを、それよりも少ない階調数の何れかの階調値(例えば2階調を示す1ビットデータや、4階調を示す2ビットデータ)に変換する処理である。ハーフトーン処理では、ディザ法・γ補正・誤差拡散法などが利用される。
【0036】
図7は、ハーフトーン処理後の画像データを示す図である。ここでは、図6Bの各画素の256階調のデータが、「0」と「1」の2階調に変換されている。なお2階調のうち、「0」はドットを形成しないこと(ドット無し)を示し、「1」はドットを形成すること(ドット有り)を示している。
【0037】
図8は、ハーフトーン処理後のデータと各ノズルとの対応付けの説明図である。ここでは、10個のノズル毎について、それぞれ画像データ(画素列)が対応付けられる。この対応付けに基づいて、各ノズルの使用度を算出する。すなわち、各ノズルと対応する画素列のうち、ハーフトーン処理後の値が「1」となっている画素の数を求める。例えば、図8における各ノズルの使用度は、ノズル#1〜#5は3回、ノズル#6は2回、ノズル#7とノズル#8は0回、ノズル#9は2回、ノズル#10は3回である。
【0038】
次に、プリンタードライバーは、印刷対象画像の回転画像がある場合には(S205でYES)、回転画像の作成を行なう(S206)。ここでは、この処理において印刷対象画像を反時計回りに90度ずつ回転させることとする。以下、印刷対象画像をn度回転させた画像のことをn度回転画像ともいう。
【0039】
まず、プリンタードライバーは、印刷対象画像を90度回転させる。そして、S201に戻り、90度回転画像について、解像度変換処理を行なう。
【0040】
図9は、回転画像における解像度変換処理の説明図である。なお、印刷対象画像(回転前)は横8画素×縦10画素であった(紙幅方向の画素数とノズル数が一致していた)。これを90度回転すると、縦(紙幅方向)が8画素となり、紙幅方向の画素数とノズル数が一致しなくなる。そこで、ノズル数(10個)を考慮して、10画素×10画素の画像にする。ここでは図9に示すように図中の上側に2個の画素列が追加されている。
【0041】
そして、プリンタードライバーは、90度回転画像について、印刷対象画像の場合と同様にして、色変換処理(S202)及びハーフトーン処理(S203)を行なう。図10は、90度回転画像のハーフトーン処理後のデータを示す図である。ここでも、90度回転画像の各画素が、「0」と「1」の2階調に変換されている。図7と比較すると、ドットを形成することを示す「1」の分布が異なっていることがわかる。
【0042】
その後、プリンタードライバーは、ハーフトーン処理後のデータから、90度回転画像の印刷時の各ノズルの使用度を算出する(S204)。図11は、各ノズルの使用度の算出の説明図である。
【0043】
図11より各ノズルの使用度は、ノズル#1〜#5は0回、ノズル#6は4回、ノズル#7、#8は7回、ノズル#9は4回、ノズル#10は0回である。
【0044】
90度回転画像についての各ノズルの使用度の算出が終わると、180度回転画像、270度回転画像についても、同様の処理を行ない、各ノズルの使用度を算出する。つまり、0度(元の印刷対象画像)、90度、180度、270度の4つの画像についての各ノズルの使用度が算出される。そして、設定された全ての回転角度についての上記処理が終わると(S205でNO)、各ノズルの使用度算出処理を終了する。
その後、プリンタードライバーは、印刷対象画像及び回転画像の中から画像を選択する(図3:S103)。
【0045】
図12は、画像選択処理のフロー図である。この処理では、出来る限り少ない数の画像で、印刷時に全てのノズルを使うような画像を選択する。これは、印刷後の媒体の加工等を簡易にするためである。例えば、媒体にラベルを印刷する際に、多種類の画像を媒体に印刷すると、媒体からラベルを切り取る処理や、切り取ったラベルをペットボトルなどに巻き付ける処理などが複雑化する。
【0046】
まず、プリンタードライバーは、各画像のうち、全ノズルを使用するものがあるかを判断する(S301)。各画像のうち、全ノズルを使用するものがあると判断すると(S301でYES)。その画像(1個)を選択する(S302)。一方、全ノズルを使用する画像がないと判断すると(S301でNO)、全ノズルを使用する2個の画像の組み合わせがあるか否かを判断する(S303)。
全ノズルを使用する2個の画像の組み合わせがあれば(S303でYES)、その2個の画像を選択する(S304)。
【0047】
ここでは、元の印刷対象画像(0度回転画像、図6参照)と90度回転画像(図11参照)との組み合わせが選択される。この組み合わせの場合、ノズル#1〜ノズル#5及びノズル#10は3回、ノズル#6とノズル#9は6回、ノズル#7とノズル#8は7回となり、全てのノズルが少なくとも1回はインク滴を吐出する。なお、全てのノズルが少なくとも1回はインク滴を吐出するような組み合わせが2種類以上ある場合には、ノズルの使用度のばらつきが少ない方の組み合わせを選択する。これは、ノズルの使用度に偏りが少ないほど、目詰まりの起こしやすいノズルが発生しにくくなるためである。
【0048】
全ノズルを使用する2個の画像の組み合わせがない場合(S303でNO)には、全ノズルを使用する3個の画像の組み合わせがあるか否かを判断する(S305)。そして、全ノズルを使用する3個の画像の組み合わせがあれば、その3個の画像を選択する(S306)。
【0049】
なお、どの3個の画像の組み合わせでも全ノズルを使用できない場合(S305でNO)には、全画像(0度回転画像、90度回転画像、180度回転画像、270度回転画像)の4個の画像を選択する(S307)。これは、できるだけ多くのノズルからインクを吐出できるようにするためである。
【0050】
そして、プリンタードライバーは、画像の選択が終わると、選択画像の印刷データを作成する(図3、S104)。ここでは、元の印刷対象画像(0度回転画像)と90度回転画像とが媒体状に交互に並ぶような印刷データを作成する。なお、元の印刷対象画像と90度回転画像とを交互に並べるのは、できるだけ均等にノズルが使用されるようにするためである。但し、元の印刷対象画像を複数個並べて印刷した後に、90度回転画像を複数個並べて印刷しても良い。
そして、プリンタードライバーは、作成した印刷データをプリンター1に送信する(図3、S105)。
【0051】
(プリンターの処理)
プリンター1が印刷データを受信すると、コントローラー60は、印刷データに基づいて各ノズルからインクを吐出させ媒体にドットを形成させる。
【0052】
図13は、比較例の印刷方法によって印刷される画像の説明図である。
ここでも、説明の簡略化のため、ブラックのノズルのみを示している。また、ノズル数を10個にしている。
図に示すように、印刷対象画像と、90度回転画像が交互に印刷されている。印刷対象画像を印刷する際には、ノズル1〜ノズル#6及びノズル#9〜ノズル#10が使用されている。また、90度回転画像を印刷する際には、ノズル#6〜ノズル#9が使用されている。
【0053】
この比較例では、ハーフトーン処理後の画像データに基づいて、各ノズルの使用度(インク滴の吐出回数)を算出している。しかし、この算出方法だと、複数の画像についてハーフトーン処理を行う必要があるため、計算の負荷が大きい。この結果、図3のS102の処理に時間がかかってしまう。
【0054】
<第1実施形態の印刷方法>
本実施形態では、ハーフトーン処理を行わずに、各ノズルの使用度を算出する。
本実施形態の説明においても、説明の簡略化のため、印刷対象となる画像の大きさを横8画素×縦10画素とし、各色インクを吐出するノズル数を10個(ノズル♯1〜♯10)とする。また、説明の簡略化のため、印刷対象画像はカラー画像ではなくモノクロ画像とし、使用ノズルとしてブラックだけに着目する。
【0055】
図14は、第1実施形態の各ノズルの使用度の算出方法のフロー図である。本実施形態では、前述の比較例の図5(図3のS102)の代わりに、このフローが行なわれる。なお、図14において、図5と同一処理の部分には同一番号を付し説明を省略する。
本実施形態では、色変換処理(S202)後に、各ノズルに対応する画素の階調値の平均値を算出する(S204−1)。
【0056】
図15は、色変換処理後の画像データを示す図である。なお、各画素における階調値の値は比較例(図6B)と同じである。
図において対応ノズルとは、搬送方向(図の横方向)に沿った画素列にドットを形成するノズルのことである。例えば図の一番上段の画素列には#1ノズルが対応付けられる。解像度変換後なので、各画素列と各ノズルとの対応付けが可能である。
また、平均値とは、各画素列に属する画素の階調値の平均である。この平均値が大きいほど、対応するノズルからインク滴が吐出される確率が高くなる。
【0057】
例えば、平均値95.5と、平均値63.5を比較すると、インク滴が吐出される確率は、平均値95.5の画素列の方が高い。例えば、比較例のハーフトーン処理後(図7)を参照すると、平均値95.5の画素列(ノズル#1〜#5、#10と対応する画素列)では、ドット有りを示す「1」の数が3つなのに対し、平均値63.5の画素列(ノズル#6、#9と対応する画素列)では、「1」の数が2つである。特に、平均値が0の場合、全くインク滴が吐出されない確率が高くなる。つまり、或る画素列に属する画像の階調値の平均は、その画素列に対応するノズルの使用度を示す値になる。
【0058】
なお、比較例では、各ノズルの吐出回数を正確に算出できるのに対し、本実施形態では、必ずしも正確な吐出回数までは算出できない。これは、ハーフトーン処理時にディザ法や誤差拡散法などが行われるため、ハーフトーン処理前の階調値からはノズルの使用確率しか求められないためである。例えば、或る画素について、ハーフトーン処理前の階調値が非常に濃い階調値であっても、その画素にドットが形成されないことがある。また、逆に、或る画素について、ハーフトーン処理前の階調値が非常に淡い階調値であっても、その画素にドットが形成されることがある。
しかし、ノズルの使用確率が求められれば、ノズルの使用状況を十分に把握することができるので十分である。
【0059】
なお、図12のS301の処理の際には、プリンタードライバーは、この平均値と閾値とを比較し、どのノズルにおいても、対応する平均値が閾値よりも大きければ、YESと判断する。
また、図12のS303の処理の際には、プリンタードライバーは、2個の平均値の加算値と閾値とを比較し、どのノズルにおいても、対応する2個の平均値の加算値が閾値よりも大きければ、YESと判断する。
このように本実施形態によれば、ハーフトーン処理を行わずにノズルの使用度を算出できる。この結果、図3のS102の処理時間を短縮することができる。
【0060】
また、本実施形態では、プリンタードライバーは、ノズルの使用度に基づいて画像を選択した後、印刷データを作成する際に、選択した画像に対してハーフトーン処理等を行うことになる。このように、本実施形態では、全ての画像に対してハーフトーン処理を行うのではなく、選択した画像に対してだけハーフトーン処理を行うので、印刷までの処理時間を短縮できる。
なお、プリンタードライバーが印刷データを作成し送信した後、プリンターは、印刷データに基づいて、各ノズルからインクを吐出して媒体に画像を形成することになる。
【0061】
(第1実施形態のまとめ)
第1実施形態では、各ノズルに対応付けられた画素のハーフトーン処理前の256階調値の値に基づいて、各ノズルの使用度を算出している。そして、ノズルの使用度に基づいて画像を選択した後、選択画像のハーフトーン処理を行なうことにより、各ノズルが媒体の各画素にドットを形成するか否かの2階調に変換している。こうすることにより、ハーフトーン処理前に画像が選択されるので、ハーフトーン処理にかかる計算の負荷を軽減でき、この結果、各ノズルの使用度を算出する際の処理時間を短縮できる。なお、この場合、各ノズルの正確な使用回数は把握できないが、各ノズルの使用確率が求められる。各ノズルの使用回数が求められれば、ノズルの使用状況を十分に把握することができるので十分である。
【0062】
また、印刷対象画像と、印刷対象画像を回転させた回転画像の複数の画像について、ハーフトーン処理前にノズルの使用度を算出し、算出した使用度に基づいて画像を選択し、画像を印刷している。このように全ての画像に対してハーフトーン処理を行うのではなく、選択した画像に対してだけハーフトーン処理を行うので、ハーフトーン処理を行なう画像数を減らすことができ、印刷までの時間を短縮することができる。
【0063】
また、本実施形態では、印刷対象画像と複数の回転画像の中から画像を選択しているので、形成される画像の種類を少なく出来る。
【0064】
===第1実施形態の改良例===
(改良例1)
第1実施形態では、印刷対象画像を回転させていたが、これには限らない。例えば、印刷対象画像と、印刷対象画像の印刷位置を紙幅方向(ノズル列方向)に沿って移動させた移動画像の中から、各ノズルの使用度に基づいて画像を選択するようにしてもよい。なお、移動画像の取得処理は、前述した回転画像の場合と同様にプリンタードライバーによって行われる。
【0065】
図16は、第1実施形態の改良例1によって印刷される画像の説明図である。ここでは、印刷対象画像として、横10画素×縦8画素の画像としている。この改良例1では、印刷対象画像と、印刷対象画像の印刷位置を2画素下側に移動させた移動画像が選択され、2つの画像を交互に印刷している。印刷対象画像を印刷する際にはノズル#1〜#8が使用され、移動画像を印刷する際にはノズル#3〜#10が使用される。このように、各ノズルの使用度に応じて選択した印刷対象画像と移動画像を印刷することで、全てのノズルを使用することができ、ノズルの目詰まりを解消することができる。
【0066】
(改良例2)
また、印刷対象画像と回転画像と移動画像の中から、各ノズルの使用度に応じて、全ノズルを使用するのに最も少ない画像数の組み合わせを選択するようにしてもよい。
【0067】
図17は、第1実施形態の改良例2によって印刷される画像の説明図である。ここでは印刷対象画像として横8画素×縦8画素の画像としている。この改良例2では、印刷対象画像と、回転画像(90度回転画像)と、移動画像(2画素移動画像)とが選択されており、3つの画像を順番に印刷している。印刷対象画像を印刷する際には、ノズル#1、#2及び#6〜#8が使用され、回転画像を印刷する際にはノズル#4、#5が使用され、移動画像を印刷する際にはノズル#3、#4及び#8〜#10が使用される。このように、各ノズルの使用度に応じて選択した印刷対象画像と回転画像と移動画像を印刷することで、全てのノズルを使用することができ、ノズルの目詰まりを解消できる。
【0068】
(改良例3)
また、複数の種類の画像を印刷することが予定されている場合、ノズルの使用度に応じて、複数の印刷対象画像の中から最も少ない画像数で全てのノズルを使用できる組み合わせを選択するようにしてもよい。
図18は、第1実施形態の改良例3によって印刷される画像の説明図である。図に示すように、改良例3では、画像Aと画像Bを交互に印刷している。画像Aを印刷する場合には、ノズル#1〜#6が使用され、画像Bを印刷する場合には、ノズル#5〜#10が使用される。このように、このように、各ノズルの使用度に応じて、異なる種類の画像を印刷することで、全てのノズルを使用することができ、ノズルの目詰まりを解消できる。
さらに、複数の印刷対象画像、及び各画像の回転画像、各画像の移動画像の中から画像を選択するようにしてもよい。
【0069】
===第2実施形態===
第1実施形態では、印刷すべき画像を選択するために、各画像を印刷するときの各ノズルの使用度を算出していた。しかし、別の目的で、各ノズルの使用度を算出しても良い。
【0070】
第2実施形態では、画像を選択する以外の目的で各ノズルの使用度を算出している。なお、第2実施形態では、前述の図4の画像を長尺のロール紙状の媒体に連続印刷することとする。ここでもブラックインクノズルKのみに着目し、説明の簡略化のためノズル数を10個(#1〜#10)とする。
【0071】
例えば、各ノズルについて、インク不吐出の状態が所定期間継続したときに、ヘッドのインクの増粘に起因する吐出不良が発生したことや発生する可能性を考慮して、クリーニング(吸引クリーニング)が行なわれるようになっている場合、ヘッドのクリーニングのタイミングの設定のために、各ノズルの使用度を算出しても良い。既に説明したように、図4の画像を印刷する場合、ハーフトーン処理前の画像データ(256階調のデータ)に基づいて各ノズルの使用度を算出することによって、ノズル#7、ノズル#8からインクが吐出されないことが求められる。そこで、図4の画像を連続印刷する際に、印刷時間(ノズル#7、#8からのインク不吐出の期間)に応じてヘッドのクリーニングを行なうようにすればよい。
【0072】
なお、クリーニング処理として、吸引クリーニングの他にも、ノズルからインクを吐出させるクリーニング処理(例えばフラッシング処理)の要否判断の際に、ハーフトーン処理前の画像データ(256階調の画像データ)に基づいて各ノズルの使用度を算出しても良い。なお、フラッシング処理とは、印刷領域外(媒体に画像を印刷する領域以外の余白部)に、ノズルからインクを強制的に吐出させることにより、ノズルの目詰まり等の吐出不良を防ぐノズルの処理のことである。図4の画像を媒体に連続印刷する場合、各ノズルの使用度の算出結果より、インクを吐出していないノズル(ノズル#7、#8)があることがわかるので、フラッシング処理が必要であると判断できる。クリーニング処理は他にもノズル面をワイピングする処理などでも良い。また、吸引クリーニングはノズルごとに行っても良いが、ノズルごとに行うことが困難な場合は、複数のノズルごとにグループ分けしてノズルグループ毎にクリーニング要否判断してクリーニングしてもよいし、ヘッドが備える全ノズルをまとめて1ノズルグループとしても良い。また、フラッシング処理はノズル毎に行うことが容易であるが、同様に複数のノズルをまとめてグループ化して要否判断、クリーニングしても良い。
【0073】
通常、クリーニング処理は、例えば、タイマーや印刷実行量による計測値が閾値を超える場合に行われるようになっているが、本実施形態では、これらの各処理の要否を印刷前(ハーフトーン処理前)に判断することができる。すなわち、クリーニング処理の要否を早く判断することができる。
【0074】
この場合、ハーフトーン処理前にクリーニング要否判断を行い、要と判断された場合、CPU62は、メモリー63などにフラグ設定しておくとよい。そのあとに、ハーフトーン処理を行い、ハーフトーン処理された画像に従い直ちに印刷を実行すればよく、ハーフトーン処理された画像に基づいてクリーニング要否判断をする必要はない。印刷実行中の所定の時期に、前記のフラグが設定されていることによって、クリーニングを行えばよい。
【0075】
また、要否判断の結果不要と判断された場合や、第1実施形態のように印刷することにより未使用ノズルが無い場合、定期的なクリーニング処理を行わなくてもよい。よって、ハーフトーン処理前の画像データに基づいてクリーニング処理を行わないようにすることができ、インクの無駄を軽減することができる。
【0076】
また、クリーニング処理の要否判断に限られず、クリーニングが必要なノズルを特定する際に、ハーフトーン処理前の画像データ(256階調の画像データ)に基づいて各ノズルの使用度を算出しても良い。例えば、図4の画像を媒体に連続印刷する場合、各ノズルの使用度の算出結果より、ノズル#7、#8がインクを吐出しないことがわかる。よって、ノズル#7、#8をフラッシングが必要なノズルと特定できる。よって、フラッシング処理の際に、ノズル#7、#8だけからフラッシング処理のためのインクの吐出をすればよく、他のノズルからインクの吐出が行なわれないので、クリーニングによるインクの無駄を軽減することができる。
【0077】
さらに、ノズルの目詰まり検査の要否判断や検査対象となるノズルを判断する際に、ハーフトーン処理前の画像データ(256階調の画像データ)に基づいて各ノズルの使用度を算出しても良い。
【0078】
図19は、ノズルの目詰まり検査について説明するための概略図である。ここでも、説明の簡略化のために一つのヘッド(例えばブラックインクヘッドK)のみを示し。また、説明の簡略化のためにノズル数を10個(#1〜#10)としている。
図に示すように、プリンター1には、ノズルの目詰まり検査を行なうためのレーザー発光源51と、受光部52が備えられている。レーザー発光源51は、レーザー光を発光するものであり、ヘッドに対して紙幅方向の一方側(ノズル番号の大きい側)の下方に設けられている。また、受光部52は、レーザー発光源からのレーザー光を受信するものであり、ヘッドに対して紙幅方向の他方側(ノズル番号の小さい側)の下方に設けられている。また、ヘッドのノズル列は、レーザー光の光路上に位置している。
【0079】
ノズルの目詰まり検査の際には、レーザー発光源51からのレーザー光が受光部52に受光されている状態で、コントローラー60は、(例えば番号の小さいノズルから順に)ノズル毎にインクを吐出させる。ノズルからインク滴が吐出されると、レーザー光はインク滴に遮られ受光部52に届かなくなる。これにより、受光部52の受光状態に応じて、各ノズルからインクが吐出されたか否か(目詰まりの有無)を検査できる。
【0080】
本実施形態では、プリンタードライバーは、図4の画像のハーフトーン処理前の画像データ(256階調の画像データ)に基づいて各ノズルの使用度を算出する。これにより、ノズル#7、#8がインクを吐出しない(不吐出)であることがわかる。コントローラー60は、各ノズルの使用度の算出結果に基づいて、ノズルの目詰まりの検査の対象をノズル#7、#8に決定する。
【0081】
そして、コントローラー60は、番号の小さいノズルから順に(ノズル#7、ノズル#8の順に)インクを吐出させる。そして、コントローラー60は、受光部52の出力から、インク滴によってレーザー光が遮られたか否かを判断する。このように、ノズルの目詰まり検査の対象を判断する際に各ノズルの使用度を用いることで、目詰まり検査の対象となるノズル数を減らすことができ、目詰まり検査によるインクの無駄を軽減できる。
ノズル検査方式は、前述の光束中をインク滴を通過させる方式には限られず、インク滴を帯電させて吐出して吐出に伴う電気的変化を検出する方式でもよい。
【0082】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0083】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、装置の一例としてプリンターが説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の印刷装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。
【0084】
<照射ユニットについて>
前述の実施形態では、UVインクを媒体に吐出し、UVインクで形成されたドットにUV光を照射していた。しかし、媒体に通常のインクを吐出し、媒体にUV光を照射しない形態でもよい。
【0085】
<インクについて>
前述の実施形態は、プリンターの実施形態だったので、UVインクをノズルから吐出していた。しかし、ノズルから吐出する液体は、このようなインクに限られるものではない。例えば、金属材料、有機材料(特に高分子材料)、磁性材料、導電性材料、配線材料、成膜材料、電子インク、加工液、遺伝子溶液などを含む液体(水も含む)をノズルから吐出しても良い。
【0086】
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【0087】
<UV光について>
前述の実施形態では、各照射部は紫外線(UV光)を照射しているが、これに限られるものではない。例えば、ノズルから吐出されるインクが、可視光の波長領域でも硬化する性質であれば、各照射部は、インクを硬化させるための電磁波として、可視光を照射しても良い。
【0088】
<ノズルの使用について>
前述の実施形態では、各ノズルが使用されるか否かを求めていた。つまり、各ノズルがインク滴を吐出するか否かを求めていた。しかし、各ノズルがインク滴を吐出するか否かではなく、所定量以上(例えば所定回数以上)のインク滴を吐出するか否かを求めるようにしても良い。
【0089】
<プリンターについて>
前述した実施形態のプリンターはラインプリンターであったが、媒体を搬送方向に搬送する搬送処理と、キャリッジを搬送方向と交差する移動方向に移動させつつヘッドのノズルからインク滴を吐出するドット形成処理とを交互に繰り返し、ドットから構成される画像を紙に印刷するプリンター(いわゆるシリアルプリンター)であっても良い。
【0090】
<媒体について>
前述の実施形態では、画像が印刷される媒体は長尺のロール紙状のものであり、1枚の媒体に多数の画像が印刷されていた。しかし、媒体は、ロール紙状のものに限られるものではない。
例えば、単票用紙を次々に搬送し、各単票用紙に1個ずつ画像を印刷しても良い。この場合において第1実施形態のように画像を回転させるときには、搬送する単票用紙の向きを変えて給紙すると良い。そのためには、例えばA4用紙を収納するトレイを2個用意しておき、一方のトレイに収納するA4用紙の向きと他方のトレイに収納するA4用紙の向きを変えておき、2個のトレイから交互にA4用紙を給紙しつつ、第1実施形態のように0度回転画像と90度回転画像を交互に印刷すると良い。
【符号の説明】
【0091】
1 プリンター、
20 搬送ユニット、23A 上流側搬送ローラ、23B 下流側搬送ローラ
24 ベルト、30 ヘッドユニット、40 照射ユニット、
42 仮硬化用照射部、42a 第1照射部、42b 第2照射部、
42c 第3照射部、42d 第4照射部、44 本硬化用照射部、
50 検出器群、51 レーザー発光源、52 受光部、
60 コントローラー、61 インターフェイス部、62 CPU、
63 メモリー、64 ユニット制御回路、
110 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを用いて媒体に画像を印刷する印刷装置であって、
前記画像の各画素が所定の階調数の何れかの階調値である第1階調値で示される状態から、前記所定の階調数よりも少ない他の階調数の何れかの階調値である第2階調値であり前記ノズルが前記媒体に表現可能な第2階調値で示される状態に変換し、
各ノズルに対応付けられた画素の前記第2階調値に基づいて、各ノズルから液体を吐出して、前記媒体に画像を印刷する、
印刷装置であって、
各ノズルに対応付けられた前記画像の画素の前記第1階調値に基づいて、各ノズルの使用度を算出して、算出結果によって印刷装置の制御を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記第1階調値は、ハーフトーン処理前の階調値であり、
前記第2階調値は、ハーフトーン処理後の階調値である、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷装置であって、
各ノズルに対応付けられた複数の画素の前記第1階調値の平均値を使って、各ノズルの使用度が算出される
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の印刷装置であって、
前記各ノズルの使用度によって、前記印刷装置の制御として前記複数のノズルに対するクリーニング処理の要否を決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の印刷装置であって、
前記各ノズルの使用度によって、前記印刷装置の制御として前記クリーニング処理の対象となるノズルを決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1〜3の何れかに記載の印刷装置であって、
前記各ノズルの使用度によって、前記印刷装置の制御として前記複数のノズルに対する目詰まりの検査の要否を決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1〜3の何れかに記載の印刷装置であって、
前記各ノズルの使用度によって、前記印刷装置の制御として目詰まりの検査の対象となるノズルを決定する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
複数のノズルを用いて媒体に画像を印刷する印刷装置の制御方法であって、
前記印刷装置は、前記画像の各画素が所定の階調数の何れかの階調値である第1階調値で示される状態から、前記所定の階調数よりも少ない他の階調数の何れかの階調値である第2階調値であり前記ノズルが前記媒体に表現可能な第2階調値で示される状態に変換し、
各ノズルに対応付けられた画素の前記第2階調値に基づいて、各ノズルから液体を吐出して、前記媒体に画像を印刷する、印刷装置であって、
各ノズルに対応付けられた前記画像の画素の前記第1階調値に基づいて、各ノズルの使用度を算出して、算出結果によって印刷装置の制御を行うことを特徴とする印刷装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【図13】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−35843(P2011−35843A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182796(P2009−182796)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】