説明

原型ツールの製作方法及び装置

本発明は、部品の原型ツール(10)を製作するための装置及び方法に関する。本方法は、a)部品のCADモデル(23)を受け取るか、或いは作成する工程と、b)部品のCADモデル(23)に基づき原型ツール(10)の表面モデルを導き出す工程と、c)NC工作機械を用いて、表面モデルに基づき原型ツール(10)を製作する工程と、d)原型ツール(10)を用いて、部品の実物(12)を製作する工程と、e)部品の実物(12)の表面の点の三次元による点分布(22)を提供するコンピュータ断層撮影に基づく座標測定器を用いて、部品の実物(12)の輪郭を計測する工程と、f)三次元による点分布(22)の三次元の点とCADモデル(23)を比較して、所定の許容限界を上回る偏差が存在するか否かを計算する工程と、所定の許容限界を上回る偏差が存在する場合には、g)算出した偏差に基づき表面モデルを補正する工程と、h)NC工作機械を用いて、補正した表面モデルに基づき原型ツール(10)を再加工するか、或いは原型ツール(10)を新たに製作する工程と、i)所定の許容限界を上回る偏差が存在しなくなるまで、工程d)〜h)を繰り返す工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原型ツールを製作するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原型ツールは、部品を製作する工業生産プロセスで用いられている。例えば、原型ツールは、射出成形技術又は鋳造技術の分野で使用されている。そのような部品としては、設備及び装置の多くの構成部品が原型によるプロセスを用いて製作されている。例えば、携帯電話機の外殻などを例とする消費財の筐体又は筐体の外殻が射出成形部品として製作されている。
【0003】
原型式製造方法を用いた製作方法は、一つの原型ツールを用いて、その原型ツールによって規定される形状をそれぞれ持った非常に多くの部品を簡単に製作できることを特徴とする。従って、原型ツールは、製作すべき部品の「雌型」である。
【0004】
現在、原型ツールは、有利には、コンピュータ制御式工作機械を用いて、自動的な工程で製作されている。その場合、製作すべき部品のCADモデルを出発点として、そのCADモデルに基づき製作すべき部品の雌型の表面を有する一つ以上の原型ツールが製作される。しかし、実際には、製作すべき部品の正確な雌型を有する原型ツールでは、通常部品のCADモデルと一致する部品を原型によるプロセスで製作できないことが分かっている。一般的に、原型によるプロセスで製作された部品とCADモデルで規定される目的とする部品との間に予測できない偏差が生じる。そのような偏差は、従来技術では大抵「収縮」と呼ばれている。それにも関わらず、これまで、シミュレーションを参考に原型を用いた製作フローを検討しても、そのCADモデルと一致する規格通りの正確な形状の部品を製造するための原型ツールを製作することに成功していない。
【0005】
原型によるプロセスで製作された部品とCADモデル又はその他の目的とする規格品との間の偏差を計算するために、その部品を座標測定器で計測することが一般的に行われている。従来技術では、プローブヘッドで部品の表面を走査する機械式座標測定器が知られている。その場合、プローブヘッドは、調整機器によって、部品に対して相対的に動かされる。それによって、プローブヘッドの三次元空間内の座標をそれぞれ検知している。プローブヘッドが部品と接触すると、直ちにプローブヘッドの座標が部品の表面の座標を表すこととなる。そのような手法で加工物又は部品を完全に走査するためには、負担と時間のかかる測定が必要である。更に、そのような機械式座標測定器では、複雑な部品の形状を走査することは難しいか、或いは不十分にしか走査できない。
【0006】
更に、従来技術では、コンピュータ断層撮影に基づく方法を用いた座標測定器が知られている。その場合、部品又は加工物を調べるために侵入ビームが使用されている。コンピュータ断層撮影(CT)では、通常、例えば、回転テーブル上に部品を配置して、回転テーブルを様々な回転位置に回転させることによって、様々な方向からX線を透過させている。しかし、別のジオメトリーの検査構成も可能であり、知られている。部品又は加工物の材料に吸収されて弱まったビームは、センサー機器によって空間及び時間解像された形で計測される。実際には、例えば、測定物体の800〜1200個の投影画像が撮影され、各投影像の間の回転位置は、一定の回転角だけ変化している。複数の周知の断層撮影を再構成する方法の中の一つ、例えば、逆投影のフィルター処理を使用することによって、それから、加工物の三次元画像を計算している。そのような三次元画像は、それぞれ個々の小さい体積領域(ボクセル)に関する局所的で線形的な吸収係数を表している。CTに関する例が特許文献1に記載されている。そこでは、CT座標測定器は、計測部品の表面の点の三次元による点分布を提供している。
【0007】
従来技術では、最初にコンピュータ支援式工作機械を用いて製作した原型ツールを複数の反復工程で再加工する必要が有った。その場合、原型ツールの変更は、通常熟練した造形技師が手動介入することによって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ特許公開第3924066号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の技術課題は、簡単に、特に、大幅に自動化された形で原型ツールの製作を可能とする方法及び装置を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この技術課題は、本発明による請求項1の特徴を有する方法及び請求項7の特徴を有する装置又はシステムよって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項から明らかとなる。
【0011】
ここでは、先ずは部品のCADモデルを受け取るか、或いは作成するものと規定する。そのために、原型ツールを製作するための装置又はシステムは、コンピュータシステムを有する。そのようなコンピュータシステムは、1台のワークステーション又はネットワーク化された様々な形態の多くのコンピュータとすることができる。次に、部品のCADモデル又はそれから導き出された原型ツールの表面モデルに基づき、NC工作機械(Numerical Controll Machine)とも呼ばれるコンピュータ制御式機械を用いて、部品の原型ツールを製作する。従って、原型ツールの製作装置は、コンピュータシステムと情報技術的に連携して、制御プログラムを用いて原型ツールを製作するためのコンピュータ制御式工作機械を有する。コンピュータ制御式工作機械には、そのために必要な制御・管理ユニットを配備することができる。別の実施構成は、制御及び管理は、完全にコンピュータシステム内で進行し、工作機械は、通信インタフェースを介してのみ制御されるものと規定する。
【0012】
次に、そのようにして製作した原型ツールを用いて、原型によるプロセス又は原型式製造方法で部品の実物を製作する。製作した原型ツールに基づき、原型式製造機器を用いて部品の実物を製作する。
【0013】
次に、部品の実物の表面の点の三次元による点分布を提供する座標測定器、特に、コンピュータ断層撮影に基づく座標測定器を用いて、部品の実物の輪郭を計測する。それらの三次元による点分布の三次元の点は、CADモデルと比較されて、所定の許容限界を上回る偏差が存在するか否かを計算される。そのような偏差が存在する(設定した課題から明らかな通り、通常常に存在する)場合には、算出した偏差に基づき、原型ツールの表面モデルを補正する。それによって、それに対応して矯正された三次元の点が生成され、それらの点は、補正された表面モデルを規定する。原型ツールに関する補正された表面モデルに基づき、コンピュータ支援式工作機械を用いて、原型ツールを再加工するか、或いはそれが出来ない場合には、新たに製作する。次に、所定の許容限界を上回る偏差が(もはや)存在しなくなるまで、実物の製作、実物の輪郭の計測、その際に計測された三次元の点と当初のCADモデルとの比較及び場合によっては、表面モデルの更なる補正と新たな再加工の工程を繰り返し実施する。算出した偏差に基づく表面モデルの補正は、自動的に実施される。そうすることによって、この製作方法が大幅に自動化されることとなる。部品の原型ツールを製作するためには、簡単な基本作業、制御作業などだけが必要である。通常は、所定の許容限界の範囲内においてCADモデルによって規定される目的とする部品と一致する部品又は加工物の製作を可能とする原型ツールを製作するには、1回の反復工程で十分である。
【0014】
一つの実施構成では、コンピュータ支援式工作機械を最適に制御可能とするために、原型ツールの製作、再加工及び新規製作時において、場合によっては、初期段階で補正した原型ツールの表面モデルに基づき、それぞれNC工作機械を制御するための一つのNCプログラム(又は複数のNCプログラム)を自動的に作成するものと規定する。
【0015】
有利には、計測した三次元による点分布の三次元の点の各々に対して、それらの点とそれらの点に対応するCADモデルに基づく目的とする点との算出した偏差に基づき、矯正された三次元の点を求めるものと規定する。それによって、コンピュータ断層撮影に基づく座標測定器を用いて計測した三次元による点分布の三次元の点の点密度が所望の部品公差に適合した形で選定されることが分かる。
【0016】
表面モデルの補正は、原型ツールの補正された表面モデルを規定する矯正された三次元の点を計算することを含み、その計算では、第一の近似において、三次元による点分布の計測した三次元の点は、それらの点とそれらの点に対応する部品のCADモデルに基づく目的とする表面の点との算出された偏差に応じて、表面モデル又は補正された表面モデルによって規定される原型ツールの表面に反映されるものとする。
【0017】
即ち、第一の近似では、製作時に起こる収縮を考慮して、CADモデルによって規定される形状と一致する部品の実物を提供する形で加工物又は部品を取得するために、偏差の代わりに、その偏差だけ形状を矯正するものとする。
【0018】
一つの実施構成では、三次元の点とそれに対応するCADモデルに基づく部品の目的とする表面の点とを通る直線を設定することによって、補正した表面モデルの表面に対する反映が行われる。三次元の点からそれに対応する目的とする表面の点まで延びる距離ベクトルを計算する。そして、この距離ベクトルを前記の直線に沿ってスライドさせて、そのベクトルの始点が前記の直線と表面モデル又は補正した表面モデルに基づく原型ツールの表面との交点と一致するようにして、スライド後の距離ベクトルが矯正された三次元の点を指し示すようにする。
【0019】
矯正された三次元の点を計算する時に、部品の実物を製作するために使用する材料の材料特性、部品の実物を製作するために使用する製作方法のパラメータ、三次元による点分布の個々に計測した三次元の点の周囲の局所的なジオメトリー、CADモデルの対応する目的とする点の周囲の局所的なジオメトリー、表面モデル又は補正した表面モデルに基づく表面の目的とする点に対応する点の周囲の局所的なジオメトリー及び個々に得られる矯正された三次元の点の周囲の局所的なジオメトリーの中の一つ以上を考慮すると、更に改善された結果とそのため反復工程を有利には1回の反復工程に軽減することが実現される。そのため、様々な局所的なジオメトリーを考慮することは、部品の実物とCADモデルとの比較によって算出される偏差よりも大きくなるか、或いは小さくなる、原型式製造方法で使用される材料に応じた偏差、即ち、製作する原型ツールに対する変化を加味することとなるので、有利であり重要である。例えば、射出成形用の型として構成された原型ツールにおいて、部品上に薄い突出した構造を形成するために、幅が狭く深い溝を設ける場合、その溝が、部品の目的とする突出した構造が当初持つべき幅よりも著しく大きな幅を持つことが必要になる場合が有る。同様に、局所的に大きな偏差を有する個々の測定点に関して、原型ツールの望ましくない角を持たない不変の形状を得るために、平滑化アルゴリズムを使用することができる。
【0020】
本発明による装置又は本発明によるシステムの特徴は、それに対応する本発明による方法の特徴と同じ利点を有する。
【0021】
以下において、図面を参照した有利な実施例に基づき、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】原型ツールを製作するためのシステム又は装置の模式図
【図2】原型ツールの再加工を説明するための模式図
【図3】部品の製作した実物の輪郭、部品の目的とする形状及び原型ツールを変更するための補正した表面形状を重ね合わせた模式図
【図4】後続の反復工程に関する、図3と同様の模式図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には、原型ツールを製作するためのシステム又は装置1が模式的に図示されている。その装置は、コンピュータシステム2を有し、そのコンピュータシステムは、単一のコンピュータとするか、或いはネットワークで相互接続された、又は別の手法で通信技術により互いに接続された複数のコンピュータから構成することができる。このコンピュータシステムは、その上でコンピュータ支援による部品設計を実行することができ、そのため製作すべき部品のCADモデルを作成するように構成されている。従って、コンピュータシステム2は、設計モジュール3を有する。それに代わって、インタフェース4を介して、部品のCADモデルのデータを受け取ることもできる。CADモデルに基づき、製作すべき原型ツールに関する表面モデルを導き出す。更に、部品のCADモデルから、部品の目的とする表面を計算することができる。幾つかの実施構成では、表面モデルの計算時に、部品の製作に使用される材料のパラメータ、制作方法のパラメータ及び所定の幾何学的な形状単位及び/又は表面単位に関するデータ、例えば、雛型の形で保存された経験値を初期段階で使用することができ、そのため、原型ツールの第一の表面モデルが、初期段階で部品の目的とする表面と異なるようにすることができる。表面モデルの計算又は導出は、コンピュータシステム2の表面モデルモジュール5で行われる。原型ツールの表面モデルに基づき、NCプログラムモジュール6で制御プログラム(NCプログラム)を生成する。そのようなインタフェース7,8を介してコンピュータシステムとコンピュータ制御式工作機械9の間で交換されるNCプログラムを用いて、原型ツール10が製作される。原型ツール10は、表面モデルと一致する表面を有する。次に、原型式製造機器11において、原型ツール10を用いて、製作すべき部品の実物12が製作される。
【0024】
部品の実物12は、座標測定器13で計測される。座標測定器は、有利には、コンピュータ断層撮影に基づく座標測定器として構成される。そのようなコンピュータ断層撮影に基づく座標測定器は、部品の実物12の計測された表面輪郭を表す三次元の点から成る三次元による点分布を提供する。それらのデータは、インタフェース14,15を介して、コンピュータシステム2に伝送される。偏差モジュール16は、そのようにして製作された部品の実物12の計測した表面形状とCADモデルによって規定される目的とする表面との偏差を計算する。そのような偏差に基づき、表面モデルモジュール5は、原型ツールの表面の補正した表面モデルを計算する。次に、NCプログラムモジュール6を用いて、変更したNCプログラムを作成して、コンピュータ制御式工作機械9に伝送する。そのようなコンピュータ制御式工作機械9を用いて、原型ツール10を再加工するか、或いはそれが出来ない場合には、新たに製作し、ここで、原型ツール10の表面の輪郭は、補正した表面モデルに基づく表面と一致する。次に、原型式製造機器11において、部品の別の実物を製作する。それは、新たに座標測定器13で計測される。偏差モジュール16によって、新たにCADモデルとの偏差が計算され、許容限界を上回る偏差が未だ存在する場合には、算出した偏差に基づき原型ツール10の補正が新たに行われる。
【0025】
所定の許容限界を上回る偏差が存在しない場合、原型ツール10の製作が完了し、例えば、部品の多くの実物を製作するための大量生産ラインで使用することができる。
【0026】
図2には、本発明による方法の原型ツールの補正又は加工工程が再度図示されている。同じ技術的な特徴には、同じ符号を付与している。図示されたケースでは、部品の実物12は、携帯無線電話機の外殻である。先ずは、有利には、コンピュータ断層撮影に基づく座標測定器として構成された座標測定器13を用いて、それを計測する。その場合、部品の実物は、異なる方向から複数回X線を透過され、その結果得られた透過画像は、コンピュータを用いて、部品の実物の表面の座標点を表す(短縮して三次元による点分布22と称する)測定点の三次元分布に変換される。
【0027】
更に、部品のCADモデル23が有る。そのモデルは、ブロック24で表示されている通り、三次元による点分布22と比較される。その結果、ブロック25で模式的に表示された偏差が得られる。その偏差は、原型ツールの表面モデルの補正26のために使用される。それは、例えば、標準的なテンプレートライブラリー、即ち、表面の構成部分に関する雛型を補正するか、或いは補正した表面モデルを得るために、補正した雛型を使用することを意味する。それに代わって、点モデルを使用して、補正することができる。表面モデルの表現方式を部品に合わせて選定することができる。有利には、点モデルが使用される。補正した表面モデルから、原型ツールの加工時にコンピュータ制御式工作機械28を制御するために使用する補正したNCプログラム27を導き出す。
【0028】
図3には、製作した部品の実物12の輪郭31と、ここで述べた例では、同じく(第一の反復工程で)CADモデルに基づき導び出した原型ツール10の表面モデルによる原型ツールの表面と同じである、CADモデルに基づく目的とする表面の輪郭32と、補正した表面モデルに基づく原型ツールが持つべき表面の輪郭33とが、互いに重なり合って図示されている。部品の実物の輪郭31とCADモデルに基づく目的とする表面32との間の面によって表される収縮34が良く分かる。部品の製作した実物12の表面の点、即ち、三次元による点分布の三次元の点とそれに対応する目的とする表面の点との偏差が大きくなる程、補正した表面モデルの表面の形状を当初の表面モデルに基づくCADモデル又は表面の形状から大きくずらさなければならない。それによって、座標測定器で計測した三次元の点は、第一の近似において、CADモデルの表面に反映されることとなる。しかし、それは、第一の反復工程に関してのみ言えることである。
【0029】
図4では、座標測定器を用いて計測した別の部品の別の実物の輪郭41と、別の部品のCADモデルに基づく目的とする表面の輪郭42と、初期段階で補正された、或いは当初の表面モデルが部品の製作パラメータを考慮して、部品の目的とする表面に対して当初から既に補正された原型ツールの表面の輪郭43と、原型ツールの表面モデルの新たな補正後に得られた表面の輪郭44とが重なり合って図示されている。別の部品の実物の表面の計測した輪郭41の二つの三次元の点A,Bに関して、CADモデルに基づく目的とする表面の輪郭42上の対応する点a,bへの距離ベクトルrA ,rB を引く。更に、互いに対応する点A,a及びB,bを通る直線gA とgB を求める。ここで、これらの算出した距離ベクトルrA とrB は、有利には、原型ツールの補正された表面モデルを規定する矯正された三次元の座標点a’,b’を計算するために使用され、その計算は、それらの距離ベクトルを直線gA とgB に沿ってスライドさせて、ベクトルの各始点が各直線gA ,gB と別の部品の実物を製作するための原型ツールの表面モデルの輪郭との交点Sa 又はSb と一致するようにすることによって行われる。ここで、そのようにしてスライドさせた距離ベクトルr’A ,r’B の先端は、第一の近似において原型ツールの補正された表面モデルの輪郭44を規定する、それに対応する矯正された三次元の点a’,b’を指し示すこととなる。詳しく観察すると、図示された部分図において、実際に算出された輪郭44が補正された三次元の点b’を通って延びていないことが分かる。それは、絶対的な偏差以外に、個々の異なる輪郭41〜44の局所的なジオメトリーと、別の部品を製作するために使用される材料のパラメータとを使用していることと、原型式製造方法の別のパラメータを考慮していることとが原因である。
【0030】
図示されている実施構成は、例示するためだけの実施構成である。
【符号の説明】
【0031】
1 原型ツールを製作するための装置/システム
2 コンピュータシステム
3 設計モジュール
4 インタフェース
5 表面モデルモジュール
6 NCプログラムモジュール
7,8 インタフェース
9 コンピュータ制御式工作機械
10 原型ツール
11 原型式製造機器
12 部品の実物
13 座標測定器
14,15 インタフェース
16 偏差モジュール
22 三次元による点分布
23 CADモデル
24 偏差計算を表すブロック
25 偏差を表すブロック
26 表面モデルの補正
27 補正したNCプログラムの導出
28 原型ツールの加工
31 製作した部品の実物の輪郭
32 目的とする表面の輪郭
33 補正した表面モデルの表面の輪郭
34 収縮
41 別の実物の輪郭
42 CADモデルに基づく目的とする表面の輪郭
43 原型ツールの表面の輪郭
44 原型ツールの補正された表面の輪郭
A,B 計測した実物の三次元の点
a,b CADモデルに基づく部品の目的とする表面上の点
A 点Aとaを通る直線
B 点Bとbを通る直線
a 直線gA と計測した実物を製作するための原型ツールの表面の輪郭との交点
b 直線gb と計測した実物を製作するための原型ツールの表面の輪郭との交点
A 点Aから点aまでの距離ベクトル
B 点Bから点bまでの距離ベクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の原型ツール(10)を製作するための方法であって、
a)部品のCADモデル(23)を受け取るか、或いは作成する工程と、
b)部品のCADモデル(23)に基づき原型ツール(10)の表面モデルを導き出す工程と、
c)NC工作機械を用いて、前記の表面モデルに基づき原型ツール(10)を製作する工程と、
d)原型ツール(10)を用いて、部品の実物(12)を製作する工程と、
e)部品の実物(12)の表面の点の三次元による点分布(22)を提供する、コンピュータ断層撮影に基づく座標測定器を用いて、部品の実物(12)の輪郭を計測する工程と、
f)三次元による点分布(22)の三次元の点とCADモデル(23)を比較して、所定の許容限界を上回る偏差が存在するか否かを計算する工程と、
所定の許容限界を上回る偏差が存在する場合に、
g)算出した偏差に基づき表面モデルを補正する工程と、
h)NC工作機械を用いて、補正した表面モデルに基づき原型ツール(10)を再加工するか、或いは原型ツール(10)を新たに製作する工程と、
i)所定の許容限界を上回る偏差が存在しなくなるまで、工程d)〜h)を繰り返す工程と、
を有する方法。
【請求項2】
原型ツール(10)の製作、再加工及び新規製作時に、表面モデル又は補正した表面モデルに基づき、それぞれNC工作機械を制御するためのNCプログラムを自動的に作成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
計測した三次元による点分布(22)の三次元の点(A,B)の各々に対して、それらの点とそれらの点に対応するCADモデル(23)に基づく目的とする点との算出した偏差に応じて、矯正された三次元の点(a’,b’)を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
当該の表面モデルを補正する工程が、補正した表面モデルを規定する矯正された三次元の点(a’,b’)を計算する工程を含み、その工程では、第一の近似において、三次元による点分布(22)の計測した三次元の点(A,B)が、それらの点とそれらの点に対応するCADモデル(23)に基づく目的とする表面の点(a,b)との算出した偏差に応じて、表面モデル又は補正された表面モデルによって規定される原型ツール(10)の表面に反映されることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
当該の表面モデル又は補正された表面モデルの表面への反映が、三次元の点(A,B)とそれに対応するCADモデル(23)に基づく部品の目的とする表面の点(a,b)とを通る直線(gA ,gB )を設定して、三次元の点(A,B)からそれに対応する目的とする表面の点(a,b)にまで延びる距離ベクトル(rA ,rB )を計算し、その距離ベクトル(rA ,rB )を直線(gA ,gB )に沿ってスライドさせて、その距離ベクトルの始点が直線(gA ,gB )と表面モデル又は補正された表面モデルに基づく原型ツール(10)の表面との交点(Sa ,Sb )と一致するようにして、スライドさせた距離ベクトル(r’A ,r’B )が矯正された三次元の点(a’,b’)を指し示すように行われることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
矯正された三次元の点(a,b)を計算する際に、部品の実物(12)を製作するために使用される材料の材料特性と、部品の実物(12)を製作するために使用される製作方法のパラメータと、三次元による点分布(22)の個々の計測された三次元の点(A,B)の周囲の局所的なジオメトリーと、CADモデル(23)の対応する目的とする点(a,b)の周囲の局所的なジオメトリーと、表面モデル又は補正された表面モデルに基づく目的とする点に対応する表面の点(Sa ,Sb )の周囲の局所的なジオメトリーと、個々に得られる矯正された三次元の点(a,b)の周囲の局所的なジオメトリーとの中の一つ以上を考慮することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
部品の原型ツール(10)を製作するための装置であって、
a)部品のCADモデル(23)を作成するか、或いは部品のCADモデル(23)のデータを受け取るコンピュータシステム(2)と、
b)コンピュータシステム(2)と情報技術的に連携して、NCプログラムを用いて原型ツール(10)を製作するNC工作機械(9)と、
を有し、
c)コンピュータシステム(2)は、CADモデル(23)に基づき原型ツール(10)の表面モデルを導き出し、それを用いて、NC工作機械(9)を制御するためのNCプログラムを自動的に作成するように構成されており、
d)製作した原型ツール(10)を用いて、部品の実物(12)を製作する原型式製造機器(11)と、
e)部品の製作した実物(12)を計測して、部品の実物(12)の表面の点の三次元による点分布(22)を供給する、コンピュータ断層撮影に基づく座標測定器と、
を有し、
f)コンピュータシステム(2)は、三次元による点分布(22)の三次元の点(A,B)とCADモデル(23)を比較して、所定の許容限界を上回る偏差が存在するか否かを計算し、所定の許容限界を上回る偏差が存在する場合には、算出した偏差に応じて表面モデルを補正して、原型ツール(10)の補正した表面モデルに基づき、NC工作機械(9)を用いて原型ツール(10)を再加工するか、或いは原型ツール(10)を新たに製作するための補正されたNCプログラムを作成するとともに、再加工又は新規製作を制御又は開始するように構成されており、
g)実物の製作、実物の計測、CADモデル(23)との偏差の計算、原型ツールの表面モデルの補正及び原型ツールの再加工又は新規製作を大幅に自動化した形で反復して実施する、
ことを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−528829(P2011−528829A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519069(P2011−519069)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005195
【国際公開番号】WO2010/009840
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(504267828)カール・ツアイス・インダストリーエレ・メステクニク・ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】