説明

反射器を備えた光通信デバイスおよび光通信デバイスへの反射器の形成方法

【課題】Au薄膜層を反射面とする反射器を光学媒体に高い付着力で形成する方法を実現して低損失で高い信頼性を有する光通信デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の光通信デバイスは、導波路チップ1の一端面に到達した光を反射して光路を折り返す反射器2を備え、該反射器2は、導波路12を伝搬する光に対して透明な物質に、Auと金属間化合物等を形成する金属を添加した材料を用いて、導波路チップ1の端面に形成した透明薄膜層21と、該透明薄膜層21の表面に形成したAu薄膜層22と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学媒体の端面に到達した光を反射して光路を折り返すための反射器を備えた光通信デバイスおよび光通信デバイスへの反射器の形成方法に関し、特に、金(Au)薄膜を反射面とする反射器を高い付着力で形成するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光を用いた技術が広く用いられており、なかでも光を用いた通信技術は急激に発達している。光通信分野で用いられているデバイスは、更なる多機能化や複数の機能部の多段接続などが不可欠となっている反面、デバイスの小型化技術に対する要求も高い。
光通信デバイスの小型化に関する従来技術の1つとして、例えば図6に示すように、複数の機能デバイス部101,102を縦続接続した導波路チップ100について、機能デバイス部101から出力される光をチップ端面に形成した反射器103で折り返して機能デバイス部102に送るようにすることによって、導波路チップ100の全長を短くして小型化を図る技術が知られている。なお、図6には、機能デバイス部101,102の一例として音響光学チューナブルフィルタ(Acousto-Optic Tunable Filter:AOTF)を示したが、AOTF以外の様々な機能デバイス部を縦続接続する場合にも反射器を用いた小型化の技術は有効である。
【0003】
上記のような光通信デバイスの小型化に利用される反射器の材料としては、アルミニウム(Al)、銀(Ag)または金(Au)などが一般的に用いられてきた。しかしながら、Alを用いた反射器は、光を反射する際に若干の吸収が生じるため、光の損失の原因となってしまうという問題点があった。また、Agを用いた反射器は、反射の際の吸収が殆どないものの、酸化されやすい材料であるため、酸化に伴って反射率が低下し、光の損失が発生してしまうという欠点があった。
【0004】
一方、Auを用いた反射器は、赤外領域において反射による光の吸収がないため低損失の反射器を形成することができ、また、Auは酸化による劣化がないため安定した反射特性が得られるという利点がある。しかしながら、導波路チップの端面にAu薄膜を直接成膜した反射器は、導波路チップに対するAu薄膜の付着力が弱いため剥離しやすいという問題点があった。
【0005】
導波路チップの端面に対するAu薄膜の付着力を向上させるための従来技術としては、チップ端面とAu薄膜との間に、チタン(Ti)などの金属薄膜を下地層として形成する方法が知られている。また、前述の図6に示したような光通信デバイスの小型化に利用される反射器とは用途が異なるが、大出力レーザ用ミラーや赤外線ヒータ用反射鏡などについて、Au薄膜の下地層として酸化ケイ素(SiO)や酸化アルミニウム(Al)の薄膜を形成する方法もある(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平11−307845号公報
【特許文献2】特開平10−197706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、Tiなどの金属薄膜を下地層としてAu薄膜の付着力向上を図る従来技術については、導波路チップの端面から出射される光が下地層を介してAu薄膜に到達することになるため、下地層が反射面として機能するようになり、Au薄膜におけるミラー効果が失われてしまうという問題点がある。また、SiOやAlの薄膜を下地層とする従来技術を光通信デバイス用の反射器に応用した場合、導波路チップの端面から出射される光に対してSiOやAlの薄膜は透明であるため下地層が反射面として機能することはないが、これらの薄膜に対するAu薄膜の付着力は十分ではなく、長期の信頼性を確保し得るレベルまでAu薄膜の剥離の問題を解決することは難しい。
【0007】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、Au薄膜層を反射面とする反射器を光学媒体に高い付着力で形成する方法を実現して低損失で高い信頼性を有する光通信デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明は、光学媒体内を伝搬する光に対して透明な物質に、金(Au)と化学結合する金属を添加した材料を用いて、前記光学媒体の端面に形成した透明層と、該透明層の表面に形成した金(Au)薄膜層と、を有することを特徴とする。
また、光が伝搬する光学媒体と、該光学媒体の端面に到達した光を反射して光路を折り返す反射器と、を備えた光通信デバイスにおいて、前記反射器は、前記光学媒体内を伝搬する光に対して透明な物質に、金(Au)と化学結合する金属を添加した材料を用いて、前記光学媒体の端面に形成した透明薄膜層と、該透明薄膜層の表面に形成した金(Au)薄膜層と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記透明薄膜層の材料に添加される金属は、金(Au)と金属間化合物を形成する金属、金(Au)と全率固溶体を形成する金属、または、酸化物生成自由エネルギーが−6.3×10ジュール以下の金属とするのが好ましい。
上記のような構成の光通信デバイスでは、金(Au)と化学結合する金属を添加した透明材料を用いて光学媒体の端面に形成した透明薄膜層がAu薄膜層の下地層となる。透明薄膜層は、光学媒体を伝搬する光に対して実質的に透明であるので反射面として機能することはなく、Au薄膜層が光学媒体の端面からの光の反射面となるため、反射器での光の損失が殆ど発生しなくなる。また、透明薄膜層とAu薄膜層の界面付近では、透明薄膜層に添加された金属とAuが化学結合して金属間化合物や全率固溶体などが形成され、その結合力よって透明薄膜層に対するAu薄膜層の付着力が向上するようになる。
【発明の効果】
【0010】
上記のように本発明によれば、酸化による劣化がないAu薄膜層を反射面とし、光の損失が殆ど発生しない反射器を、光学媒体に高い付着力で形成することができるようになるため、低損失で高い信頼性を有する光通信デバイスを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、全図を通して同一の符号は同一または相当部分を示すものとする。
図1は、本発明の第1実施形態による光通信デバイスの主要部分の構成を示す平面図である。
図1において、本光通信デバイスは、例えば、光学媒体としての導波路チップ1と、該導波路チップ1の一端面に形成された反射器2と、を備える。
【0012】
導波路チップ1は、光学基板11に形成された導波路12を有し、該導波路12が上述の図6に示した場合と同様にして光学基板11の端面で折り返されることでチップサイズの小型化が図られている。光学基板11の材料としては、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、平面光回路(Planer Light-wave Circuit:PLC)に用いられる酸化ケイ素(SiO)、または、ガリウム砒素(GaAs)系若しくはインジウムリン(InP)系等の光半導体デバイスなどを使用することが可能である。
【0013】
反射器2は、透明薄膜層21および金(Au)薄膜層22からなる。透明薄膜層21は、導波路チップ1を伝搬する光に対して透明な物質に、Auと化学結合する金属を添加した材料を用いて、上記光学基板11の導波路12が折り返される端面に形成されている。Au薄膜層22は、光学基板11の端面に形成され透明薄膜層21の表面に形成されている。
【0014】
具体的に、ここでは上記の透明薄膜層21の材料として、例えば、光通信に利用される一般的な光の波長に対して高い透過率を有する酸化ケイ素(SiO)に、Auと金属間化合物を形成する金属を添加したものを使用する。Auと金属間化合物を形成する金属としては、例えば、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、水銀(Hg)などがあり、これらの金属のうちの少なくとも1つがSiOに添加される。SiOに添加される金属の種類および濃度は、金属間化合物の形成によるAu薄膜層22の付着力向上効果と、導波路チップ1を伝搬する光に対する透明薄膜層21の透過率とを考慮して設定される。すなわち、金属の添加濃度を高くするほど、金属間化合物が形成されやすくなるのでAu薄膜層22の付着力を強くすることができるが、金属の添加濃度の上昇により透明薄膜層21の透過率が低下して、反射器2における光損失は増加してしまう。このため、導波路チップ1を伝搬する光に対して透明薄膜層21が実質的に透明となる範囲内で金属の添加濃度をより高くすることにより、低損失で付着力の強い反射器2を形成することが可能になる。具体的な一例を挙げておくと、SiOに対してInおよびSnを60wt%(重量パーセント)の濃度で添加した材料は、図2に示すように光通信に利用される一般的な光波長に対して略100%の透過率が得られるため、透明薄膜層21を形成するのに好適である。ただし、本発明で用いる透明薄膜層21の材料が上記の具体例に限定されることを意味するものではない。
【0015】
上記のような構成の光通信デバイスでは、導波路チップ1の導波路12内を伝搬する光は、反射器2の形成された基板端面に到達すると透明薄膜層21を通過してAu薄膜層22で反射され、該反射光が透明薄膜層21を介して導波路チップ1の導波路12に戻される。このとき、透明薄膜層21は、導波路チップ1からの光に対して高い透過率を有しているため反射面として機能するようなことはない。一方、Au薄膜層22は、0.6μm以上の波長領域の光に対して高い反射率を有しており、光通信に利用される一般的な光に対して全反射ミラーとして機能する。また、透明薄膜層21とAu薄膜層22の界面付近では、透明薄膜層21に添加された金属とAuの間で化合物が形成されており、この金属間化合物の結合力により透明薄膜層21に対するAu薄膜層22の付着力が向上する。なお、導波路チップ1の端面に対する透明薄膜層21の付着力は、透明薄膜層21に対するAu薄膜層22の付着力よりも更に強い。
【0016】
したがって、上記のような第1実施形態によれば、酸化による劣化がないAu薄膜層22を反射面とし、かつ、光の損失が殆ど発生しない反射器2を導波路チップ1の端面に高い付着力で形成することができるようになる。これにより、低損失で高い信頼性を有する小型の光通信デバイスを提供することが可能になる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0017】
第2実施形態の光通信デバイスは、前述の図1に示した第1実施形態の構成と同様に、導波路チップ1の端面に対して、透明薄膜層21およびAu薄膜層22からなる反射器2を形成したものであって、第1実施形態の構成と相違する点は、透明薄膜層21の材料としてSiOに添加される金属を、Auと全率固溶体を形成する金属とした点である。
Auと全率固溶体を形成する金属としては、例えば、銀(Ag)、白金(Pt)などがあり、これらの金属のうちの少なくとも1つがSiOに添加される。SiOに添加される金属の種類および濃度は、第1実施形態の場合と同様に、Au薄膜層22の付着力向上効果と、透明薄膜層21の透過率とを考慮して設定される。
【0018】
上記のような材料を用いて透明薄膜層21が形成されることで、該透明薄膜層21とAu薄膜層22の界面付近でAuとAgまたはPtの全率固溶体が形成されるようになり、この全率固溶体の結合力により透明薄膜層21に対するAu薄膜層22の付着力が向上する。よって、SiOに対してAuと全率固溶体を形成する金属を添加した材料を用いて透明薄膜層21を形成するようにしても、前述した第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0019】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
第3実施形態の光通信デバイスは、前述の図1に示した第1実施形態の構成と同様に、導波路チップ1の端面に対して、透明薄膜層21およびAu薄膜層22からなる反射器2を形成したものであって、第1実施形態の構成と相違する点は、透明薄膜層21の材料としてSiOに添加される金属を、酸化物生成自由エネルギーが−6.3×10ジュール(=−150キロカロリー)以下の金属とした点である。
【0020】
酸化物生成自由エネルギーは、酸素に対する金属の反応性を表しており、その値が小さな金属ほど、即ち酸化しやすい金属ほど界面結合が大きくなる。Au薄膜層22との界面結合を考えた場合、酸化物生成自由エネルギーが−6.3×10ジュール以下となる金属が透明薄膜層21に含まれるようにすることで、Auとの間の金属結合が形成されやすくなる。酸化物生成自由エネルギーが−6.3×10ジュール以下の金属としては、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)などがあり、これらの金属のうちの少なくとも1つがSiOに添加される。なお、Tiの酸化物生成自由エネルギーは、−8.6×10ジュール(−204キロカロリー)、Crの酸化物生成自由エネルギーは、−10.5×10ジュール(−250キロカロリー)、Moの酸化物生成自由エネルギーは、−6.810ジュール(−162キロカロリー)である。SiOに添加される金属の種類および濃度は、第1実施形態の場合と同様に、Au薄膜層22の付着力向上効果と、透明薄膜層21の透過率とを考慮して設定される。
【0021】
上記のような材料を用いて透明薄膜層21が形成されることで、該透明薄膜層21とAu薄膜層22の界面付近で形成される金属結合により透明薄膜層21に対するAu薄膜層22の付着力が向上する。よって、SiOに対して酸化物生成自由エネルギーが−6.3×10ジュール以下の金属を添加した材料を用いて透明薄膜層21を形成するようにしても、前述した第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0022】
なお、上述した第1〜第3実施形態では、透明薄膜層21の形成に用いる主材料としてSiOを使用する一例を示したが、本発明はこれに限らず、例えば、酸化アルミニウム(Al)などの透明材料を使用することも可能である。
また、光学基板11に導波路12が形成された導波路チップ1の端面に反射器2が形成される構成例を示したが、例えば図3に示すように、特定の導波路が形成されていない光学媒体1’の端面に反射器2を形成して、光学媒体1’内を前記端面に向けて伝搬する光を、反射器2のAu薄膜層22で反射して伝搬方向を折り返すようにしてもよい。上記のような導波路が形成されていない光学媒体1’の具体例としては、光学結晶や半導体レーザチップ、スラブ導波路基板などがある。
【0023】
次に、上述した第1〜第3実施形態の光通信デバイスの具体的な応用例について説明する。
図4は、2段構成の音響光学チューナブルフィルタ(AOTF)に本発明を適用した一例を示す平面図である。
図4において、導波路チップ1には第1機能デバイス部10Aおよび第2機能デバイス部10Bが形成されている。各機能デバイス部10A,10Bは、例えば、LiNbO基板11に形成されたマッハツェンダ型導波路12A,12Bと、基板11上に弾性表面波(surface acoustic wave:SAW)を発生させる交差指電極(interdigital transducer:IDT)13A,13Bと、各IDT13A,13Bで発生したSAWを導波路12A,12Bに沿って伝搬させるSAWガイド14A,14Bと、を有する。機能デバイス部10Aの出力と機能デバイス部10Bの入力の間を繋ぐ導波路は基板11の一端面で折り返されており、該端面の導波路が位置する付近に透明薄膜層21およびAu薄膜層22からなる反射器2が形成されている。
【0024】
上記のような構成のAOTFでは、波長の異なる複数の光信号を多重化したWDM光が機能デバイス部10Aに入力されマッハツェンダ型導波路12Aの各アームを伝搬する。このとき、IDT13Aには所要の周波数のRF信号が印加され、該RF信号に応じて発生するSAWがSAWガイド14Aにより各アームに沿って伝搬し、このSAWの音響光学効果によって、RF信号の周波数に対応した波長の光信号がWDM光から選択されて機能デバイス部10Aから出力される。機能デバイス部10Aの出力光は、導波路を伝搬して基板端面に到達し、反射器2の透明薄膜層21を通過してAu薄膜層22で反射される。Au薄膜層22で反射された光は透明薄膜層21を通過して出力側の機能デバイス部10Bに送られ、入力側の機能デバイス部10Aと同様に、IDT13Bに印加されるRF信号の周波数に対応した波長の光信号が選択されて機能デバイス部10Bから出力される。
【0025】
図5は、上記の図4に示した2段構成のAOTFを更に応用して波長選択スイッチを構成した一例を示す平面図である。なお、2段構成のAOTFを用いた波長選択スイッチの基本的な構成は、例えば特表2003−508795号公報で公知であるため、ここではその概略を説明することにする。
図5に示した波長選択スイッチの構成例では、第1および第2機能デバイス部10A,10Bの間を接続する導波路だけでなく、図4の構成において未使用ポートとなっていた第1機能デバイス部10Aの出力および第2機能デバイス部10Bの入力にそれぞれ繋がる導波路も基板11の一端面まで伸長され、該端面の各々の導波路が位置する範囲を含むように反射器2が形成されている。また、導波路チップ1の入出力ポートには光サーキュレータ31A,31Bが接続されており、該光サーキュレータ31A,31Bを介して第1および第2機能デバイス部10A,10BにWDM光が入出力される構成となっている。
【0026】
上記のような構成の波長選択スイッチでは、例えば、図5の左上側に位置する入力ポートIN1から入力されたWDM光は、光サーキュレータ31Aを介して第1機能デバイス部10Aに与えられる。第1機能デバイス部10Aでは、IDT13Aに印加されるRF信号の周波数に対応した波長の光信号が選択されて図5で下側のポートから出力され、基板端面の反射器2で反射されて第2機能デバイス部10Bに送られ、第2機能デバイス部10Bおよび光サーキュレータ31Bを通って出力ポートOUT2から出力される。一方、第1機能デバイス部10Aで選択されなかった光信号は図5で上側のポートから出力され、基板端面の反射器2で反射されて第1機能デバイス部10Aに戻され、第1機能デバイス部10Aおよび光サーキュレータ31Aを通って出力ポートOUT1から出力される。
【0027】
また、図5の左下側に位置する入力ポートIN2から入力されたWDM光は、光サーキュレータ31Bを介して第2機能デバイス部10Bに与えられる。第2機能デバイス部10Bでは、IDT13Bに印加されるRF信号の周波数に対応した波長の光信号が選択されて図5で上側のポートから出力され、基板端面の反射器2で反射されて第1機能デバイス部10Aに送られ、第1機能デバイス部10Aおよび光サーキュレータ31Aを通って出力ポートOUT1から出力される。一方、第2機能デバイス部10Bで選択されなかった光信号は図5で下側のポートから出力され、基板端面の反射器2で反射されて第2機能デバイス部10Bに戻され、第2機能デバイス部10Bおよび光サーキュレータ31Bを通って出力ポートOUT2から出力される。
【0028】
なお、図4および図5に示した応用例では、AOTFを機能デバイス部とした一例を示したが、AOTF以外の様々な機能デバイス部を縦続接続する場合にも本発明は有効である。
以上、本明細書で開示した主な発明について以下にまとめる。
【0029】
(付記1) 光が伝搬する光学媒体と、該光学媒体の端面に到達した光を反射して光路を折り返す反射器と、を備えた光通信デバイスにおいて、
前記反射器は、前記光学媒体内を伝搬する光に対して透明な物質に、金(Au)と化学結合する金属を添加した材料を用いて、前記光学媒体の端面に形成した透明薄膜層と、該透明薄膜層の表面に形成した金(Au)薄膜層と、を有することを特徴とする光通信デバイス。
【0030】
(付記2) 付記1に記載の光通信デバイスであって、
前記透明薄膜層の材料に添加される金属は、金(Au)と金属間化合物を形成する金属であることを特徴とする光通信デバイス。
【0031】
(付記3) 付記2に記載の光通信デバイスであって、
前記金(Au)と金属間化合物を形成する金属は、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、水銀(Hg)および鉛(Pb)のうちの少なくとも1つであることを特徴とする光通信デバイス。
【0032】
(付記4) 付記1に記載の光通信デバイスであって、
前記透明薄膜層の材料に添加される金属は、金(Au)と全率固溶体を形成する金属であることを特徴とする光通信デバイス。
【0033】
(付記5) 付記4に記載の光通信デバイスであって、
前記金(Au)と全率固溶体を形成する金属は、銀(Ag)および白金(Pt)のうちの少なくとも1つであることを特徴とする光通信デバイス。
【0034】
(付記6) 付記1に記載の光通信デバイスであって、
前記透明薄膜層の材料に添加される金属は、酸化物生成自由エネルギーが−6.3×10ジュール以下の金属であることを特徴とする光通信デバイス。
【0035】
(付記7) 付記6に記載の光通信デバイスであって、
前記酸化物生成自由エネルギーが−6.3×10ジュール以下の金属は、チタン(Ti)、クロム(Cr)およびモリブデン(Mo)のうちの少なくとも1つであることを特徴とする光通信デバイス。
【0036】
(付記8) 付記1に記載の光通信デバイスであって、
前記透明薄膜層の材料として用いられる、前記光学媒体内を伝搬する光に対して透明な物質は、酸化ケイ素(SiO)および酸化アルミニウム(Al)のいずれか1つであることを特徴とする光通信デバイス。
【0037】
(付記9) 付記1に記載の光通信デバイスであって、
前記光学媒体は、光が伝搬する導波路を形成した光学基板であり、
前記反射器は、前記光学基板の導波路が位置する端面に形成されることを特徴とする光通信デバイス。
【0038】
(付記10) 付記9に記載の光通信デバイスであって、
前記光学基板は、前記導波路内を伝搬する光に対して所定の処理を施す第1機能デバイス部および第2機能デバイス部を有し、
前記反射器は、前記第1機能デバイス部で処理された光を反射して前記第2機能デバイス部に与えることを特徴とする光通信デバイス。
【0039】
(付記11) 付記10に記載の光通信デバイスであって、
前記第1および第2機能デバイス部は、音響光学チューナブルフィルタであることを特徴とする光通信デバイス。
【0040】
(付記12)
光学媒体内を伝搬する光に対して透明な物質に、金(Au)と化学結合する金属を添加した材料を用いて、前記光学媒体の端面に形成した透明層と、
該透明層の表面に形成した金(Au)薄膜層と、を有することを特徴とする光通信デバイス。
【0041】
(付記13) 光学媒体内を光が伝搬する光通信デバイスに対して、前記光学媒体の端面に到達した光を反射して光路を折り返すための反射器を形成する方法であって、
前記光学媒体内を伝搬する光に対して透明な物質に、金(Au)と化学結合する金属を添加した材料を用いて、前記光学媒体の端面に透明薄膜層を形成し、
該形成した透明薄膜層の表面に金(Au)薄膜層を形成することを特徴とする光通信デバイスへの反射器の形成方法。
【0042】
(付記14) 付記13に記載の方法であって、
前記透明薄膜層の材料に添加される金属は、金(Au)と金属間化合物を形成する金属であることを特徴とする光通信デバイスへの反射器の形成方法。
【0043】
(付記15) 付記14に記載の方法であって、
前記金(Au)と金属間化合物を形成する金属は、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、水銀(Hg)および鉛(Pb)のうちの少なくとも1つであることを特徴とする光通信デバイスへの反射器の形成方法。
【0044】
(付記16) 付記13に記載の方法であって、
前記透明薄膜層の材料に添加される金属は、金(Au)と全率固溶体を形成する金属であることを特徴とする光通信デバイスへの反射器の形成方法。
【0045】
(付記17) 付記16に記載の方法であって、
前記金(Au)と全率固溶体を形成する金属は、銀(Ag)および白金(Pt)のうちの少なくとも1つであることを特徴とする光通信デバイスへの反射器の形成方法。
【0046】
(付記18) 付記13に記載の方法であって、
前記透明薄膜層の材料に添加される金属は、酸化物生成自由エネルギーが−6.3×10ジュール以下の金属であることを特徴とする光通信デバイスへの反射器の形成方法。
【0047】
(付記19) 付記18に記載の方法であって、
前記酸化物生成自由エネルギーが−6.3×10ジュール以下の金属は、チタン(Ti)、クロム(Cr)およびモリブデン(Mo)のうちの少なくとも1つであることを特徴とする光通信デバイスへの反射器の形成方法。
【0048】
(付記20) 付記13に記載の方法であって、
前記透明薄膜層の材料として用いられる、前記光学媒体内を伝搬する光に対して透明な物質は、酸化ケイ素(SiO)および酸化アルミニウム(Al)のいずれか1つであることを特徴とする光通信デバイスへの反射器の形成方法。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による光通信デバイスの主要部分の構成例を示す平面図である。
【図2】本発明の透明薄膜層について光波長に対する透過率の一例を示す図である。
【図3】本発明による光通信デバイスの主要部分の他の構成例を示す平面図である。
【図4】本発明を適用した2段構成のAOTFの一例を示す平面図である。
【図5】図4のAOTFを応用した波長選択スイッチの構成例を示す平面図である。
【図6】反射器を利用して光通信デバイスの小型化を図る従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0050】
1…導波路チップ
2…反射器
10A,10B…機能デバイス部
11…光学基板
12,12A,12B…導波路
13A,13B…IDT
14A,14B…SAWガイド
21…透明薄膜層
22…Au薄膜層
31A,31B…光サーキュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が伝搬する光学媒体と、該光学媒体の端面に到達した光を反射して光路を折り返す反射器と、を備えた光通信デバイスにおいて、
前記反射器は、前記光学媒体内を伝搬する光に対して透明な物質に、金(Au)と化学結合する金属を添加した材料を用いて、前記光学媒体の端面に形成した透明薄膜層と、該透明薄膜層の表面に形成した金(Au)薄膜層と、を有することを特徴とする光通信デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の光通信デバイスであって、
前記透明薄膜層の材料に添加される金属は、金(Au)と金属間化合物を形成する金属であることを特徴とする光通信デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の光通信デバイスであって、
前記金(Au)と金属間化合物を形成する金属は、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、水銀(Hg)および鉛(Pb)のうちの少なくとも1つであることを特徴とする光通信デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の光通信デバイスであって、
前記透明薄膜層の材料に添加される金属は、金(Au)と全率固溶体を形成する金属であることを特徴とする光通信デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の光通信デバイスであって、
前記透明薄膜層の材料に添加される金属は、酸化物生成自由エネルギーが−6.3×10ジュール以下の金属であることを特徴とする光通信デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の光通信デバイスであって、
前記酸化物生成自由エネルギーが−6.3×10ジュール以下の金属は、チタン(Ti)、クロム(Cr)およびモリブデン(Mo)のうちの少なくとも1つであることを特徴とする光通信デバイス。
【請求項7】
請求項1に記載の光通信デバイスであって、
前記透明薄膜層の材料として用いられる、前記光学媒体内を伝搬する光に対して透明な物質は、酸化ケイ素(SiO)および酸化アルミニウム(Al)のいずれか1つであることを特徴とする光通信デバイス。
【請求項8】
請求項1に記載の光通信デバイスであって、
前記光学媒体は、光が伝搬する導波路を形成した光学基板であり、
前記反射器は、前記光学基板の導波路が位置する端面に形成されることを特徴とする光通信デバイス。
【請求項9】
光学媒体内を伝搬する光に対して透明な物質に、金(Au)と化学結合する金属を添加した材料を用いて、前記光学媒体の端面に形成した透明層と、
該透明層の表面に形成した金(Au)薄膜層と、を有することを特徴とする光通信デバイス。
【請求項10】
光学媒体内を光が伝搬する光通信デバイスに対して、前記光学媒体の端面に到達した光を反射して光路を折り返すための反射器を形成する方法であって、
前記光学媒体内を伝搬する光に対して透明な物質に、金(Au)と化学結合する金属を添加した材料を用いて、前記光学媒体の端面に透明薄膜層を形成し、
該形成した透明薄膜層の表面に金(Au)薄膜層を形成することを特徴とする光通信デバイスへの反射器の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−93817(P2007−93817A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281002(P2005−281002)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】