説明

反射防止フイルム、偏光板、及びそれを用いた画像表示装置

【課題】耐擦傷性と防汚性に優れた反射防止フイルムを提供すること、更には、そのような反射防止フイルムを用いた偏光板や画像表示装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも一層の低屈折率層のうち透明支持体からもっとも遠くに位置する低屈折率層が、少なくとも以下の成分を含有する塗布組成物を塗設することにより形成されていることを特徴とする反射防止フイルム。
(A)電離放射線硬化性化合物
(B)導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射防止フイルム、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フイルムは一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようにディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
このような反射防止フイルムは、最表面に適切な膜厚の低屈折率層、場合により支持体との間に適宜高屈折率層、中屈折率層、ハードコート層などを形成することにより作製できる。低い反射率を実現するために低屈折率層にはできるだけ屈折率の低い材料が望まれる。また反射防止フイルムは最表面に用いられることからディスプレイ装置の保護膜としての機能が期待される。汚れやほこりが付着しにくいことや、耐擦傷性が強いことが求められる。厚さ100nm前後の薄膜において高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度、および下層への密着性が必要である。
【0004】
材料の屈折率を下げるには、フッ素原子を導入する、密度を下げる(空隙を導入する)という手段があるがいずれも皮膜強度および密着性が損なわれ耐擦傷性が低下する方向であり、低い屈折率と高い耐傷性の両立は困難な課題であった。
【0005】
また、特にフッ素原子を含有するバインダーは、バインダーが負に帯電し易く、ディスプレイ表面に使用した場合には環境中の埃が付着し易いという問題があった。更に、フッ素系の防汚材料を用いると、フッ素系の防汚剤が膜表面に配向して防汚性を発揮するため、表面が更に負に帯電しやすくなり塵埃が付着しやすくなるという課題を有しており、改良技術が求められていた。
防塵性付与の技術としては、カチオン系やアニオン系の材料を添加することが記載されている。しかしながらこの材料を用いた場合には、塗布液中で分離してしまったり、塗布時にムラが生じたり、膜の耐擦傷性が悪化するなどの問題を有していた。
また、特許文献1には、導電性の粒子を含有する所謂帯電防止層を設けることが知られている。この方法は、新たに層を設けることが必要であり製造時の設備や時間の負荷が大きいという問題を有している。また、従来一般に用いられている帯電防止のための導電性粒子は、粒子の屈折率が1.6〜2.2程度のものが多く、これら粒子を含有する帯電防止層の屈折率が上がってしまう。帯電防止層の屈折率が高いために、光学フィルムにおいては、隣接層との屈折率の違いにより意図せぬ干渉ムラが生じたり、反射色の色味が強くなるなどの点で改良が望まれていた。
【0006】
導電性粒子の屈折率を低下させるという観点からは、特許文献2にシリカ粒子の表面を酸化アンチモンで被覆した粒子を低屈折率層に使用することが記載されている。しかしながら、該特許文献には、防汚性改良の技術が記載されておらず、防汚性の点で更なる改良が必要であった。
【0007】
一方、特許文献3には含フッ素ポリマーを利用した低屈折率層素材にシランカップリング剤を添加することにより耐傷性が大幅に改良されることが記載されている。しかしながら沸点が低いシランカップリング剤は塗布乾燥工程で揮散する問題があり、揮散分を考慮した過剰量の添加を必要とし、安定した性能を得るのが難しいという問題があった。
【0008】
一方、特許文献4には防汚性付与のためには、防汚層をオーバーコートすることが記載されている。しかしながら、これらの防汚性付与化合物は、オルガノシラン系化合物の加水分解縮合物を主バインダーとする層の上には塗設できるものの、一般に広く用いられる電離放射線硬化型バインダーの上でははじき易かったり、ムラを生じ易いなどの課題を有していた。
【0009】
本発明に係る先行技術は、以下の通りである。
【特許文献1】特開2005−196122号公報
【特許文献2】特開2005−119909号公報
【特許文献3】特開2003−222704号公報
【特許文献4】特開2002−277604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、密着性、耐擦傷性、防塵性および防汚性に優れ、且つ十分な反射防止性能を持つ反射防止フイルムを提供することにある。特に、含フッ素ポリマーや含フッ素防汚剤を用いたときに、防汚性及び防塵性に優れた十分な反射防止性能を持つ反射防止フイルムを提供することにある。更には、そのような反射防止フイルムを用いた偏光板や画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述の課題を解消すべく鋭意検討した結果、下記構成とすることにより、前記課題を解決し目的を達成しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記の構成により前記目的を達成したものである。
【0012】
(1)
少なくとも一層の屈折率1.28〜1.48の層のうち透明支持体からもっとも遠くに位置する層が、少なくとも以下の成分を含有する塗布組成物を塗設することにより形成されていることを特徴とする反射防止フイルム。
(A)電離放射線硬化性化合物
(B)導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子
(2)
前記導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(B)が多孔質無機微粒子または内部に空洞を有する微粒子であることを特徴とする(1)に記載の反射防止フイルム。
(3)
前記導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(B)が酸化アンチモン被覆層を有するシリカ系微粒子であることを特徴とする(1)または(2)に記載の反射防止フイルム。
(4)
前記導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(B)が多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の反射防止フイルム。
(5)
前記導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(B)が、導電性金属酸化物被覆層の上にシリカ被覆層、または下記一般式(3)で表されるオルガノシランの加水分解物及び/又はその部分縮合物により表面処理されたシリカ被覆層を持つことを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の反射防止フイルム。
一般式(3): (R30m1Si(X314−m1
(一般式(3)中、R30は、置換もしくは無置換のアルキル基又は、置換もしくは無置換のアリール基を表す。X31は水酸基又は加水分解可能な基を表す。m1は1〜3の整数を表す。)
(6)
前記導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(B)の屈折率が1.35〜1.60の範囲にあり、体積抵抗値が10〜5000Ω/cmの範囲にあることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の反射防止フイルム。
(7)
前記導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(B)の平均粒子径が5〜300nmの範囲にあり、導電性金属酸化物被覆層の厚さが0.5〜30nmの範囲にあることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の反射防止フイルム。
(8)
前記化合物(A)が、1分子中に少なくとも2個以上のエチレン性不飽和基を含有することを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載の反射防止フイルム。
(9)
前記化合物(A)が、パーフルオロオレフィン重合単位及び(メタ)アクリロイル基含有重合単位をそれぞれ少なくとも1種含有する含フッ素ポリマーであることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の反射防止フイルム。
(10)
前記塗布組成物が、さらに
(C)下記一般式(I)で表されるポリシロキサン部分構造を含有する化合物
を有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の反射防止フイルム。
一般式(I)
【0013】
【化1】

【0014】
{一般式(I)中、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。pは10〜500の整数を表す。}
(11)
前記電離放射線硬化性化合物(A)が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする、(1)〜(10)のいずれかに記載の反射防止フイルム。
一般式(1):
【0015】
【化2】

【0016】
{一般式(1)中、L11は炭素数1〜10の連結基を表し、s1は0又は1を表す。R11は水素原子又はメチル基を表す。A11は側鎖に水酸基を持つ繰り返し単位を表す。Y11はポリシロキサン構造を主鎖に含む構成成分を表わす。x、y、及びzは、Y11以外の全繰返し単位を基準とした場合のそれぞれの繰返し単位のモル%を表し、30≦x≦60、30≦y≦70、0≦z≦40を満たす値を表す。ただし、x+y+z=100(モル%)である。uは共重合体中の構成成分Y11の質量%を表し、0.01≦u≦20である。}
(12)
前記電離放射線硬化性化合物(A)が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれかに記載の反射防止フイルム。
一般式(2):
【0017】
【化3】

【0018】
{一般式(2)中、Rf21は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表し、Rf22は炭素数1〜30の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基を表し、エーテル結合を有していてもよく、A21は架橋反応に関与し得る反応性基を有する構成単位を表し、B21は任意の構成成分を表す。R21及びR22は、同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。p1は10〜500の整数を表す。R23〜R25は、互いに独立に、置換又は無置換の1価の有機基又は水素原子を表し、R26は水素原子又はメチル基を表わす。L21は炭素数1〜20の任意の連結基又は単結合を表す。a〜dはそれぞれポリシロキサンを含有する重合単位を除く各構成成分のモル分率(%)を表し、それぞれ10≦a+b≦55、10≦a≦55、0≦b≦45、10≦c≦50、0≦d≦40の関係を満たす値を表す。eはポリシロキサンを含有する重合単位の、他の成分全体の質量に対する質量分率(%)を表し、0.01<e<20の関係を満たす。}
(13)
前記塗布組成物が、さらに
少なくとも1種の電離放射線硬化型の含フッ素防汚剤(D)を含有することを特徴とする(1)〜(12)に記載の反射防止フイルム。
(14)
(1)〜(13)のいずれかに記載の反射防止フイルムを、少なくとも一方の側に備えたことを特徴とする偏光板。
(15)
(1)〜(13)のいずれかに記載の反射防止フイルム及び(14)に記載の偏光板のうちの少なくとも一つが配置されていることを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、耐擦傷性・防塵性と防汚性に優れ、且つ十分な反射防止性能を持つ反射防止フイルムを提供することにある。更には、そのような反射防止フイルムを用いることにより、高品質な偏光板や画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」等も同様である。
【0021】
<反射防止フイルム>
本発明の反射防止フイルムは、少なくとも一層の低屈折率層のうち透明支持体からもっとも遠くに位置する低屈折率層が、少なくとも以下の成分を含有する塗布組成物を塗設することにより形成されていることを特徴とする。
(A)電離放射線硬化性化合物
(B)導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子
【0022】
〔低屈折率層〕
まず、本発明の反射防止フイルムの低屈折率層について説明する。
本発明における低屈折率層の屈折率は1.28〜1.48、好ましくは1.34〜1.44の範囲にある。さらに、低屈折率層は下記数式(1)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(1):(mλ/4)×0.7<n<(mλ/4)×1.3
式中、mは正の奇数であり、nは低屈折率層の屈折率であり、そしてdは低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
なお、上記数式(1)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(1)を満たすm(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
【0023】
本発明においては、光学フイルムの構成層の屈折率は、光学フイルムの反射率から各層の屈折率と膜厚を光学シミュレーションにより求めることができる。また、アッベ屈折率計で構成層の成分を硬化したものをそのまま測定することができる。
【0024】
[電離放射線硬化性化合物](本発明の低屈折率層構成成分(A))
本発明における低屈折率層の塗設に際しては、電離放射線硬化性化合物(電離放射線照射により硬化する化合物)が使用される。このような電離放射線硬化性化合物としては、例えば、化合物自身の屈折率が低い含フッ素ポリマーや含フッ素ゾル/ゲル素材などを用いることが好ましい。含フッ素ポリマーや含フッ素ゾル/ゲル素材は、通常、電離放射線及び、必要に応じて、熱により架橋する。形成される低屈折率層表面の動摩擦係数は0.03〜0.15であることが好ましく、水に対する接触角は90〜120°となることが好ましい。また、電離放射線照射により硬化する、1分子中に少なくとも2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を用いることもできる。
電離放射線硬化性化合物は、低屈折率層の固形分に対して、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは30〜95質量%、特に好ましくは40〜80質量%使用される。
【0025】
[1分子中に少なくとも2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物]
2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物としては例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル〔例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート〕、前記のエステルのエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体〔例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン〕、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミド等が挙げられる。これら化合物は2種以上併用してもよい。これら化合物は、バインダー中の架橋基の密度を上げることができ、硬度の高い硬化膜を形成できるが、含フッ素ポリマーバインダーに比較すると屈折率は低くない。しかしながら、(B)導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子として、後述する酸化アンチモン被覆層を有するシリカ系微粒子(以下酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子と称することがある。)のうち、例えば多孔質または内部に空洞を有するものと併用することで、本発明の低屈折率層として十分に有効な屈折率を得ることができる。
【0026】
[含フッ素ポリマー]
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーや含フッ素ゾル/ゲル素材としてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
【0027】
含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0028】
架橋反応性付与のための構成単位としては主として以下の(a)、(b)、(c)で示される単位が挙げられる。
(a):グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、(b):カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、(c):分子内に上記(a)、(b)の官能基と反応する基とそれとは別に架橋性官能基を有する化合物を、上記、(a)、(b)の構成単位と反応させて得られる構成単位、(例えばヒドロキシル基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で合成できる構成単位)、が挙げられる。
【0029】
上記(c)の構成単位は、特に本発明においては、該架橋性官能基が光重合性基であることが好ましい。ここに、光重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、シンナモイル基、シンナミリデンアセチル基、ベンザルアセトフェノン基、スチリルピリジン基、α−フェニルマレイミド基、フェニルアジド基、スルフォニルアジド基、カルボニルアジド基、ジアゾ基、o−キノンジアジド基、フリルアクリロイル基、クマリン基、ピロン基、アントラセン基、ベンゾフェノン基、スチルベン基、ジチオカルバメート基、キサンテート基、1,2,3−チアジアゾール基、シクロプロペン基、アザジオキサビシクロ基などを挙げることができ、これらは1種のみでなく2種以上であってもよい。これらのうち、(メタ)アクリロイル基およびシンナモイル基が好ましく、特に好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0030】
光重合性基含有共重合体を調製するための具体的な方法としては、下記の方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)水酸基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、(メタ)アクリル酸クロリドを反応させてエステル化する方法、
(2)水酸基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させてウレタン化する方法、
(3)エポキシ基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、(メタ)アクリル酸を反応させてエステル化する方法、
(4)カルボキシル基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、エポキシ基を含有する含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させてエステル化する方法。
尚、上記光重合性基の導入量は任意に調節することができ、塗膜面状安定性・無機微粒子共存時の面状故障低下・膜強度向上などの点からカルボキシル基やヒドロキシル基等を一定量残すことも好ましい。
【0031】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
【0032】
本発明で特に有用な含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%の場合である。好ましいポリマーについては、特開2002−243907号、特開2002−372601号、特開2003−26732号、特開2003−222702号、特開2003−294911号、特開2003−329804号、特開2004−4444、特開2004−45462号の各公報に記載のものを挙げることができる。
【0033】
また本発明で有用な含フッ素ポリマーには防汚性を付与する目的で、ポリシロキサン構造が導入されていることが好ましい。ポリシロキサン構造の導入方法に制限はないが例えば特開平11−189621号、同11−228631号、特開2000−313709号の各公報に記載のごとく、シリコーンマクロアゾ開始剤を用いてポリシロキサンブロック共重合成分を導入する方法、特開平2−251555号、同2−308806号の各公報に記載のごとくシリコーンマクロマーを用いてポリシロキサングラフト共重合成分を導入する方法が好ましい。これらのポリシロキサン成分はポリマー中の0.5〜10質量%であることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%である。
【0034】
本発明に好ましく用いることのできるポリマーの好ましい分子量は、質量平均分子量が5000以上、好ましくは10000〜500000、最も好ましくは15000〜200000である。平均分子量の異なるポリマーを併用することで塗膜面状の改良や耐傷性の改良を行うことができる。
【0035】
上記含フッ素ポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号の各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用してもよい。特開2000−17028号、特開2002−145952号の各公報に記載のごとく含フッ素の多官能の重合性不飽和基を有する化合物との併用も好ましい。多官能の重合性不飽和基を有する化合物の例としては、上記の[2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物]を挙げることができる。これら化合物は、特にポリマー本体に重合性不飽和基を有する化合物を用いた場合に耐擦傷性改良に対する併用効果が大きく好ましい。
これら化合物は、ポリマー本体100質量部に対して、1〜50質量部使用するのが好ましく、更に好ましくは2〜40質量部、最も好ましくは3〜30質量部である。
【0036】
[ポリシロキサン部分構造を有する化合物]
本発明において、特に好ましく用いることのできるポリシロキサン部分構造を有する化合物について、以下に詳細に述べる。
このような化合物としては、大別すると、一般式(1)に代表されるポリシロキサン部分構造がポリマー主鎖に含まれるもの、及び一般式(2)に代表されるポリシロキサン部分構造がポリマー側鎖に含まれるものを好ましく用いることができる。
【0037】
(ポリマー主鎖にポリシロキサン部分構造を有するポリマー)
ポリマー主鎖にポリシロキサン部分構造を有するポリマーとしては、主鎖にポリシロキサン部分構造と共に、含フッ素ビニルモノマーからの繰返し単位を含み、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位及び、水酸基を有する繰り返し単位を含んでなる含フッ素ポリマーであることが好ましい。このようなポリマーは、電離放射線照射により硬化する化合物と、ポリシロキサン部分構造を有する化合物を兼ねることができる。このポリマーは、下記一般式(1)で表わされることが好ましい。
一般式(1):
【0038】
【化4】

【0039】
上記一般式(1)中、L11は炭素数1〜10の連結基を表し、好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。好ましい例としては、*−(CH−O−**、*−(CH−NH−**、*−(CH−O−**、*−(CH−O−**、*−(CH−O−(CH−O−**、−CONH−(CH−O−**、*−CHCH(OH)CH−O−**、*−CHCHOCONH(CH−O−**{*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す}等が挙げられる。
【0040】
s1は0又は1を表す。
11は水素原子又はメチル基を表し、硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0041】
11は側鎖に水酸基を持つ繰り返し単位を表し、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶媒への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一又は複数のビニルモノマーによって構成されていてもよい。
【0042】
11を構成するビニルモノマーの好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体等を例として挙げることができるが、好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0043】
11はポリシロキサン部分構造を主鎖に含む構成成分を表わす。
主鎖へのポリシロキサン部分構造導入方法には特に制限はなく、例えば特開平6−93100号公報に記載のアゾ基含有ポリシロキサンアミド(市販のものではVPS−0501、1001(商品名;ワコー純薬工業(株)社製))等のポリマー型開始剤を用いる方法、重合開始剤、連鎖移動剤由来の反応性基(例えばメルカプト基、カルボキシル基、水酸基等)をポリマー末端に導入した後、片末端あるいは両末端反応性基(例えばエポキシ基、イソシアネート基等)含有ポリシロキサンと反応させる方法、ヘキサメチルシクロトリシロキサン等の環状シロキサンオリゴマーをアニオン開環重合にて共重合させる方法等が挙げられるが、中でもポリシロキサン部分構造を有する開始剤を利用する手法が容易であり好ましい。
【0044】
x、y、及びzは、Y11以外の全繰返し単位を基準とした場合のそれぞれの繰返し単位のモル%を表し、30≦x≦60、30≦y≦70、0≦z≦40を満たす値を表し、好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦35の範囲である。ただし、x+y+z=100(モル%)である。uは共重合体中の構成成分Y11の質量%を表し、0.01≦u≦20である。
【0045】
その中でも、特に好ましいポリマーとしては、下記一般式(1−2)で表されるものを挙げることができる。
一般式(1−2):
【0046】
【化5】

【0047】
上記一般式(1−2)中、R11、Y11、x、y、及びuはそれぞれ一般式(1)と同じ意味を表し、好ましい範囲も同じである。
11は任意のビニルモノマーからの繰返し単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。例としては、前記一般式(1)におけるA11の例として説明したものが当てはまる。
【0048】
z1及びz2は、Y11以外の全繰返し単位を基準とした場合の、それぞれの繰返し単位のモル%を表し、0≦z1≦40、0≦z2≦40を満たす値を表し、それぞれ0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることが特に好ましい。ただし、x+y+z1+z2=100(モル%)である。またt1は2≦t1≦10を満たす整数を表し、2≦t1≦6であることが好ましく、2≦t1≦4であることが特に好ましい。更に好ましくは、上記一般式(1−2)で表される共重合体が、40≦x≦60、40≦y≦60、z2=0を満たすものである。
【0049】
本発明の共重合体に導入されるポリシロキサン部分構造として、特に好ましくは、下記一般式(1−3)で表される構造である。
一般式(1−3):
【0050】
【化6】

【0051】
一般式(1−3)において、R111、R112、R113及びR114はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基(炭素数1〜5が好ましい。例としてメチル基、エチル基が挙げられる)、アリール基(炭素数6〜10が好ましい。例としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる)、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜5が好ましい。例としてメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が挙げられる)、又はシアノ基を表し、好ましくはアルキル基及びシアノ基であり、特に好ましくは、メチル基及びシアノ基である。
【0052】
115〜R120は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基(炭素数1〜5が好ましい。例としてメチル基、エチル基が挙げられる)、ハロアルキル基(炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましい。例としてトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が挙げられる)又はフェニル基を表し、好ましくはメチル基又はフェニル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0053】
t2及びt5は、それぞれ独立して、1〜10の整数を表し、好ましくは1〜6の整数であり、特に好ましくは2〜4の整数である。t3及びt4は、それぞれ独立して、0〜10の整数を表し、好ましくは1〜6の整数であり、特に好ましくは2〜4の整数である。p2は10〜1000の整数を表し、好ましくは20〜500の整数であり、特に好ましくは50〜200の整数である。
【0054】
上記一般式(1−3)で表されるポリシロキサン部分構造は、本発明で用いることができるポリマー中の0.01〜20質量%の範囲で導入されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で導入される場合であり、特に好ましくは0.5〜5質量%の範囲で導入される場合である。
【0055】
上記のポリシロキサン部分構造の導入によって、皮膜に防汚性、防塵性が付与されると供に、皮膜表面に滑り性が付与され耐傷性にも有利である。
【0056】
本発明に有用なポリマーでは、上記含フッ素ビニルモノマーからの繰返し単位及び、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位以外に、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶媒への溶解性、透明性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜他のビニルモノマーを共重合することもできる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、合計で共重合体中の0〜40モル%の範囲で導入されていることが好ましく、0〜30モル%の範囲であることがより好ましく、0〜20モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0057】
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2‐ヒドロキシエチル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N,N−ジメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N,N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができる。
【0058】
以下に、本発明で有用なポリマーの好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
【表1】

【0060】
上記表において、50/y/zはモル比を示し、uは質量%を示し、VPS−1001は、和光純薬工業(株)製ポリシロキサン含有マクロアゾ開始剤“VPS1001”(商品名)由来の成分を表す(以下同様)。
【0061】
【表2】

【0062】
上記表において、x/y/zはモル比を示し、uは共重合体中の質量%を示す。VPS−0501は、和光純薬工業(株)製ポリシロキサン含有マクロアゾ開始剤“VPS0501”(商品名)由来の成分を示す。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
上記表において、x/y/z1/z2と50/y/zとはそれぞれモル比を示し、uは質量%を示す。またt1はメチレンユニットの数を示す。
【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
上記表において、x/y/zはモル比を示し、uは質量%を示す。またt1はメチレンユニットの数を示す。
【0069】
【表7】

【0070】
上記表において、ビニルモノマーの成分の比(50/50)はモル比を示し、uは質量%を示し、p2はジメチルシロキサン部分構造の数を示す。
【0071】
(ポリマー側鎖にポリシロキサン部分構造を有するポリマー)
次にポリマー側鎖にポリシロキサン部分構造を有するポリマーについて詳細に説明する。
【0072】
本発明で特に好ましいポリマーの形態は一般式(2)で表わされる形態である。このようなポリマーは、電離放射線照射により硬化する化合物と、ポリシロキサン部分構造を有する化合物を兼ねることができる。
一般式(2):
【0073】
【化7】

【0074】
一般式(2)において、R21は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表し、R22は炭素数1〜30の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基を表し、エーテル結合を有していてもよく、A21は架橋反応に関与し得る反応性基を有する構成単位を表し、B21は任意の構成成分を表す。R21及びR22は、同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。p1は10〜500の整数を表す。R23〜R25は、互いに独立に、置換又は無置換の1価の有機基又は水素原子を表し、R26は水素原子又はメチル基を表わす。L21は炭素数1〜20の任意の連結基又は単結合を表す。
【0075】
a〜dは、それぞれ、ポリシロキサン部分構造を含有する重合単位を除く各構成成分のモル分率(%)を表し、それぞれ10≦a+b≦55、10≦a≦55(より好ましくは40≦a≦55)、0≦b≦45(より好ましくは0≦b≦30)、10≦c≦50(より好ましくは20≦c≦50)、0≦d≦40(より好ましくは0≦d<30)の関係を満たす値を表す。eはポリシロキサン部分構造を含有する重合単位の、他の4成分全体の質量に対する質量分率(%)を表し、0.01<e<20(好ましくは0.1<e<10、より好ましくは0.5<e<5)の関係を満たす。
【0076】
パーフルオロレフィンとしては、炭素数3〜7のものが好ましく、重合反応性の観点からはパーフルオロプロピレン又はパーフルオロブチレンが好ましく、入手性の観点からパーフルオロプロピレンであることが特に好ましい。
【0077】
ポリマー中のパーフルオロレフィンの含率は、10〜55モル%である。素材の低屈折率化のためにはパーフルオロレフィンの導入率を高めることが望まれるが、重合反応性の点で一般的な溶液系ラジカル重合反応では50〜70モル%程度の導入が限界でありこれ以上は困難である。本発明においては、該含率は10%〜55モル%であることが好ましく、40〜55モル%であることが特に好ましい。
【0078】
(含フッ素ビニルエーテル)
本発明では、一般式(2)で表わされる化合物は、低屈折率化のために下記一般式(M1)で表わされる含フッ素ビニルエーテルを共重合されていてもよい。該共重合成分は、0〜45モル%の共範囲で重合体中に導入されていてよいが、好ましくは0〜30モル%であり、特に好ましくは0〜20モル%の場合である。特に、低屈折率層の皮膜硬度を高めに設定すべき場合(例えば、低屈折率フィラーを低屈折率層に多量に含み、層の屈折率をバインダーポリマーで下げるよりも、むしろ皮膜強度を上げる方が好適な場合などに該当する)、下記一般式(M1)で表される含フッ素ビニルエーテルで表される共重合成分の導入率は0モル%が好ましい。これは、該共重合成分を除くことで、後述する架側鎖に架橋反応に関与し得る反応性基を有する重合単位の導入率を上げることができるからである。
【0079】
【化8】

【0080】
一般式(M1)中、R22は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜15の含フッ素アルキル基であり、直鎖{例えば、−CFCF、−CH(CFH、−CH(CFCF、−CHCH(CFH等}であっても、分岐構造{例えば、CH(CF、CHCF(CF、CH(CH)CFCF、CH(CH)(CFCFH等}を有していてもよく、また脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等)を有していてもよく、エーテル結合(例えばCHOCHCFCF、CHCHOCHH、CHCHOCHCH17、CHCHOCFCFOCFCFH等)を有していてもよい。
【0081】
一般式(M1)で表わされる上記単量体は、例えば、“Macromolecules”,32巻(21)、p.7122(1999年)、特開平2−721号公報等に記載のごとく、ビニロキシアルキルスルフォネート、ビニロキシアルキルクロリド等の離脱基置換アルキルビニルエーテル類に対して、塩基触媒存在下含フッ素アルコールを作用させる方法;国際出願第92/05135号パンフレット記載のごとく、含フッ素アルコールとブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類をパラジウム触媒存在下混合してビニル基の交換を行う方法;米国特許第3420793号明細書記載のごとく、含フッ素ケトンとジブロモエタンをフッ化カリウム触媒存在化で反応させた後アルカリ触媒により脱HBr反応を行う方法等により合成することができる。
【0082】
以下に一般式(M1)で表わされる構成成分の好ましい例を示す。
【0083】
【化9】

【0084】
【化10】

【0085】
【化11】

【0086】
【化12】

【0087】
【化13】

【0088】
【化14】

【0089】
【化15】

【0090】
(架橋反応に関与し得る反応性基を有する構成単位)
本発明において、低屈折率層を構成する含フッ素ポリマー、例えば一般式(2)で表わされる化合物に含まれる、架橋反応に関与し得る反応性基(以下、架橋反応性基ともいう)を有する構成単位の構造には、特に制限はないが、含フッ素オレフィンとの重合反応性の観点から、ビニル基を有する化合物であることが好ましく、ビニルエーテル類又はビニルエステル類であることがより好ましい。
【0091】
上記架橋反応性基としては、例えば、活性水素原子を有する基(例えば、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β−ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、カチオン重合可能な基(例えば、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等)、酸無水物、ラジカル種による付加又は重合が可能な不飽和二重結合を有する基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基等)、加水分解性シリル基(例えば、アルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、求核剤によって置換され得る基(例えば、活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)等が挙げられる。
【0092】
これらのうちで不飽和二重結合を有する基は、水酸基を有するポリマーを合成した後、(メタ)アクリル酸クロリド等の酸ハリド、(メタ)アクリル酸無水物等の酸無水物、又は(メタ)アクリル酸を作用させる方法;3−クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーを重合させた後で、脱塩化水素する方法等の定法によって形成できる。また同様に他の官能基も、モノマー段階から導入されていてもよいし、水酸基等の反応性基を有するポリマーを合成後に導入してもよい。
【0093】
上記の架橋反応性基の中では、水酸基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基又は加水分解性シリル基が好ましく、エポキシ基又は(メタ)アクリロイル基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。これらの架橋反応性基を有する共重合成分の導入量は、10〜50モル%の範囲であり、20〜50モル%の範囲であることが好ましく、25〜50モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0094】
以下に、架橋反応に関与し得る重合単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
【化16】

【0096】
【化17】

【0097】
【化18】

【0098】
【化19】

【0099】
(ポリシロキサン部分構造)
本発明で使用される、側鎖にポリシロキサン部分構造を有するポリマーにおけるポリシロキサン部分構造について説明する。ポリシロキサン部分構造は、一般に、下記一般式(2−1)の繰り返しシロキサン部位を有している。
一般式(2−1):
【0100】
【化20】

【0101】
一般式(2−1)中、R21及びR22は、同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜4が好ましく、例としてメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基等が挙げられる。アリール基としては炭素数6〜20が好ましく、例としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらの中でもメチル基およびフェニル基が好ましく、特に好ましくはメチル基である。p1は10〜500の整数を表わし、好ましくは10〜350であり、特に好ましくは10〜250の場合である。
【0102】
側鎖に一般式(2−1)であらわされるポリシロキサン構造を有するポリマーは、例えば“J.A.Appl.Polym.Sci.”,2000巻、p.78(1955年)、特開昭56−28219号公報等に記載のごとく、エポキシ基、水酸基、カルボキシル、酸無水物基等の反応性基を有するポリマーに対して、反応性を有する反応性基(例えばエポキシ基、酸無水物基に対してアミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、水酸基等)を片末端に有するポリシロキサン[例えば「サイラプレーン」シリーズ{チッソ(株)製}など]を高分子反応によって導入する方法;ポリシロキサン含有シリコンマクロマーを重合させる方法によって合成することができ、どちらの方法も好ましく用いることができる。本発明ではシリコンマクロマーの重合によって導入する方法がより好ましい。
【0103】
側鎖に繰り返しシロキサン部位を含む重合単位は、共重合体中の0.01〜20質量%を占めることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%の場合であり、特に好ましくは、0.5〜5%の場合である。
【0104】
以下に、本発明に有用な、側鎖に繰り返しシロキサン部位を含む重合単位の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0105】
【化21】

【0106】
【化22】

【0107】
【化23】

【0108】
【化24】

【0109】
【化25】

【0110】
【化26】

【0111】
【化27】

【0112】
上記以外の、側鎖に繰り返しシロキサン部位を含む重合単位としては、前記のように、他の重合単位が有する反応性基に対して、反応性を有する反応性基を片末端に有するポリシロキサンを高分子反応させることにより形成されるものも使用することができ、このような市販のポリシロキサンとしては、次のものを例示することができる。
S−(36):「サイラプレーンFM−0711」{チッソ(株)製}
S−(37):「サイラプレーンFM−0721」(同上)
S−(38):「サイラプレーンFM−0725」(同上)
【0113】
(その他の共重合成分)
上記以外の共重合成分もまた、硬度、基材への密着性、溶媒への溶解性、透明性等種々の観点から、適宜選択することができる。
【0114】
このような共重合成分としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類を例として挙げることができる。これらの共重合成分の導入量は、0〜40モル%の範囲であり、0〜30モル%の範囲であることが好ましく、1〜20モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0115】
下記の表8及び表9に、本発明で有用なポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお表8及び表9には、重合単位の組み合わせとして表記する。シリコーンを含む重合単位を除いた成分の中のモル分率及び、シリコーンを含む重合単位の質量分率を示す。
表8
【0116】
【表8】

【0117】
【表9】

【0118】
本発明に用いられるポリシロキサン部分構造を有する化合物である、主鎖又は側鎖にポリシロキサン構造を有するポリマーは、ゲルパーミッションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量が5,000〜500,000の範囲であることが好ましく、更に好ましくは5,000〜300,000の範囲であることが好ましい。
【0119】
上記の主鎖又は側鎖にポリシロキサン構造を有するポリマーの合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合によって水酸基含有重合体等の前駆体を合成した後、前記高分子反応によって(メタ)アクリロイル基を導入することにより行なうことができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の任意の操作で行うことができる。
【0120】
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971年)や、大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」(化学同人、昭和47年刊)、124〜154頁に記載されている。
【0121】
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶媒は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶媒の単独又は2種以上の混合物でもよいし、水との混合溶媒としてもよい。
【0122】
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。
【0123】
反応圧力は適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm、特に、1〜30kg/cm程度が望ましい。反応時間は5〜30時間程度である。
【0124】
得られたポリマーの再沈殿溶媒としては、イソプロパノール、ヘキサン、メタノール等が好ましい。
【0125】
(多官能モノマーの併用)
本発明の電離放射線硬化性化合物に対して、膜強度の向上、塗布面状改良、微粒子添加時の面状安定性の観点から、2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を併用することが好ましい。また、本発明の電離放射線硬化性化合物そのものが、2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であってもよい。該2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等}、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等)、ビニルスルホン(例えばジビニルスルホン等)、アクリルアミド誘導体(例えばメチレンビスアクリルアミド等)及びメタクリルアミド誘導体などが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0126】
[ポリシロキサン部分構造含有化合物](本発明の低屈折率層構成成分(C))
本発明における低屈折率層には、防汚性付与等のため、下記一般式(I)で表されるポリシロキサン部分構造を含有する化合物を添加することができる。
一般式(I)
【0127】
【化28】

【0128】
(一般式(I)中、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。pは10〜500の整数を表す。)
ポリシロキサン部分構造含有化合物としては、少なくとも1個以上の反応性基を含有していることが好ましい。例としては、KF−100T,X−22−169AS,KF−102,X−22−3701IE,X−22−164B,X−22−5002,X−22−173B,X−22−174D,X−22−167B,X−22−161AS(以上商品名、信越化学工業社製)、AK−5,AK−30,AK−32(以上商品名、東亜合成社製)、などが挙げられる。なかでも分子内に光重合性官能基を有する好ましいシリコーン系化合物の例としては信越化学(株)製、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−164B、X22−164C、X−22−1821(以上商品名)や、チッソ(株)製、FM−0725、FM−7725、FM6621、FM−1121、サイラプレーンFM0275,サイラプレーンFM0721やGelest製DMS−U22、RMS−033、RMS−083、UMS−182、DMS−H21、DMS−H31、HMS−301、FMS121、FMS123、FMS131、FMS141、FMS221 (以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、特開2003−112383の表2、表3に記載のシリコーン系化合物も好ましく使用できる。
この際これらのポリシロキサンは低屈折率層全固形分の0.5〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に1〜5質量%の範囲で添加されることが好ましい。
【0129】
[電離放射線硬化型含フッ素防汚剤](本発明の低屈折率層構成成分(D))
本発明の低屈折率層には防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、フッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することが好ましい。塗布物のロール状態での保存時のフッ素化合物の裏面転写の抑制及び塗膜の耐擦傷性改良の観点から、電離放射線硬化型の官能基を含有する含フッ素防汚剤を使用することが好ましい。電離放射線硬化型の官能基を含有する含フッ素防汚剤は、フッ素系化合物を含む防汚剤である。電離放射線硬化型の官能基に特に制限はないが、不飽和2重結合を有する官能基が好ましく、最も好ましくは、メタアクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基である。
【0130】
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖(例えば−CFCF,−CH(CFH,−CH(CFCF,−CHCH(CFH等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF,CHCF(CF,CH(CH)CFCF,CH(CH)(CFCFH等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)であっても良く、エーテル結合を有していても良い(例えばCHOCHCFCF,CHCHOCHH,CHCHOCHCH17,CHCHOCFCFOCFCFH等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
【0131】
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。フッ素系化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としてはダイキン化学工業(株)製、R−2020、M−2020、R−3833、M−3833(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF−171、F−172、F−179A、ディフェンサMCF−300 (以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0132】
また、本発明において、電離放射線硬化型の官能基が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物の好ましい態様(一般式(F−1)、(F−2)、(F−3))について詳細に述べる。
【0133】
好ましい第1の態様として、下記一般式(F−1)で表される化合物を挙げることができる。
【0134】
一般式(F−1):
Rf(CF2CF2nCH2CH22OCOCR1=CH2
【0135】
(式中、Rfは、炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれかを示し、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は単結合またはアルキレン基を示し、nは重合度を示す整数であり、重合度nはk(kは3以上の整数のいずれかを示す)以上である。)
一般式(1)におけるフッ素原子を含むテロマー型アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類等が挙げられる。
【0136】
一般式(F−1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0137】
【化1】

【0138】
上記の一般式(F−1)で表される化合物は、合成の際にテロメリゼイションを用いると、テロメリゼイションの条件及び反応混合物の分離条件等によっては一般式(F−1)の基Rf(CF2CF2)nR2CH2CH2O−のnがそれぞれk、k+1、k+2、...等の複数の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含むことがある。
【0139】
好ましい第2の態様として、下記一般式(F−2)で表される化合物を挙げることができる。
【0140】
一般式(F−2):
F(CF2nO(CF2CF2O)CF2CH2OCOCR=CH2
【0141】
一般式(F−2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、mは1〜6の整数であり、nは1〜4の整数を表す。
上記一般式(F−2)で表されるフッ素原子含有単官能(メタ)アクリレートは、下記一般式(FG−2)
【0142】
一般式(FG−2):
F(CFO(CFCFO)CFCHOH
【0143】
(一般式(FG−2)中、mは1〜6の整数であり、nは1〜4の整数を表す。)で表されるフッ素原子含有アルコール化合物と(メタ)アクリル酸ハライドとを反応させることにより得ることができる。
【0144】
前記一般式(FG−2)で表されるフッ素原子含有アルコール化合物の具体例としては、例えば、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサヘプタン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサオクタン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサトリデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサヘキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサノナデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサイコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサドコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサトリコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサペンタコサン−1−オール等を挙げることができる。これらは市場で入手でき、その具体例としては例えば、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサヘプタン−1−オール:商品名:C5GOL:エクスフロアー社製、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカン−1−オール:商品名:C7GOL:エクスフロアー社製、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサデカン−1−オール:商品名:C8GOL:エクスフロアー社製、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカン−1−オール:商品名:C10GOL:エクスフロアー社製、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサヘキサデカン−1−オール:商品名:C12GOL:エクスフロアー社製等が挙げられる。本発明においては、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカン−1−オールを用いることが好ましい。
【0145】
また、前記一般式(FG−2)で表されるフッ素原子含有アルコール化合物と反応させる(メタ)アクリル酸ハライドとしては、(メタ)アクリル酸フルオライド、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド、(メタ)アクリル酸アイオダイドを挙げることができるが、通常、入手しやすさ等の観点から(メタ)アクリル酸クロライドが好ましい。
【0146】
以下に一般式(F−2)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
(b−1):FOCOCOCFCHOCOCH=CH
(b−2):FOCOCOCFCHOCOC(CH)=CH
【0147】
好ましい第3の態様として、下記一般式(F−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0148】
一般式(F−3):
(Rf)− [(W)−(R]
【0149】
一般式(F−3)中、Rfは(パー)フルオロポリエーテル基、Wは連結基、Rは(メタ)アクリル基を表す。nは1〜3、mは1〜3の整数を表し、nとmは同時に1であることはない。
【0150】
一般式(F−3)で表される化合物において、Wとしては、例えばアルキレン、アリーレン、ヘテロアルキレン、又はそれらの組み合わさった連結基を表す。それらの連結基は、更に、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルイミノ、スルホンアミド等やそれらの組み合わさった官能基を含有しても良い。
【0151】
Rfの好ましい構造としては、以下の構造を挙げることができる。
F(CF(CF)CFO)CF(CF)−
ここでpの平均値は4〜15である。
一般式(F−3)で表される化合物の数平均分子量は、400〜5000が好ましく、800〜4000が更に好ましく、最も好ましくは1000〜3000である。
一般式(F−3)で表される化合物の好ましい具体例や合成方法は国際公開公報WO 2005/008570に記載されている。
以下F(CF(CF)CFO)CF(CF)−においてpの平均値が6〜7のものを“HFPO−”と記載し、一般式(F−3)の具体的化合物を示すが、これらに限定されるものではない。
【0152】
(C−1):HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CHCHCH
(C−2):HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CH
(C−3):HFPO−CONH−CNHCHとトリメチロールプロパントリアクリレートの1:1マイケル付加重合物
【0153】
[導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子](本発明の低屈折率層構成成分B)
本発明において、低屈折率層の構成成分(B)として用いることのできる微粒子について説明する。本発明の低屈折率層には、導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子を含有する。本発明において、導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子としは、微粒子を核としてその外側に導電性金属酸化物のシェル層を設けたコア/シェル型複合微粒子と、酸、アルカリ又は有機溶剤可溶の微粒子を核としてその外側に導電性金属酸化物のシェル層を設けて複合微粒子を形成させた後、酸、アルカリ又は有機溶剤の処理を行なって核粒子を除去して内部空孔を形成させた内部空孔型中空微粒子とが挙げられる。
【0154】
どちらの形態の微粒子においても、用いられる導電性金属酸化物には特に制限はないが、例えば、酸化錫(SnO2 )、アンチモン錫酸化物(ATO)、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化アンチモン(Sb2 5 )、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物およびこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
【0155】
コア/シェル型複合微粒子に用いる核粒子には、シリカ微粒子、例えば、コロイダルシリカ微粒子、酸化ケイ素微粒子等の無機微粒子;フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等のポリマー微粒子;有機質無機質複合体粒子等の微粒子が挙げられ、上記微粒子は多孔質・中空微粒子であればより屈折率を低くすることができる。
【0156】
内部空孔型中空微粒子に用いる核粒子としては、酸、アルカリ又は有機溶剤の処理によってシェル層を通して溶解・流失可能である限り種類を問わないが、周期律表の2A、2B、3A、3B、4A、4B、5B及び6A族元素から選ばれる金属の無機酸化物微粒子が好ましく、Al、B、TiO、SnO、Ce3、、Sb、MoO、ZnO、WO等を挙げることができる。中でもAl、ZnO、Y、Sb微粒子がより好ましい。また、内部空包型中空微粒子に用いる場合、核粒子とシェル物質の組合せとしては、Al、ZnO、Y、Sb等の微粒子と、ATO、ITO、SnO等との組み合わせが好ましい。
内部空包型中空微粒子の製造方法としては、Al、ZnO、Y、Sbなどの微粒子の表面をATO、ITO、SnOなどの超微粒子もしくはこれらの薄膜で被覆したのち、内部の微粒子を酸又はアルカリ水溶液で溶出させることにより中空の導電性無機微粒子を形成する方法を用いることができる。
【0157】
本発明に用いられる導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(B)の塗設量は、1〜100mg/mが好ましく、より好ましくは5〜80mg/m、更に好ましくは10〜60mg/mである。微粒子の塗設量が該下限値以上であれば、耐擦傷性が顕著に改良され、該上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができて、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化するなどの不具合が生じることがないので好ましい。該微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。
【0158】
本発明において、微粒子の製造安定性の観点から、シリカ粒子を核としてその外側に導電性無機金属酸化物被覆層を有する複合酸化物微粒子が好ましい。特に好ましくは、導電性無機金属酸化物が酸化アンチモンである複合酸化物微粒子である。以下酸化アンチモン被覆層を有するシリカ系微粒子について詳細に説明する。
[酸化アンチモン被覆層を有するシリカ系微粒子]
本発明の特に好ましい態様である酸化アンチモン被覆層を有するシリカ系微粒子(酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子とも呼ぶ)とは、酸化アンチモン被覆層を有しているシリカ系微粒子、好ましくは多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子を表す。前記シリカ系微粒子とは、シリカが含有されている粒子を指す。
前記多孔質シリカ系微粒子には、多孔質のシリカ微粒子とシリカを主成分とする複合酸化物微粒子が含まれ、例えば特開平7ー133105号公報に記載されているように、多孔性の無機酸化物微粒子の表面をシリカ等で被覆した低屈折率のナノメーターサイズの複合酸化物微粒子を用いることができる。
また、内部に空洞を有するシリカ系微粒子としては、例えば特開2001−233611号公報に記載されているように、シリカとシリカ以外の無機酸化物からなり、内部に空洞を有する低屈折率のナノメーターサイズのシリカ系微粒子を用いることができる。
【0159】
このような多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子は、平均粒子径が4〜270nm、さらには8〜170nmの範囲にあることが好ましい。
【0160】
前記多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子の屈折率は、シリカの屈折率である1.45以下、さらには1.40以下であることが好ましい。
【0161】
前記シリカ系微粒子は、被覆層の平均厚さが好ましくは0.5〜30nm、より好ましくは1〜10nmの範囲にある酸化アンチモンで被覆されている。シリカ系微粒子を充分に被覆でき、得られる酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子の導電性が充分となる点で、被覆層の平均厚さは0.5nm以上が好ましい。導電性の向上効果が充分で、酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子の平均粒子径が小さい場合にも屈折率が充分である点で、被覆層の平均厚さは30nm以下が好ましい。
【0162】
被覆層の平均厚さは、被覆前後の粒子の平均粒子サイズを電子顕微鏡観察により求め、両者の差を算出し、それを被覆層の平均厚さとした。平均粒子サイズは100個の粒子の平均値を採用した。
【0163】
酸化アンチモンは、Sb、Sb、SbO等いずれでもよく、酸化アンチモン被覆層中には酸化スズなどを含有していてもよい。酸化アンチモン被覆層中のこれらの酸化アンチモンの合計の含有率は10%以上が好ましい。
また、酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子は、さらにシリカ等で被覆されていてもよい。
【0164】
本発明に係る酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子は、平均粒子径が5〜300nmが好ましく、10〜200nmの範囲にあることがより好ましい。この範囲にすることで、導電性と屈折率を両立することができ、塗膜の白味を抑えることができる。
【0165】
酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子の屈折率は1.35〜1.60が好ましく、1.35〜1.50の範囲にあることがより好ましい。
【0166】
酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子の体積抵抗値は10〜5000Ω/cmが好ましく、10〜2000Ω/cmの範囲にあることがより好ましい。本発明の酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子は、必要に応じて常法によりシランカップリング剤により表面処理して用いることができる。
体積抵抗値を上記範囲にすることで、粒子の屈折率を低く保ちつつ、低屈折率塗膜の表面抵抗を低下せしめることが可能となる。体積抵抗値は、核粒子の粒子サイズ、表面被覆金属酸化物層の膜厚、組成を調節することにより制御することが可能である。
また体積抵抗値の測定は以下の方法で測定した。
【0167】
[体積抵抗値の測定]
内部に円柱状のくりぬき(断面積:0.5cm2)を有するセラミック製セルを用い、まず、架台電極上にセルを置き、内部に試料粉体0.6gを充填し、円柱状突起を有する上部電極の突起を挿入し、油圧機にて上下電極を加圧し、100kg/cm2加圧時の抵抗値(Ω)と試料の高さ(cm)を測定し、抵抗値に高さを乗することによって求めた。
【0168】
酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子の低屈折率層中の塗設量は、1〜100mg/mが好ましく、より好ましくは5〜80mg/m、更に好ましくは10〜60mg/mである。
また、有機溶媒分散物として用いるのが好ましく、下記のその他の微粒子に用いられる有機溶媒を好適に用いることができる。
【0169】
[酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子の製造方法]
本発明に係る酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子の製造方法は、多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子の分散液にアンチモン酸分散液(水溶液)を添加し、シリカ系微粒子の表面にアンチモン酸を被覆することを特徴としている。
【0170】
前記多孔質シリカ系微粒子には、多孔質のシリカ微粒子、多孔質のシリカを主成分とする複合酸化物微粒子が含まれる。ここで、多孔質微粒子とは微粒子の平均粒子径から計算した微粒子の外部表面積よりも滴定法あるいはBET法等で測定した表面積が大きい微粒子をいい、このような多孔質シリカ系微粒子としては、例えば特開平7ー133105号公報に記載されているように、多孔性の無機酸化物微粒子の表面をシリカ等で被覆した低屈折率のナノメーターサイズの複合酸化物微粒子を用いることができる。
【0171】
また、内部に空洞を有するシリカ系微粒子としては、例えば特開2001−233611号公報に記載されているように、シリカとシリカ以外の無機酸化物からなり、内部に空洞を有する低屈折率のナノメーターサイズのシリカ系微粒子を用いることができる。なお、空洞については、微粒子断面の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を観察することによって確認することができる。
【0172】
まず、多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子の分散液を調製する。分散液の濃度は固形分として0.1〜40質量%、さらには0.5〜20質量%の範囲にあることが好ましい。固形分濃度が0.1質量%未満の場合は、生産効率が低く、他方、固形分濃度が40質量%を越えると得られる酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子が凝集することがあり、被膜付基材に使用する際に、被膜中の分散性が低下し、被膜の透明性が低下したり、ヘイズが悪化することがある。
【0173】
別途、アンチモン酸の分散液(水溶液)を調製する。アンチモン酸の調製方法としては、多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子の細孔や空洞を埋めることなく、微粒子表面に酸化アンチモンの被覆層を形成することができれば特に制限はないが、以下に例示する方法は均一で薄い酸化アンチモンの被覆層を形成することができるので好ましい。
具体的には、アンチモン酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂で処理してアンチモン酸(ゲル)分散液を調製し、ついで、陰イオン交換樹脂で処理する。アンチモン酸アルカリ水溶液としては、例えば特開平2−180717号公報に記載されている、酸化アンチモンゾルの製造方法に用いるアンチモン酸アルカリ水溶液は好適である。
【0174】
アンチモン酸アルカリ水溶液は、三酸化アンチモン(Sb)、アルカリ物質および過酸化水素を反応させて得たものであることが好ましく、酸化アンチモンとアルカリ物質と過酸化水素のモル比を1:2.0〜2.5:0.8〜1.5好ましくは、1:2.1〜2.3:0.9〜1.2とし、三酸化アンチモンとアルカリ物質を含む系に、過酸化水素を三酸化アンチモン1mole当り、0.2mole/hr以下の速度で添加して得られる。
【0175】
このとき使用される三酸化アンチモンは粉末、特に平均粒子径が10μm以下の微粉末のものが好ましく、またアルカリ物質としては、LiOH、KOH、NaOH、Mg(OH)、Ca(OH)等を挙げることができ、中でもKOH,NaOHなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。これらのアルカリ物質は、得られるアンチモン酸溶液を安定化させる効果を有する。
【0176】
まず、水に所定量のアルカリ物質と三酸化アンチモンを加えて三酸化アンチモン懸濁液を調製する。この三酸化アンチモン懸濁液の三酸化アンチモン濃度はSbとして3〜15質量%の範囲とすることが望ましい。ついで、この懸濁液を50℃以上、好ましくは80℃以上に加温し、これに濃度が5〜35質量%の過酸化水素水を三酸化アンチモン1mole当り過酸化水素0.2mole/hr以下の速度で添加する。過酸化水素の添加速度が0.2mole/hrより速い場合は、得られる酸化アンチモン微粒子の粒子径が大きくなり、粒子径分布が広くなるので好ましくない。
【0177】
また、過酸化水素の添加速度が非常に遅い場合は生産量が上らないので過酸化水素の添加速度は0.04mole/hr〜0.2mole/hrの範囲、特に0.1mole/hr〜0.15mole/hrの範囲が好ましい。また、三酸化アンチモンに対する過酸化水素のモル比が小さくなるに従って得られる酸化アンチモン微粒子の粒子径は小さくなる傾向を示すが、0.8より小さい場合は未溶解の三酸化アンチモンが多くなるので望ましくない。また、モル比が1.5よりも大きい場合は、得られる酸化アンチモン微粒子の粒子径が大きくなるので好ましくない。
【0178】
上記反応で得られたアンチモン酸アルカリ(MHSbO:Mがアルカリ金属の場合)水溶液を、必要に応じて未溶解の残渣を分離した後、さらに必要に応じて希釈し、陽イオン交換樹脂で処理し、アルカリイオンを除去することによってアンチモン酸ゲル((HSbO−))分散液を調製する。
また、アンチモン酸アルカリ水溶液には、スズ酸アルカリ水溶液、リン酸ナトリウム水溶液等のドーピング剤を含む水溶液が含まれていてもよい。このようなドーピング剤が含まれているとさらに導電性の高い酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子が得られる。
【0179】
ここで、アンチモン酸は、(HSbO−)(n=2以上の重合体)で表すことができ、粒子径が1〜5nm程度のアンチモン酸(HSbO−)の重合物からなり、微粒子が凝集し、ゲル状態を呈している。
陽イオン交換樹脂で処理する際のアンチモン酸アルカリ水溶液の濃度は、固形分(Sb)として0.01〜5質量%、さらには0.1〜3質量%の範囲にあることが好ましい。固形分として0.01質量%未満の場合は、生産効率が低く、他方、5質量%を越えると、アンチモン酸の大きな凝集体が生成することがあり、アンチモン酸によるシリカ系微粒子の被覆ができにくく、できたとしても不均一となることがある。
【0180】
陽イオン交換樹脂の使用量は得られるアンチモン酸分散液のpHが1〜4、さらには1.5〜3.5の範囲とすることが好ましい。pH1未満の場合は、鎖状粒子にならず凝集粒子が生成する傾向にあり、他方、pH4を越えると単分散粒子が生成する傾向にある。
また、アンチモン酸分散液のpHが1未満の場合は、酸化アンチモンの溶解度が高いために所定量の酸化アンチモンの被覆が困難となり、アンチモン酸分散液のpHが4を越えると得られる酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子が凝集体となることがあり、被膜中での分散性が低下したり、被膜付基材の帯電防止効果が不充分となることがある。
【0181】
ついで、アンチモン酸分散液と多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子の分散液とを混合し、50〜250℃、好ましくは70〜120℃で、通常1〜24時間熟成を行うことによって酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子分散液を得ることができる。
アンチモン酸分散液と前記シリカ系微粒子分散液との混合割合は、シリカ系微粒子を固形分として100質量部に、アンチモン酸をSbとして1〜200質量部、好ましくは5〜100質量部となるように添加する。アンチモン酸の混合割合が1質量部未満の場合は、被覆が不均一であったり、被覆層の厚さが不充分となり、酸化アンチモンで被覆する効果、即ち、導電性を付与、向上する効果が充分得られないことがある。アンチモン酸の混合割合が200質量部を越えても、被覆に寄与しない酸化アンチモンが増加したり、得られる酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子の導電性がさらに向上することもなく、屈折率が1.60を越えて高くなることがある。
【0182】
混合した分散液の濃度は固形分として1〜40質量%、さらには2〜30質量%の範囲にあることが好ましい。混合分散液の濃度が1質量%未満の場合は、酸化アンチモンの被覆効率が不充分であったり、生産効率が低下する。他方、40質量%を越えると、アンチモン酸の使用量が多い場合に、得られる酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子が凝集することがある。
熟成温度が50℃未満の場合は、酸化アンチモン被覆層が緻密にならないためか、導電性の向上効果が充分得られないことがある。熟成温度が200℃を越えると、多孔質シリカ系微粒子を用いた場合に多孔性が減少し、得られる酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子の屈折率が充分低下しないことがある。
【0183】
なお、アンチモン酸分散液とシリカ系微粒子分散液との混合については、上記のように一時に添加することもできるが、多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子の分散液にアンチモン酸ゲル分散液を時間をかけて、連続的にあるいは断続的に添加して混合することもできる。
このようにして得られた酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子分散液は、pHが概ね1〜4の範囲にある。
【0184】
また、このときの酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子は、屈折率が1.35〜1.60の範囲にあり、体積抵抗値が10〜5000Ω/cmの範囲にあることが好ましく、平均粒子径が5〜300nmの範囲にあり、酸化アンチモン被覆層の厚さが0.5〜30nmの範囲にあることが好ましい。
【0185】
本発明に用いる内部に空洞を有するシリカ系微粒子分散液は下記の工程(a)、(b)によって得られることが好ましい。
(a)珪酸塩の水溶液および/または酸性珪酸液と、アルカリ可溶の無機化合物水溶液とをアルカリ水溶液中に、または、必要に応じて種粒子が分散したアルカリ水溶液中に同時に添加して、シリカをSiOで表し、シリカ以外の無機酸化物をMOで表したときのモル比MO/SiOが0.3〜1.0の範囲にある複合酸化物微粒子分散液を調製する際に、複合酸化物微粒子の平均粒子径が概ね5〜50nmになった時点で電解質塩を電解質塩のモル数(M)とSiOのモル数(M)との比(M)/(M)が0.1〜10の範囲で添加して複合酸化物微粒子分散液を調製する工程、
(b)前記複合酸化物微粒子分散液に、必要に応じてさらに電解質塩を加え、ついで酸を加えて前記複合酸化物微粒子を構成する珪素以外の元素の少なくとも一部を除去してシリカ系微粒子の分散液を調製する工程。
【0186】
工程(a)
珪酸塩としては、アルカリ金属珪酸塩、アンモニウム珪酸塩および有機塩基の珪酸塩から選ばれる1種または2種以上の珪酸塩が好ましく用いられる。アルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム(水ガラス)や珪酸カリウムが、有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類を挙げることができ、アンモニウムの珪酸塩または有機塩基の珪酸塩には、珪酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物などを添加したアルカリ性溶液も含まれる。
【0187】
酸性珪酸液としては、珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂で処理すること等によって、アルカリを除去して得られる珪酸液を用いることができ、特に、pH2〜pH4、SiO濃度が約7質量%以下の酸性珪酸液が好ましい。
無機酸化物としては、Al、B、TiO、ZrO、SnO、Ce3、、Sb、MoO、ZnO、WO等の1種または2種以上を挙げることができる。2種以上の無機酸化物として、TiO−Al、TiO−ZrO等を例示することができる。
【0188】
このような無機酸化物の原料として、アルカリ可溶の無機化合物を用いることが好ましく、前記した無機酸化物を構成する金属または非金属のオキソ酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩を挙げることができ、より具体的には、アルミン酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、アンチモン酸カリウム、錫酸カリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、燐酸ナトリウム等が適当である。
複合酸化物微粒子分散液を調製するためには、予め、前記無機化合物のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とするシリカとシリカ以外の無機酸化物の複合割合に応じて、アルカリ水溶液中に、好ましくはpH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加する。
【0189】
アルカリ水溶液中に添加するシリカ原料と無機化合物の添加割合は、シリカ成分をSiOで表し、シリカ以外の無機化合物をMOで表したときのモル比MO/SiOが0.3〜1.0、特に、0.35〜0.85の範囲となるようにすることが好ましい。MO/SiOが0.3未満では、最終的に得られるシリカ系微粒子の空洞容積が十分大きくならず、他方、MO/SiOが1.0を越えると、球状の複合酸化物微粒子を得ることが困難となり、この結果、得られる中空微粒子中の空洞容積の割合が低下する。
【0190】
モル比MO/SiOが0.3〜1.0の範囲にあれば、複合酸化物微粒子の構造は主として、珪素と珪素以外の元素が酸素を介在して交互に結合した構造となる。即ち、珪素原子の4つの結合手に酸素原子が結合し、この酸素原子にはシリカ以外の元素Mが結合した構造が多く生成し、後述の工程(b)でシリカ以外の元素Mを除去する際、元素Mに随伴させて珪素原子も珪酸モノマーやオリゴマーとして除去することができるようになる。
【0191】
本発明の製造方法では、複合酸化物微粒子分散液を調製する際に種粒子の分散液を出発原料とすることも可能である。この場合には、種粒子として、SiO、Al、TiO、ZrO、SnOおよびCeO等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物、例えば、SiO−Al、TiO−Al、TiO−ZrO、SiO−TiO、SiO−TiO−Al等の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることができる。このような種粒子の分散液は、従来公知の方法によって調製することができる。例えば、上記無機酸化物に対応する金属塩、金属塩の混合物あるいは金属アルコキシド等に酸またはアルカリを添加して加水分解し、必要に応じて熟成することによって得ることができる。
【0192】
この種粒子分散アルカリ水溶液中に、好ましくはpH10以上に調整した種粒子分散アルカリ水溶液中に前記化合物の水溶液を、上記したアルカリ水溶液中に添加する方法と同様にして、攪拌しながら添加する。このように、種粒子を種として複合酸化物微粒子を成長させると、成長粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることができる。種粒子分散液中に添加するシリカ原料および無機酸化物の添加割合は、前記したアルカリ水溶液に添加する場合と同じ範囲とする。
【0193】
上記したシリカ原料および無機酸化物原料はアルカリ側で高い溶解度をもっている。しかしながら、この溶解度の高いpH領域で両者を混合すると、珪酸イオンおよびアルミン酸イオンなどのオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出してコロイド粒子に成長したり、あるいは、種粒子上に析出して粒子成長が起こる。
【0194】
上記複合酸化物微粒子分散液の調製に際し、シリカ原料として下記化学式(1)に示す有機珪素化合物および/またはその加水分解物をアルカリ水溶液中に添加しても良い。
SiX(4−n) (1)
〔但し、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基、X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲンまたは水素、n:0〜3の整数〕
【0195】
該有機珪素化合物としては、具体的に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロルシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン等が挙げられる。
【0196】
上記有機珪素化合物でnが1〜3の化合物は親水性に乏しいので、予め加水分解しておくことにより、反応系に均一に混合できるようにすることが好ましい。加水分解には、これら有機珪素化合物の加水分解法として周知の方法を採用することができる。加水分解触媒として、アルカリ金属の水酸化物や、アンモニア水、アミン等の塩基性のものを用いた場合、加水分解後これらの塩基性触媒を除去して、酸性溶液にして用いることもできる。また、有機酸や無機酸などの酸性触媒を用いて加水分解物を調製した場合、加水分解後、イオン交換等によって酸性触媒を除去することが好ましい。なお、得られた有機珪素化合物の加水分解物は、水溶液の形態で使用することが望ましい。ここで水溶液とは加水分解物がゲルとして白濁した状態になく透明性を有している状態を意味する。
【0197】
本発明では、本工程(a)において、複合酸化物微粒子の平均粒子径が概ね5〜50nmになった時点(このときの複合酸化物微粒子を一次粒子ということがある)で電解質塩を電解質塩のモル数(M)とSiOのモル数(M)との比(M)/(M)が0.1〜10、好ましくは0.2〜8の範囲で添加する。
電解質塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウムなどの水溶性の電解質塩が挙げられる。
なお、電解質塩はこの時点で全量を添加してもよく、アルカリ金属珪酸塩やシリカ以外の無機化合物を添加して複合酸化物微粒子の粒子成長を行いながら連続的にあるいは断続的に添加してもよい。
【0198】
電解質塩の添加量は、複合酸化物微粒子分散液の濃度にもよるが、前記モル比(M)/(M)が0.1未満の場合は、電解質塩を加えた効果が不充分となり、工程(b)で酸を加えて複合酸化物微粒子を構成する珪素以外の元素の少なくとも一部を除去する際に複合酸化物微粒子が球状を維持できず破壊され、内部に空洞を有するシリカ系微粒子を得ることが困難となることがある。このような電解質塩を加える効果についてその理由は明らかではないが、粒子成長した複合酸化物微粒子の表面にシリカが多くなり、酸に不溶性のシリカが複合酸化物微粒子の保護膜的な作用をしているものと考えられる。
前記モル比(M)/(M)が10を越えても、前記電解質を添加する効果が向上することもなく、新たな微粒子が生成したり、経済性が低下する。
【0199】
また、電解質塩を添加する際の一次粒子の平均粒子径が5nm未満の場合は、新たな微粒子が生成して一次粒子の選択的な粒子成長が起きず、複合酸化物微粒子の粒子径分布が不均一となることがある。
電解質塩を添加する際の一次粒子の平均粒子径が50nmを越えると、工程(b)での珪素以外の元素の除去に時間を要したり、困難となることがある。
このようにして得られる複合酸化物微粒子は、後に得られるシリカ系微粒子と同程度の、平均粒子径が4〜270nmの範囲にある。
【0200】
工程(b)
ついで、複合酸化物微粒子から、該複合酸化物微粒子を構成する珪素以外の元素の一部または全部を除去することにより内部に空洞を有する中空球状のシリカ系微粒子を製造することができる。
本工程では、該複合酸化物微粒子分散液に、必要に応じて再び電解質塩を添加する。このときの電解質塩の添加量は、電解質塩のモル数(M)とSiOのモル数(M)との比(M)/(M)が0.1〜10、好ましくは0.2〜8の範囲で添加する。
【0201】
次に、複合酸化物微粒子を構成する元素の一部または全部を除去するが、除去する方法としては、例えば鉱酸や有機酸を添加することによって溶解除去したり、あるいは、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する方法、およびこれらを組み合わせて除去する方法を例示することができる。
このときの複合酸化物微粒子分散液中の複合酸化物微粒子の濃度は処理温度によっても異なるが、酸化物に換算して0.1〜50質量%、特に0.5〜25質量%の範囲にあることが好ましい。濃度が0.1質量%未満では、シリカの溶解量が多くなり、複合酸化物微粒子の形状を維持できないことがあり、できたとしても低濃度のために処理効率が低下する。また、複合酸化物微粒子の濃度が50質量%を越えると、粒子の分散性が不充分となり、珪素以外の元素の含有量が多い複合酸化物微粒子では均一に、あるいは効率的に少ない回数で除去できないことがある。
【0202】
上記元素の除去は、得られるシリカ系微粒子のMO/SiOが、0.0001〜0.2、特に、0.0001〜0.1となるまで行うことが好ましい。
元素を除去した分散液は、限外濾過等の公知の洗浄方法により洗浄することができる。この場合、予め分散液中のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンおよびアンモニウムイオン等の一部を除去した後に限外濾過すれば、分散安定性の高いシリカ系微粒子が分散したゾルが得られる。なお、必要に応じて有機溶媒で置換することによって有機溶媒分散ゾルを得ることができる。
【0203】
本発明のシリカ系微粒子の製造方法では、ついで、洗浄した後、乾燥し、必要に応じて焼成することができる。このようにして得られたシリカ系微粒子は、内部に空洞を有し、低屈折率となり、該シリカ系微粒子を用いて形成される被膜は低屈折率となり、反射防止性能に優れた被膜が得られる。
【0204】
本発明のシリカ系微粒子の製造方法では、前記工程(b)で得られたシリカ系微粒子分散液に、アルカリ水溶液と、化学式(1)で表される有機珪素化合物および/またはその部分加水分解物、またはアルカリ金属珪酸塩を脱アルカリして得られる酸性珪酸液を添加し、該微粒子にシリカ被覆層を形成することができる。
SiX(4−n) (1)
〔但し、R:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基、X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲンまたは水素、n:0〜3の整数〕
化学式(1)に示す有機珪素化合物としては、前記したと同様の有機珪素化合物と同じものを用いることができる。化学式(1)において、n=0の有機珪素化合物を用いる場合はそのまま用いることができるが、n=1〜3の有機珪素化合物を用いる場合は前記したと同様の有機珪素化合物の部分加水分解物を用いることが好ましい。
【0205】
このようなシリカ被覆層は緻密であるために、内部は屈折率の低い気相あるいは液層に保たれ、被膜の形成等に用いる場合、屈折率の高い物質、例えば塗料用樹脂等が内部に進入することがなく、低屈折率の効果の高い被膜を形成することができる。
また、上記において、シリカ被覆層の形成にn=1〜3の有機珪素化合物を用いる場合は有機溶媒への分散性がよく、樹脂との親和性の高いシリカ系微粒子分散液を得ることができる。さらに、シランカップリング剤等で表面処理して用いることができるが、有機溶媒への分散性、樹脂との親和性等に優れているため、このような処理を特別に必要とすることもない。
【0206】
また、シリカ被覆層の形成に含フッ素有機珪素化合物を用いる場合は、F原子を含む被覆層が形成されるために、得られる粒子はより低屈折率となるとともに有機溶媒への分散性がよく、樹脂との親和性の高いシリカ系微粒子分散液を得ることができる。このような含フッ素有機珪素化合物としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0207】
上記シリカ被覆層を形成したシリカ系微粒子は、必要に応じて常温〜300℃、好ましくは50〜250℃で通常1〜24時間程度熟成することができる。熟成を行うとシリカ被覆層が均一でより緻密になり、前述したように屈折率の高い物質が粒子内部に進入することができなくなるため低屈折率効果の高い被膜を形成することができる。
【0208】
このようにして得られたシリカ系微粒子は、平均粒子径が4〜270nm、さらには8〜170nmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が4nm未満では、充分な空洞が得られず、低屈折率の効果が充分得られないことがある。シリカ系微粒子の平均粒子径が270nmを越えると、得られる酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子の平均粒子径が300nmを越えることがあり、このような酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子を用いた透明被膜は表面に凹凸が生じたり、透明性が低下したり、ヘイズが高くなることがある。なお、本発明のシリカ系微粒子、酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子の平均粒子径は動的光散乱法によって求めることができる。
シリカ系微粒子は、内部に空洞を有している。このため、通常シリカの屈折率が1.45であるのに対し、シリカ系微粒子の屈折率は、1.20〜1.38であった。なお、空洞については、粒子断面の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を観察することによって確認することができる。
【0209】
本発明に用いられる低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.25〜1.46、更に好ましくは1.30〜1.43、最も好ましくは1.30〜1.40である。本発明の光学フイルムの表面抵抗(Ω/□)は、好ましくは1.0×10以上1.0×1013以下であり、更に好ましくは1.0×10以上1.0×1012以下であり、最も好ましくは1.0×10以上1.0×1010以下である。本発明に従えば、屈折率と表面抵抗を上記範囲にすることで、低反射率と防塵性を良好に保ちつつ耐擦傷性を良好に保つことができる。
【0210】
酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子は、単独または以下に記述する少なくとも1種以上の微粒子と組み合わせて用いることができる。
【0211】
[その他の微粒子]
本発明の(B)成分である導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子に加えて以下の微粒子を好適に用いることができる。微粒子は無機酸化物粒子であることが好ましく、得られる低屈折率層の無色性の観点から、珪素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる、少なくとも1種の元素の酸化物粒子であることが好ましい。
【0212】
これらの無機微粒子としては、例えば、シリカ、フッ化マグネシウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の酸化物粒子を挙げることができる。中でも、高硬度の観点から、シリカ、アルミナ、ジルコニア及び酸化アンチモンの粒子が好ましい。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0213】
さらに無機微粒子は、有機溶媒分散物として用いるのが好ましい。有機溶媒分散物として用いる場合、他の成分との相溶性、分散性の観点から、分散媒は、有機溶媒が好ましい。
【0214】
このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。中でも、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましい。
【0215】
無機微粒子の数平均粒子径は、1〜200nmが好ましく、3〜150nmがさらに好ましく、5〜100nmが特に好ましい。数平均粒子径が200nm以下であれば、硬化物としたときの透明性が低下したり、被膜としたときの表面状態が悪化したりするなどの不都合が生じないので好ましい。また、粒子の分散性を改良するために各種の界面活性剤やアミン類を添加してもよい。
【0216】
珪素酸化物粒子分散液(例えば、シリカ粒子)として市販されている商品としては、例えば、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製シリカゾル“MA−ST−MS”、“IPA−ST”、“IPA−ST−MS”、“IPA−ST−L”、“IPA−ST−ZL”、“IPA−ST−UP”、“EG−ST”、“NPC−ST−30”、“MEK−ST”、“MEK−ST−L”、“MIBK−ST”、“NBA−ST”、“XBA−ST”、“DMAC−ST”、“ST−UP”、“ST−OUP”、“ST−20”、“ST−40”、“ST−C”、“ST−N”、“ST−O”、“ST−50”、“ST−OL”等;触媒化成工業(株)製中空シリカ“CS60−IPA”等を挙げることができる。また粉体シリカとしては、日本アエロジル(株)製「アエロジル130」、「アエロジル300」、「アエロジル380」、「アエロジルTT600」、「アエロジルOX50」;旭硝子(株)製「シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122」;日本シリカ工業(株)製“E220A”、“E220”、“SS−50”、“SS50A”、“SS−50F”;富士シリシア(株)製“SYLYSIA470”;日本板硝子(株)製「SGフレ−ク」等を挙げることができる。
【0217】
また、アルミナの水分散品としては、日産化学工業(株)製「アルミナゾル−100、−200、−520」;アルミナのイソプロパノール分散品としては、住友大阪セメント(株)製“AS−150I”;アルミナのトルエン分散品としては、住友大阪セメント(株)製“AS−150T”;ジルコニアのトルエン分散品としては、住友大阪セメント(株)製“HXU−110JC”;アンチモン酸亜鉛粉末の水分散品としては、日産化学工業(株)製「セルナックス」;アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛等の粉末及び溶媒分散品としては、シーアイ化成(株)製「ナノテック」;ATOの水分散ゾルとしては、石原産業(株)製“SN−100D”;ITO粉末としては、三菱マテリアル(株)製の製品;酸化セリウム水分散液としては、多木化学(株)製ニードラール等を挙げることができる。
【0218】
無機微粒子の形状は、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、鎖状、パールネックレス状、又は不定形状であり、好ましくは、球状又は中空状である。中空状のシリカ粒子については後述する。無機微粒子の比表面積(窒素を用いたBET比表面積測定法による)は、好ましくは、10〜1000m/gであり、さらに好ましくは、20〜500m/gであり、最も好ましくは50〜300m/gである。これら無機微粒子は、乾燥状態の粉末を有機溶媒に分散することもできるが、例えば上記の酸化物の溶媒分散ゾルとして当業界に知られている微粒子状の酸化物粒子の分散液を直接用いることができる。
【0219】
(中空シリカ粒子)
本発明の反射防止フイルムの低屈折率層においては、本発明の(B)成分である導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子に加えて屈折率の低い中空状の無機微粒子を用いるのが特に好ましい。中空シリカ粒子について、以下に記載する。
【0220】
中空のシリカ微粒子は、屈折率が1.15〜1.40であることが好ましく、更に好ましくは1.15〜1.35、最も好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は、粒子全体として屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をr、粒子外殻の半径をrとすると、空隙率xは下記数式(2)で表される。中空シリカ粒子の空隙率xは、好ましくは10〜60%、更に好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。
数式(2):x=(r/r×100
中空シリカ微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡写真から求めることができる。
【0221】
中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から、中空のシリカ粒子の屈折率は、通常、1.17以上である。
【0222】
中空シリカ粒子の製造方法は、例えば特開2001−233611号公報や特開2002−79616号公報に記載されている。本発明において用いられる中空シリカ粒子としては、外殻の内部に空洞を有している粒子で、その外殻の細孔が閉塞されている粒子が特に好ましい。なお、これら中空シリカ粒子の屈折率は特開2002−79616号公報に記載の方法で算出することができる。
【0223】
中空シリカの平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。すなわち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、中空シリカの粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上100nm以下、更に好ましくは、40nm以上65nm以下である。シリカ微粒子の粒径が該下限値以上であれば、空腔部の割合が十分であり、屈折率の低下が見込めるので好ましく、該上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができて、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化するなどの弊害が生じることがないので好ましい。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよく、また単分散粒子が好ましい。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題ない。
【0224】
また、中空シリカは粒子平均粒子サイズの異なるものを2種以上併用して用いることができる。ここで、中空シリカの平均粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。
【0225】
本発明において中空シリカの比表面積は、20〜300m/gが好ましく、更に好ましくは30〜120m/g、最も好ましくは40〜90m/gである。表面積は窒素を用いBET法で求めることができる。
【0226】
本発明においては、中空シリカと併用して空腔のないシリカ粒子を用いることができる。空腔のないシリカの好ましい粒子サイズは、30nm以上150nm以下、更に好ましくは35nm以上100nm以下、最も好ましくは40nm以上80nm以下である。
【0227】
(小サイズ粒径のシリカ微粒子)
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を、上記の粒径のシリカ粒子(「大サイズ粒径のシリカ粒子」と称す)と併用することもできる。
小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
【0228】
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コスト及び保持剤効果の点で好ましい。
【0229】
(無機微粒子の表面処理)
本発明の低屈折率層に用いることのできる無機微粒子は、分散液中又は塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていてもよい。
これらの表面処理は、前記酸化アンチモン被覆層を有するシリカ系微粒子に対して行われてもよい。
【0230】
無機微粒子が、下記一般式(3)で表されるオルガノシランの加水分解物及び/又はその部分縮合物により表面処理がなされており、処理の際に、酸触媒及び金属キレート化合物のいずれか、又は両者が使用されることが好ましい。
一般式(3): (R30m1Si(X314−m1
式中、R30は、置換もしくは無置換のアルキル基又は、置換もしくは無置換のアリール基を表す。X31は水酸基又は加水分解可能な基を表す。m1は1〜3の整数を表す。
【0231】
無機微粒子の上記分散性改良処理は、オルガノシランと無機微粒子と、必要に応じて水とを、加水分解機能を有する触媒及び縮合機能を有する金属キレート化合物の少なくともいずれかの存在下に、接触させることにより行われる。オルガノシランは、一部加水分解されていてもよいし、部分縮合していてもよい。オルガノシランは、加水分解に引き続いて部分縮合し、これが無機微粒子の表面を修飾して、分散性が向上し、安定した無機微粒子の分散液が得られる。
【0232】
(金属キレート化合物)
金属キレート化合物は、下記一般式(4−1)で表されるアルコールと、下記一般式(4−2)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti又はAlから選ばれる金属を中心金属とする少なくとも1種の金属キレート化合物であれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用してもよい。
一般式(4−1):R41OH
一般式(4−2):R42COCHCOR43
式中、R41及びR42は、同一又は異なってもよく、炭素数1〜10のアルキル基を示し、R43は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。
【0233】
[オルガノシラン化合物]
本発明の反射防止フイルムは、その低屈折率層及び該低屈折率層より下の層のうち、いずれかの層に、酸触媒及び金属キレート化合物の少なくともいずれかの存在下で製造されてなる下記一般式(3)で表されるオルガノシランの、加水分解物及びその部分縮合物のいずれかが用いられることが好ましい。次ぎに、このオルガノシラン化合物について詳細に説明する。
一般式(3):(R30m1−Si(X314−m1
【0234】
一般式(3)において、R30は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヘキシル基、t−ブチル基、s−ブチル基、ヘキシル基、デシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。アルキル基として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0235】
31は、水酸基又は加水分解可能な基を表す。加水分解可能な基としては、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等)、ハロゲン原子(例えばCl、Br、I等)、及びR32COO基(R32は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。例えばCHCOO基、CCOO基等)が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。
【0236】
m1は1〜3の整数を表す。R30もしくはX31が複数存在するとき、複数のR30もしくはX31はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。m1として好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
【0237】
30に含まれる置換基としては、特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル基、エチ基、i−プロピル基、プロピル基、t−ブチル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、芳香族ヘテロ環基(フリル基、ピラゾリル基、ピリジル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、ヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等)、アルケニル基(ビニル基、1−プロペニル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基等)、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−メチル−N−オクチルカルバモイル基等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、アクリルアミノ基、メタクリルアミノ基等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていてもよい。なお、本明細書においては、水素原子を置換するものが単一の原子であっても、便宜上置換基として取り扱う。
【0238】
30が複数ある場合は、少なくとも1つが、置換アルキル基もしくは置換アリール基であることが好ましい。中でも該置換アルキル基もしくは置換アリール基がさらにビニル重合性基を有することが好ましく、この場合、一般式(3)で表される化合物は、下記一般式(3−1)で表されるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物として表すことができる。
一般式(3−1):
【0239】
【化29】

【0240】
一般式(3−1)において、R32は、水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子又は塩素原子を表す。上記アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。R32としては、水素原子、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子及び塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子及び塩素原子が更に好ましく、水素原子及びメチル基が特に好ましい。
【0241】
31は、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基又はウレア基を表す。単結合、エステル基及びアミド基が好ましく、単結合及びエステル基が更に好ましく、エステル基が特に好ましい。
【0242】
31は、2価の連結鎖であり、具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル基、エステル基、アミド基)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、又は内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基であり、なかでも、置換もしくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基、内部に連結基を有する炭素数3〜10のアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテル連結基又はエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテル連結基又はエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていてもよい。
【0243】
m2は0又は1を表す。X31が複数存在するとき、複数のX31は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。m2として好ましくは0である。
30は、一般式(3)のR30と同義であり、置換もしくは無置換のアルキル基、無置換のアリール基が好ましく、無置換のアルキル基、無置換のアリール基が更に好ましい。
31は、一般式(3)のX31と同義であり、ハロゲン、水酸基、無置換のアルコキシ基が好ましく、塩素、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0244】
本発明に用いるオルガノシラン化合物として、下記一般式(3−2)で表されるものも好ましい。
一般式(3−2):(R31−L32m3−Si(R33m3−4
【0245】
上記一般式(3−2)中、R31は炭素数1〜20の直鎖、分岐、環状の含フッ素アルキル基、又は炭素数6〜14の含フッ素芳香族基を表す。R31は、炭素数3〜10の直鎖、分岐、環状のフルオロアルキル基が好ましく、炭素数4〜8の直鎖のフルオロアルキル基が更に好ましい。L32は炭素数10以下の2価の連結基を表し、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、更に好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基を表す。アルキレン基は、直鎖もしくは分岐の、置換もしくは無置換の、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミド)を有していてもよいアルキレン基である。アルキレン基は置換基を有していてもよく、その場合の好ましい置換基は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。R33は水酸基又は加水分解可能な基を表し、炭素数1〜5のアルコキシ基又はハロゲン原子が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、及び塩素原子が更に好ましい。m3は1〜3の整数を表す。
【0246】
次に一般式(3−2)で表される含フッ素オルガノシラン化合物の中でも、下記一般式(3−3)で表される含フッ素オルガノシラン化合物が好ましい。
一般式(3−3):C2n+1−(CHt6−Si(R34
【0247】
上記一般式(3−3)中、nは1〜10の整数、t6は1〜5の整数を表す。R34は炭素数1〜5のアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。nは4〜10が好ましく、t6は1〜3が好ましく、R34はメトキシ基、エトキシ基、及び塩素原子が好ましい。
【0248】
一般式(3)の化合物は、2種類以上を併用してもよい。以下に一般式(3)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0249】
【化30】

【0250】
【化31】

【0251】
【化32】

【0252】
【化33】

【0253】
【化34】

【0254】
【化35】

【0255】
【化36】

【0256】
【化37】

【0257】
【化38】

【0258】
【化39】

【0259】
【化40】

【0260】
これらの具体例の中で、(OS−1)、(OS−2)、(OS−56)、(OS−57)等が特に好ましい。また、特許第3474330号公報の参考例に記載のA,B,Cの化合物も分散安定性に優れ好ましい。
【0261】
本発明においては、一般式(3)で表されるオルガノシラン化合物の使用量は、特に制限はないが、無機微粒子当たり1質量%〜300質量%が好ましく、更に好ましくは3質量%〜100質量%、最も好ましくは5質量%〜50質量%である。無機微粒子の表面の水酸基基準の規定度濃度当たりでは1〜300モル%が好ましく、更に好ましくは5〜300モル%、最も好ましくは10〜200モル%である。オルガノシラン化合物の使用量が上記範囲であると、分散液の安定化効果が充分得られ、塗膜形成時に膜強度も上昇する。
【0262】
複数種のオルガノシラン化合物を併用することも好ましく、複数種の化合物を同時に添加することも、添加時間をずらして反応させることもできる。また、複数種の化合物を予め部分縮合物にしてから添加すると反応制御が容易であり好ましい。
【0263】
(オルガノシラン化合物の使用層)
本発明においては、低屈折率層および低屈折率層より下の層の、少なくともいずれかの層に、上述のオルガノシラン化合物、その加水分解物、およびその加水分解縮合物の少なくともいずれかを使用することが好ましい。オルガノシラン化合物の加水分解及びその縮合については、上記無機微粒子に関する記載の中で述べた酸触媒及び/又は金属キレート化合物を用いることが好ましい。
【0264】
低屈折率層に用いる場合の好ましい使用量は、該低屈折率層を形成する固形分当たり1〜95質量%が好ましく、更に好ましくは2〜70質量%、最も好ましくは2〜45%である。低屈折率層に隣接する層に使用する場合には、該低屈折率層隣接層を形成する固形分当たり0.1〜70質量%が好ましく、更に好ましくは0.2〜50質量%、最も好ましくは1〜30%である。
【0265】
[低屈折率層の硬化方法]
本発明においては、電離放射線照射により硬化する化合物、導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(好ましくは酸化アンチモン被覆層を有するシリカ系微粒子)、及び必要によりポリシロキサン部分構造を有する化合物又は含フッ素防汚剤を含有する低屈折率層形成用塗布組成物を支持体上に塗布して、電離放射線による照射と、照射の前、照射と同時又は照射後の熱処理とを組み合わせることにより、硬化することが好ましい。以下にいくつかの製造工程のパターンを示すが、これらに限定されるものではない。
照射前→ 照射と同時 →照射後(−は熱処理を行っていないことを示す。)
(1)熱処理→電離放射線硬化→ −
(2)熱処理→電離放射線硬化→熱処理
(3) − →電離放射線硬化→熱処理
その他、電離放射線硬化時に同時に熱処理を行う工程も好ましい。
【0266】
(熱処理)
本発明においては、上記のとおり、電離放射線による照射と組み合わせて熱処理を行うことが好ましい。熱処理は、低屈折率層とその下層との界面から低屈折率層の表面までの各種成分の存在状態を変化させるものであれば特に制限はないが、好ましくは60〜200℃、更に好ましくは80〜130℃、最も好ましくは80〜110℃である。
【0267】
温度を上げることにより、表面自由エネルギーを低下させる、ポリシロキサン系成分や含フッ素系成分を含有している場合、低屈折率層表面近傍への配向を促進することができる。電離放射線照射による硬化前には、各成分が固定化されておらず、上記配向が比較的速やかに起こるが、電離放射線照射による硬化後には、各成分が固定され部分的にしか配向は起こらない。熱処理に要する時間は、使用成分の分子量、その他成分との相互作用、粘度などにより異なるが、好ましくは30秒〜24時間、より好ましくは60秒〜5時間、最も好ましくは3分〜30分である。
【0268】
フイルムの膜面温度を所望の温度にする方法に特に限定はないが、ロールを加熱してフイルムに接触させる方法、加熱した窒素を吹き付ける方法、遠赤外線又は赤外線の照射などが好ましい。特許2523574号明細書に記載の、回転金属ロールに温水や蒸気を流して加熱する方法も利用できる。一方、下記で述べる電離放射線の照射時においては、フイルムの膜面温度が上がる場合には、ロールを冷却してフイルムに接触させる方法が利用できる。
【0269】
(電離放射線照射条件)
電離線放射線照射時の膜面温度については、特に制限はないが、ハンドリング性及び面内の性能の均一性から、一般に20〜200℃、好ましくは30〜150℃、最も好ましくは40〜120℃である。膜面温度が該上限値以下であれば、バインダー中の低分子成分の流動性が上昇しすぎて面状が悪化したり、支持体が熱によりダメージを受けたりする問題が生じないので好ましい。また該下限値以上であれば、硬化反応の進行が十分で、膜の耐擦傷性が良好なものとなるので好ましい。
【0270】
電離放射線の種類については、特に制限はなく、x線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が広く用いられる。例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm〜1000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して各層を硬化するのが好ましい。照射の際には、前記エネルギーを一度に当ててもよいし、分割して照射することもできる。特に塗膜の面内での性能ばらつきを少なくする点からは、2〜8回程度に分割して照射することも好ましい。
【0271】
電離放射線照射後フイルムが前記温度に保たれる時間は、電離放射線照射終了から0.1秒以上300秒以下が好ましく、0.1秒以上10秒以下がより好ましい。フイルムの膜面温度を上記の温度範囲に保つ時間が短すぎると、皮膜を形成する低屈折率層形成用塗布組成物の反応を促進できず、逆に長すぎると設備が大きくなるなどの製造上の問題が生じてしまう。
【0272】
(酸素濃度)
電離放射線照射時の酸素濃度は3体積%以下であることが好ましく、より好ましくは1%体積以下であり、更に好ましくは0.1%以下である。酸素濃度3体積%以下で電離放射線を照射する工程に対して、その直前又は直後に酸素濃度3体積%以下の雰囲気下で維持する工程を設けることにより、膜の硬化を十分に促進し、物理強度、耐薬品性に優れた皮膜を形成することができる。
【0273】
酸素濃度を低下させる手段としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の不活性気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。電離放射線を照射する工程の前に、低酸素濃度の雰囲気下で搬送を行うことによって、塗膜表面及び内部の酸素濃度を有効に低減することができ、硬化を促進することができる。電離放射線照射前の搬送工程における酸素濃度は3体積%以下であることが好ましく、より好ましくは1%体積以下であり、更に好ましくは0.1%以下である。
【0274】
(重合開始剤)
本発明の電離放射線硬化性化合物、及びその他の重合性化合物の重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0275】
(光ラジカル開始剤)
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。
【0276】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシ−ジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシ−ジメチル−p−イソプロピルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルホリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノンなどが含まれる。
【0277】
ベンゾイン類の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなどが含まれる。
【0278】
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが含まれる。
【0279】
ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどが含まれる。活性エステル類の例には1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、スルホン酸エステル類、環状活性エステル化合物などが含まれる。具体的には特開2000−80068号公報の実施例記載化合物1〜21が特に好ましい。
【0280】
オニウム塩類の例には、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩が挙げられる。ボレート塩の例にはカチオン性色素とのイオンコンプレックス類が挙げられる。
【0281】
活性ハロゲン類の例には、S−トリアジンやオキサチアゾール化合物が知られており、例えば2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−スチリルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(3−Br−4−ジ(エチル酢酸エステル)アミノ)フェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−トリハロメチル−5−(p−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールが含まれる。具体的には特開昭58−15503号公報のp14〜p30、特開昭55−77742号公報のp6〜p10、特公昭60−27673号公報のp287記載のNo.1〜No.8、特開昭60−239736号公報のp443〜p444のNo.1〜No.17、米国特許第4701399号明細書のNo.1〜19などの化合物が特に好ましい。
【0282】
無機錯体の例には、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル]チタニウムが挙げられる。クマリン類の例には3−ケトクマリンが挙げられる。
これらの開始剤は単独でも混合して用いてもよい。
【0283】
本発明において、分子量が高く塗膜から揮散しにくい化合物としては、オリゴマー型の重合開始剤が好ましい。オリゴマー型放射線重合開始剤としては、放射線照射により光ラジカルを発生する部位を有するものであれば、特に制限はない。熱処理による揮散防止のために、重合開始剤の分子量は250以上10,000以下が好ましく、更に好ましくは300以上10,000以下である。より好ましくは、その質量平均分子量が400〜10,000である。質量平均分子量が400以上であれば、揮散性が小さいので好ましく、10,000以下であれば、得られる硬化塗膜の硬度が十分なものとなるので好ましい。オリゴマー型放射線重合開始剤の具体例としては、下記一般式(5)に示すオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン]を挙げることができる。
一般式(5):
【0284】
【化41】

【0285】
上記一般式(5)中、R51は、一価の基、好ましくは一価の有機基、qは2〜45の整数をそれぞれ示す。
【0286】
上記一般式(5)に示すオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン]の市販品としては、フラテツリ・ランベルティ社製商品名「エザキュアKIP150」(CAS−No.163702−01−0、q=4〜6)、「エザキュアKIP65LT」(「エザキュアKIP150」とトリプロピレングリコールジアクリレートの混合物)、「エザキュアKIP100F」(「エザキュアKIP150」と2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの混合物)、「エザキュアKT37」、「エザキュアKT55」(以上、「エザキュアKIP150」とメチルベンゾフェノン誘導体の混合物)、「エザキュアKTO46」(「エザキュアKIP150」、メチルベンゾフェノン誘導体、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドの混合物)、「エザキュアKIP75/B」(「エザキュアKIP150」と2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1オンの混合物)等を挙げることができる。
【0287】
「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0288】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の「イルガキュア651」、「イルガキュア184」、「イルガキュア819」、「イルガキュア907」、「イルガキュア1870」(CGI−403/Irg184=7/3混合開始剤)、「イルガキュア500」、「イルガキュア369」、「イルガキュア1173」、「イルガキュア2959」、「イルガキュア4265」、「イルガキュア4263」、“OXE01”等;日本化薬(株)製の「カヤキュアーDETX−S」、「カヤキュアーBP−100」、「カヤキュアーBDMK」、「カヤキュアーCTX」、「カヤキュアーBMS」、「カヤキュアー2−EAQ」、「カヤキュアーABQ」、「カヤキュアーCPTX」、「カヤキュアーEPD」、「カヤキュアーITX」、「カヤキュアーQTX」、「カヤキュアーBTC」、「カヤキュアーMCA」など;サートマー社製の“Esacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KTO46,KT37,KIP150,TZT)”等、及びそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
【0289】
光重合開始剤は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0290】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーケトン及びチオキサントンなどを挙げることができる。更にアジド化合物、チオ尿素化合物、メルカプト化合物などの助剤を1種以上組み合わせて用いてもよい。
【0291】
市販の光増感剤としては、日本化薬(株)製の「カヤキュアー(DMBI,EPA)」などが挙げられる。
【0292】
(熱ラジカル開始剤)
熱ラジカル開始剤としては、有機又は無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
【0293】
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
【0294】
〔反射防止フイルムの層構成〕
本発明の反射防止フイルムは、透明な基材(支持体とも言う。)上に、必要に応じて、後述のハードコート層を有し、その上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されている。反射防止フイルムは、最も単純な構成では、基材上に低屈折率層のみを塗設した構成である。更に反射率を低下させるには、反射防止層を、基材よりも屈折率の高い高屈折率層と、基材よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成することが好ましい。構成例としては、基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(基材又はハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層を有する基材上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に塗布することが好ましい。
【0295】
本発明の反射防止フイルムの好ましい層構成の例を下記に示す。下記構成において基材フイルムは、フイルムで構成された支持体を指している。
・基材フイルム/低屈折率層、
・基材フイルム/帯電防止層/低屈折率層、
・基材フイルム/防眩層/低屈折率層、
・基材フイルム/防眩層/帯電防止層/低屈折率層
・基材フイルム/ハードコート層/防眩層/低屈折率層、
・基材フイルム/ハードコート層/防眩層/帯電防止層/低屈折率層
・基材フイルム/ハードコート層/帯電防止層/防眩層/低屈折率層
・基材フイルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フイルム/ハードコート層/帯電防止層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フイルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フイルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フイルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フイルム/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/基材フイルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・基材フイルム/帯電防止層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/基材フイルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
・帯電防止層/基材フイルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層。
【0296】
本発明の反射防止フイルムは、光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。
高屈折率層は防眩性のない光拡散性層であってもよい。
また、帯電防止層は導電性ポリマー粒子又は金属酸化物微粒子(例えば、ATO、ITO)を含む層であることが好ましく、塗布又は大気圧プラズマ処理等によって設けることができる。防汚層を設ける場合は、上記構成の最上層に設けることができる。
【0297】
〔高屈折率層〕
本発明には高屈折率層を設けることが好ましい。高屈折率層は、例えば、バインダー、防眩性を付与するためのマット粒子、及び高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーから形成されることができる。
【0298】
[マット粒子]
高屈折率層には、防眩性付与の目的で、無機フィラー粒子より大きく、平均粒径が好ましくは0.1〜5.0μm、より好ましくは1.5〜3.5μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子が含有させることができる。マット粒子とバインダー間の屈折率差は、フイルムの白濁防止と、光拡散効果のよさの観点から、0.02〜0.20であることが好ましく、0.04〜0.10であることが特に好ましい。マット粒子のバインダーに対する添加量も、屈折率と同様の観点から、3〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
【0299】
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、シリカ粒子が好ましい。
マット粒子の形状は、真球又は不定形のいずれも使用できる。
【0300】
異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。
2種類以上のマット粒子を用いる場合には、両者の混合による屈折率制御を効果的に発揮するため、屈折率の差が0.02以上、0.10以下であることが好ましく、0.03以上、0.07以下であることが特に好ましい。
【0301】
またより大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フイルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フイルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与するマット粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なるマット粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0302】
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほどよい。例えば、平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を「粗大粒子」と定義した場合には、この粗大粒子の割合は、全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
【0303】
上記マット粒子は、形成された高屈折率層中のマット粒子量が、好ましくは10〜1000mg/m、より好ましくは100〜700mg/mとなるように高屈折率層に含有される。
【0304】
マット粒子の粒度分布は、コールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0305】
[高屈折率粒子]
高屈折率層には、層の屈折率を高めるため、及び硬化収縮を低減するために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下、さらに好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
【0306】
また、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた高屈折率層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の低屈折率層に用いられる無機微粒子と同じである。
【0307】
[無機フィラー]
高屈折率層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO、ZrO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITOとSiO等が挙げられる。TiO及びZrOが高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは、表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
【0308】
これらの無機フィラーの添加量は、高屈折率層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜70%である。
【0309】
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は、光学的に均一な物質として振舞う。
【0310】
本発明の高屈折率層のバインダー及び無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0311】
〔ハードコート層〕
ハードコート層は、反射防止フイルムに物理強度を付与するために、必要に応じて、支持体の表面に設けるものである。特に、支持体と上記高屈折率層(又は中屈折率層)の間に設けることが好ましい。またハードコート層は、層中に上記の高屈折率粒子などを含有させることにより、高屈折率層を兼ねることもできる。
【0312】
ハードコート層は、電離放射線硬化性樹脂の架橋反応、又は重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は重合反応させることにより形成することができる。
【0313】
またハードコート層は、上記の高屈折率層と同様、マット粒子や無機フィラーを、同様の量範囲で用いることができる。
【0314】
このようにして形成された本発明の反射防止フイルムは、ヘイズ値が好ましくは3〜70%、より好ましくは4〜60%の範囲にあり、そして450nmから650nmの平均反射率が好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.5%以下である。本発明の光学反射防止が、これらの範囲のヘイズ値及び平均反射率であることにより、透過画像の劣化を伴なわずに良好な防眩性及び反射防止性が得られる。
【0315】
[面状改良剤]
支持体上のいずれかの層を作製するのに用いる塗布液には、面状故障(塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥など)を改良するために、フッ素系及びシリコーン系の少なくともいずれかの面状改良剤を添加することが好ましい。
【0316】
面状改良剤は、塗布液の表面張力を1mN/m以上変化させることが好ましい。ここで、塗布液の表面張力が1mN/m以上変化するとは、面状改良剤を添加後の塗布液の表面張力が、塗布/乾燥時での濃縮過程を含めて、面状改良剤を添加してない塗布液の表面張力と比較して、1mN/m以上変化することを意味する。好ましくは、塗布液の表面張力を1mN/m以上下げる効果がある面状改良剤であり、更に好ましく2mN/m以上下げる面状改良剤、特に好ましくは3mN/m以上下げる面状改良剤である。
【0317】
フッ素系の面状改良剤の好ましい例としては、フルオロ脂肪族基を含有する化合物(「フッ素系面状改良剤」と略記する)が挙げられる。特に、下記一般式(6)のモノマーに相当する繰り返し単位、及び、下記一般式(7)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びこれらに共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体が好ましい。
【0318】
このような単量体としては、“Polymer Handbook”,第2版,J.Brandrup,Wiley lnterscience(1975)刊、第2章,P.1〜483記載のものを用いることが好ましい。
【0319】
具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる、付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等をあげることができる。
【0320】
一般式(6):
【0321】
【化42】

【0322】
一般式(6)において、R61は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、水素原子、メチル基が好ましい。U61は酸素原子、イオウ原子又は−N(R62)−を表し、酸素原子又は−N(R62)−が好ましく、酸素原子がより好ましい。R62は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基である。aは1〜6の整数を表し、1〜3が好ましく、1であることがより好ましい。bは1〜18の整数を表し、4〜12が好ましく、6〜8がより好ましい。
【0323】
フッ素系面状改良剤中には、一般式(6)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーが2種類以上構成成分として含まれていてもよい。
【0324】
一般式(7):
【0325】
【化43】

【0326】
一般式(7)において、R71は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、水素原子、メチル基が好ましい。U71は酸素原子、イオウ原子又は−N(R73)−を表し、酸素原子又は−N(R73)−が好ましく、酸素原子がより好ましい。R73は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0327】
72は水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、ポリ(アルキレンオキシ)基を含むアルキル基、又は置換もしくは無置換の芳香族基(例えば、フェニル基又はナフチル基)を表す。炭素数1〜12の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、又は総炭素数6〜18の芳香族が好ましく、炭素数1〜8の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基がより好ましい。
【0328】
以下でポリ(アルキレンオキシ)基について説明する。
ポリ(アルキレンオキシ)基については、ポリ(オキシアルキレン)基とも呼ぶ。
ポリ(アルキレンオキシ)基は、−(OR)−を繰り返し単位とした基であり、Rは2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基、例えば−CHCH−、−CHCHCH−、−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−が挙げられる。
【0329】
上記のポリ(オキシアルキレン)基中のオキシアルキレン単位(上記−OR−)は、ポリ(オキシプロピレン)におけるように同一であってもよく、また互いに異なる2種以上のオキシアルキレンが不規則に分布されたものであってもよい。該オキシアルキレン単位は、直鎖もしくは分岐状のオキシプロピレン又はオキシエチレン単位であってもよく、また直鎖もしくは分岐状のオキシプロピレン単位のブロック又はオキシエチレン単位のブロックのように存在するものであってもよい。
【0330】
このポリ(オキシアルキレン)鎖は1つ又はそれ以上の連鎖結合(例えば−CONH−Ph−NHCO−、−S−など:Phはフェニレン基を表す)で連結されたものも含むことができる。連鎖の結合が3つ又はそれ以上の原子価を有する場合には、これは分岐鎖のオキシアルキレン単位を得るための手段を供する。またこの共重合体を本発明に用いる場合には、ポリ(オキシアルキレン)基の分子量は250〜3000が適当である。
【0331】
ポリ(オキシアルキレン)アクリレート及びメタクリレートは、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名「プルロニック」{旭電化工業(株)製}、「アデカポリエーテル」{旭電化工業(株)製}、「カルボワックス」(グリコ・プロダクス製)、「トリトン(Toriton)」(ローム・アンド・ハース製)及び“P.E.G”{第一工業製薬(株)製}として販売されているものを公知の方法で、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリド又は無水アクリル酸等と反応させることによって製造できる。別に、公知の方法で製造したポリ(オキシアルキレン)ジアクリレート等を用いることもできる。
【0332】
本発明で用いられるフッ素系面状改良剤において、フッ素系面状改良剤の形成に用いられる全モノマー量に対する、一般式(6)で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの量が50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは70〜100モル%であり、特に好ましくは80〜100モル%の範囲である。
【0333】
本発明で用いられるフッ素系面状改良剤の好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、6,000〜80,000がより好ましく、8,000〜60,000が更に好ましい。ここで、質量平均分子量は、“TSKgel GMHxL”、“TSKgel G4000HxL”、“TSKgel G2000HxL”{何れも東ソー(株)製の商品名}のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量であり、含有量は、分子量が300以上の成分のピーク面積を100%とした場合の、前記分子量範囲のピークの面積%である。
【0334】
更に、本発明で用いられるフッ素系面状改良剤の好ましい添加量は、添加する層の塗布液に対して0.001〜5質量%の範囲であり、好ましくは0.005〜3質量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。
【0335】
以下、本発明に有用なフッ素系面状改良剤の具体的な構造の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0336】
【表10】

【0337】
【表11】

【0338】
【表12】

【0339】
【表13】

【0340】
本発明に有用な面状改良剤は、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン等)を含有する塗布液に用いることが好ましい。特に、ケトン系溶媒が好ましい。ケトン系溶媒の中でも、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが好ましい。
【0341】
面状改良剤は、層と層の界面の密着性を悪化させることがある。従って、層の表面に存在する面状改良剤を、該層の隣接層を形成する塗布液中に溶出させて、層と層の界面近傍に面状改良剤が残らないようにすることが好ましい。そのため、隣接層の塗布液中に面状改良剤を溶解する溶媒を含有させることが好ましい。そのような溶媒としては、上記ケトン系溶媒が好ましい。
【0342】
支持体上に形成する層の塗布液において、面状改良剤を添加するのが特に好ましいのは、ハードコート層、防眩性ハードコート層、帯電防止層、高屈折率層、低屈折率層を形成するための塗布液であり、特に好ましいのはハードコート層、防眩性ハードコート層、を形成するための塗布液である。
【0343】
〔支持体〕
本発明の反射防止フイルムの支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル{例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フイルム(株)製“TAC−TD80U”、“TAC−TD80UF”等}、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂{「アートン」(商品名)、JSR(株)製}、非晶質ポリオレフィン{「ゼオネックス」(商品名)、日本ゼオン(株)製}などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。また、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアシレートフィルム及びその製造法については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されており、ここに記載されたセルロースアシレートも本発明に好ましく用いることができる。
【0344】
[鹸化処理]
本発明の反射防止フイルムを液晶表示装置に用いる場合、通常、片面に粘着層を設けるなどしてディスプレイの最表面に配置する。該支持体が例えばトリアセチルセルロースの場合は、偏光板の偏光膜を保護する保護フイルムとしてトリアセチルセルロースを用いることができるため、本発明の反射防止フイルムをそのまま保護フイルムに用いることがコストの点から好ましい。
【0345】
上記のように、本発明の反射防止フイルムをディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フイルムとして使用する場合には、接着性を向上させるため、支持体上に低屈折率層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。
【0346】
鹸化処理は、公知の手法、例えば本発明の反射防止フイルムを、アルカリ液の中に適切な時間浸漬することにより実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和したりすることが好ましい。鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の支持体の表面が親水化される。
【0347】
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏光膜と接着させる際に偏光膜と反射防止フイルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
【0348】
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の支持体の表面の、水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0349】
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、通常以下の(1)及び(2)の2つの手段から選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止フイルムの反射防止層まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れる。
【0350】
(1)支持体上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)支持体上に反射防止層を形成する前又は後に、アルカリ液を反射防止フイルムの反射防止層を形成する側の面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗及び/又は中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0351】
〔塗膜形成方法〕
本発明の反射防止フイルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に限定されるものではない。
【0352】
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。
得られた塗布液を用いて、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書参照)等により支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。これらの塗布方式のうち、グラビアコート法で塗布すると、反射防止層の各層を形成する場合のように、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができるので好ましい。グラビアコート法の中でも、マイクログラビア法は膜厚均一性が高く、より好ましい。
【0353】
またダイコート法を用いても、塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができ、さらにダイコート法は前計量方式のため、膜厚制御が比較的容易であり、さらに塗布部における溶媒の蒸散が少ないため、好ましい。
【0354】
2層以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2761791号、同第2941898号、同第3508947号、同第3526528号の各明細書及び原崎勇次著、「コーティング工学」、253頁、{朝倉書店(1973年)}に記載がある。
【0355】
<偏光板>
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フイルムで主に構成される。本発明の反射防止フイルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フイルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フイルムが保護フイルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フイルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0356】
[偏光膜]
偏光膜としては、公知の偏光膜を用いることができ、また偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない、長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いることもできる。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない、長尺の偏光膜は以下の方法により作成される。
【0357】
すなわち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を、保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフイルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フイルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フイルム両端を保持する工程の出口におけるフイルムの進行方向と、フイルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するように、フイルム進行方向をフイルム両端を保持させた状態で屈曲させて行う延伸方法によって製造することができる。特に45゜傾斜させたものが、生産性の観点から好ましく用いられる。
【0358】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落[0020]〜[0030]に詳しい記載がある。
【0359】
[液晶表示装置との組み合わせ]
本発明の反射防止フイルムは、偏光膜の表面保護フイルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0360】
VAモードの液晶セルには、
(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、
(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル{“SID97,Digest of tech.Papers”(予稿集)、28集(1997年)、p.845記載}、
(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル{「日本液晶討論会」の予稿集、p.58〜59(1998年)記載}、及び、
(4)SURVAIVALモードの液晶セル(「LCDインターナショナル98」で発表)が含まれる。
【0361】
VAモードの液晶セル用には、2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムを、本発明の反射防止フイルムと組み合わせて作製した偏光板が好ましく用いられる。2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムの作製方法については、例えば特開2001−249223号公報、特開2003−170492号公報などに記載の方法を用いることが好ましい。
【0362】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させる、ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許第4583825号、同第5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0363】
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」(東レリサーチセンター発行)(2001年)などに記載されている。
【0364】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フイルムを、偏光膜の裏表2枚の保護フイルムの内、本発明の反射防止フイルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【実施例】
【0365】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0366】
<反射防止フイルム>
実施例1
【0367】
[酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子(P1)の調製]
1.シリカ系微粒子(A−1)の調製
平均粒径5nm、SiO濃度20質量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiOとして1.17質量%の珪酸ナトリウム水溶液9000gとAlとして0.83質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO・Al一次粒子分散液を調製した。
【0368】
この一次粒子分散液500gに純水1,700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、濃度0.5質量%の硫酸アンモニウム53,200gを添加し、ついでSiOとして濃度1.17質量%の珪酸ナトリウム水溶液3,000gとAlとしての濃度0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9,000gを添加して複合酸化物微粒子(1)の分散液を得た。
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった複合酸化物微粒子(1)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離して固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(A−1)分散液とした。
このシリカ系微粒子(A−1)の平均粒子径は58nm、MO/SiO(モル比)は0.0097、屈折率は1.30であった。
【0369】
2.アンチモン酸の調製
純水1800gに苛性カリ(旭硝子(株)製:純度85質量%)57gを溶解した溶液中に三酸化アンチモン(住友金属鉱山(株)製:KN 純度98.5質量%)111gを懸濁させた。この懸濁液を95℃に加熱し、次いで、過酸化水素水(林純薬(株)製:特級、純度35質量%)32.8gを純水110.7gで希釈した水溶液を9時間で添加(0.1mole/hr)し、三酸化アンチモンを溶解し、その後11時間熟成した。冷却後、得られた溶液から1000gを取り、この溶液を純水6000gで希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:pk−216)に通して脱イオン処理を行った。このときのpHは2.1、電導度は2.4mS/cmであった。
【0370】
3.酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子(P1)の調製
上記で調製したシリカ系微粒子(A−1)分散液を固形分濃度1質量%に希釈した分散液400gに固形分濃度1質量%のアンチモン酸40gを加え、70℃で10時間撹拌し、限外濾過膜で濃縮し、固形分濃度20質量%の酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子(B−1)分散液を調製した。
この酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子(B−1)分散液100gに純水300gとメタノール400gを加え、これに正珪酸エチル(SiO濃度28質量%)3.57gを混合し、50℃で15時間加熱撹拌してシリカ被覆層を形成した酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子(C−1)分散液を調製した。
この分散液を限外濾過膜を用い、メタノールにて溶媒置換するとともに固形分濃度20質量%になるまで濃縮した。ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度20質量%のシリカ系微粒子(C−1)のイソプロピルアルコール分散液とした。
【0371】
ついで、このシリカ被覆層を形成した酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子(C−1)のイソプロピルアルコール分散液100gにメタクリル系シランカップリング剤(信越化学(株)製:KBM−503)0.73gを加え、50℃で15時間加熱撹拌し、シランカップリング剤により表面処理されたシリカ被覆層を形成した酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子(P1)分散液を調製した。この粒子の屈折率は1.41、体積抵抗値は1500Ω/cm、平均粒子径は61nm、酸化アンチモン被覆層の厚さは1nmであった。
【0372】
[酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子(P2)の調製]
上記酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子(P1)の調製において、固形分濃度1質量%のアンチモン酸を100gに変えた以外は同様にして、表面処理した酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子(P2)分散液を調製した。この粒子の屈折率は1.46、体積抵抗値は1100Ω/cm、平均粒子径は61.5nm、酸化アンチモン被覆層の厚さは1.5nmであった。
【0373】
[ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製]
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物“PETA”{日本化薬(株)製}50.0部に、重合開始剤「イルガキュア184」{日本チバガイギー(株)製}2.0部、面状改良剤{本文例示化合物(F−63)}0.06部、オルガノシラン化合物“KBM5103”{信越化学工業(株)製}10.0部、トルエン38.5部を添加して撹拌した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51であった。
【0374】
さらにこの溶液に、ポリトロン分散機にて10000rpmで分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子“SX−350”{屈折率1.60、綜研化学(株)製}の30%トルエン分散液1.7部、及びポリトロン分散機にて10000rpmで分散した平均粒径3.5μmの架橋アクリル−スチレン粒子{屈折率1.55、綜研化学(株)製}の30%トルエン分散液13.3部を添加して撹拌した。次いで孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)を調製した。この塗布液による塗膜の屈折率は1.51であった。得られた防眩性ハードコート層用塗布液(HCL−1)の表面張力は32mN/mであった。
【0375】
[低屈折率層用塗布液(LL−1)の調製]
メチルエチルケトン200部に対して、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”{日本化薬(株)製}}(固形分濃度29%)124部、酸化アンチモン被覆シリカ系微粒子(P1)分散液(固形分濃度20%)120部、及び光ラジカル発生剤「イルガキュア970」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}2部を溶解した。塗布液全体の固形分濃度が6%となり、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンの比率が20対80になるようにシクロヘキサノンとメチルエチルケトンで希釈して低屈折率層用塗布液(LL−1)を調製した。
【0376】
〔反射防止フイルム(1)の作製〕
[ハードコート層(HC−1)の作製]
膜厚80μm、幅1340mmのトリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”{富士写真フイルム(株)製}上に、ハードコート層用塗布液(HCL−1)を、マイクログラビア塗工方式で、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら、160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm、照射量150mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、膜厚5.5μmの防眩性を有するハードコート層を作製した。このようにしてハードコート層(HC−1)を得た。
【0377】
[低屈折率層(LL1−1)の形成]
このようにして得られたハードコート層(HC−1)の上に、上記低屈折率層用塗布液(LL−1)を用い、低屈折率層膜厚が95nmになるように調節して、マイクログラビア塗工方式で低屈折率層(LL1−1)を形成し、反射防止フイルム試料を作製した。
【0378】
硬化条件を以下に示す。
(1)乾燥:80℃−120秒
(2)照射前熱処理:95℃−5分
(3)UV硬化:90℃−1分、酸素濃度が0.01体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度120mW/cm、照射量240mJ/cmの照射量とした。(4)照射後熱処理:30℃−5分
【0379】
[反射防止フイルムの鹸化処理]
上記の様にして得られた反射防止フイルム試料に、以下の鹸化処理を行った。
1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.005モル/Lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。
作製した反射防止フイルムを、上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬して水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬して希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。このようにして、鹸化処理済み反射防止フイルム(1)を作製した。
【0380】
実施例2〜56,比較例1〜28
[低屈折率層用塗布液(LL−2)〜(LL−84)の調製]
前記低屈折率層用塗布液(LL−1)の調製において、組成を下表14−1〜14−4に示すように変更した以外は(LL−1)と同様にして、低屈折率層用塗布液(LL−2)〜(LL−84)を調製した。
【0381】
【表14】

【0382】
【表15】

【0383】
【表16】

【0384】
【表17】

【0385】
表14−1〜14−4中で使用した化合物について以下に内容を示す。また、表中の部数は全て固形分の質量部を表す。
・(A)電離放射線硬化性化合物
含フッ素含シロキサンポリマー:((C)として用いてもよい)
P−3:本発明の例示化合物P−3
PP−5:本発明の例示化合物PP−5
P−3A:本発明の例示化合物P−3に対してシリコーン部分を含有しない構造。
DPHA:光重合性化合物“DPHA”、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、日本化薬(株)製。
・(C)一般式(I)で表されるポリシロキサン部分構造を含有する化合物
光重合性シリコーン:
RMS−33:“RMS−33”、Gelest(株)製
・光重合開始剤:
イルガキュア907:「イルガキュア907」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、分子量279。
・(B)導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子
P1、P2:前記酸化アンチモン被覆層を有するシリカ系微粒子
・その他の微粒子
MEK−ST−L:“MEK−ST−L”、微粒子シリカ分散物、溶媒MEK、平均粒子サイズ45nm、日産化学(株)製。
【0386】
[ゾル液aの調製]
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン“KBM5103”{信越化学工業(株)製}100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量1000〜20000の成分が100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。固形分の濃度が29%になるようにメチルエチルケトンで調節してゾル液aとした。
【0387】
〔反射防止フイルム(2)〜(84)の作製〕
実施例1と同様にして得られたハードコート層(HC−1)の上に、上記で得られた低屈折率層用塗布液(LL−2)〜(LL−84)を用い、実施例1の反射防止フイルム試料(1)と同様の条件で、塗布・硬化して、低屈折率層(LL1−2)〜(LL1−84)を形成し、次いで実施例1と同様に鹸化処理して、反射防止フイルム試料(2)〜(84)を作製した。
【0388】
[反射防止フイルムの評価]
得られたフイルムについて、以下の項目の評価を行った。
【0389】
(評価1)鏡面反射率
鏡面反射率の測定は、分光光度計“V−550”[日本分光(株)製]にアダプター“ARV−474”を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における出射角−5゜の鏡面反射率を測定し、450〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価することができる。
【0390】
(評価2)マジック拭き取り性
フイルムをガラス面上に粘着剤で固定し、25℃60RH%の条件下で黒マジック「マッキー極細(商品名:ZEBRA製)」のペン先(細)にて直径5mmの円形を3周書き込み、5秒後に10枚重ねに折り束ねたベンコット(商品名、旭化成(株))でベンコットの束がへこむ程度の荷重で20往復拭き取る。マジック跡が拭き取りで消えなくなるまで前記の書き込みと拭き取りを前記条件で繰り返し、拭き取りできた回数により防汚性を評価することが出来る。50回を上限としてふき取ることができた回数を評価した。
消えなくなるまでの回数は5回以上であることが好ましく、10回以上であることが更に好ましく、最も好ましくは50回以上である。
【0391】
(評価3)耐擦傷性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行った。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にスチールウール{(株)日本スチールウール製、No.0000}を巻いて、動かないようバンド固定した。その上で下記条件の往復こすり運動を与えた。
移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、
荷重:500g/cm、先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
○:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○△:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
△:弱い傷が見える。
△×:中程度の傷が見える。
×:一目見ただけで分かる傷がある。
【0392】
(評価4)密着性の評価
反射防止フイルム試料を温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した。各試料の低屈折率層を有する側の表面に、カッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを入れて、合計100個の正方形の升目を刻み、その面に日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(No.31B)を貼りつけた。30分経時したあとに、垂直方向にテープを素早く引き剥がし、剥がれた升目の数を数えて、下記4段階の基準で評価した。同じ密着評価を3回行って平均をとった。
◎:100升において剥がれが全く認められなかった。
○:100升において1〜2升の剥がれが認められた。
△:100升において3〜10升の剥がれが認められた(許容範囲内)。
×:100升において11升以上の剥がれが認められた。
【0393】
(評価5)表面抵抗値
反射防止フイルムの低屈折率層(最外層)を有する側の表面の表面抵抗を、超絶縁抵抗/微小電流計TR8601((株)アドバンテスト製)を用いて、25℃、相対湿度60%の条件下で測定した。
【0394】
反射防止フイルム試料(1)〜(84)の層構成と、得られた評価結果を表15−1〜15−2に示す。
(表15−1、15−2中の表面抵抗の数値、例えば3.10E+09は3.1×10を表す。)
【0395】
【表18】

【0396】
【表19】

【0397】
得られた反射防止フイルム試料(1)〜(84)に対して上記の評価を行った結果、アンチモン被覆シリカ系微粒子を含んだ低屈折率層を有する反射防止膜は、等量のシリカを含む低屈折率層を有する反射防止膜よりも、表面抵抗値が低く、反射率が低いことが分る。また、防汚耐性、密着性および耐擦傷性に優れていることが分る。
【0398】
実施例57
[ハードコート層用塗布液(HCL−2)の調製]
デソライトZ7404(ジルコニア微粒子含有ハードコート組成液、JSR(株)製)100質量部、DPHA(UV硬化性樹脂、日本化薬(株)製)31質量部、KBM−5103(シランカップリング剤、信越化学工業(株)製)10質量部、KE−P150(1.5μmシリカ粒子、日本触媒(株)製)8.9質量部、MXS−300(3μm架橋PMMA粒子、綜研化学(株)製)3.4質量部、MEK29質量部及びMIBK13質量部をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液(HCL−2)とした。
【0399】
〔反射防止フイルム(201)の作製〕
支持体としてトリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”{富士写真フイルム(株)製}をロール形態で巻き出して、上記のハードコート層用塗布液(HCL−2)を線数135本/インチ、深度60μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度10m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm、照射量250mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層(HC−2)を形成し、巻き取った。硬化後のハードコート層の厚さが4.0μmとなるようにグラビアロール回転数を調整した。このようにして得られたハードコート層(HC−2)の表面粗さは、中心線平均あらさ(Ra)=0.02μm、自乗平均面あらさ(RMS)=0.03μm、n点平均あらさ(Rz)=0.25μmであった。なお、Ra、RMS、Rzは、走査型プローブ顕微鏡システム“SPI3800”{セイコーインスツルメンツ(株)製}にて測定した。
【0400】
上記で形成されたハードコート層(HC−2)上に、低屈折率層用塗布液(LL−67)を用い、低屈折率層(LL1−67)と同様の条件で低屈折率層(LL2−67)を塗設して反射防止フイルム試料(267)を作製した。
【0401】
[反射防止フイルムの鹸化処理]
上記の様にして得られた反射防止フイルム試料(267)を、以下の鹸化処理を行った。
1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.005モル/Lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。
作製した反射防止フイルム試料(267)を、上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬して水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬して希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。このようにして、鹸化処理済み反射防止フイルムを作製した。
【0402】
〔反射防止フイルム付き偏光板の作製〕
延伸したポリビニルアルコールフィルムに、ヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。鹸化処理済みの反射防止フイルム(267)に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、反射防止フイルムの支持体側(トリアセチルセルロース)が偏光膜側となるように偏光膜の片側に貼り付けた。また、ディスコティック構造単位の円盤面が支持体面に対して傾いており、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と支持体面とのなす角度が、光学異方性層の深さ方向において変化している光学異方性層を有する視野角拡大フイルム「ワイドビューフィルムSA」{富士写真フイルム(株)製}を鹸化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜のもう一方の側に貼り付けた。このようにして反射防止フイルム付き偏光板(267P)を作製した。
【0403】
得られた反射防止フイルム付き偏光板(267P)について、前記に準じた評価を行った結果、低反射で、マジック拭き取り性・耐擦傷性に優れる反射防止フイルム付き偏光板が得られることが分かった。
【0404】
実施例58
[ハードコート層用塗布液(HCL−3)の調製]
MEK90部に対して、シクロヘキサノン10部、部分カプロラクトン変性の多官能アクリレート“DPCA−20”{日本化薬(株)製}85部、“KBM−5103”{シランカップリング剤:信越化学工業(株)製}10部、光重合開始剤「イルガキュア184」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}5部、面状改良剤{本文例示化合物(F−63)}0.04部を添加して攪拌した。次いで孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液(HCL−3)を調製した。
【0405】
〔反射防止フイルムの作製・評価〕
支持体としてのトリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”{富士写真フイルム(株)製}上に、ハードコート層用塗布液(HCL−3)を、実施例2−67に準じて塗布・硬化した。その際硬化後のハードコート層(HC−3)の厚さが4.5μmとなるように、グラビアロール回転数を調整した。
【0406】
上記で形成されたハードコート層(HC−3)上に、低屈折率層用塗布液(LL−67)を用い、低屈折率層(LL1−67)と同様の条件で低屈折率層(LL3−67)を塗設して反射防止フイルム試料(367)を作製し、次いで該反射防止フイルム試料(367)の鹸化処理を行った。
得られた反射防止フイルム試料(367)について、前記に準じた評価を行った結果、低反射で、マジック拭き取り性・耐擦傷性に優れる反射防止フイルムが得られることが分かった。
【0407】
実施例401〜406、比較例401〜404
[低屈折率層用塗布液(LL−85)〜(LL−94)の調製]
以下の表16に示す組成の低屈折率層用塗布液を調製した。塗布液の固形分が8質量%になるようMEKとシクロヘキサノンの95対5(質量比)の混合液で溶解して、調製した。
【0408】
【表20】

【0409】
表16で使用した化合物の中で表14−1〜14−4で使用していないものについて、以下に内容を示す。また、表中の部数は全て固形分(非揮発分)の質量部を表す。
・(B)導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子:
ATO被覆シリカP3:酸化アンチモン被覆層を有するシリカ粒子P1において酸化アンチモンの代わりにATOにより被覆されているシリカ粒子。粒子の屈折率1.41、体積抵抗値は1600Ω/cm、平均粒子径は61nm、ATO被覆層の厚さは1nm。
ITO被覆シリカP4: 酸化アンチモン被覆層を有するシリカ粒子P1において酸化アンチモンの代わりにITOにより被覆されているシリカ粒子。粒子の屈折率は1.42、体積抵抗値は1300Ω/cm、平均粒子径は61nm、ITO被覆層の厚さ1nm。
・その他の微粒子
IPA−ST−L:“IPA−ST−L”商品名、日産化学製、シリカ微粒子分散物、溶媒IPA、平均粒子径約45nm
・光重合開始剤:
イルガキュア369:“イルガキュア369”商品名、チバスペシャリティーケミカルズ
【0410】
実施例58で作製したハードコート層(HC−3)の上に、上記低屈折率層用塗布液(LL−85)〜(LL−94)を用い、硬化後膜厚が95nmになるようにダイコーターで塗布し低屈折率層を塗設して反射防止膜試料(401)〜(410)を作製した。硬化条件は、80℃―120秒の乾燥の後、酸素濃度0.01%以下になるよう窒素パージし60℃に保温し、240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度120mW/cm、500mJ/cmの照射量とした。
このようにして得られた試料を用いて、前記評価(1)〜(3)及び(5)を行った。それに加え以下の評価(6)を行った。
【0411】
(評価6)防塵性
各反射防止フイルム試料の透明支持体側をCRT表面に張り付け、0.5μm以上のホコリ及びティッシュペーパー屑を、1ft3(立方フィート)当たり100〜200万個有する部屋で24時間使用した。反射防止膜100cm2当たり、付着したホコリとティッシュペーパー屑の数を測定し、それぞれの結果の平均値が20個未満の場合をA、20〜49個の場合をB、50〜199個の場合をC、200個以上の場合をDとして評価した。
結果を表17に示す。
【0412】
【表21】

【0413】
表17によれば、本発明の導電性酸化物被覆層を有する微粒子を含有する試料は低反射で、表面抵抗が低く、防塵性と耐擦傷性に優れることが分かる。また、更に、本発明の(D)の成分である電離放射線硬化型の含フッ素防汚剤を併用することで、マジックふき取り性を劇的に改良することができ、防塵性の悪化も認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一層の屈折率1.28〜1.48の層のうち透明支持体からもっとも遠くに位置する層が、少なくとも以下の成分を含有する塗布組成物を塗設することにより形成されていることを特徴とする反射防止フイルム。
(A)電離放射線硬化性化合物
(B)導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子
【請求項2】
前記導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(B)が多孔質無機微粒子または内部に空洞を有する微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フイルム。
【請求項3】
前記導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(B)が酸化アンチモン被覆層を有するシリカ系微粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フイルム。
【請求項4】
前記導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(B)が多孔質シリカ系微粒子または内部に空洞を有するシリカ系微粒子であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の反射防止フイルム。
【請求項5】
前記導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(B)が、導電性金属酸化物被覆層の上にシリカ被覆層、または下記一般式(3)で表されるオルガノシランの加水分解物及び/又はその部分縮合物により表面処理されたシリカ被覆層を持つことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の反射防止フイルム。
一般式(3): (R30m1Si(X314−m1
(一般式(3)中、R30は、置換もしくは無置換のアルキル基又は、置換もしくは無置換のアリール基を表す。X31は水酸基又は加水分解可能な基を表す。m1は1〜3の整数を表す。)
【請求項6】
前記導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(B)の屈折率が1.35〜1.60の範囲にあり、体積抵抗値が10〜5000Ω/cmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の反射防止フイルム。
【請求項7】
前記導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子(B)の平均粒子径が5〜300nmの範囲にあり、導電性金属酸化物被覆層の厚さが0.5〜30nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の反射防止フイルム。
【請求項8】
前記化合物(A)が、1分子中に少なくとも2個以上のエチレン性不飽和基を含有することを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の反射防止フイルム。
【請求項9】
前記化合物(A)が、パーフルオロオレフィン重合単位及び(メタ)アクリロイル基含有重合単位をそれぞれ少なくとも1種含有する含フッ素ポリマーであることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の反射防止フイルム。
【請求項10】
前記塗布組成物が、さらに
(C)下記一般式(I)で表されるポリシロキサン部分構造を含有する化合物
を有することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の反射防止フイルム。
一般式(I)
【化1】



{一般式(I)中、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。pは10〜500の整数を表す。}
【請求項11】
前記電離放射線硬化性化合物(A)が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の反射防止フイルム。
一般式(1):
【化2】



{一般式(1)中、L11は炭素数1〜10の連結基を表し、s1は0又は1を表す。R11は水素原子又はメチル基を表す。A11は側鎖に水酸基を持つ繰り返し単位を表す。Y11はポリシロキサン構造を主鎖に含む構成成分を表わす。x、y、及びzは、Y11以外の全繰返し単位を基準とした場合のそれぞれの繰返し単位のモル%を表し、30≦x≦60、30≦y≦70、0≦z≦40を満たす値を表す。ただし、x+y+z=100(モル%)である。uは共重合体中の構成成分Y11の質量%を表し、0.01≦u≦20である。}
【請求項12】
前記電離放射線硬化性化合物(A)が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれかに記載の反射防止フイルム。
一般式(2):
【化3】



{一般式(2)中、Rf21は炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を表し、Rf22は炭素数1〜30の直鎖、分岐又は脂環構造を有する含フッ素アルキル基を表し、エーテル結合を有していてもよく、A21は架橋反応に関与し得る反応性基を有する構成単位を表し、B21は任意の構成成分を表す。R21及びR22は、同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。p1は10〜500の整数を表す。R23〜R25は、互いに独立に、置換又は無置換の1価の有機基又は水素原子を表し、R26は水素原子又はメチル基を表わす。L21は炭素数1〜20の任意の連結基又は単結合を表す。a〜dはそれぞれポリシロキサンを含有する重合単位を除く各構成成分のモル分率(%)を表し、それぞれ10≦a+b≦55、10≦a≦55、0≦b≦45、10≦c≦50、0≦d≦40の関係を満たす値を表す。eはポリシロキサンを含有する重合単位の、他の成分全体の質量に対する質量分率(%)を表し、0.01<e<20の関係を満たす。}
【請求項13】
前記塗布組成物が、さらに
少なくとも1種の電離放射線硬化型の含フッ素防汚剤(D)を含有することを特徴とする請求項1〜12に記載の反射防止フイルム。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれかに記載の反射防止フイルムを、少なくとも一方の側に備えたことを特徴とする偏光板。
【請求項15】
請求項1〜請求項13のいずれかに記載の反射防止フイルム及び請求項14に記載の偏光板のうちの少なくとも一つが配置されていることを特徴とする画像表示装置。

【公開番号】特開2007−114772(P2007−114772A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259566(P2006−259566)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】