説明

反応装置、その反応装置を用いた発電装置、及び、電子機器

【課題】反応容器内の気圧をセンシングすることのできる反応装置、その反応装置を用いた発電装置、及び、電子機器を提供する。
【解決手段】複合型マイクロ反応装置100は、断熱真空容器(反応容器)150と、断熱真空容器150内に収容され、異なる温度で反応物の反応を起こす改質器及び一酸化炭素除去器と、断熱真空容器150内の真空度(気圧)を測定するマイクロ真空センサ(気圧センサ)1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応物を反応させる反応装置、特に水素改質を行う小型な反応装置、その反応装置を用いた発電装置、及び、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路などの半導体デバイス製造技術で蓄積された微細加工技術を利用して、シリコンあるいはガラス基板上にミリメートルあるいはマイクロメートルオーダーの流路を形成して、ここに流体を供給して化学反応を起こさせる化学反応装置、いわゆるマイクロリアクタが知られている。マイクロリアクタの中には高温で動作するものがあり、例えば、ノートパソコンや携帯電話などの携帯電子機器の電源として期待されている燃料電池において、発電セルに供給する水素をメタノールの水蒸気改質反応によって生成するマイクロ改質器が知られている。水素の原料となるメタノールは、マイクロ改質器の流路内に蒸気として導入され、流路の裏面に形成された薄膜ヒータによって約300〜400℃に温度管理された流路内で、流路内に設けられた触媒による化学反応によって水素を生成する。
マイクロリアクタの流路内で起こる化学反応を管理する温度が、例えば上記改質反応のように300℃程度になるような場合、マイクロリアクタから雰囲気への熱流出や熱輻射によるエネルギー流出などの熱損失が大きくなり、エネルギー利用効率が小さくなってしまう。そこで、エネルギー利用効率を向上させるために、熱損失を軽減させる方法として、マイクロリアクタを内壁に輻射シールドとして反射率の高い材料が成膜された容器(断熱真空容器)内に収め、さらに断熱真空容器内の気体を真空排気する方法がある。また、マイクロリアクタから雰囲気への熱流出は、断熱真空容器内の雰囲気の圧力に大きく依存しており、10Pa以上の圧力で圧力増大とともに顕著に増大する。そのため、断熱真空容器内は10Pa以下とすることが望ましいとされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、半導体分野の微細加工技術を利用して、ミリメートルあるいはマイクロメートルオーダーの様々なマイクロセンサが知られている。マイクロ真空センサはその一例であり、マイクロ真空センサには、そのセンシングの原理の違いによっていくつかの種類があるが、その一つに、センサの加熱部から雰囲気への熱伝導率あるいは熱流出が雰囲気の圧力(真空度)によって変化することを利用した熱伝導型マイクロ真空センサがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−6265号公報
【特許文献2】特開平7−325002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、断熱真空容器(反応容器)内の真空度(気圧)は、真空封止直後に10Pa以下の圧力であっても、真空封止後しばらくしてから真空度が悪くなるということが起こりうる。その要因として、例えば、断熱真空容器の内壁あるいはマイクロリアクタ本体に吸着した気体分子が放出され、断熱真空容器内の真空度が低下することが考えられる。また、非常に微細なリークによって、数十時間あるいは数百時間というような長い時定数で、断熱真空容器内の真空度が少しずつ低下していくことが考えられる。断熱真空容器内の真空度が低下した状態でマクロリアクタを運転させることは、熱損失の増大によりエネルギー利用効率が悪くなるだけでなく、断熱真空容器の異常な温度上昇を伴い、安全面の観点からも問題がある。そのため、マイクロリアクタを起動させる前に断熱真空容器内の真空度の確認をすることが望ましいとされている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、断熱真空容器(反応容器)内の真空度(気圧)をセンシングすることのできる反応装置、その反応装置を用いた発電装置、及び、電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、反応容器と、
前記反応容器内に収容され、反応物の反応を起こす複数の反応器と、
前記反応容器内の気圧を測定する気圧センサと、を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の反応装置において、
前記複数の反応器は異なる温度で反応物の反応を起こす反応器を含み、
前記異なる温度で反応物の反応を起こす反応器間を連通する連通流路と、
前記異なる温度で反応物の反応を起こす反応器間に設けられた断熱室と、を備え、
前記気圧センサが前記断熱室内に配されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の反応装置において、
前記真空センサは、前記反応器の表面に形成されたヒータを備え、
前記ヒータが形成された箇所における反応器の裏面が前記ヒータ側に窪んでいることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の反応装置において、
前記ヒータは、前記反応器の表面に成膜された密着層と、前記密着層上に成膜された拡散防止層と、前記拡散防止層上に成膜された発熱層とを備えた構造であることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の反応装置において、
前記反応器の表面に、窒化シリコン膜が成膜され、前記窒化シリコン膜上に前記ヒータが形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応装置において、
前記複数の反応器に熱を供給する熱供給源を備え、
前記熱供給源が、反応物としての燃料の燃焼反応を促進する燃焼用触媒を有するものであることを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の反応装置において、
前記複数の反応器のうち一方の反応器は、反応物としての燃料と水から水素を生成する改質器であり、
他方の反応器は、反応物としての一酸化炭素を酸化させて除去する一酸化炭素除去器であることを特徴とする。
【0012】
請求項8の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の反応装置において、
前記反応器は、複数の基板が積層されてなり、互いに接合する接合面のうち少なくとも一方に溝が形成され、この溝が形成された基板に、前記溝を他の基板で覆うことによって前記溝が形成された基板との間に反応物が供給される流路が形成されており、
前記複数の基板がガラス製、シリコン製、セラミック製、金属製あるいはこれらを組み合わせたものであることを特徴とする。
【0013】
請求項9の発明は、発電装置において、請求項1に記載の前記反応器により生成される改質ガスから電気化学反応により電力を取り出す発電セルをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
請求項10の発明は、電子機器において、請求項9に記載の前記発電装置を電力供給源として備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、気圧センサによって反応容器内の気圧をセンシングすることができる。その結果、真空度の悪い状態で反応物の反応を行うことがないので、無駄な電力を消費することがなく、また、反応容器内の温度の異常上昇を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
[第一の実施の形態]
図1は、燃料電池(発電セル)に供給する水素を改質する複合型マイクロ反応装置100の外観斜視図、図2は、複合型マイクロ反応装置100の正面断面図(後述する図4〜図7における切断線II−IIに沿って切断した際の矢視断面図)、図3は、図2における切断線III−IIIに沿って切断した際の矢視断面図である。
図1〜図3に示すように、ガラス製又は金属製の断熱パッケージ150は中空を有した六面体状の箱体であり、断熱パッケージ150の内壁面には、熱源となる赤外線に対して断熱パッケージ150よりも高い反射性を備える赤外線反射膜(例えば、Au、Ag、Al)が成膜され、断熱パッケージ150の中空の圧力が10Pa以下、望ましくは1Pa以下に減圧された状態に保たれている。
【0017】
また、断熱パッケージ150と同じ材料で形成された供給排出部材151が断熱パッケージ150を貫通している。この供給排出部材151は、改質燃料ガス供給用の燃料供給流路と、空気供給用の二つの吸気流路と、燃焼ガス供給用の燃焼ガス供給流路と、生成ガス排出用の生成ガス排出流路と、燃焼排ガス排出用の排ガス排出流路からなっている。そして、後述するように、配管部151a、151b、151c、151d、151e、151fが、それぞれ排ガス排出口、燃料供給口、水素排出口、一酸化炭素除去器の空気供給口、燃焼器の空気供給口、燃焼燃料供給口となる。
【0018】
また、リード線109〜112やマイクロ真空センサ(気圧センサ)1のリード線(図示しない)が、断熱パッケージ150を貫通している。リード線109〜112やマイクロ真空センサ1のリード線にはコバール線、鉄ニッケル合金線又はジュメット線が用いられている。供給排出部材151、リード線109〜112、マイクロ真空センサ1のリード線が断熱パッケージ150を貫通した箇所は封着剤によってシーリングされている。
【0019】
断熱パッケージ150内には、上基板102と中基板103とを接合してなる反応装置本体101が収容され、更に反応装置本体101の下面、即ち中基板103の下面に接合した下基板120も断熱パッケージ150内に収容されている。なお、反応装置本体101が、高温な水蒸気改質反応が起こる改質器(反応器)と、低温な選択酸化反応が起こる一酸化炭素除去器(反応器)の複合体となり、中基板103と中基板103に接合した状態の下基板120とが燃焼器を形成する。
【0020】
図4は、上基板102の両面のうち中基板103との接合面を示した図面であって、中基板103側から見た際の平面図である。図4に示すように、上基板102の両面のうち中基板103との接合面には、いずれも溝である、燃料供給流路部161と、改質反応炉となる改質流路部162と、連通溝163と、一酸化炭素除去器の空気供給流路部164と、一酸化炭素除去反応炉となる一酸化炭素除去流路部165とが凹設されている。更に、上基板102の中央部において厚さ方向に貫通した矩形状の貫通孔166が形成されている。
燃料供給流路部161が、上基板102の縁102aから縁102aに隣接する縁102bにかけて沿うように形成され、燃料供給流路部161の一端部が上基板102の縁102aから連なり、燃料供給流路部161の他端部が改質流路部162の一端部に連なっている。
改質流路部162は、貫通孔166の左側においてジグザグ状に形成されている。連通溝163は貫通孔166の後ろ側(下流側)において上基板102の縁102aに対向する縁102dに沿って形成され、連通溝163の一端部が改質流路部162の他端部に連なり、連通溝163の他端部が後述の一酸化炭素除去器の空気供給流路部164と合流し、一酸化炭素除去流路部165に連なっている。
一酸化炭素除去器の空気供給流路部164は上基板102の縁102aから縁102cにかけて沿うように形成され、一酸化炭素除去器の空気供給流路部164の一端部が上基板102の縁102aから連なり、一酸化炭素除去器の空気供給流路部164の他端部が連通溝163の他端部と合流し、一酸化炭素除去流路部165に連なっている。
一酸化炭素除去流路部165は貫通孔166の右側においてジグザグ状に形成され、一酸化炭素除去流路部165の一端部が連通溝163及び一酸化炭素除去器の空気供給流路部164の合流部から連なり、一酸化炭素除去流路部165の他端部が上基板102の縁102aまで連なっている。
なお、燃料供給流路部161の一端部、一酸化炭素除去器の空気供給流路部164の一端部及び一酸化炭素除去流路部165の他端部は、ともに供給排出部材151の一部(151b、151d及び151c)とそれぞれ嵌合し、さらに上基板102の縁102aには、供給排出部材151に嵌合する溝201,205,206が凹設されている。
【0021】
図5は、中基板103の両面のうち上基板102との接合面を示した図面であって、上基板102側から見た際の平面図である。図5に示すように、中基板103の両面のうち上基板102との接合面には、いずれも溝である、燃料供給流路部171と、改質反応炉となる改質流路部172と、連通溝173と、一酸化炭素除去器の空気供給流路部174と、一酸化炭素除去反応炉となる一酸化炭素除去流路部175とが凹設されている。更に、中基板103の中央部にはコ字状の貫通孔176が形成されている。そして、貫通孔176に突出してマイクロ真空センサ1が設けられている。すなわち、マイクロ真空センサ1は、上基板102に形成された貫通孔166、中基板103の貫通孔176及び後述の下基板120の貫通孔156によって形成される断熱室104内に配されている。なお、マイクロ真空センサ1の説明については、後述する。
燃料供給流路部161の一端部が上基板102の縁102aまで連なっているのに対して、燃料供給流路部171の一端部が、上基板102の縁102aに対応する中基板103の縁103aに達していないことを除き、中基板103と上基板102の接合面に関して、燃料供給流路部171と燃料供給流路部161は互いに面対称であり、同様に、改質流路部172と改質流路部162が、連通溝173と連通溝163が互いに面対称である。また、一酸化炭素除去器の空気供給流路部164の一端部が上基板102の縁102aまで連なっているのに対して、一酸化炭素除去器の空気供給流路部174の一端部が、上基板102の縁102aに対応する中基板103の縁103aに達していないことを除き、一酸化炭素除去器の空気供給流路部174と一酸化炭素除去器の空気供給流路部164が面対称であり、貫通孔176に後述の突出部分103eがあることを除き、貫通孔176と貫通孔166が互いに面対称である。一酸化炭素除去流路部165の他端部が上基板102の縁102aまで連なっているのに対して、一酸化炭素除去流路部175の他端部が、上基板102の縁102aに対応する中基板103の縁103aに達していないことを除き、一酸化炭素除去流路部175と一酸化炭素除去流路部165は、互いに面対称である。また、中基板103の縁103aには、供給排出部材151に嵌合する切欠き211〜216が形成されている。燃料供給流路部171、一酸化炭素除去器の空気供給流路部174、一酸化炭素除去流路部175は中基板103の縁103aまで連なっていないが、燃焼供給流路部171の端部が切欠き212の近くに、一酸化炭素除去器の空気供給流路部174の端部が切欠き214の近くに、一酸化炭素除去流路部175の端部が切欠き213の近くにある。
【0022】
改質流路部162,172の壁面には、アルミナを担体として改質触媒(例えば、Cu/ZnO系触媒)が担持され、一酸化炭素除去流路部165,175の壁面には、アルミナを担体として一酸化炭素選択酸化触媒(例えば、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム)が担持されている。なお、これら触媒は、アルミナゾルを塗布した後にウォッシュコート法で形成したものである。
【0023】
上基板102が中基板103に接合されており、燃料供給流路部171と燃料供給流路部161が重なっており、同様に、改質流路部172と改質流路部162が、連通溝173と連通溝163が、一酸化炭素除去器の空気供給流路部174と一酸化炭素除去器の空気供給流路部164が、一酸化炭素除去流路部175と一酸化炭素除去流路部165が、貫通孔176と貫通孔166とが重なっている。
【0024】
上基板102と中基板103は例えば、ガラス材料からなり、特に熱膨張係数が3×10-6/℃程度で可動イオンとなるアルカリ金属(例えば、Na、Li等)を含有したガラス材料からなる。また、上基板102と中基板103が陽極接合法により接合するため、上基板102と中基板103のどちらか一方の接合面には陽極接合のために他方のガラスに含まれる酸素原子と結合する金属膜又はシリコン膜を有する陽極接合用膜が気相成長法(例えば、スパッタリング法、蒸着法)により成膜されている。本実施形態では、中基板103の上基板102との接合面に金属膜300が成膜されているものとする。なお、上基板102と中基板103のうちのどちらか一方がガラス材料ではなく金属又はシリコンからなるものとしても良い。上基板102には、縁102aに対向する縁102dと、縁102cとの間の角部を切り欠いた面取縁102eが形成されており、中基板103の接合面に陽極接合用膜が成膜されている場合、この陽極接合用膜が面取縁102eによって一部露出されるので陽極接合時に電圧を印加する電極端子に容易に接続しやすくなる。これにより、上基板102と中基板103が容易に陽極接合を行うことができる。
【0025】
上基板102と中基板103の接合体である反応装置本体101のうち、貫通孔166,176よりも左側に位置する改質流路部162及び改質流路部172で囲まれた流路での部分が、燃料と水の混合気から水素を生成する改質反応が行われる改質器となり、貫通孔166,176よりも右側に位置する一酸化炭素除去流路部165及び一酸化炭素除去流路部175で囲まれた流路での部分が、その改質器で生成された生成物の中に含まれる一酸化炭素を優先的に酸化させることで除去する一酸化炭素除去器となる。具体的には改質流路部162及び改質流路部172で囲まれた流路で、燃料と水の混合気から水素を生成する改質反応が行われ、一酸化炭素除去流路部165及び一酸化炭素除去流路部175で囲まれた流路で、改質反応時に生成された生成物の中に含まれる一酸化炭素を酸化させる。また、連通溝163及び連通溝173で囲まれた流路が改質器と一酸化炭素除去器とを連通する連通流路となる。さらに、貫通孔176及び貫通孔166により改質器と一酸化炭素除去器とに温度差が形成されている。
【0026】
図6は、中基板103の両面のうち下基板120との接合面を示した図面であって、下基板120側から見た際の平面図である。図6に示すように、中基板103の両面のうち下基板120との接合面には、電熱パターン(金属膜ヒータ)106及び電熱パターン(金属膜ヒータ)136が形成されている。また、電熱パターン106の形成面に対して垂直な方向に投影視して、電熱パターン106が改質流路部172に重なり、電熱パターン136が一酸化炭素除去流路部175に重なっている。電熱パターン106の両端部の端子部107,108が他の部分よりも幅広く、電熱パターン136の両端部の端子部137,138が他の部分よりも幅広い。端子部107,108は、縁103aに対向する縁103d近傍にあり、端子部137,138は縁103a近傍にある。そして、端子部107にリード線109が接合され、端子部108にリード線110が接合され、端子部137にリード線111が接合され、端子部138にリード線112が接合されている。電熱パターン106,136は、端子部107,108,137,138の部分を除いて保護絶縁膜によって被覆されている。
【0027】
図7は、下基板120の両面のうち中基板103との接合面を示した図面であって、中基板103側から見た際の平面図である。図7に示すように、下基板120の両面のうち中基板103との接合面には、いずれも溝であり、電熱パターン106を収納し燃焼反応炉となる燃焼流路部121と、燃焼流路部121と独立して設けられた端子部収納室123,124と、燃焼流路部121と端子部収納室123,124との間を連通する連通溝125,126と、リード線を外部に引き出す通し溝127,128と、電熱パターン136を収納するヒータ収容溝129と、燃焼燃料供給流路部131と、燃焼器の空気供給流路部132と、連通溝133と、排ガス排出流路部134とが凹設されている。更に、下基板120の中央部において矩形状の貫通孔156が形成されている。また、下基板120の縁120aには、供給排出部材151に嵌合する溝222,223,224が凹設されている。下基板120には、ヒータ収容溝129の両端から下基板120の縁120aまで連通する通し溝141、142が設けられている。
【0028】
燃焼燃料供給流路部131の一端部が下基板120の縁120aから連なり、燃焼器の空気供給流路部132の一端部が下基板120の縁120aから連なる。連通溝133は貫通孔156の周縁の一辺側において下基板120の縁120aから縁120cにかけて沿うように形成され、連通溝133の一端部が燃焼燃料供給流路部131の他端部及び燃焼器の空気供給流路部132の他端部の合流部から連なり、連通溝133の他端部が燃焼流路部121の一端部まで連なっている。燃焼流路部121は、貫通孔156の左側においてジグザグ状に形成されている。排ガス排出流路部134が下基板120の縁120bから縁120aにかけて沿うように形成され、排ガス排出流路部134の一端部が燃焼流路部121の他端部から連なり、排ガス排出流路部134の他端部が下基板120の縁120aまで連なっている。
端子部収納室123,124は下基板120の縁120d近傍に凹設され、端子部収納室123,124と燃焼流路部121が連通溝125,126によって通じ、端子部収納室123,124と下基板120の縁120dが通し溝127,128によって通じ、通し溝127,128の端部が下基板120の側端面において開口している。
【0029】
溝201(図4)、切欠き211(図5、6)、排ガス排出流路部134の他端部(図7)は、上基板102、中基板103及び下基板120を重ね合わせることによって排ガス排出口となり、燃料供給流路部161の一端部(図4)、切欠き212(図5、6)、溝222(図7)は、上基板102、中基板103及び下基板120を重ね合わせることによって燃料供給口となり、一酸化炭素除去流路部165の他端部(図4)、切欠き213、溝223(図7)は、上基板102、中基板103及び下基板120を重ね合わせることによって水素排出口となり、一酸化炭素除去器の空気供給流路部164の一端部(図4)、切欠き214(図5、6)、溝224(図7)は、上基板102、中基板103及び下基板120を重ね合わせることによって一酸化炭素除去器の空気供給口となり、溝205(図4)、切欠き215(図5、6)、燃焼器の空気供給流路部132の一端部(図7)は、上基板102、中基板103及び下基板120を重ね合わせることによって燃焼器の空気供給口となり、溝206(図4)、切欠き216(図5、6)、燃焼燃料供給流路部131の一端部(図7)は、上基板102、中基板103及び下基板120を重ね合わせることによって燃焼燃料供給口となる。
そして、供給排出部材151は、排ガス排出口、燃料供給口、水素排出口、一酸化炭素除去器の空気供給口、燃焼器の空気供給口、燃焼燃料供給口にそれぞれ挿入される配管部151a、151b、151c、151d、151e、151fからなっている。(図1、3参照)
【0030】
ヒータ収容溝129は貫通孔156の右側においてジグザグ状に形成され、ヒータ収容溝129の一端部が突き当たった状態とされ、ヒータ収容溝129の他端部が二股に分かれて下基板120の縁120aまで連なっている。
接合面に関して、燃焼流路部121と改質流路部172は互いにほぼ面対称であり、ヒータ収容溝129と一酸化炭素去流路部175がほぼ面対称である。
【0031】
燃焼流路部121の壁面には、アルミナを担体として燃焼触媒(例えば、白金)が担持されている。
【0032】
下基板120も特に可動イオンとなるアルカリ金属(例えば、Na、Li等)を含有したガラス材料からなる。また、下基板120と中基板103が陽極接合法により接合するために、下基板120と中基板103のどちらか一方の接合面には金属膜又はシリコン膜が気相成長法(例えば、スパッタリング法、蒸着法)により成膜されている。本実施形態では、中基板103の下基板210との接合面に金属膜300が成膜されているものとする。なお、下基板120、上基板102及び中基板103の材料としてパイレックス(登録商標)ガラスを用いた場合、熱膨張率は約3×10-6/℃である。上基板102には、縁120aに対向する縁120dと、縁120bとの間の角部を切り欠いた面取縁120eが形成されており、中基板103の接合面に陽極接合用膜が成膜されている場合、この陽極接合用膜が面取縁120eによって一部露出されるので陽極接合時に電圧を印加する電極端子に容易に接続しやすくなる。
【0033】
中基板103と下基板120が接合された状態では、電熱パターン106が燃焼流路部121、連通溝125,126に収納され、端子部107が端子部収納室123に収納され、端子部108が端子部収納室124に収容され、リード線109,110が通し溝127,128に嵌め込まれている。電熱パターン136がヒータ収容溝129に収容され、リード線111,112が通し溝141、142を介してヒータ収容溝129の端部に嵌め込まれている。
【0034】
上基板102、中基板103及び下基板120を重ね合わせることによって、上基板102の貫通孔166、中基板103の貫通孔176及び下基板120の貫通孔156により断熱室104が形成される。そして、この断熱室104内(中基板103の貫通孔176)にマイクロ真空センサ1が配置されている。すなわち、マイクロ真空センサ1は、上基板102の各縁102a,102b,102c、102d、中基板103の各縁103a,103b,103c、103d及び下基板120の各縁120a,120b,120c、120dから突出することなく、反応装置本体101内に収納されている。
【0035】
次に、マイクロ真空センサ1について説明する。図8(a)は、マイクロ真空センサ1の下基板120側から見た際の平面図、図8(b)は、マイクロ真空センサ1の切断線VII−VIIに沿って切断した際の矢視断面図である。
マイクロ真空センサ1は、熱伝導型真空センサであり、上記中基板103の一部(貫通孔176に突出した突出部分103e)に、加熱用の薄膜ヒータ2と、薄膜ヒータ2に電流を印加する電流電極3と、薄膜ヒータ2の電圧を測定する電圧電極4とから構成されている。そして、薄膜ヒータ2に電流を印加することによって生じる発熱(ジュール発熱)から雰囲気に奪われる熱量が断熱真空容器150内の雰囲気の圧力によって変化することを利用したセンサである。このようなマイクロ真空センサ1は、断熱真空容器150内の真空度が所定値未満(例えば、10Pa未満)である場合に、反応装置100を起動させ、所定値以上(例えば、10Pa以上)の場合に、反応装置100の起動をさせないようにセンシングを行っている。
【0036】
薄膜ヒータ2は、中基板103の突出部分103eのうち、下基板120との接合面である下面中央部に、電熱パターン106と同様にジグザグ状に形成されている。また、この突出部分103eのうち、上基板102との接合面である上面中央部には、厚さ方向(薄膜ヒータ2側)に窪む凹部5が形成されており、この凹部5の下側に薄膜ヒータ2が配置されている。凹部5は、一酸化炭素除去流路部175と離間して形成され、凹部5を形成する底面5bから上基板102側に向けて外側に広がるように傾斜したテーパ面5aを有した側断面視台形状をなしている。このように凹部5を形成して、中基板103の突出部分103eの板厚を薄くすることにより、凹部5の下側に配される薄膜ヒータ2の熱容量を小さくすることができる。
電流電極3は、薄膜ヒータ2の一端部に連なる電極パターン31aと、この電極パターン31aの端部の電流端子部32aと、薄膜ヒータ2の他端部に連なる電極パターン31bと、この電極パターン31bの端部の電流端子部32bとを備えている。
電圧電極4は、薄膜ヒータ2の一端部に連なる電極パターン41aと、この電極パターン41aの端部の電圧端子部42aと、薄膜ヒータ2の他端部に連なる電極パターン41bと、この電極パターン41bの端部の電流端子部42bとを備えている。
電流電極3の二つの電流端子部32a,32bと、電圧電極4の二つの電圧端子部42a,42bとは、薄膜ヒータ2の右側に一列に配置され、二つの電流端子32a,32bの間に二つの電圧端子42a,42bがそれぞれ配置されている。そして、電流電極3の一方の電極パターン31aの端部と電圧電極4の一方の電極パターン41aの端部とが合流して、薄膜ヒータ2の一端部に連なり、電流電極3の他方の電極パターン31bの端部と電圧電極の他方の電極パターン41bの端部とが合流して、薄膜ヒータ2の他端部に連なっている。また、電流電極3の電極パターン31a,31b及び電圧電極4の電極パターン41a,41bは、薄膜ヒータ2よりも幅広に形成され、さらに、電流端子部32a,32b及び電圧端子部42a,42bは、各電極パターン31a,31b,41a,41bよりも幅広に形成されている。また、電流端子部32a,32b及び電圧端子部42a,42bには、それぞれリード線(図示しない)が接合され、薄膜ヒータ2、電流電極3の電極パターン31a,31b及び電圧電極4の電極パターン41a,41bは、電流端子部32a,32b及び電圧端子部42a,42bの部分を除いて保護絶縁膜によって被覆されている。
【0037】
なお、例えば、薄膜ヒータ2の領域(すなわち、凹部5の底面5bの大きさm×n)は約2mm×2mmであり、そのヒータパターン幅は約20μmであり、全長が約30mm、室温での抵抗値は約400Ω以下となっている。また、マイクロ真空センサ1全体の大きさ(すなわち、中基板103の突出部分103eの大きさM×N)は、約15mm×10mmである。
【0038】
薄膜ヒータ2の膜構造としては、例えば、突出部分103eにTa膜301が成膜され、Ta膜301にW膜302が成膜され、W膜302にAu膜303が成膜された三層構造が好ましい(以下、この膜構造をTa/W/Auと言う)。Ta膜301は中基板103への密着層、W膜302はAu膜303及びTa膜301の層間拡散を防止する層であり、Au膜303は発熱層である。その他、密着層としてTaの代わりにTi、Cr、Moなどを使用しても良く、また、発熱層としてAuの代わりにPtなどでも良い。
【0039】
図8(c)は、マイクロ真空センサ11の変形例であり、図8(b)と同様の位置で切断した際のマイクロ真空センサ11の矢視断面図である。
このマイクロ真空センサ11は、中基板103としてガラス材料ではなく、シリコンを材料としたものであり、中基板103のうち突出した突出部分103eの両面に窒化シリコン膜15a,15bが成膜され、このうち下面側に成膜した窒化シリコン膜15bに、上述した薄膜ヒータ2、電流電極3及び電圧電極4と同様の薄膜ヒータ12、電流電極13及び電圧電極14が形成されている。また、突出部分103eの上面で、かつ、薄膜ヒータ12の上方に当たる位置に形成された窒化シリコン膜15aはエッチングされ、さらに、そのエッチングされた窒化シリコン膜15aが成膜されていた突出部分103eに、厚さ方向に貫通する貫通孔16が形成されている。貫通孔16には、窒化シリコン膜15bが露出して自立した膜として成膜されていることになり、その窒化シリコンの自立膜15bの下面に薄膜ヒータ2が配置されている。貫通孔16は、この窒化シリコンの自立膜15bから上基板102側に向けて外側に広がるように傾斜したテーパ面16aを有した側断面視台形状をなしている。
また、窒化シリコン膜15a,15bの膜厚は、数μmとすることが好ましい。薄膜ヒータ12、電流電極13及び電圧電極14の膜構造としては、上述したように、Ta/W/Auの膜構造とすることが好ましい。また、中基板103側からCr膜、Au膜を順に成膜した二層構造であっても良い。
【0040】
このように貫通孔16を形成して、その貫通孔16の底部に窒化シリコンの自立膜15bが配され、この窒化シリコン膜15bの下面に薄膜ヒータ2が配置されているので、図8(b)のマイクロ真空センサ1に比して熱伝導をより軽減し、熱容量をより小さくすることができる。その結果、マイクロ真空センサ11の消費電量をさらに軽減するとともに、センシングの時間をさらに短縮することができる。
(シリコンは熱伝導率が大きな物質の一つであり、その大きさは約150W/mKで、一方、窒化シリコンは20W/mK、ガラスは1W/mK程度である。また、熱伝導は熱が伝わるパスの断面積の大きさに反比例するため、窒化シリコンの自立膜15bは熱伝導率が小さく、かつ、伝熱パスの断面積が極めて小さいため熱伝導をより小さくすることができる。また、窒化シリコンの自立膜15bの体積は極めて小さいので、熱容量も小さくなる。これに対して、図8(b)で使用したガラスは熱伝導率の値が1W/mKと一桁小さいが、凹部5が形成された突出部分103eの厚さはコンマ数mmであり、窒化シリコンの自立膜15bの厚さ(数μm)よりも2桁大きいため、窒化シリコン膜15bより熱伝導は大きくなると考えられる。また、窒化シリコン膜15bに比べると体積は大きくなるため、熱容量も大きくなる。したがって、ガラスを使用した中基板103の突出部分103eに薄膜ヒータ2を形成した上記図8(b)のマイクロ真空センサ1に比して、窒化シリコンの自立膜15bに薄膜ヒータ12を形成したマイクロ真空センサ11の方が、熱伝導を軽減でき、熱容量をより小さくすることができる。)
【0041】
以下に、マイクロ真空センサ1,11の原理について説明する。
薄膜ヒータの温度T、雰囲気の温度t、圧力pで定常状態にある場合には、薄膜ヒータのジュール発熱は外部に奪われる熱量に等しく、下記式(1)となる。
i2R(T) = Qgas(T-t, p) + Qsolid(T-t) + Qradiation(T-t) (定常状態)・・・(1)
ここで、iは薄膜ヒータに流れる電流値、R(T)は温度Tのときの薄膜ヒータの抵抗値、Qgas(T-t, p)、 Qsolid(T-t)、 Qradiation(T-t)はそれぞれ雰囲気によって奪われる熱量、マイクロ真空センサを構成する部材及びマイクロ真空センサが接している部材(電流電極、電圧電極、リード線、反応装置本体など)に奪われる熱量、輻射によって奪われる熱量を示している。Qsolid(T-t)およびQradiation(T-t)は、薄膜ヒータと雰囲気の温度差のみに依存し、雰囲気の圧力に依存しない。一方、雰囲気に奪われる熱量Qgas(T-t, p)は、薄膜ヒータと雰囲気の温度差T-tおよび雰囲気の圧力Pに依存する。
今、雰囲気の圧力がpからP(P > p)に変化し、雰囲気に奪われる熱量Qgasが増大したとすると、薄膜ヒータの発熱i2Rよりも外部に奪われる熱量が大きくなる(下記式(2)参照)。
i2R(T) < Qgas(T-t, P) + Qsolid(T-t) + Qradiation(T-t) (非定常状態)・・・(2)
その結果、薄膜ヒータの温度Tが減少する。薄膜ヒータの温度を一定に保つためには、薄膜ヒータに印加する電流値を増大させてジュール熱発熱を上記(2)式の右辺と等しくなるようにすれば良い。定常状態となったときの電流値をI(I > i)とすると、下記式(3)となる。
I2R(T) = Qgas(T-t, P) + Qsolid(T-t) + Qradiation(T-t) (定常状態)・・・(3)
したがって、雰囲気のpからPへの圧力変化は、薄膜ヒータの温度Tを一定に保つ消費電力i2R(T)からI2R(T)への変化として観測できるというものである。
なお、上述の説明では、温度一定の条件で行ったが、センシングの際には下記のような電流一定の方法で行うのが簡便である。
すなわち、前述のように、マイクロ真空センサのジュール発熱と熱損失がつりあった定常状態では、上記式(1)の定常状態となり、雰囲気の圧力がpからPに増大すると、雰囲気に奪われる熱量が増大するため、上記式(2)の非定常状態となり、その結果、マイクロ真空センサの温度が減少する。
一般的に金属の電気抵抗値は、温度上昇とともに線形的に増大する。したがって、マイクロ真空センサの抵抗体に金属膜を用いた場合には、雰囲気に奪われる熱量が増加し、温度が減少すると、金属膜の抵抗値が減少する。電流値をiに固定し、圧力Pにおいて再び定常状態となったときの温度をT’( < T)とすると、下記式(4)となる。
i2R(T) > i2R(T’) = Qgas(T’-t, P) + Qsolid(T’-t) + Qradiation(T’-t) (定常状態)・・・(4)
すなわち、電流値を固定した場合、雰囲気の圧力が増大すると、雰囲気に奪われる熱量が増加するため、センサ温度が下がり、マイクロ真空センサの消費電力あるいは抵抗値は減少する。
逆に、電流値を固定した場合、雰囲気の圧力が減少した場合には、雰囲気に奪われる熱量が減少するため、センサ温度が上昇し、マイクロ真空センサの消費電力あるいは抵抗値は増大する。
そこで、本実施例において、雰囲気圧力が10Pa未満であるかどうかの判定には、上述の性質を利用する。例えば、10Paの圧力下において、センサ温度をT℃に保つために流れる電流がi mA、そのときの抵抗値はRΩであるとする。反応装置を起動させる前に、マイクロ真空センサにi mA流し、抵抗値を測定する。抵抗値は、電圧測定用の端子間の電圧を測定し、その値を電流値で除すことで得られる。そして、抵抗値がRΩを超える場合には、断熱真空容器内の雰囲気の圧力は10Pa未満であるので、反応装置の起動シーケンスへと進み、逆に、抵抗値がRΩ以下ならば、雰囲気の圧力は10Pa以上であるので、反応装置を起動させないようにして、マイクロ真空センサによるセンシングを行う。
また、本実施形態のように、電流電極と電圧電極を独立に持つ4端子構成のマイクロ真空センサによれば、2端子構成のものに比べて配線抵抗や接触抵抗の影響を受けないので、高精度に真空度を測定することができる。
【0042】
図9は、図8(c)で説明したように窒化シリコンの自立膜に薄膜ヒータを形成した熱伝導型マイクロ真空センサの消費電力の真空度依存性のグラフである。図9に示す特性は、マイクロ真空センサの薄膜ヒータ及び電極の膜構造が、Cr/Auの二層構造の場合のものであり、薄膜ヒータの温度が70℃の時のものである。また、シリコン基板0.625mm、窒化シリコン膜2μm、Cr膜5nm、Au膜150nmである。
ここで、通常使用するピラニ真空計のような熱伝導型真空計では、発熱体の温度は数百度で使用するが、本発明のマイクロ真空センサは70℃という低温でも、図9から明らかなように、雰囲気への熱伝導の変化、特に10Pa近傍を境に起こる雰囲気への熱伝導の急激な変化をセンシング可能である。また、マイクロ真空センサが消費する電力は2〜8mWであり、非常に小さい点からも本発明のマイクロ真空センサは好適であることがわかる。
なお、薄膜ヒータ、電流電極及び電圧電極の膜構造が、Ta/W/Auの場合も、同様の特性を示す。
【0043】
次に、複合型マイクロ反応装置100の製造方法について説明する。図10(a)は、中基板103に形成された電熱パターン136及びマイクロ真空センサ1を示した図面であって、図5における切断線X−Xに沿って切断した際の矢視断面図である。
まず、上基板102、中基板103、下基板120を準備し、これらの接合面に必要に応じて陽極接合用の金属膜又はシリコン膜を気相成長法により成膜する。本実施形態では、中基板103の両面に、スパッタ法により金属膜300を成膜する。金属膜300としては、例えばTa、Al、Tiを用いることができ、本実施形態ではTaを用いるものとする。
次に、中基板103の下面にべた一面に電熱膜301〜303を成膜する。電熱膜301〜303の構造としては、例えば、Ta/W/Auが好ましい。ここで、Ta膜301は、陽極接合用として成膜した金属膜300をそのまま使用することができる。したがって、中基板103の下面のTa膜301(金属膜300)にW膜302、Au膜303を順に成膜し、成膜した電熱膜301〜303をフォトリソグラフィー・エッチング法により形状加工することによって、電熱パターン106,136、マイクロ真空センサ1の薄膜ヒータ2、電流電極3及び電圧電極4をパターニングする。なお、電熱膜としてのTa膜301と、陽極接合用として使用する金属膜300とは、電気的に絶縁されるようエッチングする。また、中基板103の突出部分103eの上面の金属膜300もエッチングする。さらに、端子部107,108,137,138を除いて電熱パターン106,136を絶縁膜によって被覆し、また、電流端子部32a,32b、電圧端子部42a,42bを除いて薄膜ヒータ2、電流電極3及び電圧電極4を絶縁膜によって被覆する。
【0044】
次に、フォトリソグラフィ法とサンドブラスト法を用いて、上基板102に、いずれも溝である、燃料供給流路部161、改質流路部162、連通溝163、空気供給流路部164、一酸化炭素除去流路部165を形成し、さらに貫通孔166及び溝201,205,206を形成する。
中基板103にも、いずれも溝である、燃料供給流路部171、改質流路部172、連通溝173、空気供給流路部174、一酸化炭素除去流路部175を形成し、さらに貫通孔176、切欠き211〜216を形成する。また、この際に同時に中基板103のうち突出部分103eの上面にマイクロ真空センサ用の凹部5を形成して、その厚さを薄くする。
また、下基板120に、燃焼流路部121、端子部収納室123,124、連通溝125,126、通し溝127,128、ヒータ収容溝129、燃焼燃料供給流路部131、空気供給流路部132、連通溝133、排ガス排出流路部134、通し溝141,142及び溝222,223,224を形成し、さらに貫通孔156を形成する。
【0045】
次に、改質流路部162及び改質流路部172にアルミナゾルを塗布し、更にウォッシュコート法により改質触媒を形成する。また、一酸化炭素除去流路部165及び一酸化炭素除去流路部175にアルミナゾルを塗布し、更にウォッシュコート法により一酸化炭素除去触媒を形成する。また、燃焼流路部121にアルミナゾルを塗布し、更にウォッシュコート法により燃焼触媒を形成する。
【0046】
次に、上基板102及び中基板103を陽極接合法により接合する。次に、端子部107,108,137,138にそれぞれリード線109,110,111,112を抵抗溶接により接合する。
また、電流端子部32a,32b及び電圧端子部42a,42bにそれぞれリード線を抵抗溶接により接合する。
【0047】
次に、中基板103と下基板120を貼りあわせ、中基板103と下基板120の位置合わせを行い、電熱パターン106,136を下基板120により覆う。そして、中基板103に下基板120を陽極接合法により接合する。
次に、通し溝127,128に封着剤を注入することで、通し溝127,128の開口をシールする。
【0048】
次に、上基板102、中基板103、下基板120の接合体の右端面の開口(溝201、切欠き211、排ガス排出流路部134の端部を重なり部分等)に供給排出部材151を嵌め込み、改質燃料ガス供給用の燃料供給流路(燃料供給口151b)を燃料供給流路部161に接続し、1つの空気供給用の吸気流路(一酸化炭素除去器の空気供給口151d)を一酸化炭素除去器の空気供給流路部164に接続し、もう1つの空気供給用の吸気流路(燃焼器の空気供給口151e)を燃焼器の空気供給流路部132に接続し、燃焼ガス供給用の燃焼ガス供給流路(燃焼燃料供給口151f)を燃焼燃料供給流路部131に接続し、生成ガス排出用の生成ガス排出流路(水素排出口151c)を一酸化炭素除去流路部165に接続し、燃焼排ガス排出用の排ガス排出流路(排ガス排出口151a)を排ガス排出流路部134に接続する。
【0049】
次に、断熱パッケージ150を準備し、その断熱パッケージ150の内面に赤外線反射膜を成膜する。そして、10Pa以下、望ましくは1Pa以下に減圧された雰囲気の製造装置炉内で、上基板102、中基板103、下基板120の接合体を断熱パッケージ150内に収容し、供給排出部材151を断熱パッケージ150に貫通させ、リード線109,110,111,112を断熱パッケージ150に貫通させる。また、マイクロ真空センサ1の電流電極3及び電圧電極4に接合された各リード線も断熱パッケージ150に貫通させる。そして、供給排出部材151、リード線109〜112、マイクロ真空センサの各リード線の貫通箇所を封着剤でシーリングし、断熱パッケージ150内の雰囲気を10Pa以下、望ましくは1Pa以下に減圧させる。
【0050】
図10(b)は、中基板103に形成された電熱パターン136及び図8(c)のようなマイクロ真空センサ11を作成した場合の断面図である。
図8(c)に示す変形例であるマイクロ真空センサ11の製造方法は、中基板103としてシリコンからなるものを準備し、この中基板103の両面に窒化シリコン膜15a,15bを成膜した後に、上述した手順と同様に、中基板103の下面の窒化シリコン膜15bにべた一面に電熱膜301〜303を成膜する。電熱膜301〜303の構造としては、上述したTa/W/Auが好ましい。成膜した電熱膜301〜303をパターニングすることによって電熱パターン106,136を形成すると同時に、マイクロ真空センサ11の薄膜ヒータ12、電流電極13及び電圧電極14もパターニングする。
さらに、中基板103の突出部分103e以外の部分における上面の窒化シリコン膜15aをフォトリソグラフィー・エッチング法により取り除く。また、中基板103の突出部分103eの上面一部の窒化シリコン膜15aをフォトリソグラフィー・エッチング法により取り除いた後、その取り除いた領域に水酸化カリウムなどのエッチング剤を用いて貫通孔16を形成し、さらに切欠き211〜216を形成する。また、中基板103に、フォトリソグラフィ法とサンドブラスト法を用いて、燃料供給流路部171、改質流路部172、連通溝173、一酸化炭素除器の空気供給流路部174、一酸化炭素除去流路部175を形成する。
その他、上基板102や下基板120については上述した方法と同様のため、その説明を省略する。
【0051】
以上のような複合型マイクロ反応装置100においては、反応装置100を起動する前に予め、マイクロ真空センサ1に二次電池などの補助電源を利用して、電力を供給することによって、断熱真空容器150内の真空度を測定する。そして、真空度が10Pa未満の場合に、反応装置100を起動させ、真空度が10Pa以上の場合には、反応装置100の起動をさせない。
そして、反応装置100が起動し、リード線109,110の間に電圧を印加すると電熱パターン106が発熱し、リード線111,112の間に電圧を印加すると電熱パターン136が発熱し、後述の改質反応のための熱源とする。また、燃焼ガス(例えば、水素ガス、メタノールガス、エタノールガス、ジメチルエーテルガス)を燃焼燃料供給流路部131に送り込み、空気(酸素)を空気供給流路部132に送り込むと、燃焼ガスと空気の混合気が燃焼流路部121を流動し、燃焼ガスが燃焼触媒により燃焼し、燃焼熱が発生するようにもできる。定常運転時にはこの触媒燃焼によって、吸熱反応である改質反応に必要な熱を供給し、システムを自立運転あるいは電熱パターンから供給する電力を軽減しての運転が可能となる。このように改質反応のための熱が供給される状態で燃料(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル)と水の混合気を燃料供給流路部161(171)に供給すると、混合気が改質流路部162(172)を流れているときに改質触媒により反応して水素ガスが生成される。このとき、僅かながら一酸化炭素ガスも生成される(燃料がメタノールの場合には、下記化学式(5)、(6)を参照。)。一酸化炭素除去器の空気供給流路部164(174)に空気を供給すると、水素ガス、一酸化炭素ガス、空気等が混合した状態で一酸化炭素除去流路部165(175)を流れる。このとき、一酸化炭素ガスが一酸化炭素除去触媒により優先的に酸化する選択酸化反応が起こり、一酸化炭素ガスが除去される(下記化学式(7)を参照)。そして、水素ガス等を含むガスが一酸化炭素除去流路部165(175)から排出される。
CH3OH+H2O→3H2+CO2・・・(5)
2+CO2→H2O+CO・・・(6)
2CO+O2→2CO2・・・(7)
上述のように、マイクロ真空センサ1は、随時、断熱真空容器150内の真空度を測定し、真空度が10Pa以上の場合に、反応装置100の起動を停止させる。このようにマイクロ真空センサ1によって予め断熱真空容器150内の真空度を測定し、10Pa以下の場合に反応装置100を起動させ、10Paを超える場合には、反応装置100を停止させることにより、無駄な電力を消費することなく、また、断熱真空容器150内の温度が異常上昇することを防止できる。
また、マイクロ真空センサ1を動作するための消費電力は数ミリワットのオーダーで、電熱パターン106,136等で消費される電力に比して2桁以上小さいため、システムの負荷にならない。
【0052】
なお、燃料(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル)と空気(酸素)の混合気を燃料供給流路部161(171)に供給するようにしても良い。この場合、燃料が部分酸化改質反応を起こして水素ガスが生成されるが、その場合、改質流路部162,172の壁面に担持させる触媒は部分酸化改質触媒とする。改質流路部162,172の担持させる触媒を2種類にし、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応(上記式(5))を組み合わせても良い。
【0053】
次に、複合型マイクロ反応装置100の用途について説明する。
この複合型マイクロ反応装置100は、図11に示すような発電装置900に用いることができる。この発電装置900は、燃料と水を液体の状態で貯留した燃料カートリッジ901と、燃料カートリッジ901から供給された燃料と水を気化させる気化器902と、複合型マイクロ反応装置100と、複合型マイクロ反応装置100の反応装置本体101から供給された水素ガスにより電気エネルギーを生成する発電セル903と、発電セル903により生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換するDC/DCコンバータ904と、DC/DCコンバータ904に接続される2次電池905と、それらを制御する制御部906とを備える。気化器902で気化した燃料と水は燃料供給流路部161,171に流れ込み、一酸化炭素除去流路部165,175から流れ出た水素ガス等は燃料電池903の燃料極に供給され、発電セル903の酸素極には空気が供給され、発電セル903における電気化学反応により電気エネルギーが生成される。
DC/DCコンバータ904は発電セル903により生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換したのちに電子機器1000に供給する機能の他に、発電セル903により生成された電気エネルギーを2次電池905に充電し、発電セル903側が運転されていない時に、電子機器1000に2次電池側から電気エネルギーを供給する機能も果たせるようになっている。制御部906は気化器902、反応装置100、発電セル903を運転するために必要な図示しないポンプやバルブ類、そして、ヒータ類、DC/DCコンバータ904等を制御し、電子機器1000に安定して電気エネルギーが供給されるような制御を行なう。
ここで、発電セル903の燃料極に供給された水素ガスは全てが反応しない方が高効率で、残留した水素ガスは、燃焼燃料供給流路部131から(燃焼器145(燃焼流路部121に対応))に供給されるようにしてもよい。また、改質器の温度管理の観点より、燃焼器で残留した水素ガスを全て燃焼させずに、別途水素燃焼器を備えるようにしてもよい。
このような発電装置900において、マイクロ真空センサ1による真空度の測定結果に基づいて、反応装置100の起動又は停止が制御されるようになっている。
【0054】
以上のような第一の実施の形態によれば、断熱真空容器150内の真空度を測定するマイクロ真空センサ1を備えるので、断熱真空容器150内の真空度をセンシングすることができる。また、マイクロ真空センサ1を改質器と一酸化炭素除去器との間の断熱室104に配置することにより、デッドスペースを有効利用することができ、複合型マイクロ反応装置100の小型化を図ることができる。
また、マイクロ真空センサ1は、薄膜ヒータ2の温度が70℃程度でセンシング可能であることから、消費電力を小さくすることができる。
また、マイクロ真空センサ1は、中基板103の突出部分103eのうち、薄膜ヒータ2の上側に位置する上面中央部に凹部5が形成され、板厚が薄くなっているので、発熱部の熱容量が小さいので、この点においても消費電力を小さくでき、かつ、マイクロ真空センサ1としての応答速度が速くなる。
【0055】
[第二の実施の形態]
第二の実施の形態では、第一の実施の形態に比べてマイクロ真空センサ1Aの位置が異なっており、それに伴って上基板102A、中基板103A、下基板120Aの形状が異なるのみで、その他は基本的に同様の構成をなしているので、同様の構成部分については、同様の数字に英字Aを付してその説明を省略する。
図12は、複合型マイクロ反応装置100Aの正面断面図(後述する図14〜図17における切断線XII−XIIに沿って切断した際の矢視断面図)、図13は、図12における切断線XIII−XIIIに沿って切断した際の矢視断面図である。
第一の実施の形態と同様に、減圧した断熱パッケージ150Aを供給排出部材151A、リード線109A〜112A(図16参照)及びマイクロ真空センサ1Aのリード線(図示しない)が貫通している。
また、断熱パッケージ150A内に、上基板102Aと中基板102Aを接合してなる反応装置本体101Aが収容され、更に反応装置本体101Aの下面、即ち中基板103Aの下面に接合した下基板120Aも断熱パッケージ150A内に収容されている。なお、反応装置本体101Aが、高温な水蒸気改質反応が起こる改質器(反応器)と、低温な選択酸化反応が起こる一酸化炭素除去器(反応器)の複合体となり、中基板103Aに接合した状態の下基板120Aが燃焼器となる。
【0056】
図14は、上基板102Aの両面のうち中基板103Aとの接合面を示した図面であって、中基板103A側から見た際の平面図である。図14に示すように、上基板102Aの両面のうち中基板103Aとの接合面には、いずれも溝である、燃料供給流路部161Aと、改質反応炉となる改質流路部162Aと、連通溝163Aと、一酸化炭素除去器の空気供給流路部164Aと、一酸化炭素除去反応炉となる一酸化炭素除去流路部165Aとが凹設されている。更に、上基板102Aの中央部に貫通孔166Aが形成されている。また、上基板102Aの縁102aAには、供給排出部材151Aに嵌合する溝201A,205A,206Aが凹設されている。
また、上基板102Aには、縁102aAと縁102bAとの間の角部を矩形状に切り欠いた切欠き102fAが形成されている。
【0057】
図15は、中基板103Aの両面のうち上基板102Aとの接合面を示した図面であって、上基板102A側から見た際の平面図である。図15に示すように、中基板103Aの両面のうち上基板102Aとの接合面には、いずれも溝である、燃料供給流路部171Aと、改質反応炉となる改質流路部172Aと、連通溝173Aと、一酸化炭素除去器の空気供給流路部174Aと、一酸化炭素除去反応炉となる一酸化炭素除去流路部175Aとが凹設されている。更に、中基板103Aの中央部には矩形状の貫通孔176Aが形成されている。
燃料供給流路部161Aの一端部が上基板102Aの縁102aAまで連なっているのに対して、燃料供給流路部171Aの一端部が、上基板102Aの縁102aAに対応する中基板103Aの縁103aAに達していないことを除き、中基板103Aと上基板102Aの接合面に関して、燃料供給流路部171Aと燃料供給流路部161Aは互いに面対称であり、同様に、改質流路部172Aと改質流路部162Aが、連通溝173Aと連通溝163Aが互いに面対称である。また、一酸化炭素除去器の空気供給流路部164Aの一端部が上基板102Aの縁102aAまで連なっているのに対して、空気供給流路部174Aの一端部が、上基板102Aの縁102aAに対応する中基板103Aの縁103aAに達していないことを除き、一酸化炭素除去器の空気供給流路部174Aと一酸化炭素除去器の空気供給流路部164Aが面対称であり、貫通孔176Aと貫通孔166Aが面対称である。一酸化炭素除去流路部165Aの他端部が上基板102Aの縁102aAまで連なっているのに対して、一酸化炭素除去流路部175Aの他端部が、上基板102Aの縁102aAに対応する中基板103Aの縁103aAに達していないことを除き、一酸化炭素除去流路部175Aと一酸化炭素除去流路部165Aが、互いに面対称である。また、中基板103Aの縁103aAには、供給排出部材151Aに嵌合する切欠き211A〜216Aが形成されている。
また、中基板103Aの縁103aAと縁103bAとの間の角部103gAに後述のマイクロ真空センサ1Aが設けられている。このマイクロ真空センサ1Aの上側に、上基板102Aの切欠き102fAが位置している。
【0058】
そして、改質流路部162A,172Aの壁面には、アルミナを担体として改質触媒(例えば、Cu/ZnO系触媒)が担持され、一酸化炭素除去流路部165A,175Aの壁面には、アルミナを担体として一酸化炭素選択酸化触媒(例えば、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム)が担持されている。
【0059】
上基板102Aが中基板103Aに接合されており、燃料供給流路部171Aと燃料供給流路部161Aが重なっており、同様に、改質流路部172Aと改質流路部162Aが、連通溝173Aと連通溝163Aが、一酸化炭素除去器の空気供給流路部174Aと一酸化炭素除去器の空気供給流路部164Aが、一酸化炭素除去流路部175Aと一酸化炭素除去流路部165Aが、貫通孔176Aと貫通孔166Aとが重なっている。
【0060】
なお、上基板102Aと中基板103Aは、上記上基板102と中基板103Aと同様にガラス材料からなり、本実施形態では、中基板103Aの上基板102Aとの接合面に陽極接合用の金属膜300Aが成膜されている。また、上基板102Aには面取縁102eAが形成されている。
【0061】
図16は、中基板103Aの両面のうち下基板120Aとの接合面を示した図面であって、下基板120A側から見た際の平面図である。図16に示すように、中基板103Aの両面のうち下基板120Aとの接合面には、電熱パターン(金属膜ヒータ)106A及び電熱パターン(金属膜ヒータ)136Aが形成されている。電熱パターン106Aの両端部の端子部107A,108Aに、リード線109A,110Aが接合され、電熱パターン136Aの両端部の端子部137A,138Aにリード線111A,112Aが接合されている。
【0062】
図17は、下基板120Aの両面のうち中基板103Aとの接合面を示した図面であって、中基板103A側から見た際の平面図である。図17に示すように、下基板120Aの両面のうち中基板103Aとの接合面には、燃焼流路部121Aと、端子部収納室123A,124Aと、連通溝125A,126Aと、通し溝127A,128Aと、ヒータ収容溝129Aと、燃焼燃料供給流路部131Aと、燃焼器の空気供給流路部132Aと、連通溝133Aと、排ガス排出流路部134Aとが凹設されている。更に、下基板120Aの中央部において矩形状の貫通孔156Aが形成されている。また、下基板120Aの縁120aAには、供給排出部材151Aに嵌合する溝222A,223A,224Aが凹設され、下基板120Aには、通し溝141A、142Aが設けられている。
また、下基板120Aには、縁120aAと縁120bAとの間の角部を矩形状に切り欠いた切欠き120fAが形成されている。
【0063】
接合面に関して、燃焼流路部121Aと改質流路部172Aは互いにほぼ面対称であり、ヒータ収容溝129Aと一酸化炭素去流路部175Aがほぼ面対称である。
【0064】
燃焼流路部121Aの壁面には、アルミナを担体として燃焼触媒(例えば、白金)が担持されている。
【0065】
なお、下基板120Aも、上記下基板120と同様にガラス材料からなり、中基板103Aの下基板120Aとの接合面に陽極接合用の金属膜300Aが成膜されている。また、下基板120Aには面取縁120eAが形成されている。
【0066】
上基板102A、中基板103A及び下基板120Aを重ね合わせることによって、上基板102Aの切欠き102fAと下基板120Aの切欠き120fAとにより形成される空間内に中基板103Aの角部103gAのマイクロ真空センサ1Aが配置されている。すなわち、マイクロ真空センサ1Aは、上基板102Aの縁102aA、縁102bA、中基板103Aの縁103aA、縁103bA、下基板120Aの縁120aA、縁120bAから突出することなく、反応装置本体101A内に収納されている。
【0067】
次に、マイクロ真空センサ1Aについて説明する。
マイクロ真空センサ1Aは、第一の実施の形態のマイクロ真空センサ1と同様に、上記中基板103Aの一部(縁103aAと縁103bAとの間の角部103gA)に、加熱用の薄膜ヒータ2Aと、電流印加用の電流電極3Aと、電圧測定用の電圧電極4Aとから構成されている。
薄膜ヒータ2Aは、中基板103Aの角部103gAのうち、下基板120Aとの接合面である下面中央部に、ジグザグ状に形成されている。また、この中基板103Aの角部103gAのうち、上基板102Aとの接合面である上面中央部には、厚さ方向(薄膜ヒータ2A側)に窪む凹部5Aが形成されており、この凹部5Aの下側に薄膜ヒータ2Aが配置されている。凹部5Aは、縁103aAと縁103bAから離間して形成されており、凹部5Aを形成する底面から上基板102A側に向けて外側に広がるように傾斜したテーパ面を有した側断面視台形状をなしている。そして、このように凹部5Aを形成して、中基板103Aの角部103gAの板厚を薄くすることにより、凹部5Aの下側に配される薄膜ヒータ2Aの熱容量を小さくすることができる。
第一の実施の形態の図8(a)と同様に、電流電極3Aは、二つの電極パターン31aA,31bAと二つの電流端子32aA,32bAとを備え、電極パターン31aA,31bAは、薄膜ヒータ2Aの各端部にそれぞれ連なっている。
電圧電極4Aは、二つの電極パターン41aA,41bAと二つの電圧端子42aA,42bAとを備え、電極パターン41aA,41bAは、薄膜ヒータ2Aの各端部にそれぞれ連なっている。
そして、薄膜ヒータ2Aの右側に二つの電流端子32aA,32bA及び二つの電極端子42aA,42bAが一列に配置され、二つの電流端子32aA,32bAの間に二つの電圧端子42aA,42bAがそれぞれ配置されている。
【0068】
薄膜ヒータ2Aの膜構造としては、第一の実施の形態と同様に、例えばAu/W/Taとすることが好ましい。
さらに、中基板103Aとしてガラス材料ではなく、シリコンからなるものを使用しても良く、この場合には、上述した図8(c)と同様の構造とすることが好ましい。
【0069】
次に、複合型マイクロ反応装置100Aの製造方法について説明する。この製造方法についても第一の実施の形態と基本的に同様であり、中基板103Aの両面に陽極接合用の金属膜を成膜し、中基板103Aの下面にべた一面に電熱膜を成膜する。このとき、中基板103Aの下面に成膜した陽極接合用の金属膜を電熱膜のTa膜として使用することができる。そして、成膜した電熱膜をパターニングすることによって電熱パターン106A,136Aを形成すると同時に、マイクロ真空センサ1Aの薄膜ヒータ2A、電流電極3A及び電圧電極4Aもパターニングする。
さらに、中基板103Aに、フォトリソグラフィ法とサンドブラスト法を用いて、燃料供給流路部171A、改質流路部172A、連通溝173A、一酸化炭素除去器の空気供給流路部174A、一酸化炭素除去流路部175Aを形成し、さらに貫通孔176A、切欠き211A〜216Aを形成する際に、同時に中基板103Aの角部103gAの厚さを薄くしてマイクロ真空センサ用の凹部5Aを形成する。
また、上基板102Aには切欠き102fAを形成し、下基板120Aには切欠き120fAを形成する。
その他は、第一の実施の形態と同様のため、その説明を省略する。
【0070】
以上のような第二の実施の形態によれば、断熱真空容器150A内の真空度を測定するマイクロ真空センサ1Aを備え、マイクロ真空センサ1Aが中基板103Aの角部103gAに配置され、反応装置本体101A内に収納されているので、断熱真空容器150A内の真空度をセンシングすることができるとともに小型化を図ることができる。
また、マイクロ真空センサ1Aは、薄膜ヒータ2Aの温度が70℃程度でセンシング可能であることから、消費電力を小さくすることができる。
また、マイクロ真空センサ1Aは、中基板103Aの角部103gAのうち、薄膜ヒータ2Aの上側に位置する上面中央部に凹部5Aが形成され、板厚が薄くなっているので、発熱部の熱容量が小さいので、この点においても消費電力を小さくでき、かつ、マイクロ真空センサ1Aとしての応答速度が速くなる。
【0071】
また、上記実施の形態では、マイクロ真空センサ1,1Aは、断熱真空容器150,150A内であれば、特に上述したような突出部分103eや角部103gAの位置に設けなくとも適宜変更可能である。
また、薄膜ヒータ2,2A,12や電流電極3,3A,13、電圧電極4,4A,14の位置や向き等も図示したものに限定されるものではない。
さらに、上記各実施の形態では、マイクロ真空センサとして熱伝導型マイクロ真空センサを用いる例を示したが、小型で低消費電力のものであれば、熱伝導型でなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】複合型マイクロ反応装置100の外観斜視図である。
【図2】複合型マイクロ反応装置100の正面断面図である。
【図3】図2における切断線III−IIIに沿って切断した際の矢視断面図である。
【図4】上基板102の両面のうち中基板103側から見た際の平面図である。
【図5】中基板103の両面のうち上基板102側から見た際の平面図である。
【図6】中基板103の両面のうち下基板120側から見た際の平面図である。
【図7】下基板120の両面のうち中基板103側から見た際の平面図である。
【図8】(a)は、マイクロ真空センサ1の下基板120側から見た際の平面図、(b)は、マイクロ真空センサ1の(a) における切断線VII−VIIに沿って切断した際の矢視断面図、(c)は、マイクロ真空センサ11の切断線VIII−VIIIに沿って切断した際の矢視断面図である。
【図9】窒化シリコンの自立膜に薄膜ヒータを形成した熱伝導型マイクロ真空センサの消費電力の真空度依存性のグラフである。
【図10】(a)は、中基板103に形成された電熱パターン136及び図8(b)のようなマイクロ真空センサ1を作成した場合の断面図、(b)は、中基板103に形成された電熱パターン136及び図8(c)のようなマイクロ真空センサ11を作成した場合の断面図である。
【図11】発電装置900のブロック図である。
【図12】複合型マイクロ反応装置100Aの正面断面図である。
【図13】図12における切断線XIII−XIIIに沿って切断した際の矢視断面図である。
【図14】上基板102Aの両面のうち中基板103A側から見た際の平面図である
【図15】中基板103Aの両面のうち上基板102A側から見た際の平面図である。
【図16】中基板103Aの両面のうち下基板120A側から見た際の平面図である。
【図17】下基板120Aの両面のうち中基板103A側から見た際の平面図である。
【符号の説明】
【0073】
1,1A マイクロ真空センサ(気圧センサ)
2,2A,12 薄膜ヒータ
3,3A,13 電流電極
4,4A,14 電圧電極
15b 窒化シリコン膜
100,100A 複合型マイクロ反応装置
102,102A 上基板
103,103A 中基板
104 断熱室
106,136,106A,136A 電熱パターン(金属膜ヒータ)
120,120A 下基板
150,150A 断熱真空容器(反応容器)
161,161A,171,171A 燃料供給流路部
162,162A,172,172A 改質流路部
163,163A,173,173A 連通溝
164,164A,174,174A 一酸化炭素除去器の空気供給流路部
165,165A,175,175A 一酸化炭素除去流路部
301 Ta膜
302 W膜
303 Au膜
903 発電セル
1000 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器と、
前記反応容器内に収容され、反応物の反応を起こす複数の反応器と、
前記反応容器内の気圧を測定する気圧センサと、を備えることを特徴とする反応装置。
【請求項2】
前記複数の反応器は異なる温度で反応物の反応を起こす反応器を含み、
前記異なる温度で反応物の反応を起こす反応器間を連通する連通流路と、
前記異なる温度で反応物の反応を起こす反応器間に設けられた断熱室と、を備え、
前記気圧センサが前記断熱室内に配されていることを特徴とする請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記気圧センサは、前記反応器の表面に形成されたヒータを備え、
前記ヒータが形成された箇所における反応器の裏面が前記ヒータ側に窪んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の反応装置。
【請求項4】
前記ヒータは、前記反応器の表面に成膜された密着層と、前記密着層上に成膜された拡散防止層と、前記拡散防止層上に成膜された発熱層とを備えた構造であることを特徴とする請求項3に記載の反応装置。
【請求項5】
前記反応器の表面に、窒化シリコン膜が成膜され、前記窒化シリコン膜上に前記ヒータが形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の反応装置。
【請求項6】
前記複数の反応器に熱を供給する熱供給源を備え、
前記熱供給源が、反応物としての燃料の燃焼反応を促進する燃焼用触媒を有するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項7】
前記複数の反応器のうち一方の反応器は、反応物としての燃料と水から水素を生成する改質器であり、
他方の反応器は、反応物としての一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去器であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項8】
前記反応器は、複数の基板が積層されてなり、互いに接合する接合面のうち少なくとも一方に溝が形成され、この溝が形成された基板に、前記溝を他の基板で覆うことによって前記溝が形成された基板との間に反応物が供給される流路が形成されており、
前記複数の基板がガラス製、シリコン製、セラミック製、金属製あるいはこれらを組み合わせたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項9】
請求項1に記載の前記反応器により生成される改質ガスから電気化学反応により電力を取り出す発電セルをさらに備えることを特徴とする発電装置。
【請求項10】
請求項9に記載の前記発電装置を電力供給源として備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−319769(P2007−319769A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151975(P2006−151975)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】