説明

反撥性を付与する方法

基材に撥水性、撥アルコール性、撥油性、および耐汚染性を付与する方法であって、式1、[Rf(CH2kOC(O)NH(CH2kOC(O)C(T)CH2m−[Wqp−(式中、Rfは、場合により少なくとも1個の酸素原子が挿入された、約2〜約8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のパーフルオロアルキル基またはこれらの組合せであり、kは、それぞれ独立して、1〜約6の正の整数であり、Tは、水素またはメチルであり、mは、正の整数であり、qは、ゼロまたは正の整数であり、pは、ゼロまたは正の整数であり、Wは、(式I)
【化1】


または(式II)
【化2】


または−[R1−X−Y−C(O)−CZ−CH2]−(式中、Xは、約1〜約20個の炭素原子を有し、場合により、トリアゾール、酸素、窒素、もしくは硫黄、またはこれらの組合せを含む2価の有機結合基であり、Yは、OまたはN(R)(式中、Rは、HまたはC1〜C20アルキルである)であり、Zは、H、約1〜約4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基、またはハリドであり、Rxは、C(O)O(R1)、C(O)N(R22、OC(O)(R1)、SO2(R1)、C6(R3g(5-g)、O(R1)、ハリド、またはR1であり、R1は、それぞれ独立して、H、Cn2n+1、Cn2n−CH(O)CH2、[CH2CH2O]i4、[Cn2n]N(R42、または[Cn2n]Cn2n+1であり、nは、1〜約40であり、R4は、HまたはCs2s+1であり、sは、0〜約40であり、iは、1〜約200であり、R2は、それぞれ独立して、H、またはCt2t+1(式中、tは、1〜20である)であり、R3は、それぞれ独立して、R4、COOR1、ハロゲン、N(R12、OR1、SO2NHR1、CH=CH2、またはSO3Mであり、gは、1〜5であり、Mは、H、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、またはアンモニウムである)である)の繰り返し単位を任意の配列で有する共重合体を含む組成物を前記基材と接触させることを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理された基材に撥油性、撥アルコール性、撥水性、および耐汚染性を付与するフッ素化ウレタン(メタ)アクリレート共重合体を用いて基材を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に表面効果を付与する処理剤として様々なフッ素化ポリマー組成物が有用であることが周知である。基材に反撥性を付与する処理剤として有用な多くの市販のフッ素化ポリマーは、パーフルオロアルキル基を含んでおり、その大部分は、パーフルオロアルキル鎖中に8個以上の炭素を有することによって所望の反撥性能を付与している。パーフルオロアルキル基の鎖長を短くすることによって存在するフッ素の量を減らしながらも、依然として所望の表面効果を達成することが望まれている。
【0003】
米国特許公報(特許文献1)には、ウレタン基のカルボキシル基が1〜12個の炭素を有するフッ素化された基で置換されており、窒素がフッ素化されていないエチレン性不飽和基で置換されている、エチレン性不飽和ウレタン誘導体をベースとするポリマーが開示されている。このポリマーは、フィルム、シート、繊維、および他の品目を製造するための出発原料として使用される。
【0004】
しかしながら、コウジ・ホンダ(Koji Honda)らによる、「ポリ(フルオロアルキルアクリレート)薄膜の分子集合構造および表面特性(Molecular Aggregation Structure and Surface Properties of poly(fluoroalkylacrylate)Thin Films)」、Macromolecules、(2005)、第38巻第13号、pp.5699〜5705によれば、6個以下の炭素を有する短いフルオロアルキル基を有するポリ(フルオロアルキルアクリレート)は、最外面に高秩序のフルオロアルキル鎖が存在しないため、動的撥水性に劣るのが普通である。これは、フルオロアルキル鎖長が短くなるにつれて処理された基材の反撥性能が低下することを示唆している。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,256,731号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0052556A1号明細書
【特許文献3】米国特許出願第11/175680号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より少量のフッ素を使用しながらも反撥性および耐汚染性を大幅に改善するポリマー組成物を用いて繊維性基材を処理する方法が求められている。本発明はこのような方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材に撥水性、撥アルコール性、撥油性、および耐汚染性を付与する方法であって、式1;
[Rf(CH2kOC(O)NH(CH2kOC(O)C(T)CH2m−[Wqp− 式1
(式中、
fは、場合により少なくとも1個の酸素原子が挿入された、約2〜約8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のパーフルオロアルキル基またはこれらの組合せであり、
kは、それぞれ独立して、1〜約6の正の整数であり、
Tは、水素またはメチルであり、
mは、正の整数であり、
qは、ゼロまたは正の整数であり、
pは、ゼロまたは正の整数であり、
Wは、
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、
Xは、約1〜約20個の炭素原子を有し、場合により、トリアゾール、酸素、窒素、もしくは硫黄、またはこれらの組合せを含む2価の有機結合基であり、
Yは、OまたはN(R)(式中、Rは、HまたはC1〜C20アルキルである)であり、
Zは、H、約1〜約4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基、またはハリドであり、
Rxは、C(O)O(R1)、C(O)N(R22、OC(O)(R1)、SO2(R1)、C6(R3g(5-g)、O(R1)、ハリド、またはR1であり、
1は、それぞれ独立して、H、Cn2n+1、Cn2n−CH(O)CH2、[CH2CH2O]i4、[Cn2n]N(R42、または[Cn2n]Cn2n+1であり、
nは、1〜約40であり、
4は、HまたはCs2s+1であり、
sは、0〜約40であり、
iは、1〜約200であり、
2は、それぞれ独立して、H、またはCt2t+1(式中、tは、1〜20である)であり、
3は、それぞれ独立して、R4、COOR1、ハロゲン、N(R12、OR1、SO2NHR1、CH=CH2、またはSO3Mであり、
gは、1〜5であり、
Mは、H、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、またはアンモニウムである)である)の繰り返し単位を任意の配列で有する共重合体を含む組成物を前記基材に接触させる工程を含む方法を包含する。
【0010】
さらに本発明は、上述の式1の組成物で処理された、撥水性、撥アルコール性、撥油性、および耐汚染性を有する基材を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書においては、商標をすべて大文字で示す。本明細書におけるすべての例において、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートまたはメタクリレートのいずれか一方または両方を指す。
【0012】
本発明は、共重合体中により短い鎖長のパーフルオロアルキル基を使用することによってフッ素効率(fluorine efficiency)が改善されたフッ素化ウレタン(メタ)アクリレート共重合体で基材を処理する方法を包含する。「フッ素効率」とは、基材に適用する際に最小量のフッ素を使用して所望の表面効果(反撥性能等)を達成することができる能力または同じ量のフッ素を用いてより高い性能を得ることができる能力を意味する。フッ素効率の高い共重合体は、比較対象となる共重合体よりも少ない量のフッ素を用いて同等またはより高い表面効果を生じさせる。
【0013】
本発明の方法に用いられる共重合体は、式1の繰り返し単位を任意の配列で含む。ポリマーの配列には、ランダム、統計的、ブロック、マルチブロック、グラジエント、または交互が含まれる。式Iは、
[Rf(CH2kOC(O)NH(CH2kOC(O)C(T)CH2m−[Wqp− 式1
(式中、
fは、場合により少なくとも1個の酸素原子が挿入された、約2〜約8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のパーフルオロアルキル基またはこれらの組合せであり、
kは、それぞれ独立して、1〜約6の正の整数であり、
Tは、水素またはメチルであり、
mは、正の整数であり、
qは、ゼロまたは正の整数であり、
pは、ゼロまたは正の整数であり、
Wは、
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、
Xは、約1〜約20個の炭素原子を有し、場合により、トリアゾール、酸素、窒素、もしくは硫黄、またはこれらの組合せを含む2価の有機結合基であり、
Yは、O、S、またはN(R)(式中、Rは、HまたはC1〜C20アルキルである)であり、
Zは、H、約1〜約4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基、またはハリドであり、
Rxは、C(O)O(R1)、C(O)N(R22、OC(O)(R1)、SO2(R1)、C6(R3g(5-g)、O(R1)、ハリド、またはR1であり、
1は、それぞれ独立して、H、Cn2n+1、Cn2n−CH(O)CH2、[CH2CH2O]i4、[Cn2n]N(R42、または[Cn2n]Cn2n+1であり、
nは、1〜約40であり、
4は、HまたはCs2s+1であり、
sは、0〜約40であり、
iは、1〜約200であり、
2は、それぞれ独立して、H、またはCt2t+1(式中、tは、1〜20である)であり、
3は、それぞれ独立して、R4、COOR1、ハロゲン、N(R12、OR1、SO2NHR1、CH=CH2、またはSO3Mであり、
gは、1〜5であり、
Mは、H、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、またはアンモニウムである)である。
【0016】
式1において、Rfは、好ましくは、場合により少なくとも1個の酸素原子が挿入されている、約2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のパーフルオロアルキル基またはこれらの組合せ、より好ましくは、約4〜約6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のパーフルオロアルキル基またはこれらの組合せである。最も好ましくは、パーフルオロアルキル基は、6個の炭素原子を有する。
【0017】
式1において、mは、好ましくは0〜約10,000、より好ましくは、約5〜約2,000、またはこれらの組合せ;pは、好ましくは、1〜約10,000、より好ましくは、約5〜約2,000、またはこれらの組合せであり;qは、好ましくは、0〜約100、より好ましくは、0〜約20、またはこれらの組合せである。
【0018】
好ましいW基の例としては、メタクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル、塩化ビニリデン、およびスチレンが挙げられる。
【0019】
好適な結合基Xの例としては、直鎖、分岐鎖、または環状アルキレン、フェニル、アリーレン、アラルキレン、スルホニル、スルホキシ、スルホンアミド、カルボンアミド、カルボニルオキシ、ウレタニレン(urethanylene)、ウレイレン、およびこれらの組合せ(スルホンアミドアルキレン等)が挙げられる。
【0020】
好ましいY基の例としては、O、S、またはN(R)2(式中、Rは、HまたはC1〜C4アルキルである)が挙げられる;
共重合体は、フッ素化ウレタン(メタ)アクリル系モノマーを、アルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニリデン、アクリルアミド、スチレン、ウンデシレン酸エチル等の他のモノマーと重合することによって調製される。例えば、式1の共重合体は、モノマーを式2、
f(CH2kOC(O)NH(CH2kOC(O)C(T)=CH2 式2
(式中、
f、k、およびTは、それぞれ、上の式1と同義である)のフッ素化ウレタン(メタ)アクリレートと反応させることによって調製される。
【0021】
式1の共重合体の調製に用いられる式2のフッ素化ウレタン(メタ)アクリレートモノマーは、パーフルオロアルキルエタノールを反応性イソシアネート基および重合性ビニル二重結合を有する(メタ)アクリル酸エステルと反応させることによって調製される。好ましい反応条件は、温度を約−10℃〜約60℃にすることである。好適な任意の溶媒としては、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、アセトン、ヘキサン、または酢酸エチルが挙げられる。
【0022】
次いで、式2のフッ素化ウレタン(メタ)アクリル系モノマーを、非フッ素化(メタ)アクリレート、フッ素化(メタ)アクリレート、塩化ビニリデン、アクリルアミド、スチレン、ウンデシレン酸エチル等の他のモノマーと重合することによって、式1の共重合体が調製される。
【0023】
本発明の方法に使用される式1の共重合体の調製に用いるのに好適な非フッ素化(メタ)アクリレートモノマーは、そのアルキル基が1〜20個の炭素原子またはこれらの組合せ、好ましくは8〜18個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖である、アルキル(メタ)アクリレートを含む。C2〜C20アルキル(メタ)アクリレート(直鎖または分岐)を例示すると、これらに限定されるものではないが、アルキル基がメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソアミル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、イソデシル、ラウリル、セチル、またはステアリルである、アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましい例は、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、およびステアリルアクリレートである。
【0024】
さらなる繰り返し単位を含む式1の共重合体を調製するための重合反応にはさらなる任意のモノマーも使用することができる。このような任意のモノマーとしては、N−メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキルオキシ(メタ)アクリレート、フッ素化(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート、アミノアルキルメタクリレート塩酸塩、アクリルアミド、アルキルアクリルアミド、酢酸ビニル、ステアリン酸ビニル、アルキルビニルスルホン、スチレン、ビニル安息香酸、アルキルビニルエーテル、無水マレイン酸、塩化ビニリデン、塩化ビニル、および他のオレフィンが挙げられる。
【0025】
任意のN−メチロールモノマーとしては、これらに限定されるものではないが、N−メチロールアクリルアミドおよびN−メチロールメタクリルアミドが例示される。任意のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのアルキル鎖長は、炭素原子2〜4個の範囲であり、2−ヒドロキシエチルアクリレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレートが例示される。任意のアルキルオキシ(メタ)アクリレートも同じく、アルキル鎖長が炭素原子2〜4個の範囲にあり、ガスクロマトグラフィー/質量分析測定によれば、1分子当たり1〜12個のオキシアルキレン単位、好ましくは1分子当たり4〜10個のオキシアルキレン単位、最も好ましくは1分子当たり6〜8個のオキシアルキレン単位を含む。ポリ(オキシアルキレン)(メタ)アクリレートの具体例としては、これらに限定されるものではないが、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとエチレンオキシドとの反応生成物が例示される。9モルのエチレンオキシドと反応させることによって、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/9−エチレンオキシド付加物が得られ、6モルのエチレンオキシドと反応させることによって、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/6−エチレンオキシド付加物が得られる。他の好適な任意の非フッ素化モノマーは、スチレン、無水マレイン酸、および塩化ビニリデンである。この種の任意のモノマーが存在する場合は、当業者に周知の従来の重合方法が用いられる。
【0026】
式1のフッ素化ウレタン(メタ)アクリレート共重合体は、1種または複数種の界面活性剤を含む有機溶媒または水中において、式2のフッ素化ウレタン(メタ)アクリル系モノマーと上に列挙した他の任意のモノマーとの混合物のフリーラジカルで開始される重合によって調製される。本発明のフッ素化共重合体は、上述のモノマーを1種または複数種の界面活性剤を含む有機溶媒または水中において撹拌装置および外部加熱冷却装置を備えた好適な反応器内で撹拌することによって作製される。式2のフッ素化モノマー対他のモノマーの比率は、少なくとも0.1対1、好ましくは、少なくとも0.5対1、より好ましくは少なくとも1対1、より好ましくは少なくとも2対1、またはそれを超える。ラジカル開始剤を添加した後、温度を約20°から約70℃に昇温する。重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン二塩酸塩または2,2’−アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩が例示される。これらの開始剤は本願特許出願人から「バゾ(VAZO)」の名称で市販されている。好適な重合調節剤または連鎖移動剤の例としては、ドデシルメルカプタンが挙げられる。本発明の式1の共重合体の調製に有用な好適な有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルイソブチルケトン、イソプロパノール、酢酸エチル、およびこれらの混合物が挙げられる。テトラヒドロフランが好ましい。反応は、窒素等の不活性ガス中で酸素を排除して実施される。ポリマーは、場合により析出によって単離され、場合により、例えば再結晶化させることによって精製される。溶媒を蒸発によって除去するかまたは希釈および基材に適用するために溶液をそのまま保持する。この反応の生成物が、式1のフッ素化ウレタン(メタ)アクリレート共重合体である。
【0027】
結果として得られた式1のフッ素化ウレタン(メタ)アクリレート共重合体は、次いで、基材に適用されるかまたは水で希釈されるかまたは最終的に基材に適用するための溶媒として好適な単純なアルコールおよびケトンからなる群から選択される溶媒(以下、「適用溶媒」)中にさらに分散もしくは溶解される。
【0028】
別法として、界面活性剤を用いて従来の方法により作製される水性分散液は、溶媒を蒸発によって除去し、当業者に周知の乳化または均質化手順を用いることによって調製される。この種の無溶剤型エマルジョン(solvent−free emulsion)は、引火性および揮発性有機化合物(VOC)に関する問題が最小限に抑えられるので好ましい。
【0029】
基材に適用される最終生成物は、式1のフッ素化ウレタン(メタ)アクリレート共重合体の分散液(水系の場合)または溶液(水以外の溶媒が使用される場合)である。
【0030】
本発明は、上述した式1のフッ素化ウレタン(メタ)アクリレート共重合体溶液または分散液を基材と接触させることを含む、基材に撥油性、撥水性、撥アルコール性、または耐汚染性を付与する方法を包含する。好適な基材としては、以下に定義する繊維性基材が挙げられる。
【0031】
フッ素化ウレタン(メタ)アクリレート共重合体溶液または分散液は、任意の好適な方法によって基材に適用される。このような方法としては、これらに限定されるものではないが、吸尽、気泡、フレックス−ニップ(flex−nip)、ニップ、パディング、キスロール、ベック(beck)、綛、ウインチ、注液、オーバーフロー・フラッド(overflow flood)、回転(roll)、ブラシ、ローラ(roller)、スプレー、含浸(dipping)、浸漬(immersion)等による適用が挙げられる。また、ベック染色工程、連続染色工程、または糸条塗布(thread−line application)を用いても適用される。
【0032】
フッ素化ウレタン(メタ)アクリレート共重合体溶液または分散液は、そのまままたは他の任意の織物仕上げ剤もしくは表面処理剤と組み合わせて基材に適用される。
【0033】
このような任意のさらなる成分としては、さらなる表面効果を達成するための処理剤もしくは仕上げ剤またはこの種の薬剤もしくは仕上げ剤と一緒に慣用されている添加剤が挙げられる。このようなさらなる成分には、ノーアイロン性、イージーアイロン性、防縮性、防しわ性、パーマネントプレス性、調湿性、柔軟性、強度、スリップ防止性、帯電防止性、抗スナッグ性、抗ピル性、染み付着防止性(stain repellency)、染み脱離性(stain release)、汚れ付着防止性(soil repellency)、汚れ脱離性(soil release)、撥水性、撥油性、防臭性、抗菌性、日光防御性、洗濯容易性、および類似の効果等の表面効果を付与する化合物または組成物が含まれる。この種の1種または複数種の処理剤または仕上げ剤は、式Iの共重合体の前、後、または同時に基材に適用される。例えば、繊維性基材の場合、合成または綿布帛を処理する際は、本願特許出願人より入手可能なアルカノール(ALKANOL)6112等の湿潤剤を使用することが望ましい場合がある。綿または綿混布帛を処理する場合は、サウスカロライナ州チェスターのオムノバ・ソリューションズ(Omnova Solutions,Chester,SC)より入手可能なパーマフレッシュ(PERMAFRESH)EFC等の防しわ用樹脂を使用してもよい。
【0034】
場合により、このような処理剤または仕上げ剤と一緒に慣用される、界面活性剤、pH調整剤、架橋剤、湿潤剤、ワックスエクステンダー(wax extender)、および当業者に周知の他の添加剤等の他の添加剤も存在する。好適な界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性、N−オキシド、および両性界面活性剤が挙げられる。コネチカット州グリニッジのウィトコ・コーポレーション(Witco Corporation,Greenwich,CT)からデュポノール(DUPONOL)WAQEまたはスプラレート(SUPRALATE)WAQEとしてまたはテキサス州ヒューストンのウィトコ(Witco,Houston TX)からスプラレートWAQEとして入手可能なラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤が好ましい。この種の添加剤としては、例えば、加工助剤、起泡剤、潤滑剤、防汚剤(anti−stain)等が挙げられる。この組成物の適用は、製造施設において、小売業者の所在地において、もしくは敷設および使用前に行われるかまたは消費者の所在地において行われる。
【0035】
本発明の式1のフッ素化ウレタン(メタ)アクリレート共重合体溶液または分散液の適用比は基材の多孔性に依存する。処理された繊維性基材のフッ素含有量は、典型的には、重量で、1グラム当たり約100マイクログラム〜1グラム当たり約10,000マイクログラムである。好ましくは、フッ素含有量は、1グラム当たり約1,000マイクログラム〜1グラム当たり約4,000マイクログラムである。
【0036】
場合により、耐久性をさらに高めることを目的として、ブロック化イソシアネートを式1の組成物と一緒に(すなわち、イソシアネートブレンド物として)添加する。本発明において使用するのに好適なブロック化イソシアネートとしては、例えば、ニュージャージー州ハイポイントのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals,High Point,NJ)より入手可能なハイドロフォボル(HYDROPHOBOL)XANが挙げられる。他の市販のブロック化イソシアネートも本明細書において使用するのに好適である。ブロック化イソシアネートの添加が望ましいかどうかは共重合体の特定の用途に依存する。現時点で想定されている用途のほとんどにおいては、鎖間の十分な架橋または基材への結合を達成する目的でこれを存在させることは必要ではない。イソシアネートブレンド物として添加される場合は、約20重量%までの量で添加される。
【0037】
場合により、潜在的なフッ素効率をさらに高めるために、非フッ素化エクステンダー組成物も適用組成物に含まれていてもよい。このような任意のエクステンダーポリマー組成物としては、例えば、2005年7月6日に出願された同時係属中の(特許文献2)(CH2996)および2005年7月6日に出願された(特許文献3)(CH3048)に開示されているものがある。
【0038】
所与の基材に対する最適な反撥性処理は、(1)フッ素化共重合体の性質、(2)基材表面の性質、(3)表面に適用されるフッ素化共重合体の量、(4)フッ素化共重合体を表面に適用する方法、および他の多くの要素に依存する。フッ素化共重合体反撥性付与剤(repellent)には、多くの異なる基材上で良好に作用するものがあり、これは、油、水、および他の幅広い液体に対し反撥性を示す。他のフッ素化共重合体反撥性付与剤は、ある種の基材上で優れた撥水性を示すかまたはより多くの添加量を必要とする。
【0039】
本発明はまた、上述した式1のフッ素化ウレタン(メタ)アクリレート共重合体溶液または分散液で処理された基材も包含する。好適な基材としては、繊維性基材が挙げられる。繊維性基材としては、繊維、糸、布帛、混用布帛、織物、不織物、紙、皮革、およびカーペットが挙げられる。これらは、綿、セルロース、羊毛、絹糸、レーヨン、ナイロン、アラミド、アセテート、アクリル、ジュート、サイザル、海草、コイア、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリアラミド、またはこれらの混用品等の天然または合成繊維から作られる。「混用布帛(fabric blend)」とは、2種以上の繊維から作られた布帛を意味する。典型的には、このような混用品は、少なくとも1種の天然繊維および少なくとも1種の合成繊維の組合せであるが、2種以上の天然繊維または2種以上の合成繊維の混用品も包含され得る。不織物基材としては、例えば、本願特許出願人より入手可能なソンタラ(SONTARA)等のスパンレース不織物およびスパンボンド−メルトブロー−スパンボンド不織物が挙げられる。本発明の処理された基材は、優れた撥水性、撥油性、撥アルコール性、および耐汚染性を有する。しかしながら、ポリプロピレンから作製されたものなどのスパンボンド−メルトブロー−スパンボンド不織物は、未処理であっても、本来十分な撥水性および撥アルコール性を有している。
【0040】
(発明の効果)
本発明の方法は、処理された基材に優れた撥水性、撥アルコール性、撥油性、および耐汚染性のうちの1つまたは複数を付与するのに有用である。本発明の方法に使用されるフッ素化ウレタン(メタ)アクリレート共重合体によって、約2〜約8個の炭素原子を含む、より短い、したがって、より高いフッ素効率を有するフルオロアルキル基を使用することが可能になる。従来の市販の(メタ)アクリレートが、フルオロアルキル基が8個未満の炭素原子を含む場合、典型的には、撥油および撥水性能に劣るものになる。本発明の処理された基材は、衣料品、防護衣料、カーペット、アップホルスタリー、備え付け家具(furnishings)、および他の用途等の様々な用途および製品に有用である。優れた反撥性は表面をきれいに保つのに役立ち、したがって、より長期間の使用を可能にする。
【0041】
(試験方法)
(試験方法1)
パッド浴(含浸)工程を用いてエマルジョンをパディングにて適用するための共重合体分散液を用いて布帛を処理した。実施例の表に詳述するフッ素化生成物を0.2〜2%含有する浴を用いて布帛基材を処理した(多くの場合は、試験に規定したブロック化エクステンダーおよび/または柔軟剤と組み合わせた)。湿潤剤も含有させた。適用後、布帛を乾燥させた。処理および硬化後に布帛を室温まで放冷した。
【0042】
実施例に記載された手順に従い調製されたフッ素化ウレタン共重合体を用いて布帛を処理した。フッ素化ウレタン共重合体を、綿100%織布、ナイロン100%織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドポリプロピレン(SMS PP)不織布、ソンタラ不織布等の様々な基材に適用した。布帛を約12インチ×12インチ(30.5cm×30.5cm)の正方形片に裁断した。実施例に記載された手順に従い調製された共重合体をテトラヒドロフランで希釈し、滴下ピペットを用いて布帛に適用した。布帛にはちょうど布帛に十分に染み込む数の滴を適用した。テトラヒドロフラン溶液中のフッ素化ウレタン共重合体の濃度は、布帛上に目標量のフッ素が適用されるように調整した。適用後、布帛を少なくとも18時間自然乾燥させた。以下に説明する試験方法2および3を用いて、この布帛の撥水性および撥油性について試験を実施した。
【0043】
(試験方法2−撥イソプロピルアルコール性/撥水性)
処理された基材の撥アルコール性および撥水性を、AATCC標準試験方法No.193−2004およびデュポン技術研究所法(デュポン・テクニカル・ラボラトリー・メソッド;DuPont Technical Laboratory Method)(テフロン国際規格および品質管理試験(テフロン・グローバル・スペシフィケーションズ・アンド・クオリティ・コントロール・テスツ;TEFLON Global Specifications and Quality Control Tests)資料集に概要が記載)に従い測定した。この試験によって、処理された基材の水性液体による湿潤に対する耐性が測定される。様々な表面張力を有する水−アルコール混合物の滴を基材に載せ、表面が湿潤した程度を目視で判定する。
【0044】
撥水性試験液の組成を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
試験液1を処理された基材に載せる。10秒後、真空吸引を用いて滴を除去する。液体の侵入も部分的な吸収(基材上により暗色の湿った斑点が見える)もないことが認められたら、試験液2で試験を繰り返す。液体の侵入(基材上により暗色の湿った斑点が見える)が認められるまで、試験液3およびより番号の大きい試験液に順次進んで試験を繰り返す。基材に試験液が浸入しない最大の番号を試験結果とする。評点が高いほど撥水性が高いことを示す。
【0047】
(試験方法3−撥油性)
処理された布帛試料の撥油性を、AATCC標準試験方法No.118を改変して以下のように実施することにより試験を行った。上述したポリマーの水性分散液で処理された布帛試料を、23℃、相対湿度+20%および65℃、相対湿度+10%で最低2時間維持する。次いで、以下の表2に定める一連の有機液体を布帛試料に滴下する。番号の最も小さい試験液(撥水性評点No.1)から開始し、3箇所にそれぞれ1滴(直径約5mmまたは体積約0.05mL)ずつを少なくとも5mmの間隔を空けて載せる。この滴を30秒間観察する。この時間が経過した後も、3滴のうち2滴が、滴の周囲へと吸い上げられることなく依然として球形であった場合は、その近くの位置に、その次に大きい番号の液体を3滴載せて、同じように30秒間観察する。試験液のいずれか1種が、3滴のうち2滴が球形もしくは半球形を維持できなくなるかまたは湿潤もしくは吸い上げが起こるまでこの手順を続ける。
【0048】
3滴のうち2滴が30秒間吸い上げられることなく球形または半球形を維持した最も大きい番号の試験液をその布帛の撥油性の評点とする。一般に、処理された布帛の評点が5以上であれば良好ないし極めて優れていると考えられ、布帛の評点が1以上であれば特定の用途に使用することができる。
【0049】
【表2】

【0050】
(試験方法4−汚染促進試験)
ドラムミル(ローラ上)を用いて、カーペット試料の上で人工汚れを回転させた。人工汚れは、AATCC試験方法123−2000、第8項に記載されたように調製した。汚れで覆われたビーズを以下のようにして調製した。人工汚れ3gおよびきれいなナイロン樹脂ビーズ(サーリン(SURLYN)アイオノマー樹脂ビーズ、直径1/8〜3/16インチ(0.32〜0.48cm)1リットルをきれいな空のキャニスターに入れた。サーリンは、本願特許出願人より入手可能なエチレン/メタクリル酸共重合体である)。キャニスターの蓋を閉じてダクトテープで密閉し、キャニスターをローラ上で5分間回転させた。汚れで覆われたビーズをキャニスターから取り出した。
【0051】
ドラムに挿入するカーペット試料を以下のように調製した。これらの試験に用いるカーペット試料全体の寸法を8×25インチ(20.3×63.5cm)とした。試験試料1枚および対照試料1枚を同時に試験した。すべてのカーペット試料のパイルを同じ方向に寝かせた。それぞれのカーペット試料の短辺側を機械方向に切断した(房の列と一緒に)。これらを一緒に固定できるように、カーペット片の裏面に強力な粘着テープを貼りつけた。カーペット試料を、きれいな空のドラムミルに、房がドラムの中央を向くように入れた。頑丈なワイヤーを用いてカーペットをドラムミル内の所定の位置に固定した。汚れに覆われた樹脂ビーズ250ccおよびボールベアリング250cc(直径5/16インチ、0.79cm)をドラムミルに装入した。ドラムミルの蓋を閉めてダクトテープで密閉した。ドラムをローラ上で2 1/2分間、105rpmで運転した。ローラを停止して、ドラムミルの方向を反転させた。ドラムをローラ上でさらに2 1/2分間、105rpmで運転した。カーペット試料を取り出し、均一に吸引して余分な汚れを取り除いた。汚れに覆われたビーズを廃棄した。
【0052】
汚れたカーペットの試験品および対照品と元の汚れていないカーペットとの色差デルタEを測定した。汚染促進試験に従い各カーペットの測色をカーペット上で実施した。各対照および試験試料についてカーペットの測色を行い、試料を汚し、汚れたカーペットについて測色を行った。デルタEは、汚れた試料および汚れていない試料の色差を正の数値で表したものである。ミノルタ・クロマ・メーター(Minolta Chroma Meter)CR−310を用いて各物品について色差を測定した。色の読み取りは、カーペット試料の異なる5つの範囲で行い、デルタEの平均値を記録した。各試験品の対照用カーペットは、試験品と同色および同一構成とした。対照用カーペットは、フルオロケミカルで処理されていないものである。
【0053】
ドラム汚染後に阻止された汚染の割合を「ドラム汚染後に阻止された汚染(%)」として以下の計算に従い算出した:
【0054】
【数1】

【実施例】
【0055】
(実施例)
特段の指定がない限り、実施例の項の表のフッ素測定値はすべて、処理された布帛またはカーペットの総重量に対するフッ素の重量比である。実施例に使用されるモノマーA、B、およびCを以下のように調製した。
【0056】
(モノマーA)
オーバーヘッドスターラー、2個の滴下漏斗、熱電対、および窒素通気系を取り付けた1000mLの四頚丸底フラスコに、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール(81.1g、0.223mol、1.05当量)および乾燥ヘキサン(175mL)を加えた。−10℃に冷却した後、温度を0℃未満に維持しながら、乾燥ヘキサン(175mL)中の2−イソシアナトエチルメタクリレート(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)より購入)(30mL、0.212mol、1.0当量)を滴下した。次いで、温度を0℃未満に維持しながら、乾燥ヘキサン(35mL)中のジブチルスズジラウレート(1.0mL、0.0017mol、0.008当量)を滴下した。反応に任せて室温(約20℃)まで昇温させた。無色透明な溶液が得られた。1時間後、試料をGCおよびLC/MS(API−ES+)用に取り出した。GCでは、出発物質である3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノールは示されなかった。LC/MSでは、所望の生成物である2−プロペン酸,2−メチル−,2−[[[(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)オキシ]カルボニル]アミノ]エチルエステル(M+HおよびM+Na)の存在が示された。2時間後、反応混合物を−10℃に冷却して生成物を析出させた。スラリーを30分間撹拌した後、中サイズ(medium)のフリットで濾過した。単離された固体を少量の冷ヘキサンで洗浄した後、窒素ボンネット(bonnet)中で乾燥した。乾燥工程の途中で、乾燥を促進し、大きな塊を砕くために、固体を乳鉢および乳棒で粉砕した。重量が一定になるまで乾燥し、生成物である2−プロペン酸,2−メチル−,2−[[[(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)オキシ]カルボニル]アミノ]エチルエステル100.8g(92%)を、35〜36℃で融解するロウ状の白色固体として得た。NMR(1H、13C、および19F−NMR、CDCl3中)、LC/MS(API−ES+)、および(APCI+)により、所望の生成物であることを確認した。GCではピークが1本しか現れなかった。
【0057】
(モノマーB)
モノマーAの手順ならびに2−イソシアナトエチルメタクリレートおよび3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノールに替えて3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノールを用いて反応を実施した。生成した生成物は、2−プロペン酸,2−メチル−,2−[[[(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル)オキシ]カルボニル]アミノ]エチルエステルであり、収率は81%であった。
【0058】
(モノマーC)
モノマーAの手順ならびに2−イソシアナトエチルメタクリレートおよび3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノールに替えて3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロ−1−デカノールを用いて反応を実施した。生成した生成物は2−プロペン酸,2−メチル−,2−[[[(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)オキシ]カルボニル]アミノ]エチルエステルであり、収率は92%であった。
【0059】
(実施例1)
冷却器、メカニカルスターラー、気体導入口、および気体排出口を取り付けた500mLの四頚丸底フラスコに、モノマーA(4.20グラム、0.00809mol)、ステアリルアクリレート(1.31グラム、0.00405mol)、ドデシルメルカプタン(0.30グラム)、バゾ67(0.75グラム)、およびTHF(95グラム)を加えた。20℃で1時間撹拌しながら、乾燥窒素を溶液中にゆっくりとバブリングすることにより酸素を除去した。窒素バブリングを窒素置換に替えて反応混合物を撹拌しながら70℃で12時間加熱した。これを冷却した後、反応混合物をガスクロマトグラフィーによって分析し、95%を超えるモノマーが重合したことを確認した。この共重合体溶液を、さらなる特性評価を行うことなく、実施例2〜18に記載するように、試験方法1を用いて布帛に適用した。処理された布帛の撥水性および撥油性に関する試験を、試験方法2および3を用いて実施した。結果を表4に列挙する。
【0060】
(実施例2〜25)
実施例2〜実施例25の各実施例においては、実施例1の手順を用いて表3に列挙した共重合体を調製した。結果として得られた共重合体実施例2〜18を、試験方法1を用いて、以下の表4に記載する様々な布帛に、最終添加量が重量で1グラム当たりフッ素約4000マイクログラムとなるように、それぞれテトラヒドロフラン溶液から適用した。試験に使用した綿布帛は、エイボンデール・ミルズ(Avondale Mills)(サウスカロライナ州ウォーレンビル(Warrenville,SC))製の、目付量が210グラム/平方メートルの綿織布であり、染色してあるが仕上げ処理されていないものである。試験に使用したナイロン布帛は、エイボンデール・ミルズ(サウスカロライナ州ウォーレンビル)製の、目付量が76グラム/平方メートルであるナイロン織布であり、染色してあるが仕上げ処理されていないものである。試験に使用された不織布は、キンバリー・クラーク(Kimberly−Clark)(ジョージア州ロズウェル(Roswell,GA))製の、目付量が39グラム/平方メートルであるスパンボンド−メルトブロー−スパンボンドポリプロピレン不織布(SMS PP)である。ソンタラ布帛は、目付量が80グラム/平方メートルである、本願特許出願人により製造されたスパンレースポリエステル−セルロース性化合物である。試験方法2および3を用いて、処理された布帛の撥水性および撥油性に関する試験を実施した。結果を表4に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
表4のデータから、本発明の方法に用いられた幅広い共重合体によって、撥水性、撥アルコール性、および撥油性が付与されることがわかる。この共重合体が、綿およびナイロン織布ならびにソンタラスパンレース不織布上において良好ないし極めて優れた撥水性/撥IPA性を示すことが実証された。本発明の方法に使用される共重合体が、綿織布およびソンタラ不織布上において良好ないし極めて優れた撥油性を示すことが実証された。ナイロンの場合は、どの実施例においても、未処理の対照と比較して撥油性が改善された。スパンボンド−メルトブロー−スパンボンドポリプロピレン不織布においては、本発明に用いられる共重合体によって、未処理の対照と比較して撥油性が改善された。実施例12は、この不織物上では撥油性に劣るという結果となった(おそらく、使用したモノマーCの量が非常に少なかったため)が、その一方で、同一のコモノマーと一緒により多量のモノマーCを含む実施例13および14においては、優れた反撥性が示された。
【0064】
実施例3の共重合体のテトラヒドロフラン中溶液を、一連の異なる処理量比でソンタラ布帛に適用した。結果を表5に示す。
【0065】
【表5】

【0066】
表5のデータから、本発明の方法に使用された共重合体が、適用量が比較的少なくても有効であったことがわかる。実施例3は、ソンタラ不織布上におけるフッ素が200〜6000重量ppmの場合に非常に高い撥油性を示し、ソンタラ不織布上におけるフッ素が2000〜6000重量ppmの場合に良好な撥IPA性/撥水性を示す。
【0067】
黄色に染色された市販のナイロン−6,6のカーペットである4穴ホロウフィル・インビスタ・アントロン(hollowfil INVISTA−ANTRON)レベルループ28oz/yd2(0.9kg/m2)カーペットを、実施例17、21、22、および23の共重合体で処理し、上述の試験方法2、3、および4を用いて汚染および反撥性能について試験した。結果を表6に示す。
【0068】
【表6】

【0069】
表6のデータから、本発明の方法に使用された共重合体をカーペット地に適用することによって、カーペット繊維のフッ素重量が130ppmという低量であってさえも、有効な乾燥汚れ耐性が付与されることがわかる。
【0070】
(実施例26)
プラスチック製ビーカー内で、脱イオン水を36.7グラム、トリデカノール−5EO(エタール(ETHAL)TDA−5、サウスカロライナ州グリーンビルのイーソックス・ケミカルズ(Ethox Chemicals,Greenville,SC)より入手可能なエマルジョンの安定化に用いられる非イオン性界面活性剤)を2.0グラム、オクタデシルメチル[ポリオキシエチレン(15)]アンモニウムクロリド(エソカード(ETHOQUAD)18/25、イリノイ州シカゴのアクゾ−ノーベル(Akzo−Nobel,Chicago,Illinois)より入手可能な、エマルジョンの安定化に用いられるカチオン性界面活性剤)を7.1グラム、7EOメタクリレート(ブレンマー(BLEMMER)350、ニューヨーク州ホワイトプレーンズのNOF−アメリカ(NOF−America,White Plains,NY)より入手可能なコモノマー)を0.6グラム、ステアリルメタクリレートを5.2グラム、ヒドロキシメチルアクリルアミドを0.6グラム、ヒドロキシエチルメタクリレートを0.3グラム、ドデシルメルカプタンを0.16グラム、ジプロピレングリコールを8.6グラム、および上述したように調製されたモノマーBを24.4グラムを合一した。反応混合物を55℃に加熱し、超音波処理装置で均一な乳白色のエマルジョンが得られるまで2分間乳化させた。この溶液を、窒素置換(nitrogen blanket)、冷却器、オーバーヘッドスターラー、および温度プローブを備えた250mLのフラスコに仕込み、窒素散気し、170rpmで撹拌した。温度が約30℃未満に降下したら、フラスコを窒素置換し、塩化ビニリデン1.8グラムを加えた。溶液を15分間撹拌した。15分後、脱イオン水6.77グラム中のバゾ−50開始剤(本願特許出願人より入手可能)0.18グラムを加えた。次いで、反応混合物を50℃で30分以上加熱した。溶液を50℃で8時間撹拌した。8時間後、溶液を室温に冷却し、脱イオン水21.25グラム中のスプラレートWAQE(テキサス州ヒューストンのウィトコより入手可能)0.19グラムを撹拌しながら15分間かけて加えた。次いで、この溶液を、ミルクフィルターを通して頚部を有する小さな瓶に重力濾過した。
【0071】
結果として得られた共重合体分散液を綿100%布帛および綿/ポリエステル35%/65%混用布帛に試験方法1のパッド浴(含浸)工程を用いて適用した。パッド浴中に使用するフッ素化共重合体分散液の量は、布帛上のフッ素量が、1重量グラム当たりフッ素1500〜2000マイクログラムに達するように計算した。パッド浴中にブロック化イソシアネート約10g/Lを使用した。ブロック化イソシアネートは、ノースカロライナ州ハイポイントのチバ・スペシャルティ・ケミカルズより入手可能なハイドロフォボルXANを使用した。防しわ用樹脂である、サウスカロライナ州チェスターのオムノバ・ソリューションズより入手可能なパーマフレッシュEFCを70g/L含有させた。適用後、布帛を約160℃で約3分間硬化させた。処理および硬化後の布帛を「静置(rest)」した。上述の試験方法2および3を用いて、綿布帛の撥水性および撥油性について試験した。結果を表7に示す。
【0072】
(実施例27)
乳化共重合において、上述したように調製したモノマーAを19.5グラムをモノマーBに替えて使用したことを除いて、実施例26の手順を用いた。結果として得られた共重合体分散液を、試験方法1のパッド浴(含浸)工程を用いて、綿100%布帛および綿/ポリエステル35%/65%混用布帛に適用した。パッド浴中に用いたフッ素化共重合体分散液の量は、布帛上のフッ素量が、1重量グラム当たりフッ素1500〜2000マイクログラムに達するように計算した。パッド浴中にブロック化イソシアネートを約10g/L使用した。ブロック化イソシアネートとして、ノースカロライナ州ハイポイントのチバ・スペシャルティ・ケミカルズより入手可能なハイドロフォボルXANを使用した。防しわ用樹脂である、サウスカロライナ州チェスターのオムノバ・ソリューションズより入手可能なパーマフレッシュEFCを70g/L含有させた。適用後、布帛を約160℃で約3分間硬化させた。処理および硬化後の布帛を「静置」した。綿布帛の撥水性および撥油性について、上述した試験方法2および3を用いて試験した。結果を表7に示す。
【0073】
(実施例28)
乳化共重合において、上述したように調製されたモノマーCを19.5グラムをモノマーBに替えて使用したことを除いて、実施例26の手順を用いた。結果として得られた共重合体分散液を、綿100%布帛および綿/ポリエステル35%/65%混用布帛に、試験方法1のパッド浴(含浸)工程を用いて適用した。パッド浴中に用いられたフッ素化共重合体分散液の量は、布帛上のフッ素量が、1重量グラム当たりフッ素1500〜2000マイクログラムに達するように計算した。パッド浴中にはブロック化イソシアネートを約10g/L使用した。ブロック化イソシアネートとして、ノースカロライナ州ハイポイントのチバ・スペシャルティ・ケミカルズより入手可能なハイドロフォボルXANを使用した。防しわ用樹脂である、サウスカロライナ州チェスターのオムノバ・ソリューションズより入手可能なパーマフレッシュEFCを70g/L含有させた。適用後、布帛を約160℃で約3分間硬化させた。処理および硬化後の布帛を「静置」した。綿布帛の撥水性および撥油性について、上述した試験方法2および3を用いて試験した。結果を表7に示す。
【0074】
【表7】

【0075】
表7に示すデータから、本発明に用いられた、フッ素化ウレタン(メタ)アクリレートモノマーの乳化共重合によって調製された共重合体を、ポリエステル/綿または綿100%織布のいずれに適用しても、有効な撥油性、撥水性、および撥アルコール性が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に撥水性、撥アルコール性、撥油性、および耐汚染性を付与する方法であって、前記基材を、式1:
[Rf(CH2kOC(O)NH(CH2kOC(O)C(T)CH2m−[Wqp− 式1
(式中、
fは、場合により少なくとも1個の酸素原子が挿入された、約2〜約8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のパーフルオロアルキル基またはこれらの組合せであり、
kは、それぞれ独立して、1〜約6の正の整数であり、
Tは、水素またはメチルであり、
mは、正の整数であり、
qは、ゼロまたは正の整数であり、
pは、ゼロまたは正の整数であり、
Wは、
【化1】

(式中、
Xは、約1〜約20個の炭素原子を有し、場合により、トリアゾール、酸素、窒素、もしくは硫黄、またはこれらの組合せを含む2価の有機結合基であり、
Yは、OまたはN(R)(式中、Rは、HまたはC1〜C20アルキルである)であり、
Zは、H、約1〜約4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基、またはハリドであり、
Rxは、C(O)O(R1)、C(O)N(R22、OC(O)(R1)、SO2(R1)、C6(R3g(5-g)、O(R1)、ハリド、またはR1であり、
1は、それぞれ独立して、H、Cn2n+1、Cn2n−CH(O)CH2、[CH2CH2O]i4、[Cn2n]N(R42、または[Cn2n]Cn2n+1であり、
nは、1〜約40であり、
4は、HまたはCs2s+1であり、
sは、0〜約40であり、
iは、1〜約200であり、
2は、それぞれ独立して、H、またはCt2t+1(式中、tは、1〜20である)であり、
3は、それぞれ独立して、R4、COOR1、ハロゲン、N(R12、OR1、SO2NHR1、CH=CH2、またはSO3Mであり、
gは、1〜5であり、
Mは、H、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、またはアンモニウムである)である)の繰り返し単位を任意の配列で有する共重合体を含む組成物と接触させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
fが、約4〜約6個の炭素原子またはこれらの組合せを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
fが、6個の炭素原子を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
kが、2であり、Tが、メチルであり、Wが、メタクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル、塩化ビニリデン、およびスチレンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Wが、ステアリルアクリレートまたはステアリルメタクリレートであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、任意のモノマーからの繰り返し単位をさらに含み、前記モノマーが、アルキル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキルオキシ(メタ)アクリレート、フッ素化(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート、アミノアルキルメタクリレート塩酸塩、アクリルアミド、アルキルアクリルアミド、酢酸ビニル、ステアリン酸ビニル、アルキルビニルスルホン、スチレン、安息香酸ビニル、アルキルビニルエーテル、無水マレイン酸、塩化ビニリデン、塩化ビニル、およびオレフィンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アルキル(メタ)アクリレートが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソアミル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、イソデシル、ラウリル、セチル、またはステアリルであるアルキル基を含み、好ましくは、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、およびステアリルアクリレートであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、ノーアイロン性、イージーアイロン性、防縮性、防しわ性、パーマネントプレス性、調湿性、柔軟性、強度、スリップ防止性、帯電防止性、抗スナッグ性、抗ピル性、染み付着防止性、染み脱離性、汚れ付着防止性、汚れ脱離性、撥水性、撥油性、防臭性、抗菌性、もしくは日光防御性、またはこれらの組み合わせである表面効果を提供する少なくとも1種の薬剤の存在下に適用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、界面活性剤、酸化防止剤、耐光剤、染色堅牢度向上剤(color fastness agent)、水、pH調整剤、架橋剤、湿潤剤、エクステンダー、起泡剤、加工助剤、潤滑剤、ブロック化イソシアネート、非フッ素化およびエクステンダーの少なくとも1種またはこれらの組合せの存在下に適用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物が適用されていることを特徴とする繊維性基材。

【公表番号】特表2009−542844(P2009−542844A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518187(P2009−518187)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/014642
【国際公開番号】WO2008/005209
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】