説明

収納庫の施解錠装置

【課題】電磁ソレノイドを用いて収納庫の施解錠を行う施解錠装置において、電磁ソレノイドに供給される電力の消費を効果的に低減できる収納庫の施解錠装置を提供すること。
【解決手段】電磁ソレノイド21は、励磁状態において、弾性付勢手段45の付勢力に抗して可動軸37の先端が回転体33から退避されるとともに、非励磁状態において、弾性付勢手段45の付勢力により可動軸37が回転体方向に向けて付勢されて、可動軸37の先端が回転体33の外周面に当接する当接状態または係合溝38に係合される係合状態となるように設けられており、係合状態において回転体33が回動不能となることで、作動板46が施錠位置で保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者による操作が可能な操作手段の操作に応じて施解錠が行われる収納庫の施解錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の収容庫の施解錠装置には、キー操作により回動するシリンダ錠の回動軸と一体的に回動する収容部材に電動アクチュエータ(電磁ソレノイド)を収容固定するとともに、この収容部材には、その回動軸心から偏心した位置に偏心軸が設けられ、収容部材が回動されることで偏心軸が係合された作動板が直線往復運動するようになっており、電動アクチュエータの駆動若しくは手動によるキー操作によって、収容部材を回動させて作動板を直線往復運動させて収容庫を施錠状態若しくは解錠状態にしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−97126号公報(第3頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の収容庫の施解錠装置にあっては、電気的なトラブルが生じた非常時においてキー操作により施解錠を行うとともに、通常時には、電動アクチュエータ(電磁ソレノイド)により施解錠を行っている。電動アクチュエータは収容庫を施錠状態若しくは解錠状態にするための作動板を直接的に動かすため、比較的駆動力の大きな電動アクチュエータを用いる必要があり、電動アクチュエータに供給される電力の消費量が嵩んでしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、電磁ソレノイドを用いて収納庫の施解錠を行う施解錠装置において、電磁ソレノイドに供給される電力の消費を効果的に低減できる収納庫の施解錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の収納庫の施解錠装置は、
使用者による操作が可能な操作手段の操作に応じて施解錠が行われる収納庫の施解錠装置であって、
前記操作手段の操作に応じて軸心周りに回動自在に設けられた円柱状部材からなるとともにその外周面の一部に係合溝が形成された回転体と、
収納庫の本体部に形成された被係合部に係合する施錠位置と該施錠位置から退避する解錠位置との間で前記回転体の回動に連動して移動自在に設けられる作動板と、
弾性付勢手段により前記回転体に向けて付勢された可動軸を有する電磁ソレノイドと、
前記電磁ソレノイドに電力を供給する電源部と、
を備え、
前記電磁ソレノイドは、励磁状態において、前記弾性付勢手段の付勢力に抗して前記可動軸の先端が前記回転体から退避されるとともに、非励磁状態において、前記弾性付勢手段の付勢力により前記可動軸が前記回転体方向に向けて付勢されて、該可動軸の先端が前記回転体の外周面に当接する当接状態または前記係合溝に係合される係合状態となるように設けられており、
前記係合状態において前記回転体が回動不能となることで、前記作動板が前記施錠位置で保持されるようにしたことを特徴としている。
この特徴によれば、作動板が施錠位置に位置している状態において、可動軸の先端が回転体の係合溝に係合する係合状態となっている場合には、回転体の回動が不能となって作動板が前記施錠位置で保持され、これにより収納庫が開放不能となるとともに、該施錠状態において、電磁ソレノイドが励磁されて可動軸の先端が回転体の外周面から退避することで回転体が回動可能となり、操作手段を介して作動板を解錠位置に移動させて解錠することが可能となる。また、解錠状態においては、電磁ソレノイドの励磁状態を解除しても、作動板が解錠位置側に移動することにより可動軸の先端は回転体の外周面に当接する当接状態となるだけで、係合状態、つまり施錠状態にはならないばかりか、操作手段の操作により回転体が回動して係合溝が可動軸の先端と対向すると、弾性付勢手段の付勢力により係合状態となって施錠状態に保持される。すなわち、電磁ソレノイドは可動軸を係合溝から係脱させるため駆動力を有するだけで済むようになり、比較的駆動力が小さくて消費電力が少なくて済む電磁ソレノイドを用いることができるばかりか、電磁ソレノイドに供給される電力の消費量を効果的に低減できる。
【0007】
本発明の請求項2に記載の収納庫の施解錠装置は、請求項1に記載の収納庫の施解錠装置であって、
前記作動板は、前記施錠位置と前記解錠位置との間で直線往復動自在に設けられ、
前記回転体には、該回転体の軸心から偏心した位置に配置されるとともに、前記作動板に連係される偏心軸を備え、該偏心軸を介して該回転体の回動力が前記作動板の直線往復動に変換されるようにしたことを特徴としている。
この特徴によれば、使用者が手動による操作手段の回動操作に応じて、作動板が直線往復動されるため、施解錠操作を簡単に行うことができる。
【0008】
本発明の請求項3に記載の収納庫の施解錠装置は、請求項1または2に記載の収納庫の施解錠装置であって、
使用者による操作が可能に設けられた通電スイッチを備え、
前記通電スイッチが操作されたことに基づいて、前記電磁ソレノイドが励磁状態になるとともに、前記通電スイッチが操作されてから所定時間が経過したことに基づいて、前記電磁ソレノイドが非励磁状態になることを特徴としている。
この特徴によれば、使用者が収納庫を開放させるときに励磁状態にした電磁ソレノイドを非励磁状態にすることができ、施解錠装置が解錠を行わない待機状態であるときの待機電力の消費量を効果的に低減できる。
【0009】
本発明の請求項4に記載の収納庫の施解錠装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載の収納庫の施解錠装置であって、
前記電源部が、前記収納庫に設けられたバッテリで構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、外部から収納庫に対して電磁ソレノイドに電力を供給する電源ケーブル等を配線する必要がなくなり、収納庫を任意の場所に設置できるようになる。
【0010】
本発明の請求項5に記載の収納庫の施解錠装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の収納庫の施解錠装置であって、
使用者を識別可能な識別情報の入力が可能に設けられた個人認証入力部と、
前記収納庫の施解錠操作が許可された使用者を識別可能な識別情報が記憶された記憶手段と、
前記個人認証入力部により入力された識別情報と前記記憶手段に記憶された識別情報とが一致するか否かを判定するとともに、一致すると判定したことを条件に前記電磁ソレノイドを駆動して解錠させる施解錠制御手段と、
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、個人認証入力部に入力される使用者の識別情報によって収納庫の使用者を特定することができ、予め記憶手段に識別情報が登録された使用者のみが電磁ソレノイドを駆動して解錠させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る収納庫の施解錠装置を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、実施例における施解錠ユニットを備えたワゴンを示す斜視図であり、図2は、上段引出しの内部構成を示す分解斜視図であり、図3(a)は、施錠状態の回転体を示す縦断正面図であり、図3(b)は、解錠状態の回転体を示す縦断正面図であり、図4(a)は、施錠状態の回転体を示す横断平面図であり、図4(b)は、解錠状態の回転体を示す横断平面図であり、図5は、施解錠ユニットと管理ユニットを示すブロック図であり、図6は、上段引出しの開放操作を示すタイムチャートであり、図7は、制御部で行われる施解錠ユニット処理を示すフローチャートであり、図8は、制御部で行われる管理ユニット処理を示すフローチャートである。以下、図2の紙面右側をワゴンの正面側(前方側)とし、図4の紙面下方側をワゴンの正面側(前方側)として説明する。
【0013】
図1の符号1は、本発明の適用された収納庫としてのワゴン1であり、このワゴン1の正面側には、それぞれ上下幅の異なる上段引出し2、中段引出し3、下段引出し4の3段の引出し2,3,4が設けられている。各々の引出し2,3,4には、その正面側にフロントパネル5が設けられており、このフロントパネル5には、内部側に凹むように凹設された取手6が形成されている。
【0014】
図1に示すように、上段引出し2のフロントパネル5には、使用者が回転操作することにより上段引出し2の施解錠を行うための本実施例における操作手段及び施解錠操作部としての操作つまみ7が設けられている。上段引出し2が閉鎖された際には、使用者が操作つまみ7を左回転させることによって上段引出し2が開放不能に施錠されるとともに、上段引出し2を開放する場合には、使用者が操作つまみ7を右回転させることによって上段引出し2が開放可能に解錠されるようになっている。
【0015】
また、上段引出し2には、使用者の指紋を検出する本実施例における個人認証入力部としての指紋センサ8を備えた本実施例における施解錠装置及び施解錠手段としての施解錠ユニット9が設けられている。この指紋センサ8は、フロントパネル5に凹設された取手6の底面部6aに配置されている。この指紋センサ8により使用者が特定されるようになっており、施解錠ユニット9が許可した使用者のみが、操作つまみ7を回動させて上段引出し2を開放することができる。
【0016】
この施解錠ユニット9により上段引出し2が施解錠可能になっているため、上段引出し2を解錠できる使用者を特定することができ、許可された使用者のみが上段引出し2の収納部10に収納された物品等を管理することができる。
【0017】
上段引出し2の収納部10内には、その前方側に電池ボックス11と、この電池ボックス11に収容された乾電池12とで構成された本実施例における電源部としてのバッテリユニット13が設けられている。また、取手6の底面部6aにおける指紋センサ8に近接した位置に通電スイッチ14が設けられている。後述するように、使用者がこの通電スイッチ14を押すことによって乾電池12からの電力が施解錠ユニット9に供給されるようになっている。
【0018】
更に、上段引出し2のフロントパネル5には、指紋センサ8により使用者の指紋が検出されたことに基づいて、施解錠ユニット9により許可された使用者に対して操作つまみ7が操作可能であることを点灯して知らせるOKランプ15が設けられている。
【0019】
また、上段引出し2のフロントパネル5には、指紋センサ8により使用者の指紋が検出されたことに基づいて、施解錠ユニット9が許可しなかった使用者に対して操作つまみ7が操作不可能であることを点滅して知らせるNGランプ16が設けられている。
【0020】
尚、上段引出し2のフロントパネル5には、その外面の所定箇所に本実施例における収納庫コネクタとしての什器コネクタ17が設けられており、この什器コネクタ17には、ワゴン1の使用者が所有する管理ユニット18に設けられた本実施例における外部電源コネクタとしての管理コネクタ19が接続できるようになっている。更に尚、什器コネクタ17を操作つまみ7の近傍に設けることで、使用者が什器コネクタ17の配置位置を認識し易くなるばかりか、使用者が什器コネクタ17に対する管理コネクタ19の接続作業を容易に行えるとともに、操作つまみ7の操作も即座に行うことができる。
【0021】
次に、図5に示すブロック図を参照して、前述した指紋センサ8により使用者を特定する施解錠ユニット9について詳述する。施解錠ユニット9は、上段引出し2の収納部10に内蔵されたバッテリユニット13から供給された電力で動作するようになっている。
【0022】
この施解錠ユニット9には、予め登録された使用者の指紋の画像(使用者を識別可能な識別情報)を記憶する本実施例における記憶手段としての記憶部20と、LEDなどで構成されて点灯または点滅されるOKランプ15と、LEDなどで構成されて点灯または点滅されるNGランプ16と、使用者の指紋を検出する指紋センサ8と、操作つまみ7の操作を規制する電磁ソレノイド21と、施解錠ユニット9を起動する通電スイッチ14と、所定時間の経過をカウント(計時)する本実施例における通電計時開始手段及び解錠計時開始手段としてのタイマ22と、施解錠ユニット9に内蔵されたバッテリユニット13の電圧容量を検出する本実施例における電圧低下検出手段としての電圧検出センサ23と、これらの装置類の制御を行う制御部24とが設けられている。また、施解錠ユニット9には、前述した什器コネクタ17が設けられており、什器コネクタ17に管理ユニット18の管理コネクタ19に接続できるようになっている。
【0023】
管理ユニット18には、施解錠ユニット9に電力を供給させる電池ボックス(図示略)と乾電池(図示略)とで構成された本実施例における外部電源としてのバッテリユニット25と、使用者が操作つまみ7を操作可能にするための解錠スイッチ26と、使用者の指紋の画像を前述した記憶部20に記憶させるための登録スイッチ27と、記憶部20に記憶された使用者の指紋の画像をクリア(削除)させる削除スイッチ28とが設けられている。また、管理ユニット18のバッテリユニット25、解錠スイッチ26、登録スイッチ27、削除スイッチ28は、管理コネクタ19が接続された什器コネクタ17を介して施解錠ユニット9の制御部24に接続されている。
【0024】
尚、登録スイッチ27と削除スイッチ28とが本実施例における登録操作部を構成している。そのため後述するように、この管理ユニット18によってワゴン1を使用する使用者の設定を行うことができる。更に尚、管理ユニット18はバッテリユニット25を内蔵することで可搬性を有し、使用者がワゴン1の設置された場所まで持っていくことができる。
【0025】
次に、上段引出し2の構造について詳述する。図2に示すように、操作つまみ7の背面側には、背面側に向かって突出した凸部7aが形成されており、この凸部7aの背面側には、背面側に開口される取付穴7bが形成されている。また、フロントパネル5には、操作つまみ7の凸部7aが回動可能に嵌合される取付孔29が形成されている。
【0026】
また、フロントパネル5の背面側における操作つまみ7に対応した位置には、略箱型形状をなすケース30が取り付けられている。尚、このケース30は、フロントパネル5の背面側における取付孔29の近傍に形成されたケース支持部材31に嵌合されている。ケース30には、内空間が略円筒形状をなす回転体孔32が形成されており、この回転体孔32には、略円筒形状をなす本実施例における円柱部材としての回転体33が、その軸心周りに垂直方向に回動可能に嵌合されている。
【0027】
この回転体33は、円筒部34を有し、この円筒部34のフロントパネル5側には、回転体33の回動軸に対応した位置に軸心部35が形成されるとともに、回転体33の背面側には、回転体33の回動軸心から偏心した位置に偏心軸36が形成されている。更に、円筒部34の側周面(外周面)の一部には、後述する電磁ソレノイド21の可動軸37が係合される係合溝38が形成されている(図3(a)参照)。尚、この係合溝38は、正面視において略L字形状をなすように切り欠かれている。
【0028】
また、ケース30の正面側には、回転体孔32内から正面側に向かって貫通された軸心部孔39が形成され、この軸心部孔39を介して回転体33の軸心部35が正面側に向かって挿設されている。回転体33の軸心部35の先端は、操作つまみ7の取付穴7bに嵌合されており、使用者が操作つまみ7を回動操作することにより、回転体33が回動できるようになっている(図4(a)参照)。更に、ケース30の側面側には、回転体33の係合溝38に対応する位置に、後述する電磁ソレノイド21の可動軸37が挿通される可動軸孔40が貫通されている。
【0029】
また、図2に示すように、ケース30の一方の側面には、電磁ソレノイド21が取り付けられる取付片41が設けられている。尚、電磁ソレノイド21は、取付片41にネジ42を用いて取り付けられている。この電磁ソレノイド21は、略箱体形状をなす筐体43を有するとともに、筐体43の回転体33に向く側面には、電力が供給されることにより可動(直線往復運動)される可動軸37が設けられている。
【0030】
図3(a)に示すように、電磁ソレノイド21の可動軸37には、ケース30の可動軸孔40内に形成された当接部40aに当接される円盤部44が形成されているとともに、この円盤部44と筐体43の側面との間には、弾力性を有する本実施例における弾性付勢手段としてのコイルバネ45が配置されている。電磁ソレノイド21に電力が供給されていない場合には、可動軸37がコイルバネ45の有する付勢力によって回転体33の方向に向かって突出するように押圧付勢される。
【0031】
尚、電磁ソレノイド21に電力が供給されていない(非励磁状態)場合には、可動軸37の先端は、回転体33に形成された係合溝38に係合された係合状態となっており、使用者が操作つまみ7を回動操作しても、回転体33が右回りに回動されない施錠状態のまま保持されるようになっている。更に尚、施錠状態では、回転体33の偏心軸36が後述するスライドバー46の嵌合溝47の下端に当接されるため、回転体33が左回りにも回動されなくなっている。
【0032】
また、図3(b)に示すように、電磁ソレノイド21に電力が供給されている(励磁状態)場合には、可動軸37がコイルバネ45の付勢力に抗して筐体43内側に引き込まれるようになっている。尚、電磁ソレノイド21に電力が供給されている場合には、可動軸37の先端は、回転体33に形成された係合溝38から係脱(退避)されており、使用者が操作つまみ7を回動操作して回転体33を右回りに回転させることができる解錠状態となっている。更に尚、解錠状態では、回転体33が180°回動されると偏心軸36が後述するスライドバー46の嵌合溝47の下端に当接されるため、回転体33が180°以上左回りに回動されることを防止している。
【0033】
また、解錠状態で回転体33が180°回動された状態では、電磁ソレノイド21に電力の供給を停止しても、可動軸37はコイルバネ45の付勢力されていることにより、可動軸37は、回転体33の方向に向けて移動され、可動軸37の先端は回転体33の円筒部34の外周面に当接される当接状態となる。
【0034】
また、図2に示すように、ケース30の背面側には、長手方向が左右方向に延びる板状をなす本実施例における作動板としてのスライドバー46が配置されている。ケース30の背面には、スライドバー46を左右方向に摺動可能に保持できる摺動溝48が形成されるとともに、ケース30の背面にネジ49によって螺着された板体50によって、スライドバー46が摺動溝48から脱落しないように保持される。
【0035】
このスライドバー46には、その上端縁の一部が切り欠かれることによって形成された上下方向に延びる嵌合溝47が設けられている。この嵌合溝47には、前述した回転体33の偏心軸36が上下方向に相対移動自在に遊嵌されている。
【0036】
また、図4(a)及び図4(b)に示すように、使用者が操作つまみ7を回動操作して回転体33を180°回動させることにより、回転体33の偏心軸36の配置位置が左右方向に移動され、その偏心軸36の移動に伴って、偏心軸36が嵌合溝47に遊嵌されたスライドバー46が左右方向に直線往復移動される。すなわち偏心軸36を介して回転体33の回動力がスライドバー46の直線往復動に変換される。そのため使用者が手動による操作つまみ7の回動操作に応じて、スライドバー46を移動させる施解錠操作を簡単に行うことができるようになっている。
【0037】
また、図2に示すように、上段引出し2を構成するサイドパネル51には、スライドバー46の端部が挿通される孔部52が貫通されている。更に、図4(a)に示すように、ワゴン1の側板53(収納庫の本体部)には、閉鎖時における上段引出し2のサイドパネル51の孔部52に対応する位置に本実施例における被係合部としての係止穴54が形成されている。
【0038】
図4(a)に示すように、回転体33が施錠状態の場合は、スライドバー46の端部が、サイドパネル51の孔部52から外方(側方)に突出されて、側板53の係止穴54に係止されることにより上段引出し2が開放不能(施錠状態)になる。尚、上段引出し2が開放不能であるときのスライドバー46の配置位置が、スライドバー46の施錠位置となっている。
【0039】
また、図4(b)に示すように、回転体33が解錠状態の場合は、スライドバー46の端部が、サイドパネル51の孔部52から内方に引き込まれて、側板53の係止穴54から係脱(退避)されることにより上段引出し2が開放可能(解錠状態)になる。尚、上段引出し2が開放可能であるときのスライドバー46の配置位置が、スライドバー46の解錠位置となっている。
【0040】
尚、回転体33の円筒部34の側周面の一部が切り欠かれるように係合溝38が形成されているため、使用者が操作つまみ7を右回り、すなわち回転体33を解錠状態にするときには、電磁ソレノイド21を動作させて可動軸37を係合溝38から係脱させる必要があるが、使用者が操作つまみ7を左回り、すなわち回転体33を施錠状態にするときには、電磁ソレノイド21を動作させる必要はなく、係合溝38が可動軸37に対応した位置になるまで回転体33を回転させるだけで、係合溝38が可動軸37の先端と対向する位置になったときに、可動軸37はコイルバネ45の付勢力によって係合溝38に係合されるようになっている。
【0041】
本実施例では、電磁ソレノイド21に電力が供給されていない場合には、上段引出し2が開放不能となるとともに、電磁ソレノイド21に電力が供給されている場合には、上段引出し2が開放可能となっている。尚、電磁ソレノイド21に対する電力の供給(励磁状態/非励磁状態)は、施解錠ユニット9に設けられた制御部24によって制御されるようになっている。
【0042】
次に、図6のタイムチャートを参照して上段引出し2の開放操作、特に施解錠ユニット9内のバッテリユニット13の残り容量が少なくなったときの施解錠ユニット9の動作について詳述する。
【0043】
図6に示すように、先ず始めの待機状態において、施解錠ユニット9は動作しておらず停止状態となっている。このとき電磁ソレノイド21の可動軸37の先端は、回転体33の係合溝38に係合されて回動できない施錠状態となっているとともに、スライドバー46が側板53の係止穴54に係止されているため、上段引出し2が開放不能となっている。
【0044】
施解錠ユニット9が待機状態であるときに、使用者が手動により通電スイッチ14を押圧してONにすると、施解錠ユニット9内のバッテリユニット13から電力が制御部24に供給され、施解錠ユニット9が起動して動作が開始される(t1)。
【0045】
施解錠ユニット9が起動している状態で、施解錠ユニット9の指紋センサ8に使用者が指を当接させると、指紋センサ8が使用者の指紋を検出し、指紋の画像を取り込んで制御部24に送信する。制御部24は、指紋センサ8より検出された指紋の画像を、予め記憶部20に記憶された指紋の画像と照合し、検出された指紋の画像と記憶部20の指紋の画像とが一致しているか否かを判定する処理を開始する(t2)。
【0046】
その後、検出された指紋の画像と記憶部20の指紋の画像とが一致しているか否かの判定処理が終了した後(t3)、一致すると判定された場合に、電圧検出センサ23により施解錠ユニット9に電力を供給するバッテリユニット13の電圧を検出する電圧検出処理を開始し(t4)、電圧検出センサ23によるバッテリユニット13の電圧の検出結果に基づいて、制御部24はバッテリユニット13の電圧が所定電圧以上か否かを判定した後、該電圧低下処理を終了する(t5)。
【0047】
バッテリユニット13の電圧が所定電圧以下、すなわち乾電池12(バッテリユニット13)が消耗されてその電力容量が残り少なくなっていると判定した場合には、NGランプ16の点滅が開始される(t6)。このNGランプ16の点滅により使用者は、乾電池12の電力容量が残り少なくなったことを認識できる。
【0048】
そして、NGランプ16の点滅開始とともに、電磁ソレノイド21に電力が供給され(励磁状態)、電磁ソレノイド21の動作が開始されるとともに、OKランプ15の点灯が開始される(t7)。尚、電磁ソレノイド21が動作されると、電磁ソレノイド21の可動軸37の先端が回転体33の係合溝38から退避され、使用者が手動により操作つまみ7を回動操作することが可能となる。
【0049】
電磁ソレノイド21の励磁状態において、使用者の操作つまみ7の回転操作により回転体33の回動が開始されると(t8)、スライドバー46が、その端部がワゴン1の側板53の係止穴54から係脱される方向に直線移動される。そして、スライドバー46の端部が係止穴54から完全に係脱された時点(t9)で、上段引出し2の開放が可能になる。
【0050】
施解錠ユニット9の動作が開始された所定時間(本実施例では5秒)経過後に、バッテリユニット13からの電力の供給が停止され、施解錠ユニット9の動作が停止される(t10)。施解錠ユニット9の動作停止により、OKランプ15及びNGランプ16が消灯されるとともに、電磁ソレノイド21に対する電力の供給も停止される。
【0051】
尚、電磁ソレノイド21の動作停止、すなわち電磁ソレノイド21が非励磁状態になっても、可動軸37の先端は回転体33の円筒部34の外周面にコイルバネ45の付勢力により当接され、回転体33が解錠状態となっているため、使用者は操作つまみ7の回動操作を続けることができる。そして、回動動作を完全に終了した状態で(t11)、使用者は上段引出し2を引き出して開放し、収納部10に収納された物品の取出作業や収納作業を行うことができる。
【0052】
そして、開放された上段引出し2を施錠するために、上段引出し2を閉鎖した状態で操作つまみ7が解錠の際の回動方向とは逆方向に回動されると(t12)、スライドバー46の端部がワゴン1側板53の係止穴54に向かって移動される。
【0053】
そして、スライドバー46の端部が側板53の係止穴54に係止された時点で(t13)、上段引出し2は開放不可になる。操作つまみ7の回動操作により回動された回転体33の係合溝38が、電磁ソレノイド21の可動軸37の先端に対向する位置になったとき(t14)、可動軸37はコイルバネ45の付勢力によって係合溝38内に入り込み係合状態となって回転体33が施錠状態となる。
【0054】
尚、本実施例では、施解錠ユニット9の電源がOFFになった以降は、バッテリユニット13の電力を消費しないで済むようになっており(t10)、施解錠ユニット9に電力が供給されていなくても、上段引出し2を施錠させることができる。
【0055】
次に、本実施例における制御部24が実行する施解錠ユニット9の施解錠ユニット処理を図7のフローチャートに基づいて以下に説明する。
【0056】
図7に示すように、先ずSa01のステップにおいて、使用者の手動操作により通電スイッチ14が押される(通電スイッチオン)ことにより、施解錠ユニット9が起動して動作が開始される。尚、本実施例では、制御部24が、通電スイッチ14が操作されたときに、バッテリユニット13から施解錠ユニット9の装置類への電力の供給を開始させる電力供給開始手段を構成している。そのため、通電スイッチ14を操作しないときに、すなわち通電スイッチ14の押圧前には、バッテリユニット13から施解錠ユニット9へ電力が供給されないようにでき、使用者が通電スイッチ14を操作する解錠の際においてのみ、施解錠ユニット9へ電力を供給するだけで済むため、施解錠ユニット9の待機電力の消費量を効果的に低減できる。
【0057】
施解錠ユニット9の動作が開始されるとSa02のステップにおいて、制御部24が什器コネクタ17に管理ユニット18の管理コネクタ19が接続されているか否かを判定し、什器コネクタ17に管理コネクタ19が接続されている場合には、Sa14のステップに進み、後述する管理ユニット処理に移行される。什器コネクタ17に管理コネクタ19が接続されていない場合は、施解錠ユニット処理が継続され、Sa03のステップに進む。
【0058】
次に、Sa03のステップにおいて、制御部24はタイマ22のカウントを開始する。そして、Sa04のステップにおいて、制御部24はタイマ22のカウントを開始してから所定時間(本実施例では5秒)経過しているか否かを判定する。Sa04のステップにおいて、タイマ22のカウント開始から所定時間経過していれば、Sa11のステップに進み、バッテリユニット13から施解錠ユニット9に電力の供給を停止させ、所定時間経過していなければ、Sa05のステップに進む。
【0059】
尚、本実施例では、制御部24が、通電スイッチ14が操作されてから所定時間が経過したことに基づいて、バッテリユニット13から施解錠ユニット9に電力の供給を停止させる電力供給停止手段を構成している。そのため使用者が通電スイッチ14の操作してから所定時間が経過した後に、電力の供給が停止され、施解錠ユニット9が待機電力を消費しなくて済むようになる。
【0060】
更に尚、制御部24は、Sa03のステップにおいて、タイマ22のカウントが開始されてから、指紋センサ8による指紋の画像の入力がないまま第1の所定時間が経過したことに基づいて、バッテリユニット13からの電力の供給を停止させる第1の電力供給停止手段を構成している。そのため指紋センサ8による指紋の画像の入力がないまま施解錠ユニット9に電力が供給されつづけることを防止できる。
【0061】
Sa05のステップにおいて、制御部24は指紋センサ8にて使用者の指紋が検出されたか否かを判定する。Sa04及びSa05のステップは、所定時間経過するか指紋センサ8に使用者の指紋が検出されるまで繰り返される。
【0062】
Sa05のステップにおいて、指紋センサ8により使用者の指紋を検出された場合には、Sa06のステップに進み、制御部24がタイマ22のカウントを停止する。そして、Sa07のステップに進み、制御部24は、記憶部20に予め記憶された使用者の指紋の画像と指紋センサ8により検出された指紋の画像とが、一致するか否かを判定する。尚、本実施例では、制御部24が、指紋センサ8により入力された指紋の画像と記憶部20に記憶された指紋の画像とが一致するか否かを判定するとともに、一致すると判定したことを条件に電磁ソレノイド21を駆動して解錠させる施解錠制御手段を構成している。
【0063】
Sa07のステップにおいて、記憶部20に記憶された使用者の指紋の画像と指紋センサ8により検出された指紋と一致した場合には、Sa08のステップに進み、記憶部20に記憶された使用者の指紋の画像と指紋センサ8により検出された指紋と一致しなかった場合には、Sa12のステップに進む。
【0064】
尚、Sa07のステップにおいて、制御部24が、指紋センサ8により入力された指紋の画像と記憶部20に記憶された指紋の画像とが一致するか否かを判定することで、指紋センサ8に入力される使用者の指紋の画像によってワゴン1の使用者を特定することができ、予め記憶部20に指紋の画像が登録された使用者のみが電磁ソレノイド21を駆動して解錠させることができる。
【0065】
Sa08のステップにおいて、施解錠ユニット9のバッテリユニット13である乾電池12の電圧が電圧検出センサ23により検出され、電圧検出センサ23による電圧の検出に基づいて、制御部24がバッテリユニット13の電圧が所定以上の電圧であるか否かを判定する。バッテリユニット13の電圧が所定以上であると制御部24が判定すると、Sa09のステップに進み、バッテリユニット13の電圧が所定以下であると制御部24が判定すると、Sa13のステップに進み、使用者に乾電池12の残り容量が少なくなっていることを知らせるためにNGランプ16の点滅が開始された後、Sa09のステップに進む。
【0066】
尚、本実施例では、NGランプ16の点滅が、電圧検出センサ23によりバッテリユニット13の電圧低下が検出されたことに基づいて、電圧の低下が検出された旨の報知を行う電圧低下報知手段を構成している。そのためワゴン1の使用者が施解錠ユニット9の解錠操作すること同時に、使用者がバッテリユニット13の電圧が低下したこと、すなわちバッテリユニット13の残り容量が少なくなったことを認識できるようになる。
【0067】
Sa09のステップにおいて、電磁ソレノイド21の動作が開始され、上段引出し2が開放可能になる。また、使用者に対して上段引出し2が開放可能であることを知らせるためにOKランプ15が点灯される。更に、制御部24はタイマ22のカウントを開始し、Sa10のステップに進む。尚、本実施例では、OKランプ15が、使用者に対して施解錠ユニット9による解錠が行われた旨の報知を行う解錠報知手段を構成している。そのためワゴン1の使用者が、施解錠ユニット9による解錠が行われた旨を容易に認識でき、使用者による操作つまみ7等の誤操作等を防止できる。
【0068】
Sa10のステップにおいて、制御部24がSa09のステップで開始されたタイマ22のカウントが5秒経過しているか否かを判定し、タイマ22のカウントが5秒経過していれば、Sa11のステップに進み、Sa09のステップにおいて開始されたタイマ22のカウントが5秒経過していなければ、カウントが5秒経過するまでループする。すなわち、タイマ22がカウントを開始して5秒間経過するまでSa11のステップに移行されず、Sa10のステップを繰り返す。本実施例の施解錠ユニット9では、5秒経過するまでOKランプ15が点灯されるため、使用者が、上段引出し2が開放可能であることを認識できる。
【0069】
尚、制御部24は、Sa09のステップにおいて、タイマ22のカウントが開始されてから、第2の所定時間が経過したことに基づいて、バッテリユニット13からの電力の供給を停止させる第2の電力供給停止手段を構成している。制御部24により解錠された後も施解錠ユニット9に電力が供給されることを防止できるため、施解錠ユニット9が待機電力を消費しなくて済むようになる。
【0070】
Sa11のステップにおいて、制御部24はバッテリユニット13からの電力の供給を停止し、施解錠ユニット9の動作が停止される。このとき電磁ソレノイド21の動作が停止されるとともに、点灯しているOKランプ15も消灯され、施解錠ユニット処理が終了する。また、Sa13のステップで点滅が開始されたNGランプ16もSa11のステップで停止される。
【0071】
尚、Sa07のステップにおいて、制御部24が記憶部20に記憶された使用者の指紋の画像と指紋センサ8により検出された指紋とが一致しないと判定した場合は、Sa12のステップに進み、制御部24はNGランプ16の点灯を開始するとともに、タイマ22のカウントを開始させる。次に、Sa10のステップに進み、Sa12のステップにおいて開始されたタイマ22のカウントが5秒経過していなければ、カウントが5秒経過するまでループする。そして、カウントが5秒経過後、Sa11のステップに進み、施解錠ユニット9の動作を停止する。
【0072】
次に、Sa02のステップにおいて、什器コネクタ17に管理コネクタ19が接続されている場合に、制御部24が実行する施解錠ユニット9の管理ユニット処理(Sa14)を図8のフローチャートに基づいて以下に説明する。
【0073】
本実施例におけるワゴン1の上段引出し2に設けられた施解錠ユニット9は、バッテリユニット13である乾電池12が、上段引出し2の収納部10内に設けられているため、上段引出し2が施錠された状態で使用者が乾電池12の交換作業を怠り、乾電池12が消耗してしまうと、通電スイッチ14をONにしても施解錠ユニット9が起動せずに解錠できなくなる場合がある。
【0074】
そこで、上段引出し2が施錠された状態で、施解錠ユニット9のバッテリユニット13である乾電池12が消耗された場合には、使用者は管理ユニット18の管理コネクタ19を上段引出し2のフロントパネル5に設けられた什器コネクタ17に接続し、外部から施解錠ユニット9に電力を供給して解錠操作を行うようにしている。また、この管理ユニット18を用いることで、ワゴン1の使用者が変更された際などに、旧使用者が施解錠ユニット9の記憶部20に記憶された指紋の画像をクリア(削除)し、新使用者の指紋の画像を新たに施解錠ユニット9の記憶部20に登録することができる。
【0075】
図8に示すように、施解錠ユニット9の制御部24が行う管理ユニット処理では、先ずSb01のステップにおいて、制御部24が登録スイッチ27が押されたか否かを判定し、Sb02のステップにおいて、制御部24が削除スイッチ28が押されたか否かを判定し、Sb03のステップにおいて、制御部24が解錠スイッチ26が押されたか否かを判定する。Sb01〜03のステップにおいて、登録スイッチ27、削除スイッチ28、解錠スイッチ26のいずれかのスイッチ26,27,28が使用者により押されるまで、Sb01〜03のステップを繰り返す。
【0076】
Sb03のステップにおいて、使用者が解錠スイッチ26を押圧した場合には、Sb04のステップに進み、電磁ソレノイド21の動作が開始され、上段引出し2が開放可能になる。また、使用者に対して上段引出し2が開放可能であることを知らせるためにOKランプ15が点灯される。更に、制御部24はタイマ22のカウントを開始し、Sb05のステップに進む。
【0077】
Sb05のステップにおいて、制御部24がSb04のステップで開始されたタイマ22のカウントが5秒経過しているか否かを判定し、タイマ22のカウントが5秒経過していれば、Sb06のステップに進み、Sb04のステップにおいて開始されたタイマ22のカウントが5秒経過していなければ、カウントが5秒経過するまでループする。
【0078】
Sb06のステップにおいて、制御部24はバッテリユニット25からの電力の供給を停止し、施解錠ユニット9の動作が停止される。このとき電磁ソレノイド21の動作が停止されるとともに、点灯しているOKランプ15も消灯され、施解錠ユニット処理が終了する。
【0079】
Sb02のステップにおいて、使用者が削除スイッチ28を押圧した場合には、Sb13のステップに進み、施解錠ユニット9の記憶部20に記憶された使用者の指紋の画像をクリア(削除)する。そして、Sb14のステップにて、使用者に対して記憶部20の指紋の画像がクリアされたことを知らせるためにOKランプ15が点灯される。更に、制御部24はタイマ22のカウントを開始し、Sb05のステップに進む。
【0080】
Sb01のステップにおいて、使用者が登録スイッチ27を押圧した場合には、Sb07のステップに進み、制御部24はタイマ22のカウントを開始する。そして、Sb07のステップにおいて、制御部24はタイマ22のカウントを開始してから所定時間(本実施例では5秒)経過しているか否かを判定する。Sb08のステップにおいて、タイマ22のカウント開始から所定時間経過していれば、Sb06のステップに進み、所定時間経過していなければ、Sb09のステップに進む。
【0081】
Sb09のステップにおいて、制御部24は指紋センサ8にて使用者の指紋が検出されたか否かを判定する。Sb08及びSb09のステップは、所定時間経過するか指紋センサ8に使用者の指紋が検出されるまで繰り返される。
【0082】
Sb09のステップにおいて、指紋センサ8により使用者の指紋を検出された場合には、Sb10のステップに進み、制御部24がタイマ22のカウントを停止する。そして、Sb11のステップに進み、制御部24は、指紋センサ8により検出された指紋の画像を記憶部20に登録する。
【0083】
Sb12のステップにて、使用者に対して記憶部20に指紋の画像が登録されたことを知らせるためにOKランプ15が点灯される。更に、制御部24はタイマ22のカウントを開始し、Sb05のステップに進む。
【0084】
尚、本実施例では、特に詳細な説明は省略するが、記憶部20に複数の指紋の画像を登録することができ、複数の使用者が1つのワゴン1の上段引出し2の収納部10に収納された物品を共有できるようになっている。また、削除スイッチ28が押されることにより削除させる指紋の画像は、複数の指紋の画像を全て削除するようにしてもよいし、最も古い指紋の画像から1つづつ削除していくようにしてもよい。更に、記憶部20に全く指紋の画像が登録されていない状態であれば、指紋センサ8による使用者の特定を行わずに、施解錠ユニット9の解錠が行われるように制御部24が制御するようにしてもよい。
【0085】
尚、本実施例におけるワゴン1に取り付けられる機器類は、全て上段引出し2に取り付けられており、本発明の収納庫の施解錠装置を用いない一般的なワゴンであっても、機器類を装備した上段引出し2と交換すれば、容易に本発明の収納庫の施解錠装置に使用することができる。そのため一般的なワゴンの生産ラインと収納庫の施解錠装置に用いるワゴン1の生産ラインを共通化することができ、ワゴン1の製造コストを低減させることができる。
【0086】
以上、本実施例における施解錠ユニット9では、スライドバー46が施錠位置に位置している状態において、可動軸37の先端が回転体33の係合溝38に係合する係合状態となっている場合には、回転体33の回動が不能となってスライドバー46が施錠位置で保持され、これにより上段引出し2が開放不能となるとともに、施錠状態において、電磁ソレノイド21が励磁されて可動軸37の先端が回転体33の外周面から退避することで回転体33が回動可能となり、操作つまみ7を介してスライドバー46を解錠位置に移動させて解錠することが可能となる。また、解錠状態においては、電磁ソレノイド21の励磁状態を解除しても、スライドバー46が解錠位置側に移動することにより可動軸37の先端は回転体33の外周面に当接する当接状態となるだけで、係合状態、つまり施錠状態にはならないばかりか、操作つまみ7の操作により回転体33が回動して係合溝38が可動軸37の先端と対向すると、コイルバネ45の付勢力により係合状態となって施錠状態に保持される。すなわち、電磁ソレノイド21は可動軸37を係合溝38から係脱させるため駆動力を有するだけで済むようになり、比較的駆動力が小さくて消費電力が少なくて済む電磁ソレノイド21を用いることができるばかりか、電磁ソレノイド21に供給される電力の消費量を効果的に低減できる。
【0087】
また、施解錠ユニット9の施錠状態においてバッテリユニット13から解錠に必要な電力が施解錠ユニット9の装置類に供給されなくなった場合に、管理コネクタ19を什器コネクタ17に接続することにより、解錠に必要な電力を外部から受給可能にしたことで、使用時には、内蔵されたバッテリユニット13から電力を供給されることで施解錠ユニット9を動かせるため、外部からワゴン1に対して施解錠ユニット9に電力を供給する電源ケーブル等を配線する必要がなくなり、ワゴン1を任意の場所に設置できるようになる。また、バッテリユニット13から解錠に必要な電力が供給できなくなる非常時には、使用者が管理コネクタ19を什器コネクタ17に接続することにより、外部から電力を施解錠ユニット9に受給することができる。すなわち、施解錠ユニット9のバッテリユニット13の電力容量が無くなった状態であっても上段引出し2を解錠することができる。
【0088】
また、バッテリユニット13が、ワゴン1に設けられた施解錠ユニット9に内蔵されていることで、外部からワゴン1に対して施解錠ユニット9に電力を供給する電源ケーブル等を配線する必要がなくなり、ワゴン1を自在に移動させて任意の場所に設置できるようになる。
【0089】
また、可搬性を有する管理ユニット18にバッテリユニット25が内蔵されていることで、什器コネクタ17に対して管理コネクタ19を接続して施解錠ユニット9に電力を供給する際に、管理コネクタ19に対してコンセント等に接続された電源ケーブル等を配線する必要がなくなり、任意の場所に設置されたワゴン1の施解錠ユニット9に電力を供給できる。
【0090】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0091】
例えば、前記実施例では、施解錠ユニット9に電力を供給する電源部としてのバッテリユニット13が、上段引出し2の収納部10内に電池ボックス11に収容された乾電池12とで構成されているが、電源部はバッテリユニット13に限ることなく、ワゴン1に対して電源部としてのコンセント等の外部から電源ケーブルを接続し、この電源ケーブルから施解錠ユニット9に電力を供給するようにしてもよく、その場合でも本発明の施解錠装置を適用すれば、電力の消費量を効果的に低減できる。
【0092】
また、前記実施例では、管理ユニット18に内蔵されたバッテリユニット25は、電池ボックス(図示略)と乾電池(図示略)とにより構成されているが、管理ユニット18に対してコンセント等の外部から電源ケーブルを接続し、この電源ケーブルから施解錠ユニット9に電力を供給するようにしてもよい。
【0093】
また、前記実施例では、管理ユニット処理において、登録スイッチ27と削除スイッチ28と解錠スイッチ26のいずれも使用者により押されなかった場合に、Sb01〜Sb03のステップを繰り返すようになっているが、Sb01〜Sb03のステップの繰り返し中に、所定時間が経過したことに基づいて、管理ユニット18のバッテリユニット25の電力の供給を停止させるような処理を行うようにしてもよい。登録スイッチ27と削除スイッチ28と解錠スイッチ26のいずれもが使用者により押されなくても、所定時間経過後、施解錠ユニット9が動作停止されるため、施解錠ユニット9の制御部24に電力を供給する管理ユニット18のバッテリユニット25の消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施例における施解錠ユニットを備えたワゴンを示す斜視図である。
【図2】上段引出しの内部構成を示す分解斜視図である。
【図3】(a)は、施錠状態の回転体を示す縦断正面図であり、(b)は、解錠状態の回転体を示す縦断正面図である。
【図4】(a)は、施錠状態の回転体を示す横断平面図であり、(b)は、解錠状態の回転体を示す横断平面図である。
【図5】施解錠ユニットと管理ユニットを示すブロック図である。
【図6】上段引出しの開放操作を示すタイムチャートである。
【図7】制御部で行われる施解錠ユニット処理を示すフローチャートである。
【図8】制御部で行われる管理ユニット処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
1 ワゴン(収納庫)
2 上段引出し
7 操作つまみ(操作手段,施解錠操作部)
8 指紋センサ(個人認証入力部)
9 施解錠ユニット(施解錠装置,施解錠手段)
10 収納部
13 バッテリユニット(電源部)
14 通電スイッチ
15 OKランプ(解錠報知手段)
16 NGランプ
17 什器コネクタ(収納庫コネクタ)
18 管理ユニット
19 管理コネクタ(外部電源コネクタ)
20 記憶部(記憶手段)
21 電磁ソレノイド
22 タイマ(通電計時開始手段,解錠計時開始手段)
23 電圧検出センサ(電圧低下検出手段)
24 制御部(施解錠制御手段,電力供給開始手段,電力供給停止手段,通電計時開始手段,解錠計時開始手段)
25 バッテリユニット(外部電源)
26 解錠スイッチ
27 登録スイッチ(登録操作部)
28 削除スイッチ(登録操作部)
33 回転体(円柱部材)
36 偏心軸部
37 可動軸
38 係合溝
45 コイルバネ(弾性付勢手段)
46 スライドバー(作動板)
47 嵌合溝
53 側板(収納庫の本体部)
54 係止穴(被係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者による操作が可能な操作手段の操作に応じて施解錠が行われる収納庫の施解錠装置であって、
前記操作手段の操作に応じて軸心周りに回動自在に設けられた円柱状部材からなるとともにその外周面の一部に係合溝が形成された回転体と、
収納庫の本体部に形成された被係合部に係合する施錠位置と該施錠位置から退避する解錠位置との間で前記回転体の回動に連動して移動自在に設けられる作動板と、
弾性付勢手段により前記回転体に向けて付勢された可動軸を有する電磁ソレノイドと、
前記電磁ソレノイドに電力を供給する電源部と、
を備え、
前記電磁ソレノイドは、励磁状態において、前記弾性付勢手段の付勢力に抗して前記可動軸の先端が前記回転体から退避されるとともに、非励磁状態において、前記弾性付勢手段の付勢力により前記可動軸が前記回転体方向に向けて付勢されて、該可動軸の先端が前記回転体の外周面に当接する当接状態または前記係合溝に係合される係合状態となるように設けられており、
前記係合状態において前記回転体が回動不能となることで、前記作動板が前記施錠位置で保持されるようにしたことを特徴とする収納庫の施解錠装置。
【請求項2】
前記作動板は、前記施錠位置と前記解錠位置との間で直線往復動自在に設けられ、
前記回転体には、該回転体の軸心から偏心した位置に配置されるとともに、前記作動板に連係される偏心軸を備え、該偏心軸を介して該回転体の回動力が前記作動板の直線往復動に変換されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の収納庫の施解錠装置。
【請求項3】
使用者による操作が可能に設けられた通電スイッチを備え、
前記通電スイッチが操作されたことに基づいて、前記電磁ソレノイドが励磁状態になるとともに、前記通電スイッチが操作されてから所定時間が経過したことに基づいて、前記電磁ソレノイドが非励磁状態になることを特徴とする請求項1または2に記載の収納庫の施解錠装置。
【請求項4】
前記電源部が、前記収納庫に設けられたバッテリで構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の収納庫の施解錠装置。
【請求項5】
使用者を識別可能な識別情報の入力が可能に設けられた個人認証入力部と、
前記収納庫の施解錠操作が許可された使用者を識別可能な識別情報が記憶された記憶手段と、
前記個人認証入力部により入力された識別情報と前記記憶手段に記憶された識別情報とが一致するか否かを判定するとともに、一致すると判定したことを条件に前記電磁ソレノイドを駆動して解錠させる施解錠制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の収納庫の施解錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−174904(P2008−174904A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6884(P2007−6884)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】