説明

受信装置、通信端末装置、通信システム及び利得制御方法

【課題】 第1の通信システムとそれとは異なる第2の通信システムが運営される場合において、第2の通信システムの受信時の通信品質の劣化を低減すること。
【解決手段】 計時部113は、動作モード選択信号が妨害波耐性モードを選択してからTDM方式である第1の通信システムの1フレーム時間より長い時間を計時する。モード設定部112は、計時部113から出力されるフレーム計時信号が入力されて、計時中の間、妨害波耐性モードを維持し、それ以外の場合は、BER劣化判定信号と受信電力値判定信号とに基づいて動作モード設定信号を出力する。利得制御部166は、第2中間周波数電力値信号と動作モード設定信号とが入力されることにより、可変利得増幅器153の利得を制御する利得制御信号を出力すると共に、受信アンテナ151から入力された受信信号の電界強度である受信電界強度信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、通信端末装置、通信システム及び利得制御方法に関し、例えば、3GPP(3rd Generation Partnership Project)で規格がそれぞれ定められているUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)方式及びGSM(Global System for Mobile Communications)方式や、前記UMTS方式と日本国内で運営されているPDC(Personal Digital Cellular)方式などの同一周波数帯でGSM方式やPDC方式の通信システムが運営されるUMTS方式に適用し得る受信装置、通信端末装置、通信システム及び利得制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信システムは、その普及に伴い、周波数利用効率を高めるため、時代と共に周波数領域で多重化するFDM(Frequency Division Multiplex:周波数分割多重化)方式から、時間領域で多重化するTDM(Time Division Multiplex:時分割多重化)方式、更に、直交符号による拡散技術を利用したCDM(Code Division Multiplex、符号分割多重化)方式へと変遷してきた。
【0003】
そして、例えば、移動体通信の分野においては、ユーザー数の増加への対応、及び、より通信速度の高いサービスが求められている。そのため、従来運営されてきた通信システムに比べて、より周波数利用効率を高めるため、同一周波数帯で新しい通信方式に移行することが求められる。その場合、従来から当該システムを利用してきたユーザーの端末装置も新方式に対応するように変更が必要となる。しかしながら、ユーザーに新方式に対応した端末装置を買い換える負担を与えることは望ましくないため、ユーザーの端末装置の買い替えによる更新が進むことを想定し、新方式への移行期間を設けてユーザーの端末装置の更新が完了するまでは、従来方式も同時に運営されることが望まれる。また、新方式に対応した基地局装置の設置には多くの時間を要し、従来方式で運営されてきたすべてのサービスエリアの基地局装置を一度に変更することは容易ではなく、新方式の運営開始直後はサービスエリアが特定の狭い範囲に限定されていることが多い。そのため、同一周波数帯で、従来方式と新方式の両者が混在して同時に運営できることが要望される。
【0004】
この場合、新方式の通信システムで通信を行う際に、従来方式の通信信号が妨害波として存在しうることになる。例えば、新方式にとって従来方式の通信信号が妨害波となることにより、新方式の通信品質が本来の品質を確保できない場合、「新方式の通信品質が悪い」という印象がユーザー側に広まってしまい、ユーザーが新方式に対応した端末装置を購入する購買意欲を損ねかねない。即ち、新方式へ移行する場合は、従来方式の通信信号による妨害波により新方式の通信品質が低下することを避けねばならない。
【0005】
このように、近接する妨害波が存在する場合に、その妨害波による通信品質の劣化を抑えるために、例えば、受信電界強度とBER(Bit Error Rate)を測定し、受信電界強度が高いのに、BERが悪い時に、それが妨害波により回路が飽和するなどして生じていると推定し、可変利得増幅器の利得を低下させ、回路の飽和を抑えることで妨害波特性を改善するBER監視型受信装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−18469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の装置は、通常はフェージングなどにより受信信号レベルが、例えば突発的に10dB低下しても、その受信信号成分が受信回路のダイナミックレンジ以下とならないように、スタティック環境において信号を受信するのに最小限必要となる回路の利得よりも10dB以上高めに設定することで通信品質の劣化を抑えたフェージング耐性モードで動作している。また、妨害波が入力された場合に、BERの劣化が生じた事を検出した後、可変利得増幅器の利得を例えば10dB低下して回路の飽和を抑えることにより通信品質の劣化を抑えた妨害波耐性モードで動作する。ここで、同一周波数帯において、TDM方式である第1の通信システムと、それとは異なる第2の通信システムが同時に運営されている場合を想定する。第2の通信システムの受信装置は、第2の通信システムで通信をしている際に、その近傍周波数で前記第1の通信システムが運営されており、その妨害波も受信アンテナより入力される。即ち、近傍周波数に妨害波が存在することになる。従来の受信装置の場合、その信号レベルの変動により生じるBER劣化を検出した後、TDM方式の1フレーム毎に妨害波耐性モードとフェージング耐性モードの切り替えが行われるが、その動作モードを切り替えるためには、BERの劣化等の通信品質の劣化を検出する必要がある。また、その通信品質の劣化を検出した後、動作モードが妨害波耐性モードに切り替えられ、自動利得制御が安定するまでの間は、BER等の通信品質の劣化が生じる。
【0007】
ここで、前記第1の通信システムはTDM方式であるため、その妨害波の信号レベルは、TDM方式のフレームタイミングに同期して大きく変動する。従って、従来の受信装置は、このようなTDM方式の妨害波が入力された場合、前述の理由により、TDM方式のフレーム毎にBERが劣化してしまうという問題がある。
【0008】
図9は、従来の装置における、希望波に近い周波数帯に妨害波が存在する場合を想定した、信号強度とBER監視型受信装置の各部の状態を示すものである。図9(a)は、TDM方式である第1の通信システムのスロット構成を示す。ここでは、第1の通信システムの第5スロットにおいて、送信が行われている様子を示すが、複数のスロットで送信が行われている場合もある。図9(b)は、第1の通信システムの基地局の送信信号レベルの図を示す。図9(a)で示した第5スロットで送信が行われているため、そのタイミングの基地局の送信信号レベルは、他のタイミングに比べて高くなる。
【0009】
図9(c)は、第2の通信システムの基地局の送信信号レベルを示す。第2の通信システムとしては、例えば、CDM方式のように、各スロットごとに送信信号が大きく変わらない通信システムである。図9(d)は、第1中間周波数信号レベル(フェージング耐性モード固定時)を示す。このように、可変利得増幅器の利得をフェージング耐性モードの時の状態で固定した場合、強電界の近傍周波数の妨害波が入力されると、例えば、期間1071a、1071b、1071cのように、A/D変換器などの回路が飽和してしまう期間が生じる。この場合、希望波の信号成分がひずむなどの理由により、BER劣化が生じる。なお、受信回路のダイナミックレンジ以下とは、例えば、図9(d)のA/D変換器量子化雑音レベルよりも受信信号レベルが低くなる状態を指す。
【0010】
図9(e)は、第1中間周波数信号レベル(動作モード切替機能動作時)を示す図であり、図9(f)は第2の通信システムのBERを示す図である。
【0011】
第1の通信システムによる妨害波が入力された場合に、期間1074a、1074b、1074cのように、A/D変換器が飽和する期間において、BER劣化期間1075a、1075b、1075cのように、BERが劣化するため、BER計算部により、通信品質の劣化を検出する。例えば、第1の通信システムの第1フレームにおいて、基地局から送信信号が出力される。その送信信号は、第2の通信システムにおいて妨害波であり、期間1074aにおいてBERが劣化する。即ち、受信電界強度が高いのに、BERが劣化していることを検出することにより、妨害波耐性モードに移行することで、回路の飽和を避け、BERを改善する。そして、第1の通信システムの第1フレームの送信が終了すると、妨害波が存在しなくなるため、受信電界強度の低下を検出すると共に、BERの劣化が無いことが検出され、フェージング耐性モードに移行する。このため、第1の通信システムの第2フレームの送信タイミングにおいて、第1フレームの時と同様に、BERの劣化が生じる。即ち、TDM方式である第1の通信システムが、受信しようとする第2の通信システムの近傍周波数で運営されている場合、第1の通信システムのフレームタイミングごとに、BERの劣化が発生してしまうという問題がある。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、第1の通信システムとそれとは異なる第2の通信システムが運営される場合において、第2の通信システムの受信時の通信品質の劣化を低減することができる受信装置、通信端末装置、通信システム及び利得制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の受信装置は、第1の通信システムの周波数帯と近接した周波数帯で運営される第2の通信システムの受信信号を増幅する可変利得増幅手段と、前記受信信号の受信電界強度を求める受信電界強度信号演算手段と、前記受信信号の通信品質を検出する通信品質計算手段と、前記第1の通信システムの受信信号が前記第2の通信システムの受信信号に対して妨害波となることによる前記通信品質の劣化が検出されてから計時を開始するとともに、前記第1の通信システムの1フレームよりも長い所定の時間を計時する計時手段と、前記受信電界強度信号演算手段にて求められた受信電界強度と前記通信品質計算手段にて検出された通信品質と前記計時手段にて計時される前記時間とに基づいて、前記可変利得増幅手段にて受信信号を増幅する際の利得を制御するモード設定手段と、を具備する構成を採る。
【0014】
本発明の通信システムは、第1の通信システムの信号及び前記第1の通信システムの周波数帯と近接した周波数帯で運営される第2の通信システムの信号を送信する基地局装置と、前記基地局装置から送信された前記第1の通信システムの信号及び前記第2の通信システムの信号を受信する通信端末装置とを有する通信システムであって、前記通信端末装置は、前記第2の通信システムの受信信号を増幅する可変利得増幅手段と、前記受信信号の受信電界強度を求める受信電界強度信号演算手段と、前記受信信号の通信品質を検出する通信品質計算手段と、前記第1の通信システムの受信信号が前記第2の通信システムの受信信号に対して妨害波となることによる前記通信品質の劣化が検出されてから計時を開始するとともに、前記第1の通信システムの1フレームよりも長い所定の時間を計時する計時手段と、前記受信電界強度信号演算手段にて求められた受信電界強度と前記通信品質計算手段にて検出された通信品質と前記計時手段にて計時される前記時間とに基づいて、前記可変利得増幅手段にて受信信号を増幅する際の利得を制御するモード設定手段と、を具備する構成を採る。
【0015】
本発明の利得制御方法は、第1の通信システムの周波数帯と近接した周波数帯で運営される第2の通信システムの受信信号を増幅するステップと、前記受信信号の受信電界強度を求めるステップと、前記受信信号の通信品質を検出するステップと、前記第1の通信システムの受信信号が前記第2の通信システムの受信信号に対して妨害波となることによる前記通信品質の劣化が検出されてから計時を開始するとともに、前記第1の通信システムの1フレームよりも長い所定の時間を計時するステップと、求められた受信電界強度と検出された通信品質と計時される前記時間とに基づいて受信信号を増幅する際の利得を制御するステップと、を具備するようにした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1の通信システムとそれとは異なる第2の通信システムが運営される場合において、第2の通信システムの受信時の通信品質の劣化を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態の受信装置111の構成を示すブロック図である。
【0019】
受信装置111は、動作モード選択信号が妨害波耐性モードを選択してからTDM方式である第1の通信システムの1フレーム時間より長い時間を計時する計時部113と、計時部113から出力されるフレーム計時信号が入力されて、計時中の間、妨害波耐性モードを維持し、それ以外の場合は、BER劣化判定信号と受信電力値判定信号とに基づいて動作モード設定信号を出力するモード設定部112と、受信信号を受信する受信アンテナ151と、受信アンテナ151で受信した受信信号から不要周波数成分を除去する受信フィルタ152と、不要周波数成分が除去された受信信号を増幅する増幅器であって、利得制御信号により利得が制御される可変利得増幅器153と、可変利得増幅器153により増幅された受信信号を第1中間周波数信号に周波数変換する第1の周波数変換器154と、第1中間周波数信号を帯域制限する第1中間周波数フィルタ156と、第1中間周波数フィルタ156により帯域制限された第1中間周波数信号を増幅する第1中間周波数増幅器157と、第1中間周波数増幅器157で増幅された第1中間周波数信号を第2中間周波数信号に変換する第2の周波数変換器158と、第2中間周波数信号をサンプリングし、直交復調してベースバンド信号に変換し、帯域制限して帯域制限されたベースバンド信号である第2のI信号と第2のQ信号とを出力する直交復調器160と、帯域制限されたベースバンド信号を復号し、ディジタルデータ列である復号データに変換する復号器162と、復号データに含まれるエラー数を計数し、そのときの通信品質を示すBERを求めて、そのBERであるBER信号を出力するBER計算部163を備えたベースバンド部161と、第2のI信号と第2のQ信号が入力され、その電力値に比例した値である第2中間周波数電力値信号を出力する電力演算部164と、第2中間周波数電力値信号と動作モード設定信号とが入力されることにより、可変利得増幅器153の利得を制御する利得制御信号を出力すると共に、受信アンテナ151から入力された受信信号の電界強度である受信電界強度信号を出力する利得制御部166により構成される。
【0020】
次に、モード設定部112の構成について、図2を用いて説明する。図2は、モード設定部112の詳細な構成を示すブロック図である。
【0021】
モード設定部112は、BER信号とBERの閾値であるBER閾値202との大小関係を比較し、BER劣化判定信号を出力する比較部201と、受信電界強度信号と電界強度閾値204との大小関係を比較し、受信電力値判定信号を出力する比較部203と、BER劣化判定信号と受信電力値判定信号とが入力されることにより、電力演算部164に入力される第2中間周波数信号の電力値の目標値を設定する動作モード設定信号を出力する判定部205とにより構成される。判定部205は、フレーム計時信号が計時中である間、妨害波耐性モードを維持し、それ以外の場合は、BER劣化判定信号と前記受信電力値判定信号とに基づいて動作モード設定信号を出力する機能を持たせたものである。
【0022】
即ち、受信電界強度が所定の電界強度であり、且つ、BER計算部163で求めた通信品質が予め設定した品質以下の時、モード設定部112は、動作モード設定信号を出力すると共に、計時部113は、動作モード設定信号に基づき計時動作を開始し、且つ所定の時間、出力した動作モード設定信号の出力を維持するようにモード設定部112を制御する。
【0023】
従って、妨害波耐性モードに切り替わった場合、計時部113により、第1の通信システムの1フレーム時間より長い間、妨害波耐性モードで動作することができるので、例えば、妨害波を検出した次のフレームにおいて、妨害波による回路の飽和が避けられるため、BER劣化を低減することができる。
【0024】
次に、直交復調器160の構成について、図3を用いて説明する。図3は、直交復調器160の詳細な構成を示すブロック図である。
【0025】
直交復調器160は、入力された第2中間周波数信号をサンプリングするA/D変換器501と、サンプリングされた第2中間周波数信号を直交復調し、第1のI信号と第1のQ信号とを出力する直交復調器502と、第1のI信号及び第1のQ信号をそれぞれ帯域制限して、それぞれ、第2のI信号と第2のQ信号とを出力するチャネルフィルタ部505とを備えており、直交復調器502は、サンプリングされた第2中間周波数信号をI信号に変換して第1のI信号を出力するIchミキサ503と、Q信号に変換して第1のQ信号を出力するQchミキサ504とを備え、チャネルフィルタ部505は、第1のI信号を帯域制限して第2のI信号を出力するIchフィルタ506と、第1のQ信号を帯域制限して第2のQ信号を出力するQchフィルタ507とにより構成される。
【0026】
次に、電力演算部164の構成について、図4を用いて説明する。図4は、電力演算部164の詳細な構成を示すブロック図である。
【0027】
電力演算部164には、第2のI信号と第2のQ信号とが入力され、その瞬時値を2乗演算する2乗演算部601を備え、2乗演算部601は、第2のI信号の瞬時値の2乗値を演算するIch2乗演算器606と、第2のQ信号の瞬時値の2乗値を演算する電力演算部Qch2乗演算器607を備え、第2のI信号の瞬時値の2乗演算値と、第2のQ信号の瞬時値の2乗演算値と、加算値記憶部603に記憶された第1の電力積分値とを加算し、第2の電力積分値を出力する加算器602と、第2の電力積分値を記憶し、第1の電力値積分値として出力する加算値記憶部603と、第1の電力積分値を求める際の所定の積分時間を計時し、加算値記憶部603の加算値をリセットするリセット信号を出力する計時部604と、リセット信号が入力されたときにその直前の第1の電力積分値を保持する電力値保持部605とにより構成される。
【0028】
上記構成を採ることにより、電力演算部164は、第2のI信号と第2のQ信号との瞬時値の2乗値を、計時部604により、所定の時間で積分した第1の電力積分値を求めることができる。また、所定の時間が経過したら、電力値保持部605から、計時部604で計時された時間において、電力演算部164に入力された第2のI信号と第2のQ信号との電力値に比例した第2中間周波数電力値信号を出力することができる。
【0029】
次に、BER計算部163の構成について、図5を用いて説明する。図5は、BER計算部163の詳細な構成を示すブロック図である。
【0030】
BER計算部163には、復号データが入力され、その復号データに含まれるエラーを検出し、誤りがある場合に誤り検出信号を出力する誤り検出部701と、復号データの数をカウントし、所定のビット数をカウントした時点でエラーカウンタリセット信号を出力するビット数カウンタ702と、誤り検出部701より出力された誤り検出信号の数をカウントし、エラーカウンタリセット信号が入力されることによりカウンタ値をリセットするエラーカウンタ703と、エラーカウンタリセット信号が入力されることにより、その直前のBER信号を保持するBER保持部704とで構成される。
【0031】
上記構成を採ることにより、BER計算部163は、ビット数カウンタ702によりカウントされる所定のビット数の復号データのうち、エラーカウンタ703によりカウントされた誤りの数を計数することができる。即ち、所定のビット数のうち、復号データに含まれる誤りの数が求められるため、その値はBERに比例する。また、ビット数カウンタ702により、入力された復号データのビット数を計数し、所定のビット数に到達したらBER保持部704に、直前のBER信号を保持するので、復号データの通信品質を示すBER信号を出力することができる。
【0032】
次に、利得制御部166の構成について、図6を用いて説明する。図6は、利得制御部166の詳細な構成を示すブロック図である。
【0033】
利得制御部166は、第2中間周波数電力値信号及び動作モード設定信号により、第1の目標値903と第2の目標値904との何れかを選択して、第2中間周波数電力値信号の目標値を出力する選択手段902と、第2中間周波数電力値信号と第2中間周波数電力値信号の目標値を比較し、その比較結果を出力する比較部901と、比較結果が、第2中間周波数電力値信号と第2中間周波数電力値信号の目標値との差が0に近づくように、利得制御信号を制御する利得制御信号生成部905と、第2中間周波数電力値信号の目標値と利得制御信号とから、受信アンテナ151より入力された受信信号の電界強度である受信電界強度信号を出力する受信電界強度信号演算部906とで構成される。
【0034】
上記構成を採ることにより、利得制御部166は、動作モード設定信号に従い、第2中間周波数電力値信号の目標値を、第1の目標値903及び第2の目標値904から選択して利得制御を行う。
【0035】
図7は、受信装置111における各部の状態を示す図である。
【0036】
図7において、(a)〜(d)については、それぞれ、図9と同様であり、従って、図7の符号370a〜370c、371a〜371cは、それぞれ、図9の符号1070a〜1070c、1071a〜1071cと同一である。
【0037】
図7(e)は、第1中間周波数信号レベルの変化を示す図であり、図7(f)は、第2の通信システムのBERの変化を示す図であり、図7(g)は、フレーム計時信号の変化を示す図である。
【0038】
図7(e)において、第1の通信システムの妨害波が入力されたことにより、第1中間周波数信号レベルは、期間372aにおいて、A/D変換器が飽和し、それと同時に、期間373aにおいて、BERの劣化が生じ、これにより、妨害波耐性モードに切り替わる。また、このタイミングから計時部113の計時が開始される。計時部113は、TDM方式である第1の通信システムの1フレーム時間より長い時間を計時する間、計時中であることを示すフレーム計時信号を出力し、その間は、妨害波耐性モードで動作するため、妨害波による飽和が生じないので、BER劣化が生じない。計時部113は、第1の通信システムの1フレーム時間より長い時間を計時するため、この状態は、第1の通信システムの次フレームの送信信号が送信されるタイミングにおいても妨害波耐性モードを維持している。このため、回路の飽和が発生せず、BER劣化も生じない。即ち、従来の受信装置において生じていた2フレーム目の送信信号による回路の飽和によるBER劣化はない。従って、従来の受信装置よりもBER特性が改善する。
【0039】
図8は、本実施の形態の通信システム800を示す図である。図8は、異なる通信システムにて運営されている各基地局装置からの信号を、通信端末装置801に備えられた図1の受信装置111が受信する通信システムを示す図であり、第1の通信システムと第2の通信システムが同一エリアで運営されるものを示す。
【0040】
第1の通信システムにて運営される基地局802は、基地局アンテナ803より第1の通信システムの基地局送信信号を送信する。同様に、第2の通信システムにて運営される基地局804は、基地局アンテナ805より第1の通信システムの基地局送信信号を送信する。第1の通信システムの基地局送信信号は、第1の通信システムのサービスエリア#810の範囲まで通信が可能となるように基地局の設置や送信電力が設定され、第2の通信システムの基地局送信信号は、第2の通信システムのサービスエリア#811の範囲まで通信が可能となるように基地局の設置や送信電力が設定されているものとする。
【0041】
また、通信端末装置801は、第1の通信システムのサービスエリア#810と第2の通信システムのサービスエリア#811とが重なった図8に斜線にて示す領域#812にて通信を行うものである。通信端末装置801は、第2の通信システムの基地局送信信号を受信したい信号(希望波)とし、第1の通信システムの基地局送信信号は、その通信において干渉を与える妨害波とする。この時、第1の通信システムの基地局送信信号は図7(b)、第2の通信システムの基地局送信信号は図7(c)に示すものである。
【0042】
本発明の受信装置111を備えた通信端末装置801を用いた通信システム800の構成をとることにより、第1の通信システムのサービスエリア#810及び第2の通信システムのサービスエリア#811のように、同一地域において、第1の通信システムと第2の通信システムが運営される場合に、第1の通信システムの基地局送信信号の周波数が、第2の通信システムの基地局送信信号の周波数に近接している場合においても、第1の通信システムの基地局送信信号により生じる第2の通信システムの通信品質の劣化を低減した通信サービスを提供することができる。
【0043】
なお、図8において、基地局装置802と基地局装置804は、異なる場所に設置される場合について示したが、これに限らず、同一の基地局装置から第1の通信システム基地局送信信号と第2の通信システム基地局送信信号を送信するようにしても良い。この場合においても、第1の通信システムのサービスエリアと第2の通信システムのサービスエリアとが重なった領域が存在するため、同様の効果が得られる。
【0044】
なお、計時部113の計時が完了すると、動作モードがフェージング耐性モードに切り替わる為、図9では、3フレーム目でBER劣化が生じているが、計時部113において計時する時間は、TDM方式である第1の通信システムの1フレーム時間より長い、例えば、4フレーム時間とする場合、同様の効果が得られる。この場合、妨害波による劣化を検出してから第1の通信システムの4フレームの期間は、回路の飽和によるBER劣化を避けることができる。
【0045】
なお、ここで述べた1フレーム時間より長い時間とは、例えば、BERを求めるのに要する時間的な遅延を加味しており、例えば、妨害波の送信スロットの完了と同時にBERが求められる場合は、妨害波の次の送信スロットまでの時間を妨害波耐性モードに保持する必要があるため、その場合は、1フレーム時間を計時すればよい。また、BER劣化が生じた瞬間に妨害波耐性モードに切り替える場合は、1フレーム時間に、1スロット時間を加算した時間を計数すればよい。
【0046】
又、予め同一周波数帯で利用されているTDM方式である第1の通信システムの1フレームあたりの時間や、1スロットあたりの時間が分かっているため、計時部113の計時する時間は、予め同一周波数帯で利用されるTDM方式の仕様に基づいて容易に設定することができる。
【0047】
又、通信品質を監視する際に、本実施の形態においては、BERを用いたが、通信品質を示す指標は、EVM(Error Vector Magnitude)や、S/N比などを用いても良い。
【0048】
このように、本実施の形態によれば、TDM方式である第1の通信システムと、それ以外の第2の通信システムとが、同一周波数帯で運営される場合において、TDM方式の妨害波に耐性を持たせた本発明の受信装置111は、第1の通信システムによる妨害波で通信品質が低下したことを検出したときに、第2中間周波数信号の電力値の目標値を切り替えて、可変利得増幅器153の利得を制御することで、回路の飽和を避ける。第2中間周波数信号の目標値を切り替えてから、計時部113により、第1の通信システムの1フレーム当たりの時間よりも長い時間を計時し、その間、第2中間周波数信号の目標値を保持することで、TDM方式特有の1フレーム周期で信号レベルが大きく変動する妨害波が近傍周波数に存在する場合においても、第2の通信システムの通信信号の通信品質の劣化を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、特に第1の通信システムと第1の通信システムとは異なる第2の通信システムが、同一周波数帯で運営される受信装置、通信端末装置、通信システム及び利得制御方法に用いるに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係る受信装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態に係るモード設定部の構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態に係る直交復調器の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態に係る電力演算部の構成を示すブロック図
【図5】本発明の実施の形態に係るBER計算部の構成を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態に係る利得制御部の構成を示すブロック図
【図7】受信装置の各部の状態を示す図
【図8】本発明の実施の形態に係る通信システムを示す図
【図9】従来の受信装置の各部の状態を示す図
【符号の説明】
【0051】
111 受信装置
112 モード設定部
113 計時部
152 受信フィルタ
153 可変利得増幅器
154 第1の周波数変換器
156 第1中間周波数フィルタ
157 第1中間周波数増幅器
158 第2の周波数変換器
160 直交復調器
161 ベースバンド部
162 復号器
163 BER計算部
164 電力演算部
166 利得制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信システムの周波数帯と近接した周波数帯で運営される第2の通信システムの受信信号を増幅する可変利得増幅手段と、
前記受信信号の受信電界強度を求める受信電界強度信号演算手段と、
前記受信信号の通信品質を検出する通信品質計算手段と、
前記第1の通信システムの受信信号が前記第2の通信システムの受信信号に対して妨害波となることによる前記通信品質の劣化が検出されてから計時を開始するとともに、前記第1の通信システムの1フレームよりも長い所定の時間を計時する計時手段と、
前記受信電界強度信号演算手段にて求められた受信電界強度と前記通信品質計算手段にて検出された通信品質と前記計時手段にて計時される前記時間とに基づいて、前記可変利得増幅手段にて受信信号を増幅する際の利得を制御するモード設定手段と、
を具備することを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記モード設定手段は、前記計時手段にて計時される前記時間内の前記利得を、前記計時手段による計時開始前に比べて低下させるように制御することを特徴とする請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の受信装置を具備することを特徴とする通信端末装置。
【請求項4】
第1の通信システムの信号及び前記第1の通信システムの周波数帯と近接した周波数帯で運営される第2の通信システムの信号を送信する基地局装置と、
前記基地局装置から送信された前記第1の通信システムの信号及び前記第2の通信システムの信号を受信する通信端末装置とを有する通信システムであって、
前記通信端末装置は、
前記第2の通信システムの受信信号を増幅する可変利得増幅手段と、
前記受信信号の受信電界強度を求める受信電界強度信号演算手段と、
前記受信信号の通信品質を検出する通信品質計算手段と、
前記第1の通信システムの受信信号が前記第2の通信システムの受信信号に対して妨害波となることによる前記通信品質の劣化が検出されてから計時を開始するとともに、前記第1の通信システムの1フレームよりも長い所定の時間を計時する計時手段と、
前記受信電界強度信号演算手段にて求められた受信電界強度と前記通信品質計算手段にて検出された通信品質と前記計時手段にて計時される前記時間とに基づいて、前記可変利得増幅手段にて受信信号を増幅する際の利得を制御するモード設定手段と、
を具備することを特徴とする通信システム。
【請求項5】
第1の通信システムの周波数帯と近接した周波数帯で運営される第2の通信システムの受信信号を増幅するステップと、
前記受信信号の受信電界強度を求めるステップと、
前記受信信号の通信品質を検出するステップと、
前記第1の通信システムの受信信号が前記第2の通信システムの受信信号に対して妨害波となることによる前記通信品質の劣化が検出されてから計時を開始するとともに、前記第1の通信システムの1フレームよりも長い所定の時間を計時するステップと、
求められた受信電界強度と検出された通信品質と計時される前記時間とに基づいて受信信号を増幅する際の利得を制御するステップと、
を具備することを特徴とする利得制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−101238(P2006−101238A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285471(P2004−285471)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】