説明

受光装置およびセンサ装置

【課題】光ファイバから出射した光を受光素子に結合させる構成において、その受光素子の小型化を可能にする技術を提供する。
【解決手段】受光装置は、半球状のボールレンズ214と、PD(フォトダイオード)パッケージ170とを備える。ボールレンズ214は、少なくとも受光側光ファイバ190から出射した光が入射する入射範囲が球面に形成され、その入射範囲に入射した光を集光し、PDパッケージ170は、ボールレンズ214によって集光された光を受光する。フォトダイオードチップ172の受光面172aが、受光側光ファイバ190の光軸A(ボールレンズ214のレンズ光軸と重なる)におけるボールレンズ214の焦点位置よりもボールレンズ214に近くなるように、PDパッケージ170が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバから出射された光を受光する受光装置および、その受光装置を備えるセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを利用する分野では、光ファイバを伝播した光をフォトダイオード等の受光素子により受光する構成が採用されることが多い。たとえば特開平11−231177号公報(特許文献1)に開示された光素子モジュールは、配線端子を有するヘッダと、ヘッダ上に配置され配線端子に電気的に接続された受光素子と、この受光素子を密閉するために受光素子を覆ってヘッダ上に固定されたキャップと、このキャップに設けられた、受光素子と光ファイバとを光学的に接続するためのボールレンズとから構成されている。この光素子モジュールにおいては、キャップのヘッダからの高さが、光素子とボールレンズと光ファイバとからなる光学系の光軸方向の位置基準としての機能を果たすように、キャップが高精度に加工されている。
【特許文献1】特開平11−231177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の光素子モジュールは、部品点数の削減、あるいは構成部品の固定精度を高めることが可能になるように構成されたものである。しかしながら、上記文献には受光素子の小型化を可能にするための構成については開示されていない。
【0004】
本発明の目的は、光ファイバから出射した光を受光素子に結合させる構成において、その受光素子の小型化を可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は要約すれば、光ファイバから出射された光を受ける受光装置であって、少なくとも光の入射範囲が球面に形成されたレンズ面を有し、光ファイバから入射範囲に入射した光を集光するレンズと、レンズによって集光された光を受ける受光面を有する受光素子とを備える。レンズは、光ファイバのファイバ光軸が入射範囲の中心を通るように配置される。光ファイバの開口数をNAとし、レンズの開口数をNAとすると、NAおよびNAは、NA2<NA/(1−2NA)との条件を満たす。受光素子は、受光面のファイバ光軸上の位置が、レンズのファイバ光軸上の焦点位置よりもレンズに近くなるように配置される。
【0006】
好ましくは、入射範囲である球面の曲率中心は、ファイバ光軸上に位置する。球面の曲率半径は、曲率中心から焦点位置までの距離よりも短い。受光素子は、曲率中心から受光面までの距離が、曲率半径よりも短くなるように配置される。
【0007】
好ましくは、受光素子は、受光面のファイバ光軸上の位置が、光ファイバの開口数に従って定まるファイバ光軸に対する最大角度で光ファイバから出射され、かつ入射範囲に入射した光の焦点のファイバ光軸方向の位置よりもレンズに近くなるように配置される。
【0008】
好ましくは、受光面のファイバ光軸上の位置は、光ファイバの開口数に従ってファイバ光軸に対する出射角度の範囲が定まり、かつ入射範囲に入射する光を、レンズが集光することにより生じた光のスポットが、最も小さくなる位置である。
【0009】
好ましくは、受光装置は、レンズを囲むように形成されて、光ファイバからの光を反射する反射面を有するリフレクタをさらに備える。ファイバ光軸に対して垂直なリフレクタの断面における、反射面の輪郭線は円である。円の直径は、ファイバ光軸上における断面の位置にかかわらず一定である。
【0010】
好ましくは、受光装置は、レンズを囲むように形成されて、光ファイバからの光を反射する反射面を有するリフレクタをさらに備える。ファイバ光軸に対して垂直なリフレクタの断面における、反射面の輪郭線は円である。円の直径は、ファイバ光軸上における断面の位置が光ファイバ側からレンズ側に変化するにつれて小さくなる。
【0011】
より好ましくは、ファイバ光軸と、ファイバ光軸に平行なリフレクタの断面における、反射面の輪郭線とのなす角度は、0度より大きく、かつ、90°と光ファイバの開口数により定まる光のファイバ光軸に対する最大出射角との差分の1/2よりも小さい。
【0012】
本発明の他の局面に従うと、センサ装置であって、光ファイバと、上記のいずれかの受光装置とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ファイバから出射した光を受光素子に結合させる構成において、その受光素子を小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0015】
本実施の形態に従う受光装置は、たとえば、受光素子としてフォトダイオードチップがパッケージング化されたフォトダイオードパッケージ(以下、PDパッケージと称する)を利用した光ファイバ型光電センサに用いられる。
【0016】
図1は、本実施の形態に従う受光装置を備える光ファイバ型光電センサの一例を示す概略斜視図である。図1を参照して、光ファイバ型光電センサ100は、本体部101と、ヘッド部102と、本体部101とヘッド部102とを光学的に接続する投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190とを備える。
【0017】
本体部101は、本体ケーシング110と、本体ケーシング110に回動自在に取付けられた開閉カバー114と、本体ケーシング110の内部に収容されたフレーム116とを主として有しており、開閉カバー114の開状態において露出するフレーム116の上面に表示部103および操作部104を有している。本体部101の前面に位置する本体ケーシング110の前壁部分には、投光側光ファイバ180が挿し込まれる開口部と受光側光ファイバ190が挿し込まれる開口部とが設けられており、これら2つの開口部に投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190がそれぞれ挿し込まれている。
【0018】
本体部101の背面からは、電源ラインや信号ライン等の芯線が一体化された電気コード105が引き出されている。また、本体部101の上面の所定位置には、投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190を本体部101へ固定する際に操作する回動レバー130が設けられている。本体部101の内部には、光源としてのLEDパッケージ(図2等参照)および受光部としてのPDパッケージ等が収容されている。
【0019】
投光側光ファイバ180は、LEDパッケージから発せられた光をヘッド部102に伝送する。受光側光ファイバ190は、ヘッド部102に入射した光をPDパッケージへと伝送する。
【0020】
ヘッド部102は、投光側光ファイバ180によって伝送された光を検出対象物に対して投光するとともに、検出対象物に投光された光の反射光を捉え、この反射光を受光側光ファイバ190によって本体部101へと伝送する。
【0021】
図2は、図1に示した本体部101の内部構成の一例を示した図である。図3は、図2に示したPDパッケージ170の周辺拡大図である。図2を参照して、本体部101の内部構成を説明し、図2および図3を参照して、本実施の形態に係る受光装置の構成を詳細に説明することにする。
【0022】
図2に示すように、本体ケーシング110の内部にはフレーム116が収容されている。フレーム116の前面と本体ケーシング110の前壁部分との間には所定の大きさの空間が形成されており、当該空間に各種の構成部品が配置されている。具体的には、当該空間には、投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190を保持するホルダ部材120と、ホルダ部材120によって保持された投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190を本体部101に固定する光ファイバ固定部材140と、LEDパッケージ160およびPDパッケージ170が実装された実装基板150とが主として配置されている。
【0023】
ホルダ部材120はフレーム116の前面に固定されている。ホルダ部材120には、一対の貫通孔が形成される。一対の貫通孔の一方は、ホルダ部材120の背面に形成された空間125に通じ、一対の貫通孔の他方はホルダ部材120の背面に形成された空間126に通じている。
【0024】
投光側光ファイバ180は、本体ケーシング110に設けられた開口部111および光ファイバ固定部材140に設けられた上部側中空部を経由して、ホルダ部材120に設けられた貫通孔に挿し込まれる。ホルダ部材120に形成された貫通孔の内壁121によって、投光側光ファイバ180の端部(光入射端)が保持される。同様に、受光側光ファイバ190は、本体ケーシング110に設けられた開口部112および光ファイバ固定部材140に設けられた下部側中空部を経由して、ホルダ部材120に設けられた貫通孔に挿し込まれる。ホルダ部材120に形成された貫通孔の内壁122によって、受光側光ファイバ190の端部(光出射端)が保持される。
【0025】
ホルダ部材120の上方前端部分には、ヒンジ部123が設けられている。このヒンジ部123は、上述の回動レバー130に設けられた回動軸131を軸支することにより、回動レバー130を回動可能に支持している。また、ホルダ部材120の前面には、回動レバー130の操作にリンクして、ガイド部材(図示せず)によって案内されて上下方向にスライド移動するスライダー134と、スライダー134によって押圧されて弾性変形することにより投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190を挟持して固定する光ファイバ固定部材140とが組み付けられている。
【0026】
回動レバー130、スライダー134および光ファイバ固定部材140は、投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190を同時に本体部101に固定するための固定機構を構成する。光ファイバ固定部材140は、所望の弾性を有するように、たとえば樹脂部材によって形成されており、投光側光ファイバ180が挿通される上部側中空部を規定する上部側固定部141と、受光側光ファイバ190が挿通される下部側中空部を規定する下部側固定部143とを有している。
【0027】
ユーザが回動レバー130を回動させた場合、スライダー134はガイド部材により案内されて下方にスライド移動する。スライダー134が下方に移動することによって、光ファイバ固定部材140では、上部側固定部141の上部および下部側固定部143の上部がそれぞれ下方に向けて弾性変形する。上部側固定部141の弾性変形により投光側光ファイバ180が挟持され、下部側固定部143の弾性変形により受光側光ファイバ190が挟持される。なお、投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190を挟持するための構成は図2に示した構成に限定されず、他の構成を採用することも可能である。
【0028】
投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190の各々は、光が通る部分であるコアと、コアの周囲に設けられてコアよりも屈折率が小さいクラッドと、クラッドの外表面(側面)を覆う外皮とを含む。具体的には、投光側光ファイバ180は、コア181と、クラッド182と、外皮183とを含む。受光側光ファイバ190は、コア191と、クラッド192と、外皮193とを含む。
【0029】
投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190としては、口径が大きいコアを有する光ファイバであることが好ましい。これにより、投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190の各々が伝播する光の光量を多くできる。たとえばプラスチック光ファイバは、一般に、石英系光ファイバに比較してコアの径が大きい。したがって投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190としてプラスチック光ファイバを用いることができる。なお、以下の説明では投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190はプラスチック光ファイバであるとする。
【0030】
実装基板150は、ホルダ部材120の背面に固定されている。実装基板150の主面には、投光部としてのLEDパッケージ160と、受光部としてのPDパッケージ170とが実装されている。LEDパッケージ160およびPDパッケージ170は、ホルダ部材120の背面に形成された空間125,126にそれぞれ収容されている。LEDパッケージ160の発光面は、投光側光ファイバ180の端面に向けられ、PDパッケージ170の受光面は受光側光ファイバ190の端面に向けられている。
【0031】
LEDパッケージ160の発光面と投光側光ファイバ180の端面との間には、リフレクタ202が配置される。リフレクタ202には円柱形状の貫通孔が形成され、その貫通孔に半球状のボールレンズ212が挿入される。半球の球面は投光側光ファイバ180の端面に向けられ、半球の平面はLEDパッケージ160の発光面に向けられている。
【0032】
LEDパッケージ160から出射した光は、ボールレンズ212によって集光され、リフレクタ202に形成された貫通孔を通って投光側光ファイバ180の入射端面に結合される。その貫通孔の内周面202aは、LEDパッケージ160から出射した光の一部、および/またはボールレンズ212から出射した光の一部を反射して、その反射光を投光側光ファイバ180の端面に導く反射面として機能する。
【0033】
たとえばリフレクタ202は反射率の高い金属(たとえばアルミニウム)の板によって形成される。また、貫通孔の内周面202aは、鏡面反射面として形成されている。鏡面反射面とは、巨視的に見て反射の法則に従う反射面のことであり、入射光の角度と等しい角度で反射光が反射する反射面を意味する。この鏡面反射面を実現する方法は特に限定されず、たとえば上記の金属板をプレス可能によって打ち抜くことで貫通孔を形成し、この貫通孔の内周面を上記の鏡面反射面として用いる方法がある。
【0034】
図2および図3を参照して、本実施の形態に係る受光装置は、PDパッケージ170と、リフレクタ204と、ボールレンズ214とを含む。本実施形態では、全反射によるロスあるいはフレネル反射ロスが発生するのを避けるために、PDパッケージ170、リフレクタ204およびボールレンズ214は互いに接着されている。
【0035】
PDパッケージ170は、基材171と、この基材171の主表面に実装された、受光素子としてのフォトダイオードチップ172と、これら基材171の主表面およびフォトダイオードチップ172を封止する透光性樹脂173とを含む半導体パッケージからなる。透光性樹脂173の素材は特に限定されず、たとえばエポキシ樹脂を用いることができる。
【0036】
PDパッケージ170と受光側光ファイバ190の端面との間に、リフレクタ204が配置される。リフレクタ204は、リフレクタ202と同様に、たとえば反射率の高い金属(たとえばアルミニウム)の板により形成される。
【0037】
リフレクタ204は、受光側光ファイバ190の端面に向けられた主表面204aと、PDパッケージ170に向けられた主表面204bとを有する。リフレクタ204には、主表面204a,204bと略垂直方向に貫通孔205が形成され、貫通孔205に半球状のボールレンズ214が挿入される。ボールレンズ214の球面214aは、受光側光ファイバ190の端面に向けられ、ボールレンズ214の平面214bは透光性樹脂173の表面に向けられている。
【0038】
受光側光ファイバ190が有するコア191の端面から出射した光は、リフレクタ204に形成された貫通孔205を通り、ボールレンズ214の球面214aに入射する。ボールレンズ214は、球面214aに入射した光を集光する。ボールレンズ214により集光された光は、透光性樹脂173を透過してフォトダイオードチップ172の受光面172aに結合される。
【0039】
リフレクタ204に形成された貫通孔205は受光側導光路として機能する。また、その貫通孔205の内周面205aは、受光側光ファイバ190から出射した光の一部および/またはボールレンズ214から出射した光の一部を反射して、その反射光をフォトダイオードチップ172の受光面172aに導く反射面として機能する。なお、貫通孔205の内周面205aは鏡面反射面として形成されている。
【0040】
コア191の直径をDとし、リフレクタ204の貫通孔205の直径をdとする。コア191から出射した光が貫通孔205を通るように、貫通孔の直径dは、コア191の直径Dと同じか僅かに大きくすることが好ましい。また、ボールレンズ214は貫通孔205に挿入されるので、ボールレンズ214の直径DAは貫通孔205の直径dに等しいかあるいは僅かに小さい。
【0041】
図4は、リフレクタ204の平面図である。図5は、図4のV−V線断面図である。図4および図5を参照して、貫通孔205は、主表面204a,204bに略垂直な方向に形成され、円柱形状を有している。なお主表面204a,204bに垂直な方向を「貫通孔205の貫通方向」とも呼ぶことにする。
【0042】
図4に示すように、リフレクタ204を平面視した状態では、貫通孔205の輪郭は一重の円となる。つまり、貫通孔205の中心軸Cに垂直なリフレクタ204の断面像を形成した場合、その断面の中心軸C上の位置(リフレクタ204の断面と中心軸Cとの交点の、中心軸C上の位置)によらず、貫通孔205の直径はdとなる。
【0043】
図5は、貫通孔205の中心軸Cを含む面でのリフレクタ204の断面を表わしている。この面でのリフレクタ204の断面像では、貫通孔205の貫通方向における内周面205aの輪郭と、中心軸Cとが平行(すなわち内周面205aの輪郭と中心軸Cとのなす角度が0°)である。なお、貫通孔205の貫通方向における内周面205aの輪郭と、貫通孔205の中心軸Cとのなす角度の好ましい範囲については後述する。
【0044】
図3に戻り、本実施の形態では、受光側光ファイバ190のファイバ光軸Aがリフレクタ204の貫通孔205の中心軸Cと重なるように配置される。また、ボールレンズ214は、ボールレンズ214の球面の曲率中心に相当する点P1、および球面214aの中心点に相当する点P2を、受光側光ファイバ190のファイバ光軸Aが通るように配置される。点P2は球面214aに接し、かつ平面214bに平行な平面214cと、球面214aとの接点である。受光側光ファイバ190のファイバ光軸A、および貫通孔205の中心軸Cは、上記平面214cと直交する。なお本実施の形態では、ファイバ光軸Aは、コア191の端面において、その端面の中心位置を通るコア191の軸線であるとする。
【0045】
また、本実施の形態では、ボールレンズ214において点P1,P2を結ぶ軸をボールレンズ214のレンズ光軸と定義する。すなわち本実施の形態では、受光側光ファイバ190のファイバ光軸Aとボールレンズ214のレンズ光軸と重なるように受光側光ファイバ190とボールレンズ214とが配置される。
【0046】
また、フォトダイオードチップ172の受光面172aの中心を通り、受光面172aに垂直な直線をフォトダイオードチップ172の光軸と定義する。本実施の形態ではファイバ光軸Aとフォトダイオードチップ172の光軸とが重なるようにフォトダイオードチップが配置される。要するに、本実施の形態では、受光側光ファイバ190、ボールレンズ214およびフォトダイオードチップ172の光軸が互いに一致するように、これらが配置される。
【0047】
フォトダイオードチップの受光面172aの最大の幅をWとする。なお受光面172aの平面視像は円形である必要はなくたとえば方形でもよい。また、ボールレンズ214のレンズ光軸(図3では受光側光ファイバ190のファイバ光軸Aと等価)上におけるボールレンズ214の焦点を焦点Fとする。受光面172aのファイバ光軸A上の位置が、ボールレンズ214の焦点Fよりもボールレンズ214に近くなるように、フォトダイオードチップ172が配置される。本実施の形態によれば、上記のようにフォトダイオードチップ172の配置(言い換えるとPDパッケージ170の配置)を定めることによって、受光面172aの幅Wをコア191の直径Dよりも小さくできる。したがってフォトダイオードチップを小型化できる。
【0048】
本実施の形態によれば、小型のフォトダイオードチップを用いることができるので、以下の効果を得ることができる。まずフォトダイオードチップ172のコストを下げることができるので、光電センサのコストを下げることができる。さらに、フォトダイオードチップの受光面が小さいほど、フォトダイオードの寄生容量を小さくできるので、フォトダイオードの出力信号におけるS/N比を高めることができる。さらに、応答速度の向上、外来ノイズの低減が可能である。これにより、たとえば物体の有無の検出精度を高めたり検出距離を長くしたりするなど、光電センサの性能向上を図ることができる。
【0049】
以下では、まずフォトダイオードチップの小型化を実現するための発明者による検討例を説明し、次に本実施の形態に係る受光装置の構成上の特徴について説明する。
【0050】
(検討例)
図6は、受光側光ファイバから出射した光を受光する受光装置の最も単純と考えられる構成を示した図である。図6を参照して、PDパッケージ170は、受光側光ファイバ190から出射した光を直接的に受光する。
【0051】
一般的にプラスチック光ファイバのNA(開口数)は0.5程度である。NAが0.5程度であるということは、コア端面から空気中に出射される光が、光ファイバのファイバ光軸に対して±30°の角度範囲で広がりながら進むことを意味する。したがってコア191の端面から出射した光は、受光側光ファイバ190のファイバ光軸Aに対して±30°の角度範囲で広がりながら空気中を進み、PDパッケージ170の透光性樹脂173に入射する。
【0052】
透光性樹脂173に入射した光は、透光性樹脂173の内部を進みフォトダイオードチップ172の受光面172aに到達する。たとえば透光性樹脂173の屈折率を1.5とすると、透光性樹脂173の内部では、受光側光ファイバ190からの出射光は受光側光ファイバ190のファイバ光軸Aに対して±20°の範囲内の角度で伝播して受光面172aに到達する。
【0053】
このように受光側光ファイバ190からの出射光は、空気中あるいは透光性樹脂173の内部で広がりながら進む。このため受光側光ファイバ190からの出射光をすべて受けようとすると、受光面172aの幅Wはコア191の直径Dよりも大きくなければならない。上述のように、受光側光ファイバ190としては、コアの直径が大きい光ファイバであるほど好ましい(プラスチック光ファイバの場合、コアの直径はたとえば1mm程度である)。つまり光ファイバのコアの直径が大きい場合、図6に示した構成では、フォトダイオードチップが大型化すると考えられる。したがって図6に示した構成によれば、フォトダイオードチップのコスト増という問題や、S/N比の向上が困難になるという問題が生じると考えられる。
【0054】
図7は、図6に示した構成による課題を解決するための受光装置の構成を示した図である。図7を参照して、フォトダイオードチップ172の受光面172aは、受光側光ファイバ190のコア191の端面に密着している。この構成によれば、受光面172aの幅Wをコア191の直径Dに等しくすることができる。しかしながら、コア191の端面にフォトダイオードチップ172の受光面172aを密着させるためには、受光面172aを透光性樹脂173から露出させる必要があると考えられる。この場合に起こりうる問題として、たとえば受光側光ファイバ190の着脱(図2参照)等によって、受光面172aが損傷するという問題が考えられる。
【0055】
図8は、単純な光学系によりフォトダイオードチップ172を小型化するための検討例を示した図である。図8を参照して、受光側光ファイバ190とPDパッケージ170との間に、1枚のレンズ250が配置されている。レンズ250は、コア191の端面から出射した光を集光する。この構成によれば、コアの直径D(たとえば1.0mm)よりも受光面172aの幅Wを小さくするためには、レンズ250の有効開口径(すなわちレンズ250の表面において、光を集光可能な範囲の直径)を大きくしなければならない。これによって光学系が大きくなるという問題が生じると考えられる。また、後にも説明するように、単純な光学系(たとえば1枚の凸レンズ)では、受光側光ファイバ190からの出射光を集光して、コアの直径よりも幅の小さい受光面に結合させることは容易ではない。
【0056】
図9は、受光側光ファイバ190からの出射光を集光するための別の検討例を説明した図である。図9を参照して、この構成は、受光側光ファイバ190のコア191の端面191aを点光源の集まりと仮定するとともに、その点光源から±30°の角度で発せられる光を複数のレンズ251〜253によって、フォトダイオードチップ172の受光面172aに結合させる構成である。しかしながら図9に示した構成によれば、複数枚のレンズが必要となることによって、光学系の構成が大型化、かつ複雑化すると考えられる。
【0057】
図10は、受光側光ファイバ190からの出射光を集光するためのさらに別の検討例を説明した図である。図10を参照して、この構成では、光ファイバ190のコア191からの出射光はリフレクタ261の反射面261aで反射しつつ軸中心へ集光する。しかしながら、リフレクタ261の反射面261aと透光性樹脂173の表面との間にギャップが存在することで、透光性樹脂173に入射した光は透光性樹脂173の内部で広がってしまう。このため、小型のフォトダイオードチップ172を用いた場合には、受光面172aの受光量が低下する可能性が高くなる。
【0058】
このように、複数枚のレンズの単純な組み合わせ、あるいはレンズからレンズ以外の光学系(リフレクタ等)への単なる置き換え等では、光ファイバから出射される光をそのコアの直径より小さなサイズのフォトダイオードチップに集光するのは容易ではない。これに対し、本実施の形態では、コア191からの出射光を集光するための光学系としてボールレンズを用いるとともに、ボールレンズにより定まる光線の軌跡を考慮した位置にフォトダイオードチップの受光面が位置するように、フォトダイオードチップ(PDパッケージ)を配置する。これによって、小型かつ簡易な構成を有する光学系を用いて、光ファイバから出射される光を、そのコアの直径より小さなサイズのフォトダイオードチップに集光することを可能にする。
【0059】
(ボールレンズの特徴)
図11は、本実施の形態に係る受光装置に用いられるボールレンズの特徴を説明するための図である。図11を参照して、ボールレンズ260は全球状に形成されたレンズである。ただし半球状に形成されたボールレンズについても、下記の特徴を有している。したがって図2および図3等に示したボールレンズ214についても以下の説明が成り立つ。
【0060】
ボールレンズの第1の特徴は、視野角に応じて有効開口位置(すなわちボールレンズ260の表面における光の入射範囲)が変化するものの、有効開口径の大きさは変化しないという点である。なお、以下の説明では「視野角」とはボールレンズ260のレンズ光軸LAに対する、ボールレンズ260のレンズ面への光の入射角度であると定義する。図11に示すように、光ビームB1(平行光)が−30°の視野角でボールレンズ260に入射し、光ビームB2(平行光)が+30°の視野角でボールレンズ260に入射したとする。この場合、光ビームB1に対するボールレンズ260の有効開口位置260aと光ビームB2に対するボールレンズ260の有効開口位置260bとは異なる。しかし光ビームB1,B2に対するボールレンズ260の有効開口径の大きさはいずれもaである。
【0061】
ボールレンズの第2の特徴は、広い視野角に対して収差を含んだ一定の集光性能を有するというものである。図11に示すように、ボールレンズ260の後方に、ボールレンズ260の焦点面として、ボールレンズ260と同心の半球面265を配置したとする。光ビームB1,B2は、半球面265上の点PB1,PB2にそれぞれ集光される。
【0062】
光ビームB1,B2をボールレンズ260により集光した場合、上記2つの特徴によって、光ビームB1,B2の各々の焦点位置(半球面265上)よりも手前に、光ビームB1,B2が重なり合い、かつ、光ビームB1,B2の重なり部分の幅が最小となる集光位置が存在する。この位置は、±30°の範囲の視野角で入射した光を、ボールレンズ260が集光することにより生じた光のスポットが、最も小さくなる位置に相当する。この位置、すなわち最小集光位置よりもボールレンズ260に対して後方の位置では、スポットが広がる。たとえば、半球面265上でのスポットの大きさは、点PB1,PB2を結ぶ円弧の長さb程度になると考えられる。
【0063】
上記の最小集光位置にフォトダイオードチップの受光面を配置することによって、±30°の範囲の視野角で入射した光を受光するためのフォトダイオードチップのサイズ(受光面のサイズ)を最も小さくすることができる。したがって、本実施の形態では、この最小集光位置を含む範囲に受光面が位置するようにフォトダイオードチップ(ならびにPDパッケージ)を配置する。これによってフォトダイオードチップの小型化を実現できる。
【0064】
(ボールレンズの最小集光位置について)
本実施の形態では、ボールレンズの最小集光位置を求めるための条件として以下に示す条件1〜3を定める。
【0065】
(条件1) レンズは半球状のボールレンズとする。
(条件2) レンズの球面収差は考慮しないものとする。
【0066】
(条件3) レンズの有効開口径は各視野角に対して一定とする。
図12は、本実施の形態に従うボールレンズ214による光の集光を説明するための図である。図12を参照して、視野角が−30°である光ビームB1は破線D1,D2で示したように集光され、視野角が+30°である光ビームB2は破線D3,D4で示したように集光される。光スポットの直径SPは、実線k1,k2により挟まれた領域の幅として表わすことができる。ボールレンズ214のレンズ光軸LAにおける位置が変化するにつれて、スポットの直径SPも変化する。
【0067】
図13は、図12に示す実線k1,k2を説明するための座標系を示した図である。図13を参照して、ボールレンズ214のレンズ光軸(図12に示すレンズ光軸LAに相当)をZ軸とし、平面214b上の軸(Z軸に垂直な軸)をX軸とする。
【0068】
図12に示した実線k1,k2は、X軸およびZ軸によって規定されるX−Z座標系を、点P1(X−Z座標系の原点に相当する)を中心に±θ回転させた座標系により表わすことができる。なお図が煩雑になるのを避けるために、図13では、X−Z座標系を±θ回転させた座標系については、Z軸を+θ回転させて得られるZ+θ軸およびZ軸を−θ回転させて得られるZ−θ軸のみを示している。
【0069】
Z軸に対して0°の角度でボールレンズ214に入射した光ビームB0(実線で示す平行光)は、Z軸上の点Fで焦点を結ぶ。Z軸に対して+θの角度でボールレンズ214に入射した光ビームB+θ(1点鎖線で示す平行光)は、Z+θ軸上の点Vで焦点を結ぶ。Z軸に対して−θの角度でボールレンズ214に入射した光ビームB−θ(破線で示す平行光)は、Z−θ軸上の点Vで焦点を結ぶ。
【0070】
図14は、図12および13に示した実線k1,k2とスポットの直径SPとの関係を説明するための図である。図14を参照して、実線k1は、直線L1〜L3を含む。点Sは、直線L1,L2の交点である。点Vは直線L2,L3の交点である。
【0071】
点SのZ軸座標Zsは最小集光位置に対応する。また、点VのZ軸座標Zv+および点VのZ軸座標Zv+は互いに等しい。以下では、Zv+およびZv-を総括的にZvと示す場合もある(Zv=Zv+=Zv-)。また、点F(焦点)のZ軸座標をZFと示す。スポットの直径SPは、次に示した関係に従い、Z軸上におけるフォトダイオードチップの受光面の位置座標Zに応じて変化する。
【0072】
(1) 0≦Z≦Zs:スポットの直径SPは直線L1に従って変化する。
(2) Zs≦Z≦Zv:スポットの直径SPは直線L2に従って変化する。
【0073】
(3) Zv≦Z:スポットの直径SPは直線L3に従って変化する。
0≦Z≦Zsでは、スポットの直径SPはフォトダイオードチップの受光面の位置座標Zが大きくなるほど(すなわちフォトダイオードチップがボールレンズ214から遠ざかるほど)小さくなりZ=Zsで最小となる。
【0074】
s≦Z≦Zvでは、スポットの直径SPはフォトダイオードチップの位置座標Zが大きくなるほど大きくなるものの、ボールレンズ214の直径DAより小さい。
【0075】
v≦Zでは、スポットの直径SPは、フォトダイオードチップの位置座標Zが大きくなるほど大きくなる。ただし直線L2の傾きに比べて直線L3の傾きが大きいため、Zv≦Zでは、フォトダイオードチップの位置座標Zが大きくなるにつれてスポットの直径SPが急激に大きくなる。
【0076】
次に、最小集光位置Zsが生じるための条件について説明する。まず、直線L1〜L3を表わす式を以下に示す。
【0077】
(a)直線L1を表わす式
ボールレンズ214の有効開口径D’は以下の式(1)により表わされる。
【0078】
【数1】

【0079】
ここでは、レンズ口径を2Rとしている。ボールレンズ214の焦点距離fは以下の式(2)により表わされる。
【0080】
【数2】

【0081】
ここで、nはボールレンズ214の屈折率および、+Z領域の媒体の屈折率である。
したがって、点F(ZF,0)のZ座標ZFは以下の式(3)により表わされる。
【0082】
【数3】

【0083】
直線L1は、図14に示した点P3(0,R)と点V(ZFcosθ,−ZFsinθ)とを通る直線の一部であるから、以下の式(4)により表わされる。
【0084】
【数4】

【0085】
(b)直線L2を表わす式
点P4の座標(ZB’,XB’)は直線X=1/tanθ×Z+Rと、円Z+X=Rとの交点であるので、以下の式(5)により表わされる。
【0086】
【数5】

【0087】
点P5はZ軸に対して点P4と対称の位置にあるので、点P5の座標(ZA’,XA’)は以下の式(6)により表わされる。
【0088】
【数6】

【0089】
直線L2は点P5(ZA’,XA’)と点V(ZFcosθ,ZFsinθ)とを通る直線であるので、以下の式(7)により表わされる。
【0090】
【数7】

【0091】
(c)直線L3を表わす式
直線L3を表わす式は、傾きが−rであり、切片が−Rの直線の式であるので、直線L3は以下の式(8)により表わされる。
【0092】
【数8】

【0093】
続いて、直線L1,L2の交点Sの座標を求める。式(4)および式(7)より、交点Sの座標(Zs,Xs)は、以下の式(9)により表わされる。
【0094】
【数9】

【0095】
最小集光位置Zsが生じる条件とは、直線L2の傾きrが正である(実線k2のうちZ軸に対して直線L2と対称な部分の傾きが負である)という条件である。この条件は以下の式(10)により表わされる。
【0096】
【数10】

【0097】
式(10)の左辺分母が正であれば、式(10)に示した条件は、以下の式(11)により示される条件と等価となる。
【0098】
【数11】

【0099】
なお、式(11)は0°<θ<90°のときに満たされる。すなわち、0°<θ<90°のときには式(10)の左辺分母が正となる。式(3)によりZ=1/(n−1)×Rと表わされるので、式(11)を変形すると以下の式(12)となる。
【0100】
【数12】

【0101】
ここで屈折率n>1のとき、式(12)の両辺に(n−1)を掛けて整理すると、以下に示した式(13)が導かれる。
【0102】
【数13】

【0103】
0°<θ<45°のとき、1−2sinθ>0であるので、式(13)に示した条件は、以下の式(14)に示した条件と等価となる。
【0104】
【数14】

【0105】
半球ボールレンズのNAは(n−1)であり、光ファイバのNAはsinθである。すなわち、式(14)に示した条件は、光ファイバのNA(開口数)をNAとし、レンズのNAをNAとすると、NAおよびNAは、NA2<NA/(1−2NA)という条件である。ボールレンズ214のNAおよび光ファイバのNAが上記の条件を満たす場合に、最小集光位置Zが存在する。
【0106】
本実施の形態では、フォトダイオードチップの受光面の位置座標Zが0≦Z<ZFを満たすようにフォトダイオードチップを配置する。すなわちフォトダイオードチップは、ボールレンズ214のレンズ光軸(Z軸に相当)におけるボールレンズ214の焦点位置ZFよりもボールレンズ214に近い側に配置される。0≦Z<ZFの範囲においては、スポットの直径SPをボールレンズ214の直径DAよりも小さくすることができる領域が存在する。
【0107】
フォトダイオードチップの受光面の位置座標Zをこの領域内に設定し、かつボールレンズ214の直径DAを受光側光ファイバ190のコア191の直径よりも小さくすることによって、フォトダイオードチップの受光面の幅を、受光側光ファイバ190のコア191の直径より小さくできる。
【0108】
また本実施の形態によれば、ボールレンズによりフォトダイオードチップの受光面の幅を、受光側光ファイバ190のコア191の直径より小さくできるので、光学系の構成を簡素化できる。
【0109】
より好ましくは、フォトダイオードチップの受光面の位置座標Zが0≦Z<Zvを満たすように、フォトダイオードチップを配置する。なお、Zv<ZFである。
【0110】
vは、受光側光ファイバのNAに従って定まるボールレンズの最大視野角θ(たとえば30°)でボールレンズ214に入射した光の焦点(点Vあるいは点V)をボールレンズ214の光軸(Z軸に相当)に投影した点の位置に対応する。なお、本実施の形態では、受光側光ファイバのNAに従って定まるボールレンズの最大視野角とは、受光側光ファイバ190から出射した光の、ファイバ光軸Aに対する最大角度であり、その角度は受光側光ファイバのNAに従って定まる。また、ボールレンズ214の光軸はファイバ光軸Aと重なる。このようにフォトダイオードチップの位置を設定することにより、より確実に、スポットの直径SPをボールレンズ214の直径DAよりも小さくすることができる。ボールレンズ214の直径DAを受光側光ファイバ190のコアの直径よりも小さくすることによって、フォトダイオードチップの受光面の幅を受光側光ファイバ190のコアの直径より小さくできる。
【0111】
ただし、実際の設計においては上記位置座標Zvを求めることが容易でないことも考えられる。そこで、0≦Z<DA/2となるようにフォトダイオードチップの受光面の位置座標Zを設定してもよい。すなわち、本実施の形態では、球面214aの曲率中心である点P1からフォトダイオードチップの受光面までの距離が球面214aの曲率半径(DA/2)よりも短くなるように、フォトダイオードを配置することもできる。
【0112】
図14に示すように、Z軸上において、点P1からDA/2だけ離れた点の位置座標をZRとする。Zv=ZFcosθであり、ボールレンズ214の屈折率をnとすると、ZF=DA/(2(n−1))となる。たとえばボールレンズの屈折率としてn=1.7、プラスチックファイバのNA(=0.5)から定められるθ=30°とした場合、Zv=DA/1.4となり、ZS<ZRとなる。よって図14に示すように0<ZS<ZR<Zv<ZFとなる。つまり、球面214aの曲率半径(DA/2)は、球面214aの曲率中心(点P1)からZ軸上の焦点位置(点F)までの距離(ZF)よりも短い。さらに、0<Z<ZRとなるようにフォトダイオードチップの受光面の位置座標Zを設定することで、0<Z<Zvの条件も満たすことができる。また、0<ZS<ZRであるので、0<Z<ZRの範囲に最小集光位置が含まれる。これにより、フォトダイオードチップの受光面の位置座標Zを0<Z<Zvの範囲に設定した場合と同様の効果を得ることができる。
【0113】
さらに好ましくは、フォトダイオードチップの受光面の位置座標ZがZ=Zsを満たすようにフォトダイオードチップを配置する。Z=Zsにおいて、フォトダイオードチップの受光面に形成されるスポットの直径SPが最も小さくなる。したがってフォトダイオードチップのサイズを最も小さくすることができる。
【0114】
(リフレクタによる結合効率の向上)
本実施の形態によれば、ボールレンズを用い、かつフォトダイオードの位置を適切に定めることによって、受光側光ファイバのコアの直径よりも、フォトダイオードの受光面の幅を小さくできる。これによって、フォトダイオードのサイズ自体も小さくできる。
【0115】
しかし図15に示すように、ボールレンズ214の直径DAがコア191の直径Dと同程度あるいはそれより小さい場合、コア191の端面から、受光側光ファイバ190のファイバ光軸Aに対して受光側光ファイバ190のNAで定まる角度(たとえば30°)で出射した光の一部が、ボールレンズ214の有効径で定まるレンズ表面の範囲内に入射できないことが起こり得る。この場合には光量ロスが発生する。
【0116】
図2および図3に示したように、本実施の形態では、受光側光ファイバ190の端面とPDパッケージの透光性樹脂173との間に、ボールレンズ214の直径Dと同程度の直径dを有する貫通孔205が形成されたリフレクタ204を配置する。貫通孔205の内周面205aは、受光側光ファイバのコア端面から出射した光を反射するための反射面として機能する。リフレクタ204を上述のように構成することによって、受光側光ファイバ190のコア191の端面から出射された光を貫通孔205内に閉じ込めることができる。さらに、コア191の端面からボールレンズ214の表面に直接的に入射できない光を、リフレクタ204の反射面(貫通孔205の内周面205a)により反射させてボールレンズ214に導くことができる。この結果、光量のロスを低減できる。
【0117】
図2および図3に示した構成によれば、貫通孔205は円柱状に形成されている。これにより、下記の効果を得ることができる。
【0118】
図16は、リフレクタ204の貫通孔205を円柱状に形成することによる効果を説明する第1の図である。図17は、リフレクタ204の貫通孔205を円柱状に形成することによる効果を説明する第2の図である。
【0119】
図16および図17を参照して、受光側光ファイバ190のファイバ光軸Aに対して−30°の角度で受光側光ファイバ190から出射する光を考える。この光は、リフレクタ204に形成された貫通孔205の内周面205a(反射面)によって反射される。この結果、あたかもコア191の下側の領域271から、+30°の視野角を有する光がボールレンズ214に入射した状態となる。同様に、受光側光ファイバ190のファイバ光軸Aに対して+30°の角度で受光側光ファイバ190から出射する光は、貫通孔205の内周面205aによって反射される。この結果、あたかもコア191の上側の領域272から−30°の視野角を有する光がボールレンズ214に入射した状態となる。したがって図17に示すように、ボールレンズ214においては、+30°から−30°までの範囲の視野角を有する光に対して一定の集光性能を得ることができる。さらにボールレンズ214は、視野角に対して入射開口径が一定となるという特徴を有しているので、図11に示した集光特性も得ることができる。
【0120】
+30°から−30°までの範囲の視野角を有し、かつボールレンズ214に直接的に入射しない光を、リフレクタ204を用いてボールレンズ214に導くことにより、コア191から出射した光を効率的にフォトダイオードチップ172の受光面172aに集光することができる。これにより、光量のロスを少なくすることが可能になる。
【0121】
なお、リフレクタ204の貫通孔205の形状については円柱状に限定されるものではない。以下に、本実施の形態に適用可能なリフレクタの他の例について説明する。
【0122】
図18は、本実施の形態に係る受光装置に適用可能なリフレクタの別の構成例を示した図である。図18を参照して、受光装置はリフレクタ204に代えてリフレクタ280を含む。この点で、図18に示した構成は図3に示した構成と異なる。ただし図18に示した受光装置の他の部分については、図3に示した構成と同様である。
【0123】
リフレクタ280は、受光側光ファイバ190の端面に向けられた主表面280aと、PDパッケージ170に向けられた主表面280bとを有する。リフレクタ280には、主表面280a,280bと略垂直方向に貫通孔281が形成され、貫通孔281にボールレンズ214が挿入される。また、貫通孔281の内周面281aは、鏡面反射面として形成されている。
【0124】
貫通孔281はテーパー状に形成される。主表面280a側の貫通孔281の直径d1は、主表面280b側の貫通孔281の直径d2よりも大きい。なお、図3に示した構成と同様に、ボールレンズ214の直径DAは、主表面280b側の貫通孔281の直径d2と同じかあるいは僅かに小さい。
【0125】
図19は、本実施の形態の受光装置に適用可能なリフレクタ280の平面図である。図20は、図19のXX−XX線でのリフレクタ280の断面図である。
【0126】
図19および図20を参照して、貫通孔281は円錐台形状に形成されている。詳細に説明すると、主表面280a側の開口部280cにおける貫通孔281の形状は、直径d1を有する円である。一方、主表面280b側の開口部280dにおける貫通孔281の形状は、直径d2を有する円である。また、貫通孔281の中心軸Cに垂直、かつ主表面280aと主表面280bとの間に位置する面でのリフレクタ280の断面像においては、貫通孔281の形状は円である。ただし、その円の直径は、中心軸C上における断面の位置が主表面280a側から主表面280b側(図18に示すように受光側光ファイバ190側からボールレンズ214側)に変化するにつれて小さくなる。貫通孔281の貫通方向(主表面280a,280bに垂直な方向)における内周面281aの輪郭は、貫通孔281の中心軸Cに平行な直線に対して、0°よりも大きい所定の角度αをなしている。
【0127】
図21は、図20に示した角度αの好ましい範囲を説明するための図である。図21を参照して、受光側光ファイバ190のコア191から、受光側光ファイバ190のファイバ光軸Aに対して角度θで光が出射される。この光は貫通孔281の内周面281aにて反射される。
【0128】
コア191において光が出射する点を点Pとし、点Pを通りファイバ光軸Aに平行な直線をA1とする。内周面281aにおける光の入射位置(および反射位置)を点Qとし、内周面281aで反射した光の光軸と直線A1との交点を点Rとし、直線A1と内周面281aとの交点を点Sとする。また、点Qを通り、貫通孔281の貫通方向における内周面281aの輪郭に垂直な直線A2と直線A1との交点を点Tとする。
【0129】
角度αを0°より大きくすることにより、角PRQ(辺PRと辺QRとによって定まる角度を示す、以下の記載も同様)も0°より大きくなる。角PRQが直角になった場合、点Qで反射した光におけるファイバ光軸A方向の成分は0になる。この場合、点Qで反射した光は、破線の矢印に示す経路をたどり、コア191に戻ると考えられる。また、この破線の経路状にボールレンズ214が存在したとしても、ボールレンズ214によりフォトダイオードチップの受光面に集められた光の強度は小さくなる(たとえば迷光と同程度の強度になる)と考えられる。角PRQが鋭角である場合、点Qで反射した光は、ファイバ光軸A方向の成分、すなわち点Pから点Sに向かう向きの成分を有する。この場合、点Qで反射した光はボールレンズ214により集光されて、フォトダイオードチップの受光面(図示せず)に入射する。
【0130】
したがって、角度αの好ましい範囲としては、0°以上かつ、角PRQが直角となるときの角度未満と考えられる。次に角PRQが直角となるときの角度αについて説明する。以下の説明においては、三角形の3つの内角の和が180°であるという定理、および、三角形の外角が、それと隣り合わない2つの内角の和に等しいという定理とを用いている。
【0131】
三角形QSTにおいては、角TQSが90°であり、かつ角QSTがαである。したがって、角QTSは(90−α)°となる。次に、三角形PQTについてみると、角QPTと角PQTとの和は、角QTSに等しくなる。角QPTはθであるので、角PQTは(90−α−θ)°となる。
【0132】
次に、点Pから出射し、かつ内周面281a上の点Qで反射した光については反射の法則が成立するので、角RQTは角PQTと等しくなる。したがって角RQTは(90−α−θ)°である。
【0133】
三角形PQRについてみると、角QPRと角PQRとの和は角QRPすなわち90°に等しい。角QPRはθであり、角PQRは、2×(90−α−θ)°である。したがって角QRPが90°になる場合、角度α,θについては、θ+2×(90−α−θ)=90との関係が成立する。この式より、角度αは、(90−θ)°/2となる。すなわち、0<α<(90−θ)°/2であれば、角PRQが90°より小さくなる。
【0134】
ここで、角度θは、0°以上かつ受光側光ファイバ190のNAによって定まる角度以下である。したがって、(90−θ)°/2の最大値は、角度θが0°の場合の値、すなわち45°である。また、(90−θ)°/2の最小値は、角度θが受光側光ファイバ190のNAによって定まる角度の場合の値である。たとえばθ=30°とすると、(90−θ)°/2の最小値は30°となる。
【0135】
以上の説明を整理すると、角度αの範囲は0°<α<(90−θ)°/2である。θ=0°の場合に角度αの範囲は最も広くなり、0°<α<45°となる。一方、θが受光側光ファイバ190のNAによって定まる角度である場合、角度αの範囲は最も狭くなる。たとえばθ=30°とすると、角度αの範囲は0°<α<30°となる。
【0136】
なお、本実施の形態においては、レンズの曲面全体が球面であるボールレンズを示した。しかし、レンズの表面のうちの少なくとも光が入射範囲が球面状に形成されていれば、その範囲に入射した光は図11〜図14等に示したようにレンズによって集光される。したがって、本発明の受光装置が備えるレンズにおいては、その曲面のうちの少なくとも光の入射範囲が球面状に形成されていればよい。
【0137】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本実施の形態に従う受光装置を備える光ファイバ型光電センサの一例を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示した本体部101の内部構成の一例を示した図である。
【図3】図2に示したPDパッケージ170の周辺拡大図である。
【図4】リフレクタ204の平面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】受光側光ファイバから出射した光を受光する受光装置の最も単純と考えられる構成を示した図である。
【図7】図6に示した構成による課題を解決するための受光装置の構成を示した図である。
【図8】単純な光学系によりフォトダイオードチップ172を小型化するための検討例を示した図である。
【図9】受光側光ファイバ190からの出射光を集光するための別の検討例を説明した図である。
【図10】受光側光ファイバ190からの出射光を集光するためのさらに別の検討例を説明した図である。
【図11】本実施の形態に係る受光装置に用いられるボールレンズの特徴を説明するための図である。
【図12】本実施の形態に従うボールレンズ214による光の集光を説明するための図である。
【図13】図12に示す実線k1,k2を説明するための座標系を示した図である。
【図14】図12および13に示した実線k1,k2とスポットの直径SPとの関係を説明するための図である。
【図15】ボールレンズの直径が光ファイバのコアの直径と同程度あるいはそれより小さい場合の課題を説明する図である。
【図16】リフレクタ204の貫通孔205を円柱状に形成することによる効果を説明する第1の図である。
【図17】リフレクタ204の貫通孔205を円柱状に形成することによる効果を説明する第2の図である。
【図18】本実施の形態に係る受光装置に適用可能なリフレクタの別の構成例を示した図である。
【図19】本実施の形態の受光装置に適用可能なリフレクタ280の平面図である。
【図20】図19のXX−XX線でのリフレクタ280の断面図である。
【図21】図20に示した角度αの好ましい範囲を説明するための図である。
【符号の説明】
【0139】
100 光ファイバ型光電センサ、101 本体部、102 ヘッド部、103 表示部、104 操作部、105 電気コード、110 本体ケーシング、111,112 開口部、114 開閉カバー、116 フレーム、120 ホルダ部材、121,122 内壁、123 ヒンジ部、125,126 空間、130 回動レバー、131 回動軸、134 スライダー、140 光ファイバ固定部材、141 上部側固定部、143 下部側固定部、150 実装基板、160 LEDパッケージ、170 PDパッケージ、171 基材、172 フォトダイオードチップ、172a 受光面、173 透光性樹脂、180 投光側光ファイバ、181,191 コア、182,192 クラッド、183,193 外皮、190 受光側光ファイバ、191a 端面、202,204,261,280 リフレクタ、202a,205a,281a 内周面、204a,204b,280a,280b 主表面、205,281 貫通孔、212,214,260 ボールレンズ、214a 球面、214b,214c 平面、250,251〜253 レンズ、260a,260b 有効開口位置、261a 反射面、265 半球面、271,272 領域、280c,280d 開口部、A ファイバ光軸、B,B0,B1,B2 光ビーム、C 中心軸、LA レンズ光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバから出射された光を受ける受光装置であって、
少なくとも前記光の入射範囲が球面に形成されたレンズ面を有し、前記光ファイバから前記入射範囲に入射した前記光を集光するレンズと、
前記レンズによって集光された前記光を受ける受光面を有する受光素子とを備え、
前記レンズは、前記光ファイバのファイバ光軸が前記入射範囲の中心を通るように配置され、
前記光ファイバの開口数をNAとし、前記レンズの開口数をNAとすると、NAおよびNAは、NA2<NA/(1−2NA)との条件を満たし、
前記受光素子は、前記受光面の前記ファイバ光軸上の位置が、前記レンズの前記ファイバ光軸上の焦点位置よりも前記レンズに近くなるように配置される、受光装置。
【請求項2】
前記入射範囲である前記球面の曲率中心は、前記ファイバ光軸上に位置し、
前記球面の曲率半径は、前記曲率中心から前記焦点位置までの距離よりも短く、
前記受光素子は、前記曲率中心から前記受光面までの距離が、前記曲率半径よりも短くなるように配置される、請求項1に記載の受光装置。
【請求項3】
前記受光素子は、前記受光面の前記ファイバ光軸上の位置が、前記光ファイバの開口数に従って定まる前記ファイバ光軸に対する最大角度で前記光ファイバから出射され、かつ前記入射範囲に入射した前記光の焦点の前記ファイバ光軸方向の位置よりも前記レンズに近くなるように配置される、請求項1に記載の受光装置。
【請求項4】
前記受光面の前記ファイバ光軸上の位置は、
前記光ファイバの開口数に従って前記ファイバ光軸に対する出射角度の範囲が定まり、かつ前記入射範囲に入射する前記光を、前記レンズが集光することにより生じた前記光のスポットが、最も小さくなる位置である、請求項2または3に記載の受光装置。
【請求項5】
前記受光装置は、
前記レンズを囲むように形成されて、前記光ファイバからの前記光を反射する反射面を有するリフレクタをさらに備え、
前記ファイバ光軸に対して垂直な前記リフレクタの断面における、前記反射面の輪郭線は円であり、
前記円の直径は、前記ファイバ光軸上における前記断面の位置にかかわらず一定である、請求項1から4のいずれか1項に記載の受光装置。
【請求項6】
前記受光装置は、
前記レンズを囲むように形成されて、前記光ファイバからの前記光を反射する反射面を有するリフレクタをさらに備え、
前記ファイバ光軸に対して垂直な前記リフレクタの断面における、前記反射面の輪郭線は円であり、
前記円の直径は、前記ファイバ光軸上における前記断面の位置が前記光ファイバ側から前記レンズ側に変化するにつれて小さくなる、請求項1から4のいずれか1項に記載の受光装置。
【請求項7】
前記ファイバ光軸と、前記ファイバ光軸に平行な前記リフレクタの断面における、前記反射面の輪郭線とのなす角度は、0度より大きく、かつ、90°と前記光ファイバの開口数により定まる前記光の前記ファイバ光軸に対する最大出射角との差分の1/2よりも小さい、請求項6に記載の受光装置。
【請求項8】
光ファイバと、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の受光装置とを備える、センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−67892(P2010−67892A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234763(P2008−234763)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】