説明

受動的放熱ファンシステム及び其れを備える電子システム

【課題】受動的放熱ファンシステム及びそれを備える電子システムを提供する。
【解決手段】受動的放熱ファンシステム4は、空気供給装置41と、少なくとも1つの冷端受動的放熱アッセンブリ43と、少なくとも1つの熱端受動的放熱アッセンブリ44と、気流を導き冷端受動的放熱アッセンブリ43及び熱端受動的放熱アッセンブリ44へと進入させることのできる分離装置42と、分離装置内に設けられ、且つ冷・熱両端を有する冷却装置とを備える。空気供給装置41から供給された気流は、分離装置42に導かれて分流され、一部の気流は冷却装置の熱端へと流れ、さらに熱端受動的放熱アッセンブリ44に進入することにより、熱気流を電子システム外に排除することができる、別の一部分の気流は冷却装置の冷端と流れ、さらに冷端受動的放熱アッセンブリ43に流れ込み、発熱素子2’の放熱を行うことができ、且つ結露現象を生じるのを避けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受動的放熱ファンシステムに関し、特に冷却装置を有する受動的放熱ファンシステムに関するもので、分離装置により気流を冷却装置の冷端と熱端に導くことにより気流を有効的に熱源の放熱を行うことができ、且つ廃熱除去を行うことができるものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にほとんどのファンはモータと共に用いられ、モータの回転によりファンは回転し、放熱効果を得ることができる(例えば特許文献1)。
【0003】
しかしながら、公知のファン構造はいくつかの欠点を有しており、その一つが、羽根車はモータと共に用いられなければならないため、ファンを使用することにより放熱効果を得たい場合、動力を提供するモータは不可欠である故に、モータの製造と組み立てにかかるコストは避け難いものとなっている。二つ目は、モータ自身が一定の体積を占めており、仮にこの構造を更に簡素化したとしても、ファン小型化の問題を有効的に解決できない可能性がある。三つ目は、モータ自身も電力があって初めて回転されるので、公知のファンが電子システムに適用される時は、消費電力が増加するという問題がある。即ち、モータはある一定のエネルギーを消費することによって羽根車を駆動し、もし仮に電子システム内に更に多くの熱分散を必要とする場合、多くのファンを設ける必要を免れることはできず、そのことが電力の消費増加に繋がり、エコ意識が台頭している今日に至っては、こういった方法は実際に省エネの趨勢に合わないものとなっている。
【0004】
これ以外にも、公知になっている多種の冷却装置は特定の熱源に対して熱の分散を行うわけだが、図1に示されるように、電子システム1内には、少なくとも1つの電子素子2(例えば処理装置等)があり、この電子素子2は大量の演算のオペレーション及び処理を行う必要があるため、必然的に少なからず発熱する。電子素子の正常作動を保持するため、其の表面に1つの冷却装置3(例えば熱電子冷却器(Thermal electric cooler)、熱音響冷却器(Thermoacoustic cooler)等)を設置することによって、電子素子2の内部温度を下げることができる。
【特許文献1】特開2003−110269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この冷却装置3は1つの特性を有しており、即ちこの冷却装置が通電した後、その両端は冷端31と熱端32となり、冷端31は発熱している電子素子2と接触し温度を下げ、且つ廃熱を熱端32に移す。熱端32は1つの放熱フィン33を設置することにより有効的に廃熱排除を行う。確かに廃熱を有効的に電子素子2の表面から除去することが可能だが、しかしながら除去された廃熱は依然電子システム1内に残留しており、このことが電子システム1全体の温度を上昇させることとなる。もし仮にこの電子システム1が良好な放熱装置を有しないか、もしくは電子素子1内に多くの電子素子2が備えられている場合、電子システム1全体の環境温度は過度なほど高くなり、そのことがオペレーションに悪い影響をもたらす。
【0006】
その他に、この冷却装置3の冷端31の表面温度が一定の程度まで下がった場合、(その時の環境温度と湿度により決められる)、その表面には水滴を生ずる可能性を有し、これを結露現象と呼び、仮に電子素子2が一旦湿ってしまうと、電子素子全体に破損が生じることとなる。よって、もし仮にこういった冷却装置を使用した場合、電子素子にも大きな損害のリスクを背負うこととなる。
【0007】
本発明は、上記の欠点に鑑みて受動的放熱ファンシステムを提供することを目的とする。該受動的放熱ファンシステムは、電子システム内の電子素子から生じた高温を安全的な方法により下げることができ、更に効果的に電子システム外に廃熱を排出することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の提供する受動的放熱ファンシステムは、空気供給装置と、少なくとも1つの冷端受動的放熱アッセンブリと、少なくとも1つの熱端受動的放熱アッセンブリと、気流を導き冷端受動的放熱アッセンブリ及び熱端受動的放熱アッセンブリへと進入させることのできる分離装置と、分離装置内に設置されている冷却装置とを備え、其の中で分離装置は1つの分離構成部を備え、冷却装置は熱端及び冷端を有し、分離構成部の両側にそれぞれ位置している。空気供給装置により提供された気流は、分離構成部に導かれて分流し、一部の気流が冷却装置の熱端に流れ、さらに熱端受動的放熱アッセンブリへと流れ、一部の気流は冷却装置の冷端に流れ、さらに冷端受動的放熱アッセンブリへと流れる。
【0009】
上記の空気供給装置は1つの能動ファンと1つの空気供給パイプを備え、この空気供給パイプは能動ファンによって生じた高圧風を冷却装置へ送ることができる。
【0010】
上記の冷端受動的放熱アッセンブリは1つの冷端パイプ及び1つの冷端受動ファンを備え、この冷端パイプの一端は冷気流を生じる分離装置の1つの側面に接続され、別の一端は冷端受動ファンに接続される。この冷端受動ファンは発熱物に対して放熱を行う。
【0011】
上記の熱端受動的放熱アッセンブリは、1つの熱端パイプ及び1つの熱端受動ファンを備え、この熱端パイプの一端は熱気流を生じる分離装置の1つの側面に接続され、別の一端は熱端受動ファンに接続される。この熱端受動ファンは電子システムの一側面に設置され、熱気流を電子システム外に排除することができ、更に熱端受動ファンの回転により、電子システム内の気流の循環を増進させることができる。
【発明の効果】
【0012】
該受動的放熱ファンシステムは、電子システム内の電子素子から生じた高温を安全的な方法により下げることができ、更に効果的に電子システム外に廃熱を排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の上述及びその他の目的、特徴及び利点を更に明確に分かりやすくするため、以下に図と対応させて、比較的優れた実施例を挙げ、詳しい説明を行う。
【0014】
同時に図2乃至図4を参照されたい。図2は本発明の受動的放熱ファンシステムを電子システム内に応用した外観の概略図である。
【0015】
本発明の電子システム1は、筐体100と、筐体100内に配置された受動的放熱ファンシステム4と、筐体100内に配置された少なくとも1つの電子素子2´と、電子素子2´の表面上に配置された少なくとも1つの放熱フィン21とを備えてなる。本発明の受動的放熱ファンシステム4は、電子システム1の一側面に設置してある空気供給装置41と、空気供給装置41に接続されている冷熱分離アッセンブリに相当する分離装置42(破線で囲まれた部分)と、分離装置42の一側面に設置されている少なくとも1つの冷端受動的放熱アッセンブリ43と、分離装置42の一側面に設置されている少なくとも1つの熱端受動的放熱アッセンブリ44と、及び分離装置42内部に設置されている冷却装置45(図4に示す通り)とを備える。
【0016】
本実施例は、2つの冷端受動的放熱アッセンブリと1つの熱端受動的放熱アッセンブリを有する受動的放熱ファンシステム4を用いて説明を行うものである。
【0017】
空気供給装置41は能動ファン411及び能動ファン411の出風口に接続されている空気供給パイプ412を備える。能動ファン411は軸流ファン或いは遠心ファン等とすることが可能で、電力を供給して旋回させることができる、又空気供給パイプ412は能動ファン411により生じた高圧風を分離装置42内の冷却装置45へと送ることができる。
【0018】
図3、図4に示されるように、分離装置42内に分離構成部421が設置され、且つ分離装置42内の冷却装置45は冷・熱分離技術を利用した例えば熱電子冷却器、熱音響冷却器等の放熱デバイスであり、熱端450hと冷端450cとを備え、それらは分離構成部421の両側に位置している。この冷却装置45の熱端450h表面には熱端放熱フィン451が設置されており、冷端450c表面には冷端放熱フィン452が設置されている。この分離構成部421と冷却装置45の組み合わせは、分離装置42の一部分の空間を熱端チャンバー422と冷端チャンバー423に分ける。
【0019】
もう一度図2を参照すると、この冷端受動的放熱アッセンブリ43は冷端パイプ431及び冷端受動ファン432を備える。冷端パイプ43の一端は分離装置42の冷端チャンバー423と接続されており、別の一端は冷端受動ファン432と接続されている。冷端受動ファン432はモータを用いない軸流ファン或いは遠心ファンであってもよく、電子素子2´の熱端放熱フィン21上に設置される。当然、この冷端受動ファン432は直接電子素子2´へ送風することが可能である。
【0020】
熱端受動的放熱アッセンブリ44は熱端パイプ441及び熱端チャンバー422を備え、この熱端パイプ441の一端は分離装置42の熱端チャンバー422と接続され、別の一端は熱端受動ファン442と接続されている。この熱端受動ファン442は、モータを用いない軸流ファン或いは遠心ファンであってもよく、電子システム1の一側面に設置されており、熱端チャンバー422から排出された廃熱を電子システム外へと排除する。
【0021】
空気供給装置41が作動開始した時、この空気供給装置41は電子システム1の外部から気体を吸入し、高圧風に変換する。その高圧風は空気供給パイプ412を経由し分離装置42内の冷却装置45へと送られる。
【0022】
分離構成部421と冷却装置45の組み合わせは、分離装置42の一部分の空間を熱端チャンバー422と冷端チャンバー423とに分ける故に、高圧風の一部が冷却装置45における熱端450h側の熱端放熱フィン451へ送られ、熱端チャンバー422へ入り、一部は冷却装置45における冷端450c側の冷端放熱フィン452へ送られ、冷端チャンバー423に入る。熱端チャンバー422に入った高圧風は温度の比較的高い気流となり、更に熱端パイプ441を経由し熱端受動ファン442に衝突し、これを回転させ、また、冷端チャンバー423に入った高圧風は温度の比較的低い気流となり、冷端パイプ431を経由して冷端受動ファン432に衝突し、これを回転させる。
【0023】
冷却装置45の廃熱は熱端放熱フィン451によって送り出され、熱端受動ファン442により電子システム1外に排除される故に、生じた廃熱が電子システム1内部に蓄積されることがなくなる。更に高温気流は熱端受動ファン442を回転させ、これにより電子システム1内の気流の循環を増進させることができる。冷却装置45を通過した冷端放熱フィンの低温気流は冷端受動ファン432により電子素子2´の放熱フィン21へ送られ、そのことにより電子素子2´の温度を下げることができる。放熱フィン21によって送られた低温気流の温度は冷却装置45の冷端温度よりも僅かに高いため、結露現象が生じない。該受動的放熱ファンシステム4は、電子システム1内の電子素子から生じた高温を安全的な方法により下げることができ、更に効果的に電子システム1外に廃熱を排出することができる。
【0024】
本発明を好ましい実施形態によって以上のように開示したが、これは本発明を限定しようとするものではなく、当業者によれば、本発明の技術的思想と範囲を逸脱しない限りにおいて変更および改良を施すことができる。よって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲で定義されたものが基準とされる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の電子システムの放熱方式の説明図である。
【図2】受動的放熱ファンシステムが電子システムへ応用された外観の概略図である。
【図3】本発明の局部を拡大した概略図である。
【図4】図3の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 電子システム(Electronic system)
2 電子素子(Electronic element)
3 冷却装置(Cooling device)
4 受動的放熱ファンシステム(Passive heat dissipating fan system)
31 冷端(Cold-end)
32 熱端(Hot-end)
21,33 放熱フィン(Fin structure)
100 筐体(Housing)
41 空気供給装置(Air-providing device)
411 能動ファン(Active fan)
412 空気供給パイプ(Air-providing pipe )
42 分離装置(冷熱分離アッセンブリ)(Separation device)
421 分離構成部(Separation element)
422 熱端チャンバー(Hot-end chamber)
423 冷端チャンバー(Cold-end chamber)
43 冷端受動的放熱アッセンブリ(Cold-end passive heat dissipating assembly)
431 冷端パイプ(Cold-end pipe)
432 冷端受動ファン(Cold-end passive fan)
44 熱端受動的放熱アッセンブリ(Hot-end passive heat dissipating assembly)
441 熱端パイプ(Hot-end pipe)
442 熱端受動ファン(Hot-end passive fan)
45 冷却装置(Cooling device)
450c 冷端(Cold-end)
450h 熱端(Hot-end)
451 熱端放熱フィン(Hot-end fin structure)
452 冷端放熱フィン(Cold-end fin structure)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気供給装置と、
前記空気供給装置と接続されている冷熱分離アッセンブリと、
前記冷熱分離アッセンブリと接続されている少なくとも1つの熱端受動的放熱アッセンブリと、
前記冷熱分離アッセンブリと接続されている少なくとも1つの冷端受動的放熱アッセンブリとを備え、
前記空気供給装置により生じた気流は、前記冷熱分離アッセンブリを通過した後、一部分の前記気流は前記熱端受動的放熱アッセンブリへ流れ、一部分の前記気流は前記冷端受動的放熱アッセンブリへと流れるよう構成された受動的放熱ファンシステム。
【請求項2】
前記空気供給装置は、能動ファン及び前記能動ファン出風口に接続される空気供給パイプを備え、前記能動ファンは軸流ファン或いは遠心ファンである請求項1に記載の受動的放熱ファンシステム。
【請求項3】
前記冷熱分離アッセンブリが、分離構成部を其の中に有する分離装置と、前記分離構成部と接続され、前記分離構成部の両側に位置する熱端及び冷端を有する冷却装置とを備え、
前記分離構成部と前記冷却装置は、前記分離装置内を熱端チャンバーと冷端チャンバーとに画定し、前記冷却装置の前記熱端は前記熱端チャンバー内に位置しており、前記冷却装置の前記冷端は前記冷端チャンバー内に位置している請求項1に記載の受動的放熱ファンシステム。
【請求項4】
前記冷却装置は熱電子冷却器或いは熱音響冷却器である請求項3に記載の受動的放熱ファンシステム。
【請求項5】
前記熱端受動的放熱アッセンブリは前記熱端チャンバーと接続され、前記冷端受動的放熱アッセンブリは前記冷端チャンバーと接続される請求項3に記載の受動的放熱ファンシステム。
【請求項6】
前記熱端受動的放熱アッセンブリは、熱端パイプ及び熱端受動ファンを備え、前記熱端パイプの一端は前記熱端チャンバーと接続されており、別の一端は前記熱端受動ファンと接続されており、前記冷端受動的放熱アッセンブリは冷端パイプ及び1つの冷端受動ファンを備え、前記冷端パイプの一端は前記冷端チャンバーと接続されており、別の一端は前記冷端受動ファンと接続されている請求項5に記載の受動的放熱ファンシステム。
【請求項7】
前記熱端受動ファンと前記冷端受動ファンはそれぞれ、モータを用いない軸流ファン或いは遠心ファンである請求項6に記載の受動的放熱ファンシステム。
【請求項8】
前記冷却装置の前記熱端の表面と前記冷端の表面とには、更に放熱フィンがそれぞれ設置されている請求項3に記載の受動的放熱ファンシステム。
【請求項9】
受動的放熱ファンシステムを備える電子システムであって、
前記電子システム内に設置されている空気供給装置と、
前記空気供給装置と連結されている冷熱分離アッセンブリと、
前記冷熱分離アッセンブリと接続されている少なくとも1つの熱端受動的放熱アッセンブリと、
前記冷熱分離アッセンブリと接続されている少なくとも1つの冷端受動的放熱アッセンブリと、
前記電子システム内に位置しており且つ前記冷端受動的放熱アッセンブリと対応する少なくとも1つの電子素子とを備え、
前記空気供給装置によって生じる気流が前記冷熱分離アッセンブリを通過後、一部分の前記気流は前記熱端受動的放熱アッセンブリへと流れ、一部分の前記気流は前記冷端受動的放熱アッセンブリに流れて前記電子素子へと送られる電子システム。
【請求項10】
前記熱端受動的放熱アッセンブリは熱端パイプ及び熱端受動ファンを備え、前記熱端パイプの一端は前記冷熱分離アッセンブリと接続され、別の一端は前記熱端受動ファンと接続され、前記冷端受動的放熱アッセンブリは冷端パイプ及び冷端受動ファンを備え、前記冷端パイプの一端は冷熱分離アッセンブリと接続され、別の一端は前記冷端受動ファンと接続される請求項9に記載の電子システム。
【請求項11】
前記冷熱分離アッセンブリが、分離構成部を其の中に有する分離装置と、前記分離構成部と接続され前記分離構成部の両側に位置する熱端及び冷端を有する冷却装置とを備えた請求項9に記載の電子システム。
【請求項12】
前記冷却装置の前記熱端の表面と前記冷端の表面には、更に放熱フィンがそれぞれ設置されている請求項11に記載の電子システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−81376(P2007−81376A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207591(P2006−207591)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(596039187)台達電子工業股▲ふん▼有限公司 (192)
【Fターム(参考)】