説明

可変ノズル機構

【課題】ドライブリングを回動させてノズル翼角を変化させる際に、ドライブリングの内周面とマウントの外周面との間に発生する接触荷重を低減させることができ、ドライブリングをスムーズに回動させることができて、摩耗量および駆動力を低減させること。また、エンジン振動などの外力作用時にドライブリングに発生する衝撃力を低減し、破損のリスクを低減すること。
【解決手段】ドライブリング14の内側周縁部に、周方向に沿って切欠部19が複数設けられており、かつ、前記切欠部19と切欠部19との間に位置する内周面14a,14b,14c,14d,14e,14f,14g,14hのうち、前記ドライブリング14を回動させる駆動力が入力された際に、マウントの外周面との接触荷重が大きくなる内周面14e,14f,14g,14hの内径が、前記外周面の外径よりも大きくなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルを回動させてノズル翼角を変化させることにより、タービンロータへの燃焼ガス(流体)の流速を変化させる機能を有し、可変容量ターボチャージャ(例えば、排気ガスタービン過給機)を構成する可変容量タービンに用いられる可変ノズル機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可変容量タービンに用いられる可変ノズル機構としては、例えば、特許文献1,2に開示されたものが知られている。
【特許文献1】特開2006−161811号公報
【特許文献2】特開2004−270472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献に開示された発明では、ドライブリングの内径が、マウント(支持部材)の外径よりやや大きくなるように構成されている。
一方、ターボチャージャはエンジン台上に据え付けられるため、エンジンから振動を受ける。ドライブリングは、スムーズな回動が必要であるため、例えばマウントなどの周囲の部品とすき間を持って組み立てられているが、外部から振動を受けるとすき間を持って接する周囲の部品に衝突し、衝突荷重が発生する。もしエンジン振動が過大になると、接触荷重が過大となり、結果的にドライブリングが破損するケースも考えられる。
ドライブリングに発生する衝撃荷重は、ドライブリングの質量と関係があり、ドライブリングの軽量化は衝撃荷重低減に有効である。ドライブリングの軽量化の方法として、ドライブリングの内径側に切欠部を設ける方法が考えられる。しかし,内径側に切欠部を設けると、内径側の加工精度が低下することが考えられる。内径側の加工精度が悪いと、ドライブリングを回動しようとする力が作用した際、ドライブリングがマウントとのすき間分だけ移動する際に、ドライブリング内周面がマウント外周面を,楔を打ち込むような形で挟み込む現象が生じる可能性があり、その結果ドライブリングを回動するための小さな駆動力に対してもドライブリングとマウントの間に大きな接触力が発生する可能性がある。その結果、回動に伴う摩擦抵抗が過大となり、回動が困難な状態に陥る可能性もある。このような状態は、駆動力の作用方向に対し、斜めの角度をなす二面に接触する場合に生じやすい。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、ドライブリングを回動させてノズル翼角を変化させる際に、ドライブリングの内周面とマウントの外周面との間に発生する接触荷重の増加を低減でき、ドライブリングをスムーズに回動させることができて、接触荷重増加に伴う摩耗量および駆動力の増加を防止することができる可変ノズル機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る可変ノズル機構は、ノズルを回動させてノズル翼角を変化させることにより、タービンロータへの流体の流速を変化させる可変ノズル機構であって、前記タービンロータを支持するベアリングハウジングに固定されたマウントに支持されるとともに、内周面の一部が、前記マウントの外周面の一部と当接しながら、前記マウントに対して回動するドライブリングを備えてなり、前記ドライブリングの内側周縁部に、周方向に沿って切欠部が複数設けられており、かつ、前記切欠部と切欠部との間に位置する内周面のうち、前記ドライブリングを回動させる駆動力が入力された際に、前記外周面との接触荷重が大きくなり得る領域の内径が、他の内周面の内径よりも大きくなるように形成されている。
【0006】
上記可変ノズル機構において、ドライブリングの内周面のうち前記外周面との接触荷重が大きくなり得る領域は、概略前記内周面の中心を通り、かつ、前記ドライブリングを回動させる駆動力の作用線と略平行な線と交わらない領域であるとともに、前記内周面の中心を通り、かつ、前記ドライブリングを回動させる駆動力の作用線と略直交する線と交わらない領域、即ち内周面のうち、周方向の接線が駆動力の作用方向に対し、斜めの角度をなす領域である。
【0007】
本発明に係る可変ノズル機構によれば、ドライブリングが回動する際に、ドライブリングの内周面とマウントの外周面との間に発生する接触荷重を低減させることができ、ドライブリングをよりスムーズに回動させることができて、摩耗量および駆動力を低減させることができる。すなわち、ドライブリングおよびマウントの長寿命化(延命化)を図ることができ、機構全体(可変ノズル機構)の信頼性を向上させることができる。
また、ドライブリングの内側周縁部に、周方向に沿って複数の切欠部を設けるようにしたので、ドライブリングを軽量化することができて、外力作用時の破損のリスクを低減させることができる。
【0008】
上記可変ノズル機構において、前記外周面との接触荷重が大きくなり得る領域に、板厚を増加させる肉厚部が設けられているとさらに好適である。
【0009】
このような可変ノズル機構によれば、マウントの外周面との接触荷重が大きくなり得る領域の板厚が増加させられ、マウントの外周面との接触面積の増加が図られているので、単位面積あたりの接触荷重を低減させることができ、ドライブリングの摩耗量を低減させることができ、ドライブリングの長寿命化(延命化)を図ることができて、機構全体(可変ノズル機構)の信頼性をさらに向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る可変ノズル機構では、エンジン過大振動に伴うドライブリングの破損防止が一つの目的となっているが、破損はドライブリングに過大な応力が発生した際に生じる。応力はドライブリングの板厚にも依存するため、ドライブリング重量が過大にならない範囲で板厚を増すことは破損防止に有効である。
ドライブリングの内周面の内径を大きくした部分は、内周面がマウントと直接接触しないため、内周面の加工精度が要求されない。そのため、例えば、板の折り曲げ等を実施して局所的に肉厚部を設けることで、ドライブリングの発生応力を低減でき、ドライブリングの破損に対する信頼性を向上させることができる。
【0011】
上記可変ノズル機構において、前記駆動力が入力される部位の周辺領域に、板厚を増加させる肉厚部が設けられているとさらに好適である。
【0012】
このような可変ノズル機構によれば、ドライブリングを回動させる駆動力が入力される部分の板厚が増加させられ、駆動力を伝達する部材との接触面積の増加が図られているので、単位面積あたりの接触荷重を低減させることができ、駆動力を伝達する部材と接触する部分の摩耗量を低減させることができるため、ドライブリングの長寿命化(延命化)を図ることができ、機構全体(可変ノズル機構)の信頼性をさらに向上させることができる。
【0013】
上記可変ノズル機構において、前記外周面との接触荷重が大きくなる領域に、前記ドライブリングが前記マウントから抜け落ちるのを防止する抜け止め防止ピンの頭部と当接する突出部が設けられているとさらに好適である。
【0014】
このような可変ノズル機構によれば、突出部を設けることでドライブリングとマウントおよび抜け止め防止ピンのすき間を低減でき、エンジン振動などの外力作用時に発生する衝撃力を低減し、ドライブリングの破損のリスクを低減できる。
【0015】
上記可変ノズル機構において、前記抜け止め防止ピンの頭部と、前記ドライブリングおよび前記マウントとの間に、衝撃吸収部材が配置されているとさらに好適である。
【0016】
このような可変ノズル機構によれば、突出部等を、例えば、押出成形等により加工する必要がなくなるので、製造工程の簡略化を図ることができて、製造コストの低減化を図ることができ、かつ突出部を設けた場合と同様、エンジン振動などの外力作用時に発生する衝撃力を低減し、ドライブリングの破損のリスクを低減できる。
【0017】
上記可変ノズル機構において、前記突出部の表面および/または前記抜け止め防止ピンの頭部の裏面全体に、表面硬化加工が施されているとさらに好適である。
【0018】
このような可変ノズル機構によれば、突出部の表面および/または頭部の裏面に引っ掻き傷が発生するのを防止することができる。
また、ドライブリングおよび抜け止め防止ピンの耐摩耗性を向上させることができるので、ドライブリングおよび抜け止め防止ピンの長寿命化(延命化)を図ることができ、機構全体(可変ノズル機構)の信頼性をさらに向上させることができる。
【0019】
上記可変ノズル機構において、前記ドライブリングの外側周縁部に、前記ノズルのノズル翼角を操作するレバープレートを受け入れる切欠部または貫通穴が周方向に沿って複数設けられているとさらに好適である。
【0020】
このような可変ノズル機構によれば、ドライブリングの軽量化を図ることができるとともに、機構全体(可変ノズル機構)の軽量化を図ることができる。
また、ドライブリングが軽量化され、かつ、ドライブリングがよりスムーズに回動することとなるので、ドライブリングを駆動する駆動力を低減させることができて、ランニングコストを低減させることができる。
【0021】
本発明に係る可変容量ターボチャージャは、ドライブリングの外力による破損のリスクを低減するとともに、ドライブリングが回動する際に、ドライブリングの内周面とマウントの外周面との間に発生する接触荷重を低減させることができ、ドライブリングをよりスムーズに回動させることができて、摩耗量および駆動力を低減させることができる可変ノズル機構を備えている。
【0022】
本発明に係る可変容量ターボチャージャによれば、可変ノズル機構の保守点検(メンテナンス)ないしは交換の間隔が延びることとなるので、装置全体(可変容量タービンおよび可変容量ターボチャージャ)の保守点検費用の低減化を図ることができる。
また、本発明に係る可変ノズル機構を備えた可変容量タービンおよび可変容量ターボチャージャによれば、可変ノズル機構の信頼性の向上に伴って、装置全体の信頼性も向上することとなる。
さらに、本発明に係る可変ノズル機構を備えた可変容量タービンおよび可変容量ターボチャージャによれば、可変ノズル機構の軽量化に伴って、装置全体の軽量化も図られることとなる。
さらにまた、本発明に係る可変ノズル機構を備えた可変容量タービンおよび可変容量ターボチャージャによれば、ドライブリングを駆動する駆動力が少なくてすむので、ランニングコストの低減も図られることとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る可変ノズル機構によれば、ドライブリングの軽量化により、外力作用時の破損のリスクを低減できるとともに、ドライブリングを回動させてノズル翼角を変化させる際に、ドライブリングの内周面とマウントの外周面との間に発生する接触荷重を低減させることができ、ドライブリングをスムーズに回動させることができて、摩耗量および駆動力を低減させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る可変ノズル機構の第1実施形態について、図1および図2を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る可変ノズル機構の要部平面図、図2は本実施形態に係る可変ノズル機構を構成するドライブリングの平面図である。
【0025】
可変ノズル機構は、ノズルを回動させてノズル翼角を変化させることにより、タービンロータへの燃焼ガス(流体)の流速を変化させる機能を有し、図示しない可変容量ターボチャージャ(例えば、排気ガスタービン過給機)を構成する可変容量タービンに用いられる。
【0026】
可変容量ターボチャージャは、可変容量タービン(Variable Geometry Turbine)と、コンプレッサとを主たる要素として構成されたものである。
【0027】
可変容量タービンとコンプレッサとは、軸受ハウジングを介して連結されているとともに、この軸受ハウジング内には、軸受に回転支持されたタービンロータが挿通されている。
【0028】
コンプレッサは、タービンロータの一端側に取り付けられたコンプレッサホイールと、このコンプレッサホイールを囲んで覆うように設けられたコンプレッサケーシングとを主たる要素として構成されたものである。
一方、可変容量タービンは、タービンロータの他端側に取り付けられたタービンホイールと、このタービンホイールを囲んで覆うように設けられたタービンケーシングと、タービンホイールに流入する燃焼ガスの流速を変化させる可変ノズル機構とを備えている。
【0029】
さて、本実施形態に係る可変ノズル機構10は、マウント11と、ベーン12と、レバープレート13と、ドライブリング14と、抜け止め防止ピン(鋲)15(図8(b)参照)とを備えている。
マウント11は、平面視環状を呈する板状の部材であり、その外側周縁部には、一側(図1において紙面手前側)に突出し、平面視環状を呈する突出部(肉厚部)16(図8(b)参照)が形成されている。また、このマウント11は、図示しない固定手段を介してベアリングハウジングに固定されている。
【0030】
ベーン12は、マウント11の周方向に沿って等間隔(本実施形態では30度間隔)に配置されているとともに、図示しない回動軸(ピボット)を介してマウント11に回動自在に取り付けられている。
レバープレート13は、ドライブリング14の回動に伴ってベーン12を回動軸まわりに回動させる部材であり、その一端部(半径方向内側の端部)には、ベーン12の回動軸が接続(連結)されており、その他端部(半径方向外側の端部)には、他側(図1において紙面奥側)に延びて、ドライブリング14の外側周縁部に形成された第1の凹所(切欠部)17内に嵌り込むピン18が接続(連結)されている。
【0031】
図2に示すように、ドライブリング14は、その外側周縁部に形成された複数個(本実施形態では12個)の第1の凹所17と、その内側周縁部に形成された複数個(本実施形態では11個)の第2の凹所(切欠部)19とを備えている。
第1の凹所17は、平面視略正方形状を呈する切欠きであって、周方向に沿って等間隔(本実施形態では30度間隔)に配置されており、各第1の凹所17内には、対応するレバープレート13のピン18が嵌り込むようになっている。
また、これら第1の凹所17のうち、一の第1の凹所17aと、これと隣り合う他の第1の凹所17bとの中間部には、第3の凹所20が形成されている。第3の凹所20は、平面視略長方形状を呈する切欠きであって、この第3の凹所20内には、ドライブリング14を周方向に回動させる、図示しないクランク軸の一端部が嵌り込むようになっている。
なお、図2中の実線矢印Aは、クランク軸の移動方向(すなわち、駆動力の作用方向)を示している。
【0032】
第2の凹所19は、平面視半円形状を呈する切欠き(ぬすみ)であって、第1の凹所17と第1の凹所17との中間部で、かつ、第3の凹所20が形成されていない部分(場所)に、周方向に沿って等間隔(本実施形態では30度間隔)に形成されている。
また、本実施形態では、第3の凹所20の半径方向内側に位置するドライブリング14の内周面14a、および第3の凹所20(駆動力が入力される部位)から90度、180度、270度周方向に離れた部分(場所)に位置する(すなわち、ドライブリング中心を通りクランク軸の移動方向Aと平行な線上およびドライブリング中心を通りクランク軸の移動方向Aと直交する線上に位置する)第2の凹所19の両隣に形成されたドライブリング14の内周面14b,14c,14dは、マウント11の突出部16の外周面16aと回動可能な程度に当接(接触)するよう設けられている。すなわち、これら内周面14b,14c,14dの内径が、外周面16aの外径と(略)等しくなるように形成されている。これに対し、第3の凹所20から45度、135度、225度、315度周方向に離れた部分(場所)に位置するドライブリング14の内周面14e,14f,14g,14hは、マウント11の突出部16の外周面16aと当接(接触)しないように設けられている。すなわち、これら内周面14e,14f,14g,14hの内径が、内周面14b,14c,14dよりも大きくなるように(外周面16aの外径よりも大きくなるように)形成されている。目安としては、ドライブリング14の内周面のうち、内周面の中心Cを通り、かつ、ドライブリング14を回動させる駆動力の作用方向(作用線)Aと平行な線に対して、略30度の角度で交わる線と略60度の角度で交わる線との間に位置する領域の内径を、それ以外の領域の内径よりも大きくなるように形成すると好適である。
【0033】
なお、本実施形態では、第3の凹所20から90度、180度、270度周方向に離れた部分に内周面が存在しないため、第3の凹所20から90度、180度、270度周方向に離れた部分に位置する第2の凹所19の両隣に形成されたドライブリング14の内周面14b,14c,14dがマウント11の突出部16の外周面16aと当接(接触)するようになっている。しかし、第3の凹所20から90度、180度、270度周方向に離れた部分に内周面が存在するような場合には、その内周面がマウント11の突出部16の外周面16aと当接(接触)することとなる。
【0034】
抜け止め防止ピン15は、ドライブリング14がマウント11から抜け落ちるのを防止するための部材であり、円盤状の頭部15aと、丸棒状の軸部15b(図7(b)参照)とを備えている。抜け止め防止ピン15は、周方向に沿って等間隔(本実施形態では90度間隔)に配置されており、軸部15bの一端部は、マウント11に固定されている。
【0035】
本実施形態に係る可変ノズル機構10によれば、第3の凹所20に駆動力(ドライブリング14を回動させる力)が入力された際に、ドライブリング14の内周面14e,14f,14g,14hの内径が14a、14b、14c、14dの内径より小さくなると、先にドライブリング14の内周面14e,14f,14g,14hがマウント11に接触して、ドライブリング14がマウント11を挟み込むような状態となり過大荷重が発生する可能性があるため、マウント11の突出部16の外周面16aとの接触荷重が高くなる可能性があるドライブリング14の内周面14e,14f,14g,14hの内径が、外周面16aの外径よりも大きくなるように形成されている。
これにより、ドライブリング14が回動する際に、ドライブリング14の内周面とマウント11の突出部16の外周面16aとの間に発生する接触荷重を低減させることができ、ドライブリング14をよりスムーズに回動させることができて、摩耗量および駆動力を低減させることができる。すなわち、ドライブリング14およびマウント11の長寿命化(延命化)を図ることができ、機構全体(可変ノズル機構10)の信頼性を向上させることができる。
また、ドライブリング14の内側周縁部に、周方向に沿って複数の切欠部19を設けるようにしたので、ドライブリング14を軽量化することができて、外力作用時の破損のリスクを低減させることができる。
【0036】
さらに、本実施形態に係る可変ノズル機構10によれば、ドライブリング14の外側周縁部に複数個の第1の凹所17が形成され、内側周縁部に複数個の第2の凹所19が形成されているので、ドライブリング14の軽量化を図ることができるため、外力作用時に発生する部品間の衝突に伴う衝撃荷重を低減できるとともに、可変ノズル機構10全体の軽量化を図ることができる。
さらにまた、本実施形態に係る可変ノズル機構10によれば、ドライブリング14が軽量化され、かつ、ドライブリング14がよりスムーズに回動することとなるので、ドライブリング14を駆動する駆動力を低減させることができて、ランニングコストを低減させることができる。
【0037】
本実施形態に係る可変ノズル機構10を備えた可変容量タービンおよび可変容量ターボチャージャによれば、可変ノズル機構10の保守点検(メンテナンス)ないしは交換間隔が延びることとなるので、装置全体(可変容量タービンおよび可変容量ターボチャージャ)の保守点検費用の低減化を図ることができる。
また、本実施形態に係る可変ノズル機構10を備えた可変容量タービンおよび可変容量ターボチャージャによれば、可変ノズル機構10の信頼性の向上に伴って、装置全体の信頼性も向上することとなる。
さらに、本実施形態に係る可変ノズル機構10を備えた可変容量タービンおよび可変容量ターボチャージャによれば、可変ノズル機構10の軽量化に伴って、装置全体の軽量化も図られることとなる。
さらにまた、本実施形態に係る可変ノズル機構10を備えた可変容量タービンおよび可変容量ターボチャージャによれば、ドライブリング14を駆動する駆動力が少なくてすむので、ランニングコストの低減化も図られることとなる。
【0038】
本発明に係る可変ノズル機構の第2実施形態について、図3を参照しながら説明する。
図3に示すように、本実施形態に係る可変ノズル機構30は、ドライブリング14の代わりに、ドライブリング31を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0039】
ドライブリング31は、その内周面14e,14f,14g,14hを形成するとともに、これら内周面14e,14f,14g,14hと第1の凹所17との間に位置する部分の板厚がそれぞれ、その他の内周面14a,14b,14c,14dを形成するとともに、これら内周面14a,14b,14c,14dと第1の凹所17,17a,17bおよび第3の凹所20との間に位置する部分の板厚よりも厚くなるように形成され、肉厚部32とされている。
なお、板厚を増加させる方法としては、例えば、半径方向内側に張り出させて作製した部分を半径方向外側に折り返す方法や、ドライブリング31を作製する際に段部として形成する方法を挙げることができる。
【0040】
本実施形態に係る可変ノズル機構30によれば、板厚増加部32においては衝撃力作用時に発生する応力が低減できるため、ドライブリング31の破損のリスクが低減でき、機構全体(可変ノズル機構30)の信頼性をさらに向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態において、抜け止め防止ピン15の頭部15aの裏面(下面)が、肉厚部32の表面(上面)と対向するように、抜け止め防止ピン15が配置されているとさらに好適である。
このような可変ノズル機構30によれば、抜け止め防止ピン15とドライブリング31との隙間が減少し、ドライブリング31が衝突した際に発生する衝撃力が低減され、ドライブリング31の破損のリスクを低減できる。
【0042】
本実施形態に係る可変ノズル機構30を備えた可変容量タービンおよび可変容量ターボチャージャによれば、ドライブリング31の振動が低減されることとなるので、ドライブリング31の損傷を防止することができて、機構全体(可変ノズル機構30)の信頼性をさらに向上させることができる。
その他の作用効果は、上述した第1実施形態と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0043】
本発明に係る可変ノズル機構の第3実施形態について、図4を参照しながら説明する。
図4に示すように、本実施形態に係る可変ノズル機構40は、ドライブリング14の代わりに、ドライブリング41を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0044】
ドライブリング41は、第3の凹所20の内周面を形成するとともに、第3の凹所20を取り囲む部分の板厚が、その他の部分の板厚よりも厚くなるように形成され、肉厚部42とされている。
なお、板厚を増加させる方法としては、例えば、半径方向外側に張り出させて作製した部分を半径方向内側に折り返す方法(図4(a)参照)や、ドライブリング41を作製する際に段部として形成する方法を挙げることができる。
【0045】
本実施形態に係る可変ノズル機構40によれば、ドライブリング41を回動させる際にクランク軸の一端部と接触して摩耗するであろう(摩耗することが予想される)部分の板厚が増加させられ、接触面積の増加が図られているので、単位面積あたりの接触荷重を低減させることができ、クランク軸の一端部と接触する部分の摩耗量を低減させることができるとともに、ドライブリング41の長寿命化(延命化)を図ることができ、機構全体(可変ノズル機構40)の信頼性をさらに向上させることができる。
その他の作用効果は、上述した第1実施形態と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0046】
本発明に係る可変ノズル機構の第4実施形態について、図5を参照しながら説明する。
図5に示すように、本実施形態に係る可変ノズル機構60は、ドライブリング14の代わりに、ドライブリング61を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0047】
ドライブリング61は、その内周面14e,14f,14g,14hを形成するとともに、これら内周面14e,14f,14g,14hと第1の凹所17との間に位置する部分にそれぞれ、突出部62が設けられている。突出部62は、例えば、直径1mm〜3mm程度の半球形状を呈しており、裏面(下面)側から押し出されることにより形成されている。
【0048】
本実施形態においては、抜け止め防止ピン15の頭部15aの裏面(下面)が、突出部62の表面(上面)と対向し、かつ、当接(接触)するように、抜け止め防止ピン15が配置されている。
このような可変ノズル機構60によれば、ドライブリング61が衝突した際に発生する衝撃力が低減され、ドライブリング61の破損のリスクを低減できる。
【0049】
本実施形態に係る可変ノズル機構60を備えた可変容量タービンおよび可変容量ターボチャージャによれば、ドライブリング61の振動が低減されることとなるので、ドライブリング61の損傷を防止することができて、機構全体(可変ノズル機構60)の信頼性をさらに向上させることができる。
その他の作用効果は、上述した第1実施形態と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0050】
本発明に係る可変ノズル機構の第5実施形態について、図6を参照しながら説明する。
図6に示すように、本実施形態に係る可変ノズル機構70は、ドライブリング14の代わりに、ドライブリング71を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0051】
ドライブリング71は、その内周面14e,14f,14g,14hを形成するとともに、これら内周面14e,14f,14g,14hと第1の凹所17との間に位置する部分にそれぞれ、突出部72が設けられている。突出部72は、図6(b)に示すような、例えば、高さ1mm〜3mm程度の断面視山型形状を呈しており、裏面(下面)側から押し出されることにより(あるいは、内周面14e,14f,14g,14hと第1の凹所17との間に位置する部分が折り曲げられる(湾曲させられる)ことにより)形成されている。
【0052】
本実施形態においては、抜け止め防止ピン15の頭部15aの裏面(下面)が、突出部72の表面(上面)と対向し、かつ、当接(接触)するように、抜け止め防止ピン15が配置されている。
このような可変ノズル機構70によれば、ドライブリング71が衝突した際に発生する衝撃力が低減され、ドライブリング71の破損のリスクを低減できる。
【0053】
本実施形態に係る可変ノズル機構70を備えた可変容量タービンおよび可変容量ターボチャージャによれば、ドライブリング71の振動が低減されることとなるので、ドライブリング71の損傷を防止することができて、機構全体(可変ノズル機構70)の信頼性をさらに向上させることができる。
その他の作用効果は、上述した第1実施形態と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0054】
本発明に係る可変ノズル機構の第6実施形態について、図7を参照しながら説明する。
図7に示すように、本実施形態に係る可変ノズル機構80は、突出部62,72の代わりに、抜け止め防止ピン15の頭部15aの裏面(下面)と、ドライブリング14の表面(上面)およびマウント11の突出部16の表面(上面)との間に、衝撃吸収部材(弾性部材)81が配置されているという点で上述した第4実施形態および第5実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第4実施形態および第5実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0055】
衝撃吸収部材81としては、例えば、皿バネやワッシャ等を用いることができる。また、衝撃吸収部材81としてワッシャを使用する場合には、膨張黒鉛等の軟質材料でできたものを使用するとさらに好適である。
【0056】
本実施形態に係る可変ノズル機構80によれば、内周面14e,14f,14g,14hと第1の凹所17との間に位置する部分の加工(例えば、押出成形)が不要となるので、製造工程の簡略化を図ることができて、製造コストの低減化を図ることができる。
その他の作用効果は、上述した第4実施形態および第5実施形態と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0057】
本発明に係る可変ノズル機構の第7実施形態について説明する。
本実施形態に係る可変ノズル機構は、突出部62,72の表面および/または抜け止め防止ピン15の頭部15aの裏面(下面)全体に、表面硬化加工が施されているという点で上述した第4実施形態および第5実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第4実施形態および第5実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0058】
表面硬化処理としては、例えば、耐熱性に優れたCrN等の窒素系のPVD(Physical Vapor Deposition)コーティング等を用いることができる。
【0059】
本実施形態に係る可変ノズル機構によれば、突出部62,72の表面および/または頭部15aの裏面に引っ掻き傷が発生するのを防止することができる。
また、ドライブリング61,71および抜け止め防止ピン15の耐摩耗性を向上させることができるので、ドライブリング61,71および抜け止め防止ピン15の長寿命化(延命化)を図ることができ、機構全体(可変ノズル機構60,70)の信頼性をさらに向上させることができる。
その他の作用効果は、上述した第4実施形態および第5実施形態と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0060】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、適宜必要に応じて変形実施、変更実施、組合せ実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態に係る可変ノズル機構の要部平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る可変ノズル機構を構成するドライブリングの平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る可変ノズル機構を構成するドライブリングの平面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る可変ノズル機構を構成するドライブリングを示す図であって、(a)は平面図、(b)はIV−IV矢視断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る可変ノズル機構を構成するドライブリングの平面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る可変ノズル機構を構成するドライブリングを示す図であって、(a)は平面図、(b)はVII−VII矢視断面図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る可変ノズル機構を示す図であって、(a)は要部平面図、(b)は(a)のVIII−VIII矢視断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 可変ノズル機構
11 マウント
12 ノズル
13 レバープレート
14 ドライブリング
14a 内周面
14b 内周面
14c 内周面
14d 内周面
14e 内周面
14f 内周面
14g 内周面
14h 内周面
15 抜け止め防止ピン
15a 頭部
16a 外周面
17 第1の凹所(切欠部)
17a 第1の凹所(切欠部)
17b 第1の凹所(切欠部)
19 第2の凹所(切欠部)
30 可変ノズル機構
31 ドライブリング
32 肉厚部
40 可変ノズル機構
41 ドライブリング
42 肉厚部
60 可変ノズル機構
61 ドライブリング
62 突出部
70 可変ノズル機構
71 ドライブリング
72 突出部
80 可変ノズル機構
81 衝撃吸収部材
A 作用線
C 中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを回動させてノズル翼角を変化させることにより、タービンロータへの流体の流速を変化させる可変ノズル機構であって、
前記タービンロータを支持するベアリングハウジングに固定されたマウントに支持されるとともに、内周面の一部が、前記マウントの外周面の一部と当接しながら、前記マウントに対して回動するドライブリングを備えてなり、
前記ドライブリングの内側周縁部に、周方向に沿って切欠部が複数設けられており、
かつ、前記切欠部と切欠部との間に位置する内周面のうち、前記ドライブリングを回動させる駆動力が入力された際に、前記外周面との接触荷重が大きくなり得る領域の内径が、他の内周面の内径よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする可変ノズル機構。
【請求項2】
前記外周面との接触荷重が大きくなり得る領域が、前記内周面の中心を通り、かつ、前記ドライブリングを回動させる駆動力の作用線と略平行な線と交わらない領域であるとともに、前記内周面の中心を通り、かつ、前記ドライブリングを回動させる駆動力の作用線と略直交する線と交わらない領域であることを特徴とする請求項1に記載の可変ノズル機構。
【請求項3】
前記外周面との接触荷重が大きくなり得る領域に、板厚を増加させる肉厚部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の可変ノズル機構。
【請求項4】
前記駆動力が入力される部位の周辺領域に、板厚を増加させる肉厚部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の可変ノズル機構。
【請求項5】
前記外周面との接触荷重が大きくなり得る領域に、前記ドライブリングが前記マウントから抜け落ちるのを防止する抜け止め防止ピンの頭部と当接する突出部が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の可変ノズル機構。
【請求項6】
前記抜け止め防止ピンの頭部と、前記ドライブリングおよび前記マウントとの間に、衝撃吸収部材が配置されていることを特徴とする請求項5に記載の可変ノズル機構。
【請求項7】
前記突出部の表面および/または前記抜け止め防止ピンの頭部の裏面全体に、表面硬化加工が施されていることを特徴とする請求項5に記載の可変ノズル機構。
【請求項8】
前記ドライブリングの外側周縁部に、前記ノズルのノズル翼角を操作するレバープレートを受け入れる切欠部または貫通穴が周方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の可変ノズル機構。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の可変ノズル機構を備えてなることを特徴とする可変容量ターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−144615(P2009−144615A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323553(P2007−323553)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】