説明

可変容量圧縮機用制御弁

【課題】 冷媒の吐出流量を一定に制御する可変容量圧縮機用制御弁において、構造を簡単にし、制御性を向上させるようにする。
【解決手段】 吐出室から吐出された冷媒が通過する冷媒通路の通路面積を制御する第1の制御弁10Aを中心にその第1の制御弁10Aの前後の差圧が一定になるようクランク室の圧力Pcを制御する第2の制御弁10Bと通路面積を外部信号によって設定するソレノイド部10Cとを同一軸線上の両側に配置し、第1の制御弁10Aおよび第2の制御弁10Bに高圧冷媒を導入するポート13,15を別個に設ける。第2の制御弁10Bは、その第2弁体41に対し開弁方向に吐出圧力Pdh2、閉弁方向に吐出圧力Pdhを受圧させ、制御された圧力Pcを開弁および閉弁方向に等しく受圧させることでこれらの圧力をキャンセルさせる機構を不要にし、第1の制御弁10Aの前後の差圧のみで制御させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変容量圧縮機用制御弁に関し、特に可変容量圧縮機から吐出される冷媒を一定の流量に制御する可変容量圧縮機用制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置の冷凍サイクル中で冷媒を圧縮するために用いられる圧縮機は、その駆動源であるエンジンの回転数に制約されることなく適切な冷房能力を得るために、冷媒の容量(吐出量)を変えることができる可変容量圧縮機が用いられている。このような可変容量圧縮機においては、エンジンによって回転駆動される回転軸に取り付けられた揺動板(斜板)に回転軸に平行に往復運動するピストンが連結され、クランク室内で揺動板の傾斜角度を変えながら回転させることによってピストンのストロークを変更して、圧縮機の容量、すなわち冷媒の吐出量を変えるようにしている。
【0003】
揺動板の傾斜角度を変更するには、密閉されたクランク室内に圧縮された冷媒の一部を導入し、クランク室内の圧力を変化させることによって、揺動板に連結されたピストンの両面に加わる圧力の釣合いを変化させて、揺動板の傾斜角度を連続的に変えている。
【0004】
クランク室内の圧力は、一般に、吐出室とクランク室とを連通する通路に設けた可変容量圧縮機用制御弁を連通または閉塞させるように制御することにより変化させている。ここで、可変容量圧縮機用制御弁が所定の弁リフトに設定されているときに、エンジンの回転数が上昇すると、吐出室からクランク室に導入される圧力が増加し、揺動板が回転軸に直角な傾斜角度に近づくことで、圧縮できる冷媒の容量は小さくなるよう制御される。逆に、回転数が低下したときには、クランク室に導入される圧力が減少して圧縮できる冷媒の容量は大きくなるよう制御される。このようにして、可変容量圧縮機は、エンジンの回転数に拘わらず、吐出される冷媒の容量が変化しないよう制御される。
【0005】
可変容量圧縮機用制御弁により可変容量圧縮機の容量を制御する方法として、一般に、吸入室における吸入圧力Psが一定に保持されるよう制御するもの、吸入室における吸入圧力Psと吐出室における吐出圧力Pdとの差圧が一定に保持されるよう制御するものなどが知られているが、それ以外に、可変容量圧縮機から吐出される冷媒の流量が一定になるように制御するものも知られている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0006】
この特許文献1に記載の可変容量圧縮機用制御弁よれば、吸入室へ吸入される冷媒の流量を、2つの圧力監視点間の差圧をセンサで検出することによって間接的に把握し、この吸入流量が一定になるように可変容量圧縮機用制御弁が吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御し、これによって、圧縮機から吐出される冷媒の流量が一定になるように制御されている。
【0007】
これに対し、2つの圧力監視点間の差圧を検知するためのセンサを不要とした可変容量圧縮機用制御弁も知られている(たとえば、特許文献2参照。)。この可変容量圧縮機用制御弁は、可変容量圧縮機の吐出室から可変容量圧縮機の冷媒出口へ流す冷媒の流量を制御する第1の制御弁と、この第1の制御弁の前後の差圧をダイヤフラムが感知し、その差圧に基づいて吐出室から可変容量圧縮機のクランク室へ流す冷媒の流量を制御して可変容量圧縮機の吐出容量を変化させることにより第1の制御弁が流す冷媒の流量を一定に制御する第2の制御弁と、第1の制御弁が流そうとする冷媒の流量を設定するソレノイド部とを同一軸線上に備えている。この可変容量圧縮機用制御弁によれば、第1の制御弁がソレノイド部により外部条件の変化に応じて冷媒通路の通路面積が設定される可変オリフィスを構成し、第2の制御弁がその可変オリフィスの前後の差圧を感知してその差圧が所定値になるようにクランク室の圧力を制御する。これにより、ある通路面積に設定された可変オリフィスの前後の差圧が所定値に保持されることになり、これにより可変容量圧縮機から吐出される冷媒の流量が一定に制御されることになる。
【特許文献1】特開2001−107854号公報(段落番号〔0035〕〜〔0036〕,図3)
【特許文献2】特開2004−116349号公報(段落番号〔0102〕〜〔0108〕,図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の可変容量圧縮機用制御弁は、同一軸線上に配置された第1の制御弁と第2の制御弁との間に吐出室から吐出された吐出圧力Pdhの冷媒を導入し、第1の制御弁からは吐出圧力Pdlの冷媒が導出され、第2の制御弁からは制御されたクランク室の圧力Pcの冷媒が導出される構成であるため、第1の制御弁の前後の差圧(Pdh−Pdl)によってのみ動作させたい第2の制御弁がその前後の圧力である吐出圧力Pdhおよびクランク室の圧力Pcの影響を受けてしまうという欠点があり、これを解消するには、複雑な圧力キャンセル構造を設けなければならず、構造が複雑になってしまうという問題点があった。
【0009】
また、第1の制御弁の前後の差圧を感知するダイヤフラムは、一端が第1の制御弁の弁座を構成していてボディと一体に形成された筒状体の外周に配置され、吐出圧力Pdhの空間と吐出圧力Pdlの空間との間をシールしながら筒状体にガイドされて軸線方向に変位可能に構成されているため、ボディの中に筒状体を形成する複雑な加工が必要であるという問題点があった。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、第2の制御弁がその前後の圧力の影響を受けることなく、構造を簡単にした可変容量圧縮機用制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では上記問題を解決するために、可変容量圧縮機の吐出室から前記可変容量圧縮機の冷媒出口へ流す冷媒の流量を制御する第1の制御弁と、前記第1の制御弁の前後の差圧に基づいて前記吐出室から前記可変容量圧縮機のクランク室へ流す冷媒の流量を制御して前記可変容量圧縮機の吐出容量を変化させることにより前記第1の制御弁が流す冷媒の流量を一定に制御する第2の制御弁と、前記第1の制御弁が流そうとする冷媒の流量を設定するソレノイド部とを備えた可変容量圧縮機用制御弁において、前記第2の制御弁と前記第1の制御弁と前記ソレノイド部とがこの順序で同一軸線上に配置され、前記第1の制御弁は、前記第2の制御弁の側に設けられて前記吐出室からの冷媒を導入する第1ポートと、前記ソレノイド部の側に設けられて前記冷媒出口に冷媒を導出する第2ポートと、前記第1ポートと前記第2ポートとの間の冷媒通路を遮るよう配置されたドーナツ形状のダイヤフラムと、前記ダイヤフラムの内周端に固定された第1弁座と、前記第1弁座に対してその上流側に接離自在に配置された第1弁体とを有し、前記第2の制御弁は、前記第1の制御弁と反対側にてその軸線上に設けられ前記吐出室からの冷媒を導入する第3ポートと、前記第1の制御弁の側に設けられて前記クランク室に冷媒を導出する第4ポートと、前記第3ポートに設けられた第2弁座と、前記第2弁座に対してその下流側に接離自在に支持され前記第2弁座に対向する側と反対側の端部が前記第1ポートに露出している円柱状の第2弁体とを有し、前記第1の制御弁の前記第1ポートおよび前記第2ポートにおける差圧に応じた軸線方向の前記ダイヤフラムの変位は、差圧伝達部材を介して前記第2の制御弁の前記第2弁体に伝達するようにしたことを特徴とする可変容量圧縮機用制御弁が提供される。
【0012】
このような可変容量圧縮機用制御弁によれば、第1の制御弁および第2の制御弁が吐出室からの冷媒を導入する第1ポートおよび第3ポートを第2の制御弁の第2弁体の軸線方向両端側に設け、その間に第2の制御弁からクランク室へ連通する第4ポートを設けた。これにより、第2の制御弁は、吐出室から導入される冷媒の吐出圧力およびクランク室へ供給される冷媒の圧力の影響をなくすことができるので、制御性を向上させることができ、吐出圧力およびクランク室への圧力をキャンセルする機構を設ける必要がないことから構造を簡単にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の可変容量圧縮機用制御弁は、吐出圧力をクランク室への圧力に制御する第2の制御弁が吐出圧力およびクランク室への圧力に影響を受けない構造にしたことで、第1の制御弁の前後の差圧のみによって第2の制御弁を制御することができることから制御性を向上させることができ、吐出圧力およびクランク室への圧力をキャンセルする機構が不要であることから構造を簡単にでき、コストを低減することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明による可変容量圧縮機用制御弁の構成を非通電状態で示す中央縦断面図、図2は第1の制御弁周りの部材を示す斜視図であって、(A)はスプリングホルダ、(B)は差圧伝達部材、(C)は第1弁体を示し、図3は本発明による可変容量圧縮機用制御弁の構成を通電状態で示す中央縦断面図である。
【0015】
可変容量圧縮機用制御弁10は、第1の制御弁10A、第2の制御弁10B、およびソレノイド部10Cを有し、同一軸線上に配置されている。
第1の制御弁10Aおよび第2の制御弁10Bは、第1ボディ11およびこれに圧入された第2ボディ12を有している。これら第1ボディ11および第2ボディ12には、この可変容量圧縮機用容量制御弁を可変容量圧縮機に装着したときに、可変容量圧縮機の吐出室に連通されて第1の制御弁10Aに吐出圧力Pdhの冷媒を導入するポート13と、可変容量圧縮機の冷媒出口に連通されて第1の制御弁10Aから吐出圧力Pdlの冷媒を導出するポート14と、可変容量圧縮機の吐出室に連通されて第2の制御弁10Bに吐出圧力Pdh2の冷媒を導入するポート15と、可変容量圧縮機のクランク室に連通されて第2の制御弁10Bから圧力Pcの冷媒を導出するポート16とが設けられている。この可変容量圧縮機用容量制御弁は、可変容量圧縮機に装着したときに、吐出圧力Pdhのポート13および吐出圧力Pdh2のポート15がいずれも吐出室に直接連通するよう構成された可変容量圧縮機に適用することができるが、好ましくは、吐出圧力Pdhのポート13が吐出室に直接連通され、吐出圧力Pdh2のポート15が吐出室の下流側に設けられた油分離器の出口に連通するよう構成された可変容量圧縮機に適用するのがよい。これにより、第2の制御弁10Bは、クランク室の圧力Pcを制御しながら、冷媒に多量に含まれた可変容量圧縮機用の潤滑油をクランク室に戻すことができる。
【0016】
第1の制御弁10Aは、第1ボディ11内にて吐出圧力Pdhのポート13と吐出圧力Pdlのポート14とを連通するよう軸線方向に通路が形成されており、その通路内に第1弁座17と第1弁体18とが配置されている。第1弁体18は、第1弁座17の上流側にて第1弁座17に対して接離自在に配置されている。すなわち、第1弁体18は、図2の(C)に示したように、弁孔内に延び、周方向に均等配置された3つのガイド19が一体に形成されており、そのガイド19が弁孔の内壁に摺接するようになっている。これにより、第1弁体18は、第1弁座17と同心を維持しながら第1弁座17に対して軸線方向に接離自在になっている。
【0017】
第1弁座17は、これが配置されている通路内において、ダイヤフラム20により心決めされている。すなわち、ダイヤフラム20は、中央部分が開いたドーナツ形状のポリイミド樹脂のシートであり、その外周端は、第1ボディ11に第2ボディ12を圧入することによって挾持され、内周端は、差圧伝達部材21に第1弁座17を圧入することによって挾持される。これにより、ダイヤフラム20がポート13からの吐出圧力Pdhとポート14での吐出圧力Pdlとの差圧を受け、その差圧に応じて、軸線方向に変位し、その変位は第1弁座17に嵌合された差圧伝達部材21に伝えられる。その軸線方向の変位は、ソレノイド部10Cの側については、第1弁座17が第1ボディ11に内設された段差部に当接されることにより規制され、第2の制御弁10Bの側については、差圧伝達部材21が第2ボディ12に当接されることにより規制される。
【0018】
差圧伝達部材21は、図2の(B)に示したように、第1弁座17と嵌合されるリング状のベース部22と、中央に孔23を有する係止部24と、ベース部22と係止部24とを連結する連結部25とを有し、これらは一体に形成されている。連結部25は、周方向に均等配置された3箇所に設けられ、それらの間の空間は、第1の制御弁10Aを流れる冷媒の通路になる。
【0019】
また、第1弁体18の図の上部には、第2ボディ12に嵌合されたスプリングホルダ26が設けられている。このスプリングホルダ26は、中央に、差圧伝達部材21の係止部24および連結部25と干渉しないようこれらの形状に合わせて穿設された孔27を有するベース部28と、図の下方へ延びる3つのガイド29とを有し、これらは一体に形成されている。ガイド29は、周方向に均等配置され、それらの間の空間は、第1の制御弁10Aを流れる冷媒の通路になる。また、このガイド29は、内側に第1弁体18の図の上部に延びる筒状延出部30が位置していて、第1弁体18が軸線方向に進退動作するときのガイドになっている。
【0020】
さらに、第1の制御弁10Aにおいて、その第1弁座17は、吐出圧力Pdlのポート14に連通する空間に配置されたスプリング31によって閉弁方向に付勢され、第1弁体18は、スプリングホルダ26内に配置されたスプリング32によって閉弁方向に付勢されている。
【0021】
第2の制御弁10Bは、第2ボディ12の先端に形成されている軸線方向のポート15に圧入された第2弁座40と、この第2弁座40の下流側に配置され、第2ボディ12により第2弁座40に対して接離自在に支持された円柱状の第2弁体41とを有している。第2弁体41は、第2弁座40に対向する側と反対側の端部が吐出圧力Pdhの部屋に露出されており、その先端は差圧伝達部材21の係止部24に設けられた孔23を貫通して延びていて、ばね受け部材42が嵌着されている。ばね受け部材42と第1弁体18との間には、スプリング43が配置されていて、ばね受け部材42を差圧伝達部材21の係止部24に常に当接するよう付勢している。
【0022】
ソレノイド部10Cは、第1ボディ11と一体に形成されたコア50を有し、有底スリーブ51の開口部に嵌合されている。有底スリーブ51の中には、プランジャ52と、コア50を貫通して軸線方向に延びていてプランジャ52が固定されたシャフト53と、このシャフト53の図の下端部に配置された軸受部54と、コア50とプランジャ52との間に配置されたスプリング55と、プランジャ52と軸受部54との間に配置されたスプリング56とを有している。シャフト53は、コア50と軸受部54とによって軸線方向に進退自在に保持され、図の上端部は、第1弁体18のガイド19の内側に位置し、ソレノイド部10Cの通電時には、第1弁体18に当接し、第1弁体18を第1の制御弁10Aの開弁方向に付勢する。有底スリーブ51の外周部には、ヨーク57,58およびコイル59が配置されている。
【0023】
第1ボディ11および第2ボディ12の外側には、ポート13とポート14との間をシールするOリング60、ポート13とポート16との間をシールするOリング61、ポート16とポート15との間をシールするOリング62、ポート14と大気との間をシールするパッキン63が周設されている。ヨーク57の外周部には、可変容量圧縮機用制御弁10を可変容量圧縮機に装着するときに必要なねじ部64が設けられている。
【0024】
以上のように構成された可変容量圧縮機用制御弁10において、可変容量圧縮機がエンジンの駆動力を受けて回転駆動されると、可変容量圧縮機は吸入室から冷媒を吸入して圧縮し、圧縮した冷媒を吐出室へ吐出する。
【0025】
このとき、図1に示したように、ソレノイド部10Cが非通電状態にあるときには、第1の制御弁10Aは全閉状態に、第2の制御弁10Bは全開状態にある。したがって、吐出室へ吐出された冷媒は、第2の制御弁10Bを介してすべてクランク室へ導入されるので、可変容量圧縮機は最少容量の運転状態になる。
【0026】
ソレノイド部10Cが所定の制御電流の供給を受けると、図3に示したように、シャフト53が第1弁体18を図の上方へ押し上げ、第1弁体18は電流値に対応したソレノイド部10Cの付勢力とこれに対抗するスプリング32の付勢力とがバランスした位置にて停止する。この第1弁体18の停止位置は、制御電流の電流値が変化するまで変わらない。第1弁体18が第1弁座17からリフトされることにより、第1の制御弁10Aは、その冷媒通路に関して所定の通路面積を設定したことになり、ポート13に導入された吐出圧力Pdhの冷媒は、その所定の通路面積を有する冷媒通路を流れ、吐出圧力Pdlの冷媒がポート14から導出される。
【0027】
このとき、第1の制御弁10Aの前後には、所定の差圧(PdH−PdL=ΔP)が発生し、その差圧ΔPは、ダイヤフラム20によって感知される。一方、ポート13に導入された冷媒の吐出圧力Pdhによって図の下限位置まで押し下げられていた第1弁座17が第1弁体18のリフトにより第1弁体18から離間されることにより、ダイヤフラム20は、その差圧ΔPに応じた位置に変位する。その変位は、第1弁座17に固定された差圧伝達部材21を介して第2の制御弁10Bの第2弁体41に伝達される。第2の制御弁10Bは、その差圧ΔPに応じた弁リフトに制御され、第2の制御弁10Bによって流量制御された圧力Pcの冷媒がポート16からクランク室へ供給され、可変容量圧縮機は、制御電流の電流値に応じた容量の運転状態になる。
【0028】
ここで、第1の制御弁10Aを流れる冷媒の流量が増えて差圧ΔPが大きくなると、ダイヤフラム20が図の下方へ変位し、第1弁座17が図の下方へ押し下げられる。この変位は、差圧伝達部材21を介して第2弁体41に伝達され、第2の制御弁10Bの弁リフトが大きくなる。これにより、可変容量圧縮機は、その容量を下げる方向に制御されるので、第1の制御弁10Aを流れる冷媒の流量が減る方向に制御される。逆に、第1の制御弁10Aを流れる冷媒の流量が減って差圧ΔPが小さくなると、第2の制御弁10Bの弁リフトが小さくなり、可変容量圧縮機は、その容量を上げる方向に制御され、第1の制御弁10Aを流れる冷媒の流量が増える方向に制御される。
【0029】
このようにして、この可変容量圧縮機用制御弁10は、ソレノイド部10Cに供給される制御電流の電流値に応じて、第1の制御弁10Aの通路面積が設定され、そのときに第1の制御弁10Aの前後に発生する差圧ΔPをダイヤフラム20が感知して第2の制御弁10Bを制御する。そして、その差圧ΔPが所定値から変化すれば、その所定値になるように第2の制御弁10Bが制御されることで、第1の制御弁10Aを流れる冷媒の流量は一定に制御されることになる。
【0030】
なお、第2の制御弁10Bにおいて、第2弁体41は、その一端に吐出圧力Pdhが閉弁方向にかかっており、他端には吐出圧力Pdhにほぼ等しい吐出圧力Pdh2が開弁方向にかかっているので、高圧圧力の影響を無視することができ、圧力Pcに関しても、閉弁方向および開弁方向ともに同じ受圧面積で受圧しているので、圧力Pcの影響を無視することができる。このため、第2の制御弁10Bは、吐出圧力Pdh2および圧力Pcをキャンセルする機構を必要とすることなく、純粋に第1の制御弁10Aの前後に発生する差圧ΔPのみによって制御されるので、可変容量圧縮機用制御弁10をコンパクトに構成でき、可変容量圧縮機の制御性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による可変容量圧縮機用制御弁の構成を非通電状態で示す中央縦断面図である。
【図2】第1の制御弁周りの部材を示す斜視図であって、(A)はスプリングホルダ、(B)は差圧伝達部材、(C)は第1弁体を示している。
【図3】本発明による可変容量圧縮機用制御弁の構成を通電状態で示す中央縦断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 可変容量圧縮機用制御弁
10A 第1の制御弁
10B 第2の制御弁
10C ソレノイド部
11 第1ボディ
12 第2ボディ
13 ポート(Pdh)
14 ポート(Pdl)
15 ポート(Pdh2)
16 ポート(Pc)
17 第1弁座
18 第1弁体
19 ガイド
20 ダイヤフラム
21 差圧伝達部材
22 ベース部
23 孔
24 係止部
25 連結部
26 スプリングホルダ
27 孔
28 ベース部
29 ガイド
30 筒状延出部
31,32 スプリング
40 第2弁座
41 第2弁体
42 ばね受け部材
43 スプリング
50 コア
51 有底スリーブ
52 プランジャ
53 シャフト
54 軸受部
55,56 スプリング
57,58 ヨーク
59 コイル
60,61,62 Oリング
63 パッキン
64 ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量圧縮機の吐出室から前記可変容量圧縮機の冷媒出口へ流す冷媒の流量を制御する第1の制御弁と、前記第1の制御弁の前後の差圧に基づいて前記吐出室から前記可変容量圧縮機のクランク室へ流す冷媒の流量を制御して前記可変容量圧縮機の吐出容量を変化させることにより前記第1の制御弁が流す冷媒の流量を一定に制御する第2の制御弁と、前記第1の制御弁が流そうとする冷媒の流量を設定するソレノイド部とを備えた可変容量圧縮機用制御弁において、
前記第2の制御弁と前記第1の制御弁と前記ソレノイド部とがこの順序で同一軸線上に配置され、前記第1の制御弁は、前記第2の制御弁の側に設けられて前記吐出室からの冷媒を導入する第1ポートと、前記ソレノイド部の側に設けられて前記冷媒出口に冷媒を導出する第2ポートと、前記第1ポートと前記第2ポートとの間の冷媒通路を遮るよう配置されたドーナツ形状のダイヤフラムと、前記ダイヤフラムの内周端に固定された第1弁座と、前記第1弁座に対してその上流側に接離自在に配置された第1弁体とを有し、前記第2の制御弁は、前記第1の制御弁と反対側にてその軸線上に設けられ前記吐出室からの冷媒を導入する第3ポートと、前記第1の制御弁の側に設けられて前記クランク室に冷媒を導出する第4ポートと、前記第3ポートに設けられた第2弁座と、前記第2弁座に対してその下流側に接離自在に支持され前記第2弁座に対向する側と反対側の端部が前記第1ポートに露出している円柱状の第2弁体とを有し、前記第1の制御弁の前記第1ポートおよび前記第2ポートにおける差圧に応じた軸線方向の前記ダイヤフラムの変位は、差圧伝達部材を介して前記第2の制御弁の前記第2弁体に伝達するようにしたことを特徴とする可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項2】
前記第1の制御弁の前記第1弁体は、前記第1弁座の弁孔内に延びる複数のガイドが一体に形成されていて、前記第1弁座と同一軸線上に保持されながら前記第1弁座に対して接離するようにしたことを特徴とする請求項1記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項3】
前記第1の制御弁の前記第1弁体は、前記ダイヤフラムおよび前記第2弁体を支持しているボディに固定された軸線方向に延びる複数のガイドにガイドされて前記第1弁座に対し接離するようにしたことを特徴とする請求項1記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項4】
前記差圧伝達部材は、軸線方向の一端が前記第1弁座とともに前記ダイヤフラムの内周端を挟持し、他端が前記第2弁体に係止するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項5】
前記ソレノイド部は、前記第1弁座の弁孔を介して前記第1弁体を駆動するシャフトを有し、前記シャフトは、通電時に前記第1弁体に当接し、非通電時には前記第1弁体から離間されていることを特徴とする請求項1記載の可変容量圧縮機用制御弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−32404(P2007−32404A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216279(P2005−216279)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】