説明

可搬型ガス警報器

【課題】 リチウムイオン電池および乾電池の両方を利用することができて使用上の利便性が高く、また、リチウムイオン電池が事故等により短絡した場合であっても、電源部について信頼性の高い防爆構造の得られる可搬型ガス警報器を提供すること。
【解決手段】 この可搬型ガス警報器は、複数のガスセンサおよび環境雰囲気の空気を吸引してガスセンサの各々に供給するガス吸引手段を備えたメインユニットに対して、リチウムイオン電池電源ユニットおよび乾電池電源ユニットのいずれか一方の選択されたものがメインユニットに対して他方と交換可能に装着される構成とされている。リチウムイオン電池電源ユニットは、リチウムイオン電池および保護回路基板が電池収容ケース内に充填された熱硬化性樹脂に埋設されてなるバッテリーパックを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可搬型ガス警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば地下の工事現場や坑道、その他の人が立ち入る場所や作業領域などにおいて、その環境の空気中に一酸化炭素ガスや硫化水素ガスなどの危険性ガスが含有されるおそれがある場合や、空気中の酸素ガス濃度が低下しているおそれがある場合など、環境雰囲気の空気が危険な状態となっている可能性あるいは危険な状態となる可能性がある場合が少なくない。
そして、環境雰囲気の空気において、含有される危険性ガスの濃度が高いことにより、または酸素ガス濃度が低いことにより、人に対して危険な状態となったときには、そのことを直ちに知ることが必要であり、このような要請から、ガスセンサによって検知対象ガスが検知されたときに作動する警報用ブザーからの警報音による警報報知機構を具えてなる可搬型ガス警報器が広く使用されている。このような可搬型ガス警報器においては、例えば二次電池が駆動用電源として内蔵され、充電動作を行うことによって繰り返し使用可能に構成されている。
【0003】
而して、このような可搬型ガス警報器においては、可燃性のガスや蒸気を含む爆発性雰囲気の存在により、引火、爆発が発生し得る環境で使用されるため、可搬型ガス警報器それ自体が着火源とならない構成、いわゆる防爆仕様の規格を満足する構成であることが必要とされており、例えば、電源部については、二次電池が例えば事故等により短絡した時において、二次電池の表面温度が一定温度以上に上昇しないこと、内部の電解液が漏れないことなどが要求される。
電源部の防爆構造として、例えば、各々、一端に正極端子が形成されると共に他端に負極端子が形成された複数本の棒状のニッケル・カドミウム蓄電池を隣り合うものの正極および負極が互いに逆方向を向く状態で平行に並ぶよう配置して直列に接続し、電池間に絶縁スペーサを介装して、ニッケル・カドミウム蓄電池および絶縁スペーサの全体をシリコーンゴムにより覆う構成とする技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
近年においては、可搬型ガス警報器の駆動用電源として、例えばリチウムイオン電池などの高容量の二次電池を用いることが期待されている。
しかしながら、リチウムイオン電池などの高容量の二次電池は、例えば事故による短絡時の温度上昇の程度が大きく、また、電解液の漏れなどが発生することがあることから、防爆仕様とされることが求められる可搬型ガス警報器に用いることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−216944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、リチウムイオン電池および乾電池の両方を利用することができて使用上の利便性が高い新規な構成の可搬型ガス警報器を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、リチウムイオン電池が事故等により短絡した場合であっても、バッテリーパックの表面温度を一定温度以下に抑制することができて電源部について信頼性の高い防爆構造が得られる可搬型ガス警報器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の可搬型ガス警報器は、複数のガスセンサおよび環境雰囲気の空気を吸引して前記ガスセンサの各々に供給するガス吸引手段を備えたメインユニットと、
各々、当該メインユニットに対して着脱可能に装着される、リチウムイオン電池を備えたリチウムイオン電池電源ユニットおよび乾電池を備えた乾電池電源ユニットとにより構成されており、
前記リチウムイオン電池電源ユニットおよび前記乾電池電源ユニットのいずれか一方の選択されたものがメインユニットに対して他方と交換可能に装着されることを特徴とする。
【0008】
本発明の可搬型ガス警報器においては、前記リチウムイオン電池電源ユニットは、リチウムイオン電池および保護回路基板が電池収容ケース内に充填された熱硬化性樹脂に埋設されてなるバッテリーパックを備えてなる構成とされていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の可搬型ガス警報器においては、前記リチウムイオン電池電源ユニットは、棒状のリチウムイオン電池の複数本のものが直列に接続されて互いに平行に配置されており、隣接するリチウムイオン電池間に前記熱硬化性樹脂が介在する構成とされていることが好ましい。
【0010】
さらにまた、本発明の可搬型ガス警報器においては、前記リチウムイオン電池電源ユニットは、制限抵抗素子を有する給電用回路および充電用回路が互いに離間した位置に形成された電源回路基板をさらに備えた構成とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の可搬型ガス警報器によれば、リチウムイオン電池電源ユニットおよび乾電池電源ユニットの両方の電源ユニットが利用可能であるので、メインユニットに選択的に装着された一方の電源ユニットにおける電池の残存容量がガス検出動作中において不足した場合であっても、他方の電源ユニットを一方の電源ユニットと交換してメインユニットに装着することにより、ガス検出動作を継続して行うことができて作業者に対して危険な状態となるなどの不測の事態が生ずることを確実に防止することができる。
【0012】
また、リチウムイオン電池および保護回路基板が電池収容ケース内に充填された熱硬化性樹脂に埋設されてなるバッテリーパックを備えたリチウムイオン電池電源ユニットが用いられることにより、熱硬化性樹脂に埋設されたリチウムイオン電池および保護回路基板はガス雰囲気に晒されることがないので、それ自体が着火源となることを確実に防止することができ、しかも、リチウムイオン電池が事故により短絡して発熱した場合であっても、当該熱が熱硬化性樹脂により吸収されることとなるので、リチウムイオン電池の表面の温度の上昇の程度を小さく抑制することができると共に、バッテリーパックの熱容量が十分に大きくなるので、バッテリーパックの表面の温度を一定の温度以下に抑制することができ、従って、電源部について所定の防爆仕様の規格を満足するものとなる。
【0013】
さらにまた、複数本の棒状のリチウムイオン電池を有するバッテリーパックを備えたリチウムイオン電池電源ユニットにおいては、隣り合うリチウムイオン電池間に介在する熱硬化性樹脂によって十分な絶縁性が確保されるので、リチウムイオン電池が短絡することを防止することができる。
【0014】
さらにまた、電源ユニットそれ自体が給電用回路が形成された電源回路基板を備えていることにより、互いに電池電圧の大きさの異なるリチウムイオン電池および乾電池のいずれを備えた電源ユニットがメインユニットに装着された場合であっても、メインユニットに対して適正な大きさに制御された電力を供給することができる。また、リチウムイオン電池電源ユニットよりの電流が制限抵抗素子によって制限されてメインユニットに給電される構成とされていること、給電用回路および充電用回路が互いに離間した位置に形成された構成とされていることにより、短絡等による異常電流が生ずることを防止することができて電源部について所定の防爆仕様の規格を満足するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の可搬型ガス警報器における一例における構成を示す上面図である。
【図2】図1に示す可搬型ガス警報器の構成をセンサ室カバー蓋を取り外した状態で示す背面図である。
【図3】図1に示す可搬型ガス警報器の右側面図である。
【図4】図1におけるA−A線断面図である。
【図5】図4の一部を拡大して示す部分拡大図である。
【図6】ガス検知ユニットの構成を示す上面図である。
【図7】図1に示す可搬型ガス警報器における配管構造を概略的に示すブロック図である。
【図8】リチウムイオン電池電源ユニットの構成をリチウムイオン電池の長手方向に垂直な方向に切断して示す断面図である。
【図9】図8に示すリチウムイオン電池電源ユニットの、幅方向における中央位置の断面図である。
【図10】図8に示すリチウムイオン電池電源ユニットにおける電源回路基板の構成を概略的に示す説明図である。
【図11】図1に示す可搬型ガス警報器において用いられる乾電池電源ユニットの構成を乾電池の長手方向に垂直な方向に切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の可搬型ガス警報器における一例における構成を示す上面図、図2は、図1に示す可搬型ガス警報器の構成をセンサ室カバー蓋を取り外した状態で示す背面図、図3は、図1に示す可搬型ガス警報器の右側面図、図4は、図1におけるA−A線断面図、図5は、図4の一部を拡大して示す部分拡大図である。
この可搬型ガス警報器10は、全体が箱(重箱)型形状であって、表示ユニット20およびガス検知ユニット40よりなるメインユニット15と、このメインユニット15に対して着脱可能に装着される電源ユニットとにより構成されており、例えば、適宜の装着用部材によって作業者の肩に掛けられて用いられる肩掛け式のものとして構成されている。図1および図3において、符号11は操作用ボタン、12は例えばベルト状の装着用部材取り付け部、13Aはガス導入部、13Bはガス排出部、14は表示部である。
【0017】
表示ユニット20は、例えば樹脂よりなる、下方が開口する上面側ハウジング部材21を備えており、この上面側ハウジング部材21の内部には、制御用回路基板30が上面側ハウジング部材21の上壁に対向して配設され、この制御用回路基板30の上面の中央部にパネル状表示機構(LCD)35が配置されている。
上面側ハウジング部材21の内部における一側領域(図4において左側領域)には、内部に四角柱状の音響用空間を形成する音響室25が形成されており、この音響室25の内部空間は、音響室25の一部を構成する下壁25Bに形成された開口Kを介してガス検知ユニット40におけるブザー配置部43と連通すると共に、上面側ハウジング部材21の上面に形成された上面側警報音放音用開口23Aおよび上面側ハウジング部材21の背面に形成されたスリット状の背面側警報音放音用開口23Bを介して外部に連通している。
【0018】
音響室25の下壁25Bの上面には、通音性を有する防水シート26が当該下壁25Bに形成された開口Kを塞ぐよう設けられている。
防水シート26は、例えばポリエステルよりなる多孔質膜により構成されており、その外周縁部が例えば接着されることによって音響室25の下壁25Bの上面に固定されている。
【0019】
また、上面側警報音放音用開口23Aには、各々、後述する圧電ブザー60における放音口62の開口径に比して小さい開口径を有する複数の微小放音用孔28Aが形成された、例えばポリカーボネートよりなるプレート部材28が上面側警報音放音用開口23Aを塞ぐよう設けられている。
【0020】
ガス検知ユニット40は、表示ユニット20の上面側ハウジング部材21の下端に枠状のパッキング16を介して連結されて着脱可能に固定される、例えば樹脂よりなる筒状の下面側ハウジング部材41を備えており、この下面側ハウジング部材41の内部における上方部には、表示ユニット20における音響室25の下方位置に、圧電ブザー60が配置されるブザー配置部43が形成されている。
【0021】
圧電ブザー60は、図6に示すように、上方に開口する放音口62を有するケース61内に圧電振動子(図示せず)が配置されてなる、背の低い円柱状のものであって、ケース61の下部の外周面における、放音口62を中心とする対角の位置には、水平なブザー配置面43Aに垂直な方向に伸びるよう設けられた位置決め用ピン部材43Bの外径より大きい内径を有する支持用孔を有する舌片状支持部63が形成されている。
圧電ブザー60は、舌片状支持部63の支持用孔内に位置決め用ピン部材43Bが挿通されて、放音口62が音響室25に対して位置決めされた状態で、ブザー配置面43A上に配置されており、圧電ブザー60の上面における外縁部が、制御用回路基板30における圧電ブザー60の放音口62に対向する位置に形成された開口部30Aの下面側の周縁部に設けられた緩衝部材(クッション部材)31を介して、上方から押さえられており、これにより、ブザー配置面43Aに水平な面方向および上下方向に微小変位可能に支持されている。このようなブザー支持構造により、圧電ブザー60自体の振動が抑制されることがなく、警報音の音圧レベルを高くすることができると共に、衝撃が加えられた場合であっても、圧電ブザー60の微小変位によって衝撃が緩和されて圧電ブザー60において発生するエネルギーを低減することができて所定の防爆仕様の規格を満足するものとすることができる。
【0022】
また、下面側ハウジング部材41の内部には、センサ基板58が制御用回路基板30に垂直な方向に延びるよう配設されており、このセンサ基板58の背面側に、例えば5つのガスセンサ50A,50B,50C,50D,50Eを着脱可能に保持するセンサ保持部46A,46B,46C,46D,46E、並びに、ガス導入部48Aおよびガス排出部48Bを有するセンサホルダ45が形成されており、センサ基板58の正面側における他側領域(図6における右側領域)に、外部より環境雰囲気の空気を吸引してガスセンサ50A〜50Eの各々に供給するガス吸引ポンプ66が配置されると共に、中央領域にガス吸引ポンプ66によって吸引されてガスセンサ50A〜50Eの各々に供給される環境雰囲気の空気のガス流路の一部を形成する空気溜まり部(バッファ用空間部)44が形成されている。
【0023】
ガスセンサ50A〜50Eの組み合わせの一例を示すと、ガスセンサ50Aとして、定電位電解式ガスセンサよりなる硫化水素ガス検知用ガスセンサ、ガスセンサ50Bとして、接触燃焼式ガスセンサよりなる、炭化水素ガスなどの可燃性ガスを%LEL(爆発下限界濃度)の測定レンジで検知するための第1の可燃性ガスセンサ、ガスセンサ50Cとして、定電位電解式ガスセンサよりなる一酸化炭素ガス検知用ガスセンサ、ガスセンサ50Dとして、熱伝導式ガスセンサよりなる、炭化水素ガスなどの可燃性ガスを体積%の測定レンジで検知するための第2の可燃性ガスセンサ、ガスセンサ50Eとして、ガルバニ電池式ガスセンサよりなる酸素ガス検知用ガスセンサを例示することができる。
【0024】
ガス吸引ポンプ66は、例えばモータ駆動によるダイヤフラムポンプが用いられており、例えば、0.75リットル/min以上の流量の環境雰囲気の空気を供給することができる性能を有する。
【0025】
空気溜まり部44は、図7に示すように、防塵フィルタ65を介してガス吸引ポンプ66により吸引されてガスセンサ50A〜50Eの各々に供給される環境雰囲気の空気のガス流路における、ガス吸引ポンプ66の下流側の位置に設けられており、この空気溜まり部44の下流側の位置には、絞り部68が設けられている。
空気溜まり部44には、圧力センサ67が接続されており、この圧力センサ67によって測定される空気溜まり部44からの排気圧が監視されることにより、例えば、水を吸引したこと、防塵フィルタ65の目詰まりが生じたこと、ガス吸引ポンプ66が経時的に劣化したことなどに起因するガス流量の低下が検出される。
【0026】
而して、この可搬型ガス警報器10においては、リチウムイオン電池を備えたリチウムイオン電池電源ユニットおよび乾電池を備えた乾電池電源ユニットのいずれか一方の選択された電源ユニットがメインユニット15に対して他方と交換可能に装着される構成とされている。この例においては、リチウムイオン電池電源ユニット70がメインユニット15に装着されており、選択されなかった電源ユニットである乾電池電源ユニットは、例えば、所定のアルミニウム製のトランクケース内に収納されて作業者によって携行される。
【0027】
リチウムイオン電池電源ユニット70は、ガス検知ユニット40を構成する下面側ハウジング部材41の下端にパッキング18を介して連結されて着脱可能に固定されるハウジング部材71と、このハウジング部材71の内部に収容された、リチウムイオン電池77を備えてなるバッテリーパック75と、ハウジング部材71の内部におけるバッテリーパック75の上方位置に配設された電源回路基板73と、電源回路基板73を保護する保護部材74とを備えている。
【0028】
バッテリーパック75は、図8および図9に示すように、互いに平行に並んだ状態で配置されて直列に接続された例えば2本の棒状のリチウムイオン電池77および例えば過充電・過放電防止用の制御回路が形成された保護回路基板78が、電池収容ケース76内に充填された熱硬化性樹脂よりなる樹脂ブロック79に埋設されて構成されており、リチウムイオン電池77の長さ方向(図9において左右方向)の一端側より給電用(放電用)接続リード線(図示せず)が導出されていると共に他端より充電用接続リード線(図示せず)が導出されている。
【0029】
電源回路基板73は、図10に示すように、メインユニット15におけるセンサ基板58と電気的に接続されるコネクタ部73Dと、制限抵抗素子73Cを有し、当該制限抵抗素子73Cを介してメインユニット15に給電する給電用回路73Bと、この給電用回路73Bが形成された領域と互いに離間した位置に形成された充電用回路73Aとを有する。
給電用回路73Bが形成された領域と充電用回路73Aが形成された領域との離間距離dは、防爆上の理由から、例えば2.0mm以上の大きさとされていることが好ましい。
【0030】
乾電池電源ユニット80は、図11に示すように、ガス検知ユニット40を構成する下面側ハウジング部材41の下端にパッキング18を介して連結されて着脱可能に固定されるハウジング部材81を備えており、このハウジング部材81には、底面において下方に開口する電池挿入口81Aを有する、円柱状の乾電池(例えば単三型乾電池(AAサイズ))86が電池挿入口81Aの下方側から装着される電池受容部81Bが形成されている。この例においては、例えば3本の単三型の乾電池86が隣接するものの正極および負極が互いに逆方向を向くよう平行に並んだ状態で、電池受容部81Bに装着されて直列に接続される構成とされている。図11における符号83は、電池受容部カバー蓋である。
そして、ハウジング部材81の内部における電池受容部81Bの上方位置には、電源回路基板85が配設されていると共に当該電源回路基板85を保護する保護部材84が設けられている。
【0031】
また、この可搬型ガス警報器10における、表示ユニット20、ガス検知ユニット40、リチウムイオン電池電源ユニット70および乾電池電源ユニット80の各々には、例えば帯電防止性樹脂(制電性樹脂)よりなるプロテクトカバー22,42,72,82が装着されており、プロテクトカバー22,42,72,82が装着された状態においては、外部に露出されるハウジング部材の連続した樹脂表面部分の大きさが所定の大きさ例えば400mm2 以下に規制され、これにより、静電気対策が十分で信頼性の高い防爆性を有するものとなる。
【0032】
この可搬型ガス警報器10においては、環境雰囲気の空気が防塵フィルタ65を介してガス吸引ポンプ66により吸引されて導入されると、空気溜まり部44および絞り部68を介してガスセンサ50A〜50Eの各々に順次に供給されて検知対象ガスの検知が行われ、表示部14において、検知されたガスの種類と濃度が表示されると共に、いずれかの検知対象ガスの濃度が基準値を越えたことが検出されたときに、警報動作信号が発せられ、これにより、圧電ブザー60が作動される。
例えば、酸素ガス(O2 ガス)の場合には、基準値は例えば18.0体積%(vol%)とされ、それ以下となったときに警報動作信号が発せられる。また、基準値は、炭化水素ガス(HCガス)の場合には、例えば10%LEL(爆発下限界濃度に対するガス濃度)とされ、一酸化炭素ガス(COガス)の場合には例えば25ppmとされ、硫化水素ガス(H2 Sガス)の場合には例えば10ppmとされ、当該基準値を超えたときに警報動作信号が発せられる。
【0033】
而して、上記の可搬型ガス警報器10によれば、リチウムイオン電池電源ユニット70および乾電池電源ユニット80の両方の電源ユニットが利用可能であるので、メインユニット15に選択的に装着された一方の電源ユニットにおける電池の残存容量がガス検出動作中において不足した場合であっても、他方の電源ユニットを一方の電源ユニットと交換してメインユニット15に装着することにより、ガス検出動作を継続して行うことができて作業者に対して危険な状態となるなどの不測の事態が生ずることを確実に防止することができる。
【0034】
また、一般に、可搬型ガス警報器を電源部について所定の防爆仕様を満足するものとして構成するためには、二次電池の短絡時における表面温度が一定の温度以下に維持されることが求められところ、上記の可搬型ガス警報器10によれば、リチウムイオン電池77および保護回路基板78が電池収容ケース76内に充填された熱硬化性樹脂よりなる樹脂ブロック79に埋設されてなるバッテリーパック75を備えたリチウムイオン電池電源ユニット70が用いられていることにより、リチウムイオン電池77が短絡してリチウムイオン電池77が発熱した場合であっても、当該熱が熱硬化性樹脂による樹脂ブロック79により吸収されることとなるので、リチウムイオン電池77の表面温度の上昇の程度を小さく抑制することができると共に、バッテリーパック75の熱容量が十分に大きくなるので、バッテリーパック75の表面の温度を一定の温度以下に抑制することができる。実際に、所定の短絡試験を行ったところ、リチウムイオン電池77が熱硬化性樹脂に埋設されていない構成のものにおける、周囲温度が50℃であるときのリチウムイオン電池77の表面温度が130℃に達するのに対して、本発明に係るバッテリーパック75においては、周囲温度が50℃であるときの樹脂ブロック79の表面における最大温度は90℃程度に抑制されることが確認された。また、リチウムイオン電池77および保護回路基板78が熱硬化性樹脂よりなる樹脂ブロック79に埋設された構造とされていることにより、リチウムイオン電池77および保護回路基板78がガス雰囲気に晒されることがないので、それ自体が着火源となることを確実に防止することができる。
さらにまた、リチウムイオン電池電源ユニット70においては、(イ)2本のリチウムイオン電池77が所定の間隔を介して配設されると共にリチウムイオン電池77間に熱硬化性樹脂が介在されてリチウムイオン電池77間の十分な絶縁性が確保された構成とされていること、(ロ)リチウムイオン電池電源ユニット70よりの電流が制限抵抗素子73Cによって制限されてメインユニット15に給電される構成とされていること、および、(ハ)電源回路基板73において、給電用回路73Bおよび充電用回路73Aが所定の大きさの間隔を介して離間して形成されていることにより、短絡等による異常電流が生ずることを確実に防止することができ、従って、電源部について所定の防爆仕様の規格を満足するものとなる。
【0035】
さらにまた、リチウムイオン電池電源ユニット70および乾電池電源ユニット80の電源ユニットそれ自体が、給電用回路が形成された電源回路基板73,85を備えていることにより、互いに電池電圧の大きさの異なるリチウムイオン電池77および乾電池86のいずれを備えた電源ユニットがメインユニット15に装着された場合であっても、メインユニット15に対して適正な大きさに制御された電力を供給することができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、リチウムイオン電池電源ユニットを構成するバッテリーパックにおけるリチウムイオン電池の数、および、乾電池電源ユニットを構成する乾電池の数は、上記の例に限定されるものではない。
また、本発明の可搬型ガス警報器は、適宜の装着具によって身体に装着して使用されても、例えば、検知対象空間において水平面上に載置された状態で使用されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 可搬型ガス警報器
11 操作用ボタン
12 装着用部材取り付け部
13A ガス導入部
13B ガス排出部
14 表示部
15 メインユニット
16 パッキング
18 パッキング
20 表示ユニット
21 上面側ハウジング部材
22 プロテクトカバー
23A 上面側警報音放音用開口
23B 背面側警報音放音用開口
25 音響室
25B 下壁
K 開口
26 防水シート
28 プレート部材
28A 微小放音用孔
30 制御用回路基板
30A 開口部
31 緩衝部材(クッション部材)
35 パネル状表示機構(LCD)
40 ガス検知ユニット
41 下面側ハウジング部材
42 プロテクトカバー
43 ブザー配置部
43A ブザー配置面
43B 位置決め用ピン部材
44 空気溜まり部(バッファ用空間部)
45 センサホルダ
46A〜46E センサ保持部
48A ガス導入部
48B ガス排出部
50A〜50E ガスセンサ
58 センサ基板
60 圧電ブザー
61 ケース
62 放音口
63 舌片状支持部
65 防塵フィルタ
66 ガス吸引ポンプ
67 圧力センサ
68 絞り部
70 リチウムイオン電池電源ユニット
71 ハウジング部材
72 プロテクトカバー
73 電源回路基板
73A 充電用回路
73B 給電用回路
73C 制限抵抗素子
73D コネクタ部
74 保護部材
75 バッテリーパック
76 電池収容ケース
77 リチウムイオン電池
78 保護回路基板
79 樹脂ブロック
80 乾電池電源ユニット
81 ハウジング部材
81A 電池挿入口
81B 電池受容部
82 プロテクトカバー
83 電池受容部カバー蓋
84 保護部材
85 電源回路基板
86 乾電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガスセンサおよび環境雰囲気の空気を吸引して前記ガスセンサの各々に供給するガス吸引手段を備えたメインユニットと、各々、当該メインユニットに対して着脱可能に装着される、リチウムイオン電池を備えたリチウムイオン電池電源ユニットおよび乾電池を備えた乾電池電源ユニットとにより構成されており、
前記リチウムイオン電池電源ユニットおよび前記乾電池電源ユニットのいずれか一方の選択されたものがメインユニットに対して他方と交換可能に装着されることを特徴とする可搬型ガス警報器。
【請求項2】
前記リチウムイオン電池電源ユニットは、リチウムイオン電池および保護回路基板が電池収容ケース内に充填された熱硬化性樹脂に埋設されてなるバッテリーパックを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の可搬型ガス警報器。
【請求項3】
前記リチウムイオン電池電源ユニットは、棒状のリチウムイオン電池の複数本のものが直列に接続されて互いに平行に配置されており、隣接するリチウムイオン電池間に前記熱硬化性樹脂が介在していることを特徴とする請求項2に記載の可搬型ガス警報器。
【請求項4】
前記リチウムイオン電池電源ユニットは、制限抵抗素子を有する給電用回路および充電用回路が互いに離間した位置に形成された電源回路基板をさらに備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の可搬型ガス警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−257920(P2011−257920A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131064(P2010−131064)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】