説明

含フッ素重合体、反射防止膜、反射防止フィルムおよび画像表示装置

【課題】低屈折率、高硬度、耐擦傷性、防汚性に優れる含フッ素重合体を提供する。
【解決手段】酸素原子と直接連結した末端含フッ素ビニル基を分子中に2つ有する含フッ素化合物(A)と、−OH基を分子中に2つ以上有する化合物群(B)を付加反応させて得られる含フッ素重合体であって、少なくとも下記一般式(I)で示される単位を含むことを特徴とする含フッ素重合体。


一般式(I)中、Rf11はペルフルオロアルキレン基を示し、およびRf12およびRf13はそれぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基を示し、Rf11、Rf12、Rf13のうち少なくとも2つはそれぞれ結合して環を形成してもよい。Rfは少なくとも1つのフッ素原子を有する(n+2)価のアルキレン基を示し、Gは架橋性基を示し、nは1〜4の整数を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素重合体、それを用いた反射防止膜、反射防止フィルムおよび画像表示置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減する様ディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
このような反射防止フィルムは、一般的には、支持体上に、該支持体より低屈折率の、適切な膜厚の低屈折率層を形成することにより作製できる。低い反射率を実現するために、低屈折率層にはできるだけ屈折率の低い材料の使用が望まれる。
【0004】
また、反射防止フィルムは、ディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性が要求される。厚さ100nm前後の薄膜において、高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度、及び下層への密着性が必要である。
【0005】
材料の屈折率を下げるには、(1)フッ素原子を導入する、(2)密度を下げる(空隙を導入する)という手段があるが、いずれも皮膜強度や界面の密着性が低下し、耐擦傷性が低下する方向であり低い屈折率と高い耐擦傷性の両立は困難な課題であった。
皮膜の耐擦傷性を向上させる等の目的で架橋性基を導入した含フッ素重合体が数多く提案されている(例えば特許文献1,2,3等)。これらの含フッ素重合体は含フッ素オレフィン類とビニルエーテル類との共重合体に対して架橋性基を導入したものであるが、架橋性基密度を上げるとフッ素含率が低下してしまうという問題があった。また、含フッ素オレフィン類とビニルエーテル類との共重合体におけるフッ素含率の低減には一定の限界があった。
【0006】
そこで、従来の架橋性含フッ素重合体に対して、よりフッ素含率および架橋性基密度を高めることが可能な含フッ素重合体の開発、およびそれを用いたより低屈折率で耐擦傷性に優れる材料の開発が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開2003−26732号公報
【特許文献2】特開2005−43749号公報
【特許文献3】特開2007−56242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、第1に低屈折率、高硬度、耐擦傷性、および防汚性に優れる含フッ素重合体を提供することにあり、第2には、反射率が低く、高硬度で、耐擦傷性に優れ、大量生産に適した塗布型の反射防止膜を提供することにあり、第3に、該反射防止膜を透明支持体上に配置した反射防止フィルムを提供することにあり、第4に、該反射防止フィルムを配置した画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する手段は以下の通りである。
1. 酸素原子と直接連結した末端含フッ素ビニル基を分子中に2つ有する含フッ素化合物(A)と、−OH基を分子中に2つ以上有する化合物群(B)を付加反応させて得られる含フッ素重合体であって、少なくとも下記一般式(I)で示される単位を含むことを特徴とする含フッ素重合体。
【0010】
【化1】

【0011】
一般式(I)中、Rf11はペルフルオロアルキレン基を示し、およびRf12およびRf13はそれぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基を示し、Rf11、Rf12、Rf13のうち少なくとも2つはそれぞれ結合して環を形成してもよい。Rfは少なくとも1つのフッ素原子を有する(n+2)価のアルキレン基を示し、Gは架橋性基を示し、nは1〜4の整数を示す。
2. 前記酸素原子と直接連結した末端含フッ素ビニル基を分子中に2つ有する含フッ素化合物(A)が下記一般式(II)で示される化合物であることを特徴とする上記1に記載の含フッ素重合体。
【0012】
【化2】

【0013】
一般式(II)中、Rf11、Rf12、およびRf13はそれぞれ前記一般式(I)中のRf11、Rf12、およびRf13と同義である。
3. 前記−OH基を分子中に2つ以上有する化合物群(B)が下記一般式(III)で示される化合物を含むことを特徴とする上記1または2に記載の含フッ素重合体。
【0014】
【化3】

【0015】
一般式(III)中、Rf、Gおよびnは前記一般式(I)中のRf、Gおよびnと同義である。
4. 前記Gで示される架橋性基が下記G1〜G6のいずれかであることを特徴とする、上記1〜3のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【0016】
【化4】

【0017】
G1〜G6中、Zは単結合または2価の連結基を示し、R11は、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21は水酸基、イソシアネート基または加水分解される基を示し、R22は水素原子または炭化水素基を示し、aは1〜3整数を示す。R31、R32およびR33は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。R41、R42、R43、R44およびR45は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。R51、R52およびR53は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。R61は、水素原子または炭化水素基を示す。
5. 上記1〜4のいずれかに記載の含フッ素重合体を含む硬化性樹脂組成物を硬化して得られる低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
6. 上記1〜4のいずれかに記載の含フッ素重合体および無機酸化物微粒子を含有する硬化性樹脂組成物を硬化して得られる低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
7. 前記無機酸化物微粒子が中空シリカ微粒子であることを特徴とする上記6に記載の反射防止膜。
8. 透明支持体上に、上記5〜7のいずれかに記載の反射防止膜を有することを特徴とする、反射防止フィルム。
9. 上記8に記載の反射防止フィルムを有することを特徴とする、画像表示装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低屈折率、高硬度、耐擦傷性、および防汚性に優れる含フッ素重合体を提供することができる。また、反射率が低く、高硬度で、耐擦傷性に優れ、大量生産に適した塗布型の反射防止膜、反射防止フィルムおよび画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の含フッ素重合体は、酸素原子と直接連結した末端含フッ素ビニル基を分子中に2つ有する含フッ素化合物(A)と、−OH基を分子中に2つ以上有する化合物群(B)を付加反応させて得られる含フッ素重合体であって、少なくとも下記一般式(I)で示される単位を含むことを特徴とする。
【0020】
【化5】

【0021】
一般式(I)中、Rf11はペルフルオロアルキレン基を示し、およびRf12およびRf13はそれぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基を示し、Rf11、Rf12、Rf13のうち少なくとも2つはそれぞれ結合して環を形成してもよい。Rfは少なくとも1つのフッ素原子を有する(n+2)価のアルキレン基を示し、Gは架橋性基を示し、nは1〜4の整数を示す。
【0022】
Rf11で表されるペルフルオロアルキレン基は、好ましくは炭素数1〜30のペルフルオロアルキレン基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、ペルフルオロアルキレン基中にエーテル結合を有していてもよい。さらに好ましい炭素数としては1〜20であり、より好ましくは2〜10である。
Rf12およびRf13で示されるペルフルオロアルキル基は、好ましくは炭素数1〜30のペルフルオロアルキル基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、ペルフルオロアルキル基中にエーテル結合を有していてもよい。さらに好ましい炭素数としては1〜20であり、より好ましくは1〜10である。
Rf12およびRf13で示されるペルフルオロアルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜30のペルフルオロアルコキシ基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、ペルフルオロアルコキシ基中にエーテル結合を有していてもよい。さらに好ましい炭素数としては1〜20であり、より好ましくは1〜10である。
【0023】
前記酸素原子と直接連結した末端含フッ素ビニル基を分子中に2つ有する含フッ素化合物(A)としては、下記一般式(II)で示される化合物が好ましい。
【0024】
【化6】

【0025】
一般式(II)中、Rf11、Rf12、およびRf13はそれぞれ前記一般式(I)中のRf11、Rf12、およびRf13と同義である。
【0026】
一般式(II)において、好ましくはRf12およびRf13がともにフッ素原子またはペルフルオロアルコキシ基であり、Rf12およびRf13がともにペルフルオロアルコキシ基の場合、下記一般式(II’)で表される化合物がより好ましい。
【0027】
【化7】

【0028】
式中、Rf123は4価のペルフルオロ有機基を示す。Rf123で示される4価のペルフルオロ有機基は、好ましくは炭素数1〜30のペルフルオロアルキレン基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、ペルフルオロ連結基中にエーテル結合を有していてもよい。さらに好ましい炭素数としては4〜20であり、より好ましくは5〜10である。
以下に一般式(II)および一般式(II’)で示される化合物の具体的例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
前記−OH基を分子中に2つ以上有する化合物群(B)としては下記一般式(III)で示される化合物が好ましい。
【0034】
【化12】

【0035】
一般式(III)中、Rf、Gおよびnは前記一般式(I)中のRf、Gおよびnと同義である。
【0036】
一般式(I)および一般式(III)において、Gは架橋性基を示し、好ましくは下記G1〜G6で示される基を示す。
【0037】
【化13】

【0038】
G1〜G6中、Zは単結合または2価の連結基を示し、R11は、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21は水酸基、イソシアネート基または加水分解される基を示し、R22は水素原子または炭化水素基を示し、aは1〜3整数を示す。R31、R32およびR33は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。R41、R42、R43、R44およびR45は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。R51、R52およびR53は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。R61は、水素原子または炭化水素基を示す。
【0039】
G1〜G6において、Zは単結合または2価の連結基を示す。2価の連結基としては、−(Y)c−Q−で示される連結基が好ましい。ここで、cは0または1を示し、Yはカルボニル基、カルボニルアミノ基、カルボニルオキシ基、スルホニル基、スルホニルオキシ基、スルホニルアミノ基(いずれもカルボニルまたはスルホニル側で酸素原子と連結)等を示し、好ましくはカルボニル基またはカルボニルアミノ基を示す。Qはアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基を示す。Qで表されるアルキレン基は炭素数1〜20(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜3)の置換または無置換のアルキレン基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基を表す。
Qで表されるアリーレン基は炭素数6〜20(好ましくは6〜12)の置換または無置換のアリーレン基であり、例えば、フェニレン基、ナフタレン基、ビフェニレン基を表す。
Qで表されるアラルキレン基は炭素数7〜20(好ましくは7〜14)の置換または無置換のアラルキレン基であり、例えば、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基を表す。
これらのアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基は、エーテル結合、チオエーテル結合またはスルホニル基等の2価の連結基を介して任意の基が複数個連結していてもよい。
Qは好ましくは炭素数1〜10(より好ましくは1〜3)のアルキレン基を示す。
【0040】
G1において、R11は水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基または炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。
G2において、R21は水酸基、イソシアネート基または加水分解される基を示し、R22は水素原子または炭化水素基を示し、aは1〜3の整数を示す。R21において、加水分解される基は加水分解反応により水酸基に変換される基をいい、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)などが挙げられる。R21として好ましくは、水酸基またはアルコキシ基であり、特に好ましくは、水酸基、メトキシ基またはエトキシ基である。
22で表される炭化水素基は好ましくは炭素数1〜10の置換または無置換の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基、炭素数1〜10の置換または無置換の直鎖、分岐鎖または環状のアルケニル基、炭素数1〜10の置換または無置換の直鎖、分岐鎖または環状のアルキニル基、または炭素数6〜10の置換または無置換のアリール基で、より好ましくは、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、フェニル基である。aは好ましくは3である。
G3において、R31、R32およびR33は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、それぞれが結合して環を形成してもよい。炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜10の置換または無置換の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基または炭素数6〜10の置換または無置換のアリール基で、より好ましくは炭素数1〜4の無置換のアルキル基である。R31、R32およびR33は好ましくは水素原子である。
【0041】
G4においてR41、R42、R43、R44およびR45はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、それぞれが結合して環を形成してもよい。炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜10の置換または無置換の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基または炭素数6〜10の置換または無置換のアリール基で、より好ましくは炭素数1〜4の無置換のアルキル基である。R41、R42、R43、R44およびR45は好ましくは水素原子である。
G5において、R51、R52およびR53は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、それぞれが結合して環を形成してもよい。炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜10の置換または無置換の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基または炭素数6〜10の置換または無置換のアリール基で、より好ましくは炭素数1〜4の無置換のアルキル基およびフェニル基である。R51、R52およびR53は好ましくは水素原子である。
G6において、R61は、水素原子または炭化水素基を示す。炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜10の置換または無置換の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基または炭素数6〜10の置換または無置換のアリール基で、より好ましくは炭素数1〜4の無置換のアルキル基およびフェニル基である。R61は好ましくは水素原子である。
本発明においてGは、好ましくはG1またはG2であり、中でもG1でZが単結合である場合が特に好ましい。
以下にG1〜G6の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
【化14】

【0043】
一般式(I)および一般式(III)において、Rfは少なくとも1つのフッ素原子を有する(n+2)価のアルキレン基を示し、nは1〜4の整数を示す。
Rfで表される(n+2)価のアルキレン基は、好ましくは炭素数1〜30のペルフルオロアルキレン基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、ペルフルオロアルキレン基中にエーテル結合を有していてもよい。さらに好ましい炭素数としては1〜20であり、より好ましくは2〜10である。
以下に一般式(III)で示される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、式中Gは上記で述べた具体例のいずれでもよく、またそれ以外でもよい。
【0044】
【化15】

【0045】
【化16】

【0046】
式中、Aは、いずれか2つがGを示し、残りの2つはHを示す。
本発明の含フッ素重合体は、好ましくは、前記化合物(A)として上記一般式(II)で示される化合物と、前記化合物(B)として一般式(III)で示される化合物とを付加反応させて合成する。この際、2官能性求核剤として例えば以下に示すような含フッ素ジオール、ビスフェノール、ジチオール等を併用してもよい。
【0047】
【化17】

【0048】
【化18】

【0049】
【化19】

【0050】
【化20】

【0051】
【化21】

【0052】
【化22】

【0053】
【化23】

【0054】
一般式(III)で示される化合物は、下記一般式(III’)で示される(n+2)価の含フッ素ポリオールにn個のGを導入することにより得ることができる。
【0055】
【化24】

【0056】
一般式(III’)にGを導入する反応は特に限定されないが、好ましい反応としては、酸ハライドとアルコールとのエステル化反応、アルキルハライドとアルコールとの求核置換反応、イソシアネートとアルコールとの付加反応等を挙げることができる。これらの反応の際、Gがn個導入された所望の一般式(III)で示される化合物以外の化合物が副生する可能性がある。この場合、一般式(III)で示される化合物を精製した後に一般式(II)で示される化合物との付加反応を行った方が好ましいが、精製することなく一般式(II)で示される化合物との付加反応を行うこともできる。
一般式(III’)で示される(n+2)価の含フッ素ポリオール化合物は、液相フッ素化反応を利用して、例えば下図の方法により合成することができる。
【0057】
【化25】

【0058】
また、一般式(II)で示される化合物は、例えば液相フッ素化反応を鍵反応とする下記ルートにより合成することができる。各工程における詳細な反応条件等については、例えば、特表平4−500520号公報、国際公開特許00/56694号パンフレット、国際公開特許02/004397号パンフレット、特表2003−518051号公報やこれらの文献に引用されている文献等を参照して決定することができる。
【0059】
【化26】

【0060】
一般式(II)で示される化合物と一般式(III)を含む化合物との付加反応は無触媒で行ってもよいが、反応促進に有効な触媒を用いるのが好ましい。反応促進に有効な触媒としては塩基触媒および金属触媒が挙げられる。
【0061】
好ましい塩基触媒としては、水酸化アルカリ金属(例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム)、水酸化アルカリ土類金属(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム)、炭酸アルカリ金属(例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム)、炭酸アルカリ土類金属(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム)、炭酸水素アルカリ金属(例えば炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム)、炭酸水素アルカリ土類金属(例えば、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム)等の無機塩基およびピリジン、ピコリン、ルチジン、コリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の有機塩基が挙げられる。より好ましい塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等を挙げることができる。
用いる塩基の当量数としては、反応させる求核性基OHに対して0.1当量〜10当量が好ましく、より好ましくは0.5当量〜5当量である。
【0062】
好ましい金属触媒としては、例えばAngew.Chem.Int.Ed.2005,44,1128や特開2006−199625号公報に記載されているような第10族遷移金属触媒/配位子を挙げることができる。用いる遷移金属の当量数としては、反応させる求核性基OHに対して0.005当量〜1当量が好ましく、より好ましくは0.01当量〜0.1当量である。
【0063】
一般式(II)で示される化合物と一般式(III)を含む化合物との付加反応は溶媒中で行ってよいし、無溶媒で行ってもよい。好ましい溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の一般的な有機溶媒、AK−225(登録商標、旭ガラス社製)、2,2,2−トリフルオロエチルメチルエーテル、2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチルエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル、ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルジフルオロメチルエーテル、フルオロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、2,4−ジフルオロトルエン、2,6−ジフルオロトルエン、3,4−ジフルオロトルエン、1,2,3−トリフルオロベンゼン、1,2,4−トリフルオロベンゼン、1,3,5−トリフルオロベンゼン、2,3,4−トリフルオロトルエン、1,2,3,4−テトラフルオロベンゼン、1,2,3,5−テトラフルオロベンゼン、1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等の含フッ素溶媒、ペルフルオロアルカン化合物[FC−72(商品名、住友スリーエム社製)等]、ペルフルオロエーテル化合物[FC−75、FC−77(共に商品名、住友スリーエム社製)等]、ペルフルオロポリエーテル化合物[商品名:クライトックス(Krytox(登録商標)、DuPont社製)、フォブリン(Fomblin(登録商標)、AUSIMONT社製)、ガルデン(Galden(登録商標)、AUSIMONT社製)、デムナム{ダイキン工業社製}等]、クロロフルオロカーボン化合物(CFC−11,CFC−113等)、クロロフルオロポリエーテル化合物、ペルフルオロトリアルキルアミン化合物、不活性流体(商品名:フロリナート、Fluorinert(登録商標)、住友スリーエム社製)等のペルフルオロ溶媒、水およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。
溶媒量はモノマー総質量に対して質量比で0.1倍〜100倍用いるのが好ましく、より好ましくは1倍〜50倍、さらに好ましくは2倍〜20倍である。
【0064】
反応は2相系で行ってもよく、その場合、2相間を繰り返し行き来することのできる相間移動触媒を用いることが好ましい。水および有機系溶媒との2相系に用いることのできる相間移動触媒としては、例えばベンジルトリブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩やテトラブチルホスホニウムブロミド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムブロミド等の4級ホスホニウム塩を挙げることができる。
【0065】
反応の仕込み比(付加反応に関与するオレフィン数/求核性基OHの総数)は、目的により種々調整することができるが、できるだけ高分子量のポリマーを得るためには、当量比をできる限り1に近づけるのが好ましい。本発明においては、(付加反応に関与するオレフィン数/求核性基OH総数)の値は0.5〜2.0であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。できるだけポリマーの分子量を大きくする場合には、0.99〜1.01であることが好ましい。
一般式(III)の化合物以外の多官能求核性化合物を併用する場合には、[一般式(III)に由来するOH基の総数/求核性基OH総数]の値が0.1以上〜1[一般式(III)のみを用いた場合]であることが好ましく、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.5以上である。
反応温度は−20℃〜150℃が好ましく、より好ましくは0℃〜100℃であり、さらに好ましくは20℃〜80℃である。
反応時間は用いる触媒、基質、溶媒の種類や量、反応温度、攪拌効率等に依存するが、これらを制御して、10分〜96時間で行うのが好ましく、より好ましくは30分〜48時間、さらに好ましくは1時間〜24時間である。
【0066】
本発明の含フッ素重合体を反射防止膜の低屈折率層に用いる場合、本発明の含フッ素重合体を単独で用いてもよいし、他のポリマーと併用して用いてもよい。併用するポリマーとしては例えば、特開平9−222503号公報明細書の段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書の段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書の段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載のものが挙げられる。
【0067】
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記に加えて、皮膜硬度、屈折率、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性の観点から、各種の添加剤を含有することもできる。
例えば、(中空)シリカ等の無機酸化物微粒子、シリコーン系あるいはフッ素系の防汚剤、もしくは、滑り剤などを添加することができる。これらを添加する場合には、硬化性樹脂組成物の全固形分に対して0〜99質量%の範囲であることが好ましく、0〜70質量%の範囲であることがより好ましく、0〜50質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0068】
本発明において、用いることのできる無機酸化物微粒子(以下、無機微粒子という)について次に説明する。
該無機微粒子を含有させた前記硬化性樹脂組成物を用いて、反射防止フィルムにおける低屈折率層を形成する場合、無機微粒子の塗設量は、1mg/m〜100mg/mが好ましく、より好ましくは5mg/m〜80mg/m、更に好ましくは10mg/m〜60mg/mである。無機微粒子の量が少なすぎると耐擦傷性の改良効果が減り、多すぎると、例えば、反射防止フィルムの低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する。該無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。
【0069】
具体的には、有機溶媒分散液中における分散性の改良処理がなされている無機酸化物粒子または中空無機酸化物粒子であって、低屈折率のものが好ましく用いられる。例えば、シリカまたは中空シリカの微粒子が挙げられる。シリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
シリカ微粒子の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなり、大きすぎると低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する。
シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよく、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。ここで、無機微粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
【0070】
低屈折率層の屈折率を低下させるために、中空のシリカ微粒子を用いることが好ましい。該中空シリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、さらに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、空隙率xは下記数式(I)で算出される。
(数式I)
x=(4πa/3)/(4πb/3)×100
空隙率xは、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17未満の低屈折率の粒子は成り立たない。
なお、これら中空シリカ粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなった。
【0071】
また、中空粒子を低屈折率層に含有させることで該層の屈折率を低下させることができる。中空粒子を用いた場合に好ましい該層の屈折率は1.20以上1.47以下であり、更に好ましくは1.25以上1.41以下であり、最も好ましくは1.25以上1.39以下である。中空シリカの調製方法は例えば、特開2001−233611号、特開2002−79616号の各公報等に記載されている。
【0072】
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(以下、「小サイズ粒径のシリカ微粒子」という。)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(以下、「大サイズ粒径のシリカ微粒子」という。)と併用することが好ましい。小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層が100nmの場合、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コストおよび保持剤効果の点で好ましい。
【0073】
この他に、保存安定性の観点から上記硬化性樹脂組成物は重合禁止剤を含有してもよい。本発明において好適に用いることができる重合禁止剤としては、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、モノ−tert−ブチルヒドロキノン、カテコール、p−tert−ブチルカテコール、p−メトキシフェノール、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−m−クレゾール、ピロガロール、β−ナフトール等のフェノール類、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、p−トルキノン、p−キシロキノンなどのキノン類;ニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、2−メチル−2−ニトロソプロパン、α−フェニル−tert−ブチルニトロン、5,5−ジメチル−1−ピロリン−1−オキシドなどのニトロ化合物またはニトロソ化合物;クロラニル−アミン、ジフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジン、フェノール−α−ナフチルアミン、ピリジン、フェノチアジンなどのアミン類;ジチオベンゾイルスルフィド、ジベンジルテトラスルフィドなどのスルフィド類等のラジカル重合禁止剤が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いてもよい。
より好ましくはフェノール類、キノン類、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、アミン類、スルフィド類のうち少なくとも1つに属する化合物である。中でも、屈折率、ラジカル捕捉能の観点から、フェノール類を用いることが好ましい。
【0074】
これら重合禁止剤は、硬化性樹脂組成物中の全固形分に対して0.0001〜10質量%となるように添加することが好ましく、より好ましくは0.0001〜5質量%であり、特に好ましくは0.001〜2質量%である。
【0075】
その他、硬化性樹脂組成物には各種シランカップリング剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜添加してもよい。
本発明の含フッ素重合体は、後述する高屈折率層、中屈折率層、又はその他の各種基材上に本発明の含フッ素モノマーを含む硬化性樹脂組成物を塗布したのち、硬化して形成することができる。
【0076】
[反射防止膜]
本発明の反射防止膜は、本発明の含フッ素重合体を含有する硬化性樹脂組成物を硬化してなる低屈折率層を有する。
本発明の反射防止膜は、単層構造でもよいし多層構造でもよい。すなわち、反射防止膜が単層構造である場合は、低屈折率層のみからなる。反射防止膜が多層構造である場合は、低屈折率層と高屈折率層の少なくとも2層以上を有する。反射防止膜は多層構造であることが好ましく、前記低屈折率層と高屈折率層との二層構造、または前記低屈折率層及び前記高屈折率層の他に中屈折率層を有する三層構造が好ましい。
【0077】
[低屈折率層]
前記低屈折率層は、後述するように高屈折率層の上層に配置される。すなわち、低屈折率層の上面が反射防止膜の表面となる。
低屈折率層の屈折率は、1.20以上1.47以下であり、更に好ましくは1.25以上1.41以下であり、最も好ましくは1.25以上1.39以下である。屈折率は、アッベ屈折率計を用いる測定や、層表面からの光の反射率からの見積もりにより求めることができる。
低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な低屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0078】
[高屈折率層及び中屈折率層]
本発明の反射防止膜において、低屈折率層と組み合わせて用いられる高屈折率層及び中屈折率層は、それぞれ低屈折率層より高い屈折率を有する層である。また、中屈折率層は、低屈折率層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率が低い層である。
【0079】
高屈折率層及び中屈折率層は、それぞれ有機材料のみ又は有機材料と無機材料とを主成分としてなる。
この際用いられる有機材料としては、熱可塑性樹脂組成物(例、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン以外の芳香環、複素環、脂環式環状基を有するポリマー、またはフッ素以外のハロゲン基を有するポリマー);熱硬化性樹脂組成物(例、メラミン樹脂、フェノール樹脂、またはエポキシ樹脂などを硬化剤とする樹脂組成物);ウレタン樹脂形成性組成物(例、脂環式または芳香族イソシアネートとポリオールとを含有する樹脂組成物);およびラジカル重合性組成物(上記ポリマー又はモノマーに二重結合を導入することにより、ラジカル硬化を可能にした変性樹脂組成物または変性プレポリマーを含む組成物)などを挙げることができる。高屈折率層又は中屈折率層に用いる有機材料は、高い皮膜形成性を有する材料が好ましい。
【0080】
なお、高屈折率層又は中屈折率層には、有機材料と無機材料を併用することができる。
有機材料と無機材料を併用する場合は、一般に無機材料によって高い屈折率を確保できるため、有機材料単独で用いる場合よりも低屈折率の有機材料を用いることができる。このような有機材料としては、ペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどのアクリル系モノマーとビニル系モノマーとの共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、繊維素系重合体、ウレタン樹脂、および、これらの樹脂を硬化させる各種の硬化剤又は硬化性官能基を有する化合物を含有する組成物等が挙げられる。これらの有機材料は、透明性があり、無機材料を安定に分散させることができる。硬化性官能基を有する化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート類、ポリイソシナネートとヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートの反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0081】
さらに、有機材料としては、有機置換されたケイ素系化合物を用いることができる。該ケイ素系化合物としては、下記式(5)で表される化合物、あるいはその加水分解生成物が挙げられる。
式(5) R(R SiZ4−m−n
ここで、Rはアルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表し、Rはハロゲン、エポキシ、アミノ、メルカプト、メタクリロイルまたはシアノで置換された、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表し、Zは、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基から選ばれた加水分解可能な基を表し、m+nが1または2である条件下で、m及びnはそれぞれ0、1または2である。
【0082】
無機材料としては、無機系微粒子が挙げられる。前記無機系微粒子を構成する好ましい。
無機化合物としては、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンなどの金属元素の酸化物を挙げることができる。無機系微粒子は、粉末または粉末が水等の溶媒に分散されたコロイド状分散体として、市販されている。これらを使用する場合は、前記有機材料または有機ケイ素化合物中に混合分散して使用することが好ましい。
【0083】
また、無機材料としては、皮膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料を用いることができる。このような無機材料としては、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例、キレート化合物)、無機ポリマー)を挙げることができる。
より具体的には、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−i−プロポキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−sec −ブトキシド、チタンテトラ−tert−ブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−i−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ブトキシド及びジルコニウムテトラ−tert−ブトキシドなどの金属アルコレート化合物;ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジブトキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジエトキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ビス(アセチルアセトンジルコニウム)、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−i−プロポキシドモノメチルアセトアセテート及びトリ−n−ブトキシドジルコニウムモノエチルアセトアセテートなどのキレート化合物;さらには炭素ジルコニルアンモニウムあるいはジルコニウムを主成分とする無機ポリマーなどを挙げることができる。
【0084】
高屈折率層及び中屈折率層には、以上に挙げた化合物の他に、屈折率が比較的低い化合物を併用できる。このような化合物としては、各種のアルキルシリケート類もしくはその加水分解物、微粒子状シリカ特にコロイド状に分散したシリカゲルが挙げられる。
また、高屈折率層及び中屈折率層には分散溶媒又は溶剤を使用することができる。分散溶媒又は溶剤としては、シクロヘキサノンやメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、酢酸エチル、DMF、2−プロパノール、n−ブタノールなどを挙げることができる。
さらに、高屈折率層及び中屈折率層には、従来の反射防止膜に通常添加される添加剤を適宜使用することができる。
【0085】
高屈折率層及び中屈折率層の実施態様としては、上記の無機材料の分散物と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどのモノマーと、光重合開始剤や熱重合開始剤などの重合開始剤と、必要に応じて用いられる増感剤や触媒とを溶剤(前記分散溶媒と同じものが例示できる)に溶解してなる層形成用組成物を用いて形成されたものが挙げられる。
このような構成は従来の反射防止膜における高屈折率層や中屈折率層に関する構成が適宜適用される。
【0086】
高屈折率層の屈折率は、1.57〜2.40の範囲がよい。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.5μmであることが最も好ましい。高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。高屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で1H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0087】
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.85の範囲がよい。高屈折率層に無機微粒子とポリマーを用い、中屈折率層は、高屈折率層よりも屈折率を低めに調節して形成することが特に好ましい。中屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましい。
中屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.5μmであることが最も好ましい。中屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で1H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0088】
[反射防止膜の形成方法]
本発明の反射防止膜は、各種基材などに前記高屈折率層や前記中屈折率層の形成用組成物を塗工し、光照射などにより硬化させて、前記高屈折率層などを形成した後、該高屈折率層又は該中屈折率層上に前記低屈折率層用の硬化性樹脂組成物を塗工し、更に光照射や加熱を行って硬化させることにより形成することができる。
なお、本発明の反射防止膜は、下記の反射防止フィルム及び表示装置に用いることが好ましく、その他、ケースカバー、光学用レンズ、眼鏡用レンズ、ウインドウシールド、ライトカバーやヘルメットシールドにも利用できる。
【0089】
[反射防止フィルム]
本発明の反射防止フィルムは、透明支持体上に本発明の反射防止膜が設けられたものである。
本発明の反射防止フィルム1の一実施態様として好適な反射防止フィルムの基本的な構成を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の反射防止フィルムの一実施態様の断面を示す模式図である。
図1に示す反射防止フィルムは、透明支持体2上に、高屈折率層8及び低屈折率層5がこの順序で形成された反射防止膜6を有する。
このような構成では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、高屈折率層8が下記数式(II)、低屈折率層5が下記数式(III)をそれぞれ満足すると、優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを得られるため好ましい。
【0090】
数式(II):(mλ/4)×0.7<n<(mλ/4)×1.3
【0091】
式中、mは正の整数(一般に1、2または3)であり、nは高屈折率層の屈折率であり、そして、dは高屈折率層の層厚(nm)である。
【0092】
数式(III):(nλ/4)×0.7<n<(nλ/4)×1.3
【0093】
式中、nは正の奇数(一般に1)であり、nは低屈折率層の屈折率であり、そして、dは低屈折率層の層厚(nm)である。
高屈折率層の屈折率nは、一般に透明支持体より少なくとも0.05高く、そして、低屈折率層の屈折率nは、一般に高屈折率層の屈折率より少なくとも0.1低くかつ透明支持体より少なくとも0.05低い。更に、高屈折率層の屈折率nは、一般に1.57〜2.40の範囲にある。
【0094】
また本発明の反射防止フィルムは、前記のように、低屈折率層と高屈折率層の二層からなる反射防止膜を有する構成でもよいが、さらに、中屈折率層、ハードコート層などの層を予め形成し、この上に前記した方法に従い低屈折率層と高屈折率層が形成された三層以上の反射防止膜を有する構成が好ましい。より好ましくは中・高・低屈折率層の三層以上の層を積層してなる形態である。このような反射防止フィルムの実施形態を図2に示す。
【0095】
すなわち、図2に示す反射防止フィルム1は、透明支持体2上にハードコート層3を有し、この上に中屈折率層7、高屈折率層8、低屈折率層5が、この順序で形成された反射防止膜6を有する。
このような構成では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層7が下記数式(IV)、高屈折率層8が下記数式(V)、低屈折率層5が下記数式(VI)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0096】
数式(IV):(hλ/4)×0.7<n<(hλ/4)×1.3
【0097】
式中、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、nは中屈折率層の屈折率であり、そして、dは中屈折率層の層厚(nm)である。
【0098】
数式(V):(jλ/4)×0.7<n<(jλ/4)×1.3
【0099】
式中、jは正の整数(一般に1、2または3)であり、nは高屈折率層の屈折率であり、そして、dは高屈折率層の層厚(nm)である。
【0100】
数式(VI):(kλ/4)×0.7<n<(kλ/4)×1.3
【0101】
式中、kは正の奇数(一般に1)であり、nは低屈折率層の屈折率であり、そして、dは低屈折率層の層厚(nm)である。
【0102】
中屈折率層の屈折率nは、一般に1.50〜1.85の範囲にあり、高屈折率層の屈折率nは、一般に1.57〜2.40の範囲にある。
また、数式(II)〜(VI)中のλは可視光線の波長であり、380〜680nmの範囲の値である。ここで記載した高屈折率、中屈折率、低屈折率とは層相互の相対的な屈折率の高低をいう。例えば中屈折率層は高屈折率層に添加する高屈折率無機微粒子の含率を変えるなどの方法で作製される。
【0103】
反射防止フィルムには、上述のようにハードコート層を設けることができる他、防湿層、帯電防止層、下塗り層や保護層を設けてもよい。ハードコート層は、透明支持体に耐擦傷性を付与するために設ける。ハードコート層は、透明支持体とその上の層との接着を強化する機能も有する。ハードコート層は、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコン系ポリマーやシリカ系化合物を用いて形成することができる。顔料をハードコート層に添加してよい。
アクリル系ポリマーは、多官能アクリレートモノマー(例、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート)の重合反応により合成することが好ましい。ウレタン系ポリマーの例には、メラミンポリウレタンが含まれる。シリコン系ポリマーとしては、シラン化合物(例、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン)と反応性基(例、エポキシ、メタクリル)を有するシランカップリング剤との共加水分解物が好ましく用いられる。二種類以上のポリマーを組み合わせて用いてもよい。シリカ系化合物としては、コロイダルシリカが好ましく用いられる。ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上である好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。透明支持体の上には、ハードコート層に加えて、接着層、シールド層、滑り層や帯電防止層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
【0104】
[透明支持体]
本発明において好ましく用いることができる前記透明支持体としては、透明支持体としては、ガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースアシレート(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンが含まれる。セルロースアシレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましく、トリアセチルセルロースがさらに好ましい。
【0105】
セルロースアシレートフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5〜500μmの範囲であり、さらに20〜250μmの範囲が好ましく、特に30〜180μmの範囲が最も好ましい。なお、光学用途としては30〜110μmの範囲が特に好ましい。セルロースアシレートフィルムを、非塩素系溶媒を用いて製造することについて、発明協会公開技報2001−1745号に詳しく記載されており、そこに記載されたセルロースアシレートフィルムも本発明に好ましく用いることができる。
【0106】
透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。透明支持体には、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、透明支持体の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。該無機化合物の例には、SiO、TiO、BaSO、CaCO、タルクおよびカオリンが含まれる。透明支持体に、表面処理を実施してもよい。
表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
【0107】
[反射防止フィルムの形成方法]
反射防止膜の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許第2,681,294号明細書記載)により、透明支持体上に直接又は他の層を介して塗布することにより形成することができる。二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2,761,791号、同第2,941,898号、同第3,508,947号、同第3,526,528号の各明細書および原崎勇次著、「コーティング工学」、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。本願の反射防止膜は、各層の塗布組成物を塗布後、乾燥し、電離放射線又は熱により硬化させることが好ましい。電離放射線を用いることが好ましく、紫外線を用いて硬化する場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
【0108】
反射防止膜の反射率は低いほど好ましい。反射防止膜の平均反射率は、450〜650nmの波長領域において2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.7%以下であることが最も好ましい。反射防止膜(下記のアンチグレア機能がない場合)のヘイズは、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。反射防止膜の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましい。
【0109】
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。微粒子を使用した低屈折率層では、微粒子により反射防止膜の表面に凹凸が形成できる。微粒子により得られるアンチグレア機能では不充分な場合は、低屈折率層、高屈折率層、中屈折率層あるいはハードコート層に比較的大きな粒子(粒径:50nm〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加してもよい。反射防止膜は、液晶表示装置の視野角(特に下方向視野角)を拡大し、観察方向の視角が変化してもコントラスト低下、階調または黒白反転、あるいは色相変化を抑止する目的で光拡散機能を有していてもよい。光拡散機能は光拡散フィルムに含有される透光性微粒子の内部散乱の効果により実現できる。反射防止膜がアンチグレア機能及び/又は光拡散機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜60%であることが好ましく、4〜40%であることがさらに好ましい。
【0110】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の反射防止フィルムを備える。
前記画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)等が挙げられる。本発明の画像表示装置においては、反射防止フィルムの透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着して形成されることが好ましい。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0112】
<実施例1:含フッ素重合体の合成>
【0113】
以下のスキームにしたがって含フッ素重合体(I−1)を合成した。
【0114】
【化27】

【0115】
[III−9(G=G1−1)の合成]
テトラオール1(8.0g, 10mmol)、炭酸カリウム(4.14g,30mmol)のMEK(100ml)溶液にアクリル酸クロリド(1.81g,20mmol)を氷水冷下、10℃以下で滴下した。反応液を室温にて4時間攪拌後、セライト濾過により不溶物を除去した。濾液を減圧下約20gになるまで濃縮し、酢酸エチル(200ml)で希釈した。酢酸エチル溶液を希塩酸水(100ml)、炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)、水(100ml)および食塩水(100ml)でそれぞれ1回ずつ洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下濃縮後、残留物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=39/1)で精製することにより(III−9)(G1−1)3.9g(4.3mmol)を得た。
H NMR(CDCOCD) δ 4.07(dt,J=6.90,14.47Hz,4H)、4,79(t,J=13.65Hz,4H)、5.12(t,J=6.90Hz,2H)、6.07(dd,J=1.50,10.50Hz,2H)、6.25(dd,J=10.50,17.10Hz,2H)、6.49(dd,J=1.50,17.10Hz,2H)
19F NMR(CDCOCD) δ −66.33(bs,8F)、−86.14(bs,4F)、−86.40(bs,4F)、−123.67(d,J=13.65Hz,4F)、−126.26(d,J=14.47Hz,4F)
【0116】
[I−1の合成]
空気雰囲気下、(III−9)(G1−1)(1.84g,2.03mmol)、(II−29)(0.80g,2.00mmol)および炭酸カリウム(0.83g,6.0mmol)のMEK(20ml)溶液を室温にて48時間攪拌した。反応液を酢酸エチル(100ml)/水(100ml)に注加し、分液した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液にメトキシフェノール(0.01g)を加え、減圧にて濃縮した。濃縮残留物を乾燥することにより(I−1)(2.6g)を得た。GPC測定の結果、このポリマーの数平均分子量は37,900、質量平均分子量は52,500(いずれもスチレン換算)であった。
H NMR(CDCOCD) δ a:4.55−4.72(m)、b:5.93(d,J=10.50Hz)、c:6.11(dd,J=10.50,17.10Hz)、d:6.24(bs)、e:6.35(d,J=17.10Hz),積分比 a:b:c:d:e≒4:1:1:1:1
19F NMR(CDCOCD) δ f:−66.34(bs,8F)、g:−67.80〜−73.50(m)、h:−85.94(bs)、i:−86.33(bs)、j:−88.22〜−89.81(m)、k:−123.66(bs)、l:−124.22(bs)
積分比f:g:h:i:j:k:l≒8:8:4:4:4:4:4
【0117】
同様にして、本発明の含フッ素重合体[I−2]〜[I−5]を合成した。また、比較化合物として特開2005−43749号公報に記載の[P−4]を合成した。
【0118】
【化28】

【0119】
<実施例2.反射防止膜の作製および評価>
(硬化性樹脂組成物の調製)
表1に示す各成分を混合し、メチルエチルケトンに溶解し、30質量%溶液を調製した後、孔径0.25μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して、硬化性樹脂組成物を調製した。
表中のIrg907はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の光重合開始剤イルガキュア907(商品名)を表す。
【0120】
(反射防止膜の評価)
前述のように調製した、硬化性樹脂組成物をバーコーターを用いてガラス基板上に塗布した。90℃で乾燥した後、窒素雰囲気下で紫外線を照射し、さらに、120℃で10分加熱し、その後、室温まで冷却した。このようにして、作成した反射防止膜(試料A−1〜A−6)のユニバーサル硬度、屈折率、および防汚性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
表1において、括弧内は、固形成分比率(質量%)を示す。
【0123】
(評価方法)
ユニバーサル硬度評価:
(株)フィッシャー・インスツルメンツ社製の微小硬度計(フィッシャースコープH100VP−HUC)を用いて測定した。この際、ダイヤモンド製の四角錘圧子(先端対面角度;136)を使用し、押し込み深さが1μmを超えない範囲で、適当な試験荷重下での押し込み深さを測定した。ユニバーサル硬度値(HU)は試験荷重をその試験荷重で生じた圧痕の幾何学的形状から計算される表面積で割った値で表される。
屈折率:
アッベ屈折計(アタゴ株式会社製)を用いて測定した。
防汚性の評価:
作製した塗膜の表面に、赤、青、黒の油性マジックで線を書き、室温で24時間放置した後、乾いた布もしくは紙で拭き取ったときの、マジックに対する防汚性のレベルを確認した。判定は次の基準に従った。
全くつかない :○
うっすらと色が残る:△
着色が著しい :×
【0124】
<実施例3.反射防止フィルムの作製および評価>
【0125】
(ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製)
MEK90質量部に対して、シクロヘキサノン10質量部、部分カプロラクトン変性の多官能アクリレート(DPCA−20、日本化薬(株)製)95質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液(HCL−1)を調製した。
【0126】
(反射防止フィルム試料の作製)
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム“TAC−TD80U”{富士フイルム(株)製}をロール形態から巻き出して、直接、上記のハードコート層用塗布液(HCL−1)を、線数180本/in、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下酸素濃度0.1体積%で160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、放射照度400mW/cm、照射量70mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ10.0μmの層を形成し、巻き取った。このようにしてハードコート層(HC−1)を得た。
【0127】
(中空シリカ粒子分散液の調製)
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シエル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20質量部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5質量部加え混合した後に、イオン交換水9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、分散液Aを得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の分散液を得た。得られた分散液のIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5質量%以下であった。
【0128】
(低屈折率層用塗布液の調製)
各成分を下記表2のように混合し、MEKに溶解して固形分濃度6質量%の低屈折率層用塗布液Ln1〜Ln6を作製した。
【0129】
【表2】

【0130】
表2において、含有量の数値は固形分濃度(質量%)を表す。
【0131】
なお、上記表中における略号は以下の通りである。
[P−1]: 特開2004−45462号公報に記載の含フッ素共重合体P−3(重量平均分子量約50000)
DPHA: ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
Irg.127: イルガキュア127、重合開始剤(日本チバガイギー(株)製)
RMS−033: メタクリロキシ変性シリコーン(Gelest(株)製)
【0132】
(中屈折率層用塗布液Aの調製)
ZrO微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:MIBK/MEK=9/1、JSR(株)製])10.0質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)3.0質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1質量部、メチルイソブチルケトン86.9.質量部を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液Aを調製した。
【0133】
(高屈折率層用塗布液Aの調製)
ZrO微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:MIBK/MEK=9/1、JSR(株)製])15.0質量部に、メチルイソブチルケトン85.0質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用塗布液Aを調製した。
【0134】
(反射防止フィルム試料NO.1〜NO.6の作製)
前記ハードコート層(HC−1)の上に、上記低屈折率層用塗布液Ln1〜Ln6を各々塗布し、低屈折率層膜厚が95nmになるように調節して低屈折率層を形成し、マイクログラビア塗工方式で反射防止フィルム試料NO.1〜NO.6を作製した。
【0135】
低屈折率層の乾燥条件は60℃、60秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm、照射量600mJ/cmの照射量とした。
【0136】
(反射防止フィルム試料NO.7の作製)
前記ハードコート層(HC−1)の上に、前記中屈折率層用塗布液Aを用いて中屈折率層膜厚が60nmとなるように調節してマイクログラビア塗工方式で中屈折率層を塗布した後、その上に高屈折率層用塗布液Aを用いて高屈折率層膜厚が112nmとなるように調節してマイクログラビア塗工方式で高屈折率層を塗布した。その後、低屈折率層用塗布液Ln1を用いて低屈折率層膜厚が90nmとなるように低屈折率層を設け、反射防止フィルム試料NO.7を作成した。低屈折率層の塗工条件は反射防止フィルム試料NO.1〜NO.6と同様とした。
【0137】
中屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量240mJ/cmの照射量とした。
【0138】
高屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量240mJ/cmの照射量とした。
【0139】
(反射防止フィルム試料の評価)
上記の反射防止フィルム試料を用いて以下の評価を行った。
【0140】
(評価1)スチールウール耐傷性評価
反射防止フィルム試料の低屈折率層側表面をラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行うことで、耐擦傷性の指標とした。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、ゲレードNo.0000)
試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に巻いて、バンド固定。
移動距離(片道):13cm、
こすり速度:13cm/秒、
荷重:500g/cm
先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:20往復。
擦り終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、こすり部分の傷を反射光で目視観察し、以下の基準で評価した。評価結果を表3に示した。
A :非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
B :非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
C :弱い傷が見える。
D :中程度の傷が見える。
E :一目見ただけで分かる傷がある。
【0141】
(評価2)防汚性
反射防止フィルム試料をガラス面上に粘着剤で固定し、25℃60RH%の条件下で黒マジック「マッキー極細(商品名:ZEBRA製)」のペン先(細)にて直径5mmの円形を3周書き込み、5秒後に10枚重ねに折り束ねたベンコット(商品名、旭化成(株))でベンコットの束がへこむ程度の荷重で20往復拭き取る。マジック痕が拭き取りで消えなくなるまで前記の書き込みと拭き取りを前記条件で繰り返し、拭き取りできた回数により防汚性を評価した。評価結果を表3に示した。消えなくなるまでの回数は5回以上であることが好ましく、10回以上であることが更に好ましい。
【0142】
(評価3)鏡面反射率の評価
鏡面反射率の測定は、分光光度計“V−550”[日本分光(株)製]にアダプター“ARV−474”を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における出射角−5゜の鏡面反射率を測定し、450〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価した。評価結果を表3に示した。本発明の反射防止フィルムは、鏡面反射率2.0%以下とするのが、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため好ましい。鏡面反射率は1.4%以下が特に好ましい。
【0143】
評価結果を表3に示す。
【0144】
【表3】

【0145】
以上の結果から明らかなように、本発明の架橋性含フッ素重合体は、従来のものと比べ同等の硬度および耐擦傷性で、屈折率および反射性は大幅に低下し、防汚性も良好であった。
【0146】
<実施例4>
上記本発明の反射防止フィルム試料をそれぞれ用いて、画像表示装置を作製した。それらの画像表示装置はいずれも外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止しつつ、かつ表面強度に優れるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の反射防止フィルム一実施態様を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の反射防止フィルムの別の実施態様を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0148】
1 反射防止フィルム
2 透明支持体
3 ハードコート層
5 低屈折率層
6 反射防止膜
7 中屈折率層
8 高屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素原子と直接連結した末端含フッ素ビニル基を分子中に2つ有する含フッ素化合物(A)と、−OH基を分子中に2つ以上有する化合物群(B)を付加反応させて得られる含フッ素重合体であって、少なくとも下記一般式(I)で示される単位を含むことを特徴とする含フッ素重合体。
【化1】

一般式(I)中、Rf11はペルフルオロアルキレン基を示し、およびRf12およびRf13はそれぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基を示し、Rf11、Rf12、Rf13のうち少なくとも2つはそれぞれ結合して環を形成してもよい。Rfは少なくとも1つのフッ素原子を有する(n+2)価のアルキレン基を示し、Gは架橋性基を示し、nは1〜4の整数を示す。
【請求項2】
前記酸素原子と直接連結した末端含フッ素ビニル基を分子中に2つ有する含フッ素化合物(A)が下記一般式(II)で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素重合体。
【化2】

一般式(II)中、Rf11、Rf12、およびRf13はそれぞれ前記一般式(I)中のRf11、Rf12、およびRf13と同義である。
【請求項3】
前記−OH基を分子中に2つ以上有する化合物群(B)が下記一般式(III)で示される化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の含フッ素重合体。
【化3】

一般式(III)中、Rf、Gおよびnは前記一般式(I)中のRf、Gおよびnと同義である。
【請求項4】
前記Gで示される架橋性基が下記G1〜G6のいずれかであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【化4】

G1〜G6中、Zは単結合または2価の連結基を示し、R11は、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基または炭素数1〜4のアルキル基を示す。R21は水酸基、イソシアネート基または加水分解される基を示し、R22は水素原子または炭化水素基を示し、aは1〜3整数を示す。R31、R32およびR33は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。R41、R42、R43、R44およびR45は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。R51、R52およびR53は、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を示し、少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。R61は、水素原子または炭化水素基を示す。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素重合体を含む硬化性樹脂組成物を硬化して得られる低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素重合体および無機酸化物微粒子を含有する硬化性樹脂組成物を硬化して得られる低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
【請求項7】
前記無機酸化物微粒子が中空シリカ微粒子であることを特徴とする請求項6に記載の反射防止膜。
【請求項8】
透明支持体上に、請求項5〜7のいずれかに記載の反射防止膜を有することを特徴とする、反射防止フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の反射防止フィルムを有することを特徴とする、画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−77222(P2010−77222A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245019(P2008−245019)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】