説明

含フッ素重合体の製造方法およびフォトレジスト組成物

含フッ素エチレン性単量体に由来する構造単位および/または重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得るフッ素原子を含んでいてもよい単量体に由来する構造単位を有し、かつ重合体中に酸で反応する酸反応性基Yまたは酸反応性基Yに変換可能な基Yを有する含フッ素重合体を得るに当たり、該含フッ素エチレン性単量体および/または該重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得る単量体を式(1):


(式中、R50、R51は同じかまたは異なり炭素数1〜30のエーテル結合を含んでも良い炭化水素基(ただし、結合末端の原子は酸素原子ではない)、p1、p2は同じかまたは異なる0または1、p3は1または2)で示される有機パーオキサイドを用いてラジカル重合することを特徴とする真空紫外光の透明性に優れたレジスト用含フッ素重合体の製造方法および得られた重合体を含むフォトレジスト組成物を提供する。該含フッ素重合体は、真空紫外領域における透明性に優れ、フォトレジスト用として、特にF2レジスト用として超微細パターンを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、含フッ素重合体の新規な製造方法、さらには真空紫外領域、特にF2レーザー(157nm)光において透明なフォトレジスト用の含フッ素重合体の製造方法および該フォトレジスト用含フッ素重合体を含むフォトレジスト組成物に関する。
【背景技術】
大規模集積回路(LSI)の高集積化の必要性が高まるにつれて、フォトリソグラフィー技術において微細加工技術が求められている。この要求に対して、従来のg線(波長436nm)やi線(波長365nm)よりも短波長である遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)を露光光源として利用することが試みられており、実用化されつつある。
最近、さらなる超微細加工技術として真空紫外領域のF2レーザー光(波長157nm)を利用したプロセスが検討されつつあり、今後のテクノロジーノード0.07μmを目指した露光技術として有望視されている。
このような従来のフォトリソグラフィーに用いられるレジスト用樹脂の例としては、フェノール性樹脂の水酸基の一部または全部をアセタールやケタールなどの保護基で保護したもの(KrFレジスト)、メタクリル酸系樹脂のカルボキシル基に酸解離性のエステル基を導入したもの(ArFレジスト)などがあげられる。
しかしながら、これら従来のレジスト用重合体は、真空紫外の波長領域では強い吸収をもち、より超微細パターン化プロセスとして利用が検討されている波長157nmのF2レーザー光において透明性が低い(吸光係数が大きい)という根本的な問題がある。したがって、F2レーザーで露光するためにはレジストの膜厚を極端に薄くする必要があり、事実上、単層のF2レジストとしての使用は困難である。
そこで、F2レーザー光に対して透明性が高いフッ素重合体を用いたレジストの検討が行なわれている。
その中でも、テトラフルオロエチレンなどで代表される炭素数2または3のフルオロオレフィンを共重合したフッ素重合体および/または主鎖に環構造を有する含フッ素重合体が、透明性およびドライエッチング耐性の両面で好ましく、レジスト重合体として有用である。
これらのフッ素系レジストとして、酸で反応する官能基を有するレジスト用含フッ素重合体、それを利用したレジスト組成物が提案されている(たとえば国際公開第00/17712号パンフレット、国際公開第00/67072号パンフレット、国際公開第01/74916号パンフレット参照)。
これら特許文献においては、テトラフルオロエチレンに代表されるフルオロオレフィンとノルボルネン(またはノルボルネン誘導体)に代表される脂環式単量体との共重合体が具体的に記載されており、その製造方法はフルオロオレフィンと脂環式単量体とをパーオキシジカーボネート類の有機パーオキサイドを重合開始剤に用いてラジカル重合するのもである。
しかしながら、これら記載の製造方法で得られる含フッ素重合体の真空紫外領域での透明性において不充分なものであった。
また、一方フッ素を含むポリマーはそれ自体元来、撥水性が高く、露光後の現像液の溶解性が悪くなり易く、結果的に現像特性、解像度が悪いものになり易かった。
本発明者らは、これら問題点を鑑みて鋭意研究し、フルオロオレフィンや主鎖に環構造を形成する単量体をラジカル(共)重合して酸反応性基を有するフォトレジスト用含フッ素重合体を得る際、特定のラジカル重合開始剤を用いてラジカル(共)重合することにより、フォトレジスト用含フッ素重合体が効率的に得られ、しかも含フッ素重合体のF2レーザー光における透明性が向上することを見出した。
また、露光後の現像液への溶解特性が飛躍的に向上することも同時に見出し、現像特性、解像度などが改善されることを見出した。
さらに、レジスト用含フッ素重合体の上記製造方法はレジスト用に限らず、主鎖に環構造を形成する単量体の重合にも有効であることを見出した。
本発明の第1の目的は、主鎖に環構造を形成する単量体、さらに要すれば他の共単量体を特定のラジカル重合開始剤を用いてラジカル(共)重合することにより特定の含フッ素重合体を製造する方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、フルオロオレフィンや主鎖に環構造を形成する単量体、さらに要すれば他の共単量体を特定の類のラジカル重合開始剤を用いてラジカル(共)重合することにより、F2レーザー光における透明性に優れた含フッ素重合体、特にレジスト用含フッ素重合体を製造する方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、フルオロオレフィンや主鎖に環構造を形成する単量体、さらに要すれば他の共単量体を別の面からみた特定の類のラジカル重合開始剤を用いてラジカル(共)重合することにより、F2レーザー光における透明性に優れた含フッ素重合体、特にレジスト用含フッ素重合体を製造する方法を提供することにある。
本発明の第4の目的は、かかる製造方法で得られた真空紫外光における現像特性に優れたレジスト用含フッ素重合体を含むフォトレジスト組成物、特にF2用のフォトレジスト組成物を提供することにある。
【発明の開示】
本発明の第1は、重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得るフッ素原子を含んでいてもよい単量体(m1)に由来する構造単位(M1)を有する含フッ素重合体を得るにあたり、該重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得る単量体(m1)を式(1−1):

(式中、Rは水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素数3以上の1価の炭化水素基または水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素原子と酸素原子の合計が3以上のエーテル結合を含んだ1価の炭化水素基から選ばれ、かつR中の炭素原子またはエーテル結合を含む場合は炭素原子と酸素原子を炭素原子をCから数えたとき、第4番目の原子の少なくとも1つが炭素原子であって、その炭素原子に水素原子が少なくとも1個以上結合してなる炭化水素基;X、Xは同じかまたは異なる水素原子、ハロゲン原子、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されていても良い炭素数1〜10の炭化水素基)、
または式(1−2):

(式中、R’は水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素数4以上の2価の炭化水素基または水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素原子と酸素原子の合計が4以上のエーテル結合を含んだ2価の炭化水素基から選ばれ、かつR’中の炭素原子またはエーテル結合を含む場合は炭素原子と酸素原子を炭素原子Cから数えたとき、第4番目の原子の少なくとも1つが炭素原子であって、その炭素原子に水素原子が少なくとも1個以上結合してなる炭化水素基;Xは水素原子、ハロゲン原子、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されていても良い炭素数1〜10の炭化水素基;nは0または1)で示される構造単位を有する有機パーオキサイド(以下、「第1の類の有機パーオキサイド」という)を用いてラジカル重合することを特徴とする含フッ素重合体の製造方法に関する。
本発明の第2は、炭素数2または3のエチレン性単量体であって少なくとも1個のフッ素原子を有する含フッ素エチレン性単量体(m2)に由来する構造単位(M2)および/または重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得るフッ素原子を含んでいてもよい単量体(m3)に由来する構造単位(M3)を有し、かつ重合体中に酸で反応する酸反応性基Yまたは酸反応性基Yに変換可能な基Yを有する含フッ素重合体を得るに当たり、該含フッ素エチレン性単量体(m2)および/または該重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得る単量体(m3)を上記式(1−1)または(1−2)に記載の構造単位を含む第1の類の有機パーオキサイドを用いてラジカル重合することを特徴とするレジスト用含フッ素重合体の製造方法に関する。
本発明の製造方法によれば、重合反応が速やかに進み高分子量化が可能なだけでなく、加えて、真空紫外領域の光線に対する透明性と現像特性に優れている含フッ素重合体を与える。
本発明の第3は、炭素数2または3のエチレン性単量体であって少なくとも1個のフッ素原子を有する含フッ素エチレン性単量体(m2)に由来する構造単位(M2)および/または重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得るフッ素原子を含んでいてもよい単量体(m3)に由来するの構造単位(M3)を有し、かつ重合体中に酸で反応する酸反応性基Yまたは酸反応性基Yに変換可能な基Yを有する含フッ素重合体を得るに当たり、該含フッ素エチレン性単量体(m2)および/または該重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得る単量体(m3)を式(1):

(式中、R50、R51は同じかまたは異なり炭素数1〜30のエーテル結合を含んでも良い炭化水素基(ただし、結合末端の原子は酸素原子ではない)、p1、p2は同じかまたは異なる0または1、p3は1または2)で示される有機パーオキサイド(以下、「第2の類の有機パーオキサイド」という)を用いてラジカル重合することを特徴とする真空紫外光の透明性に優れたレジスト用含フッ素重合体の製造方法に関する。
本発明の第4は、(A−1)OH基、酸でOH基に変換できる酸解離性官能基、COOH基、または酸で解離してCOOH基に変化させることができる酸解離性官能基の少なくとも1種の酸反応性基Yを有する含フッ素重合体、
(B)光酸発生剤、および
(C)溶剤
からなる組成物であって、該含フッ素重合体(A−1)が、本発明の第2または第3の製造方法で得られるレジスト用含フッ素重合体であるフォトレジスト組成物に関する。
かかるフォトレジスト組成物は、真空紫外光の透明性と現像特性(特に現像液への溶解性)に優れたレジスト膜を与え、超微細加工プロセスで使用する場合に特に有用なフォトレジスト組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の第1の製造方法によって製造される含フッ素重合体(以下、「第1の含フッ素重合体」という)は、重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得るフッ素原子を含んでいてもよい単量体(m1)に由来する構造単位(M1)を有する含フッ素重合体である。また、単量体(m1)と共重合可能な任意の共単量体(n1)に由来する構造単位(N1)をさらに含んでいてもよい。
なお、本発明で得られる第1の含フッ素重合体中のフッ素原子は、単量体(m1)に由来するものには限られず、他の任意の共単量体(n1)に由来するものであってもよい。すなわち、単量体(m1)は共単量体(n1)として含フッ素単量体を使用する場合は、フッ素原子を含んでいなくてもよい。
また、本発明の第2の製造方法によって製造される含フッ素重合体(以下、「第2の含フッ素重合体」という)は、炭素数2または3のエチレン性単量体であって少なくとも1個のフッ素原子を有する含フッ素エチレン性単量体(m2)に由来する構造単位(M2)および/または重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得るフッ素原子を含んでいてもよい単量体(m3)に由来する構造単位(M3)を有し、かつ重合体中に酸で反応する酸反応性基Yまたは酸反応性基Yに変換可能な基Y(以下、「酸反応性基変換基Y」ということもあり、YとYを併せて「酸反応性官能基Y」ということもある)を有する含フッ素重合体であり、任意の共単量体(n2)に由来する構造単位(N2)をさらに含んでいてもよい。
同様に本発明で得られる含フッ素重合体中のフッ素原子は、単量体(m2)または単量体(m3)に必ず由来するものとは限らず、他の任意の共単量体(n2)に由来するものであってもよい。すなわち、単量体(m2)および/または(m3)は、共単量体(n2)として含フッ素単量体を使用する場合は、フッ素原子を含んでいなくてもよい。
本発明の第3の製造方法によって製造される含フッ素重合体(以下、「第3の含フッ素重合体」という)は、含フッ素エチレン性単量体(m2)に由来する構造単位(M2)および重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得るフッ素原子を含んでいてもよい単量体(m3)に由来するの構造単位(M3)のいずれか一方または両方を含み、かつ重合体中に酸反応性基Yまたは酸反応性基変換基Yを有する含フッ素重合体である。また、任意の構造単位(N2)をさらに含んでいてもよい。
なお、本発明で得られる第3の含フッ素重合体中のフッ素原子は、単量体(m2)または単量体(m3)に必ず由来するものとは限らず、他の任意の共単量体に由来するものであってもよい。すなわち、単量体(m2)および/または(m3)は、共単量体(n2)として含フッ素単量体を使用する場合は、フッ素原子を含んでいなくてもよい。
重合体中に酸反応性官能基Yを導入する方法としては、詳しくは後述するが、
(I)単量体(m2)および/または単量体(m3)として酸反応性官能基Yを有する単量体を共重合する方法、
(II)単量体(m2)および(m3)以外の単量体であって、酸反応性官能基Yを有する単量体(n2−1)を共重合する方法
などがあげられる。
以下、まず第1の類のラジカル重合開始剤、ついで第2の類のラジカル重合開始剤について説明し、さらにラジカル重合する各単量体について具体的に説明する。
本発明の第1および第2の製造方法は、上記の第1および第2の含フッ素重合体を得る際、式(1−1):

(式中、Rは水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素数3以上の1価の炭化水素基または水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素原子と酸素原子の合計が3以上のエーテル結合を含んだ1価の炭化水素基から選ばれ、かつR中の炭素原子またはエーテル結合を含む場合は炭素原子と酸素原子を炭素原子をCから数えたとき、第4番目の原子の少なくとも1つが炭素原子であって、その炭素原子に水素原子が少なくとも1個以上結合してなる炭化水素基;X、Xは同じかまたは異なる水素原子、ハロゲン原子、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されていても良い炭素数1〜10の炭化水素基)、
または式(1−2):

(式中、R’は水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素数4以上の2価の炭化水素基または水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素原子と酸素原子の合計が4以上のエーテル結合を含んだ2価の炭化水素基から選ばれ、かつR’中の炭素原子またはエーテル結合を含む場合は炭素原子と酸素原子を炭素原子Cから数えたとき、第4番目の原子の少なくとも1つが炭素原子であって、その炭素原子に水素原子が少なくとも1個以上結合してなる炭化水素基;Xは水素原子、ハロゲン原子、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されていても良い炭素数1〜10の炭化水素基;nは0または1)で示される構造単位を有する第1の類の有機パーオキサイドを用いてラジカル重合することを特徴とする。
かかる第1の類の有機パーオキサイドを使用することにより、フッ素系単量体のラジカル重合反応性が向上し、しかも驚くべきことにポリマー自体の親水性が向上し、特に酸反応性官能基Yを有する含フッ素重合体(露光後または保護基が脱離したもの)の現像液への溶解性が向上する。
言い換えれば、式(1−1)および(1−2)においてCに結合した炭化水素基R、R’を特定の構造にすることにより、重合後の含フッ素ポリマーの親水性が改善し、特にレジスト用途としたとき現像液に対する溶解性(露光後)が向上することを見出した。
つまりRおよびR’中の炭素−炭素結合または炭素−酸素結合に着目し、炭素原子Cから数えて第4番目の原子が炭素原子であって、その炭素原子に水素原子が結合していることを特徴とする。
式(1−1)は、例えば

また、

などの構造単位を少なくとも有するものを表している。
ここで、式(1−1)に示す構造単位において、Rが「R中の炭素原子またはエーテル結合を含む場合は炭素原子と酸素原子を炭素原子Cから数えたとき、第4番目の原子の少なくとも1つが炭素原子であって、その炭素原子に水素原子が少なくとも1個以上結合してなる炭化水素基」である必要性は、つぎのメカニズムを利用するためである。
すなわち、上記構造の特定の位置(C)に水素原子を有すると、一旦有機パーオキサイドから発生した

の一部が、Cに結合した水素原子を容易に引き抜くと考えられ、
・C−C−C−C−OH(炭素ラジカル)へと変化し、Cに転移したラジカルにより重合が開始または停止するため、得られる含フッ素重合体の末端にOH基が自動的に導入でき、親水性が格段に向上すると考えられる。
このメカニズムは、式(1−2)で示す構造単位においても同様に生ずる。
式(1−1)は1価の炭化水素RがCに直接結合したものを示しており、R自体は直鎖状、分岐状、または環構造を含むものであっても良い。
一方、式(1−2)はCも含めて、2価の炭化水素R’を介して少なくとも一部分に環構造を形成したものを示している。
式(1−2)において、Cも含めて2価の炭化水素R’を介して形成される環構造はなかでも5員環、または6員環の構造であることが好ましい。
さらに第1の類の有機パーオキサイドは、式(1−1)における炭素原子Cに結合したR中の原子から数えて隣接する3番目の炭素原子を含む原子団の少なくとも1つがメチル基であること、言い換えると炭素原子Cに結合したR中の原子から数えて隣接する2番目の炭素原子(または酸素原子)にメチル基が結合していることが好ましく、なかでも具体的には上記式(1−1)におけるRが、式(1−1a):

または式(1−1b):

(式中、R、R、R、Rは同じかまたは異なり水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基、Rは炭素数1〜10の二価の炭化水素基)であることが好ましい。
式(1−1a)で表されるRは具体的には、

などが例示できる。
式(1−1b)で表されるRは具体的には、

などがあげられる。
式(1−2)におけるCを含めたR’の構造は具体的には、

などがあげられる。
式(1−1)、(1−2)におけるX、Xは水素原子、ハロゲン原子、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されていても良い炭素数1〜10の炭化水素基から選ばれるものであり、好ましくは水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基から選ばれ、特に水素原子またはメチル基であることが好ましい。
上記の構造単位を有する第1の類の有機パーオキサイドであれば、いかなるものでも利用することができるが、具体的には、有機パーオキサイドとしては、オキシパーエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類から選ばれる1種または2種以上が好ましい。
これらの第1の類の有機パーオキサイド類は真空紫外領域での透明性においても向上できる点で好ましく、さらに本発明の特定の構造を選択することでポリマーに親水性を付与でき、結果的にレジスト用途とした場合、現像特性を改善できる点で好ましい。
また、含フッ素エチレン性単量体(m2)を用いて単量体(m2)由来の構造単位を有するポリマーを製造する際は、10時間半減期温度で5〜130℃の第1の類の有機パーオキサイドを使用することが好ましく、なかでも10時間半減期温度で15〜100℃、特には30〜80℃のものを使用するのが、重合反応性が良好な点で好ましい。
重合反応性が良好な点で、また得られる含フッ素ポリマーの真空紫外領域での透明性が良好な点で、オキシパーエステル類が好ましい。
オキシパーエステル類としては、式:

または

(式中、R、R’、X、Xは前記と同じ、Rは水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素数1〜20の1価の炭化水素基または水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素数1〜20のエーテル結合を含んだ1価の炭化水素基から選ばれるもの)であるものが好ましい。
R、R’、X、Xについて、またそれらを含めた構造単位の好ましい具体例は前述のものが同様に好ましくあげられる。
本発明の第1および第2の製造方法において、使用するオキシパーエステル類の好ましくは、

特に好ましくは

などが具体的にあげられる。
本発明の第3の製造方法は、上記の含フッ素重合体を得る際、式(1):

(式中、R50、R51は同じかまたは異なり炭素数1〜30のエーテル結合を含んでも良い炭化水素基(ただし、結合末端の原子は酸素原子ではない)、p1、p2は同じかまたは異なる0または1、p3は1または2)で示される第2の類の有機パーオキサイドを用いてラジカル重合することを特徴とする。
かかる第2の類の有機パーオキサイドを使用することにより、フッ素系単量体のラジカル重合反応性が向上し、さらに真空紫外領域での吸収が小さな原子団をポリマー末端に付与できるため真空紫外領域の透明性がさらに向上する。
さらには、ポリマー自体の親水性も向上し、特に酸反応性官能基Yを有する含フッ素重合体(露光後または保護基が脱離したもの)の現像液への溶解性が向上することも見いだせた。
式(1)の第2の類の有機パーオキサイドにおけるp3が1であって、かつp1、p2のいずれか一方が1であり、かつR50、R51のいずれか一方が炭素数5以上のエーテル結合を含んでも良い炭化水素基、またはp3が1であって、かつp1=p2=1である炭化水素基、またはR50、R51のいずれかの少なくとも一方が炭素数5以上の炭化水素基であって、かつ脂肪族環構造を含む炭化水素基、またはR50、R51のいずれかの少なくとも一方にOH基またはCOOH基の少なくとも1種などの親水性の官能基を含有する炭化水素基であることが好ましい。
また、式(1)中のR50、R51は同じか異なっても良い炭素数1〜30のエーテル結合を含んでも良い炭化水素基(ただし、結合末端の原子は酸素原子ではない)から選ばれるものであって、フッ素原子やその他ハロゲン原子を含まないものである。なかでも飽和脂肪族炭化水素基(炭素−炭素二重結合や芳香族基を含まない)であることが透明性の面で好ましい。
具体的には、炭素数1〜30の直鎖または分岐状のアルキル基、脂肪族環状構造を有するアルキル基から選ばれる。
なかでも、R50、R51の少なくとも一方に脂肪族環状構造を有するアルキル基であることがドライエッチング耐性を改善できる点で好ましい。
具体的には、


などがあげられる。
直鎖状または分岐状のアルキル基としては、

などが好ましくあげられる。
また、R50、R51は部分的に水素が親水性を付与できる官能基に置換されていても良い。
これらの置換された官能基の効果によって、ポリマー自体の親水性が向上し、特に酸反応性官能基Yを有する含フッ素重合体(露光後または保護基が脱離したもの)の現像液への溶解性が改善できる点で好ましい。
親水性の官能基としては、OH基、COOH基、SOH基、などが挙げられるが、好ましくはOH基、COOH基である。
50(またはR51)としては、例えば、−CHCHCOOHなどが好ましくあげられる。
式(1)の第2の類の有機パーオキサイドとしては、ジアシルパーオキサイド類(式(1)におけるp1=p2=1)、オキシパーエステル類(p1のいずれか一方が1)、パーオキシケタール類(p1=p2=1、p3=2)、ジアルキルパーオキサイド類(p1=p2=0)から選ばれる1種または2種以上が好ましい。ただし、式(1)におけるR50およびR51を結合末端の原子が酸素原子ではないと定義しているように、パーオキシジカーボネート類は含まない。
なかでもオキシパーエステル類(p1のいずれか一方が1)がより好ましく、ラジカル重合反応性を促進でき、得られる重合体の真空紫外領域での透明性をより一層改善できる点で好ましい。
またさらにポリマー自体の親水性も向上し、特に酸反応性官能基Yを有する含フッ素重合体(露光後または保護基が脱離したもの)の現像液への溶解性が向上する点で好ましい。
これらオキシパーエステル類の中でも、特にR50、R51のいずれか一方が炭素数5以上の炭化水素基であることが、エッチング耐性が良好な点で好ましい。
具体的には、

などのアルキル基を有するオキシパーエステル類が好ましい。
またさらには、R50、R51のいずれか一方が脂肪族環状構造を有するアルキル基であることがドライエッチ耐性を改善できる点で好ましく、前述の脂肪族環状構造を有するアルキル基の例示のものが同様に好ましく利用でき、例えば、

などが好ましくあげられる。
オキシパーエステル類の具体例としては、


などが好ましくあげられる。
式(1)の第2の類の有機パーオキサイド類においてもう一つの好ましくは、ジアシルパーオキサイド類(式(1)におけるp1=p2=1)であり、これらによると得られる重合体の真空紫外領域での透明性をより改善できる点で好ましい。
ジアシルパーオキサイド類においてR50、R51の好ましくは前述の有機パーオキサイドにおけるR50、R51の例示と同様のものが好ましくあげられる。
ジアシルパーオキサイド類の好ましい具体例は、


また、さらにパーオキシケタール類(p1=p2=1、p3=2)も利用可能であり、これらによって重合体の真空紫外領域での透明性をより改善できる。
パーオキシケタール類(p1=p2=1、p3=2)の具体例としては、

があげられる。
また、本発明の含フッ素エチレン性単量体(m2)を用いて単量体(m2)由来の構造単位を有するポリマーを製造する際、式(1)の第2の類の有機パーオキサイドのなかで10時間半減期温度で5〜130℃の有機パーオキサイドを使用することが好ましく、なかでも10時間半減期温度で15〜100℃、特には30〜80℃のものを使用するのが、重合反応性が良好な点で好ましい。
つぎに、かかる第1の類および第2の類の有機パーオキサイドを使用してラジカル重合する各単量体について説明する。
本発明の第1の製造方法で使用する単量体(m1)の好ましいものは、第2および第3の製造方法における単量体(m3)と同じものであり、また、共単量体(n1)は第2および第3の方法における単量体(m2)および/または共単量体(n2)であってもよい。
したがって、まず本発明により製造する第2の含フッ素重合体または第3の含フッ素共重合体、つまりレジスト用途に用いる含フッ素重合体の各単量体成分、脂肪族環構造を与えうる単量体(m3)、ついで含フッ素エチレン性単量体(m2)、任意の共単量体(n2)、さらに重合体中に酸で反応する酸反応性基Yまたは酸反応性基Yに変換可能な基Yについて説明し、最後に単量体(m3)以外の第1の製造方法で使用可能な単量体(m1)について言及する。なお、以下、第2の製造法に代表させて説明するが、これらの説明は第3の製造法にも共通するものである。
まず、重合体主鎖に脂肪族環構造の構造単位(M3)を与え得るフッ素原子を含んでいてもよい単量体(m3)について説明する。
かかる単量体(m3)は、レジスト用途に用いた場合ドライエッチング耐性を向上させる脂肪族環構造の構造単位(M3)を重合体主鎖中に導入することができる。この効果と上記の真空紫外領域の透明性の改善効果とが合さって、本発明の製法により得られる主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素重合体は、F2レーザー用レジストに特に好ましいものである。
単量体(m3)は、ラジカル重合性の炭素−炭素不飽和結合を環構造中に有する不飽和環状化合物から選ばれるものであってもよいし、ジエン化合物の環化重合により主鎖に環構造を形成させることができる非共役ジエン化合物から選ばれるものであってもよい。
また単量体(m3)は、その単量体中に酸反応性官能基Yを有していてもよいし有していなくてもよい。
この単量体(m3)を(共)重合することによって、主鎖に単環構造または複環構造の脂肪族環構造単位を有する重合体を得ることができる。
単量体(m3)の好ましい第1は、ラジカル重合性の炭素−炭素不飽和結合を環構造中に有し、かつ酸反応性官能基Yを有しない単環状の単量体(m3−1)であり、環構造中にエーテル結合を含んでもよい3員環〜8員環構造の脂肪族不飽和炭化水素化合物であることが好ましい。
単量体(m3−1)は、具体的には、

などが好ましくあげられる。
さらに、これら単量体(m3−1)の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された単量体であってもよく、たとえば、

などが好ましくあげられる。
単量体(m3)の好ましい第2は、単環状の脂肪族不飽和炭化水素化合物に酸反応性官能基Yを有する単量体(m3−2)であり、環構造中にエーテル結合を含んでもよい3員環〜8員環構造の不飽和炭化水素化合物であることが好ましい。また前述と同様、単量体(m3−2)の水素原子の一部またはすべてがフッ素原子で置換された単量体であってもよい。
酸反応性官能基Yを有する単環状の単量体(m3−2)は、具体的には、

などの単量体があげられる。
単量体(m3)の好ましい第3は、重合体主鎖中に脂肪族複環構造を有する構造単位を与え、かつ酸反応性官能基Yを有しない脂肪族複環構造を有する単量体(m3−3)である。好ましい単量体(m3−3)はノルボルネン誘導体である。
酸反応性官能基Yを有していない脂肪族複環構造を有する単量体(m3−3)は、具体的には、

などがあげられる。
上記例示のノルボルネン類の環構造にフッ素原子を導入したものであってもよく、フッ素原子を導入することによりドライエッチング耐性を低下させずに透明性を向上できる。
具体的には、式:

(式中、A、B、DおよびD’は同じかまたは異なり、いずれもH、F、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10の含フッ素アルキル基;mは0〜3の整数。ただし、A、B、D、D’のいずれか1つはフッ素原子を含む)で示される含フッ素ノルボルネンであり、具体的には、

などで示される含フッ素ノルボルネンがあげられる。
そのほか、

などのノルボルネン誘導体もあげられる。
単量体(m3)の好ましい第4は、重合体主鎖中に脂肪族複環構造を有する構造単位を与え、かつ酸反応性官能基Yを有する脂肪族複環構造を含む単量体(m3−4)である。好ましい単量体(m3−4)はノルボルネン誘導体である。
酸反応性官能基Yを有している脂肪族複環構造を含む単量体(m3−4)は、具体的には、

などがあげられる。
さらに酸反応性官能基Yを有する脂肪族複環構造を含む単量体(m3−4)は、環構造に結合した水素原子の一部またはすべてをフッ素原子に置換したものであってもよく、このものは重合体にさらなる透明性を付与できる点で好ましい。
具体的には、

(式中、A、BおよびDは同じかまたは異なり、いずれもH、F、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基;Rは炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;aは0〜5の整数;bは0または1。ただし、bが0またはRがフッ素原子を含まない場合はA、B、Dのいずれか1つはフッ素原子またはエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基である)で表わされる含フッ素ノルボルネン誘導体があげられる。
これらのなかでも、A、B、Dのいずれかがフッ素原子であることが好ましく、またはA、B、Dにフッ素原子が含まれない場合はRのフッ素含有率が60重量%以上であることが好ましく、さらにはパーフルオロアルキレン基であることが、重合体に透明性を付与できる点でさらに好ましい。
フッ素含有率は、19F−NMRおよびH−NMRの測定から後記の装置および測定条件を使って、ポリマーの組成を解析し、フッ素含有率を算出する方法を一般的に用いることができる。構造解析が困難である場合はフッ素元素分析法(濾紙(東洋濾紙:No.7)にてサンプル2mgと助燃剤(過酸化ソーダ10mg)を包み、その後白金バスケットにそれを入れ、25mlの純水で満たした500mlのフラスコ内で燃焼させる。燃焼後直ぐに、フラスコを振り純水にフッ素イオンを吸収させ、フッ素イオン電極にて吸収させた純水中のフッ素イオンを分析する方法)によって求める。
具体的には、

などで示されるノルボルネン誘導体があげられる。
さらに、

(式中、A、BおよびDは同じかまたは異なり、いずれもH、F、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基;Rは炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;aは0〜5の整数;bは0または1)で表わされる含フッ素ノルボルネン誘導体があげられる。
具体的には、

などのノルボルネン誘導体が好ましくあげられる。
またさらに、酸反応性官能基Yを有する脂肪族複環構造を含む単量体(m3−4)の好ましいものとして、式:

(式中、Rf、Rfは同じかまたは異なり、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基またはエーテル結合を有する含フッ素アルキル基;A、B、Dは同じかまたは異なり、いずれもH、F、Cl、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキル基;RはHまたは炭素数1〜10のアルキル基;nは0〜5の整数)で示される含フッ素ノルボルネン誘導体があげられる。
具体的には、たとえば

などがあげられる。
より具体的には、

などが好ましくあげられる。
その他、式:

(式中、Rf、Rfは同じかまたは異なり、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基またはエーテル結合を有する含フッ素アルキル基;B、Dは同じかまたは異なり、いずれもH、F、Cl、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキル基;RはHまたは炭素数1〜10のアルキル基;nは0〜5の整数)で示されるノルボルネン誘導体もあげられる。
これら例示の脂肪族複環構造を含む単量体(m3−3)、(m3−4)は、重合体にドライエッチ耐性を付与できる点で、特にレジスト用重合体の原料として好ましい。また、本発明の製造方法により、効率的にラジカル重合法で重合体を製造でき、効果的に透明性を改善できる点でも好ましい。特にフッ素原子を複環構造に含むノルボルネン誘導体は、透明性の点で好ましくかつ本発明の製造方法により、効率的にラジカル重合法で重合体を製造でき、効果的に透明性を改善できる点でも好ましい。
また、酸反応性官能基Yを有するノルボルネン誘導体(m3−4)は重合体に効率的にレジスト用途に必要な官能基を導入でき、結果的に透明性、ドライエッチング耐性において有利となるため好ましい。
単量体(m3)の好ましい第5は、重合により脂肪族環構造を形成し得るフッ素原子を有していてもよい非共役のジエン化合物(m3−5)である。非共役ジエン化合物(m3−5)は、主鎖中に環構造の構造単位を有する重合体を効率よく与えることができ、前述と同様、真空紫外領域の透明性も改善できるものである。
非共役ジエン化合物(m3−5)としては、たとえば環化重合し主鎖に単環構造を与える特定のジビニル化合物が好ましくあげられる。
具体例としては、たとえばフッ素原子や酸反応性官能基Yを有していてもよい式:



(式中、ZおよびZは同じか異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜5のエーテル結合を有していてもよい炭化水素基、炭素数1〜5のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基)で示されるジアリル化合物があげられる。
このジアリル化合物をラジカル環化重合することにより、



(式中、Z、Zは前記と同じ)で示される主鎖中に単環状の構造単位を形成することができる。
これらの環化ラジカル重合においても、本発明の式(1−1)、(1−2)の構造単位を含む第1の類の有機パーオキサイドまたは式(1)の第2の類の有機パーオキサイドを使用することによって効率よく環状構造を有する含フッ素重合体を得ることができ、前述と同様、真空紫外領域の透明性も改善できるものである。
ここで酸反応性官能基Yについて説明する。酸反応性官能基Yは前記のとおり、酸反応性基Yと酸反応性基Yに変換可能な酸反応性基変換基Yの総称である。
本発明において酸反応性基Yは、酸解離性または酸分解性の官能基および酸縮合性の官能基のことをいう。
▲1▼酸解離性または酸分解性の官能基:
酸解離性または酸分解性の官能基は、酸と反応する前はアルカリに不溶または難溶であるが酸の作用により、アルカリに可溶化させることができる官能基である。このアルカリへの溶解性の変化により、ポジ型のレジストのベース重合体として利用できるものになる。
具体的には、酸またはカチオンの作用により−OH基、−COOH基、−SOH基などに変化する能力をもち、その結果、含フッ素重合体自体がアルカリに可溶になるものである。
酸解離性または酸分解性の官能基は、具体的には、

(式中、R、R、R、R10、R11、R12、R14、R18、R19、R20、R21、R22、R24、R25、R26、R27、R28、R29は同じかまたは異なり、炭素数1〜10の炭化水素基;R13、R15、R16は同じかまたは異なり、Hまたは炭素数1〜10の炭化水素基;R17、R23は同じかまたは異なり、炭素数2〜10の2価の炭化水素基)
が好ましく利用でき、さらに具体的には

などが好ましく例示される。
▲2▼酸縮合反応性の官能基:
酸縮合反応性の官能基は、酸と反応する前はアルカリ現像液(またはその他の現像用溶剤)に可溶であるが酸の作用により、重合体自体をアルカリ現像液(またはその他の現像用溶剤)に不溶にすることができる官能基である。
具体的には酸またはカチオンの作用による自己縮合、重縮合あるいは架橋剤の存在下、酸の作用による架橋剤との縮合反応または重縮合反応を起こす官能基、または酸やカチオンによる転位反応(たとえばピナコール転位、カルビノール転位)などで、極性変化を起こす官能基であって、いずれにしてもその結果、重合体自体はアルカリ現像液(またはその他の現像用溶剤)に不溶となるものである。
かかる不溶化によって、ネガ型のレジストのベース重合体として利用できるものである。
酸縮合性の官能基としては、−OH、−COOH、−CN、−SOH、エポキシ基などから選ばれるものが好ましい具体例である。
使用する場合、架橋剤としては特に制限なく、従来ネガ型レジストの架橋剤として慣用されているものの中から任意に選択して用いることができる。架橋剤としては、たとえばN−メチロール化メラミン、N−アルコキシメチル化メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物などが好ましい具体例である。
以上の酸反応性基Yのなかでも、OH基、酸でOH基に変換できる酸解離性官能基、COOH基、酸で解離してCOOH基に変化させることができる酸解離性官能基の少なくとも1種が好ましい。
酸でOH基に変換できる酸解離性官能基としては、

(式中、R31、R32、R33およびR34は同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜5のアルキル基)で示される基が好ましくあげられる。
より具体的には、

が好ましく例示でき、なかでも酸反応性が良好な点で、

が好ましく、さらに透明性が良好な点で、−OC(CH、−OCHOCH、−OCHOCが好ましい。
酸で−COOH基に変換できる酸解離性官能基としては、

(式中、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R46、R47、R48は同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜10の炭化水素基;R43、R44は同じかまたは異なり、いずれもHまたは炭素数1〜10の炭化水素基;R45は炭素数2〜10の2価の炭化水素基)などがあげられ、より詳しくは

などが好ましくあげられる。
これらの酸反応性基Yは、通常、酸反応性基Yを有する単量体を本発明の製造法に従って重合することで重合体に導入することができる。
または酸反応性基Yに変換できる酸反応性基変換基Yを有する単量体を本発明の製造法に従って重合し、重合体に導入した後、高分子反応によって目的の酸反応性基Yに変換することでも得られる。
高分子反応によって目的の酸反応性基Yに変換して導入する方法としては、たとえば式:

(式中、X、XはHまたはF;XはH、CHまたはCF;Rは炭素数1〜5のアルキル基または含フッ素アルキル基)で示されるビニルエステル化合物(酸反応性基変換基(エステル基)Yを有する単量体)を本発明の製造法によりm2および/またはm3と共重合することで酸反応性基変換基Yを有する含フッ素重合体を製造し、得られた含フッ素重合体の酸反応性基変換基Yをアルカリ加水分解させることでOH基(酸反応性基Y)に変換する方法などがあげられる。
本発明はこれら高分子反応のプロセスを経由して酸反応性基Yを有する含フッ素重合体を製造する方法も含むものである。
いずれの場合においても、本発明の製造法によると酸反応性基Yを有する含フッ素重合体を効率よく得ることができ、真空紫外領域の透明性や現像特性を改善できるものである。
酸反応性官能基Yを有する含フッ素重合体は、前記単量体(m2)のうち酸反応性官能基Yを有する単量体、脂肪族環構造を与え得る単量体のうち酸反応性官能基Yを有する単量体(m3−2)もしくは(m3−4)、酸反応性官能基Yを有する環化重合可能なジビニル化合物(m3−5)の少なくとも1種を特定の重合開始剤を用いてラジカル重合することで得られる。
または、単量体(m2)および(m3)として酸反応性官能基Yを有しない単量体を用いる場合、共単量体(n2)のうちで酸反応性官能基Yを有する単量体(n2−1)を単量体(m2)および(m3)に加えて共重合し、構造単位(M2)および/または(M3)に加え、酸反応性官能基Yを有する第3の構造単位(N2−1)を導入してもよい。
任意の構造単位(N2−1)に酸反応性官能基Yを導入できる単量体(n2−1)としては、共重合可能な酸反応性官能基Yを有するエチレン性単量体が好ましい。
具体的には、酸反応性官能基Yを有するアクリル系単量体、酸反応性官能基Yを有する含フッ素アクリル系単量体、酸反応性官能基Yを有するアリルエーテル系単量体、酸反応性官能基Yを有する含フッ素アリルエーテル系単量体、酸反応性官能基Yを有するビニルエーテル系単量体、酸反応性官能基Yを有する含フッ素ビニルエーテル系単量体などが好ましい。
より具体的には、
(メタ)アクリル酸、α−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、t−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル−α−フルオロアクリレート、t−ブチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、

式:

(式中、XおよびXは同じかまたは異なり、いずれもHまたはF;XはH、F、CHまたはCF;XはH、FまたはCF;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;aは0または1〜3の整数;bは0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体である。
なかでも式:

(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素アリルエーテル化合物が好ましい。
より具体的には、

などの含フッ素アリルエーテル化合物が好ましくあげられる。
また、式:

(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素ビニルエーテル化合物が好ましい。
より具体的には、

などの含フッ素ビニルエーテル化合物があげられる。
その他、酸反応性官能基Yを含有する含フッ素エチレン性単量体としては、

などの単量体があげられ、より具体的には、

などがあげられる。
つぎに第2の含フッ素重合体に構造単位(M2)を与える単量体(m2)は、重合性、特にラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1つ有する炭素数2または3の含フッ素エチレン性単量体であって少なくとも1個のフッ素原子を有する単量体である。
かかる含フッ素エチレン性単量体(m2)は重合性の炭素−炭素二重結合を1つ有するモノエン化合物であって、重合によっても主鎖中に環構造を有する構造単位は形成しない。
含フッ素エチレン性単量体(m2)は、その単量体中に酸反応性官能基Yを有していても有していなくてもよいが、通常、酸反応性官能基を有していない単量体を用いた方が、ラジカル重合反応性が良好な点で、また、より透明性を効果的に改善できる点で好ましい。
好ましい含フッ素エチレン性単量体(m2)としては、エチレンまたはプロピレンの水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換したものがあげられる。他の水素原子はフッ素原子以外のハロゲン原子に置換されていてもよい。
なかでもフッ素原子が炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子に少なくとも1個結合した単量体であることが好ましい。それによって、構造単位(M2)に、つまり重合体主鎖中にフッ素原子を導入でき、真空紫外領域において特に優れた透明性を与える含フッ素重合体が効果的に得られる。
具体的には、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、CH=CFCFから選ばれる少なくとも1種の単量体が好ましくあげられる。
なかでもテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンまたはヘキサフルオロプロピレンの少なくとも1種または2種以上の混合物であることが透明性の点で特に好ましく、とりわけテトラフルオロエチレンおよび/またはクロロトリフルオロエチレンが好ましい。
本発明の第2の製造法では、任意の共単量体(n2)として、ラジカル重合性の単量体を得られる第2の含フッ素共重合体に別異の特性、たとえば機械的強度や塗工性などを改善する目的で共重合してもよい。
そうした任意の単量体(n2)としては、上記共単量体(n2−1)のほか、他の構造単位(M2)および(M3)を構成するための単量体(m2)および(m3)と共重合できるものから選ばれる。
たとえば、
アクリル系単量体(ただしn2−1で記載の単量体は除く):

スチレン系単量体:

エチレン系単量体:

マレイン酸系単量体:

アリル系単量体:

アリルエーテル系単量体:

その他の単量体:

より具体的には、

などがあげられる。
以上に、第2の製造方法に使用する単量体について説明してきたが、前述のとおり、第3の製造法にも共通するものであり、さらに第1の製造方法において使用する単量体(m1)は単量体(m3)であり得るし、共単量体(n1)は第2の製造方法における単量体(m2)および/または共単量体(n2)であり得る。
ただし、フォトレジスト用重合体以外の用途の含フッ素重合体を製造する場合は、目的とする第1の含フッ素重合体は酸反応性官能基Yを有していてもいなくてもよい。
したがって、単量体(m1)としては、単量体(m3)以外に、たとえば

などであってもよく、また、共単量体(n1)は前記の単量体(m2)および共単量体(n2)のほか、

(式中、X10はH、F、Clから選ばれるもの;nは2〜10の整数)
などもあげられる。
前述の各例示の酸反応性官能基Yを有する単量体のうち酸反応性官能基Yのかわりに、例示以外の官能基Y10に変えたものであって、Y10が、ラジカル反応性の炭素−炭素二重結合を含む部位(例えばアクリロイル基、メタアクリロイル基、α−フロロアクリロイル基、ビニロキシル基など)、酸開環性の脂肪族環状エーテルを含む部位(エポキシ基、オキセタニル基など)、シアノ基、イソシアネート基などの硬化性の官能基やその他スルホン酸フルオライド基などである単量体などであってもよい。
第1の含フッ素重合体は、酸反応性官能基Yを有している場合は第2のレジスト用含フッ素重合体と同様にフォトレジスト組成物用の重合体として有用であり、酸反応性官能基を有していない場合は、親水性基であるOH基を末端に有していることから耐候性を必要とする塗料、コーティング剤、フィルムに用いて、基材との密着性改善や硬化剤や添加剤との相溶性の改善、耐熱性エンプラへの添加剤として用いて表面改質、分散性改善などの用途や目的に有用な重合体である。
またフッ素ポリマーの低屈折率性を利用した反射防止用コーティング剤の基材との密着性、塗布性、硬化剤やその他モノマー添加剤との相溶性の改善などの目的、用途に有用である。
本発明の第1の製造方法においては、重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得る単量体(m1)、および必要に応じて共単量体(n1)を、前記式(1−1)または(1−2)の構造単位を含む有機パーオキサイドを用いて、種々の公知の方法で(共)重合する。
本発明の第2および第3の製造方法においては、炭素数2または3のエチレン性単量体であって少なくとも1個のフッ素原子を有する単量体(m2)、または重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得る単量体(m3−1)〜(m3−5)、および必要に応じて、酸反応性官能基を有するエチレン性単量体(n2−1)を含む共単量体を、前記第1の類または第2の類の構造単位を含む有機パーオキサイドを用いて、種々の公知の方法で(共)重合する。
以下に具体的な好ましい重合条件を説明するが、使用する単量体に起因する特別の条件以外は第1の製造方法と第2および第3の製造方法とで特段の相違がないので、区分けせずに説明する。また、第1の類の有機パーオキサイドと第2の類の有機パーオキサイドを区分けする必要がない場合は単に有機パーオキサイドと記載している。
重合法としては、単量体を溶解させる有機溶媒中で行なう溶液重合法、水性媒体中で適当な有機溶剤の存在下または非存在下に行なう懸濁重合法、水性媒体に乳化剤を添加して行なう乳化重合法、無溶媒で行なうバルク重合法などを用いることができる。なかでも、有機溶剤を用いての溶液重合、懸濁重合が好ましい。
重合溶剤としては特に制限されないが、炭化水素系溶剤、フッ素系溶剤(フロン系)、塩素系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、エーテル系溶剤などが好ましく用いられる。
なかでもフッ素系溶剤、塩素系溶剤が、単量体や有機パーオキサイドの溶解性が良好な点、また重合反応を良好に進行させることもできる点で好ましい。具体的には、ハイドロフルオロカーボン類、ハイドロクロロカーボン類、フルオロクロロカーボン類、ハイドロクロロフルオロカーボン類から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
重合は、前記有機パーオキサイドを単量体と接触させ、熱を加える(有機パーオキサイド特有の温度で)か、光または電離放射線などの活性エネルギー線を照射することによって開始する。
生成する(共)重合体の組成は、仕込む単量体の組成によって制御可能である。
また分子量は、重合に用いる単量体の濃度や有機パーオキサイドの濃度、連鎖移動剤の濃度、温度によって制御することができる。
使用する単量体に対する特定の有機パーオキサイドの使用量は、単量体100重量部に対し0.005重量部以上で10重量部以下、好ましくは0.01重量部以上で5重量部以下、より好ましくは0.1重量部以上で1重量部以下である。別の観点からみれば、使用する単量体のモル量に対して有機パーオキサイドが0.01モル%以上で10モル%以下、好ましくは0.05モル%以上で5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以上で2モル%以下である。
有機パーオキサイドが少なすぎると、重合反応が充分に進行しにくく、未反応の単量体が残留したり、オリゴマー成分が生成し重合体の着色や透明性の低下が起き好ましくない。有機パーオキサイドが多すぎると重合体の分子量低下を起こし、透明性を低下させたり、未反応の有機パーオキサイドが残留するため重合体の着色や透明性低下を起こし、好ましくない。
本発明の有機パーオキサイドをラジカル重合開始剤として用いた重合における反応温度は、使用する有機パーオキサイドのそれぞれの10時間半減期温度に応じて、またさらに目標の反応時間に応じて適宜選択できるが、一般には0℃以上で150℃以下、好ましくは5℃以上で120℃以下、より好ましくは10℃以上で100℃以下である。
共重合する場合の単量体の組成は、各単量体の重合反応性、共重合反応比のほか、得られる含フッ素重合体に付与する特性に合わせて選定すればよい。各単量体が含フッ素重合体に与え得る特性は前述のとおりである。より具体的には後述する。
本発明の第1の製造方法で得られる第1の含フッ素重合体は、後述する第2および第3のレジスト用含フッ素重合体を含め、式(A):
−(M1)−(N1)−
(式中、M1は重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得るフッ素原子を含んでいてもよい単量体(m1)に由来する構造単位;N1は単量体(m1)と共重合可能な共単量体(n1)に由来する構造単位)で示される含フッ素重合体であって、構造単位(M1)と(N1)との組成割合は、通常100/0〜10/90モル%比、好ましくは80/20〜20/80モル%比、特に好ましくは70/30〜30/70モル%比である。
具体的な単量体(m1)および(n1)としては、前述のものがあげられる。
本発明の第2および第3の製造法により得られる第2および第3の含フッ素重合体は波長200nm以下の真空紫外領域の光に対して透明性が高く、したがってArFエキシマレーザー(193nm)やF2レーザー(157nm)を用いたフォトリソグラフィープロセスに特に有用なレジスト用重合体である。
本発明は、さらに
(A−1)OH基、酸でOH基に変換できる酸解離性官能基、COOH基または酸で解離してCOOH基に変化させることができる酸解離性官能基の少なくとも1種の酸反応性基Yを有する含フッ素重合体、
(B)光酸発生剤、および
(C)溶剤
からなる組成物に関し、
該含フッ素重合体(A−1)が本発明の第2または第3の製造方法で得られる重合体であるフォトレジスト組成物に関する。
本発明のフォトレジスト組成物では、酸反応性官能基YとしてOH基、酸でOH基に変換できる酸解離性官能基、COOH基または酸で解離してCOOH基に変化させることができる酸解離性官能基の少なくとも1種という特定の酸反応性基Yを有する含フッ素重合体(A−1)を使用する。
酸でOH基に変換できる酸解離性官能基および酸で−COOH基に変換できる酸解離性官能基としては、前述のものが採用できる。
特定の酸反応性基Yを有する含フッ素重合体(A−1)としては、つぎの重合体が好ましい。
(I)式:
−(M2)−(M3−2)−
(式中、M2は炭素数2または3のエチレン性単量体であって少なくとも1個のフッ素原子を有する単量体(m2)由来の構造単位;M3−2は単環状の脂肪族不飽和炭化水素化合物に酸反応性基Yを有するフッ素原子を有していてもよい単量体(m3−2)に由来する構造単位)で示される含フッ素重合体。
構造単位(M2)と(M3−2)との組成割合は、通常、80/20〜20/80モル%比、好ましくは70/30〜30/70モル%比、特に好ましくは60/40〜40/60モル%比である。
単量体の具体例としては、前述の単量体(m2)の具体例、および単量体(m3−2)の具体例のうち酸反応性官能基Yが酸反応性基Yであるものが好ましく例示できる。
(II)式:
−(M2)−(M3−4)−
(式中、M2は前記と同じ;(M3−4)は前述の酸反応性基Yを有する脂肪族複環構造含有単量体(m3−4)、特にノルボルネン誘導体由来の構造単位)で示される含フッ素重合体。
構造単位(M2)と(M3−4)との組成割合は、通常、80/20〜20/80モル%比、好ましくは70/30〜30/70モル%比、特に好ましくは60/40〜40/60モル%比である。
具体的な単量体としては、前述の単量体(m2)の具体例、および単量体(m3−4)の具体例のうち酸反応性官能基Yが酸反応性基Yであるものが好ましく例示できる。
これら(I)、(II)の含フッ素重合体はその重合体自体、透明性とドライエッチング耐性に優れており、また特定の重合開始剤を使用する本発明の製造法によりさらに真空紫外領域の透明性と現像特性が改善できる。
(III)式:
−(M2)−(M3−1)−(N2−1)−
(式中、M2は前記と同じ;M3−1は重合性の炭素−炭素不飽和結合を環構造中に有し酸反応性官能基Yを有していない単環状の単量体(m3−1)由来の構造単位;N2−1は酸反応性基Yを有する共重合可能なエチレン性単量体(n2−1)由来の構造単位)で示される含フッ素重合体。
構造単位(M2)と(M3−1)と(N2−1)との組成割合は、(M2)+(M3−1)+(N2−1)=100モル%とし、(M2)+(M3−1)/(N2−1)が通常、90/10〜20/80モル%比、好ましくは80/20〜30/70モル%比、特に好ましくは70/30〜40/60モル%比である。
具体的な単量体としては、前述の単量体(m2)および(m3−1)の具体例、および単量体(n2−1)の具体例のうち酸反応性官能基Yが酸反応性基Yであるものが好ましく例示できる。
(IV)式:
−(M2)−(M3−3)−(N2−1)−
(式中、M2、N2−1は前記と同じ;M3−3は酸反応性官能基Yを有していない脂肪族複環構造含有単量体(m3−3)、特にノルボルネン誘導体由来の構造単位)で示される含フッ素重合体。
構造単位(M2)と(M3−3)と(N2−1)との組成割合は、(M2)+(M3−3)+(N2−1)=100モル%とし、(M2)+(M3−3)/(N2−1)が通常、90/10〜20/80モル%比、好ましくは80/20〜30/70モル%比、特に好ましくは70/30〜40/60モル%比である。
具体的な単量体としては、前述の単量体(m2)および(m3−3)の具体例、および単量体(n2−1)の具体例のうち酸反応性官能基Yが酸反応性基Yであるものが好ましく例示できる。
(V)式:
−(M3−5)−(N2−1)−
(式中、N2−1は前記と同じ;M3−5は非共役のジビニル化合物を環化重合して得られる重合体主鎖に環構造を形成した構造単位)で示される含フッ素重合体。
構造単位(M3−5)と(N2−1)との組成割合は、通常、80/20〜20/80モル%比、好ましくは70/30〜30/70モル%比、特に好ましくは60/40〜40/60モル%比である。(M3−5)がYを含む場合は、通常、100/0〜20/80モル%比、好ましくは98/2〜60/40モル%比、特に好ましくは95/5〜80/20モル%比である。
具体的な単量体としては、前述の単量体(m3−5)の具体例、および単量体(n2−1)の具体例のうち酸反応性官能基Yが酸反応性基Yであるものが好ましく例示できる。
これら(III)、(IV)および(V)の含フッ素重合体は、その重合体自体、ドライエッチング耐性に優れており、また特定の重合開始剤を使用する本発明の製造法によりさらに真空紫外領域の透明性や現像特性が改善できる。
また、(I)〜(V)の酸反応性基Y含有含フッ素重合体は、重合開始末端に真空紫外領域での吸収が小さな原子団を有する点で従来のレジスト用含フッ素重合体と異なっており、特に真空紫外領域の透明性に優れている。
さらに、重合開始末端にOH基を導入できポリマー自体の親水性が向上し、現像特性にも優れている。
本発明のフォトレジスト組成物において、酸反応性基Yを有する含フッ素重合体(A−1)は157nm波長での透明性に優れており、なかでも157nmでの吸光係数がゼロであるのが理想であるが、2.0μm−1以下のもの、好ましくは1.5μm−1以下のもの、特に好ましくは1.0μm−1以下のもの、さらには0.5μm−1以下のものが好ましく、157nm波長での吸光係数が低くなればなるほどF2フォトレジスト組成物として用いて良好なレジストパターンを形成できる点で好ましい。
本発明のフォトレジスト組成物において、光酸発生剤(B)としては、国際公開公報第01/74916号パンフレットに記載の光酸発生剤(B)と同様のものが同様に好ましく例示でき、本発明でも有効に使用できる。
具体的には、光を照射することによって酸またはカチオンを発生する化合物であって、たとえば有機ハロゲン化合物、スルホン酸エステル、オニウム塩(特に中心元素がヨウ素、イオウ、セレン、テルル、窒素またはリンであるフルオロアルキルオニウム塩など)、ジアゾニウム塩、ジスルホン化合物、スルホンジアジド類など、またはこれらの混合物があげられる。
より好ましい具体例としては、つぎのものがあげられる。
(1)TPS系:

(式中、XはPF、SbF、CFSO、CSOなど;R1a、R1b、R1cは同じかまたは異なり、CHO、H、t−Bu、CH、OHなど)
(2)DPI系:

(式中、XはCFSO、CSO、CH−φ−SO、SbF

など;R2a、R2bは同じかまたは異なり、H、OH、CH、CHO、t−Buなど)
(3)スルホネート系:

(式中、R4a

など)
本発明のフォトレジスト組成物における光酸発生剤の含有量は、酸反応性基Yを有する含フッ素重合体(A−1)100重量部に対して0.1重量部以上で30重量部以下が好ましく、さらには0.2重量部以上で20重量部以下が好ましく、最も好ましくは0.5重量部以上で10重量部以下である。
光酸発生剤の含有量が0.1重量部より少なくなると感度が低くなり、30重量部より多く使用すると光酸発生剤が光を吸収する量が多くなり、光が基板まで充分に届かなくなって解像度が低下しやすくなる。
また本発明のフォトレジスト組成物には、上記の光酸発生剤から生じた酸に対して塩基として作用できる有機塩基を添加してもよい。有機塩基は国際公開第01/74916号パンフレットに記載のものと同様のものが好ましく例示でき、本発明でも有効に使用できる。
具体的には、含窒素化合物から選ばれる有機アミン化合物であり、たとえばピリジン化合物類、ピリミジン化合物類、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基で置換されたアミン類、アミノフェノール類などがあげられ、特にヒドロキシル基含有アミン類が好ましい。
具体例としては、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリアミルアミン、ピリジンなどが好ましくあげられる。
本発明のフォトレジスト組成物における有機塩基の含有量は、光酸発生剤の含有量に対して0.1モル%以上で100モル%以下が好ましく、さらに好ましくは、1モル%以上で50モル%以下である。0.1モル%より少ない場合は解像性が低くなり、100モル%よりも多い場合は低感度になる傾向にある。
その他、本発明のフォトレジスト組成物に、必要に応じて国際公開第01/74916号パンフレットに記載の添加物、たとえば、溶解抑制剤、増感剤、染料、接着性改良剤、保水剤などこの分野で慣用されている各種の添加剤を含有させることもできる。
また、本発明のフォトレジスト組成物において溶剤(C)は、国際公開公報第01/74916号パンフレットに記載の溶剤(C)と同様のものが同様に好ましく例示でき、本発明でも有効に使用できる。
具体的には、セロソルブ系溶剤、エステル系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、またはこれらの混合溶剤が好ましくあげられる。さらに含フッ素重合体(A−1)の溶解性を高めるために、CHCClF(HCFC−141b)、含フッ素炭化水素系溶剤やフッ素アルコール類などのフッ素系溶剤を併用してもよい。
これらの溶剤(C)の量は、溶解させる固形分の種類や塗布する基材、目標の膜厚、などによって選択されるが、塗布のし易さという観点から、フォトレジスト組成物の全固形分濃度が0.5重量%以上で70重量%以下、好ましくは1重量%以上で50重量%以下となるように使用するのが好ましい。
本発明のフォトレジスト組成物は、従来のフォトレジスト技術のレジストパターン形成方法において使用される。特にレジストパターン形成方法を好適に行なうには、まずシリコンウエーハのような支持体上にフォトレジスト組成物の溶液をスピンナーなどで塗布し、乾燥して感光層を形成させ、これに縮小投影露光装置などにより、紫外線、deep−UV、エキシマレーザー光、X線を所望のマスクパターンを介して照射するか、あるいは電子線により描画し、加熱する。ついでこれを現像液、たとえば1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。この形成方法でマスクパターンに忠実な画像を得ることができる。
なかでも本発明のフォトレジスト組成物を用いることによって、真空紫外領域においても透明性の高いレジスト被膜(感光層)を形成できることが見出されている。それによって特に今後0.07μmのテクノロジーノードを目指して開発中のF2レーザー(157nm波長)を用いたフォトリソグラフィープロセスに好ましく利用できるものである。
本発明のフォトレジストを塗布した被膜は、前述のフォトレジスト組成物をスピンコートなどの塗装方法によってシリコンウエハーのような支持体上に塗布し、乾燥することによって形成され、被膜中には、酸反応性基を有する含フッ素重合体(A−1)、光酸発生剤(B)、その他の添加物などの固形成分が含まれている。
形成するレジスト被膜の膜厚は、通常1.0μm以下の薄層被膜であり、好ましくは0.01μm以上で0.5μm以下、より好ましくは0.05μm以上で0.5μm以下の薄膜である。
さらに本発明のフォトレジスト組成物を塗布した被膜は、真空紫外領域の透明性が高いものが好ましく、具体的には157nm波長の吸光係数が2.5μm−1以下のものであり、好ましくは2.0μm−1以下、特に好ましくは1.50μm−1以下、さらには1.0μm−1以下であることが好ましい。この被膜はF2レーザー(157nm)の光線を用いるリソグラフィープロセスに効果的に利用できる。
なお、レジスト被膜が施される基材は、従来レジストが適用される各種基材が同様に利用できる。たとえばシリコンウェハー、有機系または無機系反射防止膜が設けられたシリコンウェハー、ガラス基板などのいずれでもよい。特に有機系反射防止膜が設けられたシリコンウェハー上での感度、プロファイル形状が良好である。
つぎに本発明を実施例などにより説明するが、本発明はこれらの実施例などに限定されるものではない。
以下の実施例において、物性の評価は次の装置および測定条件を用いて行なった。
(1)NMR:BRUKER社製 AC−300
H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:300MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
(2)IR分析:Perkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光光度計1760Xで室温にて測定する。
(3)GPC:数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、東ソー(株)製のGPC HLC−8020を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF−801を1本、GPC KF−802を1本、GPC KF−806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して測定したデータより算出する。
実験例1(パーヘキシルPVを用いたTFEとOH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)との共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、攪拌器および温度計を備えた500mlのオートクレーブを窒素で数回置換した後に真空にして、−OH基含有含フッ素ノルボルネン(NB−1):

の15.0gとHCFC−141bの250mlの溶液を仕込んだ。ついでバルブよりTFE32.0gを仕込み、パーヘキシルPV(t−ヘキシルパーオキシピバレート)(下式):

の70重量%トルエン溶液を0.71g入れ、60℃にて3時間、攪拌して反応させた。
未反応モノマーを放出したのち、重合溶液を取り出し濃縮後ヘキサンで再沈殿させ、共重合体を分離した。恒量になるまで真空乾燥を行ない、共重合体2.4gを得た。
この共重合体の組成比は、H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/前記OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)が50/50モル%の共重合体であった。
GPC分析により数平均分子量:4000、重量平均分子量:4800であった。
実験例2(パーヘキシルOを用いたTFEとOH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)との共重合体の合成)
実験例1において、パーヘキシルPVに代えて、パーヘキシルO(t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)(下式):

の90重量%トルエン溶液を0.68g、TFEを25.0g、NB−1を14.0g使用したほかは実験例1と同様にして75℃で反応を行なった。ついで実験例1と同様にしてヘキサンで再沈殿させ分離精製し、共重合体1.3gを得た。
この共重合体の組成比は、H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/前記−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)が50/50モル%の共重合体であった。
GPC分析により、数平均分子量:4000、重量平均分子量は4600であった。
実験例3(パーブチルOを用いたTFEとOH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)との共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、攪拌器および温度計を備えた500mlのオートクレーブを窒素で数回置換した後に真空にして、−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1):

の7.0gとHCFC−141bの250mlの溶液を仕込んだ。ついでバルブよりTFE18.5gを仕込み、パーブチルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート)(下式):

の0.27gを入れ、80℃にて3時間、攪拌して反応させた。
未反応モノマーを放出したのち、重合溶液を取り出し濃縮後ヘキサンで再沈殿させ、共重合体を分離した。恒量になるまで真空乾燥を行ない、共重合体1.5gを得た。
この共重合体の組成比は、H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/前記OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)が50/50モル%の共重合体であった。
GPC分析により数平均分子量:4400、重量平均分子量:5800であった。
実験例4(パーシクロNDを用いたTFEとOH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)との共重合体の合成)
実験例3において、パーブチルOに代えて、パーシクロND(1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート)(下式):

の70重量%トルエン溶液を1.3g、TFEを43.0g、NB−1を25.1g使用したほかは実験例3と同様にして50℃で反応を行なった。ついで実験例3と同様にしてヘキサンで再沈殿させ分離精製し、共重合体2.0gを得た。
この共重合体の組成比は、H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/前記−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)が50/50モル%の共重合体であった。
GPC分析により数平均分子量:4400、重量平均分子量:5300であった。
実験例5(パーブチルPVを用いたTFEとOH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)との共重合体の合成)
実験例3において、パーブチルOに代えて、パーブチルPV(t−ブチルパーオキシピバレート)(下式):

の70重量%トルエン溶液を0.6g、TFEを38.0g、NB−1を14.0g使用したほかは実験例3と同様にして60℃で反応を行なった。ついで実験例3と同様にしてヘキサンで再沈殿させ分離精製し、共重合体1.8gを得た。
この共重合体の組成比は、H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/前記−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)が50/50モル%の共重合体であった。
GPC分析により数平均分子量:4500、重量平均分子量:5300であった。
実験例6(パーロイル355を用いたTFEとOH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)との共重合体の合成)
実験例3において、パーブチルOに代えて、パーロイル355(3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド)(下式):

の75重量%トルエン溶液を0.8g、TFEを30.0g、NB−1を11.2g使用したほかは実験例3と同様にして65℃で反応を行なった。ついで実験例3と同様にしてヘキサンで再沈殿させ分離精製し、共重合体0.8gを得た。
この共重合体の組成比は、H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/前記−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)が50/50モル%の共重合体であった。
GPC分析により数平均分子量:4700、重量平均分子量:5600であった。
実験例7(パーヘキシルPVを用いたTFEと−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)と−OCHOC基含有含フッ素ノルボルネン誘導体誘導体(NB−1(1))との共重合体の合成)
実験例1において、−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)を12gと−OCHOC基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1(1)):

を3.7g、パーヘキシルPVの70重量%トルエン溶液を0.7g使用したほかは実験例1と同様にして60℃で反応を行なった。ついで実験例1と同様にしてヘキサンで再沈殿させ分離精製し、共重合体2.5gを得た。
この共重合体の組成比は、H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)/−OCHOC基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1(1))が50/40/10モル%の共重合体であった。
GPC分析により数平均分子量:3500、重量平均分子量:4300であった。
実験例8(パーシクロNDを用いたTFEと−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)と−OCHOC基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1(1))との共重合体の合成)
実験例7において、パーヘキシルPVに代えて、パーシクロND(1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート)の70重量%トルエン溶液を1.3g、TFEを43.0g、NB−1を20.0g、NB−1(1)を6.0g使用したほかは実験例7と同様にして50℃で反応を行なった。ついで実験例1と同様にしてヘキサンで再沈殿させ分離精製し、共重合体1.5gを得た。
この共重合体の組成比は、H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)/−OCHOC基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1(1))が50/40/10モル%の共重合体であった。
GPC分析により数平均分子量:3400、重量平均分子量:4100であった。
実験例9(パーオキシジカーボネート類を用いたTFEと−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)との共重合体の合成)
実験例3において、パーブチルOに代えて、パーロイルTCP(ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート)(下式):

を6.5g、TFEを52.0g、NB−1を30.6g使用したほかは実験例3と同様にして40℃で反応を行なった。ついで実験例3と同様にしてヘキサンで再沈殿させ分離精製し、共重合体3.0gを得た。
共重合体の組成比は、分析の結果、TFE/前記−OH含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)が50/50モル%の共重合体であった。
GPC分析により数平均分子量:3000、重量平均分子量は3700であった。
実験例10(フルオロアルキル基を有するジアシルパーオキサイドを用いたTFEと−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)との共重合体の合成)
実験例3において、パーブチルOに代えて、7H−ドデカフルオロヘプタノイルパーオキサイド(下式):

の8重量%パーフロヘキサン溶液を26.0g、TFEを80.0g、NB−1を49.0g使用したほかは実験例3と同様にして20℃で反応を行なった。ついで実験例3と同様にしてヘキサンで再沈殿させ分離精製し、共重合体3.0gを得た。
共重合体の組成比は、分析の結果、TFE/前記−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)が50/50モル%の共重合体であった。
GPC分析により数平均分子量:4100、重量平均分子量:4700であった。
実験例11(現像液に対する溶解性の測定)
各実験例で製造した含フッ素重合体を用いて、それぞれ以下のようにして水晶振動子法(QCM法)により溶解速度を測定した。
(1)試料の作製:金でコートされた直径1インチの水晶振動子板に各実験例で得た含フッ素重合体をPGMEAに溶解させた溶液を塗布し約100nmの膜厚の被膜を作製した。
(2)溶解速度の測定:膜厚は水晶振動子の振動数により換算、測定する。
上記、含フッ素重合体を塗布した水晶振動子板を2.38重量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)水溶液に浸し、浸漬させた時点から時間に対する被膜の膜厚変化を、振動数の変化により測定し、溶解速度(nm/sec)を算出した。
結果を表1に示す。
実験例12(157nmでの透明性の測定)
(1)塗布用組成物の作製
各実験例で製造した各種含フッ素重合体を酢酸ブチルに3%濃度となるように溶解して塗布用組成物を調製した。
(2)コーティング
▲1▼透明性測定用基材(MgF)への塗布
MgFの基板上に、各塗布用組成物をスピンコーターを用い、室温で1000回転の条件でコートした。塗布後100℃で15分間焼成し、透明な被膜を作製した。
▲2▼膜厚測定
MgF基板に代えてシリコンウエハーを用いた以外は上記と同じ条件でそれぞれの塗布用組成物を用いてシリコンウエハー上に被膜を形成した。
AFM装置(セイコー電子(株)SPI3800)にて被膜の厚さを測定した。
(3)真空紫外領域の透明性測定
▲1▼測定装置
・瀬谷−波岡型分光装置(高エネルギー研究機構:BL−7B)
・スリット 7/8−7/8
・検出器 PMT
・グレーティング(GII:ブレーズ波長160nm、1200本/mm)
光学系は、H.NambaらのRev.Sic.Instrum.,60(7)、1917(1989)を参照。
▲2▼透過スペクトルの測定
各塗布用組成物から(2)▲1▼の方法で得たMgF基板上に形成した被膜の200〜100nmの透過スペクトルを上記の装置を用いて測定した。
157nmにおける透過率と被膜の膜厚から分子吸光係数を算出し、表1に示す。

【実施例13】
(現像液に対する溶解性の評価)
(1)保護基の脱離反応
実験例7および8で製造した含フッ素重合体を用いて、ジクロロメタン溶媒を用い、トリフルオロ酢酸と反応させることにより、含フッ素重合体に含まれる保護基を脱離させた。
保護基に対して85%以上脱保護し、OH基へ変換されたことをH−NMRおよびIR分析により確認した。
(2)コーティング
上記で得た脱保護後の含フッ素重合体の5%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液を調製し、Si基板状に膜厚200nmとなるようにスピンコーターで塗布し、乾燥させた。
(3)溶解性の確認
乾燥後のSi基板を2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液に60秒間浸漬した。その後基板ごと取りだし、室温にて乾燥後、残膜の有無を目視で確認した。
膜が残らないものを溶解性が○とする。結果を表2に示す。
実験例14
(1)塗布用組成物の調製
実施例7および8で製造した含フッ素重合体(A)と重合体(A)に対して5重量%の光酸発生剤(B)を溶剤(C)としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させ重合体濃度5重量%に希釈した。
なお光酸発生剤としてS−(トリフルオロメチル)−ジベンゾチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート

を用いた。
(2)コーティング
Si基板状に膜厚200nmとなるようにスピンコーターで塗布し、乾燥させた。
(3)真空紫外領域の透明性の測定
実験例12と同様にして行なった。157nmにおける分子吸光係数を表2に示す。

【産業上の利用可能性】
本発明の製造方法によれば、真空紫外領域における透明性に優れ、フォトレジスト用として、特にF2レジスト用として超微細パターンを形成することができる含フッ素重合体を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得るフッ素原子を含んでいてもよい単量体(m1)に由来する構造単位(M1)を有する含フッ素重合体を得るにあたり、該重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得る単量体(m1)を式(1−1):

(式中、Rは水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素数3以上の1価の炭化水素基または水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素原子と酸素原子の合計が3以上のエーテル結合を含んだ1価の炭化水素基から選ばれ、かつR中の炭素原子またはエーテル結合を含む場合は炭素原子と酸素原子を炭素原子をCから数えたとき、第4番目の原子の少なくとも1つが炭素原子であって、その炭素原子に水素原子が少なくとも1個以上結合してなる炭化水素基;X、Xは同じかまたは異なる水素原子、ハロゲン原子、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されていても良い炭素数1〜10の炭化水素基)、
または式(1−2):

(式中、R’は水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素数4以上の2価の炭化水素基または水素原子がフッ素原子に置換されていても良い炭素原子と酸素原子の合計が4以上のエーテル結合を含んだ2価の炭化水素基から選ばれ、かつR’中の炭素原子またはエーテル結合を含む場合は炭素原子と酸素原子を炭素原子Cから数えたとき、第4番目の原子の少なくとも1つが炭素原子であって、その炭素原子に水素原子が少なくとも1個以上結合してなる炭化水素基;Xは水素原子、ハロゲン原子、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換されていても良い炭素数1〜10の炭化水素基;nは0または1)で示される構造単位を有する有機パーオキサイドを用いてラジカル重合することを特徴とする含フッ素重合体の製造方法。
【請求項2】
式(1−1)におけるR、式(1−2)におけるR’の炭素原子または炭素原子と酸素原子を炭素原子Cから数えたとき、第4番目の炭素原子を含む原子団の少なくとも1つがメチル基である請求の範囲第1項記載の含フッ素重合体の製造方法。
【請求項3】
式(1−1)におけるRが式(1−1a):

または式(1−2a):

(式中、R、R、R、Rは同じかまたは異なり水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基、Rは炭素数1〜10の二価の炭化水素基)である請求の範囲第1項記載の含フッ素重合体の製造方法。
【請求項4】
有機パーオキサイドがオキシパーエステル類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類から選ばれる少なくとも1種である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の含フッ素重合体の製造方法。
【請求項5】
前記重合体主鎖に含まれる脂肪族環構造を与え得る単量体(m1)に由来する構造単位(M1)が、フッ素原子を含んでいてもよいノルボルネン誘導体に由来する構造単位である請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
炭素数2または3のエチレン性単量体であって少なくとも1個のフッ素原子を有する含フッ素エチレン性単量体(m2)に由来する構造単位(M2)および/または重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得るフッ素原子を含んでいてもよい単量体(m3)に由来する構造単位(M3)を有し、かつ重合体中に酸で反応する酸反応性基Yまたは酸反応性基Yに変換可能な基Yを有する含フッ素重合体を得るに当たり、該含フッ素エチレン性単量体(m2)および/または該重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得る単量体(m3)を請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の有機パーオキサイドを用いてラジカル重合することを特徴とする現像特性に優れたレジスト用含フッ素重合体の製造方法。
【請求項7】
前記含フッ素エチレン性単量体(m2)に由来する構造単位(M2)が、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニルおよびヘキサフルオロプロピレンから選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位である請求の範囲第6項記載の製造方法。
【請求項8】
前記重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得る単量体(m3)に由来する構造単位(M3)が、フッ素原子を含んでいてもよいノルボルネン誘導体に由来する構造単位である請求の範囲第6項または第7項記載の製造方法。
【請求項9】
前記含フッ素エチレン性単量体(m2)および/または重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得る単量体(m3)が、酸反応性基Yを有しているかまたは酸反応性基Yに変換可能な基Yを有している請求の範囲第6項〜第8項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
含フッ素重合体が前記繰返し単位(M2)および(M3)以外の繰返し単位であって、かつ酸反応性基Yを有しているかまたは酸反応性基Yに変換可能な基Yを有している単量体(n2−1)に由来する繰返し単位(N2−1)を含み、さらに前記含フッ素エチレン性単量体(m2)および/または前記重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得る単量体(m3)に加えて、該酸反応性基Yを有しているかまたは酸反応性基Yに変換可能な基Y有している単量体(n2−1)をラジカル重合する請求の範囲第6項〜第8項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
重合開始剤によりラジカル重合して得られ、かつ酸反応性基Yに変換可能な基Yを有する含フッ素重合体を高分子反応法により酸反応性基Yに変換する請求の範囲第9項または第10項記載の製造方法。
【請求項12】
含フッ素重合体中の酸反応性基Yが、OH基、酸でOH基に変換できる酸解離性官能基、COOH基または酸で解離してCOOH基に変化させることができる酸解離性官能基の少なくとも1種である請求の範囲第6項〜第11項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
炭素数2または3のエチレン性単量体であって少なくとも1個のフッ素原子を有する含フッ素エチレン性単量体(m2)に由来する構造単位(M2)および/または重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得るフッ素原子を含んでいてもよい単量体(m3)に由来する構造単位(M3)を有し、かつ重合体中に酸で反応する酸反応性基Yまたは酸反応性基Yに変換可能な基Yを有する含フッ素重合体を得るに当たり、該含フッ素エチレン性単量体(m2)および/または該重合体主鎖中に脂肪族環構造を与え得る単量体(m3)を式(1):

(式中、R50、R51は同じかまたは異なり炭素数1〜30のエーテル結合を含んでも良い炭化水素基(ただし、結合末端の原子は酸素原子ではない)、p1、p2は同じかまたは異なる0または1、p3は1または2)で示される有機パーオキサイドを用いてラジカル重合することを特徴とする真空紫外光の透明性に優れたレジスト用含フッ素重合体の製造方法。
【請求項14】
前記含フッ素エチレン性単量体(m2)に由来する構造単位(M2)が、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニルおよびヘキサフルオロプロピレンから選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位である請求の範囲第13項記載の製造方法。
【請求項15】
前記重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得る単量体(m3)に由来する構造単位(M3)が、フッ素原子を含んでいてもよいノルボルネン誘導体に由来する構造単位である請求の範囲第13項または第14項記載の製造方法。
【請求項16】
前記重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得る単量体(m3)に由来する構造単位(M3)が、フッ素原子を含んでいてもよい脂肪族単環構造の構造単位である請求の範囲第13項または第14項記載の製造方法。
【請求項17】
前記含フッ素エチレン性単量体(m2)および/または重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得る単量体(m3)が、酸反応性基Yを有しているかまたは酸反応性基Yに変換可能な基Yを有している請求の範囲第13項〜第16項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
含フッ素重合体が前記繰返し単位(M2)および(M3)以外の繰返し単位であって、かつ酸反応性基Yを有しているかまたは酸反応性基Yに変換可能な基Yを有している単量体(n2)に由来する繰返し単位(N2)を含み、さらに前記含フッ素エチレン性単量体(m2)および/または前記重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得る単量体(m3)に加えて、該酸反応性基Yを有しているかまたは酸反応性基Yに変換可能な基Yを有している単量体(n2)をラジカル重合する請求の範囲第1項〜第17項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
式(1)の有機パーオキサイドを用いてラジカル重合して得られ、かつ酸反応性基Yに変換可能な基Yを有する含フッ素重合体を高分子反応法により酸反応性基Yに変換する請求の範囲第17項または第18項記載の製造方法。
【請求項20】
含フッ素重合体中の酸反応性基Yが、OH基、酸でOH基に変換できる酸解離性官能基、COOH基または酸で解離してCOOH基に変化させることができる酸解離性官能基の少なくとも1種である請求の範囲第13項〜第19項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項21】
式(1)の有機パーオキサイドにおけるp3が1であって、かつp1、p2のいずれか一方が1であり、かつR50、R51のいずれか一方が炭素数5以上のエーテル結合を含んでも良い炭化水素基である請求の範囲第13項〜第20項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項22】
式(1)の有機パーオキサイドにおけるp3が1であって、かつp1=p2=1である請求の範囲第13項〜第20項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項23】
式(1)の有機パーオキサイドにおけるR50、R51の少なくとも一方が炭素数5以上の炭化水素基であって、かつ脂肪族環構造を含むことを特徴とする請求の範囲第13項〜第22項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項24】
式(1)の有機パーオキサイドにおけるR50、R51の少なくとも一方に親水性の官能基を含有することを特徴とする請求の範囲第13項〜第23項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項25】
親水性の官能基がOH基またはCOOH基の少なくとも1種である請求の範囲第24項記載の製造方法。
【請求項26】
(A−1)OH基、酸でOH基に変換できる酸解離性官能基、COOH基または酸で解離してCOOH基に変化させることができる酸解離性官能基の少なくとも1種の酸反応性基Yを有する含フッ素重合体、
(B)光酸発生剤、および
(C)溶剤
からなる組成物であって、該含フッ素重合体(A−1)が、請求の範囲第6項〜第25項のいずれかに記載の製造方法で得られる重合体である現像特性に優れたレジスト被膜を与えるフォトレジスト組成物。
【請求項27】
含フッ素重合体(A−1)が、157nm波長での吸光係数が1.5μm−1以下の重合体である請求の範囲第26項記載のフォトレジスト組成物。

【国際公開番号】WO2004/035641
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【発行日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544954(P2004−544954)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013161
【国際出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】