説明

含浸組成物

本発明は、巻回物固定用組成物であって、
A) 5〜80重量%の少なくとも1種のポリオレフィン含有不飽和ポリエステル樹脂と、
B) 0〜60重量%の、A)と異なる少なくとも1種の不飽和ポリエステル樹脂と、
C) 5〜70重量%の少なくとも1種の反応性希釈剤と、
D) 0.01〜15重量%の通常の添加剤と、
E) 0.1〜20重量%の少なくとも1種のフリーラジカル開始剤と、
を含み、
重量%は、組成物の全重量に基づく、組成物を提供する。
本発明による組成物は、電気装置の操作の間に200℃よりはるかに高い高温においてさえも、優れた接着性および熱安定性とともに、湿潤条件下での優れた熱伝導特性および高水準の電気絶縁特性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、200℃をはるかに超える温度および湿潤条件下でも優れた電気絶縁特性を与える、電気装置の電気巻線などの巻回物(wound items)固定用含浸組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的強化及び固定のための、電気コイルおよび巻線、特に電気装置のマグネットワイヤなどの巻回物の含浸 (例えば、液漬、ディッピング、細流滴下(trickling)またはキャスティングの技術による)、並びに固定子、回転子及び変圧器などの電気装置のキャスティングに適した組成物における不飽和ポリマーの使用は、当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許第5466472号明細書を参照されたい。それらの用途には種々の樹脂を使用することができ、これらは通常、電気絶縁、振動に対する電気巻線の安定化、老化挙動の改善ならびに化学的および機械的衝撃に対する保護を与える。電気装置の小型化が効率的なモータのためのますます重要な主題になるにつれて、電気装置全体の電気絶縁の改善がこの方向で重要になっており、含浸組成物はその重要な要素である。
【0003】
絶縁特性および熱伝導性は、例えば、二酸化チタン、シリカおよびアルミニウムのような無機充填剤を用いて改善することができる。しかし、このような充填剤を含有する含浸材料は通常、あまり均質ではない。このことは、その組成物の保存状態に関して問題を引き起こし得、電気巻線の空洞中へのその浸透不良、ならびに電気装置の操作中の含浸不良をさらにもたらし得る。
【0004】
より高い温度(例えば、150℃より高い)がかけられる場合、標準的な含浸樹脂の絶縁特性は、かなり急速に低下し得る。欧州特許出願公開第A−302484号明細書および欧州特許出願公開A−871677号明細書には、優れた耐熱性を与えるジシクロペンタジエンをベースとした樹脂が開示されているが、それらの高温での絶縁特性は有意には増強されない。この問題に取り組むための別の方法は、エポキシ系の使用であるが、それらは、高い粘度のために含浸することが非常に困難であり、さらに、それらの貯蔵安定性も限られている。
【0005】
米国特許第4857434号明細書では、タックフリーの表面および良好な引張強度を有する印刷板、例えば、凸版印刷またはフレキソ印刷のためのレリーフ印刷板を調製するための配合物中にペンダントマレエート基を含むメタクリル化ポリマー炭化水素マレエートプレポリマーが言及されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
より高い温度でもすぐれた電気絶縁特性を与える、電気装置の電気巻線などの巻回物を固定するための含浸組成物を見いだす必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、巻回物固定用組成物であって、
A) 5〜80重量%の少なくとも1種のポリオレフィン含有不飽和ポリエステル樹脂と、
B) 0〜60重量%、好ましくは0.1〜50重量%の、A)と異なる少なくとも1種の不飽和ポリエステル樹脂と、
C) 5〜70重量%の少なくとも1種の反応性希釈剤と、
D) 0.01〜15重量%の通常の添加剤と、
E) 0.1〜20重量%の少なくとも1種のフリーラジカル開始剤と、
を含み、
重量%は組成物の全重量に基づく、組成物を提供する。
【0008】
本発明による組成物は、電気装置の操作中に200℃よりはるかに高い高温においてさえも、優れた接着性および熱安定性とともに、湿潤条件下で優れた熱伝導特性および高水準の電気絶縁特性を与える。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の特徴および利点は、以下の詳細な説明を読むことで、当業者によって、より容易に理解される。明確にするために、別個の実施形態の文脈において上記および下記される本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが理解されるべきである。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈において記載される本発明の様々な特徴はまた、別個にまたは任意の下位の組合せで提供され得る。さらに、単数形の言及は、文脈により特に断りのない限り、複数形も含み得る(例えば、1つ(「a」)および1つ(「an」)は、1つ、又は1つ以上を指し得る)。
【0010】
数値の記載範囲を超える、および記載範囲未満のわずかな変動は、その範囲内の値と実質的に同じ結果を達成するために用いることができる。また、これらの範囲の開示は、その最小値および最大値間のあらゆる値を含む連続的な範囲であることが意図される。
【0011】
本明細書で記載される数又は重量平均モル質量データのすべては、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:DIN55672に従って、固定相としてジビニルベンゼン−架橋ポリスチレン、液相としてテトラヒドロフラン、ポリスチレン標準)で決定されるまたは決定されるべきである。
【0012】
(メタ)アクリルという用語は、本文書においてアクリルおよび/またはメタクリルを指す。
【0013】
本発明による組成物は、電気装置の操作中に200℃よりはるかに高い温度、例えば、220〜280℃の温度においてさえも、例えば、250℃より高い温度で0.05のtan(δ)である優れた電気絶縁特性を与える。tan(δ)は、IEC600455−3−5/IEC60250に従って、誘電損失を表す。
【0014】
本発明による組成物は、5〜80重量%、好ましくは15〜75重量%、特に好ましくは35〜70重量%の範囲の成分A)の少なくとも1種のポリオレフィン含有不飽和ポリエステル樹脂を含み、重量%は、組成物の全重量に基づく。成分A)の樹脂は、例えば、1000〜5000g/モルの範囲の数平均分子量を有し得る。成分A)の樹脂は、官能基、例えば、OH、マレイン酸基および/または(メタ)アクリル酸基を含んでも、含まなくてもよい。
【0015】
成分A)は、少なくとも1種の官能性ポリオレフィンと、少なくとも1種の多塩基性カルボン酸、酸無水物および/またはそれら由来のエステル、ならびに/あるいは少なくとも1種の多価アルコールとの反応によって、および/または得られた生成物と少なくとも1種の炭素−炭素不飽和官能性化合物とのさらなる反応によって得られる。反応成分の比は、当業者に知られている方法の中で選択される。ポリオレフィンは、官能基、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシ基、エポキシ基などを有してもよい。
【0016】
官能性ポリオレフィンは、例えば、250〜10000g/モル、好ましくは500〜3500g/モルの範囲の数平均分子量を有し得る。このような官能性ポリオレフィンの例としては、官能性ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ヒドロキシ官能性ポリブタジエン、カルボキシ官能性ポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、および上記ポリマーのコポリマー、またはオレフィンモノマー、例えば、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテン、スチレン、塩化ビニルなどとのコポリマーである。好ましくは、ヒドロキシ官能性ポリイソプレンおよびヒドロキシ官能性ポリブタジエンが用いられる。
【0017】
多塩基性カルボン酸、酸無水物および/またはそれら由来のエステルの例としては、飽和および/または不飽和の脂肪族、脂環式および/または芳香族のモノ−、ジ−、トリ−および/またはテトラカルボン酸、無水物および/またはエステル類、また、当業者によって知られている、アルキル鎖中に1〜4個の炭素原子を有するアルキルエステルである。例としては、マレイン酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アコニット酸無水物、ジマレイン酸(dimaleinate)ジシクロペンタジエン、テトラヒドロフタル酸無水物、エンド−メチレンテトラヒドロフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラクロロフタル酸、ヘキサクロロフタル酸、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸、オリゴ−および/またはポリマー脂肪酸である。マレイン酸無水物、ジマレイン酸(dimaleinate)ジシクロロペンタジエン、テトラヒドロフタル酸無水物およびトリメリット酸無水物が好ましい。
【0018】
用いることができる多価アルコールは、当業者によって知られているとおりのジオール、トリオールおよびさらなるポリオール、例えば、ジオール、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールなど、トリオールおよびポリオール、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン(triethanolamin)、イミド含有生成物のためのモノエタノールアミン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリセチルイソシアヌレート、グリセロールなど、さらには、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、グリセロールなどである。1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンおよびグリセロールが好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル官能性化合物は、少なくとも1種の炭素−炭素不飽和官能性化合物として用いることができ、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化ポリブタジエン(poly(butadiene)、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、アミン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸クロリドであることができる。グリシジルメタクリレートおよび(メタ)アクリル酸クロリドが好ましい。
【0020】
成分A)のポリオレフィン含有不飽和ポリエステル樹脂は、当業者によってよく知られている方法によって、例えば、不活性ガス下の溶融法または共沸法において、恐らくはポリエステル重縮合触媒の存在下で、成分を段階的に、例えば、100〜220℃の温度に加熱することによって調製され得る。
【0021】
成分の量の比は、当業者に知られているように、得られるポリエステル樹脂A)の重量平均分子質量が、600〜10000g/モル、好ましくは1100〜4500g/モルの範囲であるように選択される。
【0022】
本発明による組成物の成分B)として、A)と異なる少なくとも1種の不飽和ポリエステル樹脂および/または不飽和ポリエステルイミド樹脂は、0〜60重量%、好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは1〜40重量%の範囲で用いることができ、重量%は、組成物の全重量に基づく。A)と異なる少なくとも1種の不飽和ポリエステル樹脂および/または不飽和ポリエステルイミド樹脂は、例えば、500〜5000g/モルの範囲の数平均分子量を有し得る。例としては、多塩基性カルボン酸、酸無水物および/またはそれら由来のエステルと、多価アルコールと、それらがイミドを含む場合、アミノ基を有する化合物とから調製される縮合生成物である。上述のとおりに、多塩基性カルボン酸と多価アルコールとを一般に用いて、成分A)の不飽和ポリエステルと異なる、成分B)の不飽和ポリエステル樹脂を生成させ得る。多塩基性カルボン酸、酸無水物および/またはそれら由来のエステルの好ましい例としては、マレイン酸無水物、ジマレイン酸(dimaleinate)ジシクロペンタジエン、テトラヒドロフタル酸無水物およびトリメリット酸無水物である。多価アルコールの好ましい例は、1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンおよびグリセロールである。
【0023】
本発明による組成物は、成分C)の少なくとも1種の反応性希釈剤を5〜70重量%、好ましくは10〜65重量%、特に好ましくは25〜55重量%の範囲で含み、重量%は、組成物の全重量に基づく。使用可能な反応性希釈剤は、ラジカル重合可能である、1つ以上のビニルまたはアリル二重結合を有するエチレン性不飽和構造を有する化合物である。例としては、スチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ブタンジオールビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、フタル酸ジアリルエステル、フマル酸ジアリルエステル、トリアリルホスフェート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルベンゼン、ジアリルビスフェノールA、ペンタエリトリトールトリまたはテトラアリルエーテルである。成分C)は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールジ−およびトリ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂(メタ)アクリレート、エチレンまたはプロピレンオキシドと、トリメチロールプロパンまたはペンタエリトリトールなどのポリオールとの重付加の反応生成物の(メタ)アクリレート、ならびにオリゴ(エチレングリコール)またはオリゴ(プロピレングリコール)の(メタ)アクリレートのようなアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルであってもよい。(C)の好ましい例としては、スチレン、ビニルトルエン、ヘキサンジオールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、およびエチレンオキシドとトリメチロールプロパンとの重付加の反応生成物の(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物である。成分(C)の最大50重量%は、アルキル基が1〜4個の炭素原子を含むマレイン酸もしくはフマル酸ビス−アルキルエステル、またはモノ−もしくはビス−マレイン酸イミドのような重合性基を有するモノマーからなることができる(独国特許出願公開第A−2040094号明細書、独国特許出願公開第A−2719903号明細書、独国特許出願公開第A−3247058号明細書および欧州特許出願公開第A−0255802号明細書も参照されたい)。
【0024】
本発明による組成物は、組成物の硬化後に、有機成分A)、B)および/またはC)に化学的に結合して、無機/有機構造を形成することができ、ならびに/あるいは組成物の硬化後に、有機成分A)〜C)に化学的に結合することができる反応性基を有する無機ポリマー物質であることができる、少なくとも1種の反応性物質F)をさらに含み得る。
【0025】
有機成分A)、B)および/またはC)に化学的に結合することができる反応性物質F)の例としては、少なくとも1種の金属、メタロイドおよび/または非金属、例えば、アルミニウム、リン、硫黄、ホウ素、マグネシウム、ケイ素、セレン、ゲルマニウム、亜鉛、イットリウム、セリウム、バナジウム、ハフニウム、ガリウム、鉛、ニッケル、タンタル、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、スズまたはビスマスの化合物である。この金属、メタロイドまたは非金属は、化学的部分、例えば、−OH、−OR(ここで、Rは、脂肪族、脂環式、不飽和または芳香族の有機基である)、−OC(O)R(ここで、Rは、脂肪族、脂環式、不飽和または芳香族の有機基である)、−NH2、−NHR(ここで、Rは、脂肪族、脂環式、不飽和または芳香族の有機基である)、−NRR’(ここで、RおよびR’は、脂肪族、脂環式、不飽和または芳香族の有機基であり、かつ同じであることができる)、−N[C(O)R]R’(ここで、RおよびR’は、脂肪族、脂環式、不飽和または芳香族の有機基であり、かつ同じであることができる)、−N[C(O)R][C(O)R’](ここで、RおよびR’は、脂肪族、脂環式、不飽和または芳香族の有機基であり、かつ同じであることができる)、−SH、−SR(ここで、Rは、脂肪族、脂環式、不飽和または芳香族の有機基である)、−SC(O)R(ここで、Rは、脂肪族、脂環式、不飽和または芳香族の有機基である)の部分である少なくとも1個の炭素、酸素、窒素、硫黄および/またはハロゲン原子に化学的に結合している。酸素原子は、硫黄原子で置き換えられていてもよいし、部分的に置き換えられていてもよい。少なくとも1個のヒドロキシル基、アルコキシ基および/または不飽和基を有する有機部分に結合している少なくとも1個のケイ素、チタンおよび/またはジルコニウム原子の化合物が好ましい。
【0026】
有機成分A)、B)および/またはC)に化学的に結合することができる無機ポリマー物質F)の例としては、無機の線状または分岐のポリマーまたはオリゴマー、例えば、アルミニウム、リン、硫黄、ホウ素、マグネシウム、ケイ素、セレン、ゲルマニウム、亜鉛、イットリウム、セリウム、バナジウム、ハフニウム、ガリウム、鉛、ニッケル、タンタル、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、スズまたはビスマスのような、金属、メタロイドまたは非金属の少なくとも1種の酸化物である。金属、メタロイドまたは非金属は、ポリマーの形成下で炭素、酸素、窒素、硫黄および/またはハロゲン原子に化学的に結合しており;これらのポリマーは、例えば、シリコーン、ポリ(アルコキシ)シリケート、ポリ(ヒドロキシ)シリケート、ポリ(アルコキシ)チタネート、ポリ(ヒドロキシ)チタネート、ポリ(オキソ)メタレート、ポリ(アルコキシ)チタネート、ポリ(ヒドロキシ)チタネート、ポリ(アルコキシ)ジルコネート、ポリ(ヒドロキシ)ジルコネート、ポリ(ヒドロキシ)スズ化合物、ポリ(アルコキシ)スズ化合物から選択される。ポリマーは、高度に架橋させることができ、コロイド二酸化チタン、コロイド二酸化ジルコニウム、コロイド酸化スズまたはコロイドシリカの溶液のようなコロイド溶液として用いることもできる。
【0027】
有機成分A)、B)および/またはC)に化学的に結合することができる反応性物質F)ならびに/あるいは無機物質の好ましい成分は、0〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%(重量%は、成分A)〜F)の全重量に基づく)の範囲で、ケイ素、チタンまたはジルコニウムおよび酸素原子に基づくポリマーまたはコロイド溶液であり、これらは、ヒドロキシル基および/またはアルコキシ基および/またはヒドロキシアルキルオキシ基ならびに/あるいはエポキシ基および/またはイソシアネート基および/または不飽和基を有する有機部分(これらはまた、ポリマーの性質のもの、例えば、ポリ(エポキシアクリレート)または不飽和ポリエステルであってもよい)を含有する。
【0028】
本発明の成分(D)は、当業者に知られている通常の添加剤を0.01〜15重量%、好ましくは0.1〜15重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%(重量%は組成物の全重量に基づく)の範囲で含む。これらは、増量剤、可塑化成分、促進剤、例えば、金属塩、置換アミン;安定剤およびインヒビター、例えば、ヒドロキノン、キノン、キノン型インヒビター、フェノール型インヒビター、金属の有機塩および/または立体障害脂肪族もしくは芳香族アミン;アルキルフェノール、アルキルフェノールエーテル、消泡剤および流動調節剤である。さらなる添加剤、例えば、炭素、ガラス、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリアラミド、ポリアミドイミドもしくはポリカーボネート繊維のような繊維様強化剤、またはチョーク、タルク、水酸化アルミニウム、石英粉、スレート粉、クレーもしくはマイクロドロマイトのような充填剤;有機および無機顔料、染料、チクソトロピー剤ならびに収縮低下剤などを用いることができる。本組成物中のこのような添加剤の量は、それぞれの用途に依存しており、当業者によって知られている。
【0029】
本発明による組成物は、成分E)の少なくとも1種のフリーラジカル開始剤を0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%(重量%は、組成物の全重量に基づく)の範囲で含む。フリーラジカル開始剤は、高エネルギー放射線および熱で活性化され得るものであり、これは、当業者によって知られている。UV線などの高エネルギー放射線で活性化されるラジカル開始剤(光開始剤)の例は、塩素含有光開始剤、芳香族ケトン、ヒドロキシアルキルフェノン、ホスフィンオキシド、アシルホスフィンオキシドである。熱反応性開始剤(熱的に不安定な開始剤)の例は、C−C−不安定化合物、例えば、式YPh2C−CPh2Y(Ph:フェニル、Y:−OH、−OCH3、−OC65、−CH3、−CN、−NH2、−Clまたは−OSi(CH33)を有する1,2−置換テトラフェニルエタンなど、およびアゾ化合物、例えば、アゾビスイソブチロニトリルである。さらに、過酸化物、ヒドロペルオキシド、ケトンペルオキシドなどの開始剤、例えば、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシジエステル、クメンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシドも用いることができる。
【0030】
光開始剤と熱的に不安定な開始剤の混合物、または熱的に不安定な開始剤単独、例えば、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、ベンズピナコール誘導体および1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトンの使用が好ましい。
【0031】
成分A)〜E)またはA)〜F)は、任意の順序で容易に調製される原料として混合され得る。成分A)および/またはB)は、C)に溶解させ、その後、例えば、D)およびE)およびF)と、またはD)および/またはE)のC)中溶液と一緒に混合することもできる。
【0032】
本発明による組成物は、いくつかの分野の用途で使用され得る。この組成物は特に、巻回物、例えば、コイル状に巻かれた基材(特に回転子、固定子もしくは変圧器のような電気装置におけるマグネットワイヤのような電気巻線の、または電気部門におけるコイル状に巻かれた金属箔の)、またはガラス繊維、プラスチック繊維もしくはプラスチック箔に基づくコイル状に巻かれた基材などの基材の固定に特に有用であり、織物の含浸のためにも使用され得る。
【0033】
本発明による組成物の塗布は、当技術分野で知られている方法によって、例えば、含浸、例えば、ディップ含浸、真空含浸および/または細流滴下(trickle)含浸、ならびに塗布された組成物の硬化によって処理され得る。
【0034】
ディップ含浸法では、基材は、組成物中に特定の時間ディッピングされるまたは組成物の中を通して引かれる。基材は、ディッピング前に本発明の組成物の硬化温度未満の温度に加熱してもよい。真空含浸法では、基材は密閉容器中に入れられ、真空がかけられ、次いで、本発明の組成物がその容器中にフラッシュされ得る。細流滴下含浸法では、本発明による組成物は、例えば、ノズルで、回転する基材上に細流滴下され得る。
【0035】
良好な浸透のために、基材を組成物の硬化温度未満の温度に加熱することは、有用であり得る。加熱は、当技術分野で知られている方法、例えば、含浸塗布の間または前に、例えば、電流によってまたはオーブン中で与えることができる。
【0036】
含浸塗布後、本発明による組成物は硬化させ得る。これは、ラジカル重合によって進行させ得る。硬化は、含浸された基材を加熱することによっておよび/または含浸された基材を高エネルギー放射線で照射することによって実施され得る。
【0037】
硬化のための熱は、例えば、電流を、巻線に通すことによって発生させることができ;オーブンまたは赤外線(IR)もしくは近赤外線(NIR)源を用いることもできる。加熱温度(対象温度)は、80〜180℃の範囲であり得る。通常の硬化時間は、例えば、1分〜180分であり、NIR線の場合は、硬化時間はより短くても、例えば、1分未満であってもよい。本発明による組成物は、添加剤、例えば、芳香族アミン、またはコバルト、銅、セシウムもしくはバナジウムの塩の使用下、低温で硬化させることもできる。
【0038】
本発明によるコーティングは、高エネルギー放射線、例えば、紫外(UV)光または電子ビームをかけることによって硬化させることもできる。UV硬化について、適当な開始剤、例えば、190〜450nmの波長で吸収する光開始剤を使用し得る。
【0039】
光開始剤と熱的に不安定な開始剤との組合せもまた、例えば、熱硬化とUV硬化の組合せのために可能である。
【0040】
高エネルギー放射線は、硬化処理の促進のためだけでなく、含浸層の厚さに依存して、塗布組成物の完全硬化のためにも用いることができる。UV線および電子ビーム線は、その後の熱硬化工程における組成物の揮発性モノマーの放出を減少させるために、基材上に塗布された本発明の含浸組成物の表面のみを硬化させるために用いることもできる。
【0041】
本発明は、以下の実施例を参照して説明される:
【実施例】
【0042】
実施例1
成分A)の調製
100gのヒドロキシ官能性ポリブタジエン(Mn=2400g/モル、官能性=1.9)を7.7gのマレイン酸無水物と130〜140℃で反応させる。得られた生成物を60℃に冷却し、THF(200g)に溶解させる。次いで、7.25gのエピクロロヒドリン、8gのトリエチルアミンおよび0.1gの触媒を添加する。反応後、6.75gのメタクリル酸を添加する。反応後、溶液を冷却し、沈殿物をろ別する。最初にわずかの、次いで強い真空下60℃で、THFおよび残留トリエチルアミンを蒸留して除く。残渣を1,4−ブタンジオールジメタクリレート(59g)で希釈し、冷却する。
【0043】
含浸樹脂組成物の調製
1.1 従来技術の組成物
従来技術の組成物として、不飽和ポリエステル、1,4−ブタンジオールジメタクリレートおよび通常の添加剤ならびに熱ラジカル開始剤をベースとした標準的な含浸樹脂であるVoltatex(登録商標)4200(Dupont)を使用する。
【0044】
1.2 本発明の組成物
100gの成分A)を1.5gの通常の添加剤および熱ラジカル開始剤と、ならびに5gの1,4−ブタンジオールメタクリレートと混合する。
【0045】
実施例2
硬化方法および結果
実施例1.1および1.2から得られた材料を、以下の試験のために適当な型中150℃で1時間硬化させる:
【0046】
表 1: 試験結果

【0047】
硬度試験により、従来技術の組成物についての硬く、脆いコーティングおよび本発明による柔軟なコーティングが示される。絶縁破壊電圧データにより、本発明によるコーティングの、特に湿潤条件下での優れた絶縁特性が示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回物固定用組成物であって、
A) 5〜80重量%の少なくとも1種のポリオレフィン含有不飽和ポリエステル樹脂と、
B) 0〜60重量%の、A)と異なる少なくとも1種の不飽和ポリエステル樹脂と、
C) 5〜70重量%の少なくとも1種の反応性希釈剤と、
D) 0.01〜15重量%の通常の添加剤と、
E) 0.1〜20重量%の少なくとも1種のフリーラジカル開始剤と、
を含み、
前記重量%は、前記組成物の全重量に基づく、上記組成物。
【請求項2】
A) 15〜75重量%の少なくとも1種のポリオレフィン含有不飽和ポリエステル樹脂と、
B) 0.1〜50重量%の、A)と異なる少なくとも1種の不飽和ポリエステル樹脂と、
C) 10〜65重量%の少なくとも1種の反応性希釈剤と、
D) 0.01〜15重量%の通常の添加剤と、
E) 0.1〜10重量%の少なくとも1種のフリーラジカル開始剤と、
を含み、
前記重量%は、前記組成物の全重量に基づく、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
無機/有機構造を形成するために前記有機成分A)、B)および/またはC)に化学的に結合することができる、0〜50重量%の少なくとも1種の反応性物質F)を含み、前記重量%が、前記組成物の全重量に基づく、請求項1および2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機成分A)〜C)に化学的に結合することができる反応性基を有する、0〜50重量%の少なくとも1種の無機ポリマー物質F)を含み、前記重量%が、前記組成物の全重量に基づく、請求項1および2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のポリオレフィン含有不飽和ポリエステル樹脂A)が、少なくとも1種の官能性ポリオレフィンと、少なくとも1種の多塩基性カルボン酸、酸無水物および/またはそれら由来のエステル、ならびに多価アルコールとの反応、および得られた生成物と少なくとも1種の炭素−炭素不飽和官能性化合物とのさらなる反応によって得られる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の官能性ポリオレフィンが、ヒドロキシル官能性ポリイソプレンおよび/またはヒドロキシル官能性ポリブタジエンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
a)請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物を、含浸によって巻回物上に塗布する工程、および
b)塗布された組成物を硬化させる工程
を含む巻回物を固定する方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物で固定された巻回物。

【公表番号】特表2012−511625(P2012−511625A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540895(P2011−540895)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/067516
【国際公開番号】WO2010/068766
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】