説明

吸水性不織布積層体

【課題】 すぐれた吸水性、吸放湿性を保持するとともに、高い強度を有する吸水性不織布積層体を提供する
【解決手段】 ポリアルキレングリコールを共重合した熱可塑性の吸水性樹脂を1〜100重量%以上の範囲で含有している吸水性繊維から構成される吸水性不織布層と、熱可塑性樹脂からなる不織布層から形成される積層体であり、該吸水性繊維が積層体の全重量の対して1〜99重量%含まれる事を特徴とする吸水性不織布積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性合成繊維不織布において、高い強度を損なうことなく、高い吸水性と保水性を有する吸水性不織布積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、衛生材料や一般生活関連材料あるいは農業資材用、産業資材用の素材として、ポリアミドやポリエステル、ポリプロピレン等の汎用の熱可塑性合成繊維からなる不織布が知られているが、これらの不織布は、一般に疎水性であり、吸水性、保水性に乏しいものである。これまでにも、これら合繊からなる不織布に吸水性を付与するために、各種の提案がなされている。
【0003】
具体的には、合成繊維を親水性物質で表面被覆する方法(例えば、特許文献1)、アルキルフォスフェート金属塩を付着させる方法(例えば特許文献2)、繊維の表面あるいは断面形状を変化させる方法(例えば、特許文献3)、繊維に多孔性を付与する方法(例えば、特許文献4)、吸水ポリマーと吸水繊維を用いる方法(例えば、特許文献5)、ポリアルキレンオキシド変性物またはこの変生物とポリアミドまたはポリエステルとの混合物を鞘成分とする芯鞘型混合繊維を用いる方法(特許文献6)等を挙げることが出来る。
【0004】
しかしながら、合繊繊維を親水性物質で表面被覆する方法やアルキルフォスフェート金属塩を付着させる方法は、初期の親水性には優れるものの、吸水性および保水性という点では十分な性能を示さない。
吸水ポリマーと吸水繊維を用いる方法では吸水性に優れるものの、吸水ポリマーとの不織布積層体である為、一般に高強度のものを得ることは困難である。
繊維の表面あるいは断面形状を変化させる方法や多孔性を付与する方法は、後加工や特殊な製法を必要としコスト面で不利である等の問題がある。
【0005】
また、ポリアルキレンオキシド変性物を用いる方法は吸水性には優れるものの、寸法安定性が悪く、ポリアルキレンオキシド変性物は曳糸性に乏しく、芯鞘型の繊維構造や他の熱可塑性樹脂との混合繊維でなければ繊維化が困難である等の問題があった。
一方、吸水性を有する不織布として、木綿や麻等の天然繊維が交絡一体化してなる、いわゆるスパンレース不織布が知られているが、この不織布は強力が低く、また繊維自体が熱可塑性でないために、不織不化を図るの際して加工方法が限定されるものであった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−348779号公報
【特許文献2】特開平8−181678号公報
【特許文献3】特開2001−271228号公報
【特許文献4】特開2000−290832号公報
【特許文献5】特開平8−120550号公報
【特許文献6】特開平11−181663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、疎水性合成繊維不織布に吸水性を付与する上で、吸水性を付与する為の後加工の必要がなくコスト面で有利であり、かつ製造が容易で、十分な吸水性、保水性を有し、高強度である不織布を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアルキレングリコールを共重合した吸水性繊維から構成される吸水性不織布層と、熱可塑性繊維不織布層を積層させることで、飛躍的に吸水性が向上し、高強力である不織布積層体を得ることができた。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)ポリアルキレングリコールを共重合した熱可塑吸水性樹脂を用いて得られる吸水性繊維から構成される吸水性不織布層と、熱可塑性繊維からなる不織布層から形成される積層体であり、該吸水性繊維が積層体の全重量に対して1〜99重量%含まれていることを特徴とする吸水性不織布積層体。
【0009】
(2)JIS−L−1096滴下法による吸水速度が50秒以下であり、且つ保水率が7%以上であることを特徴とする上記(1)に記載の吸水性不織布積層体。
(3)前記熱可塑性吸水樹脂が、ポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルとポリアルキレングリコールとの共重合体であり、ポリアルキレングリコールの共重合量が5〜90重量%である共重合ポリエステル系樹脂であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の吸水性不織布積層体
【0010】
(4)前記吸水性不織布層の片面あるいは両面に、熱可塑性樹脂からなる不織布層が接合されてなる2層以上の多層構造を有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の吸水性不織布積層体。
(5)前記吸水性不織布層が吸水性連続長繊維からなることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の吸水性不織布積層体。
(6)前記吸水性不織布層が、スパンボンド法あるいはメルトブローン法で形成されることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の吸水性不織布積層体。
【0011】
(7)前記熱可塑性繊維が、ポリオレフィン系またはポリアミド系またはポリエステル系であることを特徴とする上記(1)〜(6)に記載の吸水性不織布積層体。
(8)熱可塑性繊維からなる不織布層が、連続長繊維からなることを特徴とする上記(1)〜(7)記載の吸水性不織布積層体。
(9)熱可塑性繊維からなる不織布層が、スパンボンド法あるいはメルトブロー法で形成された不織布であることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の吸水性不織布積層体。
【0012】
(10)吸水性不織布積層体が、部分熱圧着法またはウォータージェット法またはニードルパンチ法で所定の形状を保持していることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の吸水性不織布積層体。
(11)前記吸水性不織布が、熱可塑性樹脂からなるスパンボンド不織布を移動するウェブ捕集面上堆積させ、その上にメルトブローン法によって形成される吸水性繊維を直接堆積させ、さらにその上に熱可塑性樹脂からなるスパンボンド不織布を直接堆積させて熱エンボス処理により、積層体が圧着さてれなることを特徴とする上記(1)〜(10)に記載の吸水性不織布積層体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱可塑性吸水性繊維を用いた吸水性不織布積層体は、吸水性付与の為の後加工の必要がなく、コスト面で有利であり、吸水性繊維の比率によって積層体の強度と保水性を任意に制御でき、かつ、湿潤時の強度低下が小さく、取り扱い性に優れており、吸水吸放湿性を要求される用途に好適に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の吸水性不織布積層体は、ポリアルキレングリコールを共重合した熱可塑吸水性
樹脂を用いて得られる吸水性繊維から構成される吸水性不織布層と、熱可塑性繊維からなる不織布層から形成される吸水性不織布積層体であり、該吸水性繊維が積層体の全重量に対して1〜99重量%含まれることを特徴とする吸水性不織布積層体である。また、吸水性不織布積層体であって、JIS−L−1096滴下法による吸水速度が50秒以下であり、且つ保水率が7%以上であることを特徴とする。
【0015】
以下に、各不織布の構成について述べる。
〔吸水性不織布層〕
本発明に用いる吸水性不織布層は、吸水性繊維から構成され、吸水性繊維は、吸水特性を有する吸水性樹脂から構成される。
この吸水性樹脂の吸水特性は、40℃、相対湿度80%下での吸湿率が7%以上、保水率が15%以上であり、好ましくは40℃、相対湿度80%下吸湿率が9%以上、保水率が20%以上の吸水特性を有する。
【0016】
吸水性繊維が吸水性不織布積層体(以後、「積層体」という。)の全重量に対して1〜99重量%の範囲であり、特に5〜80重量%含まれることが好ましい。吸水性繊維の含有量は、望みの吸水レベルに合わせて適宜設定でき、吸水特性と積層体強度のバランスを考慮して、設計できる。
吸水性樹脂は、ポリテトラメチレンテレフタレート主成分とするポリエステルとポリエチレングリコールとの共重合体からなる樹脂であり、ポリエチレングリコールの共重合量としては5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%であり、特に好ましくは30〜60重量%の範囲である。
【0017】
この共重合体の溶融粘度は特に制限はないが、常用のスパンボンド法やメルトブロー法にて繊維を得るためには、生産性の観点から、せん断速度1000秒-1での溶融粘度が100〜10000poiseの範囲のものを使用するのが好ましい。
吸水性不織布層に使用される繊維の繊度はその製造法によっても異なるが、0.01〜25dtex、特に0.05〜15dtexの範囲が適当である。
吸水性樹脂の溶融粘度がこの範囲であると、特にメルトブロー法による極細繊維化が容易であり、吸水性を有する極細繊維不織布を得ることができる。極細繊維の繊径は0.5〜5μmの範囲が好ましく、目付は1.0〜100g/m2 の範囲が可能であるが、低目付けの範囲(2〜10g/m2 )でも、安定した不織布が得られる。
【0018】
〔熱可塑性繊維不織布層〕
熱可塑性不織布層を構成する樹脂としては、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、またはポリオレフィン系ポリマー、およびこれらのブレンド等を挙げることができる。
ポリオレフィン系ポリマーとしては、例えば、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等を挙げることができる。ポリプロピレンに関しては、一般的なチーグラーナッタ触媒により合成されるものでもよいし、メタロセンに代表されるシングルサイト活性触媒により合成されたものであってもよい。ポリエチレンに関しては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等を挙げることができる。更には、ポリプロピレンとポリエチレンとの共重合体やポリプロピレン中にポリエチレンやその他の添加剤を添加したポリマーであってもよい。
【0019】
ポリアミド系ポリマーとしては、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6(ポリメタキシレンアジパミド)等を挙げることができる。更には、これらのナイロンを主体とする共重合体あるいはこれらの混合物であってもよい。
ポリエステル系ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレ
ンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、生分解性ポリエステル等を挙げることができる。更にはこれらのポリエステルを主体とする共重合体あるいはこれらの混合物であってもよい。
【0020】
また、熱可塑不織布層には本発明の目的を損なわない範囲で前記の吸水性樹脂を混合した混合繊維、あるいは吸水性樹脂との芯鞘、接合型の複合繊維を用いてもよい。
熱可塑性樹脂の溶融粘度は特に制限はないが、常用のスパンボンド法やメルトブロー法にて繊維を得るためには、生産性の観点から、せん断速度1000秒-1での溶融粘度が100〜10000poiseの範囲のものを使用するのが好ましい。
熱可塑性不織布層の繊維の繊度は0.05〜20dtex、好ましくは0.5〜15dtexの範囲が適当である。繊度が0.05dtex未満では十分な布の強度が得られない恐れがある。
【0021】
また、本発明の吸水性繊維および熱可塑性繊維不織布層の繊維には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の常用の各種添加成分、例えば、各種エラストマー類などの衝撃性改良材、結晶核剤、着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステルなどの離型剤、ハロゲン化銅に代表される銅化合物などの耐熱剤、エポキシ化合物、可塑剤、滑剤、耐候剤、難燃剤、着色剤などの添加剤を添加することが出来る。
本発明において、吸水性繊維および熱可塑性不織布層の繊維の断面は、円形や楕円形、三角や四角等の多角形、扁平や中空等の異型断面形状でもよく、必要特性に応じて任意に設定することが出来る。
【0022】
〔吸水性不織布積層体〕
吸水性繊維の積層体への含有率は、1〜99重量%が好ましく、より好ましくは、10〜80重量%である。この比率が1重量%未満であると、吸水性を十分に発揮することができず好ましくない。逆に99重量%を超えると吸水性繊維の脱落や不織布積層体の強度が低下し、使用上の問題が生じるため好ましくない。この含有率は、積層体の用いられる用途特性、積層体としての強度と吸水性とのバランスを考慮して、最適条件を設定できる。
【0023】
本発明の吸水性不織布積層体は、公知の方法を用いて得られるものであり、製造方法、および積層方法としては従来公知の方法が任意に採用でき、特に制限はない。
吸水性不織布層、および熱可塑性樹脂からなる不織布層としては、短繊維あるいは長繊維のいずれを用いてもよく、その形成方法としても、スパンボンド法とメルトブロー法に代表される紡糸直結法や、カーディングやエアレイなどの乾式法、抄紙法などの湿式法などのいずれの方法を用いても良い。
【0024】
さらに、吸湿性繊維からなるウェブを熱可塑性樹脂からなる不織布層と接着あるいは絡み合わせる方法としても、カレンダー法、スルーエアヒーティング法などの熱的接着法、接着剤を用いて吸水性不織布層と熱可塑性樹脂からなる不織布層とを接着させる化学的接着法、ニードルパンチ法、水流交絡法、ステッチボンド法などの機械的接着法などのいずれの方法を用いても良い。
スパンボンド法、メルトブロー法及びこれらの積層により得られる不織布は、短繊維を経ることなく直接長繊維をウェブ化することにより作られるので、ボンディング部の破損による短繊維の脱落がないなどの物性上の特徴、及び生産性が高く、カード式短繊維不織布に比較して長所が多いため、衛生、土木、建築、農業・園芸、食品包材を中心に広範な用途で使用されており本発明の吸水性繊維からなる不織布積層体としては好適である。
【0025】
本発明における不織布積層体の構造として、吸水性繊維からなる不織布層と熱可塑性樹
脂からなる基材が少なくとも各1層づつ積層されておればよく、積層するする層の数は特に限定されるものではないが、設備の制約や生産性を考慮した場合、3〜5層であることが好ましい。
さらには、両外層を熱可塑性樹脂からなる長繊維不織布で構成し、かつ中間層として吸水繊維からなる不織布層を配置した、3層以上の不織布がオンラインで積層してなる不織布積層体であることが好ましい。
【0026】
このような構造を採用することにより、中間層に含まれる吸水繊維が優れた吸水性を示すと同時に、吸水性繊維の脱落と、湿潤時の布強度の低下を、低減することができる、積層体構成として適している。
オンライン上で、上記のような3層積層構造を形成すると、積層による吸水繊維の外層への突き出し効果が発生しやすくなり、より吸水速度を更に向上させることが可能となる。その際、吸水繊維の積層体全重量に占める割合が5〜70%であることが、湿潤時の強度低下を防ぐ上で好ましい。
【0027】
本件発明の好ましい態様として、吸水性不織布が、熱可塑性樹脂からなるスパンボンド不織布を移動するウェブ捕集面上堆積させ(S層)、その上にメルトブローン法によって形成される吸水性繊維を直接堆積させ(M層)、さらにその上に熱可塑性樹脂からなるスパンボンド不織布を直接堆積させて(S層)、熱エンボス処理により、積層体が圧着さてれなる吸水性不織布積層体が挙げられる。このようなSMS構造の不織布のM層に、吸水性不織布を用いると、M層での吸水性の確保、S層による強度保持、耐磨耗性性の向上、毛羽たちの防止、柔軟風合い等、M層とS層の相乗効果が発揮され、好ましい積層不織布が得られる。該積層不織布は、用途に合わせて、適宜、層の数を調整できる。
吸水性繊維からなる不織布と、疎水性繊維からなる不織布を熱圧着で積層一体化することで、吸水、保水、拡散、放湿などの組み合わせ作用を有する不織布を得る可能性を有している。
【0028】
例えば、以下の様な方法で得られる。
熱可塑吸水性不織布および熱可塑性樹脂からなる不織布層の繊維形成には、通常使用される紡糸口金を用いて溶融紡糸をすればよい。紡糸した糸条は、冷却した後に延伸しウェブをコンベア上で捕集し任意の方法により布帛とする。
さらに、本発明の吸水性不織布積層体には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の常用の後加工、例えば、難燃剤、消臭剤、抗菌剤、防ダニ剤などの付与をしてもよいし、染色、撥水加工などを施してもよい。
また、本発明の吸水性不織布積層体の形状、形態、目付等についても、必要特性に応じて任意に設定することが出来る。
吸水性不織布積層体に、印刷、染色、コーティング加工などを施すことも可能であるし、種類の異なる素材、製法、製品を複合化しても何ら差し支えない。
【0029】
本発明の吸水性不織布積層体は、従来の吸水性材料が用いられている用途に広く使用可能である。例えば、衣料部材、ディスポ衣料、靴部材などの衣料用途、保護衣、防護用品などの防護用途、手術着、マスク、ハップ剤基布などの医療用途、ルーフィング、タフト・カーペット基布、結露防止シートなどの建築用途、補強材、保護材、地中埋設管の補修材などの土木用途、自動車内装、自動車部品などの車両用途、救急用品、洗浄用品、おしぼりなどの衛生用途、カーペット、家具部材、壁紙などの家具・インテリア用途、ウェットワイパー、クリーニング材などのワイパー用途、空気フィルター、バグフィルター、エレクトレットフィルターなどのフィルター用途、布団、布団袋、枕カバーなどの寝装用途、べた掛けシート、防草シート、園芸プランターなどの農業・園芸用途、人工皮革用基布、合成皮革用基布、塩ビレザー用基布などの人工皮革類の基布用途、収納用品、食品等の包装資材、台所用品などの生活資材用途、電気材料、製品材料、機器部材などの工業資材
用途などである。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例などにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
なお、測定方法、評価方法等は下記の通りである。
<引張強さ>
JIS−L−1096の4.3に示された方法で測定して引張強さを評価した。
<吸水速度>
JIS−L−1096の6.26.1滴下法に示された方法で測定し、吸水に要した秒数で、吸水速度を評価した。
【0031】
<不織布の保水率>
下記式(1)で示す吸水率で不織布の保水性を評価した。
まず、試料を温度20℃、相対湿度65%の雰囲気中で24時間調湿して重量W1(g)を測定し、次に温度20℃の水道水中に24時間浸漬した後取り出し、遠心脱水機にて3500rpmで5分間脱水後、重量W2(g)を測定し、下記式(1)で保水率T0(重量%)を求めた。
保水率T0(重量%)=〔(W2−W1)/W1〕×100(1)
<ポリエステルの固有粘度>
オルトクロロフェノールを溶媒とし、試料濃度1g/100cc、温度35℃の条件で定法により測定した。
【0032】
<メルトフローレート>
JIS−K−7210に記載の方法に準じてメルトフローレート(MFR)を測定した。
<ポリアミドの相対粘度>
濃度97%の硫酸を溶媒とし、試料濃度1g/100cc、温度25℃の条件で定法により測定した。
【0033】
[実施例1]
MFRが40のポリプロピレン樹脂(PP)を常用のスパンボンド溶融紡糸装置に供給し、230℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度3000m/分にて引き取り、2.2dtexのポリプロピレン繊維を得た。得られたポリプロピレン繊維を開繊分散して目付が7.5g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を、常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金からメルトブロー溶融紡出して2.5μmの吸水性繊維からなる目付が2g/m2 のウェブを得た。
【0034】
得られた吸水性繊維からなるウェブを目付が7.5g/m2 のポリプロピレンからウェブで挟み、135℃に加熱したピンポイントエンボス(圧着面積率7.1%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して17g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。吸水性繊維の含有比率は12%であり、後述の比較例1と対して、強度は同一であり、吸水速度は早くなり、保水率は比較例1の約3倍に増加し、保水性が大幅に向上した。
【0035】
[実施例2]
MFR40のポリプロピレン樹脂(PP)を常用の溶融紡糸装置に供給し230℃にて
均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度3200m/分にて引き取り、2.7dtexのポリプロピレン繊維を得た。得られたポリプロピレン繊維を開繊分散して目付が15g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水吸湿性繊維からなる目付が5g/m2 の吸水性ウェブを得た。
【0036】
得られた吸水性ウェブと目付が15g/m2 のポリプロピレンウェブとを135℃に加熱したピンポイントエンボス(圧着面積率7.1%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して20g/m2 の不織布を成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は25%であり、後述の比較例2と対して、強度はやや低下したが、吸水速度は30秒と早くなり、保水率は、比較例2の約7倍に増加し、保水性が大幅に向上した。本実施例では、強度を維持しながら、大幅な吸水特性の改善が見られた。
【0037】
[実施例3]
MFRが40のポリプロピレン樹脂(PP)を常用の溶融紡糸装置に供給し230℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度3000m/分にて引き取り、2.2dtexのポリプロピレン繊維を得た。得られたポリプロピレン繊維を開繊分散して目付が10g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用の溶融紡糸装置に供給し、230℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して3.0dtexの吸水性繊維からなる目付が10g/m2 のウェブを得た。
【0038】
得られた吸水性繊維からなるウェブと目付が10g/m2 のポリプロピレンウェブとを135℃に加熱したピンポイントエンボス(圧着面積率7.1%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して20g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は50%であり、後述の比較例2と対して、強度はやや低下したが、吸水速度は早くなり、保水率は、比較例2の約13倍に増加し、保水性が大幅に向上した。本実施例では、強度はやや低下したが、大幅な吸水特性の改善が見られた。
【0039】
[実施例4]
MFRが40のポリプロピレン樹脂(PP)を常用のスパンボンド溶融紡糸装置に供給し230℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度3000m/分にて引き取り、2.2dtexのポリプロピレン繊維を得た。得られたポリプロピレン繊維を開繊分散して目付が7.5g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水性繊維からなる目付が2g/m2 のウェブを得た。
【0040】
得られた吸水性繊維からなるウェブを目付が7.5g/m2 のポリプロピレンからなるウェブで挟み、ノズル径0.15mm、ノズルピッチ0.8mm、列数2列のノズルから水圧50kg/cm2 の柱状流を噴射し、水流交絡処理を行い17g/m2 の不織布を作
成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は12%であり、後述の比較例1と対して、強度は同一レベルであり、吸水速度は早くなり、保水率は比較例1の約3倍に増加し、保水性が大幅に向上した。
【0041】
[実施例5]
MFRが40のポリプロピレン樹脂(PP)を常用のスパンボンド溶融紡糸装置に供給し230℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度3000m/分にて引き取り、2.2dtexのポリプロピレン繊維を得た。得られたポリプロピレン繊維を開繊分散して目付が7.5g/m2 のウェブを形成した。
【0042】
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水性繊維からなる目付が2g/m2 のウェブを得た。
【0043】
得られた吸水性繊維からなるウェブを目付が7.5g/m2のポリプロピレンからなるウェブで挟みパンチング密度が10個/cm、ニードルの突き込み深さ10mmでニードルパンチ処理を行い17g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は12%であり、後述の比較例1と対して、強度は同一レベルであり、吸水速度は早くなり、保水率は比較例1の約3倍に増加し、保水性が大幅に向上した。
【0044】
[実施例6]
相対粘度が2.5のナイロン6樹脂(N6)を常用の溶融紡糸装置に供給し260℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4250m/分にて引き取り、2.0dtexのナイロン6繊維を得た。得られたナイロン6繊維を開繊分散して目付が15g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水吸湿性繊維からなる目付が10g/m2 のウェブを得た。
【0045】
得られた吸水吸放湿性ウェブを目付が15g/m2 のナイロン6繊維からなるウェブで挟み、165℃に加熱したピンポイントエンボス(圧着面積率7.1%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して40g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は25%であり、後述の比較例3と対して、強度はほぼ同一レベルであり、吸水速度は早くなり、保水率は比較例3の約2倍に増加し、保水性が大幅に向上した。本実施例では、強度を維持しながら、大幅な吸水特性の改善が見られた。
【0046】
[実施例7]
相対粘度が2.5のナイロン6樹脂(N6)を常用の溶融紡糸装置に供給し260℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4250m/分にて引き取り、2.0dtexのナイロン6繊維を得た。得られたナイロン6繊維を開繊分散して目付が20g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリ
テトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水吸湿性繊維からなる目付が20g/m2 の吸水性ウェブを得た。
【0047】
得られた吸水性ウェブと目付が20g/m2 のナイロン6繊維からなるウェブを165℃に加熱したピンポイントエンボス(圧着面積率7.1%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して40g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は50%であり、後述の比較例3と対して、強度はやや低下したが、吸水速度は早くなり、保水率は比較例3の約4倍に増加し、保水性が大幅に向上した。本実施例では、強度はやや低下したが、大幅な吸水特性の改善が見られた。
【0048】
[実施例8]
相対粘度が2.5のナイロン6樹脂(N6)を常用の溶融紡糸装置に供給し260℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4250m/分にて引き取り、2.0dtexのナイロン6繊維を得た。得られたナイロン6繊維を開繊分散して目付が20g/m2 のウェブを形成した。
【0049】
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用の溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して3.0dtexの吸水吸湿性繊維からなる目付が20g/m2 の吸水性ウェブを得た。得られた吸水性ウェブと目付が20g/m2のナイロン6繊維からなるウェブを165℃に加熱したピンポイントエンボス(圧着面積率7.1%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して40g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は50%であり、後述の比較例3と対して、強度はやや低下したが、吸水速度は早くなり、保水率は比較例3の約4倍に増加し、保水性が大幅に向上した。本実施例では、強度はやや低下したが、大幅な吸水特性の改善が見られた。
【0050】
[実施例9]
相対粘度が2.5のナイロン6樹脂(N6)を常用の溶融紡糸装置に供給し260℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4250m/分にて引き取り、2.0dtexのナイロン6繊維を得た。得られたナイロン6繊維を開繊分散して目付が15g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水吸湿性繊維からなる目付が10g/m2 のウェブを得た。
【0051】
得られた吸水吸放湿性ウェブを目付が15g/m2 のナイロン6繊維からなるウェブで挟み、ノズル径0.15mm、ノズルピッチ0.8mm、列数2列のノズルから水圧50kg/cm2 の柱状流を噴射し、水流交絡処理を行い40g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は25%であり、後述の比較例3と対して、強度はほぼ同一レベルであり、吸水速度は早くなり、保水率は比較例3の約2倍に増加し、保水性が大幅に向上した。本実施例では、強度は損なうことなく、大幅な吸水特性の改善が見られた。
【0052】
[実施例10]
相対粘度が2.5のナイロン6樹脂(N6)を常用の溶融紡糸装置に供給し260℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4250m/分にて引き取り、2.0dtexのナイロン6繊維を得た。得られたナイロン6繊維を開繊分散して目付が15g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水吸湿性繊維からなる目付が10g/m2 のウェブを得た。
【0053】
得られた吸水吸放湿性ウェブを目付が15g/m2 のナイロン6繊維からなるウェブで挟み、パンチング密度が10個/cm、ニードルの突き込み深さ10mmでニードルパンチ処理を行い40g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は25%であり、後述の比較例3と対して、強度はほぼ同一れべるであり、吸水速度は早くなり、保水率は比較例3の約2倍に増加し、保水性が大幅に向上した。本実施例では、強度は損なうことなく、大幅な吸水特性の改善が見られた。
【0054】
[実施例11]
固有粘度が0.70のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用の溶融紡糸装置に供給し290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4500m/分にて引き取り、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付が30g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水性繊維からなる目付が20g/m2 のウェブを得た。
【0055】
得られた吸水性ウェブを目付が30g/m2 のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブで挟み、165℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積11.4%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して80g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は25%であり、後述の比較例5に対して、強度はほぼ同一であり、吸水速度は大幅に早くなり、保水率は比較例5の約5倍の31%に増加し、保水性が大幅に向上した。本実施例では、強度を損なうことなく、大幅な吸水特性の改善が見られた。
【0056】
[実施例12]
固有粘度が0.70のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用の溶融紡糸装置に供給し290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4500m/分にて引き取り、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付が15g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水性繊維からなる目付が30g
/m2 の吸水吸放湿性ウェブを得た。
【0057】
得られた吸水吸放湿性ウェブを目付が15g/m2 のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブで挟み、165℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積11.4%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して60g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は50%であり、後述の比較例6に対して、吸水速度は2.8秒と大幅に早くなり、保水率は比較例6の約8倍の47%に増加し、保水性が大幅に向上した。
【0058】
[実施例13]
固有粘度が0.70のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用の溶融紡糸装置に供給し290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4500m/分にて引き取り、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付が10g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水性繊維からなる目付が60g/m2 のウェブを得た。
【0059】
得られた吸水吸放湿性ウェブを目付が10g/m2 のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブで挟み、165℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積11.4%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して80g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は75%であり、後述の比較例6に対して、吸水速度は0.8秒と大幅に早くなり、保水率は比較例6の約10倍の65%に増加し、保水性が大幅に向上した。
【0060】
[実施例14]
固有粘度が0.70のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用の溶融紡糸装置に供給し290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4500m/分にて引き取り、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付が30g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水性繊維からなる目付が10g/m2 のウェブを得た。
【0061】
得られた吸水性ウェブと目付が30g/m2 のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブを165℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積11.4%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して60g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は50%であり、後述の比較例6に対して、吸水速度は0.8秒と大幅に早くなり、保水率は比較例6の約8倍の48%に増加し、保水性が大幅に向上した。
【0062】
[実施例15]
固有粘度が0.77のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用の溶融紡糸装置に供給し290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4500m/分にて引き取り、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付が30g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用の溶融紡糸装置に供給し、230℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して3.0dtexの吸水性繊維からなる目付が30g/m2 のウェブを得た。
【0063】
得られた吸水性ウェブを目付が30g/m2 のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブを165℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積11.4%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して60g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は50%であり、後述の比較例6に対して、吸水速度は0.8秒と大幅に早くなり、保水率は比較例6の約8倍の48%に増加し、保水性が大幅に向上した。
【0064】
[実施例16]
固有粘度が0.70のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用の溶融紡糸装置に供給し290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4500m/分にて引き取り、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付が30g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水性繊維からなる目付が20g/m2 のウェブを得た。
【0065】
得られた吸水性ウェブを目付が30g/m2 のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブで挟み、ノズル径0.15mm、ノズルピッチ0.8mm、列数2列のノズルから水圧50kg/cm2 の柱状流を噴射し、水流交絡処理を行い80g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は25%であり、後述の比較例5に対して、強度はやや増加し、吸水速度は10秒と大幅に早くなり、保水率は比較例5の約5倍に増加し、保水性が大幅に向上した。
【0066】
[実施例17]
固有粘度が0.70のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用の溶融紡糸装置に供給し290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4500m/分にて引き取り、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付が30g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水性繊維からなる目付が20g
/m2 の吸水性ウェブを得た。
【0067】
得られた吸水性ウェブを目付が30g/m2 のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブで挟み、パンチング密度が10個/cm、ニードルの突き込み深さ10mmで、ニードルパンチ処理を行い80g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は25%であり、後述の比較例5に対して、強度はやや増加し、吸水速度は10秒と大幅に早くなり、保水率は比較例5の約5倍に増加し、保水性が大幅に向上した。
【0068】
[比較例1]
MFR40のポリプロピレン樹脂(PP)を常用の溶融紡糸装置に供給し230℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度3000m/分にて引き取り、2.2dtexのポリプロピレン繊維を得た。得られたポリプロピレン繊維を開繊分散して目付が7.5g/m2 のウェブを形成した。
次にMFR900のポリプロピレンを常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmのポリプロピレン繊維からなる目付が2g/m2 のウェブを得た。
【0069】
得られた2.5μmのポリプロピレンウェブを目付が7.5g/m2 のポリプロピレンからなるウェブで挟み、135℃に加熱したピンポイントエンボス(圧着面積7.1%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して17g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表2に示す。
得られた比較例1の積層不織布は、吸水速度は60秒以上と殆ど吸水せず、保水率は3.6%と非常に低いレベルであった。
【0070】
[比較例2]
MFR40のポリプロピレン樹脂(PP)を常用の溶融紡糸装置に供給し230℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度3000m/分にて引き取り、2.7dtexのポリプロピレン繊維を得た。得られたポリプロピレン繊維を開繊分散して目付が20g/m2 のウェブを形成し、135℃に加熱したピンポイントエンボス(圧着面積7.1%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して20g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表2に示す。
得られた比較例2の積層不織布は、吸水速度は60秒以上と殆ど吸水せず、保水率は3.4%と非常に低いレベルであった。
【0071】
[比較例3]
相対粘度が2.6のナイロン6樹脂(N6)を常用の溶融紡糸装置に供給し260℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4250m/分にて引き取り、2.0dtexのナイロン6繊維を得た。得られたナイロン6繊維を開繊分散して目付が15g/m2 のウェブを形成した。
次に相対粘度が1.6のナイロン6を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmのナイロン6繊維からなる目付が10g/m2 のウェブを得た。
【0072】
得られた2.5μmのナイロン6のウェブを目付が15g/m2 のナイロン6からなるウェブで挟み、175℃に加熱したピンポイントエンボス(圧着面積7.1%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して40g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表2に示す。
得られた比較例3の積層不織布は、吸水速度は40秒殆ど低い吸水性であり、保水率は12.8%と低いレベルであった。
【0073】
[比較例4]
相対粘度が2.6のナイロン6樹脂(N6)を常用の溶融紡糸装置に供給し260℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4250m/分にて引き取り、2.0dtexのナイロン6繊維を得た。得られたナイロン6繊維を開繊分散して目付が40g/m2 のウェブを形成し、185℃に加熱したピンポイントエンボス(圧着面積7.1%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して40g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表2に示す。
得られた比較例4の積層不織布は、吸水速度は45秒殆ど低い吸水性であり、保水率は12.3%と低いレベルであった。
【0074】
[比較例5]
固有粘度が0.77のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用の溶融紡糸装置に供給し290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4500m/分にて引き取り、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付が30g/m2 のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.49のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、310℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmのポリエチレンテレフタレート繊維からなる目付が20g/m2 のウェブを得た。
【0075】
得られた2.5μmのウェブを目付が30g/m2 のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブで挟み230℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積11.4%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して80g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表2に示す。
得られた比較例5の積層不織布は、吸水速度は60秒以上であり、殆ど吸水性を示さず、保水率は6.0%と低いレベルであった。
【0076】
[比較例6]
固有粘度が0.77のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用の溶融紡糸装置に供給し290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4500m/分にて引き取り、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付が60g/m2 のウェブを形成し、220℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積11.4%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して60g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表2に示す。
得られた比較例6の積層不織布は、吸水速度は60秒以上であり、殆ど吸水性を示さず、保水率は5.8%と低いレベルであった。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の吸水性不織布積層体は、従来の吸水性材料が用いられている用途に広く使用可能であり、例えば、衣料部材、ディスポ衣料、靴部材などの衣料用途、保護衣、防護用品などの防護用途、手術着、マスク、ハップ剤基布などの医療用途、ルーフィング、タフト・カーペット基布、結露防止シートなどの建築用途、補強材、保護材、地中埋設管の補修材などの土木用途、自動車内装、自動車部品などの車両用途、救急用品、洗浄用品、おしぼりなどの衛生用途、カーペット、家具部材、壁紙などの家具・インテリア用途、ウェットワイパー、クリーニング材などのワイパー用途、空気フィルター、バグフィルター、エレクトレットフィルターなどのフィルター用途、布団、布団袋、枕カバーなどの寝装用途、べた掛けシート、防草シート、園芸プランターなどの農業・園芸用途、人工皮革用基布、合成皮革用基布、塩ビレザー用基布などの人工皮革類の基布用途、収納用品、食品等の包装資材、台所用品などの生活資材用途、電気材料、製品材料、機器部材などの工業資材用途などである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキレングリコールを共重合した熱可塑吸水性樹脂を用いて得られる吸水性繊維から構成される吸水性不織布層と、熱可塑性繊維からなる不織布層から形成される積層体であり、該吸水性繊維が積層体の全重量に対して1〜99重量%含まれることを特徴とする吸水性不織布積層体。
【請求項2】
JIS−L−1096滴下法による吸水速度が50秒以下であり、且つ保水率が7%以上であることを特徴とする請求項1に記載の吸水性不織布積層体。
【請求項3】
前記熱可塑吸水性樹脂が、ポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルとポリアルキレングリコールとの共重合体であり、ポリアルキレングリコールの共重合量が5〜90重量%である共重合ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸水性不織布積層体
【請求項4】
前記吸水性不織布層の片面あるいは両面に、熱可塑性樹脂からなる不織布層が接合されてなる2層以上の多層構造を有する事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸水性不織布積層体。
【請求項5】
前記吸水性不織布層が、吸水性連続長繊維からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の吸水性不織布積層体。
【請求項6】
前記吸水性不織布層がスパンボンド法あるいはメルトブロー法で形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかにに記載の吸水性不織布積層体。
【請求項7】
前記熱可塑性繊維が、ポリオレフィン系またはポリアミド系またはポリエステル系であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の吸水性不織布積層体。
【請求項8】
熱可塑性繊維からなる不織布層が、熱可塑性連続長繊維からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の吸水性不織布積層体。
【請求項9】
熱可塑性繊維からなる不織布層が、スパンボンド法あるいはメルトブロー法で形成された不織布であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の吸水性不織布積層体。
【請求項10】
吸水性不織布積層体が、部分熱圧着法またはウォータージェット法またはニードルパンチ法で接合されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の吸水性不織布積層体。
【請求項11】
前記吸水性不織布積層体が、熱可塑性樹脂からなるスパンボンド不織布を移動するウェブ捕集面上堆積させ、その上にメルトブロー法によって形成される吸水性繊維を直接堆積させ、さらにその上に熱可塑性樹脂からなるスパンボンド不織布を直接堆積させて熱エンボス処理により、積層体が圧着されていることを特徴とする請求項1〜10に記載の吸水性不織布積層体。

【公開番号】特開2006−299425(P2006−299425A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117854(P2005−117854)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】