説明

呈味が改善され、調理時間が短縮化された飲食物及びその製造方法

【課題】風味、コク・熟成感、まろやかさ等が改善され、薫蒸感が増強された飲食物を経済的かつ人体に安全な方法で製造する。
【解決手段】タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を濃縮して得られる濃縮有機酸発酵液を飲食物に添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を濃縮して得られる濃縮有機酸発酵液を添加することによって、風味、コク・熟成感、まろやかさ等が改善され、薫蒸感が増強された飲食物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古来より、人類にとって「食」は生きるための「栄養の摂取」という意味合いだけでなく、美味しいものを食べる事で心を満たすという「精神的」な意味合いを持ってきた。また、近年においては、健康に気を遣う人が増えた事により、安全で健康に良いとされる食品が望まれている。そのような事情により、人が安全でより風味の良い飲食物を求めるのは必然であり、飲食物の風味や香りを改善する方法の開発が熱望されてきた。
【0003】
従来から、呈味や風味、香味を改善する目的でアミノ酸や核酸系の調味料、畜肉エキス、野菜エキス、魚介類エキス等の天然エキス、乳酸及び有機酸発酵風味液を利用することが広く行われている。これらの方法としては、以下のような例が挙げられる。
【0004】
(1)乳脂肪、糖、アミノ酸及び水を含有する組成物を熟成することを特徴とする香味改善剤の製造方法(特許文献1)。
(2)畜肉エキスまたは魚介類エキスから得られる不溶性成分を用いたコク味調味料素材の製造方法(特許文献2)。
(3)乳清を乳酸菌及び酵母により発酵させて得られた清澄乳酸菌・酵母発酵乳清液を有効成分として含有することを特徴とする調味料風味改良剤の製造方法(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−153665号公報
【特許文献2】特許第3493854号公報
【特許文献3】特開平7−75520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記(1)〜(3)の製造方法によって製造された風味、香味等の改善剤は、いずれも嗜好性や経済性の面において満足のいくものではなく、また、食の安全面、健康面からも好ましいものではなかった。
そこで、本発明は、前記従来技術の問題点を解消すべく、経済的かつ人体に安全な方法で、風味、コク・熟成感、まろやかさ等が改善され、薫蒸感が増強された飲食物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を濃縮して得られる濃縮有機酸発酵液を飲食物に添加することにより、(1)醤油、味噌、みりん、みりん風調味料やその他の飲食物の熟成感を増強させ、まろやかでコクのある風味を付与することができること、(2)醤油、味噌、みりん、みりん風調味料等の調味料を用いた料理に薫蒸感を付与することができ、調理時間を短縮できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、濃縮食酢類を含む濃縮有機酸発酵液を飲食物に添加して得られるコク・熟成感、まろやかさ、風味が改善された飲食物、コク・熟成感の付与によって、調理時間を短縮することができた飲食物及びその製造方法を提供するものである。
【0009】
濃縮有機酸発酵液を含有させることにより飲食物の風味が改善される理由は、以下のとおりであると考えられる。一般的に、味を感じる味覚受容体は味細胞からなる味蕾に存在していることが知られている。舌の先にある味蕾は、主に甘味や塩味を感じ、舌の奥にある味蕾は、主に旨味を感じている。舌だけでなく、軟口蓋や喉の奥でも味を感じており、本発明品はこれら複数の部位で味を感じさせることにより、味に空間的な広がりを持たせている。また、濃縮有機酸発酵液を含有した飲食物は、後からじっくりと広がる後味が強くなり、味の余韻が残るものとなる。これらの空間的広がりと時間差効果により、味に「厚み」と「深み」が付与されるものと考えられる。
【0010】
一般に、コクは旨味における重要な要素の一つだと考えられており、一つの物質に由来する味覚ではなく、複数の味覚が複雑に絡み合ったものをコクとして感じている。また、味は味覚、嗅覚、食感など、複数の要因により成り立っている。本発明では、有機酸発酵液を濃縮させることで、含有されるアミノ酸や有機酸の割合を増やし、飲食物にそれらの成分を含有させることにより、複数の味覚や嗅覚を刺激し、飲食物の味に広がりを持たせることに成功した。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、濃縮有機酸発酵液の持つ発酵風味や熟成感が飲食物に付与されるだけではなく、飲食物の呈味に「厚み」、「深み」が付与され、コクが強くなり、風味が改善される。さらに、調味料等に薫蒸感を付与することができるので、調理時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の有機酸発酵液とは、酢酸発酵、乳酸発酵、グルコン酸発酵などにより得られたものであり、食酢や漬物浸漬液なども含む。
【0013】
有機酸発酵液を濃縮する方法としては、減圧濃縮、凍結濃縮、膜濃縮など、従来公知の方法が適宜利用できる。濃縮時間については、長期間をかけて濃縮することもできるが、例えば30分から5時間といった短時間の濃縮でも、本発明の効果を奏する濃縮有機酸発酵液を得ることができるので、本発明の飲食物及びその製造方法は、工業的な生産にも適している。
【0014】
有機酸発酵液を濃縮する目安と測定方法について、以下に説明する。任意量の濃縮前の有機酸発酵液と同任意量の濃縮後の有機酸発酵液とを取り出し、それぞれOD420nmにおける吸光度が0.001〜0.500の範囲内となるように希釈液で適宜希釈する。このとき、それぞれに要した希釈液量を、最初に取り出した有機酸発酵液の液量で除して得られる希釈倍率に対し、それぞれの吸光度の数値を乗じて得られた数値を有機酸発酵液の色強度としたときに、濃縮による有機酸発酵液の色調変化が、(濃縮後液の色強度)/(濃縮前液の色強度)=1.1〜50の範囲内となるように濃縮するのが好ましい。ここで言うOD420nmの吸光度は、一般的に用いられている分光光度計「株式会社日立製作所製U−1000型分光光度計」を用いて室温にて測定した。ここで、希釈液とは水が一般的である。
【0015】
濃縮前及び濃縮後それぞれの有機酸発酵液については、以下のようにして色強度を求めることができる。まず、濃縮前及び濃縮後それぞれの有機酸発酵液を一定量取り出し、それぞれOD420nmにおける吸光度が0.001〜0.500の範囲内となるように希釈液で適宜希釈し、必要とした希釈液の量を記録する。次いで、濃縮前及び濃縮後それぞれの有機酸発酵液の吸光度を測定して記録する。ここで、これらの吸光度は、0.001〜0.500の範囲内のいずれかの数値である。濃縮前及び濃縮後それぞれの有機酸発酵液について、必要とした希釈液の量を最初に取り出した有機酸発酵液の量で除することにより、希釈倍率を算出する。濃縮前及び濃縮後それぞれの有機酸発酵液について、希釈倍率と吸光度とを乗じて得た数値を、それぞれの色強度とすることができる。
【0016】
また、有機酸発酵液を濃縮する際の別の目安として、濃縮前及び濃縮後それぞれの有機酸発酵液の酸度と窒素濃度との関係が(濃縮前の総酸度/濃縮前の総窒素分)/(濃縮後の総酸度/濃縮後の総窒素分)=1.1から50の範囲内となることを指標としてもよい。さらに、濃縮の程度の目安として、この指標と上記の色調変化による指標とを併せて用いてもよい。
ここで言う総酸度(酢酸換算)とは有機酸発酵液を一定容量計り取り、0.1N苛性ソーダにてpH8.3を終点として滴定したときに、滴定値(ml)×0.6×0.1N苛性ソーダのファクター/試料量(ml)にて算出するW/V%にて表す。また総窒素濃度はケルダール法にて測定しW/V%にて表す。
【0017】
この色調の変化はアミノカルボニル(メイラード)反応等の反応の程度によって変化するものである。通常、食品において糖と窒素成分であるアミノ酸の存在下で起こるアミノカルボニル反応は、食品の色を褐色に変化させ、また風味を劣化させる現象として忌み嫌われてきた。そのため、食品の製造工程においてはアミノカルボニル反応が生じない方法が模索されてきた。しかしながら、本発明者は、あえてアミノカルボニル反応に注目し、糖とアミノ酸の反応物の存在が食品の風味改善効果及び調理時間短縮効果をもたらすことを見出した。
【0018】
本発明は、濃縮することによりアミノカルボニル反応を促進させた有機酸発酵液に呈味改善効果があることの他に、薫蒸感を与する効果もあることを見出し、これを利用して飲食物の風味向上及び調理時間短縮を可能とするものである。
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
(濃縮有機酸発酵液の製造方法)
本発明の濃縮有機酸発酵液を以下のように製造した。まず、玄米に液化酵素を作用させ、60〜70℃で3時間液化を行った。次いで糖化酵素を添加し、50〜60℃にて16時間糖化を行った。得られた糖化液に酵母を加え25〜30℃でアルコール発酵を行い、アルコール濃度約15%、糖濃度1%の玄米アルコールを得た。得られた玄米アルコールに酢酸菌を接種し25〜30℃で酢酸発酵を行った。得られた酢酸発酵液をろ過した後、熟成タンクにおいて25〜30℃で熟成を行った。熟成終了後、ろ過、殺菌を行い、窒素濃度0.8%、塩分濃度0.05%、糖濃度15%及び酸度2%(酢酸換算)の有機酸発酵液を得た。さらに減圧濃縮機にて濃縮を行い、濃縮有機酸発酵液(濃縮醸造酢)を得た。
【実施例2】
【0020】
(醤油への利用)
100gの市販減塩醤油(塩分8.11g/100g)を対照区1とし、100gの市販醤油(塩分16.22g/100g)を対照区2とする。また、実施例1の濃縮有機酸発酵液4.0gを添加した100gの市販減塩醤油を添加区とする。これら醤油の塩味の強さ及び醤油の風味について、味覚正常者である味覚パネラー9名に評価させる評点法による官能評価試験を行った。試験方法としては、各評価項目につき−4から+4まで9段階のレベルを設定し、対照区1の評価を−2、対照区2の評価を+2とする基準を設定し、この基準に基づいて添加区の評価を−4から+4のいずれかで回答させる方法をとった。この官能評価試験を表1に示す。
【表1】

【0021】
表1に示すように、添加区は、対照区1よりもコク・熟成感があり、また、対照区1よりも醤油の風味が良いという評価が得られた。また、添加区は、コク・熟成感、醤油の風味ともに、対照区2に準ずる評価が得られた。この結果より、実施例1の濃縮有機酸発酵液を市販の減塩醤油に4重量%程度添加することにより、醤油特有のコク・熟成感が付与され、風味のよい醤油が得られることが分かった。これにより、イオン交換膜電気透析法などによる減塩醤油の製造工程中に、香気や色の変化など品質の劣化が生じ、醤油の風味が変化してしまうという問題点に対処することが可能となる。
【実施例3】
【0022】
(醤油を使った料理への利用)
下記表2のよう調理した対照区1、対照区2、添加区の3種類の料理を用意した。これらの料理のコク・熟成感、まろやかさ・味のまとまり、風味の良さの3点について、味覚正常者である味覚パネラー11名に評価させる評点法による官能評価試験を行った。試験方法としては、各評価項目につき−4から+4まで9段階のレベルを設定し、対照区1の評価を−2、対照区2の評価を+2とする基準を設定し、この基準に基づいて添加区の評価を−4から+4のいずれかで回答させる方法をとった。この官能評価試験を表3に示す。
【表2】

【表3】

【0023】
表3に示すように、添加区は、コク・熟成感、料理の風味、まろやかさ・味のまとまりの全てにおいて、対照区1よりも高い評価が得られた。また、添加区は、コク・熟成感、料理の風味、まろやかさ・味のまとまりのいずれについても、対照区2に準ずる評価が得られた。この結果より、実施例1の濃縮有機酸発酵液を市販の減塩醤油とともに料理に用いることにより、市販の非減塩醤油を使用した場合に準ずる程度に、コク・熟成感、料理の風味、まろやかさ・味のまとまりが向上することが分かった。また、本来時間をかけて調理することにより得られるコクや熟成感を容易に付与することができるので、調理時間を短縮することもできる。
【実施例4】
【0024】
(醤油を使った料理への利用)
下記表4のよう調理した対照区1、対照区2、添加区の3種類の料理を用意した。これらの料理の煮汁を取り、カラーアナライザー(C-2000型、株式会社日立サイエンスシステムズ製)を用いて、L*a*b*と色差を測定した。この測定結果を表5及び図1に示す。
【表4】

【表5】

【0025】
表5及び図1において対照区1と対照区2とを比較すると、煮込み時間が長くなるほど明度(L*)が低くなり、色差(ΔE)が大きくなることが分かる。一方、添加区は、対照区1と煮込み時間が同じであるにもかかわらず、対照区1よりも明度が低く、色差が大きくなっている。このことから、実施例1の濃縮有機酸発酵液を料理に添加することによって、より長く煮込んだときの性質に近づけることができる。すなわち、実施例1の濃縮有機酸発酵液の添加により料理の調理時間を短縮することができる。
【実施例5】
【0026】
(みりんを使った料理への利用)
下記表6のよう調理した対照区1、対照区2、添加区の3種類の料理を用意した。これらの料理のコク・熟成感、風味の良さ、まろやかさ・味のまとまりの3点について、味覚正常者である味覚パネラー11名に評価させる評点法による官能評価試験を行った。試験方法としては、各評価項目につき−4から+4まで9段階のレベルを設定し、対照区1の評価を−2、対照区2の評価を+2とする基準を設定し、この基準に基づいて添加区の評価を−4から+4のいずれかで回答させる方法をとった。この官能評価試験を表7に示す。

【表6】

【表7】

【0027】
表7に示すように、添加区は、コク・熟成感、料理の風味、まろやかさ・味のまとまりの全てにおいて、対照区1よりも高い評価が得られた。また、添加区は、コク・熟成感、料理の風味、まろやかさ・味のまとまりのいずれについても、対照区2に準ずる評価が得られた。この結果より、実施例1の濃縮有機酸発酵液を市販のみりん風調味料とともに料理に用いることにより、市販のみりんを使用した場合に準ずる程度に、コク・熟成感、料理の風味、まろやかさ・味のまとまりが向上することが分かった。
【0028】
みりん風調味料は酒税のかからないみりん様発酵性調味液であり、みりんとの主な違いはアルコール含量である。しかしながら、料理に使用したとき、みりん風調味料とみりんの官能的差異は大きく異なる。そこで、上記のように、みりん風調味料を用いた料理の調理過程において、実施例1の濃縮有機酸発酵液を添加することにより、みりん特有のコク・熟成感や、まろやかさ、味のまとまりなどを補い、風味の良い料理とすることができる。また、本来時間をかけて調理することにより得られるコクや熟成感を容易に付与することができるので、調理時間を短縮することもできる。
【実施例6】
【0029】
下記表8のように調製した対照区、添加区をHLC−DISK(孔径0.2μm、関東科学株式会社製)でろ過後、高速液体クロマトグラフィー(D−7000形、株式会社日立製作所製)を用いて有機酸分析を行った。
【表8】

【0030】
その分析結果を図2に示す。図中、縦軸は検出信号強度、横軸は保持時間[分]を表す。また、添加区を実線で、対照区を破線で示している。図2では、保持時間0分から保持時間90分までの各ピークにおいて、添加区では、対照区には現れないピークが現れたり、ピークのリテンションタイムが変化したり、対照区に対する各ピークの高さ比が複雑に変化したりしている。
【0031】
有機酸は単体ではそれぞれに特有な呈味を有するが、アミノ酸や糖などの成分と複雑に混ざり合うことで濃厚感が増すと考えられている。実施例1の濃縮有機酸発酵液の添加による有機組成の複雑な変化によって、みりんが有するコクや熟成感がみりん風調味料に付与されたものと考えることができる。
【実施例7】
【0032】
(味噌への利用)
下記表9のように調製した対照区1,2及び添加区の3種類の味噌汁を用意した。これらの味噌汁のコク・熟成感、味噌の風味の2点について、味覚正常者である味覚パネラー11名に評価させる評点法による官能評価試験を行った。試験方法としては、各評価項目につき−4から+4まで9段階のレベルを設定し、対照区1の評価を−2、対照区2の評価を+2とする基準を設定し、この基準に基づいて添加区の評価を−4から+4のいずれかで回答させる方法をとった。この官能評価試験を表10に示す。
【表9】

【表10】

【0033】
表10に示すように、添加区は、コク・熟成感及び味噌の風味のいずれについても、対照区1よりも高い評価が得られた。また、添加区は、コク・熟成感及び味噌の風味のいずれについても、対照区2に準ずる評価が得られた。この結果より、実施例1の濃縮有機酸発酵液を市販の減塩味噌に対して4重量%程度添加することにより、市販の非減塩味噌に準ずる程度にコク・熟成感、味噌の風味が向上することが分かった。
【実施例8】
【0034】
(味噌を使った料理への利用)
下記表11のよう調理した対照区1、対照区2、添加区の3種類の料理を用意した。これらの料理のコク・熟成感、風味の良さ、まろやかさ・味のまとまりの3点について、味覚正常者である味覚パネラー7名に評価させる評点法による官能評価試験を行った。試験方法としては、各評価項目につき−4から+4まで9段階のレベルを設定し、対照区1の評価を−2、対照区2の評価を+2とする基準を設定し、この基準に基づいて添加区の評価を−4から+4のいずれかで回答させる方法をとった。この官能評価試験を表12に示す。
【表11】

【表12】

【0035】
表12に示すように、添加区は、コク・熟成感、料理の風味、まろやかさ・味のまとまりの全てにおいて、対照区1よりも高い評価が得られた。また、添加区は、コク・熟成感、料理の風味、まろやかさ・味のまとまりのいずれについても、対照区2に準ずる評価が得られた。この結果より、実施例1の濃縮有機酸発酵液を市販の減塩味噌とともに料理に用いることにより、市販の非減塩味噌を使用した場合に準ずる程度に、コク・熟成感、料理の風味、まろやかさ・味のまとまりが向上することが分かった。また、本来時間をかけて調理することにより得られるコクや熟成感を容易に付与することができるので、調理時間を短縮することもできる。
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、濃縮有機酸発酵液を味噌、醤油、みりん、みりん風調味料等を含む飲食物に添加することにより、コク・熟成感を与え、風味を向上し、まろやかさ・味のまとまりを与えることができる。また、これらの効果により、飲食物の調理時間を短縮することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の呈味が改善され、調理時間が短縮化された飲食物及びその製造方法は、味噌、醤油、みりん、みりん風調味料等を含む飲食物の製造工程において容易に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例における濃縮有機酸発酵液を含む添加区と、含まない添加区との色分析を行った結果を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例における濃縮有機酸発酵液を添加した料理と、添加していない料理とについて、高速液体クロマトグラフィーにより成分分析を行った結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を、その色調に変化が生じるまで濃縮することによって得られる酢酸換算酸度0.5〜20の濃縮有機酸発酵液を0.05〜12重量%添加した調味料。
【請求項2】
タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を、その色調に変化が生じるまで濃縮することによって得られる酢酸換算酸度0.5〜20の濃縮有機酸発酵液を0.05〜12重量%添加した醤油。
【請求項3】
タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を、その色調に変化が生じるまで濃縮することによって得られる酢酸換算酸度0.5〜20の濃縮有機酸発酵液を0.05〜12重量%添加した味噌。
【請求項4】
タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を、その色調に変化が生じるまで濃縮することによって得られる酢酸換算酸度0.5〜20の濃縮有機酸発酵液を0.05〜12重量%添加したみりん又はみりん風調味料。
【請求項5】
タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を、その色調に変化が生じるまで濃縮することによって得られる酢酸換算酸度0.5〜20の濃縮有機酸発酵液を0.05〜12重量%添加した調味料を含む飲食物。
【請求項6】
タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を、その色調に変化が生じるまで濃縮することによって得られる酢酸換算酸度0.5〜20の濃縮有機酸発酵液を0.05〜12重量%添加した醤油を含む飲食物。
【請求項7】
タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を、その色調に変化が生じるまで濃縮することによって得られる酢酸換算酸度0.5〜20の濃縮有機酸発酵液を0.05〜12重量%添加した味噌を含む飲食物。
【請求項8】
タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を、その色調に変化が生じるまで濃縮することによって得られる酢酸換算酸度0.5〜20の濃縮有機酸発酵液を0.05〜12重量%添加したみりん又はみりん風調味料を含む飲食物。
【請求項9】
前記濃縮有機酸発酵液は、
任意量の濃縮前の有機酸発酵液及び前記量と同一量の濃縮後の有機酸発酵液について、
それぞれOD420nmにおける吸光度が0.001〜0.500の範囲内となるように希釈液で適宜希釈したときに、
前記濃縮前の有機酸発酵液及び濃縮後の有機酸発酵液それぞれに要した希釈液量を前記有機酸発酵液の任意量で除して得られる希釈倍率に対し、
前記濃縮前の有機酸発酵液及び濃縮後の有機酸発酵液それぞれの吸光度の数値を乗じて得られた数値をそれぞれの有機酸発酵液の色強度としたときに、
前記濃縮による有機酸発酵液の色調変化分が
1.1≦(濃縮後液の色強度)/(濃縮前液の色強度)≦50
となるように有機酸発酵液を濃縮して得られたものであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の調味料又は飲食物。
【請求項10】
前記濃縮有機酸発酵液は、
濃縮前の有機酸発酵液及び濃縮後の有機酸発酵液について、
1.1≦(濃縮前の総酸度/濃縮前の総窒素分)/(濃縮後の総酸度/濃縮後の総窒素分)≦50
となるように有機酸発酵液を濃縮して得られたものであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の調味料又は飲食物。
【請求項11】
前記有機酸発酵液が食酢類であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の調味料又は飲食物。
【請求項12】
請求項1から4のいずれかに記載の調味料を用いることにより調理時間を短縮したことを特徴とする飲食物の調理方法。
【請求項13】
請求項12に記載の調理方法により調理された飲食物。
【請求項14】
調味料の製造方法であって、
タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を、その色調に変化が生じるまで濃縮することによって得られる酢酸換算酸度0.5〜20の濃縮有機酸発酵液を0.05〜12重量%添加することにより、熟成感及び風味を向上させることを特徴とする製造方法。
【請求項15】
醤油の製造方法であって、
タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を、その色調に変化が生じるまで濃縮することによって得られる酢酸換算酸度0.5〜20の濃縮有機酸発酵液を0.05〜12重量%添加することにより、熟成感及び風味を向上させることを特徴とする製造方法。
【請求項16】
味噌の製造方法であって、
タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を、その色調に変化が生じるまで濃縮することによって得られる酢酸換算酸度0.5〜20の濃縮有機酸発酵液を0.05〜12重量%添加することにより、熟成感及び風味を向上させることを特徴とする製造方法。
【請求項17】
みりん又はみりん風調味料の製造方法であって、
タンパク質及び糖質原料を発酵させて得られる有機酸発酵液を、その色調に変化が生じるまで濃縮することによって得られる酢酸換算酸度0.5〜20の濃縮有機酸発酵液を0.05〜12重量%添加することにより、熟成感及び風味を向上させることを特徴とする製造方法。
【請求項18】
前記有機酸発酵液が食酢類であることを特徴とする請求項14から17のいずれかに記載の飲食物の製造方法。
【請求項19】
請求項14から18のいずれかに記載の製造方法により製造された調味料を用いて飲食物の調理をする方法であって、前記調味料により前記飲食物に薫蒸感及び風味を付与することにより、調理時間を短縮したことを特徴とする調理方法。
【請求項20】
請求項19に記載の調理方法により調理された飲食物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−267719(P2007−267719A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101224(P2006−101224)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(505324227)株式会社キックオフ (9)
【Fターム(参考)】