説明

回分式汚水処理システムおよび回分式汚水処理方法

【課題】維持管理性および運転効率性に優れた回分式汚水処理システムおよび回分式汚水処理方法を提供する。
【解決手段】回分式汚水処理システムは、汚水SWおよび活性汚泥SLを収容する回分槽11,12と、昇降型のインペラ21を有する縦軸型の曝気装置20と、流入工程における回分槽11,12への汚水SWの流入および排出工程における回分槽11,12からの浄水CWの流出を調整する流出入調整装置31,32と、流入工程において、回分槽11,12内の水位上昇に従ってインペラ21を気液界面付近まで上昇させながら汚水SWを曝気攪拌させ、排出工程において、次の流入工程に備えてインペラ21を事前に下降させるように、曝気装置20を制御する制御装置40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回分式汚水処理システムおよび回分式汚水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単一の回分槽内で時間的に区分して各処理工程を行うことを通じて、汚水中の汚濁物質を除去する回分式汚水処理システム(以下、回分式システムとも称する。)が知られている(下記非特許文献1参照)。このシステムでは、汚水の攪拌処理を伴う流入工程、沈殿工程、および排出工程を含むサイクルが単一の回分槽内で繰り返される。このシステムは、最終沈殿池を必要としないため建設コストを縮減でき、比較的小規模の汚水処理に好適に適用されている。
【0003】
回分式システムでは、流入工程において、回分槽内の曝気攪拌(好気攪拌)および攪拌(無酸素攪拌)が行われる。曝気攪拌および攪拌は、従来、いずれも回分槽の深部に設置された水中式の曝気攪拌装置または散気攪拌装置(散気装置と攪拌装置の組合せ)を用いて行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本農業集落排水協会−XIIG96型設計指針、社団法人 日本農業集落排水協会、平成9年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、水中式の装置は、駆動源、電気配線、吊上用のガイドパイプ・チェーン、散気用の空気管等を水中に設置しなければならず、システムの維持管理が煩雑となる。また、曝気または散気と同時に汚水を攪拌すると、気泡による流体密度の低下によりインペラ(攪拌羽根)が空回りし、攪拌効率が低下することが知られている。よって、水中式の装置を用いた回分式システムでは、維持管理面および運転効率面での改善が望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、維持管理性および運転効率性に優れた回分式汚水処理システムおよび回分式汚水処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、汚水および活性汚泥を収容する回分槽と、昇降型のインペラを有する縦軸型の曝気装置と、流入工程における回分槽への汚水の流入および排出工程における回分槽からの浄水の流出を調整する流出入調整装置と、汚水の流入工程において、回分槽内の水位上昇に従ってインペラを気液界面付近まで上昇させながら汚水を曝気攪拌させ、排出工程において、次の流入工程に備えてインペラを事前に下降させるように、曝気装置を制御する制御装置とを備える、回分式汚水処理システムが提供される。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、回分槽へ汚水を流入させる流入工程において、回分槽内の水位上昇に従って、回分槽に設置された縦軸型の曝気装置のインペラを気液界面付近まで上昇させながら汚水を曝気攪拌させるように、曝気装置を制御し、回分槽から浄水を流出させる排出工程において、次の流入工程に備えてインペラを事前に下降させるように、曝気装置を制御することを含む回分式汚水処理方法が提供される。
【0009】
このような回分式汚水処理システムおよび回分式汚水処理方法によれば、流入工程において、回分槽内の水位上昇に従ってインペラを気液界面付近まで上昇させながら回分槽内を曝気攪拌させるように、縦軸型の曝気装置が制御される。また、浄水の排出工程において、次の流入工程に備えてインペラを事前に下降させるように、曝気装置が制御される。
【0010】
従来、縦軸型の曝気装置は、処理槽内の気液界面付近での曝気攪拌に適しており、水位変動を伴う回分槽への適用性に劣ると考えられていた。しかし、上記構成によれば、水位変動を伴う回分槽においても、縦軸型の曝気装置を用いて気液界面付近で汚水を適切に曝気攪拌できる。縦軸型の曝気装置は、インペラのみを水中に配置すればよく、システムの維持管理が容易となる。また、気液界面付近で曝気攪拌を行うので、インペラの空回りにより攪拌効率が低下することもない。これにより、従来のシステムおよび方法と比べて維持管理性および運転効率性に優れた回分式汚水処理システムおよび回分式汚水処理方法を提供できる。
【0011】
また、汚水処理システムは、曝気装置および流出入調整装置がそれぞれに設置される複数の回分槽を備え、流出入調整装置が、連続供給される汚水を同時期に複数の回分槽のうちいずれか一つの回分槽に流入させるように、汚水の流入を調整し、制御装置が、流入工程にある回分槽の曝気装置を該工程に対応するように制御し、排出工程にある回分槽の曝気装置を該工程に対応するように制御してもよい。これにより、連続供給される汚水を複数の回分槽を用いて連続して効率的に処理できる。
【0012】
ここで、流出入調整装置が、回分槽の水位が低水位から高水位まで上昇するように、回分槽への汚水の流入を調整し、制御装置が、回分槽内の水位上昇に従ってインペラを低水位付近から高水位付近まで上昇させるように、曝気装置を制御するこれにより、低水位から高水位までの水位上昇を伴う回分槽においても、縦軸型の曝気装置を用いて気液界面付近で汚水を適切に曝気攪拌できる。
【0013】
ここで、制御装置が、流入工程の期間に亘って、気液界面付近の標準深さでの曝気攪拌と、標準深さよりも深い位置での無酸素攪拌とを繰り返すように、曝気装置を制御してもよい。これにより、曝気攪拌による好気状態での最適な硝化、無酸素攪拌による無酸素状態での最適な脱窒が行われる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、維持管理性および運転効率性に優れた回分式汚水処理システムおよび回分式汚水処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る二槽式の回分式システムの処理工程を示す図である。
【図2】二槽式システムの各処理工程における動作を示す図である。
【図3】図2に続いて二槽式システムの各処理工程における動作を示す図である。
【図4】図3に続いて二槽式システムの各処理工程における動作を示す図である。
【図5】図4に続いて二槽式システムの各処理工程における動作を示す図である。
【図6】縦軸型曝気装置のインペラの回分槽内での位置を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る三槽式の回分式システムの処理工程を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る貯留槽併用式の回分式システムの処理工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
図1から図6を参照しながら本発明の第1の実施形態に係る二槽式の回分式システム(以下、二槽式システムとも称する。)について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る二槽式システムの処理工程を示し、図2から図5は、二槽式システムの各処理工程における動作を示し、図6は、縦軸型の曝気装置20のインペラ21の回分槽10(回分槽の総称)内での位置を示している。
【0017】
[1.二槽式システムの処理サイクルの概要]
図1および図2に示すように、二槽式システムは、2つの回分槽11,12を含んでおり、各回分槽11,12では、流入工程P1、沈殿工程P2、および排出工程P3からなる処理サイクルが繰り返される。処理サイクルは、例えば、3時間の流入工程P1、1時間の沈殿工程P2、および2時間の排出工程P3の6時間周期で繰り返される。2つの回分槽11,12の処理サイクルは、互いに3時間ずらして繰り返される。つまり、第1の回分槽11で流入工程P1が完了して沈殿工程P2が開始されると、第2の回分槽12で流入工程P1が開始される。
【0018】
流入工程P1では、回分槽10へ汚水SWを流入させながら汚水SWが攪拌処理される。攪拌処理では、(無酸素)攪拌A1と曝気(好気)攪拌A2の組合せが繰り返される。攪拌処理は、例えば、3時間の流入工程P1の期間に渡って、0.5時間の攪拌A1と0.5時間の曝気攪拌A2の組合せを3回繰り返すことにより行われる。
【0019】
攪拌A1は、回分槽10内で活性汚泥SLの沈降を抑制し、曝気攪拌A2は、活性汚泥SLの沈降を抑制しつつ汚水SW中に大量の酸素を供給する。これにより、回分槽10内には、汚水SWの脱窒に適した無酸素状態と、汚水SWの硝化に適した好気状態とが繰り返し形成される。
【0020】
沈殿工程P2では、回分槽10に対する汚水SWの流入および流出とともに汚水SWの攪拌を停止した状態で、回分槽10内で汚水SW中の活性汚泥SLを沈殿させる。排出工程P3では、汚水SWの攪拌を停止し続けた状態で、回分槽10内の上澄水を浄水(処理済み汚水)CWとして選択的に排出させる。
【0021】
回分槽10内の水位WLは、通常、汚水SWの流入により低水位LWLから高水位HWLまで上昇し、浄水CWの流出によりHWLからLWLまで低下する。ここで、高水位HWLとは、回分槽10での汚水の最大収容量に相当する上限水位として設定される。低水位LWLとは、HWLより回分槽10の1処理サイクル当りの処理汚水量に相当する水深を減じた水位であり、上澄水排出時の下限水位として設定される。
【0022】
ここで、前述したように、二槽式システムでは、第1の回分槽11で流入工程P1が完了して沈殿工程P2が開始されると、第2の回分槽12で流入工程P1が開始される。よって、図1で流入工程P1に薄墨を施して示すように、回分槽10の上流側から連続供給される汚水SWが2つの回分槽11,12のいずれか1つに流入し、汚水SWが流入する回分槽10で流入工程P1が行われている間に、汚水SWが流入しない回分槽10で沈殿工程P2または排出工程P3が行われる。これにより、二槽式システムでは、連続供給される汚水SWを連続して効率的に処理することができる。
【0023】
[2.二槽式システムの構成]
図2を参照して二槽式システムの構成について説明する。図2に示すように、二槽式システムは、2つの回分槽11,12を含んでおり、それぞれの回分槽11,12には、縦軸型の曝気装置20および流出入調整装置31,32が設置されている。また、二槽式システムは、曝気装置20および流出入調整装置31,32の動作を制御する制御装置40をさらに含んでいる。
【0024】
2つの回分槽11,12は、汚水SWおよび活性汚泥SLをそれぞれに収容している。各回分槽11,12では、時間的に区分して各処理工程を行うことで、活性汚泥SLを用いて汚水SW中の汚濁物質が除去される。なお、回分槽10は、長円形や馬蹄形などの循環水路でもよく、通常の水槽でもよい。
【0025】
各回分槽11,12に設置された曝気装置20は、昇降型のインペラ(攪拌羽根)21を有している。インペラ21は、回分槽10の深さ方向に延びる縦軸22の下端に固定されている。縦軸22は、軸線を中心として回転自在に支持されており、モータ等の回転駆動装置23により回転駆動される。縦軸22は、さらに軸線方向に昇降自在に支持されており、ジャッキ、ボールネジ、油圧・電動・空気圧シリンダ、ウォームギア、ベベルギア、ラック・ピニオンギア等の昇降装置24により昇降駆動される。なお、各回分槽11,12に設置される曝気装置20の台数は、2台でもよく1台または3台以上でもよい。
【0026】
各回分槽11,12に設置された流出入調整装置31,32は、各回分槽11,12の処理工程に応じて、回分槽10に対する汚水SWの流入および浄水CWの流出を調整する。汚水SWは、回分槽10の上流側から汚水流入路51を通じて回分槽10に流入し、浄水CWは、浄水流出路(不図示)を通じて回分槽10の下流側に流出する。
【0027】
流入調整装置31は、汚水流入路51に設けられた調整弁(電磁弁など)31であり、汚水流入路51から回分槽10への汚水SWの流入を調整する。なお、汚水流入路51は、回分槽10の上流側の水路などに対して2つの回分槽11,12を同時に接続する1つの分岐路でもよく、個別に接続する2つの水路でもよい。
【0028】
流出調整装置32は、例えば、回分槽10の側面に設けられた可動堰32aと、これを駆動する堰駆動装置32bとからなり、可動堰32aから上澄み水を越流させることにより、回分槽10から浄水流出路への浄水CWの流出を調整する。なお、可動堰32aは、回分槽10内の上澄み水を流出可能な排水ポンプその他の排水設備により置き換えられてもよい。
【0029】
制御装置40は、2つの回分槽11,12に設置された、曝気装置20および流出入調整装置31,32の動作を制御する。制御装置40は、曝気装置20について、インペラ21の回転駆動(回転速度、回転方向など)および昇降駆動(昇降位置、昇降速度など)を制御する。制御装置40は、流出入調整装置31,32について、汚水SWの流入調整(調整弁31の開度など)および浄水CWの流出調整(可動堰32aのゲート開度など)を制御する。
【0030】
制御装置40は、処理サイクル等の処理条件に関するデータを保持するとともに、タイマ機能を有している。これにより、制御装置40は、タイマを用いて2つの回分槽11,12の処理サイクルを連動させながら、曝気装置20および流出入調整装置31、32の動作を制御する。
【0031】
さらに、制御装置40は、回分槽10内の水位WL、インペラ21の位置、回転速度、調整弁31の弁開度、可動堰32aのゲート開度などのフィードバック情報を取得して制御に利用してもよい。また、制御装置40は、水槽10内の気液界面付近の溶存酸素量(DO)を取得してインペラ21の位置、回転速度などの制御に利用してもよい。
【0032】
なお、制御装置40は、2つの回分槽11,12に対して1つのみ設けられてもよく、2つの回分槽11,12に対してそれぞれに設けられてもよい。また、制御装置40は、曝気装置20用の制御装置と流出入調整装置31,32用の制御装置とに区分されてもよい。また、図2から図5では、制御装置40を曝気装置20および流出入調整装置31,32と結ぶ通信制御線(有線または無線)などの表示が省略されている。
【0033】
[3.二槽式システムの動作]
図2から図6を参照して二槽式システムの動作について説明する。図2から図5に示すように、二槽式システムの各回分槽11,12では、各処理工程に応じて曝気装置20および流出入調整装置31,32の動作が制御される。
【0034】
図2に示す状況では、第1の回分槽11で流入工程P1が行われ、第2の回分槽12で沈殿工程P2が行われている。
【0035】
制御装置40は、流入工程P1にある第1の回分槽11について、堰駆動装置32bを制御してHWLに対応する高さに可動堰32aのゲートを維持した状態で、調整弁31を制御して第1の回分槽11へ汚水SWを流入させる。よって、第1の回分槽11では、汚水SWの流入に従って水位WLがLWLからHWLに向けて上昇する。一方、制御装置40は、沈殿工程P2にある第2の回分槽12について、堰駆動装置32bを制御してHWLに対応する高さにゲートを維持した状態で、調整弁31を制御して第2の回分槽12への汚水SWの流入を停止する。よって、第2の回分槽12では、水位WLがHWLに維持される。
【0036】
第1の回分槽11では、制御装置40は、回分槽11内の水位上昇に従って、昇降装置24を制御して縦軸22の上昇駆動によりインペラ21を上昇させる。なお、インペラ21の上昇は、水位上昇に従って連続的に調整されてもよく、断続的に調整されてもよい。また、制御装置40は、回転駆動装置23を制御して縦軸22の回転駆動によりインペラ21を回転させる。
【0037】
流入工程P1では、回分槽10内の水位上昇に従って、(無酸素)攪拌A1と曝気(好気)攪拌A2を組み合わせた攪拌処理が行われる。制御装置40は、以下で説明するように、攪拌A1と曝気攪拌A2のそれぞれに応じて、回転駆動装置23および昇降装置24の動作を制御する。
【0038】
図6に示すように、曝気装置20の縦軸22の下端には、複数の羽根状のインペラ21が放射状に固定されている。各インペラ21は、側面としてのインペラ対向面にコーン状板21aが設けられるとともにその上部に折曲部21bが設けられており、回転時に汚水SWを攪拌する。そして、インペラ21では、コーン状板21aの上端部が回分槽10内の水位WLと一致する位置(気液界面付近の位置)が、汚水SWに対するインペラ21の標準位置Sとされている。
【0039】
制御装置40は、インペラ21を気液界面付近まで上昇させた状態で、インペラ21の回転速度を調整することで、攪拌A1と曝気攪拌A2を行ってもよい。この場合、制御装置40は、水位上昇に従って昇降装置24を制御してインペラ21を前述した標準位置Sまで上昇させる。そして、制御装置40は、回転駆動装置23を制御して、攪拌A1時にはインペラ21を低速で回転駆動させる一方で、曝気攪拌A2時には高速で回転駆動させる。ここで、インペラ21の回転速度は、攪拌A1時には汚水SWに酸素が殆ど供給されないように調整される一方で、曝気攪拌A2時には汚水SWに酸素が十分に供給されるように調整される。
【0040】
また、制御装置40は、汚水SWに対するインペラ21の位置を回分槽10内の水面付近に調整した上で、その位置を再調整することで、攪拌A1と曝気攪拌A2を行ってもよい。この場合、制御装置40は、水位上昇に従って昇降装置24を制御してインペラ21を水面付近まで上昇させる。さらに、制御装置40は、図6に示すように、攪拌A1時には標準位置Sからインペラ21をL=200mm〜600mm程度まで水没させ、曝気攪拌A2時には標準位置Sにインペラ21を配置させる。
【0041】
また、制御装置40は、回転駆動装置23を制御して、攪拌A1時および曝気攪拌A2時にインペラ21を一定の速度で回転駆動させる。ここで、インペラ21の水没深さLは、インペラ21の回転により汚水SWに酸素が殆ど供給されないように調整される。
【0042】
また、制御装置40は、インペラ21の回転速度を調整するとともにインペラ21の位置を再調整することで、攪拌A1と曝気攪拌A2を行ってもよい。また、制御装置40は、回分槽10内の水位WL、インペラ21の位置、回転速度、調整弁31の弁開度、可動堰32aのゲート開度などのフィードバック情報、および/または水槽10内の気液界面付近の溶存酸素量に基づいて、攪拌A1と曝気攪拌A2の制御を調整してもよい。
【0043】
いずれの方法でも、縦軸型の曝気装置20を用いて、流入工程P1中の水位変動に従って気液界面付近で汚水SWを適切に曝気攪拌A2できる。これにより、水位変動を伴う回分槽10においても、縦軸型の曝気装置20を用いて適切に汚水を処理できる。また、攪拌A1との組合せにより、汚水SWの脱窒に適した無酸素状態と硝化に適した好気状態とを回分槽10内に形成して窒素除去効率を向上できる。
【0044】
図3に示す状況では、第1の回分槽11で流入工程P1が行われ、第2の回分槽12で排出工程P3が行われている。
【0045】
制御装置40は、流入工程P1にある第1の回分槽11について、図2で説明した攪拌処理を継続する。よって、第1の回分槽11では、汚水SWの流入に従って水位WLがHWLに向けて上昇を続ける。一方、制御装置40は、沈殿工程P2を完了して排出工程P3にある第2の回分槽12について、堰駆動装置32bを制御してHWLからLWLまで可動堰32aのゲートを徐々に下降させる。よって、第2の回分槽12では、浄水CWの排出に従って水位WLがHWLからLWLまで低下する。
【0046】
排出工程P3では、制御装置40は、排出工程P3が完了するまでに、昇降装置24を制御して縦軸22の下降駆動によりインペラ21を下降させる。インペラ21は、排出工程P3の間にHWL付近からLWL付近まで低下される。インペラ21は、次の処理サイクルの攪拌処理が開始される位置まで下降されることが望ましい。なお、インペラ21の下降は、水位低下に従って連続的に調整されてもよく、断続的に調整されてもよい。
【0047】
図4に示す状況では、第1の回分槽11で沈殿工程P2が行われ、第2の回分槽12で流入工程P1が行われている。
【0048】
制御装置40は、沈殿工程P2にある第1の回分槽11について、堰駆動装置32bを制御してHWLに対応する高さに可動堰32aのゲートを維持した状態で、調整弁31を制御して第1の回分槽11への汚水SWの流入を停止する。よって、第1の回分槽11では、水位WLがHWLに維持される。一方、制御装置40は、流入工程P1にある第2の回分槽12について、堰駆動装置32bを制御してHWLに対応する高さまでゲートを上昇させ、調整弁31を制御して第2の回分槽12へ汚水SWを流入させる。よって、第2の回分槽12では、汚水SWの流入に従って水位WLがLWLからHWLに向けて上昇する。
【0049】
第2の回分槽12では、制御装置40は、回分槽12内の水位上昇に従って、昇降装置24を制御して縦軸22の上昇駆動によりインペラ21を上昇させる。また、制御装置40は、回転駆動装置23を制御して縦軸22の回転駆動によりインペラ21を回転させる。ここで、第2の回分槽12では、流入工程P1が開始される前に、インペラ21がLWL付近、特に(無酸素)攪拌A1を開始するに適した位置まで下降している。これにより、流入工程P1の開始と同時に攪拌A1を開始できる。
【0050】
図5に示す状況では、第1の回分槽11で排出工程P3が行われ、第2の回分槽12で流入工程P1が行われている。
【0051】
制御装置40は、排出工程P3にある第1の回分槽11について、堰駆動装置32bを制御してHWLからLWLまで可動堰32aのゲートを徐々に下降させて浄水CWを排水させる。よって、第1の回分槽11では、浄水CWの排出に従って水位WLがHWLからLWLまで低下する。また、インペラ21は、次の処理サイクルの攪拌処理が開始される位置まで下降される。一方、制御装置40は、流入工程P1にある第2の回分槽12について、攪拌処理を継続する。よって、第2の回分槽12では、汚水SWの流入に従って水位WLがHWLに向けて上昇を続ける。
【0052】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係る二槽式システムは、2つの回分槽11,12を備え、連続供給される汚水SWを同時期にいずれか1つの回分槽10に流入させるように汚水SWの流入を調整し、流入工程P1にある回分槽10とその他の工程にある回分槽10にそれぞれに設置された曝気装置20をそれぞれの工程に対応するように制御する。
【0053】
そして、流入工程P1の期間と沈殿工程P2および排出工程P3の期間とが略同一となるように、回分槽10に対する汚水SWおよび浄水CWの流出入が調整され、流入工程P1の期間に汚水SWが攪拌A1または曝気攪拌A2される。これにより、連続供給される汚水SWを2つの回分槽11,12を用いて連続して効率的に処理することができる。
【0054】
<第2の実施形態>
つぎに、図7を参照しながら本発明の第2の実施形態に係る三槽式の回分式システム(以下、三槽式システムとも称する。)について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る三槽式システムの処理工程を示している。
【0055】
図7に示すように、三槽式システムは、3つの回分槽11,12,13を含んでおり、各回分槽11,12,13では、流入工程P1、攪拌工程P4、沈殿工程P2、および排出工程P3からなる処理サイクルが繰り返される。処理サイクルは、例えば、2時間の流入工程P1、1時間の攪拌工程P4、1時間の沈殿工程P2、および2時間の排出工程P3の6時間周期で繰り返される。3つの回分槽11,12,13の処理サイクルは、互いに2時間ずらして繰り返される。
【0056】
つまり、第1の回分槽11で流入工程P1が完了して攪拌工程P4が開始されると、第2の回分槽12で流入工程P1が開始され、さらに第2の回分槽12で流入工程P1が完了して攪拌工程P4が開始されると、第3の回分槽で流入工程P1が開始される。
【0057】
流入工程P1では、回分槽10へ汚水SWを流入させながら汚水SWが攪拌処理される。攪拌処理では、(無酸素)攪拌A1と曝気(好気)攪拌A2の組合せが繰り返される。攪拌処理は、例えば、2時間の流入工程P1の期間に渡って、0.5時間の攪拌A1と0.5時間の曝気攪拌A2の組合せを2回繰り返すことにより行われる。攪拌工程P4では、回分槽10へ汚水SWを流入させずに、(無酸素)攪拌A1と曝気(好気)攪拌A2が行われる。攪拌工程P4は、例えば、1時間の非流入期間に渡って、0.5時間の攪拌A1と0.5時間の曝気攪拌A2の組合せにより行われる。
【0058】
ここで、前述したように、三槽式システムでは、第1の回分槽11で流入工程P1が完了して攪拌工程P4が開始されると、第2の回分槽12で流入工程P1が開始され、さらに第2の回分槽12で流入工程P1が完了して攪拌工程P4が開始されると、第3の回分槽13で流入工程P1が開始される。
【0059】
よって、図7で流入工程P1に薄墨を施して示すように、回分槽10の上流側から連続供給される汚水SWが3つの回分槽11,12,13のいずれか1つに流入し、汚水SWが流入する回分槽10で流入工程P1が行われている間に、汚水SWが流入しない回分槽10で攪拌工程P4、沈殿工程P2および排出工程P3のいずれかが行われる。これにより、三槽式システムでは、連続供給される汚水SWを連続して効率的に処理することができる。
【0060】
三槽式システムは、3つの回分槽11,12,13と、それぞれの回分槽11,12,13に設置された縦軸型の曝気装置20および流出入調整装置31,32と、3つの回分槽11,12,13の曝気装置20および流出入調整装置31,32の動作を制御する制御装置40とを含んでいる。なお、その他の構成については、前述した二槽式システムと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0061】
三槽式システムでは、流入工程P1と沈殿工程P2の間に攪拌工程P4が行われる。攪拌工程P4では、汚水SWの流入および流出を停止した状態で、(無酸素)攪拌A1および曝気(好気)攪拌A2が行われる。このように、流入工程P1と沈殿工程P2の間の攪拌工程P4において、汚水の流入を伴わずに行う攪拌処理により汚水SW中の汚濁物質を十分に分解できるので、システムによる窒素除去効率が向上する。なお、その他の動作については、前述した二槽式システムと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0062】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態に係る三槽式システムは、3つの回分槽11,12,13を備え、連続供給される汚水SWを同時期にいずれか1つの回分槽10に流入させるように汚水SWの流入を調整し、流入工程P1にある回分槽10とその他の工程にある回分槽10にそれぞれに設置された曝気装置20をそれぞれの工程に対応するように制御する。
【0063】
そして、流入工程P1の期間と、攪拌工程P4および沈殿工程P2の期間と、排出工程P3の期間とが略同一となるように、回分槽10に対する汚水SWおよび浄水CWの流出入が調整され、流入工程P1および攪拌工程P4の期間に汚水SWが攪拌A1または曝気攪拌A2される。これにより、連続供給される汚水SWを3つの回分槽11,12,13を用いて連続して効率的に処理することができる。
【0064】
<第3の実施形態>
つぎに、図8を参照しながら本発明の第3の実施形態に係る貯留槽併用式の回分式システム(以下、貯留槽併用式システムとも称する。)について説明する。図8は、本発明の第3の実施形態に係る貯留槽併用式システムの処理工程を示している。
【0065】
図8に示すように、貯留槽併用式システムは、回分槽10と、回分槽10の上流側に設けられた貯留槽15を含んでいる。回分槽10では、流入工程P1、沈殿工程P2、および排出工程P3からなる処理サイクルが繰り返される。処理サイクルは、例えば、3時間の流入工程P1、1時間の沈殿工程P2、および2時間の排出工程P3の6時間周期で繰り返される。
【0066】
一方、貯留槽15では、貯留工程Pr1および非貯留工程Pr2からなる貯留サイクルが繰り返される。貯留サイクルは、例えば、3時間の貯留工程Pr1および3時間の非貯留工程Pr2の6時間周期で繰り返される。貯留サイクルは、貯留槽15の貯留量が最大貯留量を超えない範囲で繰り返される。
【0067】
回分槽10では、貯留槽15が非貯留工程Pr2にある間に流入工程P1が行われ、貯留工程Pr1にある間に沈殿工程P2および排出工程P3が行われる。流入工程P1では、貯留槽15を通過した汚水SWを回分槽10へ流入させながら汚水SWが攪拌処理される。よって、図8で流入工程P1および貯留工程Pr1に薄墨を施して示すように、貯留槽15に連続流入する汚水SWは、流入工程P1では貯留槽15を通過して回分槽10に流入し、回分槽10内で処理される一方で、沈殿工程P2および排出工程P3では貯留槽15に貯留される。これにより、貯留槽併用式システムでは、貯留槽15に連続流入する汚水SWを連続して効率的に処理することができる。
【0068】
貯留槽併用式システムは、回分槽10と貯留槽15を含んでおり、回分槽10に設置された縦軸型の曝気装置20および流出入調整装置31,32と、曝気装置20および流出入調整装置31,32の動作を制御する制御装置40を含んでいる。また、貯留槽併用式システムは、貯留槽15に対する汚水SWの流入および流出(放流を含む)を調整する貯留調整装置(不図示)をさらに含んでいる。なお、その他の構成については、前述した二槽式システムと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0069】
貯留槽併用式システムでは、貯留槽15に連続流入する汚水SWは、流入工程P1では貯留槽15を通過して回分槽10に流入し、回分槽10内で処理される一方で、沈殿工程P2および排出工程P3では、貯留槽15に貯留される。なお、その他の動作については、前述した二槽式システムと同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0070】
以上説明したように、本発明の第3の実施形態に係る貯留槽併用式システムは、回分槽10と貯留槽15を備え、流入工程P1では貯留槽15を通じて回分槽10に汚水SWを流入させ、沈殿工程P2および排出工程P3では回分槽10に汚水SWを流入させずに貯留槽15に貯留させる。また、貯留槽15への汚水SWの連続流入が途絶えると、貯留槽15から回分槽10へ汚水SWを放流させ、放流された汚水SWを処理させる。これにより、貯留槽15を用いて汚水SWを連続して効率的に処理することができる。
【0071】
以上、本発明の第1から第3の実施形態に係る回分式汚水処理システムおよび回分式汚水処理方法について説明した。本発明の実施形態によれば、流入工程P1において、回分槽10内の水位上昇に従ってインペラ21を気液界面付近まで上昇させながら回分槽10内を曝気攪拌A2させるように、縦軸型の曝気装置20が制御される。また、浄水CWの排出工程P3において、次の流入工程P1に備えてインペラ21を事前に下降させるように、曝気装置20が制御される。
【0072】
従来、縦軸型の曝気装置20は、処理槽内の気液界面付近での曝気攪拌A2に適しており、水位変動を伴う回分槽10への適用性に劣ると考えられていた。しかし、上記構成によれば、水位変動を伴う回分槽10においても、縦軸型の曝気装置20を用いて気液界面付近で汚水SWを適切に曝気攪拌A2できる。縦軸型の曝気装置20は、インペラ21のみを水中に配置すればよく、システムの維持管理が容易となる。また、気液界面付近で曝気攪拌A2を行うので、インペラ21の空回りにより攪拌効率が低下することもない。これにより、従来のシステムおよび方法と比べて維持管理性および運転効率性に優れた回分式汚水処理システムおよび回分式汚水処理方法を提供できる。
【0073】
なお、上記実施形態では、特定の処理サイクル(処理工程の組合せ、各処理工程の工程時間)および特定の処理周期を回分式システムに適用する場合について説明した。しかし、他の処理サイクルおよび他の処理周期を回分式システムに適用してもよい。
【0074】
また、第2の実施形態では、3つの回分槽11,12,13を含む三槽式システムに本発明の原理を適用する場合について説明したが、本発明の原理は、処理サイクルを調整することで、4つ以上の回分槽を含む多槽式システムにも同様に適用できる。また、第3の実施形態では、1つの貯留槽15と1つの回分槽10を含む貯留槽併用式システムに本発明の原理を適用する場合について説明したが、本発明の原理は、2つ以上の貯留槽および/または2つ以上の回分槽を含む貯留槽併用式システムにも同様に適用できる。
【0075】
また、上記実施形態では、回分槽10内の水位上昇に従ってインペラ21を上昇させながら、(無酸素)攪拌A1と曝気(好気)攪拌A2を行う場合について説明した。しかし、回分槽10内の水位上昇に従ってインペラ21を上昇させながら、回分槽10内の気液界面付近で曝気(好気)攪拌A2のみを行うようにしてもよい。また、上記実施形態では、1つの回分槽10内で無酸素状態または好気状態のいずれかを形成する場合について説明した。しかし、回分槽10の形状、インペラ21の回転方向や回転数等を工夫することで、1つの回分槽10内で無酸素状態の領域と好気状態の領域を同時に形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10,11,12,13…回分槽、15…貯留槽、20…曝気装置、21…インペラ、22…縦軸、23…回転駆動装置、24…昇降装置、31…調整弁(流入調整装置)、32…流出調整装置、32a…可動堰、32b…堰駆動装置、40…制御装置、51…汚水流入路、SW…汚水、SL…活性汚泥、CL…浄水、WL…水位、HWL…高水位、LWL…低水位、P1…流入工程、P2…沈殿工程、P3…排出工程、P4…攪拌工程、A1…(無酸素)攪拌、A2…曝気(好気)攪拌、Pr1…貯留工程、Pr2…非貯留工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水および活性汚泥を収容する回分槽と、
昇降型のインペラを有する縦軸型の曝気装置と、
流入工程における前記回分槽への汚水の流入および排出工程における前記回分槽からの浄水の流出を調整する流出入調整装置と、
前記流入工程において、前記回分槽内の水位上昇に従って前記インペラを気液界面付近まで上昇させながら前記汚水を曝気攪拌させ、前記排出工程において、次の流入工程に備えて前記インペラを事前に下降させるように、前記曝気装置を制御する制御装置と
を備える、回分式汚水処理システム。
【請求項2】
前記曝気装置および前記流出入調整装置がそれぞれに設置される複数の回分槽を備え、
前記流出入調整装置が、連続供給される汚水を同時期に前記複数の回分槽のうちいずれか一つの回分槽に流入させるように、前記汚水の流入を調整し、
前記制御装置が、前記流入工程にある前記回分槽の前記曝気装置を該工程に対応するように制御し、前記排出工程にある前記回分槽の前記曝気装置を該工程に対応するように制御する、請求項1に記載の回分式汚水処理システム。
【請求項3】
前記流出入調整装置が、前記回分槽の水位が低水位から高水位まで上昇するように、前記回分槽への前記汚水の流入を調整し、
前記制御装置が、前記回分槽内の水位上昇に従って前記インペラを低水位付近から高水位付近まで上昇させるように、前記曝気装置を制御する、請求項1または2に記載の回分式汚水処理システム。
【請求項4】
前記制御装置が、前記流入工程の期間に亘って、気液界面付近の標準深さでの曝気攪拌と、該標準深さよりも深い位置での無酸素攪拌とを繰り返すように、前記曝気装置を制御する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回分式汚水処理システム。
【請求項5】
回分槽へ汚水を流入させる流入工程において、前記回分槽内の水位上昇に従って、前記回分槽に設置された縦軸型の曝気装置のインペラを気液界面付近まで上昇させながら前記汚水を曝気攪拌させるように、前記曝気装置を制御し、
前記回分槽から浄水を流出させる排出工程において、次の流入工程に備えて前記インペラを事前に下降させるように、前記曝気装置を制御すること
を含む回分式汚水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−22470(P2013−22470A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155980(P2011−155980)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(507036050)住友重機械エンバイロメント株式会社 (88)
【Fターム(参考)】