説明

回路装置およびその製造方法

【課題】ケース材に積層して配置された複数の回路基板を効率的に樹脂封止することを可能とする回路装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】混成集積回路装置10には、ケース材12に重畳した第1回路基板18および第2回路基板20が組み込まれている。そして、第1回路基板18の上面には第1回路素子22が配置され、第2回路基板20の上面には第2回路素子が配置されている。更に、ケース材12の側壁部に開口部15が設けてあり、この開口部15によりケース材12の内部空間と外部とが連通されている。従って、樹脂封止の工程に於いては、この開口部15を経由してケース材12の内部空間に封止樹脂11を外部から注入することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路装置およびその製造方法に関し、特に、回路基板の上面に形成された混成集積回路がケース材により封止される回路装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9を参照して、ケース材111が採用された構成集積回路装置150の構成を説明する。混成集積回路装置150は、アルミニウム等の金属から成る基板101と、基板101の上面を被覆するように形成された絶縁層102と、絶縁層102の上面に形成された導電パターン103と、導電パターン103に電気的に接続されたトランジスタ等の回路素子110を備えている。そして、ケース材111および封止樹脂108により、回路素子110が封止された構成となっている。
【0003】
具体的には、ケース材111は、略額縁形状を有して基板101の側面に当接している。更に、基板101の上面に封止するための空間を確保するために、ケース材111の上端部は、基板101の上面よりも上方に位置している。そして、基板101の上方にてケース材111により囲まれる空間には封止樹脂108が充填され、この封止樹脂108により半導体素子等の回路素子110が被覆されている。この構成により、基板101が比較的大きいものであっても、ケース材111等により囲まれる空間に封止樹脂108を充填させることで、基板101の上面を組み込まれた回路素子を樹脂封止することができる。
【特許文献1】特開2007−036014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した混成集積回路装置150では、基板101の上面にはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワートランジスタや、このパワートランジスタを駆動させるドライバICが実装されていた。そして、このドライバICを制御するマイコン等の制御素子は、混成集積回路装置150が実装される実装基板側に実装されていた。従って、実装基板側に於いて、モーター等の負荷の駆動を制御する回路の実装に必要とされる面積が大きい問題があった。
【0005】
混成集積回路装置150の実装密度を向上させる構成として、ケース材111の内部に複数の基板101を重畳して設け、各々の基板101に回路素子を組み込む構成が考えられる。しかしながら、この様に複数の基板101をケース材111に組み込むと、ケース材111および基板101により密閉される空間を樹脂封止することが困難である問題があった。
【0006】
本発明の目的は、ケース材に積層して配置された複数の回路基板を効率的に樹脂封止することを可能とする回路装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回路装置は、ケース材と、前記ケース材に組み込まれると共に、重畳して配置された第1回路基板および第2回路基板と、前記第1回路基板の主面に固着された第1回路素子と、前記第2回路基板の主面に固着された第2回路素子と、少なくとも前記第1回路基板の前記主面および前記第1回路素子を被覆する封止樹脂と、を具備し、前記封止樹脂が前記ケース材の内部空間に注入されるための開口部を前記ケース材に設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明の回路装置の製造方法は、主面に第1回路素子が固着された第1回路基板をケース材に組み込む工程と、主面に第2回路素子が固着された第2回路基板を前記ケース材に組み込む工程と、前記ケース材、前記第1回路基板および前記第2回路基板に囲まれる内部空間に封止樹脂を注入して、前記第1回路基板の主面および前記第1回路素子を封止する工程と、を具備し、前記封止する工程では、前記ケース材に設けた開口部から前記内部空間に前記封止樹脂を注入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケースの内部空間に封止樹脂を注入するための開口部を、ケース材を開口して設けている。このことにより、ケースに組み込まれる第1回路基板や第2回路基板に、樹脂を注入するための開口部を設ける必要がないので、これらの基板の実装密度を下げることなく、樹脂注入のための開口部を形成することができる。
【0010】
更に、本発明によれば、開口部に面するケース材の内壁を傾斜面としている。このことにより、上方からケース材の開口部に注入された液状の封止樹脂は、傾斜面に沿ってケース材の内部空間にスムーズに充填される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1を参照して、回路装置の一例として混成集積回路装置10の構成を説明する。図1(A)は混成集積回路装置10の斜視図であり、図1(B)は図1(A)のB−B’線に於ける断面図である。
【0012】
図1(A)および図1(B)を参照して、混成集積回路装置10には、ケース材12に第1回路基板18および第2回路基板20が重畳して組み込まれている。そして、第1回路基板18の上面には第1回路素子22(例えばパワートランジスタ)が配置され、第2回路基板20の上面には第2回路素子(例えばマイコン)が配置されている。更に、ケース材12の内部には封止樹脂11が充填され、この封止樹脂11により、第1回路基板18の上面、第1回路素子22、第2回路基板20および第2回路素子24が封止されている。
【0013】
ケース材12は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂またはアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂を射出成形することにより形成されており、概略的に額縁状の形状を呈している。図1(B)を参照すると、ケース材12の上面および下面は開口部と成っており、上面の開口部は第2回路基板20により塞がれ、下面の開口部は第1回路基板18により塞がれている。また、ケース材12の左右端部には、ビス止めのための孔部が設けられている。更に、図1(A)を参照して、ケース材12は、紙面上にて左右に対向する第1側壁部12Aおよび第2側壁部12Bと、紙面上にて上下方向に対向する第3側壁部12Cおよび第4側壁部12Dから主に構成されている。
【0014】
また、ケース材12の角部には、製造工程にて封止樹脂11を内部空間に注入させるための開口部15が4つ設けられている。これらの開口部15は、封止樹脂11を形成する工程に於いて、ケース材12の内部空間に封止樹脂11を注入するための経路として機能している。この事項の詳細は後述する。
【0015】
第1回路基板18は、ケース材12の下部の開口部に組み込まれており、アルミニウム(Al)または銅(Cu)あるいはこれらの金属を主材料とする合金から構成されている。ここでは、アルミニウムから成る2枚の金属基板が第1回路基板18として採用されているが、1枚の金属基板から第1回路基板18が構成されても良い。第1回路基板18の詳細は、図2(B)を参照して説明する。
【0016】
第2回路基板20は、ケース材12の上部の開口部に組み込まれており、プリント基板(printed circuit board:PCB)が採用される。具体的には、紙フェノール基板、ガラスエポキシ基板等が、第2回路基板20として採用される。また、第2回路基板20として、セラミックから成る基板が採用されても良い。更に、第2回路基板20には、上面のみに導電パターン21が形成されても良いし、両面に導電パターン21が設けられても良い。更には、3層以上に積層された導電パターン21が第2回路基板20に構成されても良い。
【0017】
第1回路素子22は、第1回路基板18の上面に形成された導電パターン38に電気的に接続される素子である。第1回路素子22としては、例えば1アンペア以上の電流のスイッチングを行うパワートランジスタが採用される。ここで、パワートランジスタとしては、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ(Field effect transistor:FET)または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated gate bipolar transistor:IGBT)が採用される。更に、第1回路素子22としては、トランジスタ以外の素子も全般的に採用可能であり、例えばLSIやダイオード等の能動素子や、チップコンデンサやチップ抵抗等の受動素子が採用される。
【0018】
また、第1回路素子22がパワートランジスタ等の半導体素子である場合は、その裏面が半田等の導電性接着材を介して固着される。更には、第1回路素子22と導電パターン38との間に、銅などの金属から成るヒートシンクが設けられても良い。そして、第1回路素子22の上面に形成された電極は、金属細線42を経由して導電パターン38に接続される。
【0019】
更に、第1回路素子22としては、整流回路を構成するダイオード、平滑回路を構成するコイルやコンデンサ、上記したパワートランジスタの制御電極に制御信号を印加するドライバIC、サーミスタ等が採用される。
【0020】
第2回路素子24は第2回路基板20の表面に形成された導電パターン21に電気的に接続される素子であり、一般的には上記した第1回路素子22よりも動作温度が低い回路素子が採用される。具体例としては、例えば、マイクロコンピュータ(マイコン)やアルミ電解コンデンサ等が、第2回路素子24として第2回路基板20に実装される。更に、第2回路素子24としては、第1回路素子22と同様に、能動素子および受動素子が全般的に採用される。また、第2回路素子24としては、水晶発振器や半導体メモリが採用されても良い。
【0021】
また、図1(B)を参照すると、マイコンであるLSIは樹脂封止されたパッケージの状態で第2回路基板20の上面に実装されている。しかしながら、マイコンは、ベアチップの状態で第2回路基板20の表面に形成された導電パターン21に固着されても良い。
【0022】
封止樹脂11は、各回路基板に固着された回路素子が被覆されるようにケース材12の内部に充填されている。具体的には、封止樹脂11は、ケース材12の各側壁部、第1回路基板18および第2回路基板20に囲まれる内部空間に充填される。更に、第2回路基板20の上面および第2回路素子24が被覆されるように封止樹脂11は形成されている。封止樹脂11は、アルミナ(Al)やシリカ(SiO)等のフィラーが混入されたエポキシ樹脂等の樹脂材料から成る。この様に、第1回路素子22および第2回路素子24を封止樹脂11で被覆することにより、これらの素子の耐湿性および耐振動性が向上される。
【0023】
図1(A)を参照して、ケース材12の手前側の開口部は、全面的に封止樹脂11により覆われており、この封止樹脂11の表面から外部に第1リード28および第2リード30が導出している。第1リード28および第2リード30の詳細は図2(A)を参照して説明する。第1リード28および第2リード30は、混成集積回路装置10の内部に設けられた回路と外部とを接続させる接続手段として機能する。更には、図1(B)を参照して、上記した第1リード28は、第1回路基板18に実装された第1回路素子22と、第2回路基板20に実装された第2回路素子24とを電気的に接続させる接続手段としても機能する。また、ケース材12に設けた開口部15も封止樹脂11により被覆されており、図1(A)では開口部15の外縁が点線にて示されている。
【0024】
本実施の形態では、ケース材12の内部空間に樹脂を注入させるための開口部15をケース材12に設けている。具体的には、第1回路基板18および第2回路基板20を一体的に樹脂封止するために、封止樹脂11は、第1回路基板18および第2回路基板をケース材12に接着させて組み込んだ後に形成される。従って、封止樹脂11をケース材12の内部空間に注入するための開口部を確保する必要がある。また、この開口部を第1回路基板18や第2回路基板20を部分的に除去して設けると、これらの回路基板の面積が狭くなって多数の回路素子を実装させることが困難になる。
【0025】
このことから、本実施の形態では、封止樹脂11を注入するための開口部をケース材12に設けている。具体的には、図1(A)を参照すると、ケース材12の第1側壁部12Aを部分的に外側に突出されることで、第2回路基板20の側方に開口部15が形成されている。この様にケース材12により開口部15を設けることで、第1回路基板18や第2回路基板20の面積を狭める必要がないので、装置全体の実装密度が低下されない。
【0026】
更に、図1(B)を参照して、開口部15に面する第1側壁部12Aの内壁は、上方よりも下方が内側に位置する傾斜面と成っている。この構成により、樹脂封止の工程に於いて、開口部15の上方から注入された封止樹脂11は傾斜面17に沿って内側に流動され、最終的にはケース材12の内部空間は封止樹脂11により充填される。この構成は、開口部15に面する第2側壁部12Bに関しても同様である。また、本実施の形態では、複数の開口部15をケース材12に設けているので、1つの開口部15からケース材12の内部空間に封止樹脂11を注入したら、他の開口部15から内部空間の空気が放出される。従って、ケース材12の内部空間への樹脂注入が容易に行われる。
【0027】
図2を参照して、上述した混成集積回路装置10の構成を更に説明する。図2(A)はリードの構成を示す混成集積回路装置10の断面図であり、図2(B)は第1回路基板18の構成を説明するための断面図である。
【0028】
図2(A)を参照して、混成集積回路装置10には、第1リード28と第2リード30が設けられている。
【0029】
第1リード28は、第1回路基板18の上面に形成された導電パターン38から成るパッドに下端が固着されている。パッド状の導電パターン38と第1リード28の下端とは、半田等の導電性接着材を介して接着される。そして、第1リード28は、封止樹脂11および第2回路基板20を貫通して、上端が外部に導出されている。ここで、第1リード28は、第1リード28が第2回路基板20を貫通する箇所に於いて、第2回路基板20の上面に固着された第2回路素子に接続される場合と、接続されない場合とがある。第1リード28が第2回路素子24に接続される場合としては、第1リード28を経由して、第2回路基板20に実装された第2回路素子24と、第1回路基板18に実装された第1回路素子22とを電気的に接続する場合がある。また、第1リード28と第2回路素子24とが接続されない場合としては、例えば、外部から供給される電源電流が第1リード28を通過する場合または、第1回路基板18に設けられたインバーター回路により変換された電流が第1リード28を通過して外部に供給される場合が考えられる。
【0030】
第2リード30は、第2回路基板20の上面に設けられた導電パターン21に下端が接続され、上端が封止樹脂11を貫通して上方に突出している。第2リード30の下端付近は、第2回路基板20を貫通して設けた孔部に挿入されて固定されており、第2回路基板20に実装された第2回路素子24に入出力される電気信号を通過させる働きを有する。ここで、第2回路基板20の上面に形成された導電パターン21と第2リード30とは、半田等の導電性接着材を介して接続される。
【0031】
図2(B)を参照して、本形態では、実装基板32と絶縁基板34とを積層させて、第1回路基板18が構成されている。
【0032】
実装基板32は、厚みが1.0mm〜2.0mm程度のアルミニウム(Al)を主材料とする金属製の基板であり、上面及び下面は陽極酸化膜(Alから成る膜)により被覆されている。実装基板32の上面は、フィラーが高充填されたエポキシ樹脂等の樹脂材料から成る絶縁層36により被覆されている。絶縁層36の厚みは例えば50μm程度である。更に、絶縁層36の上面には厚みが50μm程度の銅から成る導電パターン38が形成され、この導電パターン38に第1回路素子22が実装される。
【0033】
また、上記した絶縁層36を部分的に除去して露出部13が設けられており、この露出部13から露出する実装基板32と導電パターン38とが、金属細線42を経由して接続されている。この様に、露出部13を介して実装基板32と導電パターン38とを接続することにより、実装基板32の電位を固定電位(接地電位や電源電位)にすることが可能となり、実装基板32により外部からのノイズが遮蔽されるシールド効果をより大きくすることができる。更には、導電パターン38の一部と実装基板32との電位が同一に成るので、両者の間に発生する寄生容量を低減させることも可能となる。
【0034】
上記構成の実装基板32の裏面は、シリコン樹脂から成る接着剤を介して、絶縁基板34の上面に貼着される。
【0035】
絶縁基板34は、実装基板32と同様にアルミニウム等の金属から成り、平面的な大きさが実装基板32よりも大きく形成されている。従って、絶縁基板34の端部と、実装基板32の端部とは離間して配置されている。また、ポリイミド樹脂等の樹脂材料から成る絶縁層40により、絶縁基板の上面は被覆されている。更に、絶縁基板34の下面は、ケース材12の側壁の下端と同一平面上に位置している。
【0036】
以上のように、実装基板32と絶縁基板34とを積層させて第1回路基板18を構成することで、第1回路基板18の放熱性と耐圧性とを高いレベルで両立させることができる。具体的には、上述したように、実装基板32は導電パターン38と接続されて例えば接地電位に接続されているので、実装基板32の裏面を外部に露出させるとショートを引き起こす恐れがある。このショートを防止するために絶縁基板34が設けられている。絶縁基板34の上面と実装基板32の下面とは、絶縁基板34の上面に設けた絶縁層40により絶縁されている。更に、実装基板32の側面および絶縁基板34の側面は、各々の基板を構成するアルミニウム等の金属材料が露出する面であるが、絶縁基板34の端部(側面)と実装基板32の端部(側面)とを離間させることで、お互いの基板の側面がショートすることが防止されている。
【0037】
更に、実装基板32および絶縁基板34の両方が放熱性に優れるアルミニウム等の金属から成るので、第1回路素子22から発生した熱は、実装基板32および絶縁基板34を経由して良好に外部に放出される。
【0038】
図3(A)を参照して、混成集積回路装置10の他の形態を説明する。ここでは、第2回路基板20の上面および下面の両方に第2回路素子24が実装される。この様に、第2回路基板20の下面にも第2回路素子24を設けることで、より多数の回路素子を混成集積回路装置10に内蔵されることができる。
【0039】
図3(B)を参照して、更なる他の形態の混成集積回路装置10の構成を説明する。この図に示す混成集積回路装置10では、ケース材12の内部空間は一体的に樹脂封止されずに、樹脂封止されない空間である中空部26がケース材12の内部に形成されている。具体的には、ケース材12の内部空間に於いて、第1回路基板18の上面および第1回路素子22は、第1封止樹脂14により封止されている。一方、第2回路基板20の上面および第2回路素子24は、第1封止樹脂14とは別体の第2封止樹脂16により被覆されている。ここで、第1回路基板18の上面を被覆する第1封止樹脂14は、ケース材12に設けた開口部15を経由して内部に供給される。また、第1封止樹脂14および第2封止樹脂16の組成は、上記した封止樹脂11と同様でよい。
【0040】
ケース材12の内部空間に、樹脂封止されない中空部26を設けることにより、第1回路基板18の上面に載置された第1回路素子22と、第2回路基板20に載置された第2回路素子24とを熱的に分離して熱干渉を抑制することができる。例えば、第1回路素子22がパワートランジスタであり、第2回路素子24がマイコンである場合、係る構成にすることにより、パワートランジスタから発生した熱がマイコンに伝導して、過熱されたマイコンが誤作動することが防止される。
【0041】
図4を参照して、次に、上記した混成集積回路装置10に構築される回路の一例を説明する。ここでは、複数のパワートランジスタから成るスイッチング回路45を含むインバーター回路が第1回路基板18に形成され、このインバーター回路を制御する制御回路が構成された第2回路素子24(マイコン)が第2回路基板20に実装されている。より具体的には、第1回路基板18には、整流回路41、平滑回路43、スイッチング回路45およびドライバIC44が組み込まれている。
【0042】
混成集積回路装置10に組み込まれた各回路の動作は次の通りである。先ず、第2回路基板20に実装された第2回路素子24(マイコン)には、回転速度に応じた周波数の基準信号が入力され、それぞれ120度の位相差を有する3つのパルス幅変調された正弦波の制御信号が生成される。第2回路素子24にて生成された制御信号は、第1リード28(図2(A)参照)を経由して、第1回路基板18のドライバIC44に入力される。
【0043】
第1回路基板18に入力された制御信号は、ドライバIC44にて所定の電圧に昇圧された後に、スイッチング回路45を構成しているパワートランジスタ(例えばIGBT)の制御電極に印加される。
【0044】
一方、外部から入力された交流電力は、整流回路41により直流電力に変換された後に、平滑回路43により電圧を一定にされ、スイッチング回路45に入力される。
【0045】
そして、スイッチング回路45からは、それぞれ120度の位相差を有する3相のパルス幅変調された正弦波電圧(U、V、W)が生成されてモーター46に供給される。結果的に、モーター46には、正弦波に近似した負荷電流が流れ、所定の回転数にてモーター46が回転する。
【0046】
次に、図5を参照して、上記した構成の混成集積回路装置10が組み込まれた空調機(エア・コンディショナー)の室外機48の構成を説明する。
【0047】
室外機48は、筐体50の内部に、凝縮機54と、ファン56と、圧縮機52と、混成集積回路装置10が主に内蔵されて構成されている。
【0048】
圧縮機52は、モーターの駆動力を用いて、アンモニア等の冷媒を圧縮させる機能を有する。そして、圧縮機52により圧縮された冷媒は凝縮機54に送られ、ファン56が風を凝縮機54に吹き付けることにより、凝縮機54内部の冷媒に含まれる熱が外部に放出される。更に、この冷媒は膨張された後に、室内にある蒸発器に送られて、室内の空気を冷却させる。
【0049】
本形態の混成集積回路装置10は、圧縮機52またはファン56を駆動させるモーターの回転を制御する働きを有し、室外機48の内部に設けられた実装基板60に固着されている。
【0050】
図5(B)に混成集積回路装置10が取り付けられる構造を示す。ここでは、第1リード28および第2リード30が、実装基板60に差込実装されている。そして、パワートランジスタが実装される第1回路基板18の裏面は、ヒートシンク58の平滑面に当接している。混成集積回路装置10のヒートシンク58への取り付けは、混成集積回路装置10のケース材12をヒートシンク58にビス止めすることにより行うことができる。ここで、ヒートシンク58は、銅やアルミニウム等の金属を一体的に成型したものであり、混成集積回路装置10と当接する面は平滑面と成っており、その反対面は凹凸面と成っている。係る構成により、パワートランジスタである第1回路素子22から発生した熱は、第1回路基板18およびヒートシンク58を経由して室外機48の内部空間に伝導され、最終的にはファンの56の送風作用により室外機48の外部に放出される。
【0051】
次に、図6から図8を参照して、図1に構成を示した混成集積回路装置10の製造方法を説明する。
【0052】
図6(A)を参照して、先ず、上面に所定の混成集積回路が組み込まれた第1回路基板18を、ケース材12に組み込む。
【0053】
第1回路基板18の上面には、予め所定の形状の導電パターン38が組み込まれており、導電パターン38の所定の箇所には、パワートランジスタ等の第1回路素子22が実装されて電気的に接続されている。更に、パッド状の導電パターン38には、半田等の導電性接着材を介して、第1リード28が固着されている。ここで、第1リード28は、複数の第1リード28が連結されているリードフレームの状態で、導電パターン38に固着されても良い。また、ケース材12には、上述した構成の開口部15が設けられている。
【0054】
この様な構成の第1回路基板18は、ケース材12の下部の開口部に組み込まれる。第1回路基板18の詳細は上述したとおりであり、図2(B)に示すように2枚の金属から成る基板を組みあわせて構成されている。しかしながら、1枚の金属基板から第1回路基板18が形成されても良い。
【0055】
次に、図6(B)を参照して、所定の第2回路素子24が組み込まれた第2回路基板20をケース材12に組み込む。第2回路基板20の上面には所定形状の導電パターン21が形成され、この導電パターン21には、例えばマイコンである第2回路素子24が固着されている。また、第2回路素子24と接続された第2リード30が第2回路基板20の上面に固着されている。
【0056】
更に、第2回路基板20の第1リード28に対応する箇所には、ドリル加工やレーザー照射加工により第2回路基板20を開口して貫通孔が設けられており、この貫通孔を第1リード28が貫通している。なお、第2回路基板20に設けた貫通孔と第1リード28との間隙は、半田等の接合材により埋め込まれる。
【0057】
図7に、本工程が終了した後のケース材12の斜視図を示す。この図を参照して、ケース材12は、第1側壁部12A、第2側壁部12B、第3側壁部12Cおよび第4側壁部12Dから構成されている。そして、第1側壁部12Aおよび第2側壁部12Bを部分的に側方(外側)に膨らませることにより、開口部15が形成されている。この開口部15により、ケース材12の内部空間と外部とが連通され、後の工程にて封止樹脂が開口部15を経由して内部空間に供給される。
【0058】
この様にケース材12の側壁部を外側に膨らませて開口部15を設けることにより、第2回路基板20を変形させて開口部を設ける必要がない。従って、第2回路基板20を四角形形状のまま面積を狭めずに使用することができるので、第2回路基板20の実装密度が向上される。
【0059】
更にここでは、第1側壁部12Aに2つの開口部15を設け、第1側壁部12Aに対向する第2側壁部12Bにも2つの開口部15を設け、合計で4つの開口部15を設けている。しかしながら、ケース材12に形成される開口部15の数は4つ以外でも良く、1つでも良いし、5個以上でも良い。
【0060】
図8を参照して次に、第1回路基板18の上面および第2回路基板20の上面が被覆されるように封止樹脂11を形成する。
【0061】
図8(A)を参照して、本工程ではケース材12に設けた開口部15からケース材12の内部空間に封止樹脂11を注入する。先ず、ケース材12の内部空間に位置する第1回路基板18の上面および第1回路素子22を樹脂封止する。本工程にて使用される封止樹脂11は、粒状のアルミナ等のフィラーが充填された熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である。そして、ノズル62から供給される封止樹脂11は、液状または半固形状の状態であり、充填された後に加熱硬化される。
【0062】
ここでは、紙面上にて左側の第2側壁部12Bに設けた開口部15を経由して、ケース材12の内部空間に、ノズル62から封止樹脂11が供給されている。また、紙面上にて右側に位置する第1側壁部12Aにも開口部15が設けられており、ノズル62から供給された封止樹脂11に応じた量の内部空間の空気が、第1側壁部12Aに設けた開口部15を経由して外部に放出される。
【0063】
ノズル62による封止樹脂11の供給を続けると、ケース材12の内部空間(ケース材12、第1回路基板18、第2回路基板20により囲まれる空間)が封止樹脂11により充填される。
【0064】
図8(B)を参照して、更に封止樹脂11の供給を続行させると、第2回路基板20の上面および第2回路素子24が被覆される。従って、本工程では、第1回路基板18の上面、第1回路素子22、第2回路基板20の上面および第2回路素子24が、封止樹脂11により一体的に封止される。
【0065】
更に、本工程に於いては、図8(A)を参照して、ノズル62から供給された液状の封止樹脂11は、先ず、第2側壁部12Bの内壁に設けられた傾斜面17に接触する。そして、流動性に優れた封止樹脂11は、傾斜面17に沿ってケース材12の内部空間に進入する。結果的に、開口部15を経由して注入された封止樹脂11は、ケース材12の内部空間に隙間無く充填される。
【0066】
上記工程により、図1に構造を示した混成集積回路装置10が製造される。
【0067】
ここで、第1回路基板18の上面と第2回路基板20の上面とは、個別に樹脂封止されても良い。即ち、図3(B)に示すように、第1回路基板18の上面を第1封止樹脂14により封止し、第2回路基板20の上面および第2回路素子24を第2封止樹脂16により封止しても良い。この場合に於いても、第1封止樹脂14は開口部15から供給される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の回路装置の一実施例である混成集積回路装置を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は断面図である。
【図2】本発明の回路装置の一実施例である混成集積回路装置を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は断面図である。
【図3】本発明の回路装置の一実施例である混成集積回路装置を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は断面図である。
【図4】本発明の回路装置の一実施例である混成集積回路装置に組み込まれる回路を示すブロック図である。
【図5】(A)は本発明の回路装置の一実施例である混成集積回路装置が組み込まれた室外機を示す図であり、(B)は混成集積回路装置が取り付けられる箇所の断面図である。
【図6】本発明の回路装置の一実施例である混成集積回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は断面図である。
【図7】本発明の回路装置の一実施例である混成集積回路装置の製造方法を示す斜視図である。
【図8】本発明の回路装置の一実施例である混成集積回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は断面図である。
【図9】背景技術の混成集積回路装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
10 混成集積回路装置
11 封止樹脂
12 ケース材
12A 第1側壁部
12B 第2側壁部
12C 第3側壁部
12D 第4側壁部
13 露出部
14 第1封止樹脂
15 開口部
16 第2封止樹脂
17 傾斜面
18 第1回路基板
20 第2回路基板
21 導電パターン
22 第1回路素子
24 第2回路素子
26 中空部
28 第1リード
30 第2リード
32 実装基板
34 絶縁基板
36 絶縁層
38 導電パターン
40 絶縁層
41 整流回路
42 金属細線
43 平滑回路
44 ドライバIC
45 スイッチング回路
46 モーター
48 室外機
50 筐体
52 圧縮機
54 凝縮機
56 ファン
58 ヒートシンク
60 実装基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース材と、
前記ケース材に組み込まれると共に、重畳して配置された第1回路基板および第2回路基板と、
前記第1回路基板の主面に固着された第1回路素子と、
前記第2回路基板の主面に固着された第2回路素子と、
少なくとも前記第1回路基板の前記主面および前記第1回路素子を被覆する封止樹脂と、を具備し、
前記封止樹脂が前記ケース材の内部空間に注入されるための開口部を前記ケース材に設けたことを特徴とする回路装置。
【請求項2】
前記開口部に面する前記ケース材の側壁は傾斜面であることを特徴とする請求項1記載の回路装置。
【請求項3】
前記封止樹脂は、前記内部空間に充填されると共に、前記第2回路基板の主面および前記第2回路素子も被覆する様に形成されることを特徴とする請求項1記載の回路装置。
【請求項4】
前記ケース材の前記内部空間には、前記封止樹脂により充填されない中空部が設けられることを特徴とする請求項1記載の回路装置。
【請求項5】
主面に第1回路素子が固着された第1回路基板をケース材に組み込む工程と、
主面に第2回路素子が固着された第2回路基板を前記ケース材に組み込む工程と、
前記ケース材、前記第1回路基板および前記第2回路基板に囲まれる内部空間に封止樹脂を注入して、前記第1回路基板の主面および前記第1回路素子を封止する工程と、を具備し、
前記封止する工程では、前記ケース材に設けた開口部から前記内部空間に前記封止樹脂を注入することを特徴とする回路装置の製造方法。
【請求項6】
前記封止する工程では、前記ケース材の前記内部空間を前記封止樹脂により充填すると共に、前記第2回路基板の上面および前記第2回路素子を前記封止樹脂により一体的に被覆することを特徴とする請求項5記載の回路装置の製造方法。
【請求項7】
前記封止する工程では、前記第1回路基板の上面および前記第1回路素子を前記封止樹脂により被覆すると共に、前記ケース材の前記内部空間に前記封止樹脂が充填されない中空部を形成することを特徴とする請求項5記載の回路装置の製造方法。
【請求項8】
前記封止する工程では、前記ケース材の内壁に設けた傾斜部に上方から、液状または半固形状の前記封止樹脂を注入することを特徴とする請求項5記載の回路装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−81328(P2009−81328A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250486(P2007−250486)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】