説明

回転入力装置の使用方法

【課題】特別な切替操作を必要とせずに、回転入力装置に多機能を割り振ることを可能とする回転入力装置の使用方法を提案すること。
【解決手段】回転入力機構を備えた入力装置であって、回転入力操作時に最初に操作が行われた位置を検出する機能を備えた回転入力装置において、予め360度の入力方向を区切って複数の領域を設定するとともに、それぞれの領域に異なる操作対象を設定しておき、前記回転入力操作が行われた場合には、最初に操作が行われた位置がどの領域に該当するかを判別し、この選択された領域に応じた操作対象に対して、その後連続して入力される回転入力操作を反映させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転操作に多機能を割り振ることを可能とする回転入力装置の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転操作によって変化した回転角と回転方向を検出して出力する入力装置としてロータリエンコーダが存在する。これは、コード板若しくは摺動子の回転に伴い回転量信号や回転方向信号を発生するものであり、例えば、特許文献1、2のようなものが存在する。
【0003】
また、他の入力装置として、特許文献3、4に示すような多方向入力装置が存在する。この特許文献3、4に示す多方向入力装置は、方向入力によって生じる圧力変化を感圧抵抗素子を用いて検出して、これを座標変換して入力方向を特定しているものであるが、これらの多方向入力装置においても、操作スティックに替えて回転操作を行うためのアクチュエータを採用し、一定時間毎に上記検出処理を行って、その検出結果の変化から回転を検出することが可能となる。このような構成とすることで、方向入力と回転入力の両方が可能な多方向入力装置とすることが出来る。
【特許文献1】特許第2951087号公報
【特許文献2】特許第3053976号公報
【特許文献3】特開平07−334302号公報
【特許文献4】特開2002−207568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような回転式の入力機構(以下、回転入力装置)を備えたものとして、例えば、ビデオレコーダやハードディスクレコーダ等のリモコン装置がある。これらにおいてテレビ番組録画予約を行う場合の方法の1つとして、画面の横軸に放送局、縦軸に時間を設定して番組表を表示させて、リモコンによって番組を選択して録画予約を行う録画方法があり、番組表を見ながら録画したい番組を選択できるという点で便利な機能である。このような録画方法において、例えば、回転入力装置を時間軸の変更(画面上の上下のスクロール)に利用したとすると、時間軸の変更に関しては、操作量や操作速度を視覚的に認識しながら適切な操作が可能であるが、他の項目、例えば、横軸の放送局の変更、或いは、日付の変更等の項目に関しては、方向入力キーによって行っていたため、不便である場合があった。
【0005】
このように、テレビ番組録画予約を行う場合に限らず、上記特許文献1乃至4に示すような回転入力装置は、操作量や操作速度を視覚的に認識しながら操作できる点で非常に有用な機能であるが、この回転に対応させることが出来る操作対象は1つであるため、他の操作対象については利用出来ないという問題があった。また、異なった操作画面においては異なった操作対象を割り振るようにする構成、或いは、異なった操作対象を操作させるために特別な切替操作を必要とするような構成は、従来より実現されているが、操作が煩雑であるという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、特別な切替操作を必要とせずに、回転入力装置に多機能を割り振ることを可能とする回転入力装置の使用方法を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1は、回転入力機構を備えた入力装置であって、回転入力操作時に最初に操作が行われた位置を検出する機能を備えた回転入力装置において、予め360度の入力方向を区切って複数の領域を設定するとともに、それぞれの領域に異なる操作対象を設定しておき、前記回転入力操作が行われた場合には、最初に操作が行われた位置がどの領域に該当するかを判別し、この選択された領域に応じた操作対象に対して、その後連続して入力される回転入力操作を出力データとして反映させるようにしたことを特徴とする回転入力装置の使用方法である。
【0008】
本発明の請求項2は、円盤状のアクチュエータと、前記アクチュエータと同等の半径からなるリング状の均一な抵抗からなるリング抵抗体と、前記リング抵抗体と重なるように略同等のリング状に形成した電極パターンとを重ねて構成した回転入力装置であって、前記アクチュエータの外周付近に圧力が加わると、前記リング抵抗体と電極パターンとが接触してこの接触位置における電圧値から位置データを得るようにし、この位置検出処理を一定の時間間隔毎にサンプリング処理するようにした回転入力装置において、予め360度の位置データ範囲を区切って複数の領域を設定するとともに、それぞれの領域に異なる操作対象を設定しておき、前記アクチュエータの外周付近に圧力が加わって位置検出処理が開始された場合に、その最初の検出位置がどの領域に該当するかを判別する第1の手順と、その後に連続してサンプリング処理して得た位置データとの差分から回転入力操作であると判別した場合に、前記第1の手順で選択された当該領域に応じた操作対象に対して回転入力操作を出力データとして反映させる第2の手順とを実行するようにしたことを特徴とする回転入力装置の使用方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、従来1つの操作対象にしか使用していなかった回転入力装置において、特別な切替操作を必要とせずに、多機能を割り振ることが可能となるため、複数の操作対象について操作量や操作速度を視覚的に認識しながら操作できる点で利便性が高まる。特に、操作対象がディスプレイ装置に表示された項目の変更等の場合には、同一画面上において同一の回転入力装置で複数の項目を変更できるため、効果的である。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、従来1つの操作対象にしか使用していなかった回転入力装置において、特別な切替操作を必要とせずに、多機能を割り振ることが可能となるため、複数の操作対象について操作量や操作速度を視覚的に認識しながら操作できる点で利便性が高まる。特に、操作対象がディスプレイ装置に表示された項目の変更等の場合には、同一画面上において同一の回転入力装置で複数の項目を変更できるため、効果的である。
また、リング抵抗体を用いた方式を採用することにより、非操作時にはリング抵抗体と電極パターンが接触しておらず、操作があって初めて接触して通電する構成となるため、動作時、非動作時の区別を簡単に行うことができ、また、容易に位置検出と回転データの抽出を行えるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明による回転入力装置の使用方法は、回転入力機構を備えた入力装置であって、回転入力操作時に最初に操作が行われた位置(又は角度)を検出する機能を備えた回転入力装置において、予め360度の入力方向を区切って複数の領域を設定するとともに、それぞれの領域に異なる操作対象を設定しておき、前記回転入力操作が行われた場合には、最初に操作が行われた位置がどの領域に該当するかを判別し、この選択された領域に応じた操作対象に対して、その後連続して入力される回転入力操作を反映させるようにしたことを特徴とするものである。
【実施例1】
【0012】
本発明は、回転入力装置に多機能を割り振るための使用方法に関するものであり、回転入力装置の構造を限定するものではないが、一例として、本実施例において採用する回転入力装置の構造を図面に基づいて簡単に説明する。図1(a)は、本実施例において採用する回転入力装置の構造を簡単に示した模式図である。この図1(a)に示すように、基本構造は、リング型の電極パターン15を引いたフレキシブルプリント配線板13(以下、FPC)の上部に、リング抵抗体14及びその抵抗体14から4方向に引き出された電極16a〜16dを印刷したFPC12を、わずかな隙間を隔てて重ね、さらにその上部にその電極を接触させるためのアクチュエータ11を置く構造となっており、操作平面に対して回転軸が垂直に設定されている。
【0013】
次に、この図1(a)に示した回転入力装置における位置の検出方法について説明する。図2は、位置検出を行うための接続を示したものであり、図1(a)におけるリング抵抗体14から引き出された電極16a〜16dのうち16aと16bを電源供給ライン18に切替スイッチ19を介して接続し、16cと16dをグランド(GND)20に切替スイッチ21を介して接続することで構成されている。なお、切替スイッチ19、21は、電極16aと16c、電極16bと電極16dというように対向する電極同士が同時に選択されるように構成されている。このような構成において、図1(b)に示すように、アクチュエータ11の円周付近の何れかの部分に圧力が加わると、リング抵抗体14の一部がリング型の電極パターン15と接触し、この接触によって位置検出を開始する。
【0014】
具体的には、先ず、リング抵抗体14の一部とリング型の電極パターン15とが接触すると、図2のように、左右の電極16bと電極16dの間に電圧をかけて、接触点における電圧値を下部の読取り電極17から読取る。このときの電圧値は、電極16bに近い側は大きく、電極16dに近い側は小さくなり、印加される電極間の距離に比例した値になる。しかしこの状態では、左右の電極を結ぶ線を対称として上下で同じ電圧値となる2箇所が抽出されることとなる。そこで、切替スイッチ19、21を電極16a側、16c側にそれぞれ切替えて、接触点における電圧値を再度下部の読取り電極17から読取る。ここで読込んだ値を用いて2点のうち1点を特定して、位置データに変換する。
【0015】
位置データへの変換は、読取った電圧値そのまま、或いは、読取った電圧値に正規化処理を行ったものを用いることで変換可能である。図3に示すのは、アクチュエータ11の接触点と電圧値の関係を表したものであり、括弧内の数字はX側(電極16bと電極16dの間)に電圧を掛けた場合の電圧値を表したもので、括弧の無い数字はY側(電極16aと電極16cの間)に電圧を掛けた場合の電圧値を表したものである。
【0016】
位置データへの変換は、先ず、(1)X側とY側でそれぞれ電圧値を測定し、(2)Y側の電圧値が特定の範囲内にあるかを判別し、(3)範囲内にあった場合には、以下の式において、X側のデータによってY側のデータを位置データに変換する。
x>128のとき → 位置データ=256−y
x<128のとき → 位置データ=256+y
【0017】
次に、(4)Y側の電圧値が特定の範囲内になかった場合には、以下の式において、Y側のデータによってX側のデータを位置データに変換する。
y<128のとき → 位置データ=384−x
y>128のとき → 位置データ=384+x
【0018】
上記の方法で位置データに変換することで、図3(b)に示すように、アクチュエータ11の円周部分に0〜512の位置データを割り振って接触点の位置データを算出することが可能となる。なお、512と0の境界部分に関しては、512以上の数値を採用してもよいし、512を超えたら512を減算するようにしてもよい。このように位置検出を行って位置データを得る処理を一定周期毎に行い、前後の位置データについてその差分(相対値出力)を求めて出力すれば、その値が回転入力装置の回転データとなる。
【0019】
さらに、検出された位置データ(rθ)を座標データ(XY)に変換して出力すれば、ポインティングデバイスの出力(方向出力)として利用することが出来る。この位置データを座標データに変換する方法は、図4に示すように、位置データが0〜127の範囲を[1]、位置データが128〜255の範囲を[2]、位置データが256〜383の範囲を[3]、位置データが384〜512の範囲を[4]というように分割して、それぞれの範囲に応じて異なる座標変換処理を行う。
【0020】
具体的には、先ず、共通に使用する座標変換のための関数としてf(d)を設定する。
f(d)=sin(π・d/256)
このf(d)におけるdに対して位置データを変形させて代入することで、座標データ(X,Y)が求まる。位置データの代入方法は、図4に示すように、位置データ範囲[1]においては、X=f(d)、及び、Y=f(128−d)となり、位置データ範囲[2]においては、X=f(256−d)、及び、Y=−f(d)となり、位置データ範囲[3]においては、X=−f(d−256)、及び、Y=−f(384−d)となり、位置データ範囲[4]においては、X=−f(512−d)、及び、Y=f(d−384)となる。例えば、位置データが「90」の場合は、位置データ範囲[1]なので、X=f(90)及びY=f(38)を求めることで、座標データ(0.89,0.45)が求まる。
【0021】
以上のような機能を有する回転入力装置において、アクチュエータ11の回転操作に対して多機能を割り振るための方法について説明する。
アクチュエータ11を回転操作させる場合には、円周付近の何れかの部分に圧力が加わることでリング抵抗体14の一部がリング型の電極パターン15と接触し、この接触によって位置検出を開始する。そして、最初に検出した位置データと、次に検出した位置データとの差分から回転データを得る構成となっている。このように、回転操作を行う場合には、先ず、最初に圧力の加わった位置を検出した位置データが得られ、本発明では、この最初の位置データに基づいて操作対象を割り振る構成とした。
【0022】
図5に示すように、位置データが448〜512及び0〜63の範囲をAゾーンとし、位置データが64〜191の範囲をBゾーンとし、位置データが192〜319の範囲をCゾーンとし、位置データが320〜447の範囲をDゾーンとして、最初に検出した位置データが4つのゾーンのうち何処に該当するかを判別する。これら4つのゾーンには、それぞれに対応させた操作対象(機能)を予め設定しておく。そして、最初の位置検出と2回目の位置検出との差分をとった結果、回転操作であると判断した場合には、最初の位置検出時に該当したゾーンに対応した機能に回転操作の操作結果を反映させる。以降、回転操作が継続する間は同一の操作対象に回転データを反映させる。
【0023】
このように回転入力装置の回転操作に多機能を割り振る具体例としては、ビデオレコーダやハードディスクレコーダ等のリモコン装置を用いてテレビ番組録画予約を行う場合に適用可能である。画面の横軸に放送局、縦軸に時間を設定して番組表を表示させて、リモコンによって番組を選択して録画予約を行う場合に、例えば、Aゾーンからの回転操作に対して放送局の変更(画面上の横方向のスクロール)の機能を割り振り、Bゾーンからの回転操作に対して時間軸の変更(画面上の縦方向のスクロール)の機能を割り振り、Cゾーンからの回転操作に対して日付変更の機能を割り振り、Dゾーンからの回転操作に対して週変更の機能を割り振ることで、録画予約における主要な4つの項目を1つの回転入力装置によって変更可能となり、操作量や操作速度を視覚的に認識しながら適切な操作が可能となる。
【0024】
また、他の具体例として、カーナビゲーションシステムにおける地図参照画面等での操作にも適用可能である。例えば、Aゾーンからの回転操作に対して地図の横方向のスクロール機能を割り振り、Bゾーンからの回転操作に対して地図の縦方向のスクロール機能を割り振り、Cゾーンからの回転操作に対して地図の拡大縮小機能を割り振り、さらに、Dゾーンからの回転操作に対して何らかの地図情報に関連した項目の変更機能を割り振ることで、カーナビゲーションシステムの同一画面上での主要な操作を1つの回転入力装置によって変更可能となり、操作量や操作速度を視覚的に認識しながら適切な操作が可能となる。
【0025】
前記実施例においては、リング抵抗体14を用いて位置検出を行う回転入力装置として説明を行っているが、このリング抵抗体14を用いた方式は、非操作時にはリング抵抗体14と電極パターン15が接触しておらず、操作があって初めて接触して通電する構成となるため、動作時、非動作時の区別を簡単に行えるという利点があり、また、容易に位置検出と回転データの抽出を行えるため、採用していた。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、従来の感圧抵抗素子を用いた多方向入力装置のような構成であってもよく、回転データを得ることができ、かつ、最初の操作位置を検出できる構成であれば、適用可能である。また、ロータリーエンコーダ方式のように、回転データのみを検出可能な機構であっても、別途操作開始位置を検出するための機構を設ければ、適用可能である。
【0026】
前記実施例においては、操作開始の「位置」或いは「位置データ」という表現を用いて記載しているが、これは広く操作を開始した場所という意味で用いているものであり、位置を角度で認識する場合も含まれるため、「位置データ」を角度データとして処理を行う場合も本発明には含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明において採用した回転入力装置の構成の一例を表した模式図である。
【図2】図1におけるリング抵抗体14の位置検出のための接続構成を表した回路図である。
【図3】(a)は、位置データを得るための具体的手順を示した模式図であり、(b)は、得られた位置データの配置例を表した模式図である。
【図4】位置データを座標データに変換するための手法を示した模式図である。
【図5】位置データを範囲に応じて4つの領域に分割する様子を表した模式図である。
【符号の説明】
【0028】
11…アクチュエータ、12…フレキシブルプリント配線板、13…フレキシブルプリント配線板、14…リング抵抗体、15…電極パターン、16a〜16d…電極、17…読取り電極、18…電源供給ライン、19…切替スイッチ、20…グランド、21…切替スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転入力機構を備えた入力装置であって、回転入力操作時に最初に操作が行われた位置を検出する機能を備えた回転入力装置において、予め360度の入力方向を区切って複数の領域を設定するとともに、それぞれの領域に異なる操作対象を設定しておき、前記回転入力操作が行われた場合には、最初に操作が行われた位置がどの領域に該当するかを判別し、この選択された領域に応じた操作対象に対して、その後連続して入力される回転入力操作を出力データとして反映させるようにしたことを特徴とする回転入力装置の使用方法。
【請求項2】
円盤状のアクチュエータと、前記アクチュエータと同等の半径からなるリング状の均一な抵抗からなるリング抵抗体と、前記リング抵抗体と重なるように略同等のリング状に形成した電極パターンとを重ねて構成した回転入力装置であって、前記アクチュエータの外周付近に圧力が加わると、前記リング抵抗体と電極パターンとが接触してこの接触位置における電圧値から位置データを得るようにし、この位置検出処理を一定の時間間隔毎にサンプリング処理するようにした回転入力装置において、予め360度の位置データ範囲を区切って複数の領域を設定するとともに、それぞれの領域に異なる操作対象を設定しておき、前記アクチュエータの外周付近に圧力が加わって位置検出処理が開始された場合に、その最初の検出位置がどの領域に該当するかを判別する第1の手順と、その後に連続してサンプリング処理して得た位置データとの差分から回転入力操作であると判別した場合に、前記第1の手順で選択された当該領域に応じた操作対象に対して回転入力操作を出力データとして反映させる第2の手順とを実行するようにしたことを特徴とする回転入力装置の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−102664(P2007−102664A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294508(P2005−294508)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】