説明

回転式ロールへの電子部品の取付構造

【課題】エンドカバーの内側面に電子部品の取付けることにより、エンドカバーの内方側空間を有効利用するようにした回転式ロールへの電子部品の取付構造を提供する。
【解決手段】外周面に被冷却物が接触する円筒体11と、該円筒体11の両端部を各々覆うエンドカバー22,23と、該両エンドカバー22,23の中心から外向きに突出する中空状回転軸12とを備え、前記円筒体11の内部に、蒸発と凝縮とを繰り返す作動流体を充填すると共に、内部を冷却水が流れる冷却管を設けて成る回転式冷却ロールに電子部品を取付ける取付構造であって、両エンドカバー22,23のうち少なくとも一端側のエンドカバー23は樹脂製とされ、この一端側の樹脂製エンドカバー23の内側面23aに送信機及び電池が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式ロールへの電子部品の取付構造に関し、更に詳しくは、セロファン、アルミ箔、紙、合成樹脂等の各種シートや各種フィルムの製造装置、または、これら各種シートや各種フィルムの加工装置、あるいは、これら各種シートや各種フィルムのうち同種又は異種の複数枚を貼合又は積層するラミネート装置、若しくは、前記各種のシートや各種フィルムに対して合成樹脂をフィルム状に押し出しながら貼合わせる押出ラミネート装置等に使用される回転式ロールへの電子部品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転式ロールの一例として回転式冷却ロールを挙げて説明すると、このような
回転式冷却ロール100は、特許文献1に記載され、且つ、図12に示すように構成されている。即ち、円筒体111内の両端部に、当該円筒体111内を密封する面板112,113を固着し、この円筒体111を、前記両面板112,113の中心から外向きに突出した中空支持軸114,115にて回転自在に軸支する一方、前記円筒体111内における一端部に冷却水等の冷却流体を前記一方の中空支持軸114から導入する入り口室116を、他端部に前記冷却流体を前記他方の中空の支持軸115に流出する出口室117を、これら入り口室116及び出口室117の一部を前記円筒体111と前記面板112,113との両方にて形成するか、或いは、前記面板112,113にて形成するように設け、更に、前記円筒体111の内部に、蒸発と凝縮とを繰り返す作動流体を充填すると共に、内部を前記入り口室116から前記出口室115に向かって流れる冷却流体によって前記作動流体を間接的に冷却するようにした多数本の冷却管118を設け、前記円筒体111内における作動流体の蒸発と凝縮との繰り返しにて前記円筒体111の表面を冷却するという構成にしている。
また、別の特許文献2は、前記と略同じ構造の回転式冷却ロールにおいて、その入り口室及び出口室の一部を、前記円筒体内の両端を密封するための面板にて形成するという構成にしている。
【0003】
このような特許文献1及び特許文献2に記載の回転式冷却ロールは、図示されていないが、製品化された場合には、各面板の外側には化粧板としての金属製のエンドカバーがそれぞれ設けられているのが一般的である。即ち、各面板は円筒体の両端よりも若干内方側に配設され、各面板よりも外方側で円筒体の両端を覆うようにしてエンドカバーがそれぞれ設けられているのが一般的である。
【0004】
【特許文献1】特開2001−159419号公報
【特許文献2】特開2001−116548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような回転式冷却ロールにおいては、エンドカバーは単なる化粧板として用いられるものであり、このエンドカバーの使用によりエンドカバーの内方側の空間、即ち、エンドカバーと面板と円筒体内周面とにより構成される空間は、特別の用途として用いられておらず、有効利用されていなかった。
一方、従来から、回転式冷却ロールに関するロール表面温度やその他の特性情報を検出するために種々の電子部品を、回転式冷却ロールに組み込むことが要請されていた。
なお、回転式熱ロールにおいても、上記回転式冷却ロールにおける問題と同様の問題が存在し、また、上記回転式冷却ロールにおける要請と同様の要請が存在している。
【0006】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、電子部品を回転式ロールへ容易に組み込むことができると共に、エンドカバーの内方側空間の有効利用を図ることができるようにした回転式ロールへの電子部品の取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、外周面に加熱又は冷却がなされる被熱処理物が接触する円筒体と、該円筒体の両端部を各々覆うエンドカバーと、該両エンドカバーの中心から外向きに突出する中空状回転軸とを備え、前記円筒体の内部に、蒸発と凝縮とを繰り返す作動流体を充填すると共に、該作動流体を加熱又は冷却する媒体が内部を流れる伝熱管を設けて成る回転式ロールに電子部品を取付ける取付構造であって、前記両エンドカバーのうち少なくとも一端側のエンドカバーは樹脂製とされ、この一端側の樹脂製エンドカバーの内側面に電子部品が取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
上記の如く、樹脂製エンドカバーの内側面に電子部品を取り付けることにより、エンドカバー内方側空間を有効に利用することできる。また、例えば、樹脂製エンドカバーの外側面に電子部品を取り付けた場合は、作業者の邪魔になる恐れがあるが、本発明のように樹脂製エンドカバーの外側面に電子部品を取り付けた場合は、かかる問題が解消される。
なお、用語「回転式ロール」とは、回転式冷却ロール、及び回転式熱ロールの両者を含む。また、用語「被熱処理物」とは、回転式熱ロールにあっては加熱がなされる被加熱物を、回転式冷却ロールにあっては冷却がなされる被冷却物の両者を含む。また、用語「伝熱管」とは、内部を冷却水が流れる冷却管、及び内部を過熱水又は過熱蒸気が流れる過熱管の両者を含む。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の回転式ロールへの電子部品の取付構造であって、前記回転式ロールは、外周面に冷却がなされる被冷却物が接触する円筒体を備えると共に、内部を冷却水が流れる冷却管を設けて成る回転式冷却ロールであり、前記円筒体内には円筒体内部を密閉する封止板が各々設けられ、この両封止板の外方側には水室蓋板が各々設けられ、この水室蓋板と前記封止板と円筒体内周面とにより冷却水が供給される水室が構成され、前記一端側の樹脂製エンドカバーと該樹脂製エンドカバーの内側に配置される水室蓋板との間に、環状のスペーサが設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記構成により、回転式冷却ロールにおいて、樹脂製エンドカバーの内側面に取り付けられる電子部品の大きさに対応して環状のスペーサの厚みを変えることにより、電子部品の大きさに対応した内側空間が得られることになり、種々の大きさの電子部品を樹脂製エンドカバーの内側面に取り付けることが可能となる。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、請求項1に記載の回転式ロールへの電子部品の取付構造であって、前記回転式ロールは、外周面に加熱がなされる被加熱物が接触する円筒体を備えると共に、内部を過熱水又は過熱蒸気が流れる過熱管を設けて成る回転式熱ロールであり、前記円筒体内には円筒体内部を密閉する封止板が各々設けられ、この両封止板の外方側には蓋板が各々設けられ、この蓋板と前記封止板と円筒体内周面とにより過熱水又は過熱蒸気が供給される室が構成され、前記一端側の樹脂製エンドカバーと該樹脂製エンドカバーの内側に配置される蓋板との間に、環状のスペーサが設けられていることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、回転式熱ロールにおいて、樹脂製エンドカバーの内側面に取り付けられる電子部品の大きさに対応して環状のスペーサの厚みを変えることにより、電子部品の大きさに対応した内側空間が得られることになり、種々の大きさの電子部品を樹脂製エンドカバーの内側面に取り付けることが可能となる。
なお、上記「蓋板」は、請求項2記載の回転式冷却ロールの場合における「水室蓋板」に対応するものであり、また、上記「過熱水又は過熱蒸気が供給される室」は、請求項2記載の回転式冷却ロールの場合における「冷却水が供給される水室」に対応するものである。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の回転式ロールへの電子部品の取付構造であって、前記一端側の樹脂製エンドカバーには、エンドカバーの内側空間と外部とを連通する連通孔が形成されており、該内側空間内の空気が所定温度未満の場合には前記連通孔を閉塞し、該内側空間内の空気が所定温度以上に達した場合には前記連通孔を開放する開閉手段が備えられていることを特徴とする。
【0014】
上記の如く、樹脂製エンドカバーの内側空間内の空気が所定温度未満の場合には、連通孔が閉塞されるので、回転式ロールが回転式冷却ロールの場合は被熱処理物(被冷却物)の熱が円筒体表面を介して該内側空間内の空気に伝達され、回転式ロールが回転式熱ロールの場合は作動流体の熱が円筒体表面を介して該内側空間内の空気に伝達される。このとき、エンドカバーが樹脂製であるため、放熱効果が小さく、このため、該内側空間内の温度が上昇する。そして、該内側空間内の空気が所定温度以上になると、連通孔が開放され、該内側空間が連通孔を介して外部と連通する。この結果、内側空間内の高温空気は、それよりも低温の外部空気と混合もしくは置換されて、内側空間内の温度が下降する。
このようにして、内側空間の温度変化に応じて連通孔の開閉動作が行われので、内側空間内が高温となることが防がれる。この結果、内部空間内に存在する電子部品が正常に作動すると共に、電子部品が熱により破壊されることを確実に防止することができる。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の回転式ロールへの電子部品の取付構造であって、前記開閉手段は、前記連通孔を覆う開閉蓋と、開閉蓋を開放方向に付勢する形状記憶合金製第1バネと、開閉蓋を閉塞方向に付勢する第2バネとを備えると共に、前記形状記憶合金製第1バネは所定温度未満の場合に引張力が消失し、所定温度以上の場合には第2バネのバネ力よりも大きい引張力が生じるように構成され、前記内側空間内の空気が所定温度未満の場合には、第1バネは引張力が消失し、第2バネのバネ力により開閉蓋が閉塞方向に付勢されて連通孔が閉塞状態とされ、前記内側空間内の空気が所定温度以上の場合には、第2バネのバネ力に抗して第1バネの引張力により開閉蓋が開放方向に付勢されて連通孔が開放状態とされることを特徴とする。
【0016】
上記の如く、連通孔を開閉する開閉手段は形状記憶合金製のバネを用いた簡単な構造で実現することができる。また、商用電源や電池等の電源を必要としないので、コストの低減を図ることができる。なお、「第1バネ」及び「第2バネ」は、コイルバネであってもよく、また板バネであってもよい。
【0017】
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の回転式冷却ロールへの電子部品の取付構造であって、前記電子部品は、少なくとも送信機を構成する電子部品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、樹脂製エンドカバーの内側面に電子部品を取り付けることにより、エンドカバー内方側空間を有効に利用することできる。また、例えば、樹脂製エンドカバーの外側面に電子部品を取り付けた場合は、作業者の邪魔になる恐れがあるが、本発明のように樹脂製エンドカバーの外側面に電子部品を取り付けた場合は、かかる問題が解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下の実施の形態では、本発明に係る回転式ロールへの電子部品の取付構造の一例として回転式冷却ロールへの電子部品の取付構造を挙げて詳述する。また、当該電子部品の一例としては、回転式冷却ロールの温度測定装置における送信機及び電池等を挙げて説明する。但し、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、回転式熱ロールへの電子部品(例えば、温度測定装置における送信機及び電池等)の取付構造にも適用することができる。
【0020】
(実施の形態1)
図1は実施の形態に係る回転式冷却ロールの温度測定装置を備えた押し出し型ラミネート加工機の概略構成を示す図である。
紙に対して合成樹脂フィルムを貼合したラミネート積層紙の製造に際しては、図1に示すように、ロール状原紙1から繰り出された原料紙2を、一対の回転式押圧ロール3と回転式冷却ロール4との間を通したのち、巻き取りロール5に巻き取らせる一方、前記回転式押圧ロール3と回転冷却ロール4との間の上部に、樹脂ホルダー6a内の溶融合成樹脂7をフィルム状に押し出すようにした押し出しダイス6bを配設し、この押し出しダイス6bから押し出される合成樹脂フィルム8を、前記原料紙2と一緒に回転式押圧ロール3と回転式冷却ロール4との間に送り込むことにより、この合成樹脂フィルム8を、回転式冷却ロール4にて冷却しながら前記原料紙2に貼合わせて、ラミネート積層紙9を製造する。
【0021】
図2は実施の形態に係る回転式冷却ロールの温度測定装置を備えた冷却ロールの全体構成を示す図、図3は冷却ロールの断面図、図4は冷却ロールの端部付近の拡大断面図、図5は冷却ロールの一端側に備えられる樹脂製エンドカバーを内方側から見た図、図6は開閉蓋により連通孔が閉塞された状態を示す断面図、図7は連通孔付近の分解斜視図、図8は開閉蓋により連通孔が開放された状態を示す断面図である。なお、図2においては図解の容易のため開閉蓋及び連通孔等は省略されている。
図2及び図3に示すように、回転式冷却ロール4は、前記図1に示す原料紙2等の被冷却シートが外周面に接触する円筒体11と、該円筒体11における左右両端の中心から外向きに突出するように挿入された中空状の回転軸12を備える。円筒体11には、その内部を密閉する封止板13,14が設けられている。この封止板13,14の中心には前記回転軸12が貫通すると共に、この封止板13,14は回転軸12に固着され、且つ、この両封止板13,14によって円筒体11内が密閉されている。円筒体11の内部には、ナフタリン又はキノリン等のように蒸発と凝縮とを繰り返すようにした作動流体が充填されている。
なお、回転式冷却ロール4は、回転軸12の両端部12a,12bにおいて、機体側の軸受(図示せず)に軸支されている。
【0022】
前記円筒体11内にあって両封止板13,14の外側には、水室蓋板17,18が各々設けられており、この水室蓋板17,18と封止板13,14と円筒体11内周面とによって水室19,20が構成されている。円筒体11の内部には、円筒体11の軸線方向に延び両端が前記両封止板13,14を貫通して両水室19,20に連通する冷却管21の複数本が、円周方向に沿って並べて設けられ、前記回転軸12の軸孔内を通って前記両水室19,20のうち一方の水室20内に供給された冷却水は、この一方の水室20から前記各冷却管21内に分配され、この各冷却管21内を通過したのち他方の水室19から排出されるように構成されている。
【0023】
また、円筒体11の両水室蓋板17,18の外側には、円筒体11の両端を覆う円形状のエンドカバー22,23が各々設けられている。このエンドカバー22,23の各中心には回転軸12が貫通している。このエンドカバー22,23は、水室蓋板17,18を覆う化粧板としての機能を果たすものである。ここで、本実施の形態においては、後述するように、両エンドカバー22,23のうち一方のエンドカバー23の内側面23aに送信アンテナ31を含む送信ユニット32(図4及び図5参照)が取付けられている。
【0024】
なお、エンドカバー22,23の装着により、水室蓋板17,18とエンドカバー22,23との間に内側空間24,25が形成され、この内側空間24,25は冷却ロールの回転時における左右のバランスを取るためのバランスウエイトを取付ける空間としても利用される。但し、上記のようにエンドカバー23の内側面23aに送信アンテナ31を取付ける構造とすることから、内側空間25を内側空間24よりも大きく構成するために、水室蓋板18とエンドカバー23との間に環状のスペーサ26を介在させている。なお、エンドカバー23は、図4に示すように、ねじ84によってスペーサ26を介して水室蓋板18に固着されている。従って、エンドカバー23の内側面23aに取り付けられる電子部品の大きさに対応して環状のスペーサ26の厚みを変えることにより、電子部品の大きさに対応した内側空間25が得られることになり、種々の大きさの電子部品をエンドカバー23の内側面23aに取り付けることが可能となる。
【0025】
この構成において、前記円筒体11内に充填した作動流体は、円筒体11の内面に接したとき、この円筒体11の外周面に接触する被冷却シートからの熱にて蒸発し、各冷却管21への接触にて冷却・凝縮して液化して、前記円筒体11の内面に至ってこれに接することを繰り返すことにより、前記被冷却シートの冷却を行う。なお、中空状回転軸12の一方端には冷却水供給用ロータリジョイント(図示せず)が接続されている。
【0026】
ところで、上記構成の冷却ロールにおいて、冷却ロール表面温度を測定するための温度測定装置が備えられている。この温度測定装置は、円筒体11の表面層に埋設されている白金からなる温度検出手段としての測温抵抗体30(図2参照)と、エンドカバー23の内側に取付けられている送信アンテナ31を備えた送信機(具体的には送信回路部)や電池40等を含む送信ユニット32(図4及び図5参照)と、受信機(図示せず)と、受信機からの温度データの表示等を行う制御ユニット(図示せず)等を含んで構成される。なお、本実施の形態において、送信機で使用される電波は、その通信距離が1m程度の微弱電波を用いている。この結果、冷却ロールの周辺に存在する多数の周辺機器が送信機からの電波により誤動作する等の悪影響が生じないというメリットを有する。
【0027】
測温抵抗体30の埋設位置は円筒体11外周表面で且つ少なくとも被冷却シートが接触する領域とされている。この測温抵抗体30のリード線はエンドカバー23の内側面23aに取り付けられている送信ユニット32に接続されている。送信ユニット32には、図4に示すように、電源としての電池40を備える。電池40としては、後述するように内側空間25内が高温となることが防止されているので、通常温度仕様の電池を使用することができる。そして、電池40は電池ボックスに収納されている。なお、エンドカバー23の外側面には、ねじ85によって開閉蓋41(図4及び図5参照)が固着されており、このねじ85を取り外し、エンドカバー23の外側面から開閉蓋41を取り外すことにより、電池交換を行うことができるようになっている。
【0028】
またエンドカバー22は金属製であるが、エンドカバー23は樹脂製(例えば塩化ビニル製)である。エンドカバーは金属製であるのが一般的であるが、エンドカバー23として金属製のものを使用すると、送信アンテナ31からの微弱電波が金属製エンドカバーに遮蔽されて、十分な受信状態が得られない。そこで、本実施の形態では、エンドカバー23としては樹脂製のものを用いることとしている。なお、エンドカバー23に取り付ける電子部品の種類に応じて、エンドカバー23を耐熱性樹脂製のものを使用するようにしてもよい。また、本実施の形態では、エンドカバー23は樹脂製で、エンドカバー22は金属製とされたが、本発明はこれに限定されず、エンドカバー22,23共に樹脂製であってもよい。
【0029】
また、送信アンテナ31をエンドカバー23の内側面23aに設けるのは、以下の理由による。即ち、エンドカバー23の外側面に送信アンテナ31を取り付けると、送信アンテナ31を破損する恐れがあることに加えて、冷却ロール交換作業の際に邪魔になり、円滑な交換作業を行えないからである。
【0030】
なお、エンドカバー23の内側に送信アンテナ31を有する送信機を取付けても、送信機は比較的軽量であるので、冷却ロールの回転時におけるバランスに影響を与えない。但し、径が小さい小型の冷却ロールの場合には、若干の影響を与える恐れがある。そのような場合にはエンドカバー22側にバランスウエイトを設けるようにすればよい。
【0031】
また、本実施の形態では、送信アンテナ31はL字型に曲げられたワイヤアンテナが用いられる。このようにアンテナ形状をL字型とすることにより、一本の棒状アンテナ形状に比べて広範囲の指向特性が得られるので、受信アンテナでの受信精度が向上する。なお、送信アンテナ31は、図5に示すように、第1直線部31aと、第1直線部31aに直角に曲げられた第2直線部31bとを有し、第1直線部31aと第2直線部31bとは、その全長が等しく設定されている。そして、送信アンテナ31はエンドカバー23の内側面23aに貼着され、図5に示すようにエンドカバー23が静止状態時において送信ユニット32(発信機本体に相当)が、エンドカバー23の中心と頂点とを結ぶ直線L1上に位置すると共に、第1直線部31aが直線L1に垂直で、且つ、第2直線部31bが直線L1に平行となるように配置とされる。
【0032】
また、エンドカバー23には、図6及び図7に示すように、内側空間25と外部とを連通する円形状の連通孔42が形成されている。連通孔42は円形に限らず、その他の形状であってもよい。この連通孔42は、エンドカバー23の内側面23aに設けられた開閉蓋43によって開閉自在とされている。開閉蓋43は、金属製大径部44とゴム製小径部45とからなる。小径部45の径は、連通孔42を閉塞可能なように連通孔42の径よりも大きく設定されている。このように小径部45がゴム製であると、エンドカバー23の内側面23aに弾発的に当接し、連通孔42を完全に閉塞することが可能となる。なお、小径部45は金属製であって、その端面にゴム板が貼着された構成であってもよい。
【0033】
前記小径部45の外周には、形状記憶合金製第1のコイルバネ46が介装されている。この形状記憶合金製第1コイルバネ46の一端は大径部44の一方側端面44a(図6の右側端面)に固着され、他端はエンドカバー23の内側面23aに固着されている。また、大径部44の他方側端面44b(図6の左側端面)には支軸47が一体的に形成されており、この支軸47の先端は水室蓋板18に形成されている凹部48に嵌り込んでいる。この支軸47の外周には、形状記憶合金製でない第2コイルバネ49が介装されている。第2コイルバネ49の一端は、水室蓋板18の表面に固着され、他端は大径部44の他方側端面44bに固着されている。
【0034】
そして、形状記憶合金製第1コイルバネ46は開閉蓋43を開放方向に付勢し、第2コイルバネ49は開閉蓋43を閉塞方向に付勢すると共に、形状記憶合金製第1コイルバネ46は所定温度未満の場合に引張力が消失し、所定温度以上の場合には第2コイルバネ49のバネ力よりも大きい引張力が生じるように構成されている。
【0035】
従って、エンドカバー23の内側空間25内の空気が所定温度未満の場合には、第1コイルバネ46は引張力が消失し、第2コイルバネ49のバネ力により開閉蓋43が閉塞方向に付勢されて連通孔42を閉塞状態(図6に示す状態)とする。これにより、被冷却物の熱が内側空間25内の空気に伝達されて、内側空間25の温度が上昇する。
そして、内側空間25内の空気が所定温度以上になると、第2コイルバネ49のバネ力に抗して第1コイルバネ46の引張力により開閉蓋43が開放方向に付勢されて連通孔42が開放状態(図8に示す状態)となる。これにより、内側空間25が連通孔42を介して外部と連通する。この結果、内側空間25内の高温空気は、それよりも低温の外部空気と混合もしくは置換されて、温度が下降する。
【0036】
このようにして、内側空間25の温度変化に応じて蓋板43の開閉動作が行われので、内側空間25内が高温となることが防がれる。この結果、内部空間25内に存在する電池40や送信機を構成する電子部品等の熱破壊を防止することができる。なお、連通孔42は電子部品(本実施の形態では送信機及び電池に相当)の近傍に設けるのが好ましい。連通孔42が電子部品(本実施の形態では送信機及び電池に相当)から離れた位置に設けられている場合には、連通孔42の開放による温度下降の影響を受けるのに時間を要し、当該電子部品が高温に晒されている時間が長くなって、当該電子部品の熱破壊の危険性が大きくなるからである。
【0037】
ここで所定温度とは、例えば、35℃〜45℃の範囲内の温度が選択される。本実施の形態では40℃を境として引張力が生じ、また、消失するように形成されている。なお、この温度であれば、電池や送信機を構成する電子部品等の熱破壊防止に加えて、冷却ロールにおける被冷却物が接触する領域外のいわゆる非接触領域での結露の防止にも有効である。
【0038】
以下に、冷却ロール非接触領域での結露の防止に有効である理由について詳述する。即ち、特許文献1及び特許文献2に記載の回転式冷却ロールにおいては非接触領域での結露の発生が問題となっている(特開2004−116548号公報、段落0007〜段落0012参照)。このような非接触領域での結露の発生は、円筒体の両端に金属製エンドカバーを設けた回転式冷却ロールの場合においては、放熱効果が大きい金属製エンドカバーの使用に起因して、一層顕著となり、大きな問題となっている。
【0039】
ところで、本実施の形態のようにエンドカバー23として樹脂製のものを用いると、従来のような金属製エンドカバーよりも放熱効果が小さいため、内側空間25内に熱が滞留して高温となる。そうすると、例えば、冷却水が大量に水室20内に流れ込んだ場合等であっても、内側空間25内から水室蓋板18に熱が伝達されるので、水室20内の冷却水により水室蓋板18を介して非接触領域が冷やされることを緩和する働きがなされる。その結果、結露の防止を抑制することが可能となる。しかしながら、内側空間23内に熱が滞留して高温となると、電子部品の熱破壊の防止の観点からは逆効果となる。そこで、開閉蓋43が開放される所定温度を40℃とすることにより、非接触領域での結露の防止及び電子部品の熱破壊の防止という両効果が同時に達成し得ることになる。
【0040】
(実施の形態2)
図9は実施の形態2に係る開閉蓋により連通孔が閉塞された状態を示す断面図、図10は実施の形態2に係る連通孔付近の分解斜視図、図11は実施の形態2に係る開閉蓋により連通孔が開放された状態を示す断面図である。
【0041】
上記実施の形態1では、形状記憶合金製第1コイルバネ46は小径部45の外周に介装されていたけれども、本実施の形態2では形状記憶合金製第1コイルバネ46を大径部44とエンドカバー23との間に介装すると共に、第1コイルバネ46を小径部45の周囲に複数個配置して構成される。このような構成においても、上記実施の形態1と同様に、内側空間25の温度変化に応じて開閉蓋43の開閉動作が行われので、内側空間25内が高温となることが防がれる。なお、開閉蓋43の開閉動作をバランスよく円滑に行わせるためには、複数の第1コイルバネ46は小径部45の周方向に等間隔をあけて配置するのが好ましい。
【0042】
(その他の事項)
(1)上記実施の形態では、回転式冷却ロールの温度測定装置について説明したけれど、本発明はこれに限定されず、回転式熱ロールの温度測定装置についても適用することができる。なお、回転式熱ロールとは、回転式冷却ロールにおける冷却管に代えて内部に過熱水(蒸気)が流れる過熱管を設け、円筒体の内部に充填される作動流体がロール表面において被加熱物に熱を与えて凝縮して液化し、過熱管により蒸発することを繰り返すことにより、被加熱物の加熱を行うように構成されたものが該当する。
(2)上記実施の形態では、連通孔42及び開閉蓋43は1組設けられたけれども、複数組設けるようにしてもよい。
(3)上記実施の形態では送信機の電源として電池を用いたけれども、内側空間25内に回転軸12により発電を行う発電機を設けて、この発電機による電源により送信機を駆動するようにしてもよい。
(4)上記実施の形態ではロール表面温度の測定データを送信機により送信するように構成したけれども、その他の測定データを送信機により送信するように構成してもよい。
(5)上記実施の形態では樹脂製エンドカバーの内側面に送信機を取付けたけれども、本発明はこれに限定されず、その他の電子部品を取付けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、セロファン、アルミ箔、紙、合成樹脂等の各種シートや各種フィルムの製造装置、または、これら各種シートや各種フィルムの加工装置、あるいは、これら各種シートや各種フィルムのうち同種又は異種の複数枚を貼合又は積層するラミネート装置、若しくは、前記各種のシートや各種フィルムに対して合成樹脂をフィルム状に押し出しながら貼合わせる押出ラミネート装置等に使用される回転式ロールへの電子部品の取付構造に好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施の形態1に係る回転式冷却ロールの温度測定装置を備えた押し出し型ラミネート加工機の概略構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る回転式冷却ロールの温度測定装置を備えた冷却ロールの全体構成を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る冷却ロールの断面図である。
【図4】実施の形態1に係る冷却ロールの端部付近の拡大断面図である。
【図5】実施の形態1に係る冷却ロールの一端側に備えられる樹脂製エンドカバーを内方側から見た図である。
【図6】実施の形態1に係る開閉蓋により連通孔が閉塞された状態を示す断面図である。
【図7】実施の形態1に係る連通孔付近の分解斜視図である。
【図8】実施の形態1に係る開閉蓋により連通孔が開放された状態を示す断面図である。
【図9】実施の形態2に係る開閉蓋により連通孔が閉塞された状態を示す断面図である。
【図10】実施の形態2に係る連通孔付近の分解斜視図である。
【図11】実施の形態2に係る開閉蓋により連通孔が開放された状態を示す断面図である。
【図12】従来技術の回転式冷却ロールの断面図である。
【符号の説明】
【0045】
4:回転式冷却ロール 11:円筒体
12:回転軸 13,14:封止板
17,18:水室蓋板 21:冷却管
22:金属製エンドカバー 23:樹脂製エンドカバー
23a:エンドカバー23の内側面 25:内部空間
31:送信アンテナ 32:送信ユニット
40:電池 42:連通孔
43:開閉蓋 44:大径部
45:小径部 46:第1コイルバネ
49:第2コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に加熱又は冷却がなされる被熱処理物が接触する円筒体と、該円筒体の両端部を各々覆うエンドカバーと、該両エンドカバーの中心から外向きに突出する中空状回転軸とを備え、前記円筒体の内部に、蒸発と凝縮とを繰り返す作動流体を充填すると共に、該作動流体を加熱又は冷却する媒体が内部を流れる伝熱管を設けて成る回転式ロールに電子部品を取付ける取付構造であって、
前記両エンドカバーのうち少なくとも一端側のエンドカバーは樹脂製とされ、この一端側の樹脂製エンドカバーの内側面に電子部品が取り付けられていることを特徴とする回転式ロールへの電子部品の取付構造。
【請求項2】
前記回転式ロールは、外周面に冷却がなされる被冷却物が接触する円筒体を備えると共に、内部を冷却水が流れる冷却管を設けて成る回転式冷却ロールであり、前記円筒体内には円筒体内部を密閉する封止板が各々設けられ、この両封止板の外方側には水室蓋板が各々設けられ、この水室蓋板と前記封止板と円筒体内周面とにより冷却水が供給される水室が構成され、前記一端側の樹脂製エンドカバーと該樹脂製エンドカバーの内側に配置される水室蓋板との間に、環状のスペーサが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転式ロールへの電子部品の取付構造。
【請求項3】
前記回転式ロールは、外周面に加熱がなされる被加熱物が接触する円筒体を備えると共に、内部を過熱水又は過熱蒸気が流れる過熱管を設けて成る回転式熱ロールであり、前記円筒体内には円筒体内部を密閉する封止板が各々設けられ、この両封止板の外方側には蓋板が各々設けられ、この蓋板と前記封止板と円筒体内周面とにより過熱水又は過熱蒸気が供給される室が構成され、前記一端側の樹脂製エンドカバーと該樹脂製エンドカバーの内側に配置される蓋板との間に、環状のスペーサが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転式ロールへの電子部品の取付構造。
【請求項4】
前記一端側の樹脂製エンドカバーには、エンドカバーの内側空間と外部とを連通する連通孔が形成されており、該内側空間内の空気が所定温度未満の場合には前記連通孔を閉塞し、該内側空間内の空気が所定温度以上に達した場合には前記連通孔を開放する開閉手段が備えられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の回転式ロールへの電子部品の取付構造。
【請求項5】
前記開閉手段は、前記連通孔を覆う開閉蓋と、開閉蓋を開放方向に付勢する形状記憶合金製第1バネと、開閉蓋を閉塞方向に付勢する第2バネとを備えると共に、前記形状記憶合金製第1バネは所定温度未満の場合に引張力が消失し、所定温度以上の場合には第2バネのバネ力よりも大きい引張力が生じるように構成され、
前記内側空間内の空気が所定温度未満の場合には、第1バネは引張力が消失し、第2バネのバネ力により開閉蓋が閉塞方向に付勢されて連通孔が閉塞状態とされ、前記内側空間内の空気が所定温度以上の場合には、第2バネのバネ力に抗して第1バネの引張力により開閉蓋が開放方向に付勢されて連通孔が開放状態とされることを特徴とする請求項4記載の回転式ロールへの電子部品の取付構造。
【請求項6】
前記電子部品は、少なくとも送信機を構成する電子部品であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の回転式冷却ロールへの電子部品の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−263252(P2007−263252A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90087(P2006−90087)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000143972)株式会社ササクラ (138)
【Fターム(参考)】