説明

回転装置

【課題】ダンパを用いても吸収しきれないロータ軸の振動を抑制することができる回転装置を提供すること。
【解決手段】この回転装置100では、ロータ軸131と一体的に回転する接続軸21を支持する軸受ユニット24は、予圧がかけられたものであるため高剛性とされている。また、この軸受ユニット24が、ステータ14を収容する収容体11に接続されてしっかりと固定された軸ハウジング22に直接保持されている。したがって、ダイナモ部1側でロータ13が例えば数万rpmで高速回転してロータ13に振動(共振)が発生し、この振動をダンパ16が吸収しきれない場合があっても、アダプタ部2側において接続軸21の振動が極力抑制され、接続軸21の回転中心を実質的に一定とすることができる。つまり、ダンパ16を用いても吸収しきれない、ダイナモ100のロータ軸131の振動を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナモやモータ等の回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速回転するダイナモやモータの軸受部分には、その高速回転により発生する軸の振動を減衰させるために、スクイズフィルムダンパが多用される。
【0003】
特許文献1の図5に示す例では、ロータを支持するラジアル軸受の外周側にスクイズフィルムダンパが設けられることにより、高速回転する発電機軸の振動が低減される(例えば、特許文献1の明細書段落[0028]参照)。また、特許文献1では、その図2及び3に示すように、潤滑剤が通るための多数の孔が形成され、スラスト方向で見てC型に形成された薄板が複数積層されて構成されたダンパも開示されている(特許文献1の明細書段落[0022])。
【0004】
また、特許文献2に記載のガスタービンでは、軸受を保持する軸受ホルダをガスタービンのハウジングへ取り付けるときの、軸受ホルダの位置決めの技術が開示されている。この軸受ホルダの軸受収納部の外周側に、スクイズフィルムダンパが形成される。この軸受ホルダは、軸受収納部に一体的に形成された筒部を有し、筒部の一端(インロー部)が、ハウジングの穴部に嵌合する。このような構成によって、軸受収納部が、そのハウジングの穴部に対して高い同心度を持って位置決めされる(例えば、特許文献2の段落[0015]、図1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2004−336917号公報
【特許文献2】特許第2949913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載されたスクイズフィルムダンパやその他のダンパが備えられた回転装置では、振動をある程度減衰することはできるが、十分に振動を吸収することはできず、ロータ軸の回転中心が一定とならない。例えば回転装置がダイナモとして使用される場合に、そのダイナモに振動が発生すると、そのダイナモに接続される駆動源側のロータを振動させ、損傷させるおそれがある。したがって、ダンパだけでは吸収できない振動を抑制する必要がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、ダンパを用いても吸収しきれないロータ軸の振動を抑制することができる回転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る回転装置は、ロータと、ステータと、第1の軸受と、ダンパと、収容体と、接続軸と、第2の軸受と、保持体とを具備する。
前記ロータは、ロータ軸を有する。
前記ステータは、前記ロータの周囲に配置されている。
前記第1の軸受は、前記ロータ軸を回転可能に支持する。
前記ダンパは、前記第1の軸受を弾性的に支持する。
前記収容体は、前記ステータを収容し、前記ダンパを介して前記第1の軸受を保持する。
前記接続軸は、前記ロータ軸の端部に接続されている。
前記第2の軸受は、前記接続軸を回転可能に支持し、予圧がかけられている。
前記保持体は、前記収容体に接続され、前記第2の軸受を保持する。
【0009】
回転装置がモータとして使用される場合、接続軸はモータの動力を外部装置に出力する出力軸となる。一方、回転装置がダイナモとして使用される場合、接続軸は外部装置からの動力が入力される入力軸となる。
【0010】
本発明では、ステータを収容する収容体が、ロータを支持する第1の軸受をダンパを介して保持している。ロータと一体的に回転する接続軸を支持する第2の軸受は、予圧がかけられたものであるため高剛性であり、この第2の軸受が、ステータを収容する収容体に接続された保持体に保持されている。したがって、回転するロータの振動をダンパが吸収しきれない場合があっても、接続軸の振動が極力抑制され、入力または出力軸として機能する接続軸の回転中心を実質的に一定とすることができる。つまり、ダンパを用いても吸収しきれない、回転装置のロータ軸の振動を抑制することができる。これにより、例えば接続軸に接続される外部装置の損傷等も防止することができる。
【0011】
前記第2の軸受は、定位置予圧がかけられていてもよい。定位置予圧により、例えば第2の軸受に定圧予圧がかけられる場合に比べ、第2の軸受の剛性を高めることができ、また軸受の構成部品を少なくすることができる。特に、本発明では、ロータ、ステータ、第1の軸受、ダンパ及び収容体に、接続軸、第2の軸受及び保持体という構成要素が加わり、回転装置として構成要素が多くなるので、回転装置の部品総数をできるだけ少なくし、かつ、高剛性という条件を満たす必要がある。すなわち、定圧予圧がかけられたものより定位置予圧がかけられた第2の軸受を用いることのメリットが大きい。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、ダンパを用いても吸収しきれない、回転装置のロータ軸の振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る回転装置としてのダイナモを示す断面図である。
【図2】図2は、アダプタ部の軸受ユニットを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る回転装置としてのダイナモを示す断面図である。以降の説明において、説明の便宜上、図1におけるダイナモ100の右側を前方側、左側を後方側とする。
【0016】
このダイナモ100は、ダイナモ部1とこのダイナモ部1の前方側に接続されたアダプタ部2とを含む。ダイナモ部1は収容体11を有し、収容体11は、スラスト方向(軸方向)における両端部が開口された円筒状のハウジング111と、このハウジング111の両端部に装着されたカバー112とを有する。
【0017】
ハウジング111の中心には、ロータ13が配置され、ロータ13の周囲に、コア141及びコイル142を有するステータ14が配置されている。ステータ14は、ハウジング111の内壁に固定されている。ロータ13はロータ軸131を有し、ロータ軸131の周囲に永久磁石132が固定されている。ロータ軸131の両端部付近で、ロータ軸131が軸受15により回転可能に支持されている。
【0018】
両カバー112の中央には円筒状の軸受取り付け部112aが設けられ、ロータ軸131の両端部は、それらの軸受取り付け部112a内に配置される。その軸受取り付け部112aの内周面と軸受15との間には、軸受15をそれぞれ弾性的に支持するダンパ16が設けられている。
【0019】
軸受15は、ラジアル軸受、アンギュラ軸受等、何でもよい。
【0020】
ダンパ16としては、図1では模式的に示されているが、典型的にはスクイズフルムダンパ(SFD)が用いられる。具体的には、軸受15の図示しない外輪にOリング等のシール部材が装着され、そのシール部材と軸受取り付け部112aの内周面との間に充填された油によりSFDが形成される。なお、SFDに代えて、油膜を用いない機械的なダンパが用いられてもよい。
【0021】
アダプタ部2は、ロータ軸131の前方側の端部に接続された接続軸21と、この接続軸21を回転可能に支持する軸受ユニット24とを有する。接続軸21は、例えばスプラインカップリング構造1321によりロータ軸131と接続されており、それらの軸131及び21の回転方向に対して高剛性となっている。軸受ユニット24は、接続軸21の適切な位置の2箇所に設けられている。2つの軸受ユニット24は実質的に同じ構成を有している。
【0022】
アダプタ部2は、ダイナモ部1の収容体11に接続された、それらの軸受ユニット24を保持する保持体としての軸ハウジング22を有する。軸ハウジング22の前方側には穴23aを有するカバー部材23が装着され、この穴23aを介して接続軸21の前方側の端部21aが外部に突出している。軸ハウジング22は、図1に示すように収容体11のカバー112に接続されるか、あるいはハウジング111に接続されていてもよい。図1には示していないが、収容体11と軸ハウジング22とが例えばフランジ接続により接続されることにより、両者の剛性を向上させることができる。
【0023】
軸ハウジング22は、内部に円柱状の空間223を有する保持部225を有する。その保持部225の内周面に軸受ユニット24が嵌合するように保持されている。
【0024】
図2は、アダプタ部2の2つの軸受ユニット24のうち1つの軸受ユニット24を示す拡大断面図である。この軸受ユニット24は、2つの軸受241、242、及びそれらの間に設けられたスペーサ243を有する。2つの軸受241及び242として例えば定位置予圧がかけられたアンギュラ軸受が用いられ、これにより組合せアンギュラ軸受が構成される。つまり、この組合せアンギュラ軸受では、例えば、アンギュラ軸受241及び242がそれぞれ有するボール2415及び2425が所定の接触角を持っており、スラスト方向に垂直な面に対して、対称的な2つの斜め方向で接続軸21が支持される。
【0025】
以上のように構成されたダイナモ100の動作を説明する。
【0026】
接続軸21の前方側の端部21aに、図示しない動力源(外部装置である駆動源)の駆動軸が図示しないカップリング等を介して接続される。なお、このダイナモ100が動力源の動作を試験するための試験装置(ダイナモメータ)として使用される場合、接続軸21と、その動力源の駆動軸との間にはトルク計等が接続される場合もある。
【0027】
図示しない動力源の駆動軸が回転すると、接続軸21及びこれに接続されたロータ13が一体的に回転する。ロータ13の回転によって、ロータ13の永久磁石132と、ステータ14のコア141及びコイル142との相互作用によりコイル142に電力が発生する。これら接続軸21及びロータ13の回転数は、0〜50000rpmであるが、この範囲に限られない。
【0028】
本実施形態では、上述のように、ロータ軸131と一体的に回転する接続軸21を支持する軸受ユニット24は、予圧がかけられたものであるため高剛性とされている。また、この軸受ユニット24が、ステータ14を収容する収容体11に接続されてしっかりと固定された軸ハウジング22に直接保持されている。したがって、ダイナモ部1側でロータ13が例えば数万rpmで高速回転してロータ13に振動(共振)が発生し、この振動をダンパ16が吸収しきれない場合があっても、アダプタ部2側において接続軸21の振動が極力抑制され、接続軸21の回転中心を実質的に一定とすることができる。つまり、ダンパ16を用いても吸収しきれない、ダイナモ100のロータ軸131の振動を抑制することができる。これにより、例えば接続軸21に接続される、動力源等の損傷も防止することができる。
【0029】
また、定位置予圧がかけられた軸受ユニット24が用いられることにより、例えば定圧予圧がかけられたものが用いられる場合に比べ、軸受ユニット24の剛性を高めることができ、また軸受ユニット24の構成部品を少なくすることができる。特に本実施形態では、ロータ13、ステータ14、軸受15、ダンパ16及び収容体11に、接続軸21、軸受ユニット24及び軸ハウジング22という構成要素が加わり、ダイナモ100全体として構成要素が多くなるので、ダイナモ100の部品総数をできるだけ少なくし、かつ、高剛性という条件を満たす必要がある。すなわち、定圧予圧がかけられたものより定位置予圧がかけられた軸受ユニット24を用いることのメリットが大きい。
【0030】
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が実現される。
【0031】
上記軸受ユニット24としての組合せアンギュラ軸受は、2つのアンギュラ軸受を有していたが、3つ以上のアンギュラ軸受の組合せであってもよい。
【0032】
また、そのアンギュラ軸受として定位置予圧がかけられたものが用いられたが、定圧予圧がかけられたものが用いられてもよい。
【0033】
上記実施形態では、軸ハウジング22の保持部225の内周面に軸受ユニット24が直接接触するようにして配置されていた。しかし、軸受ユニット24の外周部に図示しない軸受ホルダが設けられ、軸受ホルダが軸ハウジング22の保持部225の内周面に嵌合するように保持されていてもよい。この場合、軸受ホルダは剛性の高いものが用いられればよい。
【0034】
上記実施形態では、回転装置がダイナモ100として利用されたが、もちろんモータとして利用されてもよい。その場合、接続軸21はモータの駆動力を出力する出力軸として機能し、回転装置としてのモータは、その出力軸に接続される図示しない外部装置にその回転の動力を与える。
【0035】
あるいは、回転装置100がタービンとして利用されてもよい。この場合、ステータは必ずしもコア及びコイルを有するものでなくもよく、ステータと収容体とが一体となった、ロータを収容するハウジングであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…ダイナモ部
2…アダプタ部
11…収容体
13…ロータ
14…ステータ
15…軸受(第1の軸受に相当)
16…ダンパ
21…接続軸
22…軸ハウジング(保持体に相当)
24…軸受ユニット(第2の軸受に相当)
100…ダイナモ(回転装置に相当)
131…ロータ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ軸を有するロータと、
前記ロータの周囲に配置されたステータと、
前記ロータ軸を回転可能に支持する第1の軸受と、
前記第1の軸受を弾性的に支持するダンパと、
前記ステータを収容し、前記ダンパを介して前記第1の軸受を保持する収容体と、
前記ロータ軸の端部に接続された接続軸と、
前記接続軸を回転可能に支持し、予圧がかけられた第2の軸受と、
前記収容体に接続され、前記第2の軸受を保持する保持体と
を具備する回転装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転装置であって、
前記第2の軸受は、定位置予圧がかけられている
回転装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−188642(P2011−188642A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51851(P2010−51851)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】