説明

回転装置

【課題】回転装置の高速化及び大容量化に伴って増える、回転装置が発生する熱を適切に外部に逃がすことができる回転装置を提供すること。
【解決手段】カップリング5は、ダイナモのシャフト41の一端部に接続され、また、エンジンの出力シャフト101の一端部に接続される。カップリング5内には、シャフト41に設けられた貫通穴41aと連通する流路515が放射状に形成されている。シャフト41の回転により、カップリング5の流路515内のエアに遠心力が発生してエアが外部に流出することで、その流路515内で負圧が発生する。この負圧の発生により、シャフト41の他端部からそのシャフト41の貫通穴41a内にエアが流入し、貫通穴41aを介してカップリング5の凹部511内及び流路515内へエアが流れる。これによって、特にロータコア、シャフト41及び軸受を効果的に冷却することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータやダイナモ等の回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、電動機の回転軸を中空とし、その回転軸内に冷却風を取り入れて、軸受を冷却する装置が提案されている。この電動機では、回転軸である中空軸に、可撓継手腕が設けられ、この可撓継手腕に可撓継手たわみ板が設けられている。また、中空軸内における軸受付近には冷却フィンが配置されている。
【0003】
このような構造を有する電動機では、中空軸が回転して可撓継手たわみ板が回転することによって、可撓継手たわみ板付近の空気圧が負圧になる。これにより、空気は、可撓継手たわみ板が設けられる位置とは軸方向で反対側の位置から、可撓継手たわみ板が設けられる位置へ向けて、空気が中空軸内を流れる。そして、その中空内の冷却フィンにより熱交換が行われることにより、軸受が冷却される(例えば、特許文献1の明細書段落[0005]、[0006]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−62176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年では、モータやダイナモとしての回転装置の回転数が非常に高くなり、またダイナモの出力も高くなってきている。このような回転装置の高速化及び大容量化に伴い、ロータ、ステータ及び軸受等の発熱量も多くなっている。特に、回転装置の高速化によって、シャフトと軸受との摩擦による発熱が多くなる。特許文献1に記載の装置は、可撓継手たわみ板により負圧を発生させているが、このようなたわみ板では大きな負圧を発生させることができず、回転装置の高速化及び大容量化に伴う発熱量に対応することができない。
【0006】
また、回転装置の外部に設けられたブロワを用いて、回転装置内に強制的に冷却風を送る場合にも、回転装置の高速化及び大容量化に伴う発熱量の増加の問題に対する対策が必要となっている。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、回転装置の高速化及び大容量化に伴って増える、回転装置が発生する熱を適切に外部に逃がすことができる回転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る回転装置は、ステータと、ロータと、軸受と、カップリングとを具備する。
前記ロータは、回転の軸方向に貫通する貫通孔を有するシャフトを有し、前記ステータの内側に配置される。
前記軸受は、前記シャフトを回転可能に支持する。
前記カップリングは、外周面と、前記回転の中心側から前記外周面へ延びるように設けられた気体の流路とを有する。また、前記カップリングは、前記シャフトの端部に接続可能に設けられ、前記シャフトの端部に接続された状態で、前記流路が前記シャフトの前記貫通孔に連通するように形成されている。
【0009】
本発明では、ステータの内側に配置されたロータのシャフトに貫通孔が設けられており、その貫通孔を介して気体が流通可能となる。カップリングがシャフトの端部に接続されることにより、カップリングの回転の中心側から外周面へ延びるように設けられた流路がその貫通孔に連通する。したがって、ロータが回転してシャフトが回転することにより、カップリングの流路内の気体に遠心力が発生し、その流路内で負圧を発生させることができる。したがって、貫通孔内及び流路内に気流が発生し、カップリングの外周面から気体を流出させることができる。これにより、ロータ(シャフト及びロータコアなどを含む)や軸受を効果的に冷却することができる。
【0010】
ロータが高速で回転するほど、流路内での気体の遠心力は大きくなるので負圧も大きくなり、気体の流量を増やすことができる。したがって、回転装置が高速化及び大容量化しても、回転装置が発生する熱を適切に外部に逃がすことができる。
【0011】
本発明の別の形態に係る回転装置は、ステータと、ロータと、軸受と、フランジ部とを具備する。
前記ロータは、回転の軸方向に貫通する貫通孔を有するシャフトを有し、前記ステータの内側に配置される。
前記軸受は、前記シャフトを回転可能に支持する。
前記フランジ部は、外周面と、前記回転の中心側から前記外周面へ延びるように設けられた気体の流路とを有し、前記シャフトの端部に設けられ、前記流路が前記シャフトの前記貫通孔に連通するように形成されている。
【0012】
本発明では、ステータの内側に配置されたロータのシャフトに貫通孔が設けられており、その貫通孔を介して気体が流通可能となる。フランジ部がシャフトの端部に設けられていることにより、フランジ部の回転の中心側から外周面へ延びるように設けられた流路がその貫通孔に連通する。したがって、ロータが回転してシャフトが回転することにより、フランジ部の流路内の気体に遠心力が発生し、その流路内で負圧を発生させることができる。したがって、貫通孔内及び流路内に気流が発生し、フランジ部の外周面から気体を流出させることができる。これにより、ロータ(シャフト及びロータコアなどを含む)や軸受を効果的に冷却することができる。
【0013】
ロータが高速で回転するほど、流路内での気体の遠心力は大きくなるので負圧も大きくなり、気体の流量を増やすことができる。したがって、回転装置が高速化及び大容量化しても、回転装置が発生する熱を適切に外部に逃がすことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上、本発明によれば、回転装置の高速化及び大容量化に伴って増える、回転装置が発生する熱を適切に外部に逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る回転装置としてのダイナモを示す断面図である。
【図2】図2は、カップリングを示す断面図である。
【図3】図3は、カップリングの一部(半分側)を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るカップリングの一部(半分側)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る回転装置としてのダイナモ50を示す断面図である。
【0018】
ダイナモ50はハウジング1を備えている。ハウジング1内には、ステータコア31及びコイル32を有するステータ3が配置され、そのステータ3の内側にロータ4が配置されている。ロータ4は、シャフト41及びそのシャフト41の外周面に固定されたロータコア42を有しており、そのロータコア42がステータコア31の内側に位置するように配置される。シャフト41は、ハウジング1の、回転の軸方向における両端部13及び14にそれぞれ設けられた軸受21及び22によって回転可能に支持されている。
【0019】
ダイナモ50には、外部装置として、動力を発生するエンジン100が接続されている。具体的には、ダイナモ50のシャフト41の一端部には、カップリング5を介して、エンジン100の動力が出力される出力シャフト101が接続されている。ダイナモ50は発電装置として用いられるだけでなく、エンジン100を供試体(被試験装置)とする試験装置、すなわちここではダイナモメータとして用いられる場合もある。ダイナモ50が例えば車両用のエンジンやタイヤを模擬する装置として用いられる場合、供試体がトランスミッションである場合もある。
【0020】
ロータ4のシャフト41には、その回転の軸方向に貫通する貫通孔41aが形成されている。すなわち、このシャフト41は中空構造となっている。
【0021】
ハウジング1の側面には、図示しないブロワにより圧送される冷却用のエアを、ハウジング1内に供給するための供給口11が設けられている。また、ハウジング1の側面には、ハウジング1内で熱交換が行われたそのエアをハウジング1外へ排出する排気口12が設けられている。供給口11及び排気口12はそれぞれ複数設けられているが、それぞれ1つずつ設けられていてもよい。
【0022】
図2は、カップリング5を示す断面図である。
【0023】
カップリング5は、ダイナモ50のシャフト41の一端部に接続される第1の部材51と、エンジン100の出力シャフト101の一端部に接続される第2の部材52とを有する。第1の部材51と第2の部材52は実質的に同様の構成を有している。なお、第1の部材51及び第2の部材52のそれぞれの外周側に近い部分には、周知のように図示しない複数のボルト穴が円周状に配置され、図示しないボルトにより第1の部材51及び第2の部材52が接続固定される。
【0024】
図3は、第1の部材51(または第2の部材52)の、第2の部材52(または第1の部材51)に対面する面側から見た図である。以下、図3に示す部材を第1の部材51として説明する。第1の部材51の、第2の部材52に対向する対向面513には、その対向面513の中心部に設けられた凹部511と、その凹部511からラジアル方向に外周面517まで延びるように設けられた溝部512とを有する。複数の溝部512は、すなわち放射状に設けられている。凹部511内には、ダイナモ50のシャフト41を挿通させる挿通穴514が設けられている。
【0025】
図2に示すように、それら凹部511及び521同士が対面するように、また、各溝部512及び522同士がそれぞれ対面するように、第1の部材51及び第2の部材52が接続され固定される。これにより、対面する溝部512及び522によってエアの複数の流路515が放射状にカップリング5内に形成される。すなわち、カップリング5のフランジ部に放射状にエアの流路515が形成される。また、このようにダイナモ50のシャフト41とカップリング5が接続された状態で、シャフト41の貫通孔41aと流路515とが、凹部511を介して連通する。
【0026】
なお、シャフト41の外径は例えば50〜100mmとされる。シャフト41の貫通孔41aの内径は例えば10〜30mmとされる。カップリング5の外径は例えば100〜200mmとされる。しかしながら、これら各サイズはこれらの範囲に限られない。
【0027】
以上のように構成されたダイナモ50の動作を説明する。
【0028】
エンジン100が作動し、出力シャフト101が回転すると、その出力シャフト101の回転トルクがカップリング5を介してダイナモ50のシャフト41に伝達され、ロータ4が回転する。これにより、ステータ3のコイル32に起電力が発生する。本実施形態では、ロータ4の回転数は、例えば1万〜10万rpmとされるが、この範囲に限られない。
【0029】
また、上記ブロワにより、供給口11を介してハウジング1内へ供給されたエアによりハウジング1内の各部材、ステータ3、ロータ4及び軸受21及び22などが冷却される。熱交換が行われた後のエアは排気口12を介してハウジング1外へ流出する。
【0030】
一方、ロータ4及びシャフト41の回転により、カップリング5の流路515内のエアに遠心力が発生してエアが外部に流出する。すなわち流路515内に気流が発生し、その流路515内で負圧が発生する。この負圧の発生により、シャフト41の他端部(カップリング5が接続される一端部とは反対側の端部)からそのシャフト41の貫通孔41a内にエアが流入し、貫通孔41aを介してカップリング5の凹部511内及び流路515内へエアが流れる。このように、シャフト41の貫通孔41a内及びカップリング5内に気流が発生することにより、特にロータコア42、シャフト41、軸受21及び22を効果的に冷却することができる。
【0031】
ロータ4が高速で回転するほど、カップリング5の流路515内でのエアの遠心力は大きくなるので負圧も大きくなり、エアの流量を増やすことができる。したがって、ダイナモ50が高速化及び大容量化しても、ダイナモ50が発生する熱を適切に外部に逃がすことができる。
【0032】
また、一般にロータ4の回転が高速になるほど、ロータ4の回転周波数がロータ4の持つ共振周波数(固有周波数)に近づく。しかし、本実施形態では、シャフト41に貫通孔41aが設けられ、またカップリング5に流路515が設けられることにより、それらが軽量化され、それらの共振周波数を回転周波数から遠ざけることができる。
【0033】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係るカップリングの一部を示す図である。これ以降の説明では、図3に示した実施形態に係るカップリング5が含む要素について同様のものは説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0034】
本実施形態に係るカップリングの半分側を構成する第1の部材71の外周面717には、溝712を延長するための突出部718が設けられている。溝712は、上記第1の実施形態と同様に、対向面(図示しない第2の部材に対向する面)713に凹部711から延びるように形成されている。突出部718はラジアル方向で延びるように設けられ、その突出部718の内部にも流路が形成される。
【0035】
このように突出部718が設けられることにより、流路の長さが長くなる。したがって、突出部718側における流路内でのエアの遠心力が大きくな、エアの流速が高まる。これにより、例えば図3に示したカップリング5に比べ、負圧を大きくすることができ、シャフト41の貫通孔41a及びカップリングの内部を流通するエアの流量を増やすことができるので、冷却効率を向上させることができる。
【0036】
[その他の実施形態]
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が実現される。
【0037】
上記実施形態では、カップリング5内の流路の形状はラジアル方向に直線状であったが、曲線状であってもよい。あるいは、流路が直線状の場合、ラジアル方向からずれた角度、つまり、カップリング5の外周面に対して90°でない角度で複数の流路が設けられていてもよい。要するに、流路は、中心側から外周面へ延びるように設けられていればよく、すなわち、ロータ4の回転時に、その流路内の気体に遠心力が発生するような形態であればよい。
【0038】
上記実施形態では、カップリング5内の中央部に、流路を形成する溝の深さより深い凹部511が設けられる構造について説明した。しかし、凹部511は必須ではなく、シャフト41が挿通される挿通穴514から直接延びる溝がカップリング(の第1の部材及び第2の部材)に形成されていてもよい。その場合、例えば、シャフトの貫通孔とそのカップリングの流路とを連通させるための切り欠きが、そのシャフトの端部に形成されていればよい。
【0039】
上記実施形態では、シャフト41の軸中心を中心として貫通孔が設けられていたが、シャフト41の軸中心からずれた位置、つまり偏心した位置に貫通孔が設けられていてもよい。この場合、貫通孔は1つでもよいし複数あってもよい。貫通孔が複数設けられる場合、ロータの回転バランス性を考慮して、軸方向の断面で見て、それら複数の貫通孔は軸中心を中心点とした点対称位置または回転対称位置に配置されていてもよい。
【0040】
上記実施形態では、カップリング5内にラジアル方向のエアの流路515が形成されていた。しかしこのような、遠心力で外周側へ熱気を放出するためのラジアル方向のエアの流路は、カップリング5に設けられる場合に限られず、例えばシャフトの端部に形成されたフランジ部に形成されていてもよい。すなわち、第1の外径を有するシャフトにおいて、当該第1の外径より大きい第2の外径を有する部位であるフランジ部がシャフトの端部に設けられ、そのフランジ部にラジアル方向の流路が形成されていてもよい。
この場合、フランジ部は、シャフトの一部としてシャフトと一体的に形成された部分であってもよいし、シャフトに別体としてシャフトに接続された部材であってもよい。
【0041】
上記実施形態では、外部装置としてのエンジン100と接続されるダイナモ50を例に挙げた。しかし、回転装置がモータ(動力源)として用いられ、そのモータに接続される外部装置がモータの負荷装置となるシステムにも本発明を適用可能である。
【0042】
冷却用気体として、エア以外にも不活性ガスやその他のガスであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…ハウジング
3…ステータ
4…ロータ
5…カップリング
21、22…軸受
41…シャフト
41a…貫通孔
50…ダイナモ
515…流路
517、717…外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
回転の軸方向に貫通する貫通孔を有するシャフトを有し、前記ステータの内側に配置されたロータと、
前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、
外周面と、前記回転の中心側から前記外周面へ延びるように設けられた気体の流路とを有し、前記シャフトの端部に接続可能に設けられ、前記シャフトの端部に接続された状態で、前記流路が前記シャフトの前記貫通孔に連通するように形成されたカップリングと
を具備する回転装置。
【請求項2】
ステータと、
回転の軸方向に貫通する貫通孔を有するシャフトを有し、前記ステータの内側に配置されたロータと、
前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、
外周面と、前記回転の中心側から前記外周面へ延びるように設けられた気体の流路とを有し、前記シャフトの端部に設けられ、前記流路が前記シャフトの前記貫通孔に連通するように形成されたフランジ部と
を具備する回転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−223805(P2011−223805A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92382(P2010−92382)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】