説明

回転角度検出用センサシステムおよび可動部の位置検出方法

【課題】干渉磁界および干渉電界に対して低感度とすることが可能であり、ロータのような回転体の位置を検出するための回転角度検出用センサシステムを提供する。
【解決手段】機械の回転体2の位置を検出するために、回転体2に取り付けられかつこの回転体2と共に移動可能であるエンコーダ構造3と、このエンコーダ構造3の対向側に配置され、かつ位置を決定し得る少なくとも1つのセンサ信号9を供給する固定センサアセンブリ4とを備え、センサアセンブリ4が第1のインダクタンス素子を備え、またインダクタンス素子が、前記エンコーダ構造3の動作に依存してインダクタンスの変化を生じさせるように、回転角度検出用センサシステムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械、特に電動機のロータのような可動部(回転体)の位置を検出するための回転角度検出用センサシステムおよび可動部(回転体)の位置検出方法に関する。この回転角度検出用センサシステムは、ロータ等の可動部(回転体)に取り付けられ、かつそれと共に移動可能であるエンコーダ構造と、このエンコーダ構造と対向関係に配置された固定センサアセンブリとを備えている。そして、前記センサアセンブリが、前記位置を推定することを可能にする少なくとも1つのセンサ信号を供給する。
【背景技術】
【0002】
上記の種類の装置および方法は、国際公開第02/084849A1号パンフレットから知られている。この文献に記載されている装置は、交互に磁化可能な個々のセグメントを有するロータに取り付けられたリングを有する。磁化可能なリング要素に対向して、固定された磁気センサ要素が設けられる。磁化可能なセンサリングの個々のセグメント内の誘導の過程において、センサ要素の交互の磁化変化が生じる。この場合、センサ要素の信号の波形は、電気角の変位により発生され、ロータの角位置を示すように、前記信号からアナログ信号を計算することができる。
【0003】
したがって、周知のセンサは磁気測定原理に基づいているので、磁気的干渉および電気的干渉に対して高感度である。このことは、センサが厳しい環境条件にさらされ、また最高1000アンペアのモータ電流が発生する可能性のある自動車分野にセンサを適用するときに、特に不利になる。
【特許文献1】国際公開第02/084849A1号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、関連する測定手順に従って、干渉磁界および干渉電界に対して低感度とすることが可能であり、ロータのような可動部(回転体)の位置を検出するための回転角度検出用センサシステムおよび可動部(回転体)の位置検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、センサアセンブリが第1のインダクタンス素子を備え、またエンコーダ構造が、そのインダクタンス素子のインダクタンスの変化による動作をもたらすように構成された、上記の種類のシステムによって解決される。
そのためには、例えば、エンコーダ構造が、その位置に応じて、幅や面積が変化するように構成すればよい。インダクタンス素子に対向するエンコーダ構造の幅や面積が変化すると、エンコーダ構造に生じる渦電流損失の量が変化するので、インダクタンス素子のインダクタンスが変化する。
【0006】
可動部は、具体的な実施形態において、電動機のロータを意味することもある。この可動部の動作によって、エンコーダ構造がセンサアセンブリに対して移動した場合、少なくともセンサアセンブリのインダクタンスの挙動がエンコーダ構造の位置に応じて変化する。この結果、センサアセンブリが適切に制御され、それに応じて、出力信号の振幅および/または位相および/または周波数が変化する。このようにして、本発明のシステムでは、エンコーダ構造の渦電流損失は、エンコーダ構造が少なくとも部分的に導電性材料からなる場合でも同様であるが、従来技術とは逆に、渦電流損失を利用してセンサアセンブリのセンサ信号に影響を与えることができる。この結果、従来の磁気測定手順と比較して、本発明のシステムは、電磁的影響に対して著しく強固なシステムとすることが可能になる。
【0007】
本発明の有利な一実施形態によれば、エンコーダ構造は、ある角度に対して周期的に変化する(例えば、幅や面積が変化する)構造を備える。このようにして、センサアセンブリは、角位置を検出することが可能な周期的に変化する信号を出力することが可能である。
【0008】
エンコーダ構造がsin波形状を有すると有利であろう。この構造によれば、センサアセンブリは、エンコーダ構造のsin軌道により減衰され、これによって、エンコーダ構造の位置の極めて効率的な評価・計算が可能になる。他の実施形態では、三角形構造や、少なくとも段階的に幅が変化する長方形構造等のような、エンコーダ構造によって、他の「減衰パターン」を示すことができる。概して、インダクタンスの変化によって生じる信号の変化と、ロータの位置との間の明確な関係を可能にする他の構成を用いてもよい。
【0009】
ロータのラディアル方向(半径方向)内側位置またはラディアル方向ラディアル外側位置のリングに、エンコーダ構造を設けると、好ましいであろう。この構成では、ロータを有する機械を考えた場合、ロータの機械的回転中に、角度検出の期間を連続的に繰り返すことが可能である。エンコーダ構造がロータの内側に取り付けられている場合、その内側において、エンコーダ構造に対向してセンサアセンブリを配置することが有利であろう。他方、エンコーダ構造がロータの外側に取り付けられている場合、センサアセンブリは、典型的にロータの外側に設けられる。
【0010】
エンコーダ構造をロータにアキシャル方向(軸方向)に設けることも可能である。したがって、次に、適切な構成のそれぞれのセンサアセンブリをロータに対してアキシャル方向に配置することが可能である。
【0011】
本発明の有利な実施形態によれば、センサアセンブリは、AC電圧源によって電圧が供給される2つの共振回路を有し、かつインダクタンス素子を有する、少なくとも1つのセンサシステムを備える。このインダクタンス素子は、減衰状態において、またはエンコーダ構造によって生じるインダクタンスの変化の間に、位置情報を含む出力信号を発生させる。共振回路から、エンコーダ構造の位置に従って変化する位相シフトおよび/または振幅差を得ることが可能である。この場合、センサシステムの精度は、AC電圧源の構成要素と共振回路の構成要素との公差によって決定され、これによって、それぞれの構成要素の適切な品質に基づいてシステムの効率的な作動が行われる。共振回路は直列共振回路としてまたは並列共振回路として設けることが可能である。
【0012】
他の実施形態では、センサアセンブリのインダクタンス素子は、それらに関連付けられた発振器の構成要素として使用され、またインダクタンスの変化によって生じる発振器の周波数差を、所望の位置情報を取得するように評価・計算することが可能である。
【0013】
本発明の特に有利な実施形態では、センサアセンブリは、互いに機械的に移動される上記の種類の少なくとも2つの同一のセンサシステムを備える。機械的に移動されるセンサシステムによって、エンコーダ構造の異なる位置に対応する同一形状の時間シフト信号を発生させることが可能であり、この時間シフト信号を用いて、エンコーダ構造の絶対位置を正確に決定することが可能である。
【0014】
本発明の有利な実施形態によれば、センサアセンブリのセンサシステムは互いに密接して配置される。このようにして、センサ出力信号をほぼ同一に変化させることにより、ロータおよびそれに取り付けられたエンコーダ構造のラディアル方向のランアウトまたはアンバランスを除去することが可能である。
【0015】
センサアセンブリの下流側には、少なくとも1つのセンサ信号を、位置情報を含む信号に変換する回路を設けることが有利である。この回路を使用することによって、センサアセンブリにより測定された位相差および/または振幅差および/または周波数差を、検出すべき角位置を直接表すことが可能な信号に変換することが可能である。
【0016】
いくつかの実施形態では、回路が、センサアセンブリのセンサ信号をタップして処理するための対称チャンネルを備えると有利であろう。センサアセンブリによって出力された信号がセンサアセンブリの信号形態と同一であった場合、回路チャンネルの対称の構成によって、センサ信号の同一の処理を保証することが可能である。このようにして、処理されるセンサ信号が、高精度の出力信号を得るように処理されることになる。
【0017】
いくつかの実施形態では、センサシステムが移動するように配置され、特に、90°移動させることが可能である。このようにして、例えば、エンコーダ構造が、対応する構成を有する場合、sin波信号およびcos波信号を発生させることが可能になる。
【0018】
センサアセンブリを発振させるために用いられるAC電圧源の周波数は、500kHz〜約5MHzの範囲にあることが好ましい。この範囲では、エンコーダ構造の渦電流損失によって、センサアセンブリに極めて効率的に影響を与えることが可能である。
【0019】
いくつかの実施形態では、共振回路はAC電流源の周波数に合わせられる。このようにして、共振回路を製造公差に対して安定させて、高い評価・計算の感度の取得を実現することが可能になる。この場合、減衰されたセンサアセンブリの共振周波数の近くの適切な値の動作周波数を選択することが可能である。
【0020】
位置情報を含む信号がsin波信号とcos波信号とを含み、またsin波信号とcos波信号とから逆tan関数を計算することが可能な計算モジュールが下流側に設けられると、特に有利である。このようにして、角位置を直接表すことが可能である。
【発明の効果】
【0021】
このようにして機械の可動部の位置を効率的に検出することができる。このために、センサアセンブリのインダクタンスは、可動部に接続されたエンコーダ構造の位置の変化によって変化され、またセンサアセンブリのインダクタンスの変化が検出される。さらに、インダクタンスの検出された変化に基づいて、可動部の位置を決定することが可能である。
【0022】
渦電流の原理に基づくこの方法により、可動部の位置検出を、干渉磁界および干渉電界に対して、かなり強くすることが可能になる。
【0023】
センサアセンブリの2つの発振センサシステムの位相差によって、インダクタンスの変化を検出することが可能である。
【0024】
このようにして、例えばセンサアセンブリの共振回路に基づいて効率的な評価・計算を実現することが可能であり、この場合、エンコーダ構造の位置依存の渦電流損失を正確に評価・計算を行うことが可能である。このために、対応する位相差を有するアナログ信号に基づいて、評価・計算を実現することができる。
【0025】
センサアセンブリの2つの発振センサシステムの振幅差に基づいて、インダクタンスの変化を検出することができる。
【0026】
他の例では、センサアセンブリの2つの発振センサシステムの周波数差によって、インダクタンスの変化を検出することが可能である。
【0027】
これらの例では、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサのような汎用的な信号処理装置を使用することが可能であるので、高度な設計の柔軟性が得られる。
【0028】
別の有利な実施形態は、添付された特許請求の範囲で規定される。さらに、図面を参照して、本発明の別の実施形態について以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1A〜図1Eは、本発明の実施形態に使用されるセンサシステム5の基本構造を示している。
【0030】
このセンサシステム5は誘導位置センサである。この誘導位置センサは、図1Aの実施形態によれば、並列構成で設けられる2つの共振回路6a,6bから、実質的に構成される。共振回路6aは、直列に接続されるコイルまたはインダクタンスL1、抵抗器R−a、およびコンデンサC−aを備え、共振回路6bは、直列に接続されるコイルまたはインダクタンスL2、抵抗器R−b、およびコンデンサC−bを備える。
【0031】
インダクタンスL1,L2は、プレーナ型(平面状)の構成で設けられることが好ましい。コンデンサC−a,C−bは、例示した実施形態において別個の装置として設けられる。
【0032】
両方の共振回路に並列に接続されるAC電圧源Vによって、2つの共振回路6a,6bに電圧が供給される。AC電圧源Vの周波数fは、典型的に、約500kHz〜約5MHzの範囲にある。
【0033】
直列共振回路6a,6bは、AC電圧源Vの周波数fに同調され、また非動作状態、すなわち減衰がなく共振周波数に近い状態に調整される。このようにして、直列共振回路6a,6bの高い感度を得ることが可能であり、この場合、図15を参照して後に説明するように、動作周波数を適切に選択することによって、エンコーダ構造とインダクタンス素子L1,L2との間の間隔に関するある程度の公差を、安定させることが可能である。この調整の精度は、AC電圧源Vの構成要素の公差によって、また直列共振回路6a,6bの装置L,R,Cによって決定される。これらの公差が小さくなると、センサシステム5の動作の性能がそれだけ向上する。
【0034】
移動可能な導電構造、すなわちエンコーダ構造がインダクタL1,L2の磁界に入った場合、発生した渦電流は、2つの共振回路6a,6bの間に位相差を発生させる。この位相差は、実質的には以下により詳細に説明するように、エンコーダ構造と、共振回路6a,6bの品質とに依存する。最大で、±90°の位相差、すなわち、180°のdPhiが発生することがある。
【0035】
図1Bは、共振回路6a,6bが並列共振回路を意味し、またそれぞれの抵抗器R−a,R−bと、それらに関連付けられた並列共振回路との間のそれぞれのノードから、信号が得られる実施形態を示している。また、この場合、エンコーダ構造によって生じるインダクタンスの変化に依存する位相差を得ることが可能である。
【0036】
図1Cには、共振回路6a,6bが直列共振回路として設けられた別の実施形態が示されている。この場合、両方の回路の最大電圧の差dUss、すなわち振幅差が、位置情報を表すインダクタンスの変化に対する基準として得られる。
【0037】
図1Dは、共振回路6a,6bが、振幅差dUssを決定するための並列共振回路として設けられた実施形態を示している。
【0038】
図1Eは、インダクタンス素子L1とL2が、それぞれの発振器Os1とOs2に接続され、したがって、これらのインダクタンス素子がインダクタンスの変化に対する発振挙動を検出するための対応する発振器の一部をなし、これによって周波数差dfが決定される実施形態を示している。
【0039】
図2は、センサアセンブリ4に関するエンコーダ構造3の構成を概略的に示している。この実施形態において、センサアセンブリ4は、図1に示したようなセンサシステム5のインダクタンス素子L1,L2を有する第1のセンサシステム5aと、インダクタンス素子L3,L4を有する第2のセンサシステム5bとを構成し、さらに、信号処理回路8と、本発明の一実施形態に従って時間tに対し信号処理回路8から得られた電圧信号Uとから構成される。
【0040】
説明しようとしている実施形態では、エンコーダ構造3が、可動部、この実施形態では電動機1のロータ2、に接続されたシリンダリング7の表面に取り付けられており、したがってエンコーダ構造3が可動部と共に移動可能である。一実施形態では、電動機は、電気整流のために角度信号が用いられる永久磁気励起を行う機械を意味する。しかし、本発明の他の実施形態では、エンコーダ構造3をロータ2のラディアル方向内側部分に設けてもよい。本発明の別の有利な実施形態によれば、エンコーダ構造3をロータ2にアキシャル方向に設けることも可能である。
【0041】
図示した実施形態では、エンコーダ構造3は、ロータ2のラディアル方向外側部分のリング7にsin波状に設けられる。用いられているsin波形状は有利であるが、この理由は、この形状によって、エンコーダ構造3がsin軌道形状の減衰領域を設けることが可能になり、次に、この減衰領域によって、センサシステム5で検出されたセンサ信号9が、sin波状に処理され、したがって容易に評価・計算を行うことが可能になるからである。
【0042】
原則的に、角度に依存して変化する他の構造をエンコーダ構造3として使用してもよい。例えば、エンコーダ構造は、繰り返し三角形構造を備えてもよい。さらに、位置に依存するインダクタンスの変化を与える他の形状、例えば段階的に幅が変化する長方形構造等を用いることも可能である。
【0043】
エンコーダ構造3は、例えば、アルミニウム、鋼、銅、配線板、導電箔、または金属を含有するプラスチック材料、から構成することができる。ただ必要なのは、構造が、導電性であるかまたは導電性構成要素を備えていることである。構造は磁石である必要がない。
【0044】
エンコーダ構造3に対向して、例えば、第1のセンサシステム5aの共振回路6a,6bの形態のセンサコイルL1,L2が配置され、また90°の角度変位をもってセンサシステム5bのセンサコイルL3,L4が配置される。センサのインダクタンスL1,L2とL3,L4は、それらの各対が180°の角度オフセットを形成し、この結果、センサシステム5a,5bの各対に差分信号を発生させることができるように、エンコーダ構造3の前方に配置されている。これらの差分信号の各々は、可動部またはロータ2の位置を含む。2つのセンサシステム5a,5bを設けることにより、エンコーダ構造3の構成に応じて90°だけ位相シフトを有する2つの差分信号、例えばsin波信号とcos波信号とを得ることが可能である。この2つの差分信号から、絶対位置を得ることも可能であり、すなわち、エンコーダ構造3の移動方向を決定することも可能である。
【0045】
本発明に係る回転角度検出用センサ(以下、「回転角センサ」とする)は、ロータ等の回転体のような可動部に取り付けられたエンコーダ構造(渦電流を発生する部材)と、このエンコーダ構造と対向して配置されるインダクタンス素子(またはインダクタンス素子を内蔵した固定センサアセンブリ)とを必須の構成としている。
【0046】
換言すれば、上記エンコーダ構造と、インダクタンス素子(固定センサアセンブリ)とを対向配置させるという構造条件を満足することで、回転角センサは多岐の構造バリエーションを展開することが可能であり、様々な用途に柔軟に対応できるとともに設計の自由度を向上させることができるといった利点を有している。
【0047】
本発明に係る回転角センサの形態を、図3〜図5に示す。図3〜図5の各図において、図Aは回転角センサの概略構成図(要部の斜視図)を示しており、図Bは図Aの回転角センサをモータに適用した際の設置例(一部を断面とする図)を示している。
以下に、各形態をさらに詳述する。
【0048】
図3は、エンコーダ構造3をロータ2のラディアル方向であって内周面側に設けるとともに、固定センサアセンブリ4をエンコーダ構造3に対向配置させた回転角センサの形態を示している。
図4は、エンコーダ構造3をロータ2のアキシャル方向(ロータ側面)に設けるとともに、固定センサアセンブリ4をエンコーダ構造3に対向配置させた回転角センサの形態を示している。
図5は、エンコーダ構造3をロータ2のラディアル方向であって外周面側に設けるとともに、固定センサアセンブリ4をエンコーダ構造3に対向配置させた回転角センサの形態を示している。
【0049】
まず、図3Aに示される回転角センサ31では、ロータ2のラディアル方向であって内周面側、具体的にはロータ軸2aに取り付けられたロータ2の筒状の部分2bの内周面上に、エンコーダ構造3が形成されている。さらに、このエンコーダ構造3に対向して、内側に固定センサアセンブリ4が配置されている。
なお、図3Aの左側では、固定センサアセンブリ4を、ロータ2およびエンコーダ構造3から離して分解して示している。以下、図4Aおよび図5Aにおいても同様である。
この回転角センサ31は、例えば、磁石がロータ2の表面部分に配置され、ロータ2の中心部分にスペースを有するような構造、いわゆる、インナーロータ型の永久磁石式同期モータ、あるいは永久磁石式ブラシレスモータ等に対するラディアル型のセンサ設置例として望ましい構造である。図3Aの回転角センサ31を構成することにより、回転角センサ31をロータ2の内部に配置可能となるため、センサ配置のためにモータ等の軸長を大きくする必要がないといった利点を有している。
【0050】
図3Aの回転角センサ31を、インナーロータ型のモータに適用した場合の設置例を、図3Bに示す。図3Bに示すモータは、インナーロータ型のモータ、すなわちインナーロータモータ110である。このインナーロータモータ110では、ロータ2の表面部分(外周面)に磁石41が設けられ、この磁石41に対向して、コイル42を備えた固定部(ステータ)43が配置された構成である。そして、ロータ2の内周面にエンコーダ構造3が設けられ、このエンコーダ構造3に対向して、固定センサアセンブリ4が配置されて、図3Aの回転角センサ31が構成される。固定センサアセンブリ4は、固定部(ステータ)43から回転軸に平行な方向に延びた部材43aに設けられている。固定部(ステータ)43では、電磁鋼板の積層板から成るステータコアが構成されている。
上述したように、ロータ2の中心部分にスペースを有しており、回転角センサ31をロータ2の内部に配置することが可能であるため、回転角センサ31を設置するために、モータ110の軸長を大きくする必要がない。
【0051】
図4Aに示される回転角センサ32は、ロータ2のアキシャル方向(ラディアル方向に対して垂直な方向)に、すなわちロータ2の側面、具体的にはロータ軸2aに取り付けられたロータ2の板状の部分2cの側面に、エンコーダ構造3が形成されている。さらに、このエンコーダ構造3に対向して、内側に固定センサアセンブリ4が配置されている。
この回転角センサ32は、例えば、外側のステータと内側のロータ2との間で力が作用するような構造のモータに対するアキシャル型のセンサ設置例として好適な構造である。つまり、上述の構造のモータでは、ロータ2のすぐ外側にはステータが配置され、かつロータ2の側面にはスペースを有している。従って、図4Aの回転角センサ32を構成することにより、このスペースにエンコーダ構造3および固定センサアセンブリ4からなる回転角センサ32を配置することが可能であることから、センサの設置に係る容易性に優れるといった利点を有している。
【0052】
図4Aの回転角センサ32を、インナーロータ型のモータ(インナーロータモータ)に適用した場合の設置例を、図4Bに示す。図4Bに示すインナーロータモータ120では、ロータ2の表面部分(外周面)に磁石41が設けられ、この磁石41に対向して、コイル42を備えた固定部(ステータ)43が配置された構成である。そして、ロータ2の側面にエンコーダ構造3が設けられ、このエンコーダ構造3に対向して、固定センサアセンブリ4が配置されて、図4Aの回転角センサ32が構成される。固定センサアセンブリ4は、固定部(ステータ)43に設けられている。エンコーダ構造3および固定センサアセンブリ4から成る回転角センサ32付近以外の構成は、図3Bのインナーロータモータ110とほぼ同様となっている。
上述したように、インナーロータモータ120の固定部(ステータ)43とロータ2との間で力が作用する場合に好適であり、ロータ2のすぐ外側に固定部43に付属したコイル42が配置され、ロータ2の側面にスペースを有しており、このスペースに回転角センサ32を配置することが可能であることから、センサの設置に係る容易性に優れている。
【0053】
さらに、変形例として、図4Aの回転角センサ32を、図4Bのインナーロータモータ120とは異なる構造のモータに適用した場合の設置例を、図4Cに示す。図4Bのインナーロータモータでは、ロータ2が固定部43より内側に配置されていたが、図4Cに示すモータは、ロータ2が固定部43よりも外側に配置された、アウターロータモータ130となっている。このアウターロータモータ130では、ロータ2の内側に磁石41が設けられ、この磁石41に対向して、コイル42を備えた固定部(ステータ)43が配置された構成である。固定部(ステータ)43では、電磁鋼板の積層板から成るステータコアが構成されている。そして、ロータ2の側面にエンコーダ構造3が設けられ、このエンコーダ構造3に対向して、固定センサアセンブリ4が配置されて、図4Aの回転角センサ32が構成される。固定センサアセンブリ4は、固定部(ステータ)43と図示しない部分で接続された、回転軸に垂直な方向に延びた部材43bに設けられている。
【0054】
図5Aに示される回転角センサ33では、ロータ2のラディアル方向であって外周面側、具体的にはロータ軸2aに取り付けられたロータ2のリング状の部分2dの外周面上に、エンコーダ構造3が形成されている。さらに、このエンコーダ構造3に対向して、外側に固定センサアセンブリ4が配置されている。
この回転角センサ33は、例えば、アウターロータ型の永久磁石式同期モータ、あるいは永久磁石式ブラシレスモータ等、ロータ2の外側にスペースを有しているような場合のセンサ設置に好適な構造であり、図3Aの回転角センサ31と同様に、ラディアル型のセンサに分類される。図5Aの回転角センサ33を構成することにより、ロータ2の外周面に直接エンコーダ構造3を形成し、そのエンコーダ構造3に対向する配置にて固定センサアセンブリ4を設置すればよいことから、センサ設置が極めて容易であるといった利点を有している。
【0055】
図5Aの回転角センサを、アウターロータ型のモータ、すなわちアウターロータモータに適用した場合を、図5Bに示す。図5Bに示すアウターロータモータ140では、ロータ2の内側に磁石41が設けられ、この磁石41に対向して、コイル42を備えた固定部(ステータ)43が配置された構成である。固定部(ステータ)43では、電磁鋼板の積層板から成るステータコアが構成されている。そして、ロータ2の外周面にエンコーダ構造3が設けられ、このエンコーダ構造3に対向して、固定センサアセンブリ4が配置されて、図5Aの回転角センサ33が構成される。固定センサアセンブリ4は、固定部(ステータ)43と接続された、回転軸に並行な方向に延びた部材43cに設けられている。エンコーダ構造3および固定センサアセンブリ4から成る回転角センサ33付近以外の構成は、図4Cのアウターロータモータ130とほぼ同様となっている。
上述したように、ロータ2の外側にスペースを有しており、ロータ2の外周面に直接エンコーダ構造3を形成し、そのエンコーダ構造3に対向する配置で固定センサアセンブリ4を設置すればよいことから、回転角センサ33の設置が極めて容易である。
【0056】
以上で説明した回転角センサの形態例は、いずれも、回転軸が固定センサアセンブリを跨ぐ必要がないという構造的な特徴を有している。つまり、ロータや回転軸等を有した従来の構造にそのまま設けることが可能であると共に、多種多様の回転機構を有する製品に対してセンサ設置ができることから、汎用性に優れるといった効果を有している。
【0057】
なお、本発明による回転角センサは、以上で説明した構造例、および適用例に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲にて種々変更が可能である。
【0058】
次いで、上述した回転角センサの各構成について、図面を参照して詳細に説明する。
【0059】
図6は、図4で用いた固定センサアセンブリ4の構成例を示すものであり、図6Aは、固定センサアセンブリ4において、エンコーダ構造3と対向する側を正面視した状態を示し、図6Bは、固定センサアセンブリ4を背面視した状態を示している。
【0060】
図6より、本実施の形態例における固定センサアセンブリ4は、プリント回路基板(PCB)51の正面に、4つのインダクタンス素子52が形成され、プリント回路基板(PCB)51の背面に、演算処理用のASIC(特定用途向けIC)54、および周辺回路が形成される周辺回路形成領域55が設けられ、これら各部品の全体を、外装ケース53で覆って構成される。以下、各部品(インダクタンス素子、ASIC、PCB)をまとめて、内部センサと呼ぶこととする。
外装ケース53の部材には、非磁性・非導電性材料を用いる。これは、インダクタンス素子52に電流を印加することよって励起される磁束を、できるだけ多くエンコーダ構造3に通過(影響)させて、より効率的に渦電流を発生させるためである。詳述すれば、自動車用途等、使用環境が厳しい条件下で回転角センサを用いる場合も想定して、外装ケース53には高強度かつ優れた耐熱性を有した樹脂成型体を採用することが望ましい。
【0061】
ここで、各インダクタンス素子52をエンコーダ構造3に対向配置させる際には、インダクタンス素子52を露出状態で形成してもよいし、充填材や蓋体で閉塞してもよい。さらには、オーバーモールド製法等を適用し、内部センサを外装ケース53によって封止成型してもよく、当該回転角センサの使用環境や用途によって種々の変更が可能である。
【0062】
また、実質的なセンサ機能部の役割を担う複数のインダクタンス素子、ASICおよびその他周辺回路は、ポリイミド基板やガラス、布、エポキシ樹脂を基材とした積層基板等に代表されるような一般的な電子回路基板に形成・実装されることとなる。つまり、内部センサはモジュール化されているため、小型化が図れるとともに、一般的な電子回路技術/実装技術等によって安定的に製造することが可能であることから、コストの低減を図れるという利点も有している。
【0063】
一般的に、複数のインダクタンス素子を有した回転角センサが、優れたセンシング精度を実現しようとすれば、各インダクタンス素子同士の相対的な配置精度、およびインダクタンス素子とエンコーダ構造との配置精度を高い水準で達成する必要があるが、本発明に係る回転角センサによれば、複数のインダクタンス素子は、後述するようにコイルパターンが形成されたプリント回路基板(PCB)の多層構成によって一体に形成されているために、エンコーダ構造と内部センサ(あるいは固定センサアセンブリ)との位置精度のみを考慮すれば、容易に高精度の配置条件を満足することができる。
【0064】
次いで、各インダクタンス素子の構成について、図7を参照して詳細な説明を行う。図7は、複数のインダクタンス素子の構成例を示しているが、説明の便宜上、図6Aに示した4つのインダクタンス素子52のうちの一つを例示している。このとき、図7Aは、エンコーダ構造3と対向するPCBの表面に形成された一方のコイルパターン52Aを示しており、図7Bは、図7Aのコイルパターン52Aが形成されたPCBの下層に配置される他方のコイルパターン52Bを示している。さらに、図7Cは、図7Aおよび図7Bにおける一方および他方のコイルパターン52A,52Bを積層した構造を概略視した状態を示している。図7Cにおいて、下層の他方のコイルパターン52Bは、外周を破線で示している。
【0065】
図7A〜図7Cより、複数のインダクタンス素子のそれぞれが、複数のPCBにコイルパターンを形成して積層した多層構造であることが示される。
本実施の形態においては、2層構造のインダクタンス素子52(52A,52B)を用いているが、所望の磁束を励起するために必要なコイルの巻数は、コイルパターンの積層数を調整することによって設定すればよい。
このとき、図7に示される一方および他方のコイルパターン52A,52Bは互いに反転関係であることから、PCBへのコイルパターン52A,52Bの形成が容易であるという利点を有している。
【0066】
また、インダクタンス素子52はプレーナ構造(平板状)に形成されており、後述するエンコーダ構造3の平面に対向するように配置される。これによって、エンコーダ構造3に対して、インダクタンス素子52が励起した磁束の影響度が大となり、結果、渦電流が効率的に発生するようになることから、センシング精度の向上が見込める。
【0067】
さらに、本実施の形態例に係るインダクタンス素子52は、一般的なインダクタンス素子(コイル部品)が有するような磁性体コアを採用せず、矩形状の空芯部を有したインダクタンス素子52として構成されている。これは、本発明に係る回転角センサの駆動周波数が、およそ約500kHzから約5MHzという比較的高周波での駆動であるために、必要とされるインダクタンスを低く設定できるためである。つまり、重量のある磁性体コアを必要としないことは、回転角センサを軽量化させる目的において極めて大きな効果を奏する。
【0068】
なお、本実施の形態例ではPCBを用いた多層構造のインダクタンス素子を例にとって説明を行ったが、例えば、巻線型のコイルであっても平板状に空芯巻回されたものであって、それら複数の巻線型コイルをPCB上に精度よく配置することが可能であれば、本実施の形態例と同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0069】
図8は、固定センサアセンブリ4の複数のインダクタンス素子52と、エンコーダ構造3とが、対向配置されている状態を示すものである。
それぞれのインダクタンス素子52は、エンコーダ構造3の幅の周期的な変化の位相差90°に対応するように、配置されている。そして、4つのインダクタンス素子52全体の位相差が、90°×3=270°となっている。
このとき、複数のインダクタンス素子52は、その空芯部の長手寸法Lが、エンコーダ構造3の最大幅寸法Wmaxよりも大きく形成されている。このような寸法条件とすることによって、インダクタンス素子52が磁束を発生した際に、エンコーダ構造3に生じる渦電流の発生度合いを高めることができ、結果、センシング精度の向上が見込める。
【0070】
ここで、空芯部の寸法条件を上述のように設定したその他の理由について説明する。インダクタンス素子52の空芯部を正方形や円のように長手寸法と短手寸法とが等しい条件とすると、個々のインダクタンス素子52に対向しているエンコーダ構造3の渦電流発生領域を必要以上に拡大させてしまい、隣設されるインダクタンス素子52同士が渦電流発生領域を重複してしまう虞が生じる。これによって、センシング精度が劣化したり、測定/検出誤差が拡大してしまったりする虞があるためである。
このことから、インダクタンス素子52の空芯部とエンコーダ構造3との形成条件として、下記の(条件1)を満足することが望ましく、換言すれば、下記条件を満足すればインダクタンス素子の空芯部形状は矩形状のみならず、楕円形状等を採用することも可能である。
【0071】
(条件1)
インダクタンス素子の空芯部長手寸法>インダクタンス素子の空芯部短手寸法
インダクタンス素子の空芯部長手寸法>エンコーダ構造の最大幅寸法
【0072】
次いで、本発明に係る回転角センサに好適なインダクタンス素子のその他の例について説明する。図9は、インダクタンス素子のその他の形態例を示している。
図9Aは、インダクタンス素子52のその他の形態例として、エンコーダ構造3と対向するPCBの表面に形成された一方のコイルパターン52Cを示しており、図9Bは、図9Aのコイルパターン52Cが形成されたPCBの下層に配置される他方のコイルパターン52Dを示している。さらに、図9Cは、図9Aおよび図9Bにおける一方および他方のコイルパターン52C,52Dを積層した構造を概略視した状態を示している。図9Cにおいて、下層の他方のコイルパターン52Dは、外周を破線で示している。
【0073】
図9A〜図9Cからわかるように、インダクタンス素子52を形成するための一方および他方のコイルパターン52C,52Dは、一部を除いて互いに重ならない配置にて形成されている点で、図7に示したコイルパターン52A,52Bと相違している。
ここで、図7に示したコイルパターン52A,52Bは、上層および下層のコイルパターン間において浮遊容量を生じやすい構成であり、これを電気的な等価回路として考察すると、インダクタンス:Lと、浮遊容量:Cとが並列共振回路を構成することとなる。このとき、浮遊容量:Cが増大すれば、インダクタンス素子52の共振周波数が低周波側へシフトする。しかしながら、L−C並列共振回路の場合は、共振周波数におけるインピーダンス:Zが最大となるため、インダクタンス素子52を駆動させるために約500kHzから約5MHzにて電圧を印加した時の抵抗成分が高くなる。この結果、渦電流の発生に必要な磁界強度を十分に得ることができずに、センシング精度が劣化する可能性を生じる。
【0074】
これに対して、図9に示すコイルパターン52C,52Dの構成によれば、インダクタンス素子52に電流を印加した際に、PCB上層および下層のコイルパターン52C,52D間で発生する浮遊容量Cを低減できることから、共振周波数を高い周波数で維持することが可能となる。このため、インダクタンス素子52が励起した磁束によって生じる磁界強度を高めることができるという効果を奏する。
【0075】
次いで、本実施の形態に係るエンコーダ構造について、図10を参照して詳細な説明を行う。
図10Aは、図3Aの回転角センサ31に用いられるラディアル型のエンコーダ構造3を正面視した状態を示し、図10Bは、図4Aの回転角センサ32に用いられるアキシャル型のエンコーダ構造3を正面視した状態を示している。
【0076】
図10Aまたは図10Bに示されるエンコーダ構造3は、いずれも導電性を有し、上述のインダクタンス素子52が励起する磁束を受けて渦電流を発生するように構成されているとともに、ロータ2等の回転体とともに回転運動するよう設置されている。
【0077】
エンコーダ構造3に好適に使用可能な材質としては、アルミニウム、鋼、銅、銀等の導電性金属材料が挙げられる。ここで、例えば、高湿や塩害が懸念されるような状況での使用を想定すれば、防錆効果に優れたアルミニウムを用いる等、回転角センサの使用条件に合わせて、適宜材料選定を行えばよい。
【0078】
また、エンコーダ構造3は、図10Aに示されるようにsin波曲線を対称に配置したような形状であり、換言すれば、ロータ2等の回転体が回転運動を行うと、特定の位置においてエンコーダ構造3の幅寸法が周期的に増減するように形成されている。
これに対して、図10Bに示されるエンコーダ構造3は、sin波曲線を対称配置するように構成されていないものの、その幅寸法が周期的に増減するように形成されていることから、本発明では、図10Aまたは図10Bに示されるようなエンコーダ構造3をsin波曲線型として定義する。なお、図10Aおよび図10Bにおいては、エンコーダ構造3の周期的な変化の1相分の範囲を、それぞれ図示している。
【0079】
なお、エンコーダ構造3は、sin波曲線型に限定されるものではなく、図11Aに示されるような菱形や図11Bに示されるような三角形、もしくはこれらに準じた形状としてもよい。また、図示したような連続的に幅が変化する構成のほか、図示しないが、段階的に幅が変化する構成としてもよい。
【0080】
図10Bに示す本実施の形態例におけるエンコーダ構造3は、その幅寸法が増減している領域を8つ有している。この8つの領域については、今後の説明の便宜上、8相構成であると称する。
本発明において、このような相構成は、実質的なセンシング精度に影響を与えるものではなく、単に回転体の径と製造条件とを勘案し、適宜増減させることが可能である。
【0081】
具体的には、例えば、回転体が発電所の発電機のロータ等のように大口径である場合、これに対して1相のエンコーダ構造を形成することは極めて困難になる。従って、製造容易な形状・寸法からなる1相分のエンコーダ構造を複数用意して、それらをロータに組み付ければ良い。
これに対して、小型の回転機器の場合は、回転体に多相構成からなるエンコーダ構造を形成することが困難となる。従って、少なくとも1相以上のエンコーダ構造を形成すればよいこととなる。
【0082】
以上のように構成されたエンコーダ構造は、導電性材料を採用するとともに、形状が簡素であることから、以下のように、様々な製造手段が適用できる。
【0083】
代表的な例としては、エンコーダ構造の形状に合わせたマスキングを回転体に施すことによって、メッキ法、金属蒸着法、スパッタリング法、スクリーン印刷法を適用することが挙げられる。上述のプロセスは大量生産に好適であるため、一定品質のエンコーダ構造を得ることが可能となる。このとき、上記スクリーン印刷法については、導電性材料粉体と樹脂、溶剤等の混練物からなるペーストを印刷・乾燥した状態のものを採用してもよいし、印刷・乾燥後に焼成を行ったものを採用してもよい。
【0084】
また、所望の形状に打ち抜き加工/切り出し加工された板状部材、薄体部材をエンコーダ構造としてもよい。この場合、回転体に位置決め冶工具を当接しつつ接着固定等の手段を施すことによって、容易にエンコーダ構造を設置することが可能であることから、従来の回転体の構成にそのままエンコーダ構造を設けることが可能となり、汎用性に優れる利点を有している。
【0085】
さらに、回転体が導電性を有している場合には、図12に示されるように、回転体自体のラディアル方向またはアキシャル方向にエンコーダ構造を形成してもよく、この場合、鋳造、切削加工等が好適である。
【0086】
上述の手段にて、エンコーダ構造を回転体に設置する際には、以下の条件を考慮する必要がある。
【0087】
例えば、回転体が導電性を有している場合は、回転体およびエンコーダ構造の導電率を相対的に比較し、エンコーダ構造の導電率が回転体のそれよりも十分に大きければ、上述のメッキ法、金属蒸着法、スパッタリング法、スクリーン印刷法等によって、回転体上にエンコーダ構造を直接形成することが可能である。回転体が導電性を有さない場合もまた、回転体上にエンコーダ構造を直接形成することが可能であることはいうまでもない。
【0088】
また、図12に示されるように、エンコーダ構造3とロータ2等の回転体とが一体的に形成されている場合は、エンコーダ構造3と回転体との間で、所望の寸法を有する段差3aを設けることが望ましい。
この段差3aの寸法を設定するための方法としては、事前に、インダクタンス素子が励起した磁束が回転体内部を通過する深度を、回転体の導電率やインダクタンス素子の構造条件や、印加する電流/電圧条件等を基にした磁場解析シミュレーションによって、把握することが、実用的な例として挙げられる。
このため、このような構成におけるエンコーダ構造の段差の最小値は特に限定されるものではなく、かつ、段差の最大値もまた回転角センサを搭載する機器の寸法制約によって決定すれば特に規定する必要はない。
【0089】
次に、本発明に係るセンサシステムの回路構成の実施形態について説明する。
【0090】
図2に示したように、コイルL1,L2とL3,L4を含むセンサシステム5a,5bの次に、差分信号の評価・計算を実行する回路8が設けられる。図示した実施形態では、回路8は、最初に出力信号10を発生させる。
【0091】
本発明に係るセンサシステムの一実施形態に使用される回路8の動作挙動を、図13Aに概略的に示す。
この実施形態では、回路8は、図14により詳細に示されているASIC(特定用途向けIC)の形態で設けられる。回路8は、図1Aまたは図1Bに示したように、第1および第2のセンサシステム5a,5bの共振回路6a,6bの位相差9がdPhiとして示されており、回路出力部11においてアナログ電圧V(dPhi)10を発生させるように動作する。図2および図13Aに示したように、回路出力部11の電圧10は、sin波信号sinとcos波信号cosとを含む。
【0092】
図13Bには、他の実施形態として、図1Cまたは図1Dに示したように、センサシステム5a,5bの差分信号9がdUssとして示されており、これらの差分信号は、第1の段階8aにおいて、対応する振幅差信号に変換される。その後、これらの差分信号は第2の評価・計算段階8bに供給される。この第2の評価・計算段階8bは、差分信号から所望の位置情報を決定するために、マイクロコントローラ(μC)等の形態で設けることができる。
【0093】
図13Cは、図1Eに示したように、差分信号9が、例えばセンサシステム5a,5bの配置に基づき周波数差dfとして得られる別の実施形態を示している。再び、差分信号9を評価・計算回路8、例えばマイクロコントローラ(μC)等に供給することができる。マイクロプロセッサ等を使用した場合、信号9の処理を可能にするために、ADC等のような内部リソースを使用してもよい。さらに、用途に応じて1つ以上のICに組み込むことが可能な他の専用の構成要素を使用してもよい。
【0094】
図14は、図13Aの信号処理に対応する本発明の一実施形態による回路8のブロック図を示している。図14に示されている網点領域は、外部構成要素を意味しており、回路8の一部ではないことを理解されたい。
【0095】
上記のように、ロータ2に取り付けられたエンコーダ構造3と、それに対応する信号10の位相との位相関係は、センサシステム5a,5bに基づいて決定される。図14において左側の網点部分に示されているセンサシステム5は、図示した実施形態において、回路入力部14の回路8によって受信される位相差dPhiに対応するように、センサ信号9を出力する。モジュール15を使用することによって、受信されたセンサ信号9が増幅されてフィルタリングされる。その後、コンパレータ16は、入力電圧と基準電圧Vrefとを比較することによって、増幅してフィルタリングした後のアナログ信号をデジタル信号に変換し、この場合、高いレベルおよび低いレベルのそれぞれのみが発生される。この処理において、振幅値がゼロであった場合、この信号は、さらに処理されず、ZAP(ゼロ振幅位相)部材17によって別々に取り扱われる。
【0096】
発生されたデジタル信号は、排他的ORゲート18によってさらに処理され、この排他的ORゲート18は、高率の高調波を有する矩形信号を発生させる。次に、排他的ORゲート18の出力信号はローパスフィルタ19に供給される。ローパスフィルタ19の出力信号はバッファ段20に出力され、さらに、このバッファ段20は、電圧レギュレータ21から5V±10%の電圧信号Vccを受信する。バッファ段20は、回路出力部11のアナログ電圧10としてsin波信号sinとcos波信号cosとを出力する。
【0097】
図14に示したように、センサシステム5によって出力された信号dPhiは2つの対称チャンネル12で処理される。チャンネル12の各々は、共振回路6a,6bの各々のための増幅器およびフィルタ15と、増幅器およびフィルタ15の出力信号用の2つのコンパレータ16と、コンパレータ16の信号を組み合わせるための排他的ORゲート18と、排他的ORゲート18の出力信号用のローパスフィルタ19と、アナログ電圧信号、すなわちsin波信号およびcos波信号10を出力するためのバッファ段20とを備える。
【0098】
複雑な環境状態に対して正確な測定システムを設けるために、回路8の温度安定性は高く、また回路8のEMI感度は低いレベルに維持される。さらに、可能なオフセットずれを考慮した極めて正確な信号として、位相位置に対応する出力電圧10を供給することが有利であろう。
【0099】
回路8の下流側には、出力電圧10のsin波信号sinおよびcos波信号cosを逆tan信号に組み合わせるように構成される計算モジュール13が設けられる。このようにして、線形出力信号を得ることが可能であり、この線形出力信号から、エンコーダ構造3の、したがってロータ2の位置を直接推定することが可能である。
【0100】
図15は、本発明に基づいて、最適な振幅依存性をどのようにして得ることが可能であるかを概略的に示している。図15は、共振回路6a,6bの動作周波数ωに対する感度を例えば振幅形状で示している。図15から明らかなように、共振回路6a,6bの感度は、対応する共振周波数において最大である。曲線Bは、それぞれのセンサコイルに対するエンコーダ構造3の距離が短い場合の振幅の経過を概略的に示している。この場合、エンコーダ構造3の減衰効果は高く、減衰システムの共振周波数ωを発生させ、この場合、共振周波数ωは、減衰されないかまたは低減衰の共振周波数ωからずれる(曲線A)。エンコーダ構造3を通過すると、それぞれの振幅差が発生し、このそれぞれの振幅差は、エンコーダ構造3からの距離が略短いので、コイルによって効率的に評価・計算することが可能である。例えば製造公差等によって、距離が長くなると、エンコーダ構造を通過したときの平均減衰効果は著しく低くなり、このようにして、固定動作周波数では、エンコーダ構造の形状により減衰効果が変化したときに感度も低減される。この場合、より高い動作周波数ωを適切に選択することによって、差分信号の感度の損失をある程度補償することが可能であり、すなわち、動作点Pは、平均してより低い程度の減衰を有する減衰システムの「平均」共振周波数により近づいて位置し、それにもかかわらず、結果として、十分に大きい差分信号を得ることが可能である。すなわち、エンコーダ構造を通過したときに全減衰を低減するようにする長くなった平均距離についても、動作周波数ωに対応して動作点Pを上昇させることによって、比較的強い差分信号を得ることが可能である。
【0101】
例えばエンコーダリング7のランアウトまたはアンバランスによって、エンコーダ構造3の距離が長くなって、センサアセンブリ4の減衰が低減された場合には、図15の矢印で示したように、平均共振周波数ωにより近づくように動作点Pを適切に選択することによって、感度を向上させることが可能であり、これによって、十分な精度でロータ2の角位置を検出することができるように、出力信号が増大される。このようにして、エンコーダ構造3とセンサアセンブリ4との間の距離の変化は、例えば約2mmであることが可能であり、それにもかかわらず、十分に大きい振幅を得ることが可能である。
【0102】
ロータ2の軸受の位置、したがって、ロータ2に取り付けられたエンコーダ構造3がラディアル方向に変化するようなときには、アキシャル方向にも変化が生じることがある。このようにして、エンコーダ構造3がセンサアセンブリ4から移動して離れるので、対応する対向関係が非理想的であることが可能である。状況に応じて、数ミリメートルのアキシャル方向の公差を得ることが可能である。この場合、例えば5mmの公差を安定させるために、インダクタンスL1,L2のコイルの構造を適切に改造することが可能である。
【0103】
センサシステム5は、適切な任意の構成で設計することが可能であり、エンコーダ構造3の位置に応じて、ロータ2に対してラディアル方向またはアキシャル方向の関係にあることが可能である。エンコーダ構造3およびそれに関連付けられたセンサアセンブリ4の配置に応じて、ラディアル方向内側とラディアル方向外側とで、さらにはアキシャル方向で、エンコーダ構造3のサンプリングを行うことが可能である。
【0104】
本発明の本実施形態では、センサシステム5は、差分信号、例えばsin波電圧およびcos波電圧の、ほぼ同一の振幅変化によってエンコーダリング7のアンバランスを除去するために、例えば数ミリメートルの距離に互いに密接して配置される。
【0105】
図示した実施形態では、センサシステム5は回転電動機のロータに設けられている。他の実施形態では、可動部の移動位置および/または移動方向を決定するために、概して可動部およびステータとして本明細書に示されている互いに相対的に移動する任意の物体に、エンコーダ構造3ならびにセンサシステム5aおよび/または5bを設けてもよい。例えば、線形駆動システムの位置および方向を検出することが可能である。さらに、移動方向を決定する必要がないかあるいは他の手段によって移動方向を決定することが可能である場合には、可動部に1つのセンサシステム5aまたは5bを設けてもよい。したがって、角度測定および/または距離測定用の効率的な手段が設けられ、この効率的な手段では、純粋な磁石システムと比較して、干渉に対する高度な堅牢性を、特にエンコーダ構造の渦電流損失によるインダクタンスの変化に基づいて実現することが可能である。
【0106】
いくつかの実施形態で説明したように、ロータエンコーダに基づいて、互いに相対的に回転する部分の角位置、特に電動機のロータの角位置を非接触的かつ極めて確実に決定することが可能であり、このことにより、強力かつ費用効率的なセンサシステムを極めて効率的に使用することによって、電動機、例えば、永久励磁機、非同期機等の制御を行うことが可能である。
【0107】
例えば、エンコーダシステムの信号に基づいて得ることが可能である0〜360°の角位置は、ステータの極対の数に対応する同期機のsin波電流整流期間にほぼ対応させることができる。例えば、同期機が7つの極対を備えている場合、角度検出の期間を51.43°の角度に対応させれば、1回の機械的回転の間に、角度検出の期間を0〜360°まで7回繰り返すことが可能である。
【0108】
可動部の位置、特にロータの角位置を検出するための本発明のシステムならびにそれに関連する方法は、回路8が厳しい環境条件にさらされ、また誘導位置センサが、最高1000アンペアの高いモータ電流に対して不感でなければならない自動車分野におけるスタータ/発電機の用途に適用されると、特に有利である。さらに、本発明によるセンサシステムを、車両に設けられた電気駆動システムに、例えばハイブリッド駆動系または純粋な電気駆動系に有利に適用することが可能であるが、この理由は、永久励磁同期電動機またはブラシレスDCモータの電子整流、あるいは非同期機の制御を行うことが可能であるからである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】A〜E 直列共振回路と、並列共振回路と、それらの共振回路に接続されたインダクタンスを有する発振器とが、エンコーダ構造によって生じるインダクタンスの変化を検出するように設けられる本発明の実施形態によるセンサシステムの実施例図である。
【図2】エンコーダ構造と、それから得られたそれぞれのセンサ信号とに関する本発明の実施形態によるセンサコイルの構成を概略的に示す図である。
【図3】A、B 本発明に係る回転角センサの形態を示す図である。
【図4】A〜C 本発明に係る回転角センサの形態を示す図である。
【図5】A、B 本発明に係る回転角センサの形態を示す図である。
【図6】A、B 図4で用いた固定センサアセンブリの構成例を示す図である。
【図7】A〜C 複数のインダクタンス素子の構成例を示す図である。
【図8】複数のインダクタンス素子とエンコーダ構造とが対向配置されている状態を示す図である。
【図9】A〜C 複数のインダクタンス素子の他の構成例を示す図である。
【図10】A、B 本発明の実施の形態のエンコーダ構造の構成例を示す図である。
【図11】A、B エンコーダ構造の他の構成例を示す図である。
【図12】回転体自体にエンコーダ構造を形成した場合の構成例を示す図である。
【図13】A〜C 位相差と振幅差と周波数差とをそれぞれ評価・計算するように本発明に係るセンサシステムの一実施形態に使用される回路の動作挙動を概略的に示す図である。
【図14】図13Aに示されている回路の実施形態のブロック図である。
【図15】本発明に従って、最適な振幅依存性をどのようにして得ることが可能かを概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0110】
1・・・電動機、2・・・ロータ(可動部)、2a・・・ロータ軸、3・・・エンコーダ構造、4・・・センサアセンブリ、5,5a,5b・・・センサシステム、6a,6b・・・共振回路、7・・・エンコーダリング、8・・・回路、9・・・センサ信号、10・・・アナログ電圧、11・・・回路出力部、13・・・計算モジュール、14・・・回路入力部、15・・・増幅器およびフィルタ、16・・・コンパレータ、17・・・ZAP(ゼロ振幅位相)、18・・・排他的ORゲート、19・・・ローパスフィルタ、20・・・バッファ段、21・・・電圧レギュレータ、31,32,33・・・回転角センサ、41・・・磁石、43・・・固定部(ステータ)、51・・・プリント回路基板(PCB)、52・・・インダクタンス素子、53・・・外装ケース、54・・・ASIC、55・・・周辺回路形成領域、110,120・・・インナーロータモータ、130,140・・・アウターロータモータ、C−a,C−b・・・コンデンサ、cos・・・cos波信号、L1,L2,L3,L4・・・インダクタンス素子、P・・・動作点、A・・・振幅、R−a,R−b・・・抵抗器、sin・・・sin波信号、V・・・AC電圧源、ω0・・・共振周波数、ω・・・動作周波数、ω・・・強い減衰を有する共振周波数、Os1,Os2・・・発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械の可動部(2)の位置を検出するためのシステムであって、前記可動部(2)に取り付けられかつ前記可動部と共に移動可能であるエンコーダ構造(3)と、該エンコーダ構造(3)の対向側に配置され、かつ前記位置を決定し得る少なくとも1つのセンサ信号(9)を供給する固定センサアセンブリ(4)とを備える回転角度検出用センサシステムにおいて、
前記センサアセンブリ(4)が第1のインダクタンス素子を備え、また前記インダクタンス素子が、前記エンコーダ構造(3)の動作に依存してインダクタンスの変化を生じさせるように構成される回転角度検出用センサシステム。
【請求項2】
前記エンコーダ構造が導電性材料を含む請求項1に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項3】
前記エンコーダ構造(3)が、前記可動部の回転角度に対して周期的に変化する構造を備える請求項1または2に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項4】
前記変化する構造の形状が、正弦波形状、三角形状、または、段階的に幅が変化する長方形構造である請求項3に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項5】
前記エンコーダ構造(3)が、可動部(2)の半径方向内側位置または半径方向外側位置のリング(7)に設けられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項6】
前記エンコーダ構造(3)が、前記可動部(2)に軸方向に設けられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項7】
前記センサアセンブリ(4)が第1の共振回路(6a,6b)を備え、また前記第1のインダクタンス素子が前記第1の共振回路(6a,6b)の一部である請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項8】
前記センサアセンブリが、第2のインダクタンス素子を含む第2の共振回路(6a,6b)を有し、また前記第1および第2の共振回路が第1のセンサシステムを形成する請求項7に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項9】
前記第1のインダクタンス素子が第1の発振器の一部として使用される請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項10】
第2の発振器の一部として使用される前記第2のインダクタンス素子が設けられ、また前記第1の発振器および前記第1のインダクタンス素子と、前記第2の発振器および前記第2のインダクタンス素子とが第1のセンサシステム(5)を形成する請求項9に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項11】
前記センサアセンブリ(4)が、前記第1のセンサシステム(5a)に対してオフセットされた第2のセンサシステム(5b)を備える請求項8または10に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項12】
前記第1および第2のセンサシステムの構造が同一である請求項11に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項13】
前記エンコーダ構造が前記第1および第2のセンサシステムにほぼ同じ影響を与えるように、前記第1および第2のセンサシステム(5a,5b)が互いに密接して配置される請求項11または12に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項14】
前記センサアセンブリ(4)の下流側に、回路出力部(11)で前記センサ信号(9)を、角度情報を含む信号に変換する回路(8)が配置される請求項1〜13のいずれか1項に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項15】
前記回路(8)が、前記センサ信号の位相差および/または振幅差および/または周波数差から、前記角度情報を含む前記信号を得るように構成される請求項14に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項16】
前記回路(8)が、前記センサアセンブリ(4)の前記センサ信号(9)の成分を受信して処理するための対称チャンネル(12)を備える請求項14または15に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項17】
前記第1および第2の共振回路(6a,6b)の前記第1および第2のインダクタンス素子(L1,L2)が、互いに位相シフトを有する出力信号を出力するように配置される請求項8に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項18】
約500kHz〜約5MHzの周波数(f)を有するAC電圧源(V)が設けられ、該AC電圧源が前記第1のインダクタンス素子に少なくとも接続される請求項1〜17のいずれか1項に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項19】
前記第1および第2の共振回路(6a,6b)が、前記AC電圧源(V)の前記周波数(f)に同調される請求項18と7と8のいずれか1項に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項20】
前記第1および第2の共振回路が、前記エンコーダ構造と前記センサアセンブリとの間の距離に基づいて、動作周波数が調整される請求項19に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項21】
前記第1の共振回路が直列共振回路である請求項7または8に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項22】
前記第1の共振回路が並列共振回路である請求項7または8に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項23】
前記回路が、正弦波信号(sin)と余弦波信号(cos)とを逆正接関数に組み合わせるように構成される計算モジュール(13)を備える請求項14に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項24】
機械の可動部(2)の位置を検出する方法であって、
前記可動部に取り付けられたエンコーダ構造の位置を変化させることにより、センサアセンブリのインダクタンスを変化させ、
前記センサアセンブリのインダクタンスの変化を検出し、
検出されたインダクタンスの変化に基づいて、可動部の位置を決定する
ことを特徴とする可動部の位置検出方法。
【請求項25】
前記インダクタンスの変化を、前記センサアセンブリの2つの共振センサシステムの位相差によって検出することを特徴とする請求項24に記載の可動部の位置検出方法。
【請求項26】
前記インダクタンスの変化を、前記センサアセンブリの2つの共振センサシステムの振幅差によって検出することを特徴とする請求項24に記載の可動部の位置検出方法。
【請求項27】
前記インダクタンスの変化を、前記センサアセンブリの2つの共振センサシステムの周波数差によって検出することを特徴とする請求項24に記載の可動部の位置検出方法。
【請求項28】
インダクタンス素子をAC電圧で駆動する動作周波数を、前記エンコーダ構造からの前記インダクタンス素子の距離に基づいて選択することを特徴とする請求項24〜27のいずれか1項に記載の可動部の位置検出方法。
【請求項29】
距離が増大しているときには、距離が減少した場合と比較して、前記動作周波数を高くすることを特徴とする請求項28に記載の可動部の位置検出方法。
【請求項30】
回転体と、
上記回転体と共に回転可能に取り付けられたエンコーダ構造と、
少なくとも1つ以上のインダクタンス素子を有し、上記エンコーダ構造に間隔を有しつつ対向して配置された固定センサアセンブリと、
から構成された回転角度検出用センサシステムにおいて、
上記インダクタンス素子は、平面状に形成されてなる
ことを特徴とする回転角度検出用センサシステム。
【請求項31】
前記固定センサアセンブリは、500kHzから5MHzの範囲で規定される周波数で駆動することを特徴とする請求項30に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項32】
前記固定センサアセンブリは少なくとも、前記インダクタンス素子と、上記インダクタンス素子から出力される信号を演算処理して回転角度を算出する集積回路と、を具備することを特徴とする請求項30または31に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項33】
前記エンコーダ構造は、その幅寸法が周期的に変化する少なくとも1相以上の平面部からなることを特徴とする請求項30〜32のいずれか1項に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項34】
前記エンコーダ構造は、前記回転体の半径方向に対して垂直に前記平面部が配置されることを特徴とする請求項33に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項35】
前記エンコーダ構造は、前記回転体の外周面上に形成されていることを特徴とする請求項34に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項36】
前記エンコーダ構造は、前記回転体の内周面上に形成されていることを特徴とする請求項34に記載の回転角度検出用センサシステム。
【請求項37】
前記エンコーダ構造は、前記回転体の軸方向に対して垂直に前記平面部が配置される
ことを特徴とする請求項33に記載の回転角度検出用センサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−327940(P2007−327940A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107646(P2007−107646)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(507125295)フォクト エレクトロニック コンポーネント ゲーエムベーハー (3)
【氏名又は名称原語表記】Vogt electronic Components GmbH
【Fターム(参考)】