説明

回転電機用コアの製造方法及びコア板の打ち抜き装置

【課題】コア板を磁石保持孔のコア板外周側や内周側の端縁部が分離された状態で打ち抜き形成する場合でも、そのコア板を積層方向に隣接するコア板上に正確に位置決めして積層することができる回転電機用コアの製造方法及びコア板の打ち抜き装置を提供する。
【解決手段】ダイ22及びパンチ23により、帯板状のワークWから磁石保持孔15を有するコア板12,13を打ち抜き、そのコア板12,13を積層して回転電機用コアを製造する。コア板12,13の打ち抜き時にその打ち抜きに先行して、パンチ23に設けられた押さえ部26により、磁石保持孔15のコア板外周側の内側縁部を押さえる。コア板12,13の打ち抜きと同時に、パンチ23に設けられた突部27により、磁石保持孔15の外側部分を積層方向に隣接するコア板13,12の外側部分に対してダボ18で結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帯板状のワークから磁石保持孔が形成されたコア板を打ち抜くとともに、そのコア板を積層してロータコア等の回転電機用コアを製造するための回転電機用コアの製造方法、及びその回転電機用コアのコア板の打ち抜き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の磁石保持孔を備えた複数のコア板を積層してなる回転電機用コアとしては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、ロータコアが一体状コア板と分割状コア板とを交互に積層することによって構成されている。一体状コア板には、複数の磁石保持孔が外周部に形成されている。分割状コア板には、その外周部に切り離された分割部を設けることにより、コア板本体と分割部との間に磁石保持孔が形成されている。そして、一体状コア板と分割状コア板とが交互に積層された状態で、それらのコア板上の複数の貫通孔にリベットが挿入されて、それらのリベットがカシメられることにより、各コア板が積層状態に固定される。このように分割部を形成すれば、磁石保持孔の外周部が切り離されて開放され、これによって磁路が分断されて磁束漏れが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−158008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような回転電機用コアは、その組み付けに際して、切り離された分割部を積層方向に隣接した他のコア板上の所定位置に位置決めして積層する必要がある。ところが、前記特許文献1には、そのコア板を積層することに関する製造方法については詳細に開示されていない。従って、特許文献1に記載のコアにおいては、コア板の分割部を他のコア板に対してを正確な位置関係を有するように積層することは困難である。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、コア板がたとえ分割された状態であっても、そのコア板を積層方向に隣接する他のコア板上に正確に位置決めして積層することができる回転電機用コアの製造方法及びコア板の打ち抜き装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、回転電機用コアの製造方法に係る発明では、板状のワークから磁石保持孔が形成されたコア板を打ち抜き、そのコア板を積層して回転電機用コアを製造するための回転電機用コアの製造方法において、前記磁石保持孔の前記コア板外周側の内側縁部を押さえ、その状態でコア板を打ち抜くことを特徴としている。
【0007】
従って、この発明の回転電機用コアの製造方法においては、磁石保持孔のコア板外周側や内周側の端縁部が分離された状態でコア板を打ち抜き形成する場合、磁石保持孔のコア板外周側の内側縁部を押さえた状態で、コア板の打ち抜きが行われる。このため、磁石保持孔を設けることによってコア板がたとえ分割された状態になったとしても、そのコア板が移動するおそれを抑制することができて、コア板を積層方向に隣接する他のコア板上に容易かつ正確に位置決めして積層することができる。
【0008】
前記の製造方法において、端部が分離されて、その端部が開放された磁石保持孔の内側縁部を押さえることが好ましい。
前記の方法において、前記コア板の打ち抜きと同時に、前記磁石保持孔の外側部分を積層方向に隣接する他のコア板の外側部分に対してダボにより結合することが好ましい。
【0009】
前記の方法において、磁石保持孔の端部が分離されることにより、コア板の外側部分に分割部が形成され、その分割部をダボにより他のコア板に結合することが好ましい。
コアに打ち抜き装置に係る発明においては、板状のワークからコア板を打ち抜くためのダイ及びパンチを備えた回転電機用コアのコア板の打ち抜き装置において、前記パンチにはコア板の打ち抜きに先行して、ワークに形成された磁石保持孔の前記コア板外周側の内側縁部を押さえるための押さえ部を設けることを特徴としている。
【0010】
従って、この発明においても、磁石保持孔のコア板外周側の内側縁部を押さえた状態で、コア板の打ち抜きが行われ、磁石保持孔を介してコア板がたとえ分割された状態になったとしても、そのコア板が移動するおそれを抑制することができて、コア板を積層方向に隣接する他のコア板上に容易かつ正確に位置決めして積層することができる。
【0011】
前記の構成においては、前記パンチには、前記磁石保持孔の外側部分のダボを押圧するための押圧部を設け、積層方向に隣接するコア板の外側部分をダボにより結合するようにするとよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、磁石保持孔のコア板外周側や内周側の端縁部が分離されて、コア板にたとえ分割部が形成された場合であっても、そのコア板を積層方向に隣接する他のコア板上に正確に位置決めして積層することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の回転電機用コアの製造方法により製造される回転電機用コアを示す斜視図。
【図2】図1の回転電機用コアの平面図。
【図3】図1の回転電機用コアにおける2つのコア板を分解して示す斜視図。
【図4】同回転電機用コアの製造方法におけるステーションを順に示す平面図。
【図5】図4のステーションにおけるコア板の打ち抜き工程の打ち抜き装置を示す断面図。
【図6】図5の5−5線における部分断面図。
【図7】パンチの押さえ部を示す簡略図。
【図8】パンチの押さえ部の異なる例を示す簡略図。
【図9】(a)〜(e)は第2実施形態の製造方法により製造される回転電機用コアにおける磁石保持孔の異なったパターンを示す部分平面図。
【図10】図9のパターンの磁石保持孔を配列した回転電機用コアのコア板を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した回転電機用コアの製造方法及びコア板の打ち抜き装置の第1実施形態を図1〜図8に従って説明する。
【0015】
まず、この実施形態の製造方法により製造される回転電機としてのモータのロータコアの構成について説明する。
図1及び図3に示すように、ロータコア11は、第1コア板12と第2コア板13とを交互に所定枚数(例えば、全体で100枚)積層することによって構成されている。なお、第1コア板12と第2コア板13とは同じ構成であるが、コア円周方向の向きが異なるため、この実施形態においては便宜的に異なるコア板として扱う。第1コア板12及び第2コア板13の中心部には、図示しないモータの回転軸を嵌着するための貫通孔14が形成されている。第1コア板12及び第2コア板13の外周側の縁部には、図2に示す永久磁石31を挿入するためのそれぞれ一対の磁石保持孔15が所定の角度間隔をおいて複数組形成されている。この実施形態では、45度の間隔おきに8組の磁石保持孔15が形成されているものとする。
【0016】
前記第1コア板12及び第2コア板13において、1組おきに配置された一対の磁石保持孔15のコア板外周側の端部には外周側分離部16が形成されるとともに、磁石保持孔15のコア板内周側の端縁部間には内周側分離部17が形成されている。そして、第1コア板12と第2コア板13とでは、外周側分離部16及び内周側分離部17の形成箇所がコア円周方向において異なった位置となるように構成されている。つまり、磁石保持孔15のコア板外周側及び内周側の端縁部が分離部16,17により分離された形態の第1パターンAの磁石保持孔15と、磁石保持孔15のコア板外周側及び内周側の端縁部が閉鎖された形態の第2パターンBの磁石保持孔15とが、各コア板12,13の円周方向において交互に配列されるとともに、コア板12,13の積層方向においても交互に配置されている。第1パターンAにおいては、磁石保持孔15の外側にコア板本体とは別体の分割部19が形成されている。
【0017】
図1、図3及び図5に示すように、前記各一対の磁石保持孔15の外側部分において各コア板12,13には複数のダボ18が形成され、これらのダボ18に凹凸の関係で嵌合し合うことよってコア板12,13が積層状態に結合固定されて、ロータコア11が組み立て構成されている。そして、このロータコア11の組み立て状態において、分離部16,17の配置により、磁石保持孔15のコア板外周側及び内周側からの磁束漏れが低減される。また、磁石保持孔15のコア板外周側及び内周側の端縁部が閉鎖された形態の第2パターンBの磁石保持孔15の配置により、コア11の強度が確保される。
【0018】
次に、後述の第4ステーションS4で用いられるコア板の打ち抜き装置について説明する。図5に示すように、この打ち抜き装置においては、筒状をなす保持部材21が一垂直軸線を中心に回転可能に設けられている。この保持部材21は、後述する転積のために、図示しないモータにより45度ずつ間欠回転される。保持部材21の内周上端縁には、円環状のダイ22が固定されている。ダイ22の上方には、パンチ23が垂直軸線に沿って往復移動可能に配置されている。そして、前記保持部材21上に帯板状のワークWが配置された状態で、パンチ23がダイ22に対して上下方向に往復動されることにより、ワークWからコア板12,13が打ち抜かれる。
【0019】
前記ダイ22の下部において保持部材21の内周には、打ち抜かれたコア板12,13の外周面に対して圧力を付与するための円筒状の押圧リング24が固定されている。ダイ22、押圧リング24及び保持部材21の軸孔内には、前記垂直軸線を中心に回転可能な載置台25が垂直軸線に沿って上下移動可能に設けられている。そして、パンチ23及びダイ22によって打ち抜かれたコア板12,13が押圧リング24により外周から押圧保持されながら、載置台25上に載置されて順に積層される。このとき、保持部材21が図示しないモータにより回転されて、ダイ22及び押圧リング24が保持部材21と一体的に45度ずつ回転されるとともに、載置台25上のコア板12,13が載置台25とともに追随回転される。従って、保持部材21上のワークWが回転されることなく静止した状態であるため、打ち抜かれたコア板12,13が結果的に45度ずつ回転角度をずらせて積層されて、いわゆる転積されて、ロータコア11が形成される。
【0020】
図5,図6及び図7に示すように、前記パンチ23の下端面の周縁部には、それぞれ一対の押さえ部26がワークW上の前記第1パターンAの磁石保持孔15と対応するように、90度の角度間隔をおいて突設されている。そして、パンチ23の下降時に、パンチ23及びダイ22によるコア板12,13の打ち抜きに先行して、この押さえ部26により第1パターンAの磁石保持孔15のコア板外周側の内側縁部が押さえられて保持される。このとき、コア板12,13の外周全体がダイ22によって保持される。このため、その直後のコア板12,13の打ち抜きによって、前記第1パターンAの磁石保持孔15の外側に分割部19が形成されても、その分割部19の移動が阻止されて、分割部19を含むコア板12,13が積層方向の下方に隣接するコア板12,13上に正確に位置決めして積層される。
【0021】
前記パンチ23の下端面の周縁部には、押圧部としての複数の突部27が45度の間隔をおいて形成されている。そして、パンチ23及びダイ22によるコア板12,13の打ち抜きと同時に、この突部27によりコア板12,13上のダボ18が積層方向の下方に隣接するコア板12,13上のダボ18に対して押圧によってカシメられて、両コア板12,13が積層状態に結合固定される。
【0022】
次に、前記のような構成のロータコア11を製造するための製造方法につい説明する。図4に示すように、帯板状のワークWが矢印で示す長手方向へ所定距離ずつ間欠的に移送されながら、第1〜第4ステーションS1〜S4において、ワークW上に異なった加工が順に施される。この場合、ワークW上には、第1ステーションS1の図示しない前段のステーションにおいて回転軸を嵌着するための貫通孔14があらかじめ形成される。
【0023】
すなわち、ワークWの間欠移動にともない、第1ステーションS1においては、ワークW上の貫通孔14の周縁部に、第1パターンAの磁石保持孔15を構成する一対の外周側分離部16及び内周側分離部17の組が90度の角度間隔をおいて打ち抜き形成される。次の第2ステーションS2においては、ワークW上の貫通孔14の周縁部に、それぞれ第1,第2パターンA,Bを構成する一対の磁石保持孔15が45度の角度間隔をおいて形成される。すなわち、磁石保持孔15の両端縁部が分離部16,17により分離された形態の第1パターンAと、磁石保持孔15の両端縁部が閉鎖された形態の第2パターンBとが、円周方向において交互に配列形成される。
【0024】
続く第3ステーションS3では、ワークW上における第1,第2パターンA,Bの各一対の磁石保持孔15の外側部分にダボ18が形成される。なお、このダボ18の形成は、第1ステーションS1あるいは第2ステーションS2において磁石保持孔15の打ち抜きと同時に行なっても、あるいは、第1ステーションS1の前段のステーションで行なってもよい。
【0025】
さらに、第4ステーションS4においては、前記打ち抜き装置によりワークWからコア板12,13が打ち抜かれるとともに、そのコア板12,13が載置台25の下降をともないながら順に積層される。この場合、打ち抜かれたコア板12,13がその直下のコア板12,13に対して45度ずつ回転されながら転積されることによって、前記第1パターンAと第2パターンBとがコア板12,13の積層方向に交互に配置される。そして、このコア板12,13の打ち抜き積層時に、ダボ18がカシメられることにより、コア板12,13が積層状態に結合固定されて、ロータコア11が製造される。
【0026】
ここで、ロータコア11の積層枚数が設定枚数となるように、その設定枚数の最初のコア板12または13のダボ18の位置には、第1ステーションS1の前段において透孔(図示しない)が打ち抜かれる。従って、この最初のコア板12または13の透孔には2番目のコア板12または13のダボ18が嵌合されてそれらのコア板12または13同士は連結されるが、最初のコア板12または13は、その前に打ち抜かれたコア板12または13とは連結されない。このようにして、設定枚数積層されたロータコア11が確保される。
【0027】
そして、図2に示すように、コア板12,13が所定枚数積層されて、コア11が形成されると、載置台25が大きく下降されて第4ステーションS4の下方に移動され、コア11がそこから後段の別工程に搬送される。この後段の別工程においては、磁石保持孔15内に永久磁石31が収容され、その永久磁石31はエポキシ樹脂等の合成樹脂32によって収容状態に固定される。さらに、必要に応じてコア11の積層方向の両端面に磁石保持孔を有しない端板(図示しない)が積層されて固定される。
【0028】
以上のようにして、所定枚数のコア板12,13よりなるコア11が組み付けられる。そして、このコア11は、前記のように各コア板12,13の磁石保持孔15の半数の磁石保持孔15の外周縁及び内周縁が分離されて切り離されているため、漏れ磁束を低減できる。従って、このコア11をロータコアとして用いた場合、そのモータを効率的に運転させることができて、トルク特性を向上できる。また、第1パターンAの磁石保持孔15と第2パターンBの磁石保持孔15とが交互に配置されているため、第1パターンAの分割部19は、ダボ18を介して積層方向に隣接する他のコア板12,13の分割されていない部分に固定される。従って、コア11全体としての強度を確保できる。
【0029】
なお、前記の製造方法では、コア板12,13を転積させることによってコア11を組み付けたが、コア板12,13を転積させることなくコア11を組み付けることもできる。この場合には、コア板12,13を打ち抜いて積層させる前の工程において、45度ずつ異なる位置に第1,第2パターンA,Bの磁石保持孔15が形成されるように打ち抜いておく必要がある。また、この場合には、磁石保持孔15の位置に第1,第2パターンA,Bが交互に表れるため、図8に示すように、パンチ23の第1,第2パターンA,Bの双方に対応する位置に押さえ部26を設ける必要がある。
【0030】
さらに、磁石保持孔15を、例えば30度や20度ごと等、前記とは異なる角度ごとに形成したり、第1パターンAの数と第2パターンBの数とを異ならせたり、積層方向の両端のコア板を除いたコア板を第1パターンAのみのコア板としたり、コア11の同角度位置において積層方向に第1パターンAや第2パターンBが所定の複数枚数分連続して表れたりするようにしたり、各種の変更が可能である。これらの場合には、その変更に応じて、転積のための間欠回転角度や、パンチ23の押さえ部26の配列パターン等が適宜に設定される。そして、これらのいずれの場合においても、押さえ部26が磁石保持孔15の外周側の内側縁部を押さえるため、磁石保持孔15によって分割部19が形成されても、コア板12,13が他のコア板12,13に対して正確な位置関係で適切に積層される。
【0031】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この実施形態においては、ダイ22及びパンチ23により、帯板状のワークWから磁石保持孔15を有するコア板12,13が打ち抜かれるとともに、そのコア板12,13が積層されてロータコア11が製造される。そして、コア板12,13の打ち抜き時にその打ち抜きに先行して、パンチ23に設けられた押さえ部26により、磁石保持孔15のコア板外周側の内側縁部が押さえられる。
【0032】
このため、磁石保持孔15のコア板外周側や内周側の端縁部が分離された状態のコア板12,13を打ち抜き形成する場合、磁石保持孔15のコア板外周側の内側縁部を押さえた状態で、コア板12,13の打ち抜きが行われる。よって、コア板12,13の打ち抜き時に、磁石保持孔15によりコア板12,13に分割部19が形成された状態になったとしても、その分割部19が移動するおそれを防止することができて、コア板12,13を積層方向に隣接する他のコア板13,12上に容易かつ正確に位置決めして積層することができる。このため、トルク特性等が良好な高効率のモータを得ることができる。
【0033】
(2) この実施形態においては、前記コア板12,13の打ち抜きと同時に、パンチ23に設けられた突部27により、ダボ18が押圧されて、磁石保持孔15の外側部分が積層方向に隣接するコア板13,12の外側部分に対して結合される。このため、分離状態のコア板12,13の打ち抜きに際して、そのコア板12,13を積層方向に隣接するコア板13,12上への積層状態に直ちに結合固定することができる。よって、分離状態のコア板12,13の分割部19が積層状態で移動するおそれを防止することができる。
【0034】
(3) この実施形態においては、コア板12,13の打ち抜き積層時に、磁石保持孔15のコア板外周側及び内周側の端縁部が分離された形態の第1パターンAがコア11に配置される。このため、磁石保持孔15のコア板外周側及び内周側の端縁部からの磁束漏れが低減されるともに、磁石保持孔15のコア板外周側及び内周側の端縁部の連結強度が確保可能なロータコア11を製造することができる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した回転電機用コアの製造方法の第2実施形態を図9(a)〜(e)及び図10に従って前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0036】
この第2実施形態においては、図9(a)〜(e)に示すように、磁石保持孔15のコア板外周側や内周側の端縁部における分離または閉鎖形状が異なった5つの形態のパターンC〜Gの磁石保持孔15が用意される。すなわち、図9(a)に示すように、パターンCの磁石保持孔15では、一方の磁石保持孔15の外周側端縁部及び一対の磁石保持孔15の内周側端縁部間が分離されるとともに、他方の磁石保持孔15の外周側端縁部が閉鎖されている。図9(b)に示すように、パターンDの磁石保持孔15では、他方の磁石保持孔15の外周側端縁部及び一対の磁石保持孔15の内周側端縁部間が分離されるとともに、一方の磁石保持孔15の外周側端縁部が閉鎖されている。
【0037】
図9(c)に示すように、パターンEの磁石保持孔15では、一対の磁石保持孔15の内周側端縁部間が分離されるとともに、一対の磁石保持孔15の外周側端縁部が閉鎖されている。図9(d)に示すように、パターンFの磁石保持孔15では、一対の磁石保持孔15の外周側端縁部が分離されるとともに、一対の磁石保持孔15の内周側端縁部が連結されて閉鎖されている。図9(e)に示すように、パターンGの磁石保持孔15では、一対の磁石保持孔15の外周側端縁部及び内周側端縁部がそれぞれ閉鎖されている。
【0038】
そして、例えば図10に示すように、コア板12上に、前記5形態のパターンC〜Gの磁石保持孔15が円周方向に順に並べた状態で2群配列される。また、コア板12の打ち抜き時には、コア板12が360度を除く36度の倍数ずつ転積されることにより、積層方向に隣接するコア板12間において、異なったパターンC〜Gの磁石保持孔15が重合配置される。これらのパターンC〜Gは、コア11として所要の強度や特性に応じて、それらの組み合わせが適宜に選択される。
【0039】
そして、ダイ22とパンチ23とによる打ち抜きに際しては、前記第1実施形態と同様に、パンチ23の押さえ部26により、磁石保持孔15の外周側縁部が押さえられる。なお、図9(c)及び(e)に示すパターンE及びパターンGにおいては、磁石保持孔15の外周側端部が閉鎖されて連結されているため、押さえ部26による押さえは特に必要ない。
【0040】
従って、この第4実施形態によれば、前記第1実施形態に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(4) この回転電機用コアの製造方法では、磁石保持孔15のコア板外周側や内周側の端縁部における分離形状または閉鎖形状が異なった複数形態のパターンC〜Gが用意される。このため、これらのパターンC〜Gを適宜に組み合わせることにより、コア11として、所要の強度及び特性を得ることができる。そして、このように磁石保持孔15の形状が2種以上の多種形状であっても、例えば図9(a)(b)(d)のように、磁石保持孔15の1箇所だけが閉鎖されて動きやすい連結された不安定な形状であっても、押さえ部26によって磁石保持孔15の縁部を保持することによってコア板12を他のコア板12に対して正確な位置関係で積層することができる。
【0041】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記実施形態においては、対をなす磁石保持孔15内に一対の平板状の永久磁石31がほぼ平面V字状をなすように配列されるが、図2に2点鎖線で示すように、磁石保持孔15を円弧状にするとともに、一つの円弧状の永久磁石31が配列されるように構成すること。
【0042】
・ ダボ18に代えて、各コア板に積層方向に連通する孔を形成し、コア板の積層状態においてその孔内にコア板結合用の合成樹脂を注入すること。
【符号の説明】
【0043】
11…コア、12…第1コア板、13…第2コア板、15…磁石保持孔、16…外周側分離部、17…内周側分離部、18…ダボ、19…分割部、22…ダイ、23…パンチ、26…押さえ部、27…突部、W…ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークから磁石保持孔が形成されたコア板を打ち抜き、そのコア板を積層して回転電機用コアを製造するための回転電機用コアの製造方法において、
前記磁石保持孔の前記コア板外周側の内側縁部を押さえ、その状態でコア板を打ち抜くことを特徴とした回転電機用コアの製造方法。
【請求項2】
端部が分離されて、その端部が開放された磁石保持孔の内側縁部を押さえることを特徴とした請求項1に記載の回転電機用コアの製造方法。
【請求項3】
前記コア板の打ち抜きと同時に、前記磁石保持孔の外側部分を積層方向に隣接する他のコア板の外側部分に対してダボにより結合することを特徴とした請求項1または2に記載の回転電機用コアの製造方法。
【請求項4】
磁石保持孔の端部が分離されることにより、コア板の外側部分に分割部が形成され、その分割部をダボにより他のコア板に結合することを特徴とした請求項3に記載の回転電機用コアの製造方法。
【請求項5】
板状のワークからコア板を打ち抜くためのダイ及びパンチを備えた回転電機用コアのコア板の打ち抜き装置において、
前記パンチにはコア板の打ち抜きに先行して、ワークに形成された磁石保持孔の前記コア板外周側の内側縁部を押さえるための押さえ部を設けたことを特徴とする回転電機用コアのコア板の打ち抜き装置。
【請求項6】
前記パンチには、前記磁石保持孔の外側部分のダボを押圧するための押圧部を設け、積層方向に隣接するコア板の外側部分をダボにより結合するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の回転電機用コアのコア板の打ち抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−90386(P2013−90386A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226978(P2011−226978)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】