説明

固体から昇華した蒸気の流れの制御

【課題】固体から昇華した蒸気流れを制御する新規システムを提供する。
【解決手段】昇華された蒸気50の定常流れを真空チャンバ130へ送達する蒸気送達システムは、固体物質29の気化器28、機械式スロットルバルブ100および圧力ゲージ60、真空チャンバへの蒸気導管32を備える。蒸気の流量は、その気化器の温度およびその気化器とその真空チャンバとの間に置かれる機械式スロットルバルブのコンダクタンスの設定の両方により決定される。気化器の温度は閉ループ制御35により設定点温度に決定される。機械式スロットルバルブは電気制御され、バルブの位置は圧力ゲージの出力に対する閉ループで制御120される。蒸気の流量は圧力ゲージの出力に比例し得る。気化器から真空チャンバへの蒸気に曝露されるすべての表面37は、凝縮を防ぐために加熱される。ゲートバルブおよび回転式バタフライバルブが、上記スロットルバルブとして作用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、圧力低下をほとんど伴わない、生成された蒸気の真空チャンバへの流れの正確な制御と組み合わされた、真空下での固体物質の制御された昇華に関する。1つの重要な用途は、イオンビームを生成するためのイオン源の排気されたイオン化チャンバへの制御された蒸気供給である。このビームは、半導体基板へのイオン注入のために使用され得る。別の重要な用途は、工作物との相互作用のための真空処理チャンバへの蒸気の制御された流れである。
【背景技術】
【0002】
(背景)
イオン源のイオン化チャンバは、真空下で機能し、そしてイオン化されるべき物質が非常に正確にそして再現性よくガス形態で供給されることを必要とする。
【0003】
多くの製造プロセスはまた、真空中で実施される。工作物に対する化学反応を組込む製造プロセスは、代表的には、ガス形態の試薬の導入を必要とし、この試薬は特定のプロセス化学を通して互いにおよび/または工作物と反応させられる。このようなプロセスは、その工作物の組成の変化、その工作物上への薄膜の堆積、またはエッチングもしくはその工作物からの物質の除去を生じ得る。例えば、半導体製造においては、このようなプロセスは、非常に正確にかつ再現性よく実施されねばならない。
【0004】
従って、そして工作物加工チャンバに対するのと同様、イオン源に対しても、真空チャンバへのガスの正確かつ安定な流れの導入が必要とされる。多くの供給物質が加圧ガスシリンダからガス形態で利用可能であるが、固体形態でしか利用可能でないものもある。固体物質は、ガス供給源とともに使用される取扱い工程とは異なる特別の取扱い工程を必要とする。興味深い固体物質には、デカボラン、オクタデカボラン、三塩化インジウム、トリメチルインジウムおよびトリエチルアンチモンがある。
【0005】
興味深い固体は、代表的には、低い蒸気圧を有し、最初に減圧環境中での加熱を通して昇華され、一定体積のガスが生成されねばならない。次いで、この蒸気は、そのチャンバ中で実施されるべき操作によって必要とされる流れ、すなわち1秒あたりの分子の数でその真空チャンバに導入されねばならない。この流れの要件は、通常のガスの導入に対して必要とされる要件と類似しているので、標準的なガス取扱い設備が、固体由来の蒸気の送達のために使用されてきた。しかし、上首尾不首尾さまざまである。代表的なガスの取扱いにおいて、ガス供給源は、真空チャンバに対する入口送達圧力Pよりも実質的に高い圧力Pに保持されねばならない。真空チャンバへのガスの流れを正確に制御するために、Pは、正確に制御されねばならない。これは、通常、ガス供給源と真空チャンバ入口との間に置かれる、市販されているマスフローコントローラ(MFC)によって達成される。MFCは、数値制御デバイスであり、それは、閉ループ様式で、(1秒あたりのグラム数での)送達される質量流量と要求される質量流量とを合致させるようにそのコンダクタンスを変化させる。MFCは、一般的に比較的高圧のガス供給源とともに使用されるので、MFCは、対応して小さいコンダクタンスの範囲で作動するように一般的に構築されており、このことは比較的大きい圧力低下を確立する。水素化ホウ素であるデカボラン(B1014)またはオクタデカボラン(B1822)のような気化された固体物質に対して、このアプローチは、いくつかの重大な問題を抱えている。
【0006】
このような固体水素化ホウ素の蒸気圧は低く、それゆえ、十分に高い蒸気圧を確立してMFCの使用を許容するためには、この物質は、その融点(デカボランについては100℃)近くまで加熱されねばならない。これは、熱に敏感な水素化ホウ素分子の分解の危険をもたらす。
【0007】
この水素化ホウ素蒸気は、表面上、特にその物質が気化され温度未満の表面上に容易に凝縮するので、比較的小さいMFCコンダクタンス(小さい通路)の詰まりが、不安定な操作および早期の構成要素不良を生じる。
【0008】
これらの問題は、イオン源(ここでは、生成されたイオンビームは、半導体のドーピングのためのイオン注入器(ion implanter)中で使用される)に供給されるこのような水素化ホウ素の蒸気の制御された送達のための蒸気流れ制御システムの商業的に実行可能な実施の過程において大きく立ちはだかっている。
【0009】
蒸気が不揮発性の固体投入物に由来する場合は、さらなる厄介な問題が起こる。代表的には、大きい表面積を提供するために、その投入物は粉末形態で気化器内に置かれる。その不揮発性投入物の気化領域は、その投入物が消費されるにつれて経時的に消失し、そして特にその固体物質が温度があまりに高くなると分子解離しやすい場合は、そうである。特に、蒸気が採用されるはずの操作が、蒸気の流れの正確な維持を必要とする場合には重大な問題が生じ、これはしばしばあることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
固体物質からの蒸気の流れの制御は、所望されるほどには正確ではなく、そして、例えば、流れ制御設備を分解して流れ制御設備の作動に影響する凝縮物の堆積を取り除くために、設備のしばしばのメインテナンスの必要性が関与してきた。所望のドーパント物質であるデカボラン、オクタデカボランおよび他の熱的に不安定であるかまたは別様に熱に敏感な化合物を使用しようとする場合は、これらの不利益な状態のすべてが、半導体基板のイオン注入に立ちはだかる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(要旨)
昇華された蒸気の定常流れを真空チャンバへ送達するための蒸気送達システムは、固体物質の気化器、機械式スロットルバルブ、および圧力ゲージ、およびそれに続くこの真空チャンバへの蒸気導管を備える。蒸気流量は、気化器の温度およびこの機械式スロットルバルブのコンダクタンスの設定の両方により決定される。好ましい実施形態は、以下の特徴の1つ以上を有する。上記気化器の温度は、閉ループ制御により設定点温度に決定される。機械式スロットルバルブは、電気制御される(例えば、バルブ位置は、圧力ゲージの出力への閉ループ制御下にある)。このようにして、上記蒸気の流量は、ほぼ圧力ゲージの出力に比例する。気化器から真空チャンバへの蒸気に曝露されるすべての表面は、凝縮を防ぐために加熱される。ゲートバルブは、上流スロットルバルブとして作用する。ロータリーバタフライバルブは、上流スロットルバルブとして作用する。固体物質の固定投入量を採用すると、上記気化器の温度は、長期間の間定常状態に維持され得、その間に、その投入物が昇華するにつれて、上記スロットルバルブは、その作動範囲においてより低いコンダクタンスから徐々に開かれる。より大きいバルブの変位に到達すると、その温度が上昇され、そのバルブがより低いコンダクタンス設定に再調整されることが可能になり、そのより低いコンダクタンス設定からそのバルブは、再び開き得る。
【0012】
1つの特定の特徴は、真空チャンバへの、固体物質から昇華された蒸気の制御された流れを送達するための蒸気送達システムであって、この蒸気送達システムは、
大気圧以下で作動可能な、この固体物質のための加熱された気化器;ならびに
この気化器からこの真空チャンバへの蒸気送達通路であって、この蒸気送達通路は、スロットルバルブ、それに続く蒸気導管、このスロットルバルブとこの蒸気導管との間に置かれる大気圧以下に応答する圧力ゲージを備え、この昇華された蒸気に曝露される蒸気送達通路の表面(このスロットルバルブ、この圧力ゲージおよびこの蒸気導管の表面を含む)は、この固体材料の凝縮温度より上の温度に維持されるように適合されている、蒸気送達通路;ならびに
閉ループ制御システムであって、この閉ループ制御システムは、この圧力ゲージの出力に応答してこのスロットルバルブの下流の蒸気を大気圧以下に制御するためにこのスロットルバルブのコンダクタンスを変化させるように構築されている圧力ゲージを組込み、この真空チャンバへの蒸気の流れがこのスロットルバルブとこの蒸気導管との間の通路の領域における蒸気圧により決定される、閉ループ制御システム、
の組合せを備える。
【0013】
この特徴の実施形態は、以下の特徴の1つ以上を有する。
【0014】
この蒸気送達システムは、上記送達通路の表面の温度を上記気化器の温度よりも高く保持するように適合されている温度制御システムを備える。
【0015】
上記蒸気送達システムは、上記気化器からの段階がより遠いほど、漸進的により高い温度に保持されるように適合されている多段階の蒸気送達通路を有する。
【0016】
上記システムは、上記気化器の温度のための制御システムと上記スロットルバルブのコンダクタンスのための制御システムとの両方により決定されるように、蒸気の流量が適合されている。
【0017】
上記気化器の温度は、閉ループ制御により設定点温度に決定される。
【0018】
上記スロットルバルブの最大Nコンダクタンスは、少なくとも毎秒1リットルである。
【0019】
上記スロットルバルブが完全に開いている場合、このスロットルバルブを横切る圧力低下は、100mTorr未満である。
【0020】
上記スロットルバルブの最大コンダクタンスは、上記蒸気導管のコンダクタンスの少なくとも5倍または10倍である。
【0021】
上記スロットルバルブは、可動位置ゲートバルブであるか、またはバタフライ型のものである。
【0022】
上記気化器は、固体物質の再投入可能な固定投入量で作動するように構築されており、この固体物質は、この固体物質の蒸気放出領域を減らす様式で漸進的に消費される。そしてコントロールシステムは、上記スロットルバルブを越える流れまたは圧力の減少に応答して、このスロットルバルブの位置を再設定して所望の流れを回復するように、そしてまた時折このスロットルバルブがその最大有用コンダクタンスに近づく場合に、上記気化器の温度を上昇させてこの気化器内の圧力を高め、このスロットルバルブがその好ましい動的コンダクタンス範囲内で作動することを可能にするように構築されている。
【0023】
好ましい形態では、上記気化器送達システムは、上記気化器温度を上記設定点に維持し得る気化器加熱器のレギュレーターに気化器設定点温度値を提供し得るスロットルバルブベースの検出制御システムを備え、この検出制御システムは、このスロットルバルブのための所望の上限コンダクタンスを意味する少なくとも1つの所定のバルブ変位値を記憶し、この検出制御システムは、このスロットルバルブの位置をモニタリングするように構築されており、そしてバルブがこの変位値に近づくかまたはそれに到達しようとするのを検出する際に、この検出制御システムは、レギュレータ加熱器に対して、設定値温度を上昇させてこのスロットルバルブの上流の蒸気発生および蒸気圧の増加をもたらし、それによりこのスロットルバルブの閉ループ制御が、このバルブを実質的により低いコンダクタンス位置に戻させるように構築されている。この特徴の好ましい実施形態では、上記気化器送達は、作動に適した温度上昇の所定の増分についての参照表および制御システムを備え、この検出制御システムは、バルブが上記変位値に近づくかまたはそれに到達しようとするのを検出する際に、上記気化器温度設定点をこの参照表の次の段階に増加させるのに有効である。
【0024】
上記蒸気送達システムは、イオン化可能蒸気をイオン源に送達するような構成および配置である。
【0025】
上記蒸気送達システムは、イオン化可能蒸気をイオン注入器のイオン源に送達するような構成および配置である。
【0026】
上記蒸気送達システムは、イオン化可能蒸気を工作物加工真空チャンバまたは半導体に添加するための加工チャンバに送達するような構成および配置である。
【0027】
上記蒸気送達システムは、その蒸気を高真空に運搬するように構築されており、前記スロットルバルブの下流の大気圧以下の減少に応答して気化器の温度を上昇させるように構築されている。
【0028】
上記蒸気送達システムの制御システムは、サーボループを備え、このサーボループは、上記圧力ゲージの出力シグナルに応答してこのスロットルバルブの位置を調節し、この圧力ゲージにおけるこの蒸気圧を設定点値に維持する。
【0029】
上記蒸気送達システムは、デカボラン(B1014)またはオクタデカボラン(B1822)を含みそして蒸発させるよう構成される。
【0030】
蒸気送達システムは、三塩化インジウム(InCl)、トリメチルインジウム(In(CH)または他の固体低温ドーパント供給物質を含みそして蒸発させるよう構成される。
【0031】
別の特徴は、固体物質から昇華された蒸気の制御されたイオン化可能な流れをイオン化チャンバに送達するように適合される場合の、記載される蒸気送達システムの使用によって実施される、真空チャンバ中のイオンビームを生成する方法である。
【0032】
別の特徴は、上記の特徴の1つ以上を有する蒸気送達システムの使用により実施される、固体物質から昇華された蒸気の制御された流れを真空チャンバに送達する方法である。
【0033】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に示される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかである。
より特定すれば、本願発明は以下の項目に関し得る。
(項目1)
真空チャンバ(130;258;260)への、固体物質(29;140;200)から昇華された蒸気の制御された流れを送達するための蒸気送達システムであって、
大気圧以下で作動可能な上記固体物質のための加熱された気化器(28;145;205;400);ならびに
上記気化器から上記真空チャンバへの蒸気送達通路(37;237)であって、上記蒸気送達通路は、蒸気導管(32;150;228)につながるスロットルバルブ(100;100’;235;430)、上記スロットルバルブと上記蒸気導管との間に置かれる大気圧以下に応答する圧力ゲージ(60;240;450)を備え、上記スロットルバルブ、上記圧力ゲージおよび上記蒸気導管の表面を含む上記昇華された蒸気に曝露される蒸気送達通路の表面は、上記固体材料の凝縮温度より上の温度に維持されるように適合されている、蒸気送達通路;ならびに
閉ループ制御システム(60;120;240、250、245;PID2)であって、上記閉ループ制御システムは、上記スロットルバルブのコンダクタンスを変化させて上記圧力ゲージの出力に応答して上記スロットルバルブの下流の大気圧以下の蒸気を制御するように構築されている圧力ゲージを組込み、それにより上記真空チャンバへの蒸気の流れが上記スロットルバルブと上記蒸気導管(32;150;228)との間の通路の領域における蒸気圧により決定される、閉ループ制御システム、
の組合せを備える、蒸気送達システム。
(項目2)
上記送達通路(37;237)の表面の温度を上記気化器の温度よりも高く保持するように適合されている温度制御システム(35)を備える、項目1に記載の蒸気送達システム。
(項目3)
上記気化器からの段階がより遠いほど、漸進的により高い温度に保持されるように適合されている多段階の蒸気送達通路を有する、項目2に記載の蒸気送達システム。
(項目4)
上記蒸気の流量が、上記気化器の温度のための制御システム(35;225;215;248;PID1)と上記スロットルバルブのコンダクタンスのための制御システム(60;120;240;250;245;PID2)との両方により決定されるように適合されている、項目1、2または3に記載のシステム。
(項目5)
上記気化器の温度が、閉ループ制御により設定点温度に決定される、項目1〜4のいずれかに記載のシステム。
(項目6)
上記スロットルバルブの最大Nコンダクタンスが少なくとも毎秒1リットルである、項目1〜5のいずれかに記載の蒸気送達システム。
(項目7)
上記スロットルバルブが作動的に完全に開いている場合、上記スロットルバルブを横切る圧力低下が、100mTorr未満である、項目1〜6のいずれかに記載の蒸気送達システム。
(項目8)
上記スロットルバルブ(100;100’;235;430)の最大コンダクタンスが、上記蒸気導管(32;150;228)のコンダクタンスの少なくとも5倍である、項目1〜7のいずれかに記載の蒸気送達システム。
(項目9)
上記スロットルバルブの最大コンダクタンスが、上記蒸気導管のコンダクタンスの少なくとも10倍である、項目1〜8のいずれかに記載の蒸気送達システム。
(項目10)
上記スロットルバルブが可動位置ゲートバルブである、項目1〜9のいずれかに記載の蒸気送達システム。
(項目11)
上記スロットルバルブがバタフライ型のものである、項目1〜10のいずれかに記載の蒸気送達システム。
(項目12)
項目1〜11のいずれかに記載の蒸気送達システムであって、固体物質(29;140;200)の再投入可能な固定投入量で作動するように構築されており、上記固体物質は、上記固体物質の蒸気放出領域を減らす様式で漸進的に消費され、そして上記スロットルバルブ(100;100’;235;430)を越える圧力の減少に応答して、上記スロットルバルブの位置を所望の流れを回復するように再設定するように、そしてまた時折、上記スロットルバルブがその最大有用コンダクタンスに近づく場合に、上記気化器(28;145;205;400)の温度を上昇させて上記気化器内の圧力を高め、上記スロットルバルブがその好ましい動的コンダクタンス範囲内で作動することを可能にするように構築されている、蒸気送達システム。
(項目13)
スロットルバルブベースの検出制御システムと組み合わせた、項目12に記載の蒸気送達システムであって、上記検出制御システムは、上記気化器温度を上記設定点に維持し得る気化器加熱器のレギュレーターに気化器設定点温度値を提供し得、上記検出制御システムは、上記スロットルバルブのための所望の上限コンダクタンスを表す少なくとも1つの所定のバルブ変位値を保存し、上記検出制御システムは、上記スロットルバルブの位置をモニタリングするように構築されており、そして上記バルブが上記変位値に近づくかまたはそれに到達しようとするのを検出する際に、上記検出制御システムは、レギュレータ加熱器に対して、入力246によるように、設定点温度値を上昇させて上記スロットルバルブの上流の蒸気発生および蒸気圧の増加をもたらし、それにより上記スロットルバルブの閉ループ制御が、上記バルブを実質的により低いコンダクタンス位置に戻させることを可能にするように構築されている、蒸気送達システム。
(項目14)
項目13に記載の蒸気送達システムであって、作動に適した温度上昇の所定の増分の参照表を備え、そして上記検出制御システムが、上記バルブが上記変位値に近づくかまたはそれに到達しようとするのを検出する際に、上記気化器温度設定点を上記参照表の次の段階に増加させるのに有効である、上記送達システム。
(項目15)
イオン化可能蒸気をイオン源に送達するような構成および配置である、項目1〜14のいずれかに記載の蒸気送達システム。
(項目16)
イオン化可能蒸気をイオン注入器のイオン源に送達するような構成および配置である、項目15に記載の蒸気送達システム。
(項目17)
蒸気を工作物加工真空チャンバに送達するような構成および配置である、項目1〜16のいずれかに記載の蒸気送達システム。
(項目18)
半導体に添加するための加工チャンバにイオン化可能蒸気を送達するような構成および配置である、項目17に記載の蒸気送達システム。
(項目19)
項目1〜18のいずれかに記載の蒸気送達システムであって、上記蒸気送達システムは、その蒸気を高真空に運搬するように構築されており、上記スロットルバルブ(100;100’;235;430)の下流の大気圧以下の減少に応答して上記気化器(28;145;205;400)の温度を上昇させるように構築されている、蒸気送達システム。
(項目20)
項目1〜19のいずれかに記載の蒸気送達システムであって、上記スロットルバルブのための制御システムが、サーボループを備え、上記サーボループは、上記圧力ゲージ(60;240;450)の出力シグナルに応答して上記スロットルバルブ(100;100’;235;430)の位置を調整し、上記圧力ゲージにおける上記下流蒸気圧を設定点値に維持する、蒸気送達システム。
(項目21)
上記気化器が、デカボラン、B1014を含みそして蒸発させるよう構成される、項目1〜20のいずれかに記載の蒸気送達システム。
(項目22)
上記気化器が、オクタデカボラン、B1822を含みそして蒸発させるよう構成される、項目1〜20のいずれかに記載の蒸気送達システム。
(項目23)
上記気化器が、三塩化インジウム、InClを含みそして蒸発させるよう構成される、項目1〜20のいずれかに記載の蒸気送達システム。
(項目24)
上記気化器が、トリメチルインジウム、In(CHを含みそして蒸発させるよう構成される、項目1〜20のいずれかに記載の蒸気送達システム。
(項目25)
上記気化器が、トリエチルアンチモン、Sb(Cを含みそして蒸発させるよう構成される、項目1〜20のいずれかに記載の蒸気送達システム。
(項目26)
項目1〜25のいずれかに記載の蒸気送達システムの使用により実施される、固体物質から昇華された蒸気の制御された流れを真空チャンバに送達する方法。
(項目27)
固体物質から昇華された蒸気の制御されたイオン化可能な流れをイオン化チャンバに送達するために、項目15または16のいずれかに記載の蒸気送達システムの使用によって実施される、真空チャンバ中のイオンビームを生成する方法。
【図面の簡単な説明】
【0034】
種々の図面における類似の記号は、類似の要素を示す。
【図1】図1は、本発明の蒸気送達システムの簡略図を示す。
【図1A】図1Aは、蒸気送達システムを備えたイオン源を示す。
【図1B】図1Bは、上記イオン源の1つの実施形態の詳細を示す。
【図2】図2は、最大スロットルバルブコンダクタンスの関数として、気化器出口から真空チャンバへの有効コンダクタンスの計算値をプロットする。
【図3】図3は、別の蒸気送達システムを備えたイオン源を示す。
【図4】図4は、真空チャンバの中への固体供給物質からの昇華蒸気の正確に制御された流れを生成するための制御設定点を採用するシステムをブロック図で示す。
【図5】図5は、図4と類似の形態で、昇華蒸気の正確に制御された流れを生成するためのシステムを示す。図5は、真空ドーピングプロセスへの半導体ドーパントの流れを示す。
【図6】図6は、図4と類似の形態で、昇華蒸気の正確に制御された流れを生成するためのシステムを示す。図6は、半導体基板の表面への高真空イオン注入のためのイオンビームを生成するイオン源への流れを示す。
【図7】図7は、図4と類似の形態で、昇華蒸気の正確に制御された流れを生成するためのシステムを示す。図7は、質量分解注入ドーパントイオンを半導体基板の表面に注入するための高真空イオン注入チャンバのイオン源への流れを示す。
【図7−1】図7Aは、閉じている場合のバタフライ型スロットルバルブのクリアランスを、概略図の形態で示す。図7Bは、有用範囲のより低領域にある場合のバタフライ型スロットルバルブのクリアランスを、概略図の形態で示す。図は、有用範囲のより上方領域にある場合のバタフライ型スロットルバルブのクリアランスを、概略図の形態で示す。
【図7−2】図7Dは、図10、11および12を生成するために使用される1.4インチスロットルバルブのNコンダクタンスの計算値を示す。
【図7−3】図7Eは、閉じた場合のゲート型スロットルバルブのクリアランスを示す。図7Fは、10%開いた場合のゲート型スロットルバルブのクリアランスを示す。図7Gは、30%開いた場合のゲート型スロットルバルブのクリアランスを示す。
【図8】図8は、イオン注入器のイオン源へ供給蒸気を送達するための、本発明の蒸気送達システムの好ましい実施形態の上面図を示す。
【図8A】図8Aは、イオン注入器のイオン源へ供給蒸気を送達するための、本発明の蒸気送達システムの好ましい実施形態の側面図を示す。
【図9】図9は、図8の蒸気送達システムの概略図を示し、本発明の実施のための顕著な制御点を示す。
【図10】図10は、開ループ条件下で、そして一定気化器温度で、半導体ドーパント固体供給物質デカボランを使用する、気化器から図8および9の実施形態のスロットルバルブを通ってイオン源への蒸気の流れをグラフ化する。
【図11】図11は、図8および9の構成に対する、バタフライ回転角の関数として、スロットルバルブの直ぐ下流にある制御圧力ゲージの圧力を示す。
【図12】図12は、図8および9の蒸気送達システムの有効Nコンダクタンス(1秒当たりのリットル単位で)を示す。
【図13】図13は、設定点圧力が変化するときの図8〜12の蒸気送達システムの段階的な応答を示す。
【図14】図14は、上記蒸気送達システムの遠隔実施を示す。
【図15】図15は、上記気化器の温度が、上記スロットルバルブの動的範囲に適合するように周期的に更新される場合の、固体供給物質が消費されるにつれての経時的なバルブ位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(詳細な説明)
図1Aは、イオン源10のダイヤグラムである。その構成およびそのイオン化作用の好ましい様式の詳細は、Horskyら、国際出願第PCT/US03/20197号(2003年6月26日出願):「An ion implantation device
and a method of semiconductor manufacturing by the implantation of boron hydride cluster ions」およびHorskyら、米国特許出願第10/183,768号(2002年6月26日出願):「Electron impact ion source」、米国特許第6,686,595号に詳細に開示され、これらの各々は、本明細書中で参考として援用される。イオン源10は、取り付けフランジ36を介してイオン注入器から外に出た真空チャンバにつなぐように作製される。従って、図1Aに示されるフランジ36の右側のイオン源10の部分は、高真空下(1×10−4Torr未満の圧力で)にある。このイオン源は、高電圧電源により高い電圧に維持され、そして高真空ハウジングの残りの部分から電気的に隔離されている。ガス状物質は、イオン化チャンバ44に導入され、そこでそのガス分子は、電子ビーム70Aまたは70Bからの電子衝撃によりイオン化される。この電子ビームは、反対側の開口部71Bまたは71Aを通ってイオン化チャンバ44を出るか、あるいはビームダンプ(beam dump)またはビームダンプとして作用するそのチャンバの壁により吸収され得る。図1Bに示される単一の電子銃およびビームダンプを組込む1つの実施形態では、電子ビームは、電子銃112のカソードから生じて、磁石130および磁極片125によって生成される磁場135により曲げられ、電子入口開口部71Aまたは71Bを通ってイオン化チャンバ44に入り、その結果、電子ビーム70Aまたは70Bが細長いイオン抽出開口部81に平行に移動する。イオン化チャンバ44を離れた後、電子ビーム70は、イオン化チャンバ44の外部に位置するビームダンプ72により止められる。従って、イオンは、イオン抽出開口部プレート80中のスロットとして現れるイオン抽出開口部81に隣接して生成される。次いでこのイオンは、抽出され、イオン抽出開口部プレート80の前に位置する抽出電極(示さず)によってエネルギーをもつ電子ビームに形成され、そして実質的に低電圧に保持される。
【0036】
図1Aを参照して、ガスは、ガス導管33を介してイオン化チャンバ44に供給され得る。デカボランおよびオクタデカボランのような固体供給物質は、気化器28中で気化され得、そしてその蒸気は供給源ブロック35内の蒸気導管32を経由してイオン化チャンバ44に供給される。代表的には、イオン化チャンバ44、イオン抽出開口部80、供給源ブロック35(蒸気供給導管32を含む)および気化器ハウジング30は、すべてアルミニウムで製作される。穿孔された分離バリア34aの下に位置する固体供給物質29は、気化器ハウジング30の閉ループ温度制御により均一の温度に保持される。バラスト容積31に蓄積する昇華された蒸気50は、導管39を通ってそしてスロットルバルブ100および閉鎖バルブ110を通って供給される。スロットルバルブ100と閉鎖バルブ110との間の蒸気50の見かけ上の圧力は、静電容量型圧力計圧力ゲージ60によりモニタリングされる。蒸気50は、供給源ブロック35の中に位置する蒸気導管32を通ってイオン化チャンバ44に供給される。従って、ガス状物質および気化された物質の両方がこのイオン源によりイオン化され得る。
【0037】
イオン化チャンバ44への蒸気の流れは、蒸気供給導管32の直前の領域、すなわち閉鎖バルブ110内の蒸気圧により決定される。これは、スロットルバルブ100と閉鎖バルブ110との間に位置する静電容量型圧力計圧力ゲージ60により測定される。一般に、流量は、蒸気圧に比例する。これにより、圧力シグナルが流れを示すことが可能になり、圧力シグナルが流れを選択するための設定点として使用されることが可能になる。蒸気イオン源への所望の蒸気流れを発生するために、気化器ハウジング30は、スロットルバルブ100がその完全開位置にあるとき、所望の流量が超過されるような温度に設定される。次いで、スロットルバルブ100は、所望の圧力出力に到達するように調節される。経時的に安定な流れを確立するために、気化器温度および蒸気圧の別個の閉ループ制御が、Omron E5CKデジタルコントローラのような二重のPIDコントローラを使用して実施される。その制御(フィードバック)変数は、温度についての熱電対出力および圧力についてのゲージ出力である。
【0038】
示される特定のイオン源は、完全に温度制御された電子衝撃イオン源である。イオンを生成するためのアーク放電プラズマをぶつける代わりに、このイオン源は、1つ以上の集束した電子ビームの形態で注入されるエネルギーをもつ電子による、プロセスガスの「ソフトな」電子衝撃イオン化を使用する。この「ソフトな」イオン化プロセスは、大きな分子を維持し、イオン化されたクラスターが形成される。図1Aおよび図1Bに示されるように、固体水素化ホウ素が気化器で加熱され、そして蒸気導管を通って金属チャンバすなわちイオン化チャンバに流される。このイオン化チャンバの外部に位置する電子銃は、エネルギーをもつ電子の高電流ストリームをイオン化チャンバに送達する;この電子ストリームは、そのチャンバの前の拡張されたスロットと大体平行にそしてそれに隣接して方向付けられる。イオンは、このスロットからイオン抽出電極により抽出され、エネルギーをもつ電子ビームが形成される。イオン化チャンバへの昇華された水素化ホウ素蒸気の輸送の間、すべての表面は、気化器の温度よりも高い(が分解温度よりも十分に低い)温度に保持され、その蒸気の凝縮が防がれる。試験の長い時間に渡って、出願人らは、この蒸気供給およびバルブの表面が実際に清浄なままであることを確認している。
【0039】
蒸気スロットルバルブは、変化するコンダクタンスを有する蒸気通路を提示する。図7E、7Fおよび7Gは、それぞれ、閉じたゲートバルブ、第1の量だけ開いたゲートバルブ、および第2のより多い量だけ開いたゲートバルブ(最高コンダクタンスのスロットルバルブとして機能する)を図示する。
【0040】
図1にダイヤグラムにより一般的に示されるように、蒸気送達システムは、真空チャンバ130への昇華蒸気の定常流れを送達するために提供される。この真空チャンバは、上記のイオン化作用とは異なるイオン化作用を有するイオン化チャンバであってもよく、またはその蒸気が他の物質と相互作用する真空加工チャンバであってもよい。この蒸気送達システムは、気化器28、機械式スロットルバルブ100、および圧力ゲージ60から構成される。蒸気の流量は、気化器28の温度および上記気化器と上記真空チャンバへの入口導管32との間に置かれる機械式スロットルバルブ100のコンダクタンスの両方により決定される。気化器28の温度は、閉ループ制御35により、設定点温度に決定される。機械式スロットルバルブ100は、電気制御され、すなわち、そのバルブ位置は、圧力ゲージの出力に対する閉ループ制御120の下にある。蒸気の流量は、その圧力ゲージ出力に比例して保持され得る。
【0041】
記載される蒸気送達システムは、真空システム中へ、例えばイオン源のイオン化チャンバ中へ、そしてより一般的には真空チャンバ内で実施される操作へ、長時間にわたって制御された蒸気流れを送達することにおける本来的な課題を満たす。このシステムによって、特定の規則を観察することが可能になる。このことは、特にデカボランまたはオクタデカボランのような低温物質を使用する場合に、先行するシステムに優る以下の顕著な利点を提供する。
【0042】
・気化器中の温度、従って蒸気圧をできるだけ低くする;
・一連の送達の蒸気コンダクタンスをできるだけ大きくする;
・高コンダクタンス、加熱可能バルブを使用する;
・最大構成要素温度を低く、例えば水素化ホウ素に対しては150℃未満に維持する;
・蒸気に対する表面接触を与えるすべての表面を温度制御し、凝縮を防ぐ;
・質量流れを直接測定しようとするよりはむしろ、スロットルバルブの下流の圧力についてループを閉じ、従来のMFCに対する必要性を排除する;
・供給物質が消失するにつれて、経時的に気化器温度を上方に調整することを可能にして、気化器による完全な消費を可能にし、そしてスロットルバルブをそのコンダクタンスの動的範囲の「スイートスポット」で作動することを可能にすることにより圧力サーボループを安定化する。
【0043】
当然、これらの規則はすべてが独立しているわけではなく、これらの変数は、互いに関連しているが、しかし各規則は、先行するシステムに見出される別個の問題を解決するかまたは改善しており、そのことが明瞭に述べられるべきである。
【0044】
昇華した気相物質を連続的なポンプを用いて真空チャンバに送達することを意図された閉ループ制御の圧力ベースのシステムの形式は、明確な法則に従う。再び図1を参照して、固体物質29は、レザバ31に収容される蒸気50に気化される。この蒸気は、気化器出口39を通ってレザバ31を出て、スロットル(または「スロットリング」)バルブ100の前で蒸気圧を生成する。スロットルバルブ100の向こうに圧力ゲージ(またはセンサー)60が存在し、相対的に流れを制限する蒸気導管32につながれ、この蒸気導管32は、真空チャンバに導く流れ制限を示す。スロットルバルブ100および圧力センサ60は、閉ループコントローラ120と組合せて、そのスロットルバルブのコンダクタンスの閉ループ制御により、(導管32の前の)スロットルバルブ100を越える圧力を制御するための手段を提供する。従って、スロットルバルブ100が開いている程度(バルブ位置)は、圧力センサの出力に対してループを閉じることにより、リアルタイムで能動的に設定され、従ってそのバルブ位置を下流の圧力設定点にサーボ機構制御する。真空チャンバ130への蒸気の流量は、この下流圧力および蒸気出口導管32のコンダクタンスにより決定される。一般的な命名法のもとでの導管32は、この流れ制御システムの「計量セクション」として特徴付けられる。導管32は、蒸気を真空チャンバ130に導入し、他方所望の値の真空は、真空ポンプ135により真空チャンバ130中で維持される。
【0045】
このようなシステムにおける流れに対するガスの基本的な動的要件は、制御されるべきその物質の気相圧力が、真空チャンバ130におけるよりも蒸気レザバ31において高いことである。圧力ベースの質量流れ制御は、このようなシステムにおいて、真空系における流れを支配する基本方程式考慮することにより、実施される。モデル化するための最も単純な場合は、ガス分子平均自由行程がその真空系の物理的寸法に対して大きい分子流れの場合である。分子流れの状況(regime)は、例えば蒸気通路のいずれの位置での圧力も<<1Torrである本発明のシステムを使用するイオン注入システムへの蒸気流れを記述するのに適切である。任意のこのようなシステムについて、任意の2点間の質量流量は、目的のその2点の各々における圧力Pとその2点間のコンダクタンスCが既知であれば、計算され得る。
【0046】
計量セクション32に対する質量流れ方程式は、
(1)Q(計量セクション)=(P(圧力センサー)−P(真空チャンバ))(C(計量セクション))
である(Qは、例えばg/秒単位の質量流れまたはスループットを表す)。
【0047】
P(真空チャンバ)<<P(圧力センサ)である場合(これは、C(計量セクション)<<S(真空チャンバ)[すなわち、真空チャンバ130におけるポンプ輸送速度S]であれば、非常に低質量流量である場合に当たる)、式(1)は、
(2)Q(計量セクション)≒(P(圧力センサー))(C(計量セクション))
へと単純になることに留意のこと。
【0048】
定常状態流れに対するガス動力学の連続性の要件から、そして定義された流れ通路から、蒸気レザバ31の下流の送達連鎖の任意の点におけるQは、その他の送達連鎖の任意の他の場所におけるQと等しくなければならない。従って、
(3)Q(スロットルバルブを横切る)=Q(計量セクション)
である。
【0049】
蒸気レザバ31からスロットルバルブ100までのコンダクタンスは、C(計量セクション)と比べて大きいことに留意する。P(上流)を気化器からの気化器出口39での圧力と定義すれば、
(4)Q(スロットルバルブを横切る)=(P(上流)−P(圧力センサ))(C(スロットルバルブ))
である。
【0050】
Qが上記連鎖全体で保存されるので、
(5)Q(スロットルバルブを横切る)=Q(計量セクション)=(P(上流)−P(真空チャンバ))(C(上流−真空チャンバ))
であることも明らかである。
【0051】
分子流れであり、かつ発散効果(beaming effect)がない一続きのコンダクタンスであり、かつ散発的な出口損失がない単純な場合に対して、全体のコンダクタンスは、
(6)1/C(全体)=1/C+1/C+1/C...1/C
この場合に対しては、上記気化器からの蒸気出口と真空チャンバ130との間の有効コンダクタンスを計算し得ると:
(7)1/C(上流−真空チャンバ)=1/C(スロットルバルブ)+1/C(計量セクション)
項を整理すると、
(8)C(上流−真空チャンバ)=((C(スロットルバルブ))(C(計量セクション))/(C(スロットルバルブ)+C(計量セクション))。
【0052】
図2にプロットされるこの方程式は、上記送達システムのための所望の動的範囲を達成するために上記スロットルバルブの適切な最大コンダクタンスを見積もるために使用され得る。例えば、図2は、C(スロットルバルブ最大)=C(計量セクション)である場合、達成可能な最大全コンダクタンスは、計量長さのコンダクタンス(すなわち、上記導管32のコンダクタンス)の1/2に過ぎないことを示す。気化された物質とともに作動する場合(その場合は、作業蒸気圧(および、本発明における場合、従って上記気化器温度)を低くすることが有利である)、少なくとも約5:1かまたは10:1かそれ以上でさえあるC(スロットルバルブ最大)/C(計量セクション)比は、所定の計量長さのコンダクタンスに対する蒸気流速の動的範囲を最大にするために有利である。
【0053】
図3は、イオン注入器中でデカボランイオンまたはオクタデカボランイオンを生成するために適したイオン源を断面で示す。それは、図1Aに示されるようなスロットルバルブとしてゲートバルブ100を使用するよりはむしろ、バタフライ型の機械式スロットルバルブ100’を描写する点で図1Aおよび図1Bとは異なる。
【0054】
この図に示されるバタフライ型スロットルバルブ100’の例では、可動要素は、円筒状の通路に密にフィットするサイズの円形の流れ妨害ディスクであり、その通路の軸に直交して存在するディスクの直径の周りで回転するように取り付けられる。それは、制御されたコンダクタンスの蒸気通路を提示する(図7A、7Bおよび7Cを参照のこと)。
【0055】
気化器からイオン化チャンバまでの蒸気通路は、明瞭に示される。図3の蒸気導管150は、図1、1Aおよび1Bの蒸気導管32(計量セクション)と同じ機能を果たす。この供給源では、(例えば、デカボランまたはオクタデカボランのような)固体水素化ホウ素物質140が、気化器145によって昇華物蒸気165に加熱され、この昇華物蒸気165は、気化器出口ポート155を通り、バタフライ型スロットルバルブ100’を通り、隔離バルブ160を通り、蒸気導管150を通り、そしてイオン化チャンバ170の中へ通過し、そこで蒸気は電子ビーム175によりイオン化される。イオン源の電位とは大きく異なるある電位にある抽出電極(示さず)は、イオン化チャンバ170の前プレート190にある縦方向スロット185を通してイオンビームを抽出し、形成する。
【0056】
図4は、より詳細に、利用地点270へと真空チャンバ260への蒸気流れを提供するように設計された本発明の1つの実施形態を図示する。真空プロセス、例えば化学的気相成長(CVD)プロセスまたは低圧CVD(LPCVD)プロセス、あるいは薄膜(例えば、窒化ホウ素のようなホウ素含有薄膜)が工作物の上に堆積される他のプロセスが、実施され得る。気化器205に存在する固体供給物質200は、気化器ハウジング210を室温よりも上の温度Tへ加熱することにより、明確な温度に保持される。気化器ハウジング210内に収容される抵抗加熱器は、デジタル蒸気供給コントローラ220内の気化器加熱器制御215により能動的に制御される。気化器加熱器制御215は、(例えば、Omron モデルE5CK−AA1−500のような)閉ループPIDコントローラを組込み、このコントローラは、デジタル蒸気供給コントローラ220からの設定点温度を受け取り、気化器ハウジング210内に包埋される熱電対(TC)出力225により提供される温度読み戻し(read back)に基づきそのループを閉じ、そして可変電力248を、例えばパルス幅調節された加熱器電圧の形態で、上記抵抗加熱器に提供する。供給物質200から生成された蒸気は、スロットルバルブ235の上流の気化器出口230を通過する。スロットルバルブ235の目的は、圧力ゲージ240が特定の設定点圧力値に到達するように、そのバルブの下流の蒸気流れを減らすことである。この設定点圧力値は、デジタル蒸気供給コントローラ220により閉ループスロットルバルブ位置制御245に提供され、この閉ループスロットルバルブ位置制御245は、スロットルバルブ235を(位置シグナル247をスロットルバルブアセンブリに組込まれたモータに送ることにより)ゲージ出力250が設定点値に等しい機械的位置へサーボ機構制御する。すなわちスロットルバルブ位置制御245は、ゲージ出力250に基づきそのループを閉じる。2つの設定点値、加熱器設定点値および圧力設定点値は、デジタル蒸気供給コントローラ220へ、ユーザーインターフェースを介して手動によるか、または高められた自動化能力を提供するコード化された手順により提供される。スロットルバルブ235がバタフライバルブ(例えば、Nor−Cal モデル040411−4)を備える場合には、Nor−Cal モデルAPC−200−Aにより提供されるようなスロットルバルブ位置制御が使用され得る。蒸気が接触するようになるすべての表面は、少なくとも気化器温度まで、またはそれよりいくらか高くまで加熱される。従って、スロットルバルブ235および圧力ゲージ240は、通路壁(計量セクション232の通路壁を含めて)と同様加熱される。100℃と150℃との間の温度が、気化器205において代表的に使用される供給物質の凝縮を防ぐのに十分である。図4に示される構成においてデカボランで実施する場合の代表的な気化器温度は、25℃から40℃の範囲であり、他方例えば、オクタデカボランに対しては、それは80℃と120℃との間である。従って、MKS Baratron モデル628B−22597または631A−25845のような加熱された静電容量型圧力計が圧力ゲージ240として使用され得る。このようなゲージは、数ミリTorrから数Torrの範囲の圧力を読み取り得、そしてこの用途に適している。特定の場合では、100mTorrまたは500mTorrのいずれかの最大圧力(フルスケール示度)を読み取るように製造業者から構成されたゲージが使用され得る。このような圧力限界は、20mTorrと約100mTorrとの間の制御ゲージの読みに対して、優れたシグナル対ノイズ比を提供するように選択される(範囲の最低部近くのシグナルは、ノイズが多くなりがちであり、潜在的にサーボループをあまり安定にはしない)。
【0057】
適切な設定点圧力は、真空チャンバ260中の蒸気の所望の分圧、およびスロットルバルブ235と真空チャンバ260との間の蒸気コンダクタンスにより決定される。
【0058】
図5は、真空環境中で蒸気流れ227が半導体工作物280にぶつかるプロセスを示す。このようなプロセスは、薄膜堆積プロセス、例えばポリシリコン膜またはシリコン−ゲルマニウム膜の製造であり得、そのプロセスでは、ドーパント含有蒸気が、膜成長の間、半導体膜のP型ドーピングまたはN型ドーピングを可能にする。別の重要な用途は、プラズマドーピング(PLAD)である。PLADでは、基板は、真空チャンバから電気的に隔離されたプラテン上に保持され、ドーパント蒸気が導入され、そしてプラズマがそのプラテンに隣接して形成される。1つ以上の高電圧パルスがそのプラテン、従って基板に印加され、そしてプラズマのエネルギーをもつイオンが引き抜かれてその基板をドーピングする。
【0059】
図6は、イオン注入を実施するためのイオンビームを形成するために、蒸気がイオン源に供給されるシステムを示す。蒸気は、スロットルバルブ235を通り、イオン源285の蒸気導管228を通り、そしてイオン源285のイオン化チャンバ287中に通る。イオン化チャンバ287は、高電圧に保持される。蒸気は、イオン化チャンバ287内で適切なエネルギー化手段によりイオン化される;一旦、イオンが生成されると、それらは、排気されたチャンバの中に抽出され、抽出用光学機器290により加速され、そしてエネルギーをもつイオンビーム295へと形成される。この抽出用光学機器290は、イオン化チャンバの電圧とは実質的に異なる電圧にある。このイオンビームは、注入チャンバに向けられ、ドーピングのために半導体基板298に注入される。このプロセスは、例えば、フラットパネルディスプレイを作製するための大サイズのガラスパネル上のポリシリコンコーティングへのイオン注入(FPDドーピング)であり得る。このようなシステムにより生成されるイオンビームは、質量分析さてもよいが、大抵は質量分析されない。このイオン源は、代表的には、非常に大きく、そのイオン化チャンバは、実施されようとするパネルのより短い寸法よりも多少大きい1つの寸法を有し、それは1メートル長またはそれより大きくあり得る。代表的なシステムでは、イオンの固定の「リボン」ビームがイオン源から抽出され、フラットパネル上に集束され、他方そのパネルは、パネルの長いほうの寸法に沿ってビームを横切って機械的に走査される。このプロセスは、ディスプレイパネルの周辺に沿ってCMOSドライバ回路を有するFPDを製造する際、例えば、薄膜トランジスタベースのテレビまたはコンピューターモニターを製造する際に重要である。
【0060】
図7は、質量分析を有する従来のビーム線イオン注入器の場合に適合されたシステムを示す。イオンビーム295が、抽出用光学機器290によりイオン源285から抽出された後、そのビームは分散性双極子電磁石の中へ通り、この分散性双極子電磁石は、未分解のビーム295を、当該分野で公知のように、そのイオンの質量対電荷比に従って間隔を空けて分けられたビームレット(beamlet)に分離する。この電磁石電流およびこれにより曲がった、分散性双極子場は、特定の質量対電荷比(または、分解開口部297の幅に依存して、特定の好ましい範囲の質量対電荷比)を有するイオンのみが分解開口部297により半導体基板へ通されれるように、調整され得る。
【0061】
半導体ウエハ(例えば、シリコン結晶)中へイオンを注入するために、イオン化チャンバ287は、約100ml未満の容積を有し、そしてチャンバへの昇華蒸気の最大流れは、1sccmのオーダーである。
【0062】
図7A〜7Cは、定性的な様式で、以下に大体対応するバタフライバルブの相対的位置を図示する:図7A中:閉位置;図7B中:7.5°回転;図7C中:15°回転。回転位置は、ロータリーステッパーモータにより電気制御される。バタフライの回転可能な円形プレートBの外周とその円筒状ハウジングHとの間のクリアランスは、C<C’<C”により示され、ここでCは、数千分の1インチの「閉」位置での最小クリアランスである。図7Dは、1.4インチ直径の円形バタフライに対する回転角の関数としてのNコンダクタンスの計算値を示す。図7A〜7Cに対応する点は、図7Dの曲線上に印をつけられており、そしてそれぞれ、約0リットル/秒、2リットル/秒および8リットル/秒にほぼ等しい。
【0063】
図7E〜7Gは、定性的な様式で、スロットルバルブとし用いられるスライド式ゲートバルブの相対的位置を図示する(図1Aおよび図1Bを参照のこと)。示されるのは、図7E:閉位置のゲートG;図7F:10%開いたゲートG;図7G:30%開いたゲート(G)である。ゲートバルブは、約0.5インチ〜2.5インチの種々の直径で利用可能であり、遮断バルブ(閉のとき、シールする)およびスロットルバルブ(バルブアクチュエータを作動するステッパーモータとともに)の両方として機能する。このバタフライバルブは、シールバルブではない;すなわち、それは、閉のとき、小さいが有限のコンダクタンスを有する。
【0064】
図8および8Aは、イオン注入器のイオン源(例えば、図3のイオン源)に蒸気を提供するための蒸気送達システムの好ましい実施形態の2つの図を示す。そのバルブ連鎖の全長は、最小にされ、そしてイオン源に密に結合するように設計されている。示されるのは、気化器400、気化器隔離バルブV1、410、バルブアクチュエータ415、(V3(示さず)に連結する)排気ポート420、スロットルバルブTV1、430、スロットルバルブモータアクチュエータ435、イオン源隔離バルブV2、440、V2アクチュエータ445、加熱された静電容量型ゲージG1、450、NベントバルブV4、460である。
【0065】
図9は、図8の蒸気送達システムの概略図を示し、顕著な制御点を示す。この蒸気送達システムは、オペレータインターフェース700を通して制御されるように描かれており、そのオペレータインターフェース700を通してオペレータがバルブV1、410(気化器隔離バルブ)、バルブV2、440(イオン源隔離バルブ)、バルブV3、441(荒引き真空バルブ)、バルブV4、460(ベントバルブ)、およびバルブTV1 430(スロットルバルブ)を開閉するための入力を提供し得る;これらのバルブのすべてが、バルブの状態を確認するためのオペレータインターフェースに対する読み戻しを提供する。V3は、2つの隔離バルブV1とV2との間に置かれ、そしてこれら2つのバルブの間のデッドボリュームを排気することが必要な場合、例えば、気化器400が修理点検のためか再充填のために(V1とともに)取り除かれて交換された後、開かれる。同じ様式で、V4を使用して、このデッドボリュームを排気して、構成要素の取り外し(例えば、気化器400の取り外し)の準備をする。他の使用者がアクセス可能な入力としては、3つの温度設定点が挙げられる:気化器400に対するPID1、バルブV1〜V4およびTV1に対するPID3、および図3の蒸気導管150を含むイオン源ブロックに対する温度設定点。一般に、蒸気と接触するようになるすべての表面は、この気化器の温度と少なくとも同程度に高い温度に維持される。イオン源設定点温度>PID3>PID1を維持することが好ましい。従って、イオン源ブロックを介して、導管150の表面は、好ましくは、PID3の設定点よりも高い温度に維持される。PID2は、スロットルTV1、430の位置を調整する閉ループコントローラであり、圧力ゲージG1、450により読取られる圧力値をその設定点値に動かす。加熱された圧力ゲージG1、450に対するこの圧力設定点は、オペレータインターフェースに読み戻される。この圧力読み戻しシグナルは、スロットルバルブTV2とイオン源への蒸気導管(図3における蒸気導管150)との間の蒸気圧を示し、TV1位置の閉ループ制御のための制御シグナルを提供する。上記イオン源のイオン化チャンバ170へと蒸気導管150を通る蒸気の流量は、ほぼこの入口圧力に比例するので、PID2を介する安定かつ再現性のある入口圧力を提供することは、イオン化チャンバ170内での安定かつ明確な圧力を可能にし、次いでこれは、上記イオン源から抽出されるべき非常に安定なイオン電流を可能にする。
【0066】
図10は、図9の蒸気送達システムを使用する、図3のイオン源へのデカボラン蒸気の流れをプロットする。図7A、7Bおよび7Cに概略を示したバタフライ型スロットルバルブの位置が図9の曲線上に示される。この蒸気送達システムの有用な動的範囲は、約10倍(30℃の気化器温度に対して、約0.1sccm(1分間あたりの標準状態のcc)〜1.0sccmを越える)の範囲に及び、このことは、上記スロットルバルブの上流の一定蒸気圧を送達する。より高い流れを得るために、より高い気化器温度が使用される。イオン源により消費されるイオン注入器に向けた代表的なガス流量は、約2sccm未満である。従って、蒸気送達コンダクタンスおよび圧力は、図2および付随する本文に示されるように、必要とされる蒸気流速およびイオン源入口のコンダクタンスに調整され、これは図12の考察においてさらに展開される。
【0067】
図11は、図3および8〜10に例示されるシステムにおけるスロットルバルブの回転制御圧力ゲージ450の応答を示す。約40mTorrの圧力ゲージ圧力(上記イオン源への入口での圧力)でのイオン化チャンバ170内の蒸気圧は、約1mTorrであるが、他方上記スロットルバルブ(気化器の出口)の上流の圧力は、約65ミリTorrである。従って、最大の圧力低下は、図3のイオン源の蒸気導管150を横切る。図3のイオン源は、例として約0.5リットル/秒のNコンダクタンスを有する。
【0068】
図12は、図3および8〜10の蒸気送達連鎖全体の有効Nコンダクタンスを、バタフライ型スロットルバルブの回転角の関数としてプロットする。このスロットルバルブが開のとき、このシステムの全コンダクタンスは、そのイオン源の蒸気導管150のコンダクタンスにほぼ等しい。上記スロットルバルブのコンダクタンスの動的範囲は、そのシステムの最小コンダクタンス(この場合はイオン源への導管150のコンダクタンス)に合致されるべきである。例としての図3の蒸気導管150は、直径約1cm、長さ25cmの円筒状ボアである。より大きいかまたはより小さいコンダクタンスのイオン源入口導管に対しては、それぞれにより大きいかより小さいスロットルバルブ(その動的範囲にわたって、それぞれにより大きいかより小さいコンダクタンスを備えたスロットルバルブ)が使用されるべきである。本明細書中で開示される蒸気送達システムは、凝縮した蒸気によって容易には詰まらない「開」バルブおよび通路構造(高コンダクタンス)の使用を可能にする。さらに、すべてのバルブおよび連結要素は、容易に気化器温度よりも高い温度に保持される。例えば、ここで図9を参照して、デカボランを使用する操作に対して、気化器は30℃に維持され、V1〜V4およびTV1は50℃であり、圧力ゲージG1は100℃であり、そしてイオン源は50℃より高くに保持される。この連鎖を下る連続する要素の温度のこの「段階設定」は、昇華した蒸気のあらゆる顕著な凝縮を防ぐ。重要なことは、気化器に続く高コンダクタンス要素の使用は、所望の流量に到達しそれを維持するために必要とされる蒸気圧、従って気化器温度を最低にする。これは、気化器中に保存される水素化ホウ素または他の固体供給投入物の有用寿命を伸ばす。なぜなら、それらは高温で解離したり、温度の強い関数である反応物と重合したりすることが公知だからである。
【0069】
実施の所望の範囲にわたって、上記スロットルバルブの最大Nガスコンダクタンスは、少なくとも毎秒1リットルかそれより大きく、そしてスロットルバルブが完全に開いている場合のそのバルブを横切る圧力低下は、100mTorr未満であり、好ましい場合には、しばしば25mTorrである。
【0070】
上記の図10〜12のすべては、説明の目的のために、スロットルバルブのいわゆる「開ループ」操作を示す。すなわちそこではバルブ位置が独立変数として設定されている。図13は、その通常の「閉ループ」様式で操作される場合の、上記蒸気送達システムの時間特徴を示す。この様式では、ここで図7を参照して、圧力設定点は、デジタル蒸気供給コントローラ220によりスロットルバルブ位置制御245に提供される。この位置制御は、バルブ位置を制御圧力ゲージ出力250と圧力設定点値との間の「エラー」を最少にするように調整する。このことは、例えば、速度および沈降時間、ならびにオーバーシュートの程度のような明確な応答特徴を有するようにプログラムされ得るいわゆるPID(比例積分微分)制御ループにより達成され得る。Nor−Cal モデルAPC−200−Aは、バタフライバルブの円形プレートが取り付けられているシャフトを回すステッパーモータに連結されたこのようなPIDコントローラを組み込む。(ここで、この例で使用されるバタフライバルブは、真空チャンバでポンプ輸送速度を絞る根本的に異なる用途、つまり下流圧力制御用途のためにその製造業者によって設計されたものであるが、他方本発明はこのハードウェアを「上流」制御、真空チャンバへのガスの導入のために使用することを指摘するべきである。同様に、上流スロットル制御を達成するためのモータ制御下のシールゲートバルブの使用は新規と考えられる)図13の時間特徴を生成するために、3つの異なる圧力設定値(20mTorr、30mTorr、および40mTorr)がグラフィカルユーザーインターフェースを介してデジタル蒸気供給コントローラ220に、データを生成するための約10秒の間隔をおいて、ランダムに入力される。図13は、オクタデカボラン(B1822)供給物質を使用する場合の、このシステムの急激な沈降時間および優れた再現性を示す。詳細に図13を参照して、時間=0秒で制御圧力は20mTorrを読み;T=10秒で30mTorrの設定点(SP1)がオペレータによりコントローラ220に入力される;T=25秒で20mTorrの設定点(SP2)が入力され、などSP7まで繰り返された。図13に記録された「段階的応答」特徴は、圧力の沈降時間は、代表的には数秒であり、安定性は良好であり、そしてオーバーシュートは最小であることを示す。
【0071】
図14は、図4〜7の蒸気送達システム遠隔実施を示し、例えば、気化器、スロットルバルブおよび他の流れ制御要素がイオン注入器のガス分配ボックス内に置かれており、そのイオン源を入口に連結するために、1メートルまでの長さの管が必要とされる。大直径の管(少なくとも直径1インチ)を使用することにより、その蒸気送達連鎖の全コンダクタンスは、顕著に減少され、図2に従ってイオン源の蒸気入口のコンダクタンスにより支配されるままである。
【0072】
図15は、上記蒸気送達システムのさらに重要な特徴を図示する。供給物質が気化する速度はその開放表面積の関数、特に固体−真空インターフェースの利用可能な表面積の関数であることは公知である。気化器内の粉末形態の供給物質が経時的に消費されるにつれて、この利用可能な表面積は着実に減少し、蒸気の発生速度が所望の蒸気流量を支持し得なくなるまで、上記スロットルバルブの前にある蒸気圧の低下をもたらす。これは、「発生速度制限」操作として公知である。従って、気化器内の所定の供給物質の新しい投入量を用いて、例えば、25℃という気化器温度が、その動的範囲の下端(例えば、図10の曲線上に示される点7Bにより示される)での見かけ上のスロットルバルブの位置で、必要とされる蒸気流量を支持する。時間経過後(例えば、供給物質の20%が消費された後)、図10の曲線上に示される点7Cに応じたバルブ位置は、その場合、同じ所望の流れを維持することが必要であり得る。ここで、このシステムの状態は、スロットルバルブがその動的範囲の変位の上限の近くにあるような状態である。適切な設備によって、この変位は、蒸気供給コントローラ220によって検知される。それは、図14のシグナル246によるような新しいより高温の加熱器設定点温度を気化器加熱器制御(またはレギュレータ)215に送る。蒸気供給コントローラは、常駐ルックアップテーブル情報を保有し、この情報によって蒸気発生の所望の増加およびスロットルバルブの前にある圧力増加を生成する次の温度変化の増分が決定される。例えば、名目上30℃の操作に対して、次の増分は2℃(32℃への変化)であり得る。この増分は、いったん気化器温度がその新しい値(図10の7Bに対する名目上のスロットルバルブ作動点)に落ち着くと、その動的範囲の変位の下端の近くに戻すように選択される。従って、デジタルコントローラ220が、設定点蒸気圧の短時間スケールの変化および気化器温度の長時間スケールの変化の両方に対応させる能力は、供給物質の投入量の寿命にわたる蒸気流れの制御を非常に強固なものにする。
【0073】
本発明の多くの実施形態が、説明された。しかしながら、種々の改変が本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。従って、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【符号の説明】
【0074】
10 イオン源
28 気化器
32 計量セクション
33 ガス導管
35、120 閉ループ制御
36 フランジ
44 イオン化チャンバ
60 圧力ゲージ
70 電子ビーム
100 機械式スロットバルブ
125 磁石片
130 真空チャンバ
135 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の制御システム。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8】
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【図8A】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−156047(P2010−156047A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286995(P2009−286995)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【分割の表示】特願2006−543941(P2006−543941)の分割
【原出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(502213379)セメクイップ, インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】