説明

固体撮像装置、撮像装置

【課題】色ずれを生じることなく、ダイナミックレンジの拡大を可能にする固体撮像装置を提供する。
【解決手段】電磁波を電荷に変換し、電荷量に応じた信号を出力する画素10を含み、画素10が2次元配置され、隣接する画素10において、電磁波を電荷に変換する、フォトダイオードPD及び転送トランジスタ21の部分の構成は同一であるが、電荷量と信号量との関係を異ならせることが可能である、画素部とを含む固体撮像装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、固体撮像装置及び固体撮像装置を備えた撮像装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサ(CMOS型固体撮像装置)においては、ダイナミックレンジを拡大する方法として、様々な方法が知られている。
そして、例えば、隣接する画素間で感度に差を与えることにより、ダイナミックレンジを拡大することが提案されている。
【0003】
このように、隣接する画素間で感度に差を与えてダイナミックレンジを拡大する方法としては、以下の方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
第1の方法は、開口率や透過率を隣接する画素で異ならせることによって、光の利用効率を変えて、感度に差を与える方法である。
第2の方法は、蓄積時間を隣接する画素で異ならせることによって、感度に差を与える方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−332880号公報([0003])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した2つの方法では、それぞれ以下に挙げるような問題点があった。
第1の方法では、2種類の感度とした場合に、実質的な画素数が1/2となり、その分解像度が下がる。そして、被写体の明度の差が少ない場合のように、ダイナミックレンジの拡大を必要としない場合でも、解像度が下がってしまう。また、開口率や透過率の小さい画素では、画素に入射する前までの損失が大きくなるため、被写体が暗い場合には得られる電荷が非常に少なくなる。
第2の方法では、手ぶれが生じていたり、被写体に動く物体が含まれていたりしたときに、エッジに色ずれ等が起こる。
【0006】
本技術の目的は、色ずれを生じることなく、ダイナミックレンジの拡大を可能にする固体撮像装置及び固体撮像装置を備えた撮像装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の固体撮像装置は、電磁波を電荷に変換し、電荷量に応じた信号を出力する画素を含む。また、画素が2次元配置され、隣接する画素において、電磁波を電荷に変換する部分の構成は同一であるが、電荷量と信号量との関係を異ならせることが可能である、画素部とを含む。
【0008】
本技術の撮像装置は、上記本技術の固体撮像装置と、固体撮像装置に入射光を導く光学系と、固体撮像装置の出力信号を処理する信号処理回路とを含む。
【0009】
上述の本技術の固体撮像装置の構成によれば、隣接する画素において、電磁波を電荷に変換する部分の構成は同一であるが、電荷量と信号量との関係を異ならせることが可能である構成となっている。
隣接する画素において、電荷量と信号量との関係(即ち、変換ゲイン)を異ならせることが可能であることから、変換ゲインが高く感度の高い信号と、変換ゲインが低く感度の低い信号とを、隣接するそれぞれの画素で得ることができる。これにより、ダイナミックレンジを拡大することができる。
一方、電磁波を電荷に変換する部分の構成は隣接する画素で同一であることから、隣接する画素で電荷の蓄積時間は同一になる。これにより、手振れがあったり、被写体に動きがあったりしても、色ずれを生じないようにすることができる。また、変換ゲインが低い画素において、得られる電荷は変換ゲインが高い画素と同様であり、充分な電荷が得られる。
【0010】
上述の本技術の撮像装置の構成によれば、本技術の固体撮像装置を含むので、固体撮像装置において、色ずれを生じることなく、ダイナミックレンジを拡大することができる。
【発明の効果】
【0011】
上述の本技術によれば、色ずれを生じることなく、ダイナミックレンジを拡大することができるので、ダイナミックレンジが大きく、画質の良好な固体撮像装置や撮像装置を実現することができる。
また、本技術によれば、同じ画素から信号を2回読み出す必要がなく、複雑な構成の固体撮像装置が不要であり、安価な構成でダイナミックレンジの拡大を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態の固体撮像装置の概略構成図(ブロック図)である。
【図2】図1の画素部の画素の回路構成図である。
【図3】図2の画素を駆動する駆動パルスのタイミングチャートである。
【図4】図1の各画素への配線の概略構成図である。
【図5】第2の実施の形態の固体撮像装置の画素部の画素の回路構成図である。
【図6】第2の実施の形態の固体撮像装置における画素共有の組み合わせを示す図である。
【図7】固体撮像装置の変形例の各画素への配線の概略構成図である。
【図8】第3の実施の形態の撮像装置の概略構成図(ブロック図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(固体撮像装置)
2.第2の実施の形態(固体撮像装置)
3.固体撮像装置の変形例
4.第3の実施の形態(撮像装置)
【0014】
<1.第1の実施の形態(固体撮像装置)>
第1の実施の形態の固体撮像装置の概略構成図(ブロック図)を、図1に示す。
図1に示すように、この固体撮像装置100は、センサ部となる画素部110と、画素部110を駆動させる垂直駆動回路120と、カラム処理回路130と、出力回路140と、制御回路150とを有している。
【0015】
画素部110は、入射した電磁波(光、電波等)を電荷に変換し、電荷の量に応じた信号を出力する画素が、多数2次元配置されて、構成される。
垂直駆動回路120は、画素部110の画素を駆動する。
カラム処理回路130は、1行分の画素からの画像信号を受けて、信号レベルとリセットレベルの差分をとり、さらに、アナログ/デジタル変換等を行う。
出力回路140は、カラム処理回路130からの画像信号を受けて、ゲインの調整や傷補正等を行って、外部に出力する。
制御回路150は、垂直駆動回路120、カラム処理回路130、出力回路140の各部に制御信号を送って、動作を制御する。
【0016】
なお、画素部110の画素で電気信号に変換する電磁波は、通常の固体撮像装置では可視光線や紫外線や赤外線等の光であるが、図1の固体撮像装置100のような本技術の固体撮像装置では、特に限定されるものではない。
本技術の固体撮像装置では、可視光線や紫外線や赤外線等の光、電離放射線、電波やマイクロ波等、様々な電磁波に対して、ある程度の波長範囲の電磁波を電気信号に変換する構成とすることができる。
【0017】
次に、図1の固体撮像装置100の画素部110の画素の回路構成図を、図2に示す。
図2に示す画素10は、従来の4トランジスタを有する画素と同様の回路素子を有している。即ち、フォトダイオードPDと、転送トランジスタ21と、フローティングディフュージョンFDと、リセットトランジスタ22と、増幅トランジスタ23と、選択トランジスタ24とを有して、画素10が構成されている。
図2に示す画素10は、さらに、フローティングディフュージョンFDとリセットトランジスタ22との間に、コンデンサC及びスイッチトランジスタ25を有している。
【0018】
光電変換素子であるフォトダイオードPDは、転送トランジスタ21を介して、フローティングディフュージョンFDに接続されている。
フローティングディフュージョンFDは、増幅トランジスタ23のゲートに接続されている。
増幅トランジスタ23のソース・ドレインのうち、一方は電源配線Vddに接続されており、他方は、選択トランジスタ24のソース・ドレインのうちの一方に接続されている。
選択トランジスタ24のソース・ドレインのうちの他方は、垂直信号線11に接続されている。
フローティングディフュージョンFDとコンデンサCは、スイッチトランジスタ25を介して接続されている。即ち、スイッチトランジスタ25のソース・ドレインのうち、一方はフローティングディフュージョンFDに接続されており、他方はコンデンサC及びリセットトランジスタ22のソース・ドレインのうちの一方に接続されている。
リセットトランジスタ22のソース・ドレインの他方は、電源配線Vddに接続されている。
転送トランジスタ21のゲートには転送パルスφTrfが供給され、リセットトランジスタ22のゲートにはリセットパルスφRstが供給され、選択トランジスタ24のゲートには選択パルスφSelが供給される。また、スイッチトランジスタ25のゲートにはスイッチパルスφSwが供給される。
なお、図2に示す画素10の各トランジスタ21〜25は、全てNMOSトランジスタであり、キャリアとなる電荷は電子である。
【0019】
増幅トランジスタ23は、フローティングディフュージョンFDの電位に対応した信号(画像信号)を生成する。そして、選択トランジスタ24がオン状態であれば、生成した信号(画像信号)を垂直信号線11に出力する。
リセットトランジスタ22は、オン状態となったときに、コンデンサC及びフローティングディフュージョンFDの電荷を電源配線Vddに捨てることによって、コンデンサC及びフローティングディフュージョンFDをリセットする。
【0020】
このような画素10の構成自体は、従来から提案されている(例えば、特表2009−505498号公報等を参照)。
【0021】
次に、図2の画素10を駆動する駆動パルスのタイミングチャートを、図3に示す。
選択パルスφSelをオン状態にすると、フローティングディフュージョンFDの電位を示す信号が垂直信号線11に現れる。
スイッチパルスφSwとリセットパルスφRstとを、共にオン状態にすると、コンデンサCとフローティングディフュージョンFDがリセットされる。リセットパルスφRstをオフ状態とすると、リセットレベルが垂直信号線11に現れるので、これをカラム回路が取り込み、保持する。
【0022】
ここで、図3において、実線で示す(1)スイッチパルスφSwをオンからオフにする場合と、破線で示す(2)スイッチパルスφSwをオンのままにしておく場合とがある。
(1)のスイッチパルスφSwをオンからオフにする場合には、フローティングディフュージョンFDは、コンデンサCと切り離されるので、小さい容量を持つ。フローティングディフュージョンFDは、容量が小さいので、少ない電子で電位が大きく下がり、高ゲインとなる。このような観点で、感度の高い信号が出る。ただし、信号電子が多いときには、フローティングディフュージョンFDから溢れてしまうので、入射量に応じた本来の信号を得ることはできない。
(2)のスイッチパルスφSwをオンのままにしておく場合には、フローティングディフュージョンFDがコンデンサCとつながり、大きい容量を持つ。容量が大きくなるので、多くの電子を受け止めることができる代りに、低ゲインとなり、感度が低くなる。
このように、スイッチトランジスタ25に供給するスイッチパルスφSwを変えることによって、電荷を保持する部分の容量を切り替えて、電荷量と信号量との関係(変換ゲイン)を切り替えることができる。
【0023】
その後、転送パルスφTrfをオン状態とすると、フォトダイオードPDからフローティングディフュージョンFDに信号電子が転送され、フローティングディフュージョンFDの電位が下がる。それに応じて、垂直信号線11の電位も下がるので、そのときの垂直信号線11の信号レベルをカラム回路が取り込み、先に取り込んだリセットレベルとの差分を取って保持し、後のタイミングで出力する。
【0024】
この構成の画素を使うことで、固体撮像装置の動作モードとして、高ゲインの動作モード、低ゲインの動作モード、ダイナミックレンジ拡大モードを実現できることが知られている。このうち、ダイナミックレンジ拡大モードでは、同じ画素から、高ゲインの信号の読み出しと、低ゲインの信号の読み出しとが行われて、これら2回読み出した信号が後段で合成される。
しかしながら、このダイナミックレンジ拡大モードでは、同じ画素から信号を2回読み出すため、動作が大きく変わってしまう、対応するカラム回路も複雑になる、フレームレートが半分に落ちる又はカラム回路が2倍必要、という代償を払うことになる。
つまり、ダイナミックレンジ拡大モードを使うためには、専用に設計した大掛かりな固体撮像装置が必要になる。
【0025】
これに対して、本実施の形態では、ダイナミックレンジの拡大を行っていない従来の構成と大差がない、簡易な構成の固体撮像装置によって、ダイナミックレンジの拡大を実現する。
【0026】
図1の固体撮像装置100の画素部110の各画素10への配線の概略構成図を、図4に示す。
図4において、垂直駆動回路120から出ている横方向の配線は、スイッチトランジスタSwのゲートを駆動する配線(以下、Sw配線と呼ぶ)12である。なお、垂直駆動回路120から出ている横方向の配線としては、このSw配線12以外にも、リセットパルスφRstを供給する配線、転送パルスφTrfを供給する配線、選択パルスφSelを供給する配線等があるが、図4では省略している。
縦方向の配線は、図2にも示した垂直信号線11である。それぞれの垂直信号線11は、各列の画素間に配置され、カラム処理回路130の対応する処理回路13に接続されている。
【0027】
画素部110では、画素10が縦横にマトリクス状に2次元配列されている。
そして、画素10は、白い四角形で示した画素10Aと、斜線を付した四角形で示した画素10Bとが、市松状に各行各列とも交互に配置されている。
【0028】
Sw配線12は、図中下から、12−1,12−2,12−3,12−4,・・・と符号を付している。Sw配線12は、図4では各行の画素間に配置されている。
それぞれのSw配線12(12−1,12−2,12−3,12−4,・・・)は、奇数列と偶数列とで、違う行の画素10に接続されている。即ち、Sw配線12は、左から奇数番目の列ではSw配線12の下の行の画素10が接続され、偶数番目の列ではSw配線12の上の行の画素10が接続されている。即ち、各行の画素において、左から奇数番目の画素と偶数番目の画素とが、交互にそれぞれ異なるSw配線12に接続されている。
さらに、下から奇数番目のSw配線12−1,12−3,・・・には、白い四角形の画素10Aのみが接続されており、下から偶数番目のSw配線12−2,12−4,・・・には、斜線を付した四角形の画素10Bのみが接続されている。
【0029】
なお、Sw配線12以外の画素の駆動用の配線は、Sw配線12と同じように1列毎に下の行の画素と上の行の画素と交互に接続されていても良いし、Sw配線12とは異なり、単純に横一線に同一行の画素に接続されていても良い。
【0030】
それぞれの垂直信号線11は、奇数行と偶数行とで、違う列の画素10に接続されている。即ち、垂直信号線11は、下から奇数番目の行では垂直信号線11の左の列の画素10が接続され、下から偶数番目の行では垂直信号線11の右の列の画素10が接続されている。
さらに、左から奇数番目の垂直信号線11には、白い四角形の画素10Aのみが接続されており、左から偶数番目の垂直信号線11には、斜線を付した画素10Bのみが接続されている。
【0031】
図2〜図4に示した構成においては、以下に挙げる3つの動作が可能である。
(1)全てのSw配線12をLowレベル(図3のオフ状態)とすることにより、全ての画素が高ゲインで読み出される。
(2)全てのSw配線12をHighレベル(図3のオン状態)とすることにより、全ての画素が低ゲインで読み出される。
(3)奇数番目のSw配線12−1,12−3,・・・をHighレベル(図3のオン状態)に固定して、偶数番目のSw配線12−2,12−4,・・・をLowレベル(図3のオフ状態)に固定する。これにより、白い四角形の画素10Aは低ゲインで読み出され、斜線を付した四角形の画素10Bは高ゲインで読み出される。
【0032】
本実施の形態では、これらの動作のうち、(3)の動作によって、ダイナミックレンジを拡大する。
(3)の動作では、隣接する画素間の感度を異ならせているが、従来提案されていた隣接する画素間の感度を異ならせる構成のように、開口の大きさや透過率で光の利用効率を異ならせるのではなく、蓄積時間を異ならせるのでもない。
電磁波を電荷に変換する部分の構成、即ち、フォトダイオードPDや転送トランジスタ21の構成は、隣接する画素で同一である。これにより、隣接する画素において、蓄積時間は同じであり、また、得られる電荷の量もほぼ同等である。
そして、(3)の動作では、フォトダイオードPDから読み出された電荷を保持する部分の容量を、大容量(FD+C)或いは小容量(FDのみ)というように、隣接する画素間で異ならせる。これにより、同じ画素でゲインを変えて2回の読み出しを行わなくても、各画素で1回の読み出しで隣接する画素においてゲインの異なる信号が得られる。
【0033】
通常は、被写体の明度に応じて、(1)の動作及び(2)の動作で使用すれば、フル解像度の画像を撮像することができる。
そして、ダイナミックレンジの大きさを重視するときのみ、(3)の動作で使用することが可能である。
【0034】
(3)の動作では、フォトダイオードPDでの蓄積時間は各画素で等しいため、手ぶれや被写体の動きに起因する、エッジの色ずれ等が起こらない。
また、同じ画素から信号を2回読み出すことがないため、専用に設計した大掛かりな固体撮像装置も必要ない。撮影シーンに応じて、(1)(2)(3)の各動作の間で動作を遷移させるのも容易である。
各行の画素は、奇数番目の画素と偶数番目の画素とが、交互にそれぞれ異なるSw配線12(例えば、12−1と12−2)に接続されていることによって、低ゲインと高ゲインの画素が縦横同じ解像度で入っている。
【0035】
また、各列の画素は、奇数番目の画素と偶数番目の画素とが、交互にそれぞれ異なる垂直信号線11に接続されている。これにより、カラム処理回路130の処理回路13には、行毎に低ゲインの信号が入ったり高ゲインの信号が入ったりすることなく、毎回同じレベルの信号が入るので、最適化が容易である。
【0036】
上述の本実施の形態の固体撮像装置100によれば、隣接する画素10Aと画素10Bとにおいて、電磁波を電荷に変換するフォトダイオードPD及び転送トランジスタ21の構成は同一であるが、変換ゲインを異ならせることが可能である。
そして、スイッチトランジスタ25のゲートのオン・オフにより、電荷を保持する部分の容量を、大容量(FD+C)と小容量(FDのみ)とで切り替えることができる。
これにより、変換ゲインが高く感度の高い信号と、変換ゲインが低く感度の低い信号とを、隣接するそれぞれの画素で得ることができるので、ダイナミックレンジを拡大することができる。
そして、電荷を保持する部分の容量を切り替えて、変換ゲインを切り替えることにより、隣接する画素において、(1)及び(2)の動作では変換ゲインに差がない状態として、(3)の動作では変換ゲインが異なる状態とすることができる。
また、隣接する画素10Aと画素10Bとにおいて、電磁波を電荷に変換するフォトダイオードPD及び転送トランジスタ21の構成は同一であるので、電荷の蓄積時間は同一になる。手振れがあったり、被写体に動きがあったりしても、色ずれを生じないようにすることができる。また、変換ゲインが低い画素において、得られる電荷は変換ゲインが高い画素と同様であり、充分な電荷が得られる。
【0037】
また、本実施の形態によれば、同じ画素でゲインを変えて2回の読み出しを行わなくても、各画素で1回の読み出しで隣接する画素においてゲインの異なる信号が得られる。
これにより、専用に設計した大掛かりな固体撮像装置が不要であり、ダイナミックレンジの拡大を行っていない従来の構成と大差がない、簡易な構成の固体撮像装置100によって、ダイナミックレンジの拡大を実現することができる。
【0038】
<2.第2の実施の形態(固体撮像装置)>
次に、第2の実施の形態の固体撮像装置について説明する。
第2の実施の形態では、固体撮像装置の概略構成は、第1の実施の形態の固体撮像装置100の図1に示した概略構成と同じであるが、画素部110において、2個の画素で増幅トランジスタやスイッチトランジスタ等を共有する。
【0039】
第2の実施の形態の固体撮像装置の画素部110の画素の回路構成図を、図5に示す。
2個の画素において、フォトダイオードPD1,PD2及び転送トランジスタ21(Trf1,Trf2)は画素毎に配置されているが、フローティングディフュージョンFD以降のトランジスタ22,23,24,25及びコンデンサCは共有されている。
【0040】
従来提案されている、複数個の画素で増幅トランジスタ等を共有する構成では、同じ行又は同じ列の画素や、2行2列の4画素で、増幅トランジスタ等を共有していた。
これに対して、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、隣接する画素間で読み出された電荷を保持する部分の容量の大小でゲインを異ならせるために、増幅トランジスタ等を共有する画素の組み合わせを、従来とは違う組み合わせとする。
【0041】
本実施の形態の固体撮像装置における、画素共有の組み合わせを、図6に示す。図6は、図4に示した第1の実施の形態の配線の概略構成図と、同じ構成に対して、共有させる画素の組み合わせの一部を付記して示している。
図6に示すように、左上と右下に斜めに隣接する、左から第1列で下から第5行の画素10Bと、第2列で第6行の画素10Bとを、共有する組み合わせとしている。また、左下と右上で斜めに隣接する、第2列で第5行の画素10Aと、第3列で第4行の画素10Aとを、共有する組み合わせとしている。他の画素についても同様に、斜めに隣接して並ぶ、画素10A同士、画素10B同士を、共有する組合せとする。
なお、上述のように組み合わせていくと、画素部110の最も端の行や最も端の列の画素が余るが、それらの端の画素は、動作はしても出力信号が使われることのないダミー画素となる。
【0042】
上述の本実施の形態によれば、先の実施の形態と同様に、隣接する画素10Aと画素10Bとにおいて、電磁波を電荷に変換するフォトダイオードPD及び転送トランジスタ21の構成は同一であるが、変換ゲインを異ならせることが可能である。
そして、スイッチトランジスタ25のゲートのオン・オフにより、電荷を保持する部分の容量を、大容量(FD+C)と小容量(FDのみ)とで切り替えることができる。
従って、先の実施の形態と同様に、ダイナミックレンジを拡大することができると共に、被写体に動きがあったりしても、色ずれを生じないようにすることができる。また、変換ゲインが低い画素において、得られる電荷は変換ゲインが高い画素と同様であり、充分な電荷が得られる。さらに、専用に設計した大掛かりな固体撮像装置が不要であり、ダイナミックレンジの拡大を行っていない従来の構成と大差がない、簡易な構成の固体撮像装置によって、ダイナミックレンジの拡大を実現することができる。
【0043】
上述の実施の形態では、2つの画素で、FDや増幅トランジスタ22等を共有していたが、4つの画素で共有させることも可能である。
4つの画素で共有させる場合には、好ましくは、同じ2列の2画素×2で共有させる。
即ち、例えば、図6において、線で囲った第2列で第5行及び第3列で第4行の2つの画素10Aと、その同じ2列にある、第2列で第3行及び第3列で第2行の2つの画素10Aとの、合計4画素で、FDや増幅トランジスタ22等を共有させる。
画素10Bについても、同様に同じ2列にある画素10BとFDや増幅トランジスタ22等を共有させる。
【0044】
<3.固体撮像装置の変形例>
上述の各実施の形態では、同じ垂直信号線11に対して、画素10Aのみ、或いは、画素10Bのみが接続されており、垂直信号線11は、奇数行と偶数行とで、違う列の画素10に接続されていた。
これに対して、垂直信号線11が同じ列の画素に接続されている構成とすることも、可能である。
その場合の画素部110の画素10A,10Bの回路構成図を、図7に示す。
【0045】
図7に示すように、垂直信号線11が、同じ列の画素に接続されており、画素10Aと画素10Bとに接続されている。
図7において、Sw配線12と画素10A,10Bとの接続は、図4と同様になっている。即ち、奇数番目のSw配線12−1,12−3には画素10Aのみが接続され、偶数番目のSw配線12−2,12−4には画素10Bのみが接続されている。これにより、上述の各実施の形態と同様に、隣接する画素でゲインを異ならせてダイナミックレンジを拡大することが可能である。
【0046】
垂直信号線11と画素との接続を、図4に示したように右の列の画素と左の列の画素と交互に接続した場合には、図7に示したように接続した場合と比較して、最適化が容易である利点を有している。
これは、図4に示したように接続した場合、カラム処理回路130のそれぞれの行の処理回路13に入る信号が、低ゲインの信号のみ、或いは、高ゲインの信号のみであり、毎回同じレベルの信号が処理回路13に入るからである。
【0047】
上述した各実施の形態では、スイッチトランジスタ25のオン・オフにより、画素10の変換ゲインを切り替えることが可能であった。
これに対して、各画素の変換ゲインを固定した構成とすることも可能である。例えば、スイッチトランジスタ及びSw配線を設けないで、1つおきの画素のフローティングディフュージョンFDとリセットトランジスタとの間にコンデンサCを接続すればよい。
この構成では、高解像度の動作とダイナミックレンジ拡大の動作との切り替えは行えないが、画素の蓄積時間を異ならせることなく、簡易な構成でダイナミックレンジを拡大することができる。
【0048】
上述した各実施の形態では、フローティングディフュージョンFDの容量を変えることによって、変換ゲインを切り替える構成であった。
これに対して、容量を変える以外の構成により、変換ゲインを切り替えることも可能である。
例えば、カラム処理回路130には、AD変換する前のゲインをかける回路として、ゲイン段があるが、画素10Aと画素10Bとでこのゲイン段を異ならせる、即ち、列毎にゲイン段を変えることにより、ゲインを変えることができる。
【0049】
上述した各実施の形態では、画素10(10A,10B)が縦横にマトリクス状に配置され、垂直信号線11が縦方向に延びており、Sw配線12が横方向に延びている構成であった。
本技術は、画素が縦横にマトリクス状に配置されている構成には限定されず、画素が2次元配列されている、その他の構成にも適用することが可能である。
例えば、配線が斜めに配置された構成や、画素が矩形ではなくハニカム形状であって配線が画素に沿って左右に屈曲している構成、等にも本技術を適用することができる。
【0050】
本技術は、光電変換部とロジック部とを積層するスタック型の構成にも適用することが可能である。回路構成が通常の固体撮像装置と同様の構成であれば、同様に本技術を適用することができる。
【0051】
その他の構成であっても、画素毎にゲインを異ならせる構成であれば、同様の作用効果を発現できる。
【0052】
<4.第3の実施の形態(撮像装置)>
第3の実施の形態の撮像装置の概略構成図(ブロック図)を、図8に示す。
図8に示すように、この撮像装置200は、レンズ群等を含む光学系201、固体撮像装置202、カメラ信号処理回路であるDSP回路203、表示装置204、メモリ205、CPU206、電源系207、操作系208を備えて成る。
【0053】
光学系201は、被写体から入射する光等の電磁波を取り込み、固体撮像装置202の撮像面上に結像する。
固体撮像装置202は、光学系201によって撮像面上に結像された光等の電磁波の量を、画素単位で電気信号に変換して画素信号として出力する。
固体撮像装置202としては、前述した各実施の形態の固体撮像装置等、本技術に係る固体撮像装置を使用する。
表示装置204は、液晶表示装置や有機EL(electro luminescence)表示装置等のパネル型表示装置から成り、固体撮像装置202で撮像された動画又は静止画を表示する。
電源系207は、DSP回路203、表示装置204、メモリ205、操作系208の動作電源となる各種の電源を、供給対象に対して適宜供給する。
操作系208は、ユーザによる操作のもとに、撮像装置200の様々な機能についての操作指令を発する。
【0054】
この撮像装置200では、撮影者の意図によって、前述した(3)の動作を適用するかどうかを、外部から入力することにより、動作を切り替えることができる。
【0055】
また、この撮像装置200において、被写体の明るさをDSP203でモニタリングする構成とすれば、モニタリングの検出結果から、自動的に(1)〜(3)の動作のいずれにするかをDSP203において決定して、ゲインを設定することができる。
例えば、被写体の明度の差が小さいときには、明度に応じて(1)或いは(2)の動作を自動的に選択して、被写体の明度の差が大きいときには、前述した(3)の動作を自動的に選択することが可能である。
そして、DSP203からの指令を固体撮像装置202が受け取って、固体撮像装置202内の制御回路(例えば、図1の固体撮像装置100の制御回路150)で指示する。例えば、DSP203は指示を受けて、(3)の動作のとき合成処理を行う。
【0056】
なお、前述した、撮像者の意図によって動作を切り替える場合には、DSP203だけではなく、操作系208とCPU206も関与する。どの動作を選択するかについての外部からの入力に対して、操作系208から入力の内容をCPU206に送って、CPU206からDSP203に対して選択した動作を伝達する。
【0057】
上述の本実施の形態の撮像装置200の構成によれば、固体撮像装置202として、前述した各実施の形態の固体撮像装置等、本技術に係る固体撮像装置を使用することにより、色ずれを生じることなくダイナミックレンジを拡大することが可能である。また、変換ゲインが低い画素において、得られる電荷は変換ゲインが高い画素と同様であり、充分な電荷が得られる。さらに、専用に設計した大掛かりな固体撮像装置が不要であり、ダイナミックレンジの拡大を行っていない従来の構成と大差がない、簡易な構成の固体撮像装置202によって、ダイナミックレンジの拡大を実現することができる。
【0058】
また、本実施の形態の撮像装置200の構成によれば、通常のフル解像度の画を出すモードと、ダイナミックレンジ拡大モードとを、被写体の状態に応じて、自動的に、もしくは、撮像者の意図によって、選択することが可能である。
【0059】
本技術において、撮像装置の構成は、図8に示した構成に限定されるものではなく、本技術に係る固体撮像装置を使用する構成であれば、図8に示した以外の構成とすることも可能である。
【0060】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)電磁波を電荷に変換し、電荷量に応じた信号を出力する画素と、前記画素が2次元配置され、隣接する前記画素において、前記電磁波を前記電荷に変換する部分の構成は同一であるが、電荷量と信号量との関係を異ならせることが可能である、画素部とを含む固体撮像装置。
(2)各前記画素において、前記電荷量と前記信号量との関係である変換ゲインを切り替えることが可能であり、隣接する画素において、前記変換ゲインに差が無い状態と前記変換ゲインが異なる状態とを切り替えることが可能である、前記(1)に記載の固体撮像装置。
(3)前記画素の電荷を保持する部分の容量を切り替えることによって、前記画素の前記変換ゲインが切り替えられる、前記(2)に記載の固体撮像装置。
(4)前記画素部は前記画素が縦横にマトリクス状に配置されており、各画素行に対応して設けられたスイッチ配線と、各前記画素に設けられ、前記スイッチ配線に接続された、前記容量を切り替えるためのスイッチトランジスタとをさらに含む、前記(3)に記載の固体撮像装置。
(5)各行の前記画素は、奇数番目の画素と偶数番目の画素とが、交互にそれぞれ異なる前記スイッチ配線に接続されている、前記(4)に記載の固体撮像装置。
(6)前記(1)から(5)のいずれかに記載の固体撮像装置と、前記固体撮像装置に入射光を導く光学系と、前記固体撮像装置の出力信号を処理する信号処理回路とを含む撮像装置。
(7)前記固体撮像装置の前記画素における前記電荷量と前記信号量との関係を、外部からの入力により切り替えることが可能である、前記(6)に記載の撮像装置。
【0061】
本技術は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【符号の説明】
【0062】
10,10A,10B 画素、11 垂直信号線、12,12−1,12−2,12−3,12−4 Sw配線、13 処理回路、21 転送トランジスタ、22 リセットトランジスタ、23 増幅トランジスタ、24 選択トランジスタ、25 スイッチトランジスタ、100,202 固体撮像装置、110 画素部、120 垂直駆動回路、130 カラム処理回路、140 出力回路、150 制御回路、200 撮像装置、201 光学系、203 DSP回路、204 表示装置、205 メモリ、206 CPU、207 電源系、208 操作系、PD フォトダイオード、FD フローティングディフュージョン、C コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を電荷に変換し、電荷量に応じた信号を出力する画素と、
前記画素が2次元配置され、隣接する前記画素において、前記電磁波を前記電荷に変換する部分の構成は同一であるが、電荷量と信号量との関係を異ならせることが可能である、画素部とを含む
固体撮像装置。
【請求項2】
各前記画素において、前記電荷量と前記信号量との関係である変換ゲインを切り替えることが可能であり、隣接する画素において、前記変換ゲインに差が無い状態と前記変換ゲインが異なる状態とを切り替えることが可能である、請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記画素の電荷を保持する部分の容量を切り替えることによって、前記画素の前記変換ゲインが切り替えられる、請求項2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記画素部は前記画素が縦横にマトリクス状に配置されており、各画素行に対応して設けられたスイッチ配線と、各前記画素に設けられ、前記スイッチ配線に接続された、前記容量を切り替えるためのスイッチトランジスタとをさらに含む、請求項3に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
各行の前記画素は、奇数番目の画素と偶数番目の画素とが、交互にそれぞれ異なる前記スイッチ配線に接続されている、請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
電磁波を電荷に変換し、電荷量に応じた信号を出力する画素と、前記画素が2次元配置され、隣接する前記画素において、前記電磁波を前記電荷に変換する部分の構成は同一であるが、電荷量と信号量との関係を異ならせることが可能である、画素部とを含む固体撮像装置と、
前記固体撮像装置に入射光を導く光学系と、
前記固体撮像装置の出力信号を処理する信号処理回路とを含む
撮像装置。
【請求項7】
前記固体撮像装置の前記画素における前記電荷量と前記信号量との関係を、外部からの入力により切り替えることが可能である、請求項6に記載の撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−34045(P2013−34045A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168020(P2011−168020)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】