説明

固体撮像装置

【課題】 混色が少なく、画素容量(飽和信号量)が大きく、かつ、残像が少ない固体撮像装置を提供すること。
【解決手段】 固体撮像装置は、第1導電型半導体基板1と、第1導電型半導体基板1上に形成された第2導電型半導体層2と、第1導電型半導体基板1とコンタクトするように第2導電型半導体層2内の下部側に選択的に形成された第1の第1導電型半導体領域3と、第1の第1導電半導体領域3およびその周囲の第2導電型半導体層2を含む画素領域を規定する、第1の第1導電型半導体領域3にコンタクトせずに第2導電型半導体層2を貫通する第1導電型画素分離領域6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子としてフォトダイオードを用いた固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話等のカメラを備えた製品の開発が盛んに行われている。この種のカメラには固体撮像装置が搭載されている。固体撮像装置は、撮像領域内にフォトダイオード(光電変換素子)を二次元的に配置し、フォトダイオードに蓄積された電荷を読み出す構成になっている(特許文献1)。特許文献1に開示された固体撮像装置のデバイス構造は、画素容量を大きくするために、N型不純物領域の底面部に2つ以上の凸状のN型不純物領域を付加している。しかし、このデバイス構造の場合、凸状のN型不純物領域を付加した分だけ、画素中心が3つ以上に分離され、蓄積された電子(特に最も遠い画素中心の電子)を効率的に読み出せず、残像が多くなるという問題がある。
【0003】
固体撮像装置は、混色が少なく、画素容量(飽和信号量)が大きく、かつ、残像が少ないことが望まれている。しかし、これらの全てを満足する固体撮像装置の実現は困難である。
【特許文献1】特開2002−31451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、混色が少なく、画素容量(飽和信号量)が大きく、かつ、残像が少ない固体撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による固体撮像装置は、第1導電型半導体基板と、前記第1導電型半導体基板上に形成された第2導電型半導体層と、前記第2導電型半導体層内の下部側に選択的に形成され、かつ、前記第1導電型半導体基板とコンタクトする第1の第1導電型半導体領域と、前記第1の第1導電半導体領域およびその周囲の前記第2導電型半導体層を含む画素領域を規定する、前記第1の第1導電型半導体領域にコンタクトせずに前記第2導電型半導体層を貫通する第1導電型画素分離領域とを具備してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、混色が少なく、画素容量(飽和信号量)が大きく、かつ、残像が少ない固体撮像装置を実現できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、第1導電型をP型、第2導電型をN型として説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る固体撮像装置の基本セルを模式的に示す断面図である。図2は、図1のA−A’断面に対応する平面図である。
【0009】
図中、1はP型半導体基板を示しており、このP型半導体基板1上にはN型エピタキシャル半導体層2が形成されている。本実施形態では、P型半導体基板1は、P型シリコン基板とする。P型半導体基板1のP型不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3である。N型エピタキシャル半導体層2のP型不純物濃度は、例えば、1×1015cm-3である。赤色光のような長波長の光を基板の深い位置で光電変換し、光電変換により発生した電子(電荷)を効率よく赤色画素に蓄積するためには、N型エピタキシャル半導体層2の厚さは5μm以上とする。
【0010】
N型エピタキシャル半導体層2内の下部側には、第1のP型半導体領域3が選択的に形成されている。第1のP型半導体領域3はP型半導体基板1とコンタクトする。第1のP型半導体領域3のP型不純物濃度は、例えば、1×1015cm-3である。
【0011】
N型エピタキシャル半導体層2およびP型半導体領域3は、例えば、多段のエピタキシャルおよびイオン注入により形成される。すなわち、半導体層のエピタキシャル成長の工程と、上記半導体層内にN型およびP型不純物をイオン注入する工程とからなる一連の工程をP型半導体領域3の厚さに対応する半導体層が形成されるまで繰り返し、その後、半導体層のエピタキシャル成長の工程と、上記半導体層内にN型不純物をイオン注入する工程とからなる一連の工程をN型エピタキシャル半導体層2の厚さに対応する半導体層が形成されるまで繰り返す。
【0012】
N型エピタキシャル半導体層2の表面には、N型半導体領域4が選択的に形成されている。N型半導体領域4のN型不純物濃度は、例えば、1×1017cm-3である。N型半導体領域4およびN型エピタキシャル半導体層2の表面には、第1のP型半導体領域3よりも高不純物濃度の第2のP型半導体領域5が選択的に形成されている。第2のP型半導体領域5のP型不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3である。N型半導体領域4およびP型半導体領域5はP型半導体領域3とコンタクトしておらず、N型半導体領域4およびP型半導体領域5とP型半導体領域3との間にはN型エピタキシャル半導体層2が介在している。
【0013】
N型エピタキシャル半導体層2には、画素分離用のP型分離領域6が形成されている。P型分離領域6は、N型エピタキシャル半導体層2を貫通して、P型半導体基板1の表面にコンタクトしている。P型分離領域6は、第1のP型半導体領域3およびその周囲のN型エピタキシャル半導体層2、ならびに、N型半導体領域4および第2のP型半導体領域5を含む、画素領域(基本セル)を規定する。P型分離領域6は、第1のP型半導体領域3にはコンタクトしておらず、これにより、図2に示すように、第1のP型半導体領域3の周囲は、N型エピタキシャル半導体層2を介して、P型分離領域6で囲まれる。P型分離領域6のP型不純物濃度は、例えば、1×1015cm-3である。
【0014】
P型分離領域6上にはゲート絶縁膜7が形成され、ゲート絶縁膜7上にはゲート電極8が形成されている。隣接する画素領域のN型エピタキシャル半導体層2の表面には、P型分離領域6にコンタクトするように、高不純物濃度のN型拡散層(ドレイン)9が選択的に形成されている。P型分離領域6にコンタクトした部分のN型半導体領域(ソース)4、ゲート絶縁膜7、ゲート電極8およびN型拡散層9は、電荷転送用のMOSトランジスタを構成している。
【0015】
本実施形態の固体撮像装置は、画素領域の表面に第1のPNジャンクションPN−J1を備えている。第1のPNジャンクションPN−J1は、N型半導体領域4と第2のP型半導体領域5とのPN接合部で構成されている。
【0016】
また、本実施形態の固体撮像装置は、画素領域の深さ方向の中央部に第2のPNジャンクションPN−J2を備えている。第2のPNジャンクションPN−J2は、第1のP型半導体領域3の上部とN型エピタキシャル半導体層2とのPN接合部で構成されている。
【0017】
さらに、本実施形態の固体撮像装置は、第2のPNジャンクションPN−J2よりも深い部分に第3のPNジャンクションPN−J3を備えている。第3のPNジャンクションPN−J3は、画素領域の深さ方向の中央部よりも深い部分の第1のP型半導体領域3とN型エピタキシャル半導体層2とのPN接合部、および、第1のP型半導体領域3の下部とP型半導体基板1とのPN接合部で構成されている。図1には、上記のPNジャンクションPN−J1〜PN−J3における電界ベクトルEも示してある。図1において、P型半導体領域は接地されている。
【0018】
本実施形態によれば、N型エピタキシャル半導体層2内に第1のP型半導体領域3が形成されているため、第1のP型半導体領域3がない場合(図3、図4)に比べて、等価回路的にみて画素領域内のキャパシタの電極間距離が短くなり、画素容量(飽和信号量)は大きくなる。なお、図4は図2に対応する平面図である。
【0019】
画素容量を大きくする構造として、図5に示すように、画素領域の深い位置をP型半導体層30によってP型にすることも考えられる。図5の場合、画素中心20の深さ(位置)は例えば1μm程度である。しかし、この場合、画素領域のPNジャンクションに蓄積されずに画素領域内を流れる電子e-は、隣接する画素領域に流れ込み、混色が大きくなるという問題がある。
【0020】
これに対して本実施形態の場合、隣接する画素領域には電子は殆ど流れ込まないので、混色は十分に小さくなる。以下、この点についてさらに述べる。
【0021】
入射した光が例えば4μmの深さ(位置)で光電変換され、電子が発生したことを考えると、各PNジャンクションPN−J1〜PN−J3においては画素中心20に向かう強い電界Eが発生する。PNジャンクションPN−J2における電界Eは、残りのPNジャンクションPN−J1,J3における電界Eよりも十分に強い。そのため、光電変換で発生した電子の大部分は、PNジャンクションPN−J2における電界Eに引っ張られて画素中心20にドリフトする。光電変換で発生した電子の一部は、PNジャンクションPN−J3における電界Eに引っ張られて隣接する画素領域にドリフトするが、その量は十分に少ないので、混色は十分に小さくなる。
【0022】
図1では、上記の電子のドリフトが白抜きの矢印により模式的に示されている。太い白抜きの矢印はPNジャンクションPN−J2における電界Eによるドリフト、細い白抜きの矢印はPNジャンクションPN−J3(P型半導体領域3の側面)における電界Eによるドリフトを示している。
【0023】
図3および図5にも、電子のドリフトを模式的に示す白抜きの矢印が描かれている。図5の場合、図1に比べて、電子の発生する位置から、強い電界が生じるPNジャンクションPN−J2までの距離が長い。そのため、図5の場合、PNジャンクションPN−J2における電界Eに引っ張られて画素中心20にドリフトする電子の量は図1に比べて減少し、その分、隣接する画素領域内にドリフトする電子の量が増加するために混色は大きくなる。
【0024】
さらに、本実施形態によれば、第1のP型半導体領域3がない場合(図3、図4)に比べて、画素中心20は、N型エピタキシャル半導体層2の表面側にシフトするため、画素中心20とゲート電極8(転送ゲート)との間の距離が短くなり、残像は十分に小さくなり、残像特性は改善される。図1の場合、画素中心20の深さ(位置)は例えば1μm程度、図3の場合、画素中心20の深さ(位置)は例えば2μm程度である。
【0025】
以上述べたように、本実施形態によれば、第1のP型半導体領域3によって、画素容量を大きくできるとともに、残像を小さくでき、また、混色を抑制できるようになるので、混色、画素容量および残像を同時に改善できるようになる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0027】
例えば、上記実施形態では、第1導電型をP型、第2導電型をN型としたが、第1導電型をN型、第2導電型をP型としても構わない。
【0028】
また、上記実施形態では、シリコン基板を用いたが、SOI基板、SiC基板、SiGe基板を用いても構わない。
【0029】
また、上記実施形態の固体撮像装置は、三つのPNジャンクションPN−J1,J2,J3を備えているが、少なくともPNジャンクションPN−J3を備えていれば、従来の固体撮像装置に対して有利な効果を持つ。
【0030】
また、本実施形態の固体撮像装置が適用されるデバイスについては特に言及しなかったが、具体的には、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話等のカメラを備えた製品である。さらに、本実施形態の固体撮像装置は、ディスクリート製品としての固体撮像素子であっても構わない。
【0031】
さらに、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0032】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る固体撮像装置の基本セルを模式的に示す断面図。
【図2】図1のA−A’断面に対応する平面図。
【図3】比較例の固体撮像装置の基本セルを模式的に示す断面図。
【図4】図3の比較例の平面図。
【図5】他の比較例の固体撮像装置の基本セルを模式的に示す断面図。
【符号の説明】
【0034】
1…P型半導体基板(第1導電型半導体基板)、2…N型エピタキシャル半導体層(第2導電型半導体層)、3…第1のP型半導体領域(第1の第1導電型半導体領域)、4…N型半導体領域(第2導電型半導体領域)、5…第2のP型半導体領域(第2の第1導電型半導体領域)、6…P型分離領域(第1導電型画素分離領域)、7…ゲート絶縁膜、8…ゲート電極、9…N型拡散層、20…画素中心、30…P型半導体層、PN−J1、PN−−J2、PN−J3…PNジャンクション。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体基板と、
前記第1導電型半導体基板上に形成された第2導電型半導体層と、
前記第2導電型半導体層内の下部側に選択的に形成され、かつ、前記第1導電型半導体基板とコンタクトする第1の第1導電型半導体領域と、
前記第1の第1導電半導体領域およびその周囲の前記第2導電型半導体層を含む画素領域を規定する、前記第1の第1導電型半導体領域にコンタクトせずに前記第2導電型半導体層を貫通する第1導電型画素分離領域と
を具備してなることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
前記第2導電型半導体層の表面に選択的に形成され、前記第1の第1導電型半導体領域にコンタクトせず、かつ、前記第2導電型半導体層よりも高不純物濃度の第2導電型半導体領域、および、前記第2導電型半導体領域の表面に選択的に形成され、前記第1の第1導電型半導体領域よりも高不純物濃度の第2の第1導電型半導体領域をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記第1の第1導電型半導体領域の周囲は、前記第2導電型半導体層で囲まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記第2導電型半導体層は、エピタキシャル半導体層であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記第1の第1導電型半導体領域は、前記エピタキシャル半導体層内に第1導電型不純物をイオン注入して形成された領域であることを特徴する請求項4に記載の固体撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−118538(P2010−118538A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291215(P2008−291215)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】