説明

圧粉磁心及びその製造方法

【課題】高周波数及び高磁束密度でも優れた磁気特性を有する圧粉磁心を提供する。
【解決手段】混合工程では、粒径が75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に対して、比表面積が100〜300m/g無機絶縁粉末を混合する。混合工程を経た混合物を結着性絶縁樹脂で被覆する被覆工程は、シランカップリング剤を0.1wt%混合して加熱乾燥し、シリコーンレジンを0.3wt%混合して混合し加熱乾燥する。第2混合工程では、混合物と潤滑勢樹脂として0.4wt%のステアリン酸亜鉛とを混合する。第2混合工程を経た混合物を、室温にて成形圧力1500MPaで加圧成形することにより、成形体を形成する。成形体に対して、非酸化性雰囲気にて600℃で2時間の間、焼鈍処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性粉末からなる圧粉磁心およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
OA機器、太陽光発電システム、自動車、無停電電源などの制御用電源には電子機器としてチョークコイルが用いられており、そのコアとして、フェライト磁心や圧粉磁心が使用されている。これらの中で、フェライト磁心は飽和磁束密度が小さいと言う欠点を有している。これに対して、金属粉末を成形して作製される圧粉磁心は、軟磁性フェライトに比べて高い飽和磁束密度を持つため、直流重畳特性に優れている。
【0003】
圧粉磁心は、エネルギー交換効率の向上や低発熱などの要求から、小さな印加磁界で、大きな磁束密度を得ることが出来る磁気特性と、磁束密度変化におけるエネルギー損失が小さいという磁気特性が求められる。圧粉磁心を交流磁場で使用した場合、鉄損(Pc)と呼ばれるエネルギー損失が生じる。この鉄損は、下記[式1]の関係で表すことができる。この中で鉄損は、ヒステリシス損失(Ph)、渦電流損失(Pe)の和で表される。また、ヒステリシス損失は動作周波数に比例し、渦電流損失は動作周波数の2乗に比例する。そのため、ヒステリシス損失は低周波側領域で支配的になり、渦電流損失は高周波領域で支配的になる。圧粉磁心は、この鉄損の発生を小さくする磁気特性が求められている。
[数1]
Pc=Ph+Pe 、Ph=Kh×f、Pe=Ke×f2 … 式1
Kh:ヒステリシス損係数、Ke:渦電流損係数、f:周波数
【0004】
圧粉磁心のヒステリシス損失を低減するためには、磁壁の移動を容易にすればよく、そのためには軟磁性粉末粒子の保磁力を低下させればよい。なお、この保磁力を低下させることで、初透磁率の向上とヒステリシス損失の低減が図れる。渦電流損失は[式2]で示されるように、コアの比抵抗に反比例する。
[数2]
Ke=k1Bm2t2/ρ … 式2
k1:係数、Bm:磁束密度、t:粒子径(板材の場合厚さ)、ρ:比抵抗
【0005】
このような、高密度成形された圧粉磁心の製造方法としては、リン酸塩処理を施した鉄粉を基材とする方法(例えば、特許文献1参照)や、鉄を主成分とする磁性粉末に絶縁被膜としてリン酸塩系の第1絶縁層とその上にシリコーン樹脂からなる第2絶縁層を設ける方法(例えば、特許文献2参照)や、軟磁性粉末の表面を樹脂を含有しない無機物の絶縁層で表面を絶縁被覆処理する方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−504785号公報
【特許文献2】特開2006−5173号公報
【特許文献3】特開2003−332116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、高密度成形された圧粉磁心は、高い磁束密度を有するが、成形時に多くの歪みが軟磁性粉末の粒子内に発生する。この歪みは圧粉磁心の保磁力を高めて、ヒステリシス損失を増加させる。そのため、歪み除去を目的とした焼鈍作業を行う。鉄を主成分とする軟磁性粉末では、この歪みを除去するには、500℃以上の高い焼鈍温度が必要となる。ところが、焼鈍温度を高くすると、粉末粒子間の絶縁破壊が発生しコアの比抵抗が大きくなり、渦電流損失が増加して十分な効果が得られない。
【0008】
例えば、特許文献1に記載の発明では、リン酸塩系の絶縁処理において、焼鈍温度を500℃以上と高くすると、絶縁破壊をおこしてしまうため、渦電流損失が増加して十分な効果が得られない問題点があった。
【0009】
また、特許文献2の発明では、耐熱温度を500℃以上としているものの、粉末間の絶縁を評価するのに比抵抗で評価している。耐熱温度が500℃以上とは、圧粉磁心に500℃で30分間の焼鈍を施した後に、比抵抗が100μΩm以上であること。耐熱温度が600℃以上とは、圧粉磁心に600℃で30分間の焼鈍を施した後に比抵抗が10μΩm以上であることとしている。600℃で計算上10倍大きな渦電流損となっている。文献2では、400Hz,800Hzのような低い周波数では大きな問題とならないが、本特許で検討しているような20kHzという高い周波数では、600℃での比抵抗が10μΩm以上とは絶縁破壊をおこしているという評価となる。
【0010】
さらに、特許文献3の発明では、絶縁層と絶縁粉末を指定しており、絶縁粉末の平均粒径で0.1〜10μmとなっている。この効果として成形後の熱処理温度を500〜900℃にしても絶縁層を破壊することなく、軟磁性粉末に残留する圧縮成形歪を開放することができるとしている。
【0011】
この結果を詳細に調べると、表5のように渦電流損を15kHz,50mTで評価しており400℃〜900℃まで変化の無いデータとなっている。一方、比抵抗は特許文献3の発明である混合法では500℃で941μΩm,600℃で640μΩm,700℃で310μΩm,800で150μΩm,900℃で100μΩmと500℃と比較し600℃で68%,700℃で,800で33%,900で11%と激減している。渦電流損失は[式2]により磁束密度の二乗に比例している。すなわち、特許文献3で述べているような50mTの場合、あまり影響がでてこないが150mTのような高磁束密度の場合には、鉄損に占める割合が大きくなり、この比抵抗の減少が大きな影響を及ぼす。
【表5】

【0012】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、軟磁性粉末の表面を、比表面積が100〜300m/gの無機絶縁粉末で覆うことにより、焼鈍温度を高くすることにより、高周波及び高磁束密度でも渦電流損失が一定(増大しない)で、低ヒステリシス損失の圧粉磁心とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的をふまえ、本発明の圧粉磁心は、鉄を主成分とする軟磁性粉末と、無機絶縁粉末とを混合し、その混合物を結着性絶縁樹脂で被覆し、その後、結着性絶縁樹脂を混合して得られた軟磁性粉末と潤滑性樹脂を混合し、その混合物を加圧成形して成形体を作製し、その成形体を焼鈍してなるものであり、前記無機絶縁粉末の比表面積は、100〜300m/gであることを特徴とする。
【0014】
なお、ヒステリシス損失を低減させる目的で、550℃以上且つ前記軟磁性粉末が焼結を開始する温度以下で焼鈍したり、結着性結着樹脂としてシリコーン樹脂を使用したり、絶縁結着樹脂の添加量を低減させるために、前記軟磁性粉末に対してリン酸塩被膜を施したり、前記絶縁粉末として、マグネシア粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末、チタニア粉末及びジルコニア粉末の中の少なくとも1種類以上を混合したりすることにより、ヒステリシス損失を低下させた圧粉磁心も本発明の一形態である。
【発明の効果】
【0015】
以上のような本発明によれば、鉄を主成分とする軟磁性粉末と、比表面積が100〜300m/gの無機絶縁粉末とを混合することにより、軟磁性粉末の表面に無機絶縁粉末による絶縁層ができることにより、高周波及び高磁束密度でも渦電流損失が一定であり、且つヒステリシス損失を低減することができる。これにより、低損失な圧粉磁心とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明で使用した無機絶縁粉末の比表面積と粒子の形状との関係を示したグラフ。
【図2】本発明の実施例の第1の特性比較における無機絶縁粉末の比表面積と鉄損の関係を示したグラフ。
【図3】本発明の実施例の第2の特性比較におけるMgO粉末の添加量と鉄損の関係を示したグラフ。
【図4】本発明の実施例の第2の特性比較におけるAl粉末の添加量と鉄損の関係を示したグラフ。
【図5】本発明の実施例の第2の特性比較における無機絶縁粉末と密度の関係を示したグラフ。
【図6】本発明の実施例の第3の特性比較における無機絶縁粉末の添加量と渦電流損失の関係を示したグラフ。
【図7】本発明の実施例の第4の特性比較における焼鈍温度と鉄損の関係を示したグラフ。
【図8】本発明の実施例の第4の特性比較における軟磁性粉末に対する粉末の添加量と密度の関係を示したグラフ。
【図9】本発明の実施例の第4の特性比較における軟磁性粉末に対する粉末の添加量と密度の関係を示したグラフ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[1.製造工程]
本実施形態の圧粉磁心の製造方法は、次のような各工程を有する。
(1)軟磁性粉末に対してリン酸塩被膜処理を施すリン酸塩被膜工程(ステップ1)。
(2)リン酸塩被膜処理工程を経た軟磁性粉末に対して、無機絶縁粉末を混合する第1混合工程(ステップ2)。
(3)第1混合工程を経た混合物を結着性絶縁樹脂で被覆する被覆工程(ステップ3)。
(4)結着性絶縁樹脂で被覆した混合物に対して、潤滑剤を混合する第2混合工程(ステップ4)。
(5)第2混合工程を経た混合物を、加圧成形処理して成形体を作製する成形工程(ステップ5)。
(6)成形工程を経た成形体を焼鈍処理する焼鈍工程(ステップ6)。
以下、各工程を具体的に説明する。
【0018】
(1)リン酸塩処理工程
リン酸塩処理工程では、純鉄のアトマイズ粉末である軟磁性粉末に対して、リン酸塩被膜処理を施す。リン酸塩被膜処理の方法は、従来の発明と同様の方法でよい。軟磁性粉末に対してリン酸塩被膜を施すことにより、軟磁性粉末の表面にリン酸塩化合物の膜を形成することができる。リン酸塩化合物の膜は、結晶性の緻密なリン酸塩被膜であり、耐熱性、電気の不良導体、ガラス化する性質がある。さらに、結晶性の緻密な皮膜には密着性があり、軟磁性粉末の表面に後述の第1混合工程で混合する無機絶縁粉末が結着しやすくなる。これにより、少ない無機絶縁粉末でも、軟磁性粉末の周囲に強固な絶縁層を設けることができるため、高温で焼鈍処理が可能になる。これにより、軟磁性粉末として、水アトマイズ製法、ガスアトマイズ製法、水ガスアトマイズ製法で作製したアトマイズ粉のアトマイズ粉作製時の加工歪み除去を除去することができるので、圧粉磁心のヒステリシス損失を低減する効果を得ることができる。
【0019】
(2)第1混合工程
第1の混合工程では、リン酸塩被膜処理工程を経た純鉄のアトマイズ粉末と、無機絶縁粉末(比表面積が100〜300m/gが好ましい)とを混合する。無機絶縁粉末を混合することにより、軟磁性粉末の表面を無機絶縁粉末の膜で均一に覆うことができる。この無機絶縁粉末の膜により、軟磁性粉末の間に強固な絶縁層を設けることができるため、高温で焼鈍処理が可能になる。これにより、ヒステリシス損失を大幅に低減することができる。
【0020】
この無機絶縁粉末としては、融点が1000℃以上の無機絶縁粉末であるマグネシア粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末、チタニア粉末、ジルコニア粉末の少なくとも1種類以上であることが好ましい。融点が1000℃以上の無機絶縁粉末を使用するのは、後述の成形時に加わった圧力による歪みをとる目的で行う焼鈍工程で加えられる熱により、無機絶縁粉末が焼結し圧粉磁心の材料として使用できなくなることを防止するためである。
【0021】
無機絶縁粉末の添加量は、軟磁性粉末に対して0.5〜2.0wt%とする。これより少なければ絶縁性能が十分に発揮できず、高い焼鈍温度では渦電流損失が著しく増加する。一方、これより多いと絶縁性能は発揮できるが、成形密度が低くなり(7.24g/cm未満)渦電流損失以外の磁気特性が低下するという問題点がある。
【0022】
(3)被覆工程
前記混合工程を経た混合物を結着性絶縁樹脂で被覆する被覆工程は、混合工程を経た混合物と、前記軟磁性粉末に対して0.2〜3.0wt%の結着性樹脂を混合し、加熱乾燥を行う。すなわち、前記混合工程を経た混合物に対して、結着性樹脂により、軟磁性粉末の表面に耐熱性絶縁皮膜を形成するためである。ここで、結着性樹脂としては、シリコーンレジンやメチルフェニル系シリコーン粘着剤を使用することができる。メチルフェニル系シリコーン樹脂の添加量は、前記軟磁性粉末に対して0.1〜2.0wt%が適量である。適量よりも少なければ、成形体の強度が不足して、割れが発生する。また、適量より多いと、密度低下による最大磁束密度の低下、ヒステリシス損失の増加による磁気特性が低下する問題が発生する。
【0023】
さらに、軟磁性粉末に対して、前記軟磁性粉末の0.1〜0.5wt%の有機金属カップリング剤(シランカップリング剤など)により処理してもよい。この有機金属カップリング剤は、結着性樹脂の分量を少なくするために使用する。例えば、有機カップリング剤としてシランカップリング剤を0.1〜0.5wt%使用した場合、結着性樹脂としては、シリコーンレジンを使用することができる。このとき、シリコーンレジンの使用量は0.125〜0.75wt%と使用量を抑えることができる。また、ここで添加された結着性樹脂は、成形時のバインダーとして作用する。
【0024】
(4)第2混合工程
前記被覆工程を経た混合物に潤滑剤を混合する第2混合工程では、結着性絶縁樹脂を被覆した混合物と、前記軟磁性粉末に対して0.2〜0.7wt%の潤滑剤とを混合する。ここで潤滑剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ステアリン酸石鹸、エチレンビスステアラマイドなどのワックスが使用できる。これらを添加することにより、造粒粉同士の滑りを良くすることができるので、混合時の密度を向上することができ成形密度を高くすることができる。さらに、粉末が金型への焼き付きくことも防止することが可能である。混合する潤滑樹脂の量は、前記軟磁性粉末に対して0.1〜0.8wt%とする。これよりも少なければ、十分な効果を得ることができず、これより多いと、密度低下による最大磁束密度の低下、ヒステリシス損失の増加による磁気特性が低下する問題が発生する。また、潤滑剤を第1の混合工程と第2の混合工程との2度に分けて入れることもできる。この場合の、潤滑樹脂の添加量は、第1の混合工程と第2の混合工程とを合わせて、前記軟磁性粉末に対して0.1〜0.8wt%とする。
【0025】
(4)成形工程
成形工程では、前記のようにして結着剤により被覆した軟磁性を加圧成形することにより、成形体を形成する。この時、結着性絶縁樹脂は、成形時のバインダーとして作用する。成形時の圧力は従来の発明と同様で良く、本発明においては1500MPa程度が好ましい。
【0026】
(5)焼鈍工程
焼鈍工程では、前記成形体に対して、Nガス中やN+Hガス非酸化性雰囲気中にて、550℃以上且つ軟磁性粉末に被覆した絶縁膜が破壊される温度以下で、焼鈍処理を行うことで圧粉磁心が作製される。絶縁膜が破壊される温度以下で焼鈍処理を行うのは、成形工程での歪みを開放すると共に、焼鈍処理時の熱により軟磁性粉末の周囲に被覆した絶縁膜が破れることを防止するためである。一方、焼鈍温度を上げ過ぎると、この軟磁性粉末に被覆した絶縁膜が破れることにより、絶縁性能の劣化から渦電流損失が大きく増加してしまう。それにより、磁気特性が低下するという問題が発生する。
【0027】
熱処理が行われると、昇温時の温度が350℃程度になるとSi基に直結しているメチル基が熱分解する。その後、シリカ(SiO)層として、軟磁性粉末表面に残り、これが強固なバインダーかつ絶縁膜となる。圧粉磁心の熱処理を行うことで、緻密で強固なシリカ層となるため、高温で熱処理をおこなっても絶縁性が劣化しないで、酸化などによるヒステリシス損失の増加が起きない。また、熱処理を行うことにより、熱分解してメチル基が炭素として残ることがないので、機械的強度が改善出来る。
【0028】
[2.無機絶縁粉末の形状]
本実施形態の圧粉磁心の製造方法に使用する無機絶縁粉末は比表面積が100〜300m/gのものを使用する。この比表面積とは、粉末の形状を示す指標であり、比表面積(S)と粒子形状(D)の関係は、粒子を球状と仮定した場合に、式[3]で表すことができる。図1は、本発明に使用する無機絶縁粉末の比表面積(S)と粒子形状(D)の関係をグラフを示したものである。
[式3]
S=6/(Dρ) … [式3]
ρ:密度
【0029】
図1では、比表面積が100〜300m/gの時、無機絶縁粉末が球形だと仮定した場合の計算値と、実測値とが異なっていることが判る。計算値と実測値が異なるのは、無機絶縁粉末の表面に凹凸があるためである。特に、160m/gの場合は、計算値と、実測値とが大きく異なっていることが判る。これは、比表面積が160m/gの場合は、無機絶縁粉末の内部が多孔質状になっているからであり、内部に空洞があるために比表面積が大きくなる。また、無機絶縁粉末の組成としては、融点が1000℃以上であるマグネシア粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末、チタニア粉末、ジルコニア粉末のうち少なくとも1種類以上であることが望ましい。これにより、熱処理工程時の熱処理温度を高くした場合にでも、絶縁性能が低下せず渦電流損失が低下するのを防ぐことができる。
【実施例1】
【0030】
本発明の実施例1〜17を、表1〜4を参照して、以下に説明する。
[2.測定項目]
測定項目として、透磁率と最大磁束密度と直流重畳特性を次のような手法により測定する。透磁率は、作製された圧粉磁心に1次巻線(20ターン)を施し、インピーダンスアナライザー(アジレントテクノロジー:4294A)を使用することで、20kHz、0.5Vにおけるインダクタンスから算出した。
【0031】
コアロスは、圧粉磁心に1次巻線(20ターン)及び2次巻線(3ターン)を施し、磁気計測機器であるBHアナライザ(岩通計測株式会社:SY−8232)を用いて、周波数20kHz、最大磁束密度Bm=0.15Tの条件下で鉄損(Pc)を測定した。そして、鉄損からヒステリシス損失(Ph)と渦電流損失(Pe)を算出した。この算出は、鉄損の周波数曲線を式1で最小2乗法により、ヒステリシス損係数(Kh)、渦電流損係数(Ke)を算出することで行った。
【0032】
[2.第1の特性比較(無機絶縁粉末の比表面積の比較)]
第2の特性比較では、粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に添加する無機絶縁粉末の比表面積の比較を行った。表2は、本実施例において、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した無機絶縁粉末の種類、比表面積、添加量及び熱処理工程時の熱処理温度を示した表である。この表の中で磁気特性としては、密度、透磁率、単位堆積あたりの鉄損(コアロス)(Pc,Ph,Pe)を測定した。
【0033】
本特性比較で使用する試料は、下記のように作製した。
実施例2では、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸塩被膜処理を施した後、無機絶縁粉末として比表面積が160m/gのMgOを純鉄の水アトマイズ粉に対して1.0wt%、ポットミルで12時間混合した。実施例6では、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸塩被膜処理を施した後、無機絶縁粉末としてAlを純鉄の水アトマイズ粉に対して1.0wt%、ポットミルで12時間混合した。実施例8では、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸塩被膜処理を施した後、無機絶縁粉末としてSiOを純鉄の水アトマイズ粉に対して1.0wt%、ポットミルで12時間混合した。
【0034】
比較例1,2では、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸塩被膜処理を施した後、無機絶縁粉末として比表面積が34m/gまたは8m/gのMgOを純鉄の水アトマイズ粉に対して1.0wt%添加した後、ポットミルで12時間混合した。
【0035】
これらに対してシランカップリング剤を0.1wt%混合し、さらにシリコーンレジンを0.3wt%混合し、180℃で2時間の加熱乾燥を行い、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.4wt%を混合した。さらに、1500MPaの圧力で加圧成形し、外径16mm、内径8mm、高さ5mmのリング状の成形体を作製し、非酸化性雰囲気中(N90%+H10%)にて、600℃で2時間の熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。
【0036】
表1では、無機絶縁粉末に1.0wt%のMgOを使用した実施例2及び比較例1,2を項目A、無機絶縁粉末に1.0wt%のSiOを使用した実施例6を項目B、無機絶縁粉末に1.0wt%のSiO実施例8を項目Cとした。表1は、この項目A〜Cについて、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した無機絶縁粉末の種類と比表面積と添加量、熱処理温度、密度、20kHzでの透磁率及びコアロスとの関係について示した表である。また、図2は、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した無機絶縁粉末の比表面積と鉄損(コアロス)の関係を示した図である。
【表1】

【0037】
表1から判るように、比表面積が100〜300m/gの無機絶縁絶縁粉末を添加した実施例2,6,8では、比表面積が34m/g及び8m/gの無機絶縁粉末を添加した比較例1,2に比べて、渦電流損失(Pe)が大幅に低減しているため、鉄損(Pc)が低下していることが判る。また、特に実施例6と比較例1,2とを比較すると、無機絶縁粉末の比表面積が100/gより小さくするなると、透磁率は増加するが、渦電流損失(Pe)が大幅に増加しているため、鉄損(Pc)が増加していることが判る。
【0038】
また、図2より、軟磁性粉末に添加する無機絶縁粉末の比表面積を大きくするに従って、渦電流損失(Pe)が低減するという効果が発揮されていることが判る。特に比表面積が100m/g以上では、渦電流損失(Pe)の増加が抑えられ、十分にその効果を発揮している。一方、ヒステリシス損失(Ph)は、添加する無機絶縁粉末の比表面積に係わらず一定であることが判る。
【0039】
以上により、軟磁性粉末に対して比表面積が100〜300m/gの無機絶縁粉末を添加することにより、軟磁性粉末の表面に無機絶縁粉末による絶縁層ができる。この絶縁層により、焼鈍温度を高くすることができ、ヒステリシス損失を低減することができる。これにより、高周波及び高磁束密度でも渦電流損失が一定であり、且つ低損失な圧粉磁心とその製造方法を提供することができる。
【0040】
[3.第2の特性比較(無機絶縁粉末の添加量の比較)]
第2の特性比較では、粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に対する無機絶縁粉末の添加量の比較を行った。表2は、本実施例において、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した無機絶縁粉末の種類と比表面積と添加量を示した表である。この表の中で磁気特性としては、密度、透磁率、単位体積あたりの鉄損(コアロス)(Pc,Ph,Pe)を測定した。
【0041】
本特性比較で使用する試料は、下記のように作製した。
実施例1〜3では、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸塩被膜処理を施した後、無機絶縁粉末として比表面積が160m/gのMgOを純鉄の水アトマイズ粉に対して0.50〜2.00wt%、ポットミルで12時間混合した。実施例4〜7では、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸塩被膜処理を施した後、無機絶縁粉末として比表面積が100mのAlを純鉄の水アトマイズ粉に対して0.50〜2.00wt%、ポットミルで12時間混合した。
比較例3では、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸塩被膜処理を施した。比較例4では、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸塩被膜処理を施した後、無機絶縁粉末として比表面積が160m/gのMgOを純鉄の水アトマイズ粉に対して0.25wt%、ポットミルで12時間混合した。比較例5では、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸塩被膜処理を施した後、無機絶縁粉末として比表面積が100m/gのAlを純鉄の水アトマイズ粉に対して0.25wt%、ポットミルで12時間混合した。
【0042】
これらに対してシランカップリング剤を0.1wt%混合し、さらにシリコーンレジンを0.3wt%混合し、180℃で2時間の加熱乾燥を行い、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.4wt%を混合した。さらに、1500MPaの圧力で加圧成形し、外径16mm、内径8mm、高さ5mmのリング状の成形体を作製し、非酸化性雰囲気中(N90%+H10%)にて、600℃で2時間の熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。
【0043】
表2は、実施例1〜7と比較例3〜5について、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した無機絶縁粉末の種類と比表面積と添加量、熱処理温度、密度、20kHzでの透磁率及びコアロスとの関係について示した表である。また、図3は、純鉄の水アトマイズ粉末に無機絶縁粉末として、MgO粉末を添加した場合、図4は、純鉄の水アトマイズ粉末に無機絶縁粉末として、Al粉末を添加した場合、それぞれの無機絶縁粉末の添加量と鉄損の関係を示した図である。図5は、無機絶縁粉末の添加量と圧粉磁心の密度の関係を示した図である。
【表2】

【0044】
表2から判るように、純鉄の水アトマイズ粉末に対して無機絶縁粉末を添加した実施例1〜7及び比較例4,5は、無機絶縁粉末を添加しない比較例3に比べて、密度及び透磁率は低下するが、ヒステリシス損失(Ph)及び渦電流損失(Pe)が大幅に低下することが判る。また、純鉄の水アトマイズ粉末に対して無機絶縁粉末としてMgO粉末を0.50〜2.00wt%添加した実施例1〜3と、MgO粉末を0.25wt%添加した比較例4とを比べると、MgO粉末の添加量が0.50wt%以上の実施例1〜3の方が、密度及び透磁率は低下しているが、渦電流損失(Pe)が大幅に低減しているため、鉄損(Pc)が低下していることが判る。同様に、純鉄の水アトマイズ粉末に対して無機絶縁粉末としてAl粉末を添加した実施例4〜7と比較例5との比較においても、Al粉末を0.50〜2.00wt%添加した実施例4〜7の方が、Al粉末を0.25wt%添加した比較例5より、密度及び透磁率は低下しているが、渦電流損失(Pe)が大幅に低減しているため、鉄損(Pc)が低下していることが判る。
【0045】
また、図3,4からは、MgO粉末,Al粉末共に、無機絶縁粉末を添加することにより、渦電流損失(Pe)が低減するという効果が発揮されることが判る。特に、無機絶縁粉末を0.5wt%以上添加した場合に、十分にその効果を発揮している。一方、ヒステリシス損失(Ph)は、無機絶縁粉末の添加量に係わらず一定であることが判る。
【0046】
さらに、図5からは、純鉄の水アトマイズ粉末に対して無機絶縁粉末としてAl粉末,MgO粉末を加えた場合に、無機絶縁粉末を添加するに従って、圧粉磁心の密度が低下していくことが判る。圧粉磁心の密度が低下すると、その圧粉磁心の直流重畳特性に影響することから、無機絶縁粉末の添加量を適量以上加えると、圧粉磁心の直流重畳特性が低下するという問題が起こる。
【0047】
以上により、純鉄の水アトマイズ粉末に対して、比表面積が100〜300m/gの無機絶縁粉末を0.50〜2.00wt%添加することにより、軟磁性粉末の表面に無機絶縁粉末による絶縁層ができる。この絶縁層により、焼鈍温度を高くすることができ、ヒステリシス損失を低減することができる。これにより、高周波及び高磁束密度でも渦電流損失が一定であり、且つ低損失な圧粉磁心とその製造方法を提供することができる。
【0048】
[4.第3の特性比較(リン酸塩被膜処理の有無の比較)]
第3の特性比較では、粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に対するリン酸塩被膜処理の有無の比較を行った。表3は、本実施例において、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した無機絶縁粉末の種類と比表面積と添加量を示した表である。この表の中で磁気特性としては、密度、透磁率、単位堆積あたりの鉄損(コアロス)(Pc,Ph,Pe)を測定した。
【0049】
本特性比較では、前記各特性比較で使用した実施例1〜3及び比較例3,4の試料と新たに、下記のように作製した試料を使用した。
実施例9〜12では、リン酸塩被膜処理を施していない純鉄の水アトマイズ粉に、無機絶縁粉末としてAlを、純鉄の水アトマイズ粉に対して0.50〜2.00wt%をポットミルで12時間混合した。
比較例6では、リン酸塩被膜処理を施していない純鉄の水アトマイズ粉に、無機絶縁粉末としてAlを、純鉄の水アトマイズ粉に対して0.25wt%をポットミルで12時間混合した。
これらに、シランカップリング剤を0.1wt%混合し、さらにシリコーンレジンを0.3wt%混合し、180℃で2時間の加熱乾燥を行い、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.4wt%を混合した。
【0050】
次に、実施例9〜12及び比較例6を室温にて、1500MPaの圧力で加圧成形し、外径16mm、内径11mm、高さ11mmのリング状の成形体を作製し、非酸化性雰囲気中(N90%+H10%)にて、600℃で2時間の熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。
【0051】
表3は、実施例1〜3,9〜12及び比較例3,4,6について、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した無機絶縁粉末の種類と比表面積と添加量、密度、20kHzでの透磁率及びコアロスとの関係について示した表である。また、図6は、項目G,Hについて、無機絶縁粉末の添加量と渦電流損失の関係について示した図である。
【表3】

【0052】
表3から判るように、リン酸塩被膜処理を施していない純鉄の水アトマイズ粉に、無機絶縁粉末を加えた実施例9〜12及び比較例6では、前記第2の特性比較の結果と同様に、無機絶縁粉末を0.50〜2.00wt%添加した実施例9〜12の方が、無機絶縁粉末を0.25wt%添加した比較例6より、密度及び透磁率は低下しているが、渦電流損失(Pe)が大幅に低減しているため、鉄損(Pc)が低下していることが判る。一方、純鉄の水アトマイズ粉末に対してリン酸塩被膜処理を施した実施例1〜3及び比較例3,4では、リン酸塩被膜処理を施さない実施例9〜12及び比較例6に比べて、同量の無機絶縁粉末を添加した場合に、渦電流損失が低下していることが判る。
【0053】
同様に図6からも判るように、純鉄の水アトマイズ粉末に対してリン酸被膜処理を施すことにより、リン酸被膜処理を施さない場合に比べて、渦電流損失(Pe)が低減することにより鉄損(Pc)は低下する。一方、リン酸被膜処理を施した場合でも、無機絶縁粉末が0.50wt%より少なくなると、無機絶縁粉末の効果を十分に発揮することができず、渦電流損失(Pe)が増加するのを防止することができない。
【0054】
以上により、純鉄の水アトマイズ粉末に対してリン酸被膜処理を施すことにより、リン酸被膜処理を行うことにより、軟磁性粉末の表面にリン酸塩化合物の膜を形成することができる。このリン酸塩の膜により、無機絶縁粉末が結着しやすくなる。これにより、少ない無機絶縁粉末でも、軟磁性粉末の表面に強固な絶縁層を設けることができる。
【0055】
[5.第4の特性比較(焼鈍工程時の焼鈍温度の比較)]
第4の特性比較では、成形工程を経た成形体を焼鈍処理する焼鈍工程における焼鈍温度の比較を行った。表4は、本実施例において、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した無機絶縁粉末の種類と比表面積と添加量を示した表である。この表の中で磁気特性としては、密度、透磁率、単位体積あたりの鉄損(コアロス)(Pc,Ph,Pe)を測定した。
【0056】
本特性比較で使用する試料は、下記のように作製した。
実施例13〜19では項目Iとして、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸被膜処理を施した後、無機絶縁粉末としてAlを、純鉄の水アトマイズ粉に対して0.50wt%をポットミルで12時間混合した。
比較例11〜13では項目Jとして、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸被膜処理を施した。
項目I,Jの実施例及び比較例にシランカップリング剤を0.1wt%混合し、さらにシリコーンレジンを0.3wt%混合し、180℃で2時間の加熱乾燥を行い、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.4wt%を混合した。
【0057】
比較例15〜17では項目Kとして、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸被膜処理を施した後、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.4wt%を混合した。
【0058】
項目I〜Kの実施例及び比較例を室温にて、1500MPaの圧力で加圧成形し、外径16mm、内径11mm、高さ11mmのリング状の成形体を作製し、非酸化性雰囲気中(N90%+H10%)にて、400〜650℃で2時間の熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。
【0059】
表4は、項目I〜Kの実施例及び比較例について、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した無機絶縁粉末の種類と比表面積と添加量、密度、20kHzでの透磁率及びコアロスとの関係について示した表である。また、図7〜9は、項目I〜Kの実施例及び比較例について、無機絶縁粉末の添加量と渦電流損失(Pe)の関係について示した図である。
【表4】

【0060】
表4から判るように、純鉄の水アトマイズ粉末に対して無機絶縁粉末を添加した実施例13〜19の項目Iでは、無機絶縁粉末を添加しない比較例11〜16の項目J及び項目Kを比較すると、項目Iでは、焼鈍温度が550℃を超えても渦電流損失が大きく増加しないことが判る。一方、項目Jでは、焼鈍温度が550℃を超えると渦電流損失が増加し、項目Kでは、500℃を超えると渦電流損失が増加することが判る。
【0061】
図7からは、焼鈍温度を高くするに従って、徐々に鉄損が低下していくことが、項目Kでは500℃、項目Jでは550℃で大幅に鉄損が増加することがわかる。一方、項目I、焼鈍温度を650℃にしても、鉄損の大幅な増加は見られないことが判る。図8からは、焼鈍温度を高くすると、項目Kでは500℃、項目Jでは550℃で大幅に渦電流損失が増加することがわかる。一方、項目Iでは、焼鈍温度を650℃にしても、渦電流損失の大幅な増加は見られないことが判る。図9からは、焼鈍温度を高くするに従って、徐々にヒステリシス損失が低下していくことが、項目Kでは500℃、項目Jでは、550℃で大幅にヒステリシス損失が増加することがわかる。一方、項目Iでは、焼鈍温度を650℃にしても、ヒステリシス損失の大幅な増加は見られないことが判る。
【0062】
以上より、純鉄の水アトマイズ粉末に対して無機絶縁粉末を添加することにより、焼鈍温度が550℃を超えた場合にでも、絶縁層が破壊されることが無いことが判る。成形した圧粉磁心内で、絶縁層により純鉄の水アトマイズ粉末同士が接触することがないため、十分な絶縁性能を発揮することができる。従って、高温での焼鈍することにより、軟磁性粉末内部の歪みを除去することにより、ヒステリシス損失(Pe)を低減した圧粉磁心を作製することができる。
【0063】
[6.他の実施形態]
本発明は、前記の実施形態に限定されるものではない。以下のような他の実施形態も包含する。前記実施例において使用した軟磁性粉末は、平均粒経75μmに限定するものではなく、平均粒径が30〜100μmの範囲のもので構わないが、この範囲より平均粒径が大きいと渦電流損失が増大し、一方、この範囲より平均粒径が小さいと、密度低下によるヒステリシス損失が増加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄を主成分とする軟磁性粉末と、無機絶縁粉末とを混合し、
その混合物を結着性絶縁樹脂で被覆し、その後、結着性絶縁樹脂を混合して得られた軟磁性粉末と潤滑性樹脂を混合し、
その混合物を加圧成形して成形体を作製し、その成形体を焼鈍してなる圧粉磁心において、
前記無機絶縁粉末の比表面積が、100〜300m/gであることを特徴とする圧粉磁心。
【請求項2】
前記無機絶縁粉末の添加量が、前記軟磁性粉末の0.5〜2.0%であることを特徴とする請求項1に記載の圧粉磁心。
【請求項3】
前記無機絶縁粉末が、マグネシア粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末、チタニア粉末及びジルコニア粉末の中の少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧粉磁心。
【請求項4】
前記軟磁性粉末が水アトマイズ法、ガスアトマイズ法または水ガスアトマイズ法で作製されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
【請求項5】
前記成形体が、550℃以上且つ前記軟磁性粉末が焼結を開始する温度以下で焼鈍されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
【請求項6】
前記軟磁性粉末と前記無機絶縁粉末とを混合する前に、前記軟磁性粉末に対してリン酸塩被膜を施すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
【請求項7】
軟磁性粉末に対して、無機絶縁粉末を混合する混合工程と、
混合工程を経た混合物を結着性絶縁樹脂で被覆する被覆工程と、
結着性絶縁樹脂で被覆した混合物に対して、潤滑剤を混合する第2混合工程と、
第2混合工程を経た混合物を、加圧成形処理して成形体を作製する成形工程と、
成形工程を経た成形体を焼鈍処理する焼鈍工程とを有する圧粉磁心の製造方法において、
前記無機絶縁粉末の比表面積が、100〜300m/gであることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
【請求項8】
前記無機絶縁粉末の添加量が、前記軟磁性粉末の0.5〜2.0%であることを特徴とする請求項7に記載の圧粉磁心の製造方法。
【請求項9】
前記混合工程で使用する前記絶縁粉末が、マグネシア粉末、アルミナ粉末、シリカ粉末、チタニア粉末及びジルコニア粉末の中の少なくとも1種類以上であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の圧粉磁心の製造方法。
【請求項10】
前記無機絶縁粉末の添加量が、前記軟磁性粉末の0.5〜2.0%であることを特徴とるす請求項7〜9のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
【請求項11】
前記軟磁性粉末が水アトマイズ法、ガスアトマイズ法または水ガスアトマイズ法で作製されたことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
【請求項12】
前記軟磁性粉末と前記無機絶縁粉末とを混合する混合工程の前に、前記軟磁性粉末に対してリン酸塩被膜を施すリン酸塩被膜工程を有することを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−245460(P2010−245460A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95370(P2009−95370)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】