説明

圧電デバイス

【課題】基板の配線上に絶縁膜が形成され、その上に電子部品が搭載される圧電デバイスにおいて、絶縁膜と電子部品との間に気泡が残らず安定した電子部品の密着性を確保した圧電デバイスを提供する。
【解決手段】配線31を備えた樹脂基板30と、樹脂基板30のIC配置領域39に配置されたICチップ20と、ICチップ20の上方に位置した水晶振動子と、樹脂基板20と水晶振動子との間に所定の間隔を保って水晶振動子の外部端子と樹脂基板30とを接続する複数の接続部材と、を有する水晶発振器において、樹脂基板30のIC配置領域39において、配線31の一部から分岐されて延長された複数の線状導体36が、IC配置領域39内の配線31間の隙間を埋めるようにお互いに接触せずに配置され、さらに少なくともIC配置領域39に存在する配線31および線状導体36を被覆するように絶縁膜38が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子と電子部品を備えた圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水晶発振器などを代表とする圧電デバイスが様々な電子機器に用いられている。圧電デバイスは水晶振動子などの圧電振動子とICチップなどの電子部品から構成されている。近年、電子機器の小型化が広範囲に進み、それに用いられる圧電デバイスも小型・薄型化の要求がなされている。
例えば、小型化された圧電デバイスとして、特許文献1に示すように、積層基板に電子部品を実装して樹脂でモールドし、その上方に圧電振動子を搭載する構造の圧電デバイスが知られている。この圧電デバイスの積層基板は、小型化によって各配線が近接するため、積層した複数の基板の間に配線を設けてショートの防止をしている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−347846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層基板における基板の1枚辺りの厚みは50〜60μm程度であり、上記の圧電デバイスのように複数の基板を用いることで、基板厚みが厚くなり、圧電デバイスの薄型化において不利である。
そこで、圧電デバイスの小型・薄型化を図る構造として、1層の基板で構成した圧電デバイスとして、図9に示す構造の圧電デバイスを考えた。図9(a)は圧電デバイスの構成を説明する模式断面図であり、図9(b)は、この圧電デバイスに用いられている基板を示す概略平面図である。
【0005】
図9(a)に示すように、圧電デバイスとしての水晶発振器101は、セラミックパッケージ111内部に水晶振動片112が収容された水晶振動子110、ICチップ120、樹脂基板130、樹脂基板130とその上方に位置する水晶振動子110とを接続する接続部材140を備えている。
樹脂基板130には配線131が形成され、この配線131の上にはレジストなどの絶縁膜138が形成されている。絶縁膜138の上にはICチップ120がフィルム状の接合材141にて固着され、金属ワイヤ122によって樹脂基板130に接続されている。
また、樹脂基板130には接続部材配置用電極135が形成され、この接続部材配置用電極135と水晶振動子110の外部端子115とが接続部材140を介して接続されている。そして、水晶振動子110と樹脂基板130の間をモールド樹脂142にてモールドされている。
【0006】
このように構成した水晶発振器101では、例えば図9(b)に示すような樹脂基板130の配線パターンが採用されている。なお、図9(b)では基板表面を覆う絶縁膜138を除去した状態の平面図を示している。
樹脂基板130には、配線131、ワイヤボンディング用電極132、接続部材配置用電極135、シールド電極136が配設されている。そして、ワイヤボンディング用電極132、接続部材配置用電極135を除き、配線131、シールド電極136を覆うようにして絶縁膜(図示せず)が形成されている。この絶縁膜は薄いため、その表面は配線131やシールド電極136を形成した面に倣った凹凸状態となっている。
樹脂基板130の中央部にはICチップ120が配置されるIC配置領域139が備えられている。このIC配置領域139では配線131の隙間を埋めるように広い面積を有してシールド電極136が形成されている。
【0007】
そして、上記の樹脂基板130の絶縁膜138の上にICチップ120がフィルム状の接合材141を用いて固着される。
このとき、シールド電極136が形成された上方の絶縁膜とICチップ120の間に気泡(ボイド)が入り易い。これは、シールド電極136の上の絶縁膜138とICチップ120の配置面とが、広い面積で面と面を受けるためである。
このような気泡が残った場合、樹脂基板130とICチップ120の密着性を低下させる。また、製造工程において、この気泡が加わる熱により膨張することによる電子部品のはがれ、破損などの不具合が生ずる。さらに、製品では温度の変化に対応して気泡が膨張または収縮することで、圧電デバイスの特性を変化させ信頼性低下の原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本適用例にかかる圧電デバイスは、配線を備え、一方の面に電子部品配置領域が設けられた基板と、前記基板の前記電子部品配置領域に配置された電子部品と、前記電子部品の上方に位置し、圧電振動片と、前記圧電振動片を内部に収容し外部端子を備えるパッケージと、を備えた圧電振動子と、前記基板と前記圧電振動子との間に配置され、前記圧電振動子の前記外部端子と前記基板とを接続する複数の接続部材と、を有する圧電デバイスであって、前記基板の前記電子部品配置領域において、複数の線状導体が、前記電子部品配置領域内の前記配線間の隙間を埋めるようにお互いに接触せずに配置されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、基板の電子部品が配置される電子部品配置領域において、複数の線状導体が、電子部品配置領域内の配線間の隙間を埋めるようにお互いに接触せずに配置されている。この電子部品配置領域内の表面は、広い面積の平坦部がなく細かな凹凸を有した表面状態となる。このことから、基板の電子部品配置領域内に電子部品が固定される際に、固着面の表面積が増え、基板と電子部品の安定した密着性を得ることができる。
また、基板の電子部品配置領域内の表面が細かな凹凸状態であることから、基板と電子部品との間に気泡が残ることがなくなり、製造工程において、気泡の存在に起因する電子部品のはがれ、破損などの不具合が生ずることがなくなる。さらに、製品では気泡に起因する圧電デバイスの特性変化がなくなり、信頼性を向上させることができる。
【0011】
[適用例2]上記適用例にかかる圧電デバイスにおいて、少なくとも前記電子部品配置領域に存在する前記配線および前記線状導体を被覆するように絶縁膜が形成されていることが望ましい。
【0012】
この構成によれば、基板上の電子部品配置領域内の細かな凹凸を有した表面を、絶縁膜で被覆することにより、絶縁膜の表面が細かな凹凸状態となる。よって、絶縁膜と電子部品との間に気泡が残ることがなくなり、製造工程において、気泡の存在に起因する電子部品のはがれ、破損などの不具合が生ずることがなくなる。さらに、製品では気泡に起因する圧電デバイスの特性変化がなくなり、信頼性を向上させることができる。さらに、電子部品の搭載による基板上の配線間のショートを防止できる。
【0013】
[適用例3]上記適用例にかかる圧電デバイスにおいて、前記複数の線状導体は、前記配線の一部から分岐されて延長されていることを特徴とする圧電デバイス。
【0014】
この構成によれば、配線の一部を所定の電位とするだけで複数の線状導体全てを同じ電位に固定することができる。
【0015】
[適用例4]上記適用例にかかる圧電デバイスにおいて、前記線状導体と接続された前記配線が、前記電子部品および前記基板のグランド電極に接続されていることが望ましい。
【0016】
この構成によれば、配線の一部から分岐されて電子部品配置領域内に延長された複数の線状導体が、シールド電極として機能する。このことから、電子部品から放射される電磁波ノイズや、圧電デバイスの外部から加わる電磁波ノイズによる圧電デバイスの特性に与える影響を無くすことができる。
【0017】
[適用例5]上記適用例にかかる圧電デバイスは、前記基板の前記電子部品配置領域において、少なくとも前記電子部品の配置面の対角に位置する2つの角部と平面視で重なる、前記配線の一部より延長された平面部を有することが望ましい。
【0018】
この構成によれば、配線の一部より延長された平面部の上の平坦な絶縁膜表面にて電子部品の角部を受けることができるため、電子部品を基板に固定する際に、電子部品の傾きを抑制することができ、基板とほぼ平行に電子部品を固定することができる。
【0019】
[適用例6]本適用例にかかる圧電デバイスにおいて、配線を備え、一方の面に電子部品配置領域と圧電振動子配置領域とが設けられた基板と、前記基板の前記電子部品配置領域に配置された電子部品と、圧電振動片と、前記圧電振動片を内部に収容し外部端子を備えるパッケージと、を備え前記圧電振動子配置領域に配置された圧電振動子と、を有する圧電デバイスであって、前記基板の前記電子部品配置領域において、複数の線状導体が、前記電子部品配置領域内の前記配線間の隙間を埋めるようにお互いに接触せずに配置されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、基板の電子部品が配置される電子部品配置領域において、複数の線状導体が、電子部品配置領域内の配線間の隙間を埋めるようにお互いに接触せずに配置されている。この電子部品配置領域内の表面は、広い面積の平坦部がなく細かな凹凸を有した表面状態となる。このことから、基板の電子部品配置領域内に電子部品が固定される際に、固着面の表面積が増え、基板と電子部品の安定した密着性を得ることができる。
また、基板の電子部品配置領域内の表面が細かな凹凸状態であることから、基板と電子部品との間に気泡が残ることがなくなり、製造工程において、気泡の存在に起因する電子部品のはがれ、破損などの不具合が生ずることがなくなる。さらに、製品では気泡に起因する圧電デバイスの特性変化がなくなり、信頼性を向上させることができる。
【0021】
[適用例7]上記適用例にかかる圧電デバイスにおいて、少なくとも前記電子部品配置領域に存在する前記配線および前記線状導体を被覆するように絶縁膜が形成されていることが望ましい。
【0022】
この構成によれば、基板上の電子部品配置領域内の細かな凹凸を有した表面を、絶縁膜で被覆することにより、絶縁膜の表面が細かな凹凸状態となる。よって、絶縁膜と電子部品との間に気泡が残ることがなくなり、製造工程において、気泡の存在に起因する電子部品のはがれ、破損などの不具合が生ずることがなくなる。さらに、製品では気泡に起因する圧電デバイスの特性変化がなくなり、信頼性を向上させることができる。さらに、電子部品の搭載による基板上の配線間のショートを防止できる。
【0023】
[適用例8]上記適用例にかかる圧電デバイスにおいて、前記複数の線状導体は、前記配線の一部から分岐されて延長されていることが望ましい。
【0024】
この構成によれば、配線の一部を所定の電位とするだけで複数の線状導体全てを同じ電位に固定することができる。
【0025】
[適用例9]上記適用例にかかる圧電デバイスにおいて、前記線状導体と接続された前記配線が、前記電子部品および前記基板のグランド電極に接続されていることが望ましい。
【0026】
この構成によれば、配線の一部から分岐されて電子部品配置領域内に延長された複数の線状導体が、シールド電極として機能する。このことから、電子部品から放射される電磁波ノイズや、圧電デバイスの外部から加わる電磁波ノイズによる圧電デバイスの特性に与える影響を無くすことができる。
【0027】
[適用例10]上記適用例にかかる圧電デバイスにおいて、前記基板の前記電子部品配置領域において、少なくとも前記電子部品の配置面の対角に位置する2つの角部と平面視で重なる、前記配線の一部より延長された平面部を有することが望ましい。
【0028】
この構成によれば、配線の一部より延長された平面部の上の平坦な絶縁膜表面にて電子部品の角部を受けることができるため、電子部品を基板に固定する際に、電子部品の傾きを抑制することができ、基板とほぼ平行に電子部品を固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。以下の実施形態では、圧電デバイスとして代表的な水晶発振器を例にとり説明する。
(第1の実施形態)
【0030】
図1は本実施形態の水晶発振器の構成を示す説明図であり、図1(a)は概略平面図、図1(b)は同図(a)のA−A断線に沿う概略断面図、図1(c)は同図(a)のB−B断線に沿う概略断面図である。
【0031】
水晶発振器1は、水晶振動子10、ICチップ20、樹脂基板30、接続部材40、モールド樹脂42とを備えている。この水晶発振器1は樹脂基板30にICチップ20が固着され、その上方に水晶振動子10が接続部材40を介して樹脂基板30に接続され、さらに水晶振動子10と樹脂基板30との間にモールド樹脂42が充填された構造となっている。
水晶振動子10は、セラミックパッケージ11に水晶振動片12が収容され、蓋体13によりセラミックパッケージ11内を気密に封止されている。水晶振動片12にはATカットの水晶片が用いられ、図示しないがその対向する面に励振電極が形成されている。水晶振動片12はセラミックパッケージ11内の接続端子14と導電性接着剤16を介して固着され、水晶振動片12の励振電極とセラミックパッケージ11の外面に形成された外部端子15とが導通する構造となっている。
【0032】
樹脂基板30は、ガラスエポキシまたはポリイミドなどの平板に10〜20μm程度の銅箔を接着した基板が用いられ、銅箔をエッチングして所望の配線31のパターンが形成されている。そして、樹脂基板30の一方の面には、接続に用いられる端子を除き、配線31のパターン表面にレジストなどで形成された絶縁膜38が形成されている。
ICチップ20は、水晶振動子10を励振させる発振回路、温度補償回路などを含んで構成されている。ICチップ20は、樹脂基板30の絶縁膜38の上にダイアタッチフィルム(DAF)接着剤などの接合材41を用いて固着されている。そして、ICチップ20のパッド21と樹脂基板30のワイヤボンディング用電極32とが、Au線などの金属ワイヤ22で接続されている。このワイヤボンディングでは、ファーストのボンディングを樹脂基板30側とし、セカンドのボンディングをICチップ20側として、金属ワイヤ22のループ高さを低くできるように構成している。
【0033】
接続部材40は銅などの金属ボールをコアとし、その表面に半田層を形成している。この接続部材40の半田層を溶融させて、樹脂基板30の四隅に形成された接続部材配置用電極35と水晶振動子10の外部端子15とが、接続部材40を介して接続される。また、この接続部材40は金属ボールをコアとすることで、水晶振動子10と樹脂基板30との間隔を一定に保つことができ、この間の寸法(厚み)を確実に管理することができる。
モールド樹脂42は、エポキシ樹脂などが用いられ、水晶振動子10と樹脂基板30との間、および水晶振動子10の側面にかけて樹脂モールドされている。なお、モールド樹脂42は水晶振動子10と樹脂基板30との間のみに充填されていても良い。
【0034】
次に樹脂基板の構成について詳細に説明する。
図2は本実施形態の樹脂基板の構成を示す概略平面図である。図3は樹脂基板とICチップの取り付け状態を説明する説明図であり、図3(a)は概略平面図、図3(b)は同図(a)のC−C断線に沿う概略断面図である。なお、図2、図3の平面図において、樹脂基板の表面を覆う絶縁膜は除去して示してある。
【0035】
図2に示すように、樹脂基板30は1層の基板からなり、その一方の面には、配線31、ワイヤボンディング用電極32、導通部34、接続部材配置用電極35が配設され、配線パターンが形成されている。また、樹脂基板30の他方の面には複数の外部端子33が設けられている。
ワイヤボンディング用電極32は配線31を介して導通部34に接続されている。この導通部34は樹脂基板30をビアホールにて貫通して設けられており、樹脂基板30の他方の面に設けられた外部端子33と直接に接続されている。
接続部材配置用電極35は、樹脂基板30上に水晶振動子10を搭載するための接続部材40が配置される電極である。本実施形態では4箇所の接続部材配置用電極35を設け、そのうちの2箇所においてワイヤボンディング用電極32と接続されている。
【0036】
また、樹脂基板30の中央部における配線31の間には、配線31の一部から分岐された複数の線状導体36が形成されている。線状導体36は配線31と同様に、樹脂基板30の銅箔をエッチングして得られるパターンであり、配線31間の隙間を埋めるようにお互いに接触せずに配置されている。また、複数の線状導体36は、隣接する線状導体36とほぼ同じ間隔(30μm〜50μm)をあけて配置されている。例えば、線状導体36の幅を30μmのとき、隣接する線状導体36までの幅は30μmとしている。図2の網掛け部で示す部分が線状導体36である。そして、この線状導体36と接続される配線31は一方で導通部34を介してグランド電極として構成される一つの外部端子33に接続され、他方でグランド電極として構成される一つのワイヤボンディング用電極32に接続されている。
そして、樹脂基板30の一方の面はワイヤボンディング用電極32、接続部材配置用電極35を除き、絶縁膜にて被覆されている(図示せず)。
【0037】
次に、図3において、ICチップが搭載される位置および状態について説明する。
図3(a)において、二点鎖線で囲んだ領域がIC配置領域39であり、ICチップが搭載される領域である。このIC配置領域39では、前述したように、配線31の一部から分岐されてIC配置領域39内に延長された複数の線状導体36が、IC配置領域39内の配線31間の隙間を埋めるようにお互いに接触せずに配置されている。さらに、このIC配置領域39において、少なくともICチップの配置面の対角に位置する2つの角部と平面視で重なる、配線31の一部より延長された平面部37を有している。なお、この平面部は対角に位置する2つの角部に他のもう一つの角部を追加して設けても良いし、4つの角部に平面部を形成しても良い。
【0038】
図3(b)はICチップ20を樹脂基板30に搭載した状態を示す概略断面図である。樹脂基板30の表面に形成された絶縁膜38の表面は、絶縁膜38が5〜20μm程度で薄いため、配線31などの凹凸に倣って同様な凹凸状態となっている。ICチップ20と搭載するIC配置領域も、配線31および複数の線状導体36の上に絶縁膜38が形成されることから絶縁膜38の表面は、細かな凹凸状態となっている。この絶縁膜38の表面に、ICチップ20がダイアタッチフィルム(DAF)接着剤などの接合材41を用いて固着される。
このとき、ICチップ20の対角に位置する2つの角部が平面部37上の平坦な絶縁膜38で受けることができるため、ICチップ20の傾きを抑制し、樹脂基板30とほぼ平行にICチップ20を固定することができる。また、IC配置領域の絶縁膜38表面が凹凸表面となるため固着面の表面積が増え、樹脂基板30とICチップ20の安定した密着性を得ることができる。
【0039】
樹脂基板30にICチップ20を搭載した後は、図4に示すように、ICチップ20のパッド21と樹脂基板30のワイヤボンディング用電極32とが金属ワイヤ22により接続される。
図5は水晶振動子の底面を示す平面図である。水晶振動子10の底面には外部基板との接続がなされる外部端子15が四隅に設けられている。図4に示すように、この外部端子15に対応した位置に、樹脂基板30の接続部材配置用電極35が形成されている。
そして、図1に示したように樹脂基板30の四隅に形成された接続部材配置用電極35と水晶振動子10の外部端子15とが、接続部材40を介して接続される。
最後に、モールド樹脂42が、水晶振動子10と樹脂基板30との間、および水晶振動子10の側面にかけて充填されて水晶発振器1が製造される。
【0040】
以上、本実施形態の水晶発振器1によれば、樹脂基板30のICチップ20が配置されるIC配置領域39において、配線31の一部から分岐されてIC配置領域39内に延長された複数の線状導体36が、IC配置領域39内の配線31間の隙間を埋めるようにお互いに接触せずに配置されている。そして、少なくともIC配置領域39に存在する配線31および線状導体36を被覆するように絶縁膜38が形成されている。このIC配置領域39内の絶縁膜38表面は、広い面積の平坦部がなく細かな凹凸を有した表面状態となる。このことから、樹脂基板30のIC配置領域39内にICチップ20が固定される際に、固着面の表面積が増え、樹脂基板30とICチップ20の安定した密着性を得ることができる。
また、絶縁膜38の表面が細かな凹凸状態であることから、絶縁膜38とICチップ20との間に気泡が残ることがなくなり、製造工程において、気泡の存在に起因するICチップ20のはがれ、破損などの不具合が生ずることがなくなる。さらに、製品では気泡に起因する水晶発振器1の特性変化がなくなり、信頼性を向上させることができる。
また、線状導体36と接続された配線31が、グランド電極に接続されていることから、配線31の一部から分岐されてIC配置領域39内に延長された複数の線状導体36が、シールド電極として機能し、ICチップ20から放射される電磁波ノイズや水晶発振器1の外部から加わる電磁波ノイズの影響をなくすことができる。
さらに、ICチップ20の対角に位置する2つの角部と平面視で重なる、配線31の一部より延長された平面部37を有することから、平面部37の上の絶縁膜38表面にてICチップ20の角部を受けることができる。このため、ICチップ20を樹脂基板30に固定する際に、ICチップ20の傾きを抑制することができ、樹脂基板30とほぼ平行にICチップ20を固定することができる。
(第2の実施形態)
【0041】
次に、水晶発振器における第2の実施形態について説明する。本実施形態では水晶発振器の薄型化を図った態様であり、水晶振動子とICチップを並列に配置した構造である。
図6は第2の実施形態における水晶発振器の構成を示す説明図であり、図6(a)は概略平面図、図6(b)は同図(a)のE−E断線に沿う概略断面図である。なお、第1の実施形態と同様な構成については同符号を付し、説明を省略する。
【0042】
水晶発振器2は、水晶振動子10、ICチップ20、樹脂基板50、モールド樹脂42とを備えている。
樹脂基板50は、ガラスエポキシまたはポリイミドなどの平板に銅箔を接着した基板が用いられ、銅箔をエッチングして所望の配線のパターンが形成されている。そして、樹脂基板50の一方の面には、接続に用いられる端子を除き、配線のパターン表面にレジストなどで形成された絶縁膜が形成されている。
この水晶発振器2は樹脂基板50にICチップ20が固着され、その横に並列して水晶振動子10が樹脂基板50に接続され、さらに水晶振動子10およびICチップを覆うようにモールド樹脂42が形成された構造となっている。
水晶振動子10の外部端子15は、樹脂基板50の接続端子62と半田43を介して接続され、水晶振動子10が樹脂基板50に固定されている。
また、ICチップ20は、樹脂基板50の表面に被覆された絶縁膜58上にダイアタッチフィルム(DAF)接着剤などの接合材41を用いて固着されている。そして、ICチップ20のパッド21と樹脂基板30のワイヤボンディング用電極とが、Au線などの金属ワイヤ22で接続されている。
【0043】
次に樹脂基板の構成について詳細に説明する。
図7は本実施形態の樹脂基板の構成を示す概略平面図である。図8は樹脂基板とICチップおよび水晶振動子の取り付け状態を説明する概略平面図である。なお、図7、図8において、樹脂基板の表面を覆う絶縁膜は除去して示してある。
【0044】
図7に示すように、樹脂基板50は1層の基板からなり、その一方の面には、配線51、ワイヤボンディング用電極52、導通部54、振動子接続用電極55が配設され、配線パターンが形成されている。また、樹脂基板50の他方の面には複数の外部端子(図示せず)が設けられている。樹脂基板50の一方の面には、水晶振動子10が搭載される振動子配置領域45と、ICチップが搭載されるIC配置領域59に区分され、それぞれ横に並んだ形態である。
ワイヤボンディング用電極52は配線51を介して導通部54に接続されている。この導通部54は樹脂基板50をビアホールにて貫通して設けられており、樹脂基板50の他方の面に設けられた外部端子に接続されている。
【0045】
また、樹脂基板50のIC配置領域59における配線51の間には、配線51の一部から分岐された複数の線状導体56が形成されている。線状導体56は配線51と同様に、樹脂基板50の銅箔をエッチングして得られるパターンであり、配線51間の隙間を埋めるようにお互いに接触せずに配置されている。また、複数の線状導体56は、隣接する線状導体56とほぼ同じ間隔をあけて配置されている。図7の網掛け部で示す部分が線状導体56である。そして、この線状導体56と接続される配線51は一方で導通部54を介してグランド端子として構成される一つの外部端子に接続され、他方でグランド端子として構成される一つのワイヤボンディング用電極52に接続されている。さらに、このIC配置領域59において、少なくともICチップの配置面の対角に位置する2つの角部と平面視で重なる、配線51の一部より延長された平面部57を有している。
そして、樹脂基板50の一方の面はワイヤボンディング用電極52を除き、絶縁膜にて被覆されている(図示せず)。
【0046】
次に、ICチップおよび水晶振動子が搭載される位置および状態について、図8を用いて説明する。
樹脂基板50の表面に形成された絶縁膜の表面は、配線51などの凹凸に倣って同様な凹凸状態となっている。ICチップ20を搭載するIC配置領域も、配線51および複数の線状導体56の上に絶縁膜が形成されることから絶縁膜の表面は、細かな凹凸状態となっている。この絶縁膜の表面に、ICチップ20がダイアタッチフィルム(DAF)接着剤などの接合材を用いて固着される。
このとき、ICチップ20の対角に位置する2つの角部が平面部57上の平坦な絶縁膜で受けることができるため、ICチップ20の傾きを抑制し、樹脂基板50とほぼ平行にICチップ20を固定することができる。また、IC配置領域の絶縁膜表面が凹凸表面となるため固着面の表面積が増え、樹脂基板50とICチップ20の安定した密着性を得ることができる。
【0047】
樹脂基板50にICチップ20を搭載した後は、ICチップ20のパッド21と樹脂基板50のワイヤボンディング用電極52とが金属ワイヤ22により接続される。
そして、樹脂基板50の振動子接続用電極55と水晶振動子10の外部端子とが、半田を介して接続される。
最後に、図6に示すように、モールド樹脂42が、水晶振動子10およびICチップ20を覆うようにモールド樹脂42が形成されて水晶発振器2が製造される。
【0048】
以上、本実施形態の水晶発振器2によれば、樹脂基板50のICチップ20が配置されるIC配置領域59において、配線51の一部から分岐されてIC配置領域59内に延長された複数の線状導体56が、IC配置領域59内の配線51間の隙間を埋めるようにお互いに接触せずに配置されている。そして、少なくともIC配置領域59に存在する配線51および線状導体56を被覆するように絶縁膜58が形成されている。このIC配置領域59内の絶縁膜58表面は、広い面積の平坦部がなく細かな凹凸を有した表面状態となる。このことから、樹脂基板50のIC配置領域59内にICチップ20が固定される際に、固着面の表面積が増え、樹脂基板50とICチップ20の安定した密着性を得ることができる。
また、線状導体56と接続された配線51が、グランド電極に接続されていることから、配線51の一部から分岐されてIC配置領域59内に延長された複数の線状導体56が、シールド電極として機能し、ICチップ20から放射される電磁波ノイズや水晶発振器2の外部から加わる電磁波ノイズの影響をなくすことができる。
さらに、ICチップ20の対角に位置する2つの角部と平面視で重なる、配線51の一部より延長された平面部57を有することから、平面部57の上の絶縁膜58表面にてICチップ20の角部を受けることができる。このため、ICチップ20を樹脂基板50に固定する際に、ICチップ20の傾きを抑制することができ、樹脂基板50とほぼ平行にICチップ20を固定することができる。
【0049】
なお、第1実施形態、第2の実施形態では、基板として樹脂基板を用いて説明をしたが、セラミック基板を用いても実施することが可能である。
また、第1実施形態、第2の実施形態では、圧電振動子として水晶振動子を例示したが、他の圧電振動子として振動ジャイロセンサ、SAW共振子などを用いて圧電デバイスを構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1の実施形態における水晶発振器の構成を示す説明図であり、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A断線に沿う概略断面図、(c)は(a)のB−B断線に沿う概略断面図。
【図2】第1の実施形態における樹脂基板の構成を示す概略平面図。
【図3】第1の実施形態における樹脂基板とICチップの取り付け状態を説明する説明図であり、(a)は概略平面図、(b)は(a)のC−C断線に沿う概略断面図。
【図4】第1の実施形態におけるICチップのワイヤボンディング状態を示す概略平面図。
【図5】第1実施形態における水晶振動子の底面を示す平面図。
【図6】第2の実施形態における水晶発振器の構成を示す説明図であり、(a)は概略平面図、(b)は(a)のE−E断線に沿う概略断面図。
【図7】第2の実施形態における樹脂基板の構成を示す概略平面図。
【図8】第2の実施形態における樹脂基板とICチップおよび水晶振動子の取り付け状態を説明する概略平面図。
【図9】小型・薄型化を図った構造の圧電デバイスを説明する説明図であり、(a)は圧電デバイスの模式断面図、(b)は基板の構成を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0051】
1,2…圧電デバイスとしての水晶発振器、10…圧電振動子としての水晶振動子、11…セラミックパッケージ、12…圧電振動片としての水晶振動片、13…蓋体、14…接続端子、15…外部端子、16…導電性接着剤、20…電子部品としてのICチップ、21…パッド、22…金属ワイヤ、30…樹脂基板、31…配線、32…ワイヤボンディング用電極、33…外部端子、34…導通部、35…接続部材配置用電極、36…線状導体、37…平面部、38…絶縁膜、39…電子部品配置領域としてのIC配置領域、40…接続部材、41…接合材、42…モールド樹脂、43…半田、45…振動子配置領域、50…樹脂基板、51…配線、52…ワイヤボンディング用電極、53…外部端子、54…導通部、55…振動子接続用電極、56…線状導体、57…平面部、58…絶縁膜、59…電子部品配置領域としてのIC配置領域、62…接続端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線を備え、一方の面に電子部品配置領域が設けられた基板と、
前記基板の前記電子部品配置領域に配置された電子部品と、
前記電子部品の上方に位置し、圧電振動片と、前記圧電振動片を内部に収容し外部端子を備えるパッケージと、を備えた圧電振動子と、
前記基板と前記圧電振動子との間に配置され、前記圧電振動子の前記外部端子と前記基板とを接続する複数の接続部材と、を有する圧電デバイスであって、
前記基板の前記電子部品配置領域において、複数の線状導体が、前記電子部品配置領域内の前記配線間の隙間を埋めるようにお互いに接触せずに配置されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電デバイスであって、
少なくとも前記電子部品配置領域に存在する前記配線および前記線状導体を被覆するように絶縁膜が形成されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電デバイスであって、
前記複数の線状導体は、前記配線の一部から分岐されて延長されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電デバイスであって、
前記線状導体と接続された前記配線が、前記電子部品および前記基板のグランド電極に接続されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の圧電デバイスであって、
前記基板の前記電子部品配置領域において、少なくとも前記電子部品の配置面の対角に位置する2つの角部と平面視で重なる、前記配線の一部より延長された平面部を有することを特徴とする圧電デバイス。
【請求項6】
配線を備え、一方の面に電子部品配置領域と圧電振動子配置領域とが設けられた基板と、
前記基板の前記電子部品配置領域に配置された電子部品と、
圧電振動片と、前記圧電振動片を内部に収容し外部端子を備えるパッケージと、を備え前記圧電振動子配置領域に配置された圧電振動子と、を有する圧電デバイスであって、
前記基板の前記電子部品配置領域において、複数の線状導体が、前記電子部品配置領域内の前記配線間の隙間を埋めるようにお互いに接触せずに配置されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の圧電デバイスであって、
少なくとも前記電子部品配置領域に存在する前記配線および前記線状導体を被覆するように絶縁膜が形成されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項8】
請求項6または7に記載の圧電デバイスであって、
前記複数の線状導体は、前記配線の一部から分岐されて延長されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項9】
請求項8に記載の圧電デバイスであって、
前記線状導体と接続された前記配線が、前記電子部品および前記基板のグランド電極に接続されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれか一項に記載の圧電デバイスであって、
前記基板の前記電子部品配置領域において、少なくとも前記電子部品の配置面の対角に位置する2つの角部と平面視で重なる、前記配線の一部より延長された平面部を有することを特徴とする圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−100398(P2009−100398A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272165(P2007−272165)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】