説明

圧電デバイス

【課題】板状の圧電素子と、金属板と、支持部材を備え、金属板は支持部材により支持されている圧電デバイスに於いて、薄型化を可能とし、加速度センサとして好適な圧電デバイスを提供する。
【解決手段】板状の圧電素子1、金属板2、支持部材3を備え、金属板2の片面にのみ圧電素子1及び支持部材3が固定され、金属板2は支持部材3により支持されることで、金属板2の厚さと圧電素子1または支持部材3の厚さを加算した厚さとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電効果を利用した圧電デバイスに関し、特に加速度センサとして好適に用いられる圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
図9は従来技術としての特許文献1における圧電デバイスの斜視図である。図9には、所定方向に分極処理された圧電素子1と、金属板2と、支持部材3とから構成される圧電式加速度センサが記載されている。
【0003】
支持部材3には、基板回路部と、基板回路部の端部から突出した略平面状の基板ベース部とを備えている。また、金属板2の一方の板面を基板ベース部の一方の面に支持固定し、金属板の他方の板面は、所定方向において圧電素子1と基板ベース部とが重ならないように、圧電素子1が支持固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/043219号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の圧電デバイスの厚さは、圧電素子と金属板と支持部材の厚さが加算された厚さとなる。圧電デバイスを薄型化する上では、圧電素子と金属板と支持部材の全てを薄くしなければならず、このような薄型化には限界があるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を、板状の圧電素子と、金属板と、支持部材を備え、金属板の片面にのみ圧電素子及び支持部材が固定され、金属板は支持部材により支持されている圧電デバイスにより解決する。
【0007】
すなわち、圧電素子及び支持部材が金属板の片面にのみ固定されていることで、圧電デバイスの厚さは、圧電素子が支持部材よりも薄い場合は金属板と支持部材が加算された厚さとなり、支持部材が圧電素子よりも薄い場合は金属板と圧電素子の厚さが加算された厚さとなる。
【0008】
さらに、圧電素子、金属板および支持部材の少なくとも一部を収容するケースを備え、支持部材をケースに固定することで金属板とケースとの間及び圧電素子とケースとの間に金属板の最大振動振幅よりも大である隙間が設けられた圧電デバイスとしてもよい。
【0009】
支持部材をケースにより固定することで、圧電素子が振動できる隙間を確保しつつ薄型化ができる。さらに、圧電素子、金属板および支持部材がケースに収容されているので、圧電デバイスを取り付ける際に、ケース上の任意の場所を保持できるため、取り付け作業性が向上する。
【0010】
また、支持部材の厚み寸法は、圧電素子の厚み寸法と最大振動振幅を合わせた寸法より大きいほうが望ましい。
【0011】
このような構成とすることで、ケースに余分な窪みを設けなくとも圧電素子が振動できるような隙間を確保することができる。
【0012】
また、圧電素子の金属板に固定されていない面に外部電極を形成し、支持部材の金属板に固定されていない面に接続電極を形成し、外部電極と接続電極を、接続導体により導電接続し、支持部材は金属板の長辺方向端部の少なくともいずれか一方を支持し、圧電素子における長辺方向の端部中央の近傍で外部電極と接続導体は導電接続され、接続導体が長辺方向に沿って引き回されている圧電デバイスとしてもよい。
【0013】
圧電素子における長辺方向の端部中央近傍で接続導体を固定し、さらに接続導体を長辺方向に沿って引き回す構成としているため、圧電素子が接続導体の影響で長辺方向に対してねじれて振動する異常振動を防ぐことができる。
【0014】
また、ケースに導電性を持たせて、外部電極とケースを弾性導電体により電気的に接続されている圧電デバイスとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、薄型の圧電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における圧電デバイスの一例を示した図。図1(a)は斜視図、図1(b)は、図1(a)のAA面における断面図。
【図2】本発明における圧電デバイスの一例を示した図。図2(a)は斜視図、図2(b)は、図2(a)におけるケース5の平面図。
【図3】本発明における圧電デバイスの一例を示した図。図3(a)、図3(b)は図2(a)のBB面における断面図。
【図4】本発明における圧電デバイスの一例を示した図。図4(a)は斜視図、図4(b)は、図4(a)のAA面における断面図。
【図5】本発明における圧電デバイスの一例を示した図。図5(a)は斜視図、図5(b)は、図5(a)のAA面における断面図。
【図6】本発明における圧電デバイスの一例を示した図。図6(a)は斜視図、図6(b)は、図6(a)のAA面における断面図。
【図7】本発明における圧電デバイスの一例を示した図。図7(a)は斜視図、図7(b)は、図7(a)のAA面における断面図。
【図8】本発明における圧電デバイスの一例を示した図。図8(a)は斜視図、図8(b)は、図8(a)のAA面における断面図。
【図9】特許文献1における圧電デバイスの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図を用いて説明する。
【0018】
図1(a)は、本発明における圧電デバイスの一例を示す斜視図である。また、図1(b)は、図1(a)のAA面における断面図である。
【0019】
図1において、板状の圧電素子1の表面には外部電極11がスパッタリング等により形成され、圧電素子1の裏面は金属板2の中央に接着剤等により固定されている。
【0020】
金属板2の長手方向両端部は回路基板等の支持部材3の裏面で半田や導電性接着剤等により固定される。
【0021】
このように、両端が支持部材3により支持された金属板2中央の空きスペースに圧電素子1を配置する構成としているため、圧電デバイスの薄型化が可能となる。
【0022】
支持部材3の表面には接続電極31が設けられ、接続電極31と外部電極11とは、接続導体4によって電気的に接続されている。
【0023】
なお、接続導体4としては、リード線、板状端子、ばね端子、フレキシブル基板などを用いることができるが、これらに限るものではない。なお、接続導体を圧電素子1の振動を妨げない程度に幅広の板状導体を用いることで、導電接続部のはがれや、断線の可能性をより低くすることができ、導電接続の信頼性が向上する。また、接続導体を圧電素子1の振動を妨げない程度に幅広の板状導体とすれば、自動組立機での組立が可能となるため、組立精度の向上と加工工数の低減が可能となる。
【0024】
また、接続導体4と接続電極31、外部電極11とは、半田や、導電フィラーを接着剤に分散した導電性接着剤等により電気的に接続することができるが、これらに限るものではない。
【0025】
なお、圧電素子1を長方形板として、金属板2が圧電素子1の長辺方向両端部付近で、金属板2の長辺方向の長さ以上の寸法の支持部材3により支持されているため、圧電素子1は長辺方向における中央部が振動する。また、圧電素子1の振動を妨げないよう、圧電素子1と支持部材3との間に充分な隙間を設けるのが望ましく、圧電素子1の長辺の側面と支持部材3の側面との間に隙間を設けるため、支持部材3上の金属板2の固定部は、腕部311、312上の根元及び先端より余白を残すよう配置するのが望ましい。さらに、圧電素子1の短辺の側面と腕部311、312の側面との間にも隙間を設けるよう配置するのが望ましく、腕部311、312との間の隙間寸法が等しければ、圧電素子1の振動の腹と金属板2の振動の腹の位置が一致するため、さらに望ましい。
【0026】
なお、外部電極11と接続導体4の接続部は、接続導体4により振動が抑制される場合もあるため、圧電素子1の長辺方向端部にあることが望ましい。
【0027】
また、圧電素子1面内の長辺方向と垂直な短辺方向の端部に外部電極11と接続導体4の接続部があると、圧電素子1が長辺方向に対してねじれる振動を誘発することがあるため、圧電素子1の短辺方向中央にあることが望ましい。
【0028】
支持部材3にはケーブル301が接続され、駆動電源の供給や、圧電デバイスの出力を取り出す等の役割を担う。
【0029】
圧電デバイス使用方法の一例として、加速度センサとして用いる場合を説明する。加速度が圧電デバイスに作用すると、圧電素子1と金属板2がたわみ、圧電素子1の表裏面間には電位差が発生する。
【0030】
圧電素子1の表面の電位は外部電極11を介して接続導体4、接続電極31、支持部材3へと伝達される。一方、圧電素子1の裏面の電位は金属板2を介して支持部材3へと伝達される。
【0031】
さらに支持部材3に導電経路を設けておけば、ケーブル301を介して圧電素子表裏面の電位差を外部に取り出すことができる。
【0032】
なお、支持部材3に検出回路や増幅回路等を設けておき、圧電素子1表裏面の電位差を高精度に検出し増幅させれば、加速度を高感度で検出することも可能となる。
【0033】
図2(a)は、本発明における圧電デバイスの一例を示す斜視図である。図2(b)は、図2(a)におけるケース5の平面図である。
【0034】
図1の圧電デバイスをケース5及びケース蓋部51により封止することで、外部からの衝撃等による破損、外気による腐食や劣化を防ぐことができる。また、ケース5やケース蓋部51を金属などの導電体で作成すれば、外部からの電磁ノイズの影響を防ぐことができる。
【0035】
例えば、ケース5に窪み501、502、503を設け、窪み501をケーブル301の高さよりやや深く、窪み502を図1の圧電デバイスの金属板を除く高さよりもやや深く、窪み503を図1の圧電デバイスの金属板を含む高さと金属板の最大振動振幅を併せた高さよりもやや深くしておくことで、窪み501よりケーブル301を導出し、窪み502に支持部材3を固定し、窪み501、502、503全体に図1の圧電デバイスを収容することができる。
【0036】
さらに、ケース蓋部51をケース5に接着剤などで固定することにより、図1の圧電デバイスを封止することができる。
【0037】
なお、接続導体4や接続電極31がケース蓋部51と接近する場合は、ケース蓋部51を絶縁体で構成するか、ケース蓋部51上の接続導体4や接続電極31近傍を絶縁体で覆うことで、電気的短絡等の不具合を防ぐことができる。
【0038】
図3(a)及び図3(b)は、図2(a)のBB面における断面図である。
【0039】
図3(a)の構成では、金属板2はケース5内壁底面との間に、金属板2の最大振動振幅よりも大きな隙間が設けられている。圧電素子1の外部電極11もケース蓋部51との間に、圧電素子1の最大振動振幅よりも大きな隙間が設けられている。
【0040】
なお、振動によって圧電素子1がケース蓋部51に衝突することが無いように圧電素子1を支持部材3よりも薄くしておくのが望ましい。
【0041】
図3(a)の変形例である図3(b)では、圧電素子1の外部電極11がケース5内壁底面と対面し、弾性導電体41によって外部電極11とケース5が導電接続されている。
【0042】
ケース5は、全体が金属等の導電体で作成するか、弾性導電体41の導電接続部から支持部材3まで導電経路を形成しておく。
【0043】
ケース5からの導電経路が形成できれば、支持部材3上の導電経路を片面とすることも可能である。
【0044】
なお、弾性導電体として導電ゴム、板ばねやコイルばね等の金属ばねが挙げられるが、これに限るものではない。
【0045】
また、図3(b)の構成では、支持部材3とケース5内壁底面との間に隙間を設ける必要が無いため、図3(a)の構成より薄型とすることが可能となる。
【0046】
さらに、支持部材3とケース5内壁底面との間を直接固定すれば、ケース5の窪み502を省略することができるため、ケース5の構成をより簡略化できる。
【0047】
なお、振動によって金属板2がケース蓋部51に衝突することが無いよう、金属板2とケース蓋部51の間に隙間を設けておくのが望ましい。
【0048】
同様に、振動によって圧電素子1の外部電極11がケース5内壁底面に衝突することが無いよう、圧電素子1を支持部材3よりも薄くしておくのが望ましい。
【0049】
図4(a)は、本発明における圧電デバイスの他の一例を示す斜視図である。また、図4(b)は、図4(a)のAA面における断面図である。
【0050】
金属板2の一方の端部でのみ支持部材3によって支持されている点が図1とは異なる。
【0051】
なお、支持部材3によって支持されていない金属板2の他方の端部は、圧電素子1より延在していなくともよい。
【0052】
図4の構成は、図1よりも回路部品が少ない場合、小型化が必要な場合に適している。
【0053】
図5(a)は、本発明における圧電デバイスの他の一例を示す斜視図である。また、図5(b)は、図5(a)のAA面における断面図である。
【0054】
支持部材3が金属板2の一方の端部を支持する部分のみとなっている点が図1とは異なる。
【0055】
なお、支持部材3によって支持されていない金属板2の他方の端部は、圧電素子1より延在していなくともよい。
【0056】
図5の構成は、図4よりも回路部品が少ない場合、より小型化が必要な場合に適している。
【0057】
図6(a)は、本発明における圧電デバイスの他の一例を示す斜視図である。また、図6(b)は、図6(a)のAA面における断面図である。
【0058】
支持部材3が金属板2の一方の端部より延在している点が図4とは異なる。
【0059】
なお、支持部材3によって支持されていない金属板2の他方の端部は、圧電素子1より延在していなくともよい。
【0060】
図6の構成は、図1よりも回路部品が少ない場合、細長い外形とする場合に適している。
【0061】
図7(a)は、本発明における圧電デバイスの他の一例を示す斜視図である。また、図7(b)は、図7(a)のAA面における断面図である。
【0062】
支持部材3中央の貫通穴部に圧電素子1を配置している点が図1とは異なる。
【0063】
図7の構成は、図1よりも回路部品が多い場合、高機能化が必要な場合、支持部材の強度が必要な場合に適している。
【0064】
図8(a)は、本発明における圧電デバイスの他の一例を示す斜視図である。また、図8(b)は、図8(a)のAA面における断面図である。
【0065】
支持部材3の外形が円形である点が図1とは異なる。
【0066】
図8の構成も、図1よりも回路部品が多い場合、高機能化が必要な場合、支持部材の強度が必要な場合に適している。
【実施例】
【0067】
本発明の実施形態の一例を説明する。
【0068】
図1は、本発明の実施形態の一例を示している。
【0069】
圧電素子1の材質はPbZrTiO3セラミックであり、表裏面には電極を形成した。寸法は長さ4.0mm、幅1.6mm、厚さ0.4mmである。
【0070】
金属板2の材質はリン青銅であり、寸法は長さ5.7mm、幅1.6mm、厚さ0.1mmである。
【0071】
金属板2の中央に圧電素子1を熱硬化性エポキシ樹脂により接着した。
【0072】
支持部材3は図1の形状であり、材質はガラスエポキシ基板、厚さ0.4mm、外形は7mm×7mmの正方形の一辺の両端に1.7mm×0.5mmの長方形が突き出した形状である。
【0073】
支持部材3の正方形の部分に圧電素子1とケーブル301とを電気的に接続するための導電パターンを形成し、信号を出力する為のケーブル301を接続した。
【0074】
金属板2と支持部材3は半田により導電接続を行い、固定した。
【0075】
外部電極11と接続電極31は接続導体として導電線材を用いて半田付けにより導電接続を行った。
【0076】
さらに、図2(b)の材質がSUS304よりなるケース5の窪み502に支持部材3の正方形部分を熱硬化性エポキシ樹脂で接着し、ケース蓋部51はケース5に圧入により固定して圧電デバイスを作製した。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の圧電デバイスは、電子機器に対して発生する衝撃や、電子機器自身が発する振動を検知する加速度センサとしても用いられる。
【符号の説明】
【0078】
1 圧電素子
11 外部電極
2 金属板
3 支持部材
31 接続電極
301 ケーブル
311、312 腕部
4 接続導体
41 弾性導電体
5 ケース
51 ケース蓋部
501、502、503 窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の圧電素子と、金属板と、支持部材を備え、前記圧電素子及び前記支持部材が前記金属板の片面にのみ固定され、かつ前記金属板が前記支持部材により支持されることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記圧電素子、前記金属板および前記支持部材の少なくとも一部を収容するケースをさらに備え、前記支持部材が前記ケースにより固定され、前記金属板と前記ケースとの間、及び、前記圧電素子と前記ケースとの間に前記金属板の最大振動振幅よりも大である隙間が設けられることを特徴とする請求項1記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記支持部材の厚み寸法は、前記圧電素子の厚み寸法と前記最大振動振幅を合わせた寸法より大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記圧電素子の前記金属板に固定されていない面に外部電極が形成され、前記支持部材の前記金属板に固定されていない面に接続電極が形成され、前記外部電極と前記接続電極が、接続導体により導電接続され、前記金属板の形状が長方形板であり、前記支持部材は前記金属板の長辺方向端部の少なくとも一方を支持し、前記圧電素子における前記長辺方向の端部の中央近傍で前記外部電極と前記接続導体を導電接続し、前記接続導体が前記長辺方向に沿って引き回されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記圧電素子、前記金属板を収容するケースをさらに備え、前記ケースは導電性を持ち、前記圧電素子の前記金属板に固定されていない面に外部電極を形成し、前記外部電極と前記ケースが弾性導電体により導電接続されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−47637(P2013−47637A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185921(P2011−185921)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【特許番号】特許第5036013号(P5036013)
【特許公報発行日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】