説明

圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法

【課題】 超小型であっても安定したバンプ接合を行うことができる圧電振動デバイスおよび、該圧電振動デバイスの製造方法を提供することを目的とする
【解決手段】 水晶振動片2が、バンプ5を介して筐体1と接合される水晶振動子において、水晶振動片2は、筐体1との接合部に凹陥部4が形成されており、筐体1の水晶振動片2との接合部には、凸状の頂部を有するバンプ5が配され、前記頂部に、前記凹陥部4を一対一で冠着して接合することによって、バンプの一部が凹陥部4内に埋没している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電振動デバイスおよび圧電振動デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子は、移動体通信機器等の電子機器に広く用いられている圧電振動デバイスである。例えば表面実装型の水晶振動子は、図10に示すように水晶振動片2が、上部に開口部17を有する断面視凹形状の筐体1の内部に片持ち支持接合され、平板状の蓋体3で開口部17を気密封止した構造となっている。水晶振動片2の表裏面の中央付近には、水晶振動片2を駆動させるための一対の励振電極(図示省略)が対向して配置されており、前記一対の励振電極の各々から水晶振動片の一端側に金属からなる接合電極(図示省略)が引き出されている。一方、筐体1の内部に形成された段部14の上面には、金属からなる一対の搭載電極13が形成されている。前記搭載電極13は、筐体の底面(裏面)に形成されている外部接続端子(図示省略)と、筐体内部に形成された配線導体(図示省略)を介して電気的に接続されている。
【0003】
水晶振動片2と筐体1との接合は、以下の要領で行われる。まず、前記一対の搭載電極13の上に金属からなるバンプ5(例えばスタッドバンプ)を各々配しておく(形成しておく)。そして、当該バンプに前記接合電極が当接するように、水晶振動片2を搭載電極13上に位置決め載置した後、超音波を印加し、接合電極とバンプ間の金属間拡散接合によって、水晶振動片2と筐体1とを接合する。このような構成の圧電振動デバイスは、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−40935号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記構成において圧電振動デバイスが超小型化してくると、バンプ接合に使用できる領域も極小化するため、接合後のバンプの潰れ具合によっては、本来接触してはならない部位(例えば筐体内部の配線導体等。以下、不可侵領域と略記)にバンプが接触したり、複数のバンプの潰れ具合の相違によって、圧電振動片が傾斜した状態で筐体に接合され、圧電振動デバイスの諸特性が劣化することがあった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、超小型であっても安定したバンプ接合を行うことができる圧電振動デバイスおよび、該圧電振動デバイスの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、圧電振動片が、バンプを介して筐体と接合される圧電振動デバイスであって、前記圧電振動片は、筐体との接合部に凹陥部が形成されており、前記筐体は、圧電振動片との接合部に、凸状の頂部を有するバンプが配され、前記頂部に、前記凹陥部を一対一で冠着して接合することによって、バンプの一部が当該凹陥部内に埋没していることを特徴とするので、前記接合時の加圧によって潰れるバンプの量を低減することができ、接合領域より外側への、はみ出し量を抑制することができる。これにより、前述の不可侵領域へのバンプの侵入を防止でき、圧電振動デバイスの特性劣化を防止することができる。
【0008】
また、前記はみ出し量を抑制することができるので、圧電振動片が筐体に対して傾斜して接合されるのを防止することができる。つまり、バンプの一部が前記凹陥部に埋没することで、凹陥部が形成されていない場合に比べて、はみ出すバンプの容積が少なくなるので、複数の接合部間における、バンプの厚み(高さ)差を低減させることができる。これにより、圧電振動片の筐体に対する傾斜を抑制することができる。
【0009】
また、バンプの一部が前記凹陥部に埋没することによって、はみ出すバンプの容積が少なくなるので、はみ出したバンプの厚み(高さ)を、薄く(低く)することができ、低背化に好適である。また、前記凹陥部を形成することによって、バンプと圧電振動片との接合面積を増大させることができるため、狭小領域であっても接合強度を高めることができる。
【0010】
また、上記構成によれば、凹陥部の内部にバンプの一部が取り込まれることによって、例えば外部衝撃を受けて、圧電振動片に対して水平方向の応力(剪断応力)が加わった場合でも、当該バンプが“くさび”のように機能する(所謂、アンカー効果)ため、接合部の剪断強度(被接合体に対して水平方向に働く応力に対する強度)をはじめとする接合強度を向上させることができる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、請求項2の発明によると、バンプの一部が、前記凹陥部から、はみ出して、圧電振動片の接合部と筐体の接合部との間に配された状態となって接合されている。このような構成によると、圧電振動片と筐体とを、より強固に接合することができる。これは、圧電振動片の接合部と、筐体の接合部との間にバンプの一部が配されることによって、圧電振動片と筐体との接合面積をより大きく確保(前記不可侵領域にバンプが侵入しない範囲で)することができ、前記剪断強度が向上するためである。
【0012】
また、上記目的を達成するために、請求項3の発明によると、前記圧電振動片が、基部と、当該基部の一端側から伸長した一対の腕部と、前記基部の他端側から前記腕部の伸長方向に延出された一対の支持腕とを備えた音叉型圧電振動片であり、前記支持腕は、前記筐体と接合される接合部を有しており、当該接合部に凹陥部が形成されている。上記構造の圧電振動片の場合、筐体との接合領域は、例えば矩形状のATカット水晶振動片に比べ狭小領域となることがあるが、前記支持腕の接合部に凹陥部が形成されているため、バンプと圧電振動片との接合面積を増大させることができ、狭小領域でも接合強度を向上させることが可能となる。
【0013】
また、前記支持腕の凹陥部にバンプの一部が埋没することによって、はみ出すバンプの容積が少なくなるため、はみ出したバンプの厚み(高さ)を薄く(低く)することができる。このような構成により、例えば、圧電振動片を片持ち支持した表面実装型の水晶振動子において、蓋体と圧電振動片との距離(内部クリアランス)を、より大きく採ることができる。したがって、水晶振動子が外部衝撃を受けて、筐体内部の圧電振動片の自由端側が大きく撓んだ場合でも、蓋体との接触を抑制することができ、より信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【0014】
また、上記目的を達成するために、請求項4の発明によると、圧電振動片が、バンプを介して筐体と接合される圧電振動デバイスの製造方法であって、前記圧電振動片は、筐体との接合部に凹陥部が形成されており、前記筐体の圧電振動片との接合部上に、凸状の頂部を有するバンプを配するバンプ形成工程と、前記凹陥部を、前記頂部を内包するようにバンプの上部に、一対一で載置する位置決め工程と、前記位置決め工程後に、圧電振動片と筐体とを、超音波による金属拡散によって、圧電振動片と筐体の各接合部との間に、バンプの一部が配されるように接合する接合工程とを備えている。
【0015】
このような製造方法によると、前記接合工程において、凹陥部内にバンプの一部が取り込まれるとともに、前記接合工程時の加圧によって潰れるバンプの量を低減させることができ、接合領域より外側への、はみ出し量を抑制することができる。これにより、前記不可侵領域へのバンプの侵入を防止でき、圧電振動デバイスの特性劣化を防止することができる。また、圧電振動片と筐体の各接合部との間に、バンプの一部が配されるので、圧電振動片と筐体との接合面積をより大きく確保でき、圧電振動片と筐体とを、より強固に接合することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、超小型であっても安定したバンプ接合を行うことができる圧電振動デバイスおよび、該圧電振動デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
−第1の実施形態−
本実施形態では、ATカット水晶振動子を例に挙げて、圧電振動片と筐体との接合工程を中心に説明する。本実施形態で使用されるATカット水晶振動子は、平板状のATカット水晶振動片が、上部が開口した筐体内部の搭載電極上に金属バンプを介して片持ち支持接合され、前記開口部を、封止材を介して板状の蓋体で接合した構成となっている。なお、前記ATカット水晶振動片は平板形状であるが、本形態以外にも、平面視矩形状で、振動板中央の励振領域が薄肉で、その周囲を厚肉状態として該励振領域を補強した構造(いわゆる逆メサ構造)や、その逆の構造、すなわちメサ構造の水晶振動板に対しても適用可能である。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の封止前の平面図であり、図2は図1のA−A線における断面図である。なお、図2において、後述する引出電極および接合電極の記載は省略している。図1乃至図2に示すように、筐体1は上部に開口部17を有する断面視凹形状の容器体である。筐体1は、セラミックシートを積層し、焼成よって一体成形されており、筐体1の内部には振動片を搭載するための段部14と、内底面16上の当該段部と対向する一端側に枕部15が形成されている。そして段部14の上面には、一対の搭載電極13,13が印刷技術により形成されている。なお、搭載電極13はタングステンを印刷焼成した後に、表面に金メッキ処理が施されている。また、搭載電極13は、筐体内部に形成された配線導体(図示省略)を介して筐体底面(裏面)に形成されている外部端子(図示省略)と電気的に接続されている。筐体1の開口部17の周囲には堤部12が環状に形成されており、堤部上面11には複数層からなる金属膜(図示省略)が周状に形成されている。前記金属膜は3層から構成されており、下からタングステン、ニッケル、金の順で積層されている。タングステンはメタライズ技術により、セラミック焼成時に一体的に形成され、ニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。なお、前記タングステンの層にモリブデンを使用してもよい。
【0019】
水晶振動片2はATカット切断された平面視矩形状の水晶振動板である。図2に示すように、水晶振動片2の一主面には、略円柱状の凹陥部4が2箇所形成されている。前記2つの凹陥部4,4は、水晶振動片2の一短辺と平行かつ、当該一短辺の端部から一定距離だけ離間した位置に、整列して形成されている。本実施形態において凹陥部4は、ウエットエッチングによる化学的溶解によって形成されている。なお、凹陥部の形成はウエットエッチング(湿式エッチング)に限定されるものではなく、機械的エッチング(乾式エッチング)によって形成してもよい。
【0020】
水晶振動片2の表裏面各々の中央領域には、水晶振動片を駆動させるための励振電極21,21が対向して真空蒸着法によって形成されている。そして、図1に示すように、水晶振動片2の表裏面には、前記励振電極21,21から引き出された引出電極(番号は付さず)が各々形成されているとともに、当該引出電極と接続した接合電極6,6が、水晶振動片2の表裏面の一端側に各々形成されている。なお、本実施形態では前記励振電極および引出電極、接合電極ともにクロム(Cr)を下地層とし、その上層に金(Au)が積層された状態となっている。水晶振動片2の表裏面の一端側に各々形成されている接合電極6,6の内、前記凹陥部4が形成されている面の接合電極6は、前記凹陥部4の表面を被覆するように前記金属膜(Cr,Au)が形成されている。つまり、凹陥部4の内壁面全体に亘って金属膜が形成されており、前記引出電極と電気的に接続された状態となっている。
【0021】
一対の搭載電極13,13の各表面には、金からなるバンプ(スタッドバンプ)5がキャピラリから射出されて形成される(バンプ形成工程)。搭載電極13,13上に形成されたバンプ5,5は、図3に示すように凸状の頂部51(点線で囲んだ部位)を有しており、平面視では略同心円,断面視では略釣鐘形状(頂部に近づくにつれて直径が漸次小さくなるような形状)となっている。
【0022】
そして、水晶振動片2の凹陥部4が形成されている側の面が、前記バンプ5に対向するとともに、凹陥部4が前記頂部51を内包するようにバンプ5の上部に、水晶振動片2が一対一で画像認識手段を用いて載置される(位置決め工程)。ここで、凹陥部4の開口寸法は、頂部51の幅寸法よりも大きくなっているとともに、バンプ5の下部領域の幅寸法よりも小さくなっている。そして深さ方向に関しては、凹陥部4の深さは、接合前の状態におけるバンプ全高よりも浅くなっている。このような相対関係により、位置決め工程の完了時点では、凹陥部の内部にバンプ全体が収容されていない状態、つまりバンプの一部が凹陥部から、はみ出した状態となる。
【0023】
前記位置決め工程後に、水晶振動片2に対して超音波ホーンを当接させ、所定方向に加圧させながら超音波を印加する。これにより、前記接合電極6とバンプ5との間に金属拡散を生じせしめ、水晶振動片2と筐体1とを接合する(接合工程)。接合工程完了後の状態は図4に示す。図4に示すように、バンプ5は前記超音波の印加時の加圧によって潰れて押し拡げられ、水晶振動片2(接合電極6)と、筐体1(搭載電極13)との間に、当該バンプの一部が配されている。なお、図4では水晶振動片2と、搭載電極13との間に配されたバンプの一部は、水晶振動片2の一端側周縁(図4では左端)にまで及んでいない状態となっているが、水晶振動片2の一端側周縁にまで及んでいてもよい。この場合、さらに水晶振動片2と筐体1との接合面積が拡大するため、接合強度向上が期待できる。
【0024】
このような構成により、水晶振動片2と筐体1とを、より強固に接合することができる。すなわち、水晶振動片2の接合部と、筐体1の接合部との間にバンプの一部が配されることによって、水晶振動片と筐体との接合面積をより大きく確保でき、接合部の剪断強度が向上するためである。
【0025】
また、前記接合時の加圧によって潰れるバンプの量を低減することができ、接合領域より外側への、はみ出し量を抑制することができる。これにより、前述の不可侵領域へのバンプの侵入を防止でき、水晶振動子の特性劣化を防止することができる。
【0026】
さらにまた、前記はみ出し量を抑制することができるので、水晶振動片が筐体に対して傾斜して接合されるのを防止することができる。つまり、バンプの一部が前記凹陥部に埋没することで、凹陥部が形成されていない場合に比べて、はみ出すバンプの容積が少なくなるので、複数の接合部間における、バンプの厚み(高さ)差を低減させることができる。これにより、水晶振動片の筐体に対する傾斜を抑制することができる。
【0027】
また、バンプの一部が前記凹陥部に埋没することによって、はみ出すバンプの容積が少なくなるので、はみ出したバンプの厚み(高さ)を、薄く(低く)することができ、低背化に好適である。また、前記凹陥部を形成することによって、バンプと水晶振動片との接合面積を増大させることができるため、狭小領域であっても接合強度を高めることができる。
【0028】
さらに上記構成によれば、凹陥部の内部にバンプの一部が取り込まれることによって、例えば外部衝撃を受けて、水晶振動片と筐体との接合部に対して剪断応力が加わった場合でも、当該バンプが“くさび”のように機能するため、接合部の剪断強度を向上させることができる。
【0029】
本実施形態では圧電振動片として、平板状のATカット水晶振動片を適用した例を表しているが、図5に示すように、基部23と、当該基部の一端側から伸長した一対の腕部22,22とを備えた音叉型圧電振動片に対しても適用可能である。なお、図5は封止前の状態を表した平面図であり、音叉型圧電振動片に形成される各種電極の記載は省略している。図5では、基部23の一主面(筐体1との接合面側)の,腕部22,22と対向する一端側近傍の接合部に、一対の凹陥部4,4が整列して形成されている。そして、第1の実施形態と同様に、筐体1の内部に形成された一対の搭載電極13,13上に、凸状の頂部を有するバンプ5,5が形成された後、前記頂部を内包するようにして、前記凹陥部4,4が一対一で位置決め載置され、超音波による金属拡散によって、音叉型圧電振動片と筐体の各接合部との間に、バンプの一部が配されるようにして音叉型圧電振動片と筐体とが接合されている。
【0030】
−第2の実施形態−
本発明の第2の実施形態として、圧電振動片に、支持腕を有する音叉型水晶振動子を適用した例を、図6を用いて説明する。図6は本発明の第2の実施形態を示す封止前における水晶振動子の平面図である。なお、図6において音叉型水晶振動片に形成される各種電極の記載は省略している。また、第1の実施形態と同様の構成については、同番号を付して説明を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0031】
本実施形態では、圧電振動片として音叉型水晶振動片(以下、第1の実施形態と同様に水晶振動片と略記する)が使用されている。水晶振動片2は、図6示すように基部23と、当該基部の一端側から伸長した一対の腕部22,22と、当該基部の他端側から前記腕部の伸長方向に延出された一対の支持腕24,24とを備えている。前記支持腕24,24は、具体的には基部23の他端側から、腕部22,22の伸長方向と直交する方向で互いに外側へ延出された後、腕部伸長方向と平行になるように直角に向きを変えて延出されている。そして、一対の支持腕24,24の先端付近の領域には、筐体1と接合される金属からなる接合部が各々形成されている。
【0032】
図6では表示していないが、腕部22,22の表裏主面および内外側面には金属からなる電極が形成されている。また、基部23の表裏主面にも同材料の電極が形成されており、支持腕24,24を経由して前記接合部と接続されている。さらに腕部22,22の先端領域は金属膜が周状に成膜されている。前記電極および、前記金属膜は本実施形態ではクロム(Cr)を下地とし、その上層に金(Au)が積層された層構成となっている。そして、腕部先端の前記金属膜の、さらに上層には、金からなる金属膜(調整用金属膜)が電解メッキ法によって周状に形成されている。なお、前記調整用金属膜の材料は、金に限定されるものでなく、例えば銀(Ag)を用いてもよい。音叉型水晶振動子の周波数調整は前記調整用金属膜の質量を削減することによって行われる。
【0033】
前記支持腕24,24の接合部には、凹陥部4,4が形成されている。凹陥部4,4は略円柱状で所定の深さにて形成されている。本実施形態では凹陥部の深さは、0.04〜0.05mmの深さとなっている(水晶振動片の厚みは約0.1mm)。なお、前記凹陥部の深さは、一例であり、本深さ寸法に限定されるものではない。つまり、接合前の状態におけるバンプ全高よりも浅くなるような深さで、位置決め工程の完了時点でバンプの一部が凹陥部から、はみ出した状態となるような深さであればよい。前記凹陥部4の開口寸法は、支持腕24の腕幅よりも狭い(小さい)寸法に設定されており、後述するバンプの頂部の幅寸法よりも大きく、当該バンプの下部領域の幅寸法よりは小さくなっている。なお、凹陥部4の内壁面は金属膜(接合電極:図6では記載省略)で覆われており、基部に形成された電極と電気的に接続されている。
【0034】
筐体1は、上部に開口部17を有する断面視凹形状の容器体であり、第1の実施形態と同様に、セラミックシートの積層体であり、焼成よって一体成形されている。そして、図6に示すように、筐体1の,対向する2つの長辺の中央寄りの位置には、水晶振動片2を搭載するための一対の段部14,14が対向して形成されている。段部14の上面には、一対の搭載電極13,13が印刷技術により形成されている。なお、搭載電極13は前述の第1の実施形態と同様の材料および手順で形成されている。
【0035】
筐体1と水晶振動片2との接合は、一対の搭載電極13,13上に凸状の頂部51を有するバンプ(スタッドバンプ)5,5を各々形成した後、前記頂部51を内包するようにして、凹陥部4,4を一対一で位置決め載置し、超音波による金属拡散によって行われる。なお、本実施形態においても水晶振動片2と筐体1の各接合部との間には、バンプの一部が配された状態となっている。
【0036】
上記構造の場合、筐体1との接合領域は、例えば矩形状のATカット水晶振動片に比べ狭小領域となるが、前記支持腕24の接合部に凹陥部4が形成されているため、バンプ5と水晶振動片2との接合面積を増大させることができ、狭小領域でも接合強度を向上させることが可能となる。
【0037】
また、支持腕24の凹陥部4にバンプ5の一部が埋没することによって、はみ出すバンプの容積が少なくなるため、はみ出したバンプの厚み(高さ)を薄く(低く)することができる。これにより、上記構成の表面実装型の水晶振動子において、開口部17を封止する蓋体と水晶振動片2との距離(内部クリアランス)を、より大きく採ることができる。したがって、水晶振動子が外部衝撃を受けて、筐体内部の水晶振動片2の自由端側(腕部22の先端側)が大きく撓んだ場合でも、蓋体との接触を抑制することができ、より信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。また、一対の段部14,14が筐体1の対向する2つの長辺の中央寄りの位置にのみ形成されているので、バンプを介して一対の支持腕24,24を搭載電極13,13と接合しても、支持腕24の,搭載電極13との接合部以外の領域は段部14と接触しにくくなる。したがって、凹陥部の形成によって水晶振動子の全高が低背化されても、水晶振動片2の前記接合部以外の領域と、筐体との接触を防止することができる。なお、一つの接合部において、段部14の平面視の面積が、バンプ1個分の面積(バンプ下部領域の幅寸法)と略同一か、あるいはバンプ1個分の面積よりも僅かに大きくなるような面積で形成してもよい。
【0038】
なお、本発明の第2の実施形態の変形例として、支持腕24の凹陥部4の平面視形状を円ではなく、図7乃至図9のような形状にしてもよい。なお、図7乃至図9において、凹陥部4の最長開口寸法はバンプの最長径(最大幅)よりも小さくなっているとともに、支持腕24,24に形成される金属膜の記載は省略している。
【0039】
図7は、水晶振動片2の1本の支持腕の一部分の拡大図であり、支持腕24の先端付近には、平面視で長方形の凹陥部4が形成されている。このような形状の場合、例えば図中の矢印で示す超音波の印加方向(支持腕24の伸長方向に対して平行)と、前記長方形の長辺とが平行になっており、凹陥部4からのバンプのはみ出し量をコントロールしやすくなる。また、長方形以外に図8に示すように、凹陥部の平面視形状を楕円にしてもよい。このような形状であっても、凹陥部の平面視形状が長方形の場合と、同様の効果を得ることができる。
【0040】
さらにまた、図9に示すような凹陥部の平面視形状を菱形にしてもよい。この場合、菱形の4つの頂点の内、2つの頂点が支持腕24の伸長方向と平行になるようにし、残りの2つの頂点が支持腕の幅方向と平行になるように形成するとよい。つまり、このような形状であると、図9の矢印で示すように超音波の印加方向が、支持腕の伸長方向と直交する場合であっても、前記残りの2つの頂点は前記印加方向と一致する。したがって、直交する2方向の超音波印加方向のいずれの場合にも対応させることができる。これにより凹陥部4からのバンプのはみ出し量をコントロールしやすくなる。
【0041】
本発明の実施形態の説明図では、凹陥部の断面形状は、凹陥部を形成する各辺が直線であるとともに隣接辺が直角に交差し、左右対称性を有する形状となっているが、これは説明のための模式図であり、断面形状は上記形状のものに限定されるものではない。つまり、異方性材料である水晶(例えばZ板)を用いて、ウエットエッチングによって侵食孔(凹陥部)を形成する場合、結晶方位の相違によって断面形状は、凹陥部を形成する各辺が直線あるいは弧状であるとともに、隣接辺が非直角で交差して、左右非対称となるが、このような形状の凹陥部であっても本発明は適用可能である。
【0042】
本発明の実施形態では、筐体と圧電振動片の接合手段としてスタッドバンプを使用しているが、スタッドバンプ以外に、めっきバンプを用いることも可能である。
【0043】
また、本発明の実施形態では、表面実装型の水晶振動子を例にしているが、水晶振動子以外に、水晶フィルタ、水晶発振器などの電子機器等に用いられる他の表面実装型の圧電振動デバイスに対しても適用可能である
【0044】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の平面図。
【図2】図1のA−A線における断面図。
【図3】本発明の第1の実施形態における位置決め工程を示す部分断面図。
【図4】図3において、接合工程が完了した状態を示す部分断面図。
【図5】本発明の第1の実施形態の、他の適用例を示す水晶振動子の平面図。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す水晶振動子の平面図。
【図7】本発明の第2の実施形態の変形例を示す支持腕の平面図。
【図8】本発明の第2の実施形態の変形例を示す支持腕の平面図。
【図9】本発明の第2の実施形態の変形例を示す支持腕の平面図。
【図10】従来の一例を示す水晶振動子の断面図。
【符号の説明】
【0047】
1 筐体
2 水晶振動片
3 蓋体
4 凹陥部
5 バンプ
6 接合電極
51 バンプ頂部
11 堤部上面
12 堤部
13 搭載電極
14 段部
15 枕部
16 筐体内底面
17 開口部
21 励振電極
22 腕部
23 基部
24 支持腕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片が、バンプを介して筐体と接合される圧電振動デバイスであって、
前記圧電振動片は、筐体との接合部に凹陥部が形成されており、
前記筐体は、圧電振動片との接合部に、凸状の頂部を有するバンプが配され、
前記頂部に、前記凹陥部を一対一で冠着して接合することによって、バンプの一部が当該凹陥部内に埋没していることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
バンプの一部が、前記凹陥部から、はみ出して、圧電振動片の接合部と筐体の接合部との間に配された状態となって接合されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記圧電振動片が、基部と、当該基部の一端側から伸長した一対の腕部と、前記基部の他端側から前記腕部の伸長方向に延出された一対の支持腕とを備えた音叉型圧電振動片であり、
前記支持腕は、前記筐体と接合される接合部を有しており、当該接合部に凹陥部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至2に記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
圧電振動片が、バンプを介して筐体と接合される圧電振動デバイスの製造方法であって、前記圧電振動片は、筐体との接合部に凹陥部が形成されており、
前記筐体の圧電振動片との接合部上に、凸状の頂部を有するバンプを配するバンプ形成工程と、
前記凹陥部を、前記頂部を内包するようにバンプの上部に、一対一で載置する位置決め工程と、
前記位置決め工程後に、圧電振動片と筐体とを、超音波による金属拡散によって、圧電振動片と筐体の各接合部との間に、バンプの一部が配されるように接合する接合工程とを、
備えた圧電振動デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−206614(P2009−206614A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44585(P2008−44585)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】