説明

圧電振動デバイス及びその製造方法

【課題】ベースへのキャップの接合が原因となり圧電振動片の周波数が変動する場合であっても、圧電振動片の周波数を予め設定した周波数にする。
【解決手段】パッケージ13内の気密封止された内部空間14のベース11上に接合保持された水晶振動片2,3の間には、水晶振動片2,3それぞれの周波数調整に係わる基板領域28,38を隔壁した絶縁性の分離板4が介在されている。この分離板4の両主面には、水晶振動片2,3の周波数を可変させるための周波数可変部81,82が、それぞれ水晶振動片2,3の周波数調整に係わる基板領域28,38に対向して設けられている。、これら周波数可変部81,82は、電気的に加熱させることで蒸発し、この蒸発した周波数可変部材81,82を水晶振動片2,3に蒸着させて、気密封止された内部空間14内において水晶振動片2,3の周波数の微調整を行なうためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電振動デバイスとして、例えば、音叉型水晶振動子(以下、水晶振動子という)などが挙げられる。この種の圧電振動デバイスでは、その筐体であるパッケージがベースとキャップとから構成され、筐体内部は気密封止されている。また、この筐体内部では、圧電振動片(水晶振動片)が、ベース上の電極パッドに導電性接着剤を介して接合されている。
【0003】
この水晶振動片は、その基板が、基部と、この基部から突出した2本の脚部とから構成されてなり、異電位で構成された励振電極が脚部に形成されている。また、基板には、基部において励振電極を電極パッドと電気的に接続させるための引出電極が形成されている。この引出電極は、励振電極から引き出し形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記した特許文献1には、ベース上に水晶振動片を配した後に、ベースの開口部をキャップで加熱接合して内部空間を気密封止して製造する水晶振動子が開示されている。
【0005】
この製造工程では、ベース上に水晶振動片を配した後に水晶振動片の最終発振周波数調整(以下、最終周波数調整とする)を行なっている。そして、水晶振動片の最終周波数調整を行なった後に、ベースの開口部をキャップで加熱接合して筐体であるパッケージを構成し、水晶振動片をパッケージの内部空間内に気密封止する。すなわち、水晶振動片の最終周波数調整は、ベースをキャップで接合して内部空間内に水晶振動片を気密封止する前に行なっている。
【特許文献1】特開2004−200910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最終周波数調整を行なった水晶振動片の発振周波数(以下、周波数とする)と、ベースとキャップとによりパッケージの内部空間内に気密封止された水晶振動片の周波数とを測定すると、水晶振動片の周波数が変動している。具体的に、内部空間内に気密封止された水晶振動片の周波数調整のほうが、最終周波数調整で調整された水晶振動片の周波数よりも低い値もしくは高い値になる。この原因として、ベースとキャップとを接合する際にベースとキャップとを加熱接合しているために、最終周波数調整を行なった水晶振動片の周波数に対して、内部空間内の水晶振動片の周波数が変動することが挙げられる。
【0007】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、ベースへのキャップの接合が原因となり圧電振動片の周波数が変動する場合であっても、圧電振動片の周波数を予め設定した周波数(上記した従来例では最終周波数調整時の周波数)にする圧電振動デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスは、ベースにキャップが接合されてパッケージが構成されるとともに前記パッケージ内に内部空間が形成され、前記内部空間内の前記ベース上に圧電振動片が保持された圧電振動デバイスにおいて、前記内部空間内に、前記圧電振動片の周波数を可変させるための周波数可変部材が設けられ、前記周波数可変部材が電気的に加熱されて前記圧電振動片の周波数が可変されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、前記内部空間内に、前記圧電振動片の周波数を可変させるための周波数可変部材が設けられ、前記周波数可変部材が電気的に加熱されて前記圧電振動片の周波数が可変されるので、前記ベースへの前記キャップの接合が原因となり前記圧電振動片の周波数が変動する場合であっても、前記圧電振動片の周波数を予め設定した周波数にすることが可能となる。具体的に、前記ベースへの前記キャップの接合が原因となり前記圧電振動片の周波数が変動する場合であっても、変動した前記圧電振動片の周波数を最終周波数調整時の周波数に修正することが可能となる。すなわち、前記内部空間内において前記圧電振動片の周波数の微調整を行なって変動した周波数の修正を図ることが可能となる。そのため、前記ベースと前記キャップとから前記圧電振動片が気密封止された状態、すなわち前記内部空間を形成した後であっても前記内部空間内において前記圧電振動片の周波数の微調整を行なって周波数の修正を図ることが可能となる。特に、当該圧電振動デバイスを製造する際に、アニール工程や、封止工程、リフロー工程などの熱履歴を経ており、この熱履歴を経ることによりミーリング工程やパーシャル工程で調整した前記圧電振動片の周波数(発振周波数)が変動するが、本発明によれば、熱履歴を経た後に前記周波数可変部材により前記圧電振動片の周波数を可変させるので、上記した熱履歴を経て変動した前記圧電振動片の周波数を微調整して周波数偏差不良を抑制することが可能となる。
【0010】
前記構成において、前記パッケージは、非光透過部材からなってもよい。
【0011】
この場合、前記パッケージは、非光透過部材からなるので、前記パッケージ外部からレーザなどによって前記周波数可変部材を周波数調整することができない。しかしながら、本発明によれば、前記内部空間内において前記周波数可変部材が電気的に加熱されて前記圧電振動片の周波数が可変されるので、前記内部空間を形成した後であっても、前記内部空間内において前記圧電振動片の周波数の微調整を行なうことが可能となる。
【0012】
前記構成において、前記圧電振動片に、電極が形成され、前記ベースに、当該ベースの前記内部空間に面する内面から当該ベースの外周面である外面に引き出された複数のベース電極が形成され、前記圧電振動片に形成された前記電極が、前記複数のベース電極の一部に接続されるとともに、前記周波数可変部材が、前記複数のベース電極の他部に接続されてもよい。
【0013】
この場合、前記圧電振動片に前記電極が形成され、前記ベースに前記複数のベース電極が形成され、前記圧電振動片に形成された前記電極が前記複数のベース電極の一部に接続されるとともに、前記周波数可変部材が前記複数のベース電極の他部に接続されるので、前記周波数可変部材を接続した前記ベース電極に外部電源を接続し、この外部電源から電圧供給されることにより、前記周波数可変部材が加熱され、この加熱により前記周波数可変部材が蒸発して、この蒸発した前記周波数可変部材が前記圧電振動片に付着して前記圧電振動片の周波数が低く可変される。また、前記周波数可変部材専用にベース電極を新たに設計することなく、既存のベース電極を用いることも可能であり、既存のベースを利用することも可能となる。また、前記ベースと前記キャップとから前記圧電振動片が気密封止された状態、すなわち前記内部空間を形成した後であっても前記内部空間内において前記圧電振動片の周波数の微調整を行なって周波数の修正を図るのに好ましい。なお、ここでいう前記複数のベース電極の他部とは、前記複数のベース電極の一部以外の残り全ての前記ベースということではなく、前記複数のベース電極の一部以外の残りの一部であってもよい。すなわち、前記複数のベース電極の他部を、前記周波数可変部材を電気的に加熱するための電極だけではなく、前記複数のベース電極をアース電極やダミー電極として用いてもよい。
【0014】
前記構成において、前記内部空間内に、前記周波数可変部材を電磁誘導加熱するための電磁誘導加熱部材が設けられてもよい。
【0015】
この場合、前記内部空間内に、前記周波数可変部材を電磁誘導加熱するための前記電磁誘導加熱部材が設けられているので、前記周波数可変部材には電磁誘導により電流が発生してこの電流により前記周波数可変部材が加熱され、この加熱により前記周波数可変部材が蒸発して、この蒸発した前記周波数可変部材が前記圧電振動片に付着して前記圧電振動片の周波数が可変される。そのため、前記ベースと前記キャップとから前記圧電振動片が気密封止された状態、すなわち前記内部空間を形成した後であっても前記内部空間内において前記圧電振動片の周波数の微調整を行なって周波数の修正を図るのに好ましい。また、前記内部空間を形成した後に前記圧電振動片の周波数微調整を行なった後、前記圧電振動片が大気開放されるような周波数変動要素を無くすことが可能となる。
【0016】
前記構成において、前記周波数可変部材は、低融点の材料であってもよい。
【0017】
この場合、前記周波数可変部材は低融点の材料であるので、他の構成部材を発熱させずに前記周波数可変部材だけを発熱させるのに好ましい。
【0018】
前記構成において、前記内部空間内の圧力を下げるゲッタ材が前記内部空間内に設けられてもよい。
【0019】
この場合、前記内部空間内の圧力(以下、内圧とする)を下げる前記ゲッタ材が前記内部空間内に設けられるので、前記ゲッタ材により前記内部空間内において前記内圧を下げることが可能となる。そのため、当該圧電振動デバイスの直列共振抵抗値が上昇するのを防止することが可能となる。特に、前記ベースと前記キャップとから前記圧電振動片が気密封止された状態、すなわち前記内部空間を形成した後の前記内圧を下げるのに好ましい。
【0020】
前記構成において、前記ゲッタ材と前記圧電振動片との間に、前記ゲッタ材と前記圧電振動片とを遮蔽する遮蔽板が設けられてもよい。
【0021】
この場合、前記ゲッタ材と前記圧電振動片との間に、前記ゲッタ材と前記圧電振動片とを遮蔽する遮蔽板が設けられるので、前記ゲッタ材を蒸発させた際に前記内部空間内の前記圧電振動片にガス分子を捕集した前記ゲッタ材が付着するのを防止することが可能となる。
【0022】
前記構成において、前記ゲッタ材は、前記圧電振動片から隔離する位置に配されてもよい。
【0023】
この場合、前記ゲッタ材は、前記圧電振動片から隔離する位置に配されるので、前記ゲッタ材を蒸発させた際に前記内部空間内の前記圧電振動片にガス分子を捕集した前記ゲッタ材が付着するのを防止することが可能となる。また、前記圧電振動片として音叉型圧電振動片を用いた場合、周波数変動がほとんどない状態で、直列共振抵抗値を改善させることが可能となる。
【0024】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスの製造方法は、上記した圧電振動デバイスの製造方法であって、前記ベースに前記キャップを接合して前記内部空間を形成した後に、前記周波数可変部材を電気的に加熱して前記内部空間内において前記圧電振動片の周波数の微調整を行なう周波数微調整工程と、前記ベースに前記キャップを接合して前記内部空間を形成した後に、前記ゲッタ材により前記内部空間内において前記内部空間の圧力を低下させる圧力低下工程と、を有し、前記周波数微調整工程と前記圧力低下工程とを交互に行なうことを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、前記周波数微調整工程を有しているので、前記ベースへの前記キャップの接合の際の接合によって周波数が変動する場合であっても、前記圧電振動片の周波数を予め設定した周波数にすることが可能となる。具体的に、前記ベースへの前記キャップの接合が原因となり前記圧電振動片の周波数が変動する場合であっても、前記内部空間内において前記圧電振動片の周波数の微調整を行なって変動した周波数の修正を図ることが可能となる。そのため、前記ベースと前記キャップとから前記圧電振動片が気密封止された状態、すなわち前記内部空間を形成した後であっても前記内部空間内において前記圧電振動片の周波数の微調整を行なって周波数の修正を図ることが可能となる。特に、当該圧電振動デバイスを製造する際に、アニール工程や、封止工程、リフロー工程などの熱履歴を経ており、この熱履歴を経ることによりミーリング工程やパーシャル工程で調整した前記圧電振動片の周波数(発振周波数)が変動するが、本発明によれば、熱履歴を経た後に前記周波数可変部材により前記圧電振動片の周波数を可変させるので、上記した熱履歴を経て変動した前記圧電振動片の周波数を微調整して周波数偏差不良を抑制することが可能となる。
【0026】
また、本発明によれば、前記圧力低下工程を有しているので、前記ゲッタ材により前記内部空間内において前記内圧を下げることが可能となる。そのため、当該圧電振動デバイスの直列共振抵抗値が上昇するのを防止することが可能となる。特に、当該圧電振動デバイスを製造する際に、アニール工程や、封止工程、リフロー工程などの熱履歴を経ており、この熱履歴を経ることにより前記圧電振動片の直列共振抵抗値が上昇するが、前記圧力低下工程により前記内圧を下げて、前記圧電振動片の直列共振抵抗値が上昇するのを防止することが可能となる。
【0027】
さらに、本発明によれば、前記周波数微調整工程と前記圧力低下工程とを交互に行なうので、前記ベースと前記キャップとから前記圧電振動片が気密封止された状態、すなわち前記内部空間を形成した後に前記圧電振動片の周波数の調整を行なうとともに、前記内部空間内の圧力を低下させるのに好ましく、製造工程の効率をよくする。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる圧電振動デバイス及びその製造方法によれば、ベースへのキャップの接合が原因となり圧電振動片の周波数が変動する場合であっても、圧電振動片の周波数を予め設定した周波数にすることできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、圧電振動デバイスとして水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
【0030】
本実施例にかかる水晶振動子1は、図1に示すように、フォトリソ工法で成形された2つの水晶振動片2,3(本発明でいう圧電振動片)と、これら水晶振動片2,3を保持するベース11と、ベース11に保持した水晶振動片2,3を気密封止するためのキャップ12とからなる。
【0031】
この水晶振動子1では、図1に示すように、ベース11とキャップ12とが接合されて筐体であるパッケージ13が構成され、このパッケージ13内に気密封止された内部空間14が形成される。また、この内部空間14のベース11上には、2つの水晶振動片2,3が、図示しない導電性接合材(接着剤やバンプなど)を用いてベース11に接合保持されている。
【0032】
次に、この水晶振動子1の各構成について説明する。
【0033】
ベース11は、図1に示すように、底部と、この底部から上方に延出した壁部とから構成される箱状体に形成されている。このベース11は、非光透過部材であるセラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、セラミック材料の直方体が積層して凹状に一体的に焼成されている。また、壁部は、底部の表面外周に沿って成形されている。この壁部の上面は、キャップ12との接合領域であり、この接合領域には、キャップ12と接合するためのメタライズ層(図示省略)が設けられている。
【0034】
さらに、セラミック材料が積層して凹状に一体的に焼成されたベース11の内部空間14における側壁には、図1に示すように、段部151〜153が形成される。段部151上には、下記する分離板4が設けられる。このとき、段部151に分離板4の一対向辺41が保持されている。また、段部152,153上には、2つの水晶振動片2,3の下記する励振電極22,23,32,33と電気的に接続する電極パッド51〜54が形成され、これら電極パッド51〜54上に2つの水晶振動片2,3が片保持して設けられる。
【0035】
また、内部空間14内のベース11の段部151〜153に形成された電極パッド51〜58は、それぞれに対応した接続電極61〜68を介して、ベース11の裏面16に形成される端子電極71〜78に電気的に接続され、これら端子電極71〜78が外部部品や外部機器の外部電極に接続される。また、電極パッド51〜58、接続電極61〜68、端子電極71〜78は、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース11と一体的に焼成して形成される。そして、電極パッド51〜58、接続電極61〜68、端子電極71〜78のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0036】
キャップ12は、非光透過部材である金属材料からなり、図1に示すように、平面視矩形状の一枚板に成形されている。このキャップ12は、下面にろう材(図示省略)が形成されており、シーム溶接やビーム溶接等の手法によりベース11に接合されて、キャップ12とベース11とによる水晶振動子1のパッケージ13が構成される。なお、本実施例でいう内部空間14とは、キャップ12とベース11により気密封止された部分のことをいう。また、キャップをセラミック材料とし、ガラス材料を介して気密封止してもよい。
【0037】
2つの水晶振動片2,3は、図1に示すように、ベース11上であって、内部空間14に積層状に配されている。このように、2つの水晶振動片2,3を積層状に配することで、パッケージ13の小型化を図ることができる。
【0038】
内部空間14の上方に配された水晶振動片2(以下、上側水晶振動片という)は、図1に示すように、音叉型水晶振動片であり、異方性材料の水晶片である基板からエッチング形成される。基板は、基部21と2本の脚部22,23(第1脚部,第2脚部)とから構成されており、第1,2脚部22,23が基部21から延出されている。
【0039】
この上側水晶振動片2には、異電位で構成された2つの励振電極24,25(第1励振電極,第2励振電極)と、これら第1,2励振電極24,25を電極パッド51,52に電気的に接続させるために第1,2励振電極24,25から引き出された引出電極26,27とが形成されている。そして、引出電極26,27と電極パッド51,52が導電性接合材(図示省略)を介して接合されて、これら引出電極26,27と電極パッド51,52とが電気的に接続される。
【0040】
第1励振電極24は、第1脚部22の両主面に形成された第1主面電極と、第2脚部23の両側面に形成された第2側面電極とが接続されて構成される。
【0041】
同様に、第2励振電極25は、第2脚部23の両主面に形成された第2主面電極と、第1脚部24の両側面に形成された第1側面電極とが接続されて構成される。
【0042】
また、この上側水晶振動片2の第1,2脚部22,23の先端は、図1に示すように、周波数調整に係わる基板領域28として設定される。
【0043】
内部空間14の下方に配された水晶振動片3(以下、下側水晶振動片という)は、図1に示すように、音叉型水晶振動片であり、異方性材料の水晶片である基板からエッチング形成される。基板は、基部31と2本の脚部32,33(第3脚部,第4脚部)と、から構成されており、第3,4脚部32,33が基部31から延出されている。
【0044】
この下側水晶振動片3には、異電位で構成された2つの励振電極34,35(第3励振電極,第4励振電極)と、これら第3,4励振電極34,35を電極パッド53,54に電気的に接続させるために第3,4励振電極34,35から引き出された引出電極36,37とが形成されている。そして、引出電極36,37と電極パッド53,54が導電性接合材(図示省略)を介して接合されて、これら引出電極36,37と電極パッド53,54とが電気的に接続される。
【0045】
第3励振電極34は、第3脚部32の両主面に形成された第3主面電極と、第4脚部33の両側面に形成された第4側面電極とが接続されて構成される。
【0046】
同様に、第4励振電極35は、第4脚部33の両主面に形成された第4主面電極と、第3脚部32の両側面に形成された第3側面電極とが接続されて構成される。
【0047】
また、この下側水晶振動片3の第3,4脚部32,33の先端は、図1に示すように、周波数調整に係わる基板領域38として設定される。
【0048】
なお、上記した第1〜4励振電極22,23,32,33は、例えば、クロムの下地電極層と、金の上部電極層とから構成された積層薄膜である。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィー技術によりメタルエッチングして所望の形状に形成される。また、上記した引出電極26,27,36,37は、例えば、クロムの下地電極層と、金の中間電極層と、クロムの上部電極層と、から構成された積層薄膜である。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により全面に形成された後、フォトリソグラフィー技術によりメタルエッチングして所望の形状に形成され、クロムの上部電極層のみが部分的にマスクして真空蒸着法等の手法により形成される。
【0049】
そして、上記した上側水晶振動片2の引出電極26,27とベース11の電極パッド51,52とが、導電性接合材により接合され、図1に示すように、上側水晶振動片2は、基部21においてベース11に片保持されている。同様に、上記した下側水晶振動片3の引出電極36,37と、ベース11の電極パッド53,54とが、導電性接合材により接合され、図1に示すように、下側水晶振動片3は、基部31においてベース11に片保持されている。
【0050】
ところで、内部空間14内において積層状に配された上側水晶振動片2と下側水晶振動片3との間には、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3それぞれの周波数調整に係わる基板領域28,38を少なくとも隔壁した絶縁性の分離板4が介在されている。この分離板4は、図1に示すように、内部空間14の側壁に形成された段部151に、その一部(分離板4の一対向辺41)が保持されるように設けられている。なお、本実施例では、分離板4の材料として水晶を用いている。この分離板4は、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3と同様に、フォトリソ工法で成形されている。このように、本実施例では、分離板4に絶縁材料である水晶を用いているので、例えば、導電性材料である金属と比較して、例えば、フォトリソ工法などによるエッチング加工により分離板4を予め設定した形状に成形し易い。また、分離板4は、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3と同様にフォトリソ工法で成形されているので、分離板4を製造する製造設備を、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3を製造する製造設備との共用化を図ることができる。また、共用化の製造設備を用いることで、製造現場を同一場所とすることでき、品質管理や、信頼性の面で有効である。
【0051】
分離板4は、上記したように、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3それぞれの周波数調整に係わる基板領域28,38を少なくとも隔壁する。具体的に、分離板4は、図1に示すように、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3それぞれの第1〜4脚部22,23,32,33の長手方向にわたって上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3を隔壁している。なお、ここでいう周波数調整に係わる基板領域28,38とは、周波数調整を行う基板領域だけではなく、周波数調整に係わる部分の基板領域を含み、例えば、周波数調整を行う際、エッチング調整時にプラズマが回り込んで影響を受ける基板領域、基板の重み付け(蒸着調整)を行った時に蒸着物が回りこんで影響を受ける基板領域などを含む。
【0052】
この分離板4の上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3に面した両主面(表裏側主面)に凹部42が形成され、凹部42の内底面43の上下方には、上側水晶振動片2の第1,2脚部22,23及び下側水晶振動片3の第3,4脚部32,33が配されている。すなわち、凹部42の内底面43は、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の第1〜4脚部22,23,32,33の先端である自由端の近傍に配されている。このように、本実施例では、分離板4の両主面に凹部42が形成され、この凹部42の内底面43は、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の第1〜4脚部22,23,32,33の先端である自由端の近傍に配されるので、水晶振動子1が機械的な衝撃を受けた際に自由端が変位した場合であっても、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の分離板4への接触を回避することができる。例えば、自由端は、機械的な衝撃により上下方向に振れるが、自由端の直上下に凹部42を形成することで、凹部42の内底面43に自由端が触れるのを回避することができる。さらに、ベース11に上側水晶振動片2を配する際に、両主面の平坦部分、すなわち凹部42の天面が枕部として機能する。
【0053】
また、内部空間内に配された分離板4の両主面には、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数を可変させるための周波数可変部81,82が、それぞれ上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数調整に係わる基板領域28,38に対向して設けられている。なお、この周波数可変部81,82は、低融点の金属材料からなり、本実施例では、錫やインジウム等からなる。この周波数可変部81,82は、電気的に加熱させることで蒸発し、この蒸発した周波数可変部材81,82を上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3に蒸着させて、気密封止された内部空間14内において上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数の微調整を行なうためのものである。
【0054】
そこで、この分離板4には、周波数可変部81,82を電気的に加熱するための加熱用電極83,84(本実施例では、モリブデンやチタンなどを用いている)が形成されている。また、これら加熱用電極83,84は、それぞれに対応し段部151に設けられた電極パッド55〜58及び接続電極65〜68を介して、ベース11の裏面16に形成される端子電極75〜78に電気的に接続され、端子電極75〜78が図示しない外部電源に接続される。なお、ここで用いる電極パッド55〜58と接続電極65〜68と端子電極75〜78とは既存の水晶振動子ではアース電極やダミー電極として用いられていた電極を利用してもよい。また、電極パッド55〜58、接続電極65〜68、端子電極75〜78は、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース11と一体的に焼成して形成される。そして、電極パッド55〜58、接続電極65〜68、端子電極75〜78のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0055】
なお、上記した同一名称からなる電極パッド51〜54、接続電極61〜64、端子電極71〜74も含めて、これら電極パッド51〜58、接続電極61〜68、端子電極71〜78により本発明でいうベース電極91〜98がそれぞれ構成される。すなわち、ベース11には、当該ベース11の内部空間14に面する内面17から当該ベース11の外周面である外面18に引き出された複数のベース電極91〜98が形成されている。なお、ベース電極91〜94が、本発明でいう複数のベース電極の一部に対応し、ベース電極95〜98が、本発明でいう複数のベース電極の他部に対応する。また、本発明でいう複数のベース電極の他部とは、複数のベース電極の一部以外の残り全てのベースということではなく、複数のベース電極の一部以外の残りの一部であってもよい。すなわち、複数のベース電極の他部を、周波数可変部81,82を電気的に加熱するための電極だけではなく、アース電極やダミー電極として用いてもよい。
【0056】
上記した構成からなる水晶振動子1の最終周波数調整及び微調整は、次のようにして行われる。まず、下側水晶振動片3がベース11の段部153に片保持され、下側水晶振動片3の最終周波数調整が行われる。下側水晶振動片3の最終周波数調整を終えた後に、その上空に分離板4が段部151上に設けられる。そして、分離板4の上空に、上側水晶振動片2がベース11の段部152に片保持され、上側水晶振動片2の最終周波数調整が行われて、水晶振動子1の最終周波数調整が行われる。
【0057】
そして、ベース11に、シーム溶接やビーム溶接等の手法によりキャップ12が接合されて、キャップ12とベース11とによる水晶振動子1のパッケージ13が構成され(パッケージ13の内部空間14が形成され)、内部空間14に上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3が気密封止される。内部空間14内において上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3が気密封止された後に、分離板4の両主面に設けられた周波数可変部81,82にベース電極95〜98を介して同一外部電源から同一量の電圧供給を行なって電気的に加熱する。周波数可変部81,82は加熱することで蒸発し、蒸発した周波数可変部81,82が上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数調整に係わる基板領域28,38に蒸着して、気密封止された内部空間14内において上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数を低くするように微調整する(本発明でいう周波数微調整工程)。本実施例では、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数の値を下げる微調整を行ない、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数を上記した最終周波数調整時の周波数にあわせこむ(修正する)。
【0058】
上記したように、本実施例にかかる水晶振動子1によれば、内部空間14内に、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数を可変させるための周波数可変部81,82が設けられ、周波数可変部81,82が電気的に加熱されて上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数が可変されるので、ベース11へのキャップ12の接合が原因となり上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数が変動する場合であっても、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数を予め設定した周波数にすることができる。具体的に、ベース11へのキャップ12の接合が原因となり上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数が変動する場合であっても、変動した上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数を最終周波数調整時の周波数に修正することができる。すなわち、内部空間14内において上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数の微調整を行なって変動した周波数の修正を図ることができる。そのため、ベース11とキャップ12とから上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3が気密封止された状態、すなわち内部空間14を形成した後であっても内部空間14内において上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数の微調整を行なって周波数の修正を図ることができる。特に、当該水晶振動子1を製造する際に、アニール工程や、封止工程、リフロー工程などの熱履歴を経ており、この熱履歴を経ることによりミーリング工程やパーシャル工程で調整した上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数(発振周波数)が変動するが、本実施例によれば、熱履歴を経た後に周波数可変部81,82により上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数を可変させるので、上記した熱履歴を経て変動した上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数を微調整して周波数偏差不良を抑制することができる。
【0059】
さらに、上記したように、本実施例にかかる水晶振動子1によれば、内部空間14内における上側水晶振動片2と下側水晶振動片3との間に、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3それぞれの周波数調整に係わる基板領域28,38を少なくとも隔壁した絶縁性の分離板4が介在させているので、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3それぞれの周波数調整をそれぞれ独立して行うこともできる。その結果、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数調整時において、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3それぞれの周波数を個別調整する際、周波数調整を行っていない他の水晶振動片(上側水晶振動片2の周波数調整を行うときの下側水晶振動片3)への周波数調整に関する干渉を防止することができる。具体的に、上側水晶振動片2の周波数調整の際に飛散する金属材料などが下側水晶振動片3に付着し、下側水晶振動片3の周波数が変動するのを抑制することができる。このように、本実施例にかかる水晶振動子1は、水晶振動片の周波数調整を行なうのに最適な形態である。
【0060】
また、パッケージ13は、非光透過部材からなるので、パッケージ13外部からレーザなどによって周波数可変部81,82を周波数調整することができない。しかしながら、本実施例によれば、内部空間14内において周波数可変部81,82が電気的に加熱されて上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数が可変されるので、内部空間14を形成した後であっても、内部空間14内において上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数の微調整を行なうことができる。
【0061】
また、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の励振電極22,23,32,33がベース電極91〜94に接続されるとともに、周波数可変部81,82がベース電極95〜98に接続されるので、周波数可変部81,82を接続したベース電極95〜98に外部電源を接続し、この外部電源から電圧供給されることにより、周波数可変部81,82が加熱され、この加熱により周波数可変部81,82が蒸発して、この蒸発した周波数可変部81,82が上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3に付着して上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数が可変される。また、上記したように、周波数可変部81,82専用にベース電極を新たに設計することなく、アース電極やダミー電極などの既存のベース電極を用いることも可能であり、既存のベースを利用することもできる。また、ベース11とキャップ12とから上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3が気密封止された状態、すなわち内部空間14を形成した後であっても内部空間14内において上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数の微調整を行なって周波数の修正を図るのに好ましい。
【0062】
また、周波数可変部81,82は低融点の材料であるので、他の構成部材を発熱させずに周波数可変部81,82だけを発熱させるのに好ましい。
【0063】
また、上記したように、本実施例にかかる水晶振動子1の製造方法(周波数調整工程)によれば、周波数微調整工程を有しているので、ベース11へのキャップ12の接合の際の接合によって周波数が変動する場合であっても、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数を予め設定した周波数にすることができる。具体的に、ベース11へのキャップ12の接合が原因となり上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数が変動する場合であっても、内部空間14内において上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数の微調整を行なって変動した周波数の修正を図ることができる。そのため、ベース11とキャップ12とから上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3が気密封止された状態、すなわち内部空間14を形成した後であっても内部空間14内において上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数の微調整を行なって周波数の修正を図ることができる。特に、当該水晶振動子1を製造する際に、アニール工程や、封止工程、リフロー工程などの熱履歴を経ており、この熱履歴を経ることによりミーリング工程やパーシャル工程で調整した上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数が変動するが、本実施例によれば、熱履歴を経た後に周波数可変部81,82により上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数を可変させるので、上記した熱履歴を経て変動した上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数を微調整して周波数偏差不良を抑制することができる。
【0064】
なお、上記した本実施例では、周波数可変部81,82を接続したベース電極95〜98に外部電源を接続し、この外部電源から電圧供給されることにより周波数可変部81,82が加熱されているが、周波数可変部81,82を電気的に加熱する構成は、これに限定されるものではない。例えば、図2に示すように、内部空間14内に周波数可変部81,82を電磁誘導加熱するための電磁誘導加熱部材85,86(一般的に磁化するものであって、本実施例では、銅やSUSなどを用いている)が設けられた構成であってもよい。このように、内部空間14内に、周波数可変部81,82を電磁誘導加熱するための電磁誘導加熱部材85,86が設けられているので、周波数可変部81,82には電磁誘導により電流が発生してこの電流により周波数可変部81,82が加熱され、この加熱により周波数可変部81,82が蒸発して、この蒸発した周波数可変部81,82が上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3に付着して上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数が可変される。そのため、ベース11とキャップ12とから上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3が気密封止された状態、すなわち内部空間14を形成した後であっても内部空間14内において上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数の微調整を行なって周波数の修正を図るのに好ましい。また、内部空間14を形成した後に上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3の周波数微調整を行なった後、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3が大気開放されるような周波数変動要素を無くすことができる。
【0065】
また、上記した本実施例では、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3それぞれに対して周波数可変部81,82を用いており、これら周波数可変部81,82には電圧を同一外部電源から供給しているが、これに限定されるものではなく、周波数可変部81,82それぞれが異なる外部電源にベース電極95〜98を介して接続され、周波数可変部81,82にそれぞれ異なる電圧が供給されてもよい。または、1つの外部電源から周波数可変部81,82それぞれに異なる電圧が供給されるように設計変更してもよい。
【0066】
また、上記した本実施例では、周波数可変部81,82を、加熱用電極83,84を介してベース電極95〜98に接続しているが、これに限定されるものではなく、図3に示すように、内部空間14のベース底面19において周波数可変部81,82をベース電極(例としてベース電極95,96)に直接接続してもよい。この場合、ベース電極の材料としてタングステンやモリブデンなどを用いることが好ましい。
【0067】
また、上記した本実施例では、水晶振動片の個数を2つとしているが、これに限定されるものではなく、用途にあわせて3つ以上の水晶振動片を用いることが可能である。この時、用いる水晶振動片の個数にあわせてパッケージの形状を変更し、3つ以上の水晶振動片の間それぞれに分離板4を介在させることで、上記した本実施例にかかる水晶振動子だけでなく、他の異なる機能を有する任意の圧電振動デバイスとして用いることができる。または、図3に示すように、水晶振動片の個数を1つとしてもよい。なお、この図3に示す水晶振動子1では、分離板4を用いずにベース11に直接周波数可変部81,82が設けられている。また、この水晶振動子1では、1つの水晶振動片(例として水晶振動片2)に対して2つの周波数可変部81,82を用いている。このように、周波数可変部81,82は、内部空間14内であれば任意の位置に設けられてもよく、周波数調整効率の高い場所に適宜配置することが好ましい。また、1つの水晶振動片2に対する周波数可変部材の数は限定されるものではない。
【0068】
また、上記した本実施例では、分離板4は、内部空間14の側壁に設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、ベース11上に設けられてもよい。この図4に示す水晶振動子1では、分離板4が、内部空間14のベース底面19から突起して折曲され、折曲された分離板4の先端に周波数可変部材(例として周波数可変部材81)が設けられている。
【0069】
また、上記した本実施例では、分離板4により、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3それぞれの周波数調整に係わる基板領域28,38が少なくとも隔壁されているが、これに限定されるものではなく、例えば、分離板4により上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3を完全に隔壁してもよい。
【0070】
また、上記した本実施例では、図1に示す上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3に音叉型水晶振動片を適用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、音叉型水晶振動片とATカット水晶振動片とを用いてもよい。また、ATカット水晶振動片を2つ用いてもよい。すなわち、任意の圧電振動片が適用可能である。
【0071】
また、上記した本実施例では、分離板4の材料として水晶を用いているが、これに限定されるものではなく、絶縁材料であれば、ガラスやセラミックなどであってもよい。なお、分離板4の材料にガラスを用いた場合、分離板4はエッチング加工により成形される。また、分離板4の材料にセラミックを用いた場合、分離板4はプレス加工により成形される。
【0072】
また、上記した本実施例では、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3が気密封止された後に周波数可変部材81,82により周波数の修正を図っているが、これは好適な例である。そのため、これに限定されることではなく、上側水晶振動片2及び下側水晶振動片3が気密封止される前に周波数可変部材81,82により周波数を予め変動させてもよい。
【0073】
また、上記した本実施例において、内部空間14内に、当該内部空間14内の圧力(以下、内圧とする)を下げるゲッタ材89を設けてもよい。なお、本実施例では、ゲッタ材にチタンを用いている。例えば、図5に示すように、水晶振動子1の内部空間14内に水晶振動片(例として水晶振動片2;以下同様)と、分離板4(本発明でいうゲッタ材と水晶振動片とを遮蔽する遮蔽板)が設けられ、分離板4の水晶振動片2に面する主面44に周波数可変部材(例として周波数可変部材81;以下同様)が設けられ、その他主面45にゲッタ材89が設けられてもよい。この図5に示す構成では、周波数可変部材81及びゲッタ材89は、それぞれ異なるベース電極95〜98に加熱用電極83,84を介して接続されている。さらに、ゲッタ材89は、図5に示すように水晶振動片2から隔離する位置に配されている。
【0074】
この図5に示す水晶振動子1では、周波数可変部材81に外部電源から電極供給されることにより、ベース電極95,96及び加熱用電極83を介して周波数可変部材81が加熱され、この加熱により周波数可変部材81が蒸発して、この蒸発した周波数可変部材81が水晶振動片2に付着して水晶振動片2の周波数を可変させる(本発明でいう周波数微調整工程)。そして、ゲッタ材89に外部電源から電極供給されることにより、ベース電極97,98及び加熱用電極84を介してゲッタ材89が加熱され、この加熱によりゲッタ材89が蒸発し、この蒸発したゲッタ材がベース11へのキャップ12接合時に生じて内部空間14内に残留するガス分子を捕集して、内圧を下げる(本発明でいう圧力低下工程)。そして、上記した周波数微調整工程と圧力低下工程とを交互に行なって、水晶振動子1を製造する。
【0075】
上記した実施例にかかる水晶振動子1に示すように内圧を下げるゲッタ材89が内部空間14内に設けて、ゲッタ材89により内部空間14内において内圧を下げることができる。そのため、当該水晶振動子1の直列共振抵抗値が上昇するのを防止することができる。特に、ベース11とキャップ12とから水晶振動片2が気密封止された状態、すなわち内部空間14を形成した後の内圧を下げるのに好ましい。
【0076】
また、ゲッタ材89と水晶振動片2との間に、ゲッタ材89と水晶振動片2とを遮蔽する分離板4が設けられるので、ゲッタ材89を蒸発させた際に内部空間14内の水晶振動片2にガス分子を捕集したゲッタ材89が付着するのを防止することができる。
【0077】
また、ゲッタ材89は、水晶振動片2から隔離する位置に配されるので、ゲッタ材89を蒸発させた際に内部空間14内の水晶振動片2にガス分子を捕集したゲッタ材89が付着するのを防止することができる。また、本実施例に示すように音叉型水晶振動片2を用いた場合、周波数変動がほとんどない状態で、直列共振抵抗値を改善させることができる。
【0078】
さらに、上記した実施例にかかる水晶振動子1の製造方法によれば、圧力低下工程を有しているので、ゲッタ材89により内圧を下げることができる。そのため、当該水晶振動子1の直列共振抵抗値が上昇するのを防止することができる。特に、当該水晶振動子1を製造する際に、アニール工程や、封止工程、リフロー工程などの熱履歴を経ており、この熱履歴を経ることにより水晶振動片2の直列共振抵抗値が上昇するが、本実施例によれば、圧力低下工程により内圧を下げて、水晶振動片2の直列共振抵抗値が上昇するのを防止することができる。
【0079】
また、周波数微調整工程と圧力低下工程とを交互に行なうので、ベース11とキャップ12とから水晶振動片2が気密封止された状態、すなわち内部空間14を形成した後に水晶振動片2の周波数の調整を行なうとともに、内力を低下させるのに好ましく、製造工程の効率をよくする。
【0080】
次に、図5に示す水晶振動子1以外の他の実施例にかかるゲッタ材89を設けた水晶振動子を説明する。なお、以下に説明する水晶振動子では、図5に示す水晶振動子1の構成と異なる構成について説明し、図5に示す水晶振動子1と同一の作用効果についての説明を省略する。
【0081】
図6に示す水晶振動子1では、水晶振動子1の内部空間14内に水晶振動片2と、分離板4が設けられ、分離板4の水晶振動片2に面する主面44に周波数可変部材81が設けられている。また、内部空間14内のベース11上にゲッタ材89が設けられ、分離板4によりゲッタ材89と水晶振動片2とは直面せずに遮断されている。この図6に示す構成では、周波数可変部材81は加熱用電極83を介してベース電極95,96に接続されている。また、ゲッタ材89は、内部空間14のベース底面19において直接ベース電極97,98に接続されている。
【0082】
図7に示す水晶振動子1では、水晶振動子1の内部空間14内の段部152に水晶振動片2が片保持され、内部空間14内のベース底面19に周波数可変部材81とゲッタ材89が設けられている。周波数可変部材81は水晶振動片2の周波数調整に係わる基板領域28と対向している。また、ゲッタ材89は水晶振動片2から隔離する位置に配されている。
【0083】
図8に示す水晶振動子1では、水晶振動子1の内部空間14内に水晶振動片2と、分離板4が設けられている。分離板4は、内部空間14のベース底面19から突起して折曲され、折曲された分離板4の先端に周波数可変部材81及びゲッタ材89が設けられている。周波数可変部材81は、分離板4の水晶振動片2の周波数調整に係わる基板領域28に面して配されている(図8の符号44参照)。また、ゲッタ材は、水晶振動片2とは直面しない主面45に配され、水晶振動片2とは遮断されている。
【0084】
図9に示す水晶振動子1では、水晶振動子1の内部空間14内の段部152に水晶振動片2が片保持され、内部空間14内のキャップ12に周波数可変部材81とゲッタ材89が設けられている。周波数可変部材81は水晶振動片2の周波数調整に係わる基板領域28と対向している。また、ゲッタ材89は水晶振動片2から隔離する位置に配されている。さらに、キャップ12はセラミックからなり、周波数可変部材に接続されたベース電極95,96と、ゲッタ材89に接続されたベース電極97,98とが、貫通形成されている。
【0085】
また、図5〜9に示す周波数可変部材81とゲッタ材89とを設けた水晶振動子1の構成を、図2に示すように、加熱用電極83(もしくは83,84)の代わりに電磁誘導加熱部材85(もしくは85,86)を設けて電磁誘導加熱を行なった構成としてもよい。
【0086】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、水晶振動子などの圧電振動デバイス及びその製造方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、本実施例にかかる水晶振動子の概略構成図である。具体的に、図1(a)は、キャップを外した状態の水晶振動子の概略平面図である。図1(b)は、図1(a)に示す水晶振動子のX−X線断面図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる、電磁誘導加熱を用いた水晶振動子の概略断面図である、
【図3】図3は、本実施例にかかる、ベース底面に直接周波数可変部材を設けた水晶振動子の概略断面図である、
【図4】図4は、本実施例にかかる、分離板の形態を変えた水晶振動子の概略断面図である、
【図5】図5は、本実施例にかかる、ゲッタ材を設けた水晶振動子の概略断面図である、
【図6】図6は、本実施例にかかる、ゲッタ材を設けた水晶振動子の概略断面図である、
【図7】図7は、本実施例にかかる、ベース底面に直接周波数可変部材及びゲッタ材を設けた水晶振動子の概略断面図である、
【図8】図8は、本実施例にかかる、分離板の形態を変えるとともに、ゲッタ材を設けた水晶振動子の概略断面図である、
【図9】図9は、本実施例にかかる、キャップに周波数可変部材及びゲッタ材を設けた水晶振動子の概略断面図である、
【符号の説明】
【0089】
1 水晶振動子(圧電振動デバイス)
11 ベース
12 キャップ
13 パッケージ
14 内部空間
17 内部空間に面する内面
18 ベースの外面
2,3 水晶振動片(圧電振動片)
24,25,34,35 励振電極(圧電振動片に形成された電極)
4 分離板(遮蔽板)
81,82 周波数可変部材,
83,84 加熱用電極,
85,86 電磁誘導加熱部材,
89 ゲッタ材
91〜98 ベース電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースにキャップが接合されてパッケージが構成されるとともに前記パッケージ内に内部空間が形成され、前記内部空間内の前記ベース上に圧電振動片が保持された圧電振動デバイスにおいて、
前記内部空間内に、前記圧電振動片の周波数を可変させるための周波数可変部材が設けられ、
前記周波数可変部材が電気的に加熱されて前記圧電振動片の周波数が可変されることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記パッケージは、非光透過部材からなることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記圧電振動片に、電極が形成され、
前記ベースに、当該ベースの前記内部空間に面する内面から当該ベースの外周面である外面に引き出された複数のベース電極が形成され、
前記圧電振動片に形成された前記電極が、前記複数のベース電極の一部に接続されるとともに、前記周波数可変部材が、前記複数のベース電極の他部に接続されたことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記内部空間内に、前記周波数可変部材を電磁誘導加熱するための電磁誘導加熱部材が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動デバイス。
【請求項5】
前記周波数可変部材は、低融点の材料であることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイス。
【請求項6】
前記内部空間内の圧力を下げるゲッタ材が前記内部空間内に設けられたことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイス。
【請求項7】
前記ゲッタ材と前記圧電振動片との間に、前記ゲッタ材と前記圧電振動片とを遮蔽する遮蔽板が設けられたことを特徴とする請求項6に記載の圧電振動デバイス。
【請求項8】
前記ゲッタ材は、前記圧電振動片から隔離する位置に配されたことを特徴とする請求項6または7に記載の圧電振動デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造方法であって、
前記ベースに前記キャップを接合して前記内部空間を形成した後に、前記周波数可変部材を電気的に加熱して前記内部空間内において前記圧電振動片の周波数の微調整を行なう周波数微調整工程と、
前記ベースに前記キャップを接合して前記内部空間を形成した後に、前記ゲッタ材により前記内部空間内において前記内部空間の圧力を低下させる圧力低下工程と、を有し、
前記周波数微調整工程と前記圧力低下工程とを交互に行なうことを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−81697(P2007−81697A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265661(P2005−265661)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】