説明

圧電発振器

【課題】温度補償機能とAFC機能を備えた回路構成において、温度補償機能とAFC機能が互いに影響を及ぼすことがなく、高精度の温度補償を実現できる圧電発振器を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明の圧電発振器10は、圧電振動子26と、発振用増幅回路と、電圧制御型の第1及び第2の可変容量素子28a,28bと、を備えた発振回路20と、第1の可変容量素子28aの値を増減制御して発振回路20の周波数温度特性を補償するための温度補償電圧を出力する温度補償電圧発生回路30と、温度補償電圧による第1の可変容量素子28aの変化に対して、発振回路20のAFC感度の増減を抑えるように第2の可変容量素子28bの値を変化させる調整信号を出力する補償電圧検出回路40と、調整信号を受けて外部制御電圧の増幅率の調整を行なうゲイン調整回路60を備え、第2の可変容量素子28bを制御するための周波数制御電圧を出力する増幅回路50と、を備えたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子の発振周波数の温度補償を行う圧電発振器に関し、特に温度補償機能とAFC(Auto Frequeny Control)機能を備えた圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は従来の温度補償型水晶発振器の回路構成を示す説明図である。図示のように温度補償型水晶発振器1は、インバーター素子を用いた発振回路2にMOS型電圧可変容量素子を用いた温度補償回路3と、MOS型電圧可変容量素子を用いたAFC回路4と、を付加している。温度補償回路3は、1次電圧発生回路と3次電圧発生回路とで構成されており、水晶振動子自身が持つ本来の周波数温度特性を打ち消すために、発振回路2内の可変容量素子に温度補償電圧を印加して、例えば水晶振動子の3次曲線の温度特性を打ち消すように周波数を可変させて発振周波数を安定化させている。IC化された発振器では、AFC回路4をオペアンプで構成している。すなわちオペアンプの抵抗値を制御することで外部制御電圧のゲインを任意に変更し、ICの電気的特性にばらつきを補正することにより、ユーザーの任意の仕様に合わせたAFC特性が得られるように調整することができる。このAFC回路4は、ユーザーが使用する機能であり、外部制御電圧に対して所望の周波数可変を得るための機能である。AFC機能は、ユーザーごとに、外部制御電圧範囲や、必要とする周波数可変幅が異なっている。
このような温度補償回路とAFC回路を備えた水晶発振器が特許文献1、2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−217643号公報
【特許文献2】特開2007−19565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、従来の温度補償型水晶発振器のAFC特性を示す説明図である。同図の横軸は外部制御電圧(V)を示し、縦軸は発振周波数の偏差(ppm)を示している。従来の温度補償型水晶発振器に温度補償回路とAFC回路が共存する温度補償型水晶発振器の場合、基準状態である常温においてAFC回路を最適設計しても、図示のように、そのAFC特性は温度特性があるので温度によって異なる特性となる。これは温度補償用の可変容量素子D1が温度補償電圧によって容量変化し、これにより発振回路の負荷容量が変化しているにもかかわらず、AFC回路の外部制御電圧による可変容量素子D2の制御条件が基準状態と同じであるので、基準状態とその他の温度状態のときとの間で外部制御電圧の変化に対する周波数変化特性(AFC感度)に差が生じてしまう。
【0005】
そこで本発明は、従来技術の問題点を解決するため、温度補償機能とAFC機能を備えた回路構成において、温度補償機能とAFC機能が互いに影響を及ぼすことがなく、高精度の温度補償を実現できる圧電発振器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
〔適用例1〕圧電振動子と、発振用増幅回路と、電圧制御型の第1及び第2の可変容量素子と、を備えた発振回路と、前記第1の可変容量素子の値を増減制御して前記発振回路の周波数温度特性を補償するための温度補償電圧を出力する温度補償電圧発生回路と、前記温度補償電圧により制御した調整信号を出力する補償電圧検出回路と、前記調整信号を受けて外部制御電圧の増幅率の調整を行なうゲイン調整回路を備え、前記第2の可変容量素子を制御するための周波数制御電圧を出力する増幅回路と、を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【0007】
補償電圧検出回路で温度補償電圧により制御した調整信号を発生させて、ゲイン調整回路で外部制御電圧の増幅率を調整し、調整された周波数制御電圧を第2の可変容量素子へ出力させることができる。したがって、温度補償用の可変容量を温度補償電圧によって容量変化させても、温度補償電圧に応じてAFC電圧を制御しているので、AFC側の可変容量に及ぼす影響を回避し、安定したAFC特性を得ることができる。
【0008】
〔適用例2〕前記温度補償電圧が前記第1の可変容量素子の値を増減制御したことで基準状態のときよりも前記外部制御電圧の単位電圧における周波数変化量が増減するとき、前記周波数変化量の増減を抑えるように前記第2の可変容量素子を制御するための前記周波数制御電圧を発生させるように前記補償電圧検出回路が前記ゲイン調整回路を制御して前記増幅回路のゲインを調整する前記調整信号を出力することを特徴とする適用例1に記載の圧電発振器。
【0009】
本発明の圧電発振器は常温時の温度補償電圧を第2の可変容量素子に印加した状態で、所望のAFC特性が得られるようAFC電圧を調整した状態を基準状態とし、具体的に調整信号は、温度補償電圧が第1の可変容量素子の値を増減制御したことで基準状態のときよりも外部制御電圧の単位電圧における周波数変化量が増減するとき、周波数変化量の増減を抑えるように第2の可変容量素子を制御するための周波数制御電圧を発生させるように増幅回路のゲインを調整している。したがって、温度補償用の可変容量を温度補償電圧によって容量変化させても、温度補償電圧に応じてAFC電圧を制御しているので、AFC側の可変容量に及ぼす影響を回避し、安定したAFC特性を得ることができる。
【0010】
〔適用例3〕適用例1または適用例2に記載の圧電発振器において、前記増幅回路は、オペアンプと、可変抵抗回路と、を備え、前記ゲイン調整回路は、前記調整信号により前記可変抵抗回路の抵抗値を制御することを特徴とする圧電発振器。
【0011】
これにより補償電圧検出回路から出力された調整信号に基づいて、オペアンプの抵抗値を制御することができる。したがって外部制御電圧をデジタル的にゲイン調整することができる。
【0012】
〔適用例4〕適用例1または適用例2に記載の圧電発振器において、前記増幅回路は、オペアンプと、複数の抵抗からなる直列抵抗と、を備え、前記ゲイン調整回路は、前記直列抵抗の抵抗間と前記オペアンプの入力端子との間に前記調整信号によりスイッチ素子のオンオフ状態を制御するスイッチ制御回路を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【0013】
これにより補償電圧検出回路から出力された調整信号に基づいて、複数のスイッチ素子のオンオフ状態を制御してオペアンプの抵抗値を制御することができる。したがって外部制御電圧をデジタル的にゲイン調整することができる。
【0014】
〔適用例5〕前記増幅回路と前記補償電圧検出回路との間に、前記外部制御電圧が入力され、前記外部制御電圧のセンター値の出力になるまでラッチするラッチ回路を備えたことを特徴とする適用例4に記載の圧電発振器。
【0015】
これにより、ゲイン調整するタイミングを外部制御電圧がセンター値のときに合わせることができ、周波数変動を抑制することができる。したがってセンター値以外のゲイン調整によりAFC電圧が変化して周波数が変動することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の圧電発振器の構成概略を示す図である。
【図2】温度と温度補償電圧および第1の可変容量素子の容量値の関係を示す説明図である。
【図3】本発明の圧電発振器のAFC特性を示す説明図である。
【図4】本発明の圧電発振器の変形例1の構成概略を示す図である。
【図5】本発明の圧電発振器の変形例2の構成概略を示す図である。
【図6】従来の温度補償型水晶発振器の回路構成を示す説明図である。
【図7】従来の温度補償型水晶発振器のAFC特性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の圧電発振器の実施形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1は本発明の圧電発振器の構成概略を示す図である。図示のように本発明の圧電発振器10は、発振回路20と、温度補償電圧発生回路30と、補償電圧検出回路40と、増幅回路50とを主な構成要件としている。
【0018】
発振回路20は、発振用増幅回路を形成する帰還抵抗22とインバーター素子24と、圧電振動子26と電圧制御型の複数の可変容量素子28とコンデンサーC1,C2から構成されている。
【0019】
可変容量素子28は、一例としてMOS型の電圧可変容量素子を適用することができる。第2の可変容量素子28bのゲート端子は、コンデンサーC1を介してインバーター素子24の入力端側に接続し、第1の可変容量素子28aのゲート端子は、コンデンサーC2を介してインバーター素子24の出力端側に接続され、第1及び第2の可変容量素子28a,28bのバックゲート端子は接地されている。そして第2の可変容量素子28bのゲート端子とコンデンサーC1の間の接続点に抵抗R1を介して、後述する増幅回路50からのAFC電圧(周波数制御電圧)が供給される。一方、第1の可変容量素子28aのゲート端子とコンデンサーC2の間の接続点に抵抗R2を介して、後述する温度補償電圧発生回路30からの温度補償電圧(Vcomp)が供給される。
【0020】
温度補償電圧発生回路30は、1次電圧発生回路32と3次電圧発生回路34と温度センサー36から構成されている。高精度の温度補償を必要とする場合は、4次以上の次数の電圧発生回路を有する。1次電圧発生回路32及び3次電圧発生回路34には、温度センサー36の出力電圧が入力されるように接続されている。そして1次電圧発生回路の出力電圧と3次電圧発生回路の出力電圧とを加算して得られた温度補償電圧を第1の可変容量素子28aへ印加して、温度センサー36の出力電圧に応じて発振周波数を微調整するようにしている。
【0021】
補償電圧検出回路40は、複数の比較器から構成されている。補償電圧検出回路40は、温度補償電圧発生回路30と第1の可変容量素子28aとの間に接続している。補償電圧検出回路40は、予め定めた基準電圧で区分けした電圧範囲に対して、温度補償電圧発生回路から出力された補償電圧がどの電圧範囲に属しているかを判断し、補償電圧の状況に応じてAFC特性の温度補償を行うために第2の可変容量素子28bの値を変化させる調整信号を出力する回路である。本実施形態の補償電圧検出回路40は、第1及び第2の比較器42,44から構成されており、任意の基準電圧を2つ(基準電圧1>基準電圧2)設定している。第1及び第2の比較器42,44は温度補償電圧発生回路30からの温度補償電圧がそれぞれ入力される。第1の比較器42には、基準電圧1と温度補償電圧が入力される。また第2の比較器44には基準電圧2と温度補償電圧が入力される。
【0022】
増幅回路50は、第1及び第2のオペアンプ52,54と、可変抵抗回路である直列抵抗Rと、ゲイン調整回路60と、から構成されている。
第1のオペアンプ52の反転入力端子は、直列抵抗R間の端子と後述する複数のスイッチ素子を介して接続している。また非反転入力端子には固定電圧(VREF1)が入力される。
【0023】
直列抵抗Rは、本実施形態では4つの抵抗(Ra,Rb,Rc,Rd)を直列に配置し、抵抗Raの一端を外部制御電圧入力端子70に接続させて、抵抗Rdの一端を第1及び第2のオペアンプ52,54の間(第1のオペアンプ52の出力端子と第2のオペアンプ54の反転入力端子の間)に接続させている。なお直列抵抗Rを形成する抵抗数は任意に設定することができる。また、第1のオペアンプ52のゲインは外部制御電圧VCONTの端子と第1のオペアンプ52の反転入力端子との間の抵抗値と、第1のオペアンプ52の反転入力端子と第1のオペアンプ52の出力端子との間の抵抗値(帰還抵抗値)との比で決まる。
第2のオペアンプ54は、抵抗Re,Rfと反転増幅回路を構成している。第2のオペアンプ54の非反転入力端子には固定電圧(VREF2)が入力される。
【0024】
ゲイン調整回路60は、スイッチ素子62とスイッチ制御回路64とから構成されている。スイッチ素子62は、直列抵抗R間の複数の端子と第1のオペアンプの反転入力端子との間に並列に接続している。本実施形態では3つのスイッチ素子62a,62b,62cを並列に接続させている。スイッチ素子62には、後述するスイッチ制御回路64からの制御信号が入力され、制御信号により、直列抵抗Rと第1のオペアンプ52の間を断接している。
【0025】
スイッチ制御回路64は、温度補償電圧を予め定めた基準電圧との比較結果に応じてスイッチ素子62を制御する回路である。本実施形態では、補償電圧検出回路40の調整信号に基づいて、複数のスイッチ素子62a〜62cのオンオフ状態を切り替え制御している。
【0026】
このような構成の前記増幅回路50は、AFC機能の役割を成し、調整されたAFC電圧を第2の可変容量素子28bへ出力させている。すなわち具体的に増幅回路50は、外部制御電圧入力端子70からの外部制御電圧(VCONT)が、ゲイン調整回路60を構成する第1のオペアンプ52に入力される。第1のオペアンプ52のゲイン調整は、複数の抵抗Rを調整することにより行なわれる。この電圧が第2のオペアンプ54により増幅されてAFC電圧となり第2の可変容量素子28bへ印加される。
【0027】
上記構成による本発明の圧電発振器10の作用について以下説明する。
温度補償電圧発生回路30からの温度補償電圧が補償電圧検出回路40に入力される。補償電圧検出回路40では、温度補償電圧と予め定めた基準電圧1,2を比較している。
【0028】
図2は温度と温度補償電圧および第1の可変容量素子28aの容量値の関係を示す説明図である。同図(1)の横軸は温度(℃)を示し、縦軸は温度補償電圧(V)及び第1の可変容量素子28aの容量値(pF)を示す。また図中の波線は、予め定めた2つの基準電圧1,2(基準電圧1>基準電圧2)であり、基準電圧1及び2の間を温度補償電圧の基準領域Aとしている。この基準領域Aよりも高い電圧領域をCとし、低い電圧領域をBとしている。電圧領域Bと電圧領域Cとの間にある基準領域Aの温度範囲には基準状態の温度である常温(約25℃)が含まれる。
【0029】
圧電発振器10の基準状態とは、常温時の温度補償電圧を第2の可変容量素子28bに印加した状態で、所望のAFC特性が得られるようゲイン調整回路60を設定しAFC電圧を調整した状態である。
【0030】
温度補償電圧に応じたAFCゲインの調整は同図(2)に示すように、温度補償領域が基準領域Aの場合、外部制御電圧自体が出力される調整信号を出力する。具体的に本実施例では、スイッチ制御回路64からスイッチ素子62bをオン状態とし、スイッチ素子62a及び62cをオフ状態とするスイッチ制御信号が出力される。外部制御電圧は第1及び第2のオペアンプ52,54で増幅されて第2の可変容量素子28bへAFC電圧が出力される。
【0031】
また温度補償電圧が領域Cでは、領域BとCとに挟まれた基準領域AのときよりもAFCゲインを増加させる調整信号を出力する。具体的に本実施例では、スイッチ制御回路64からスイッチ素子62aをオン状態とし、スイッチ素子62b及び62cをオフ状態とするスイッチ制御信号が出力される。外部制御電圧は第1及び第2のオペアンプ52,54で増加されて第2の可変容量素子28bへAFC電圧が出力される。
【0032】
一方、温度補償電圧が領域Bでは、領域BとCとに挟まれた基準領域AのときよりもAFCゲインを減少させる調整信号を出力する。具体的に本実施例では、スイッチ制御回路64からスイッチ素子62cをオン状態とし、スイッチ素子62a及び62bをオフ状態とするスイッチ制御信号が出力される。外部制御電圧は第1及び第2のオペアンプ52,54で減少されて第2の可変容量素子28bへAFC電圧が出力される。
【0033】
このように基準電圧(基準状態)に対して例えば温度補償電圧が第1の可変容量素子の容量値を減らすよう制御したときは第2の可変容量素子の単位あたりの容量値の変化に対して発振回路の負荷容量の変化量が小さくなり、これにより外部制御電圧VCONTの単位あたりの電圧の変化に対しての周波数変化量として表されるAFC感度が小さくなってしまうが、補償電圧検出回路40は、このAFC感度が小さくなるのを抑える働きをする。即ち、上述のようにAFC感度が小さくなるのを抑えるためには増幅回路50の増幅率を上げて外部制御電圧VCONTの単位あたりの電圧変化に対するAFC電圧の変化量を増加し、これにより外部制御電圧VCONTの単位当たりの電圧変化に対する第2の可変容量素子の容量値の変化量を大きく調整すればよい。そのために補償電圧検出回路40は、増幅回路50のゲインが増加するようゲイン調整回路60を制御するのに必要な調整信号を出力する。
【0034】
図3は本発明の圧電発振器のAFC特性の説明図である。同図横軸は外部制御電圧(V)を示し、縦軸は発振周波数の偏差(ppm)を示す。図示のように本発明の圧電発振器によれば、温度補償電圧により制御した調整信号をゲイン調整回路に出力して、ゲイン調整回路で外部制御電圧の増幅率を調整することができる。調整された周波数制御電圧を第2の可変容量素子へ出力させて、温度変化によるAFC特性の影響を抑制する効果が得られる。
【0035】
次に本発明の圧電発振器の変形例1について以下説明する。図4は本発明の圧電発振器の変形例1の構成概略を示す図である。変形例1の圧電発振器10Aは、ON抵抗を備えた増幅回路50Aと、温度補償電圧が入力する補償電圧制御回路80とを備えた構成としている。また発振回路20Aは複数の可変容量素子28c,28d,28e,28fを並列接続させている。その他の構成は図1に示す構成と同様であり、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0036】
補償電圧制御回路80は、オペアンプ82と抵抗Rg,Rhとで構成されており、オペアンプ82の反転入力端子には固定電圧(VREF3)が入力され、非反転入力端子には温度補償電圧発生回路30からの温度補償電圧が入力される。
【0037】
増幅回路50Aは、可変抵抗回路66を備えている。可変抵抗回路66には補償電圧制御回路80からの調整信号が入力される。本実施形態の可変抵抗回路66は、一例としてトランジスタのON抵抗としてNchMOSトランジスタ等を用いることができる。
【0038】
上記構成による変形例1の圧電発振器10Aは、温度補償電圧が入力された補償電圧制御回路80では、温度補償電圧の変化量に応じて増幅される。次に調整信号がゲイン調整回路60Aの可変抵抗回路66に入力される。可変抵抗回路66では、入力された調整信号に応じて抵抗値が変化するのでゲインの増幅量を調整することができる。なお変形例1の発振回路20Aは、複数の可変容量素子28を並列接続させている。このため、図1に示す可変容量素子を直列接続させた構成と逆の調整となる。すなわち、補償電圧制御回路80は、基準電圧(基準状態)に対して温度補償電圧により第1の可変容量素子の容量値を増減制御したことにより発振回路のAFC感度が変化したとき、このAFC感度の変化を小さく抑えるように増幅回路50のゲインを調整するための調整信号を出力している。
【0039】
このような変形例1の圧電発振器によれば、温度補償電圧による負荷容量の変化に対してゲイン調整の微調整によるAFC特性が得られ、安定した周波数が得られる。またAFCと温度補償の可変容量素子を独立に設けることができ、個々で独立した電圧設定ができる。リニアな温度補償だけでなく、複雑な温度補償方式でもAFCゲインの可変が可能となる。
【0040】
次に本発明の圧電発振器の変形例2について以下説明する。図5は本発明の圧電発振器の変形例2の構成概略を示す図である。変形例2の圧電発振器10Bは、図1に示す圧電発振器10の構成において、増幅回路50と補償電圧検出回路40の間にラッチ回路100を設けた構成である。また圧電発振器10Bの複数の可変容量素子28は、並列接続させている。その他の構成は圧電発振器10と同様の構成であり、同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0041】
変形例2の圧電発振器10Bのラッチ回路100は、一例としてスイッチ素子62とスイッチ制御回路64の間に形成している。ラッチ回路100は、外部制御電圧と、スイッチ制御回路64からの調整信号が入力される。ラッチ回路100は、予め外部制御電圧のセンター値を基準値として定め、センター値のときにスイッチ制御回路64の信号をスイッチ素子に伝達し、センター値以外のときにはスイッチ制御回路64の信号が変化してもスイッチ素子には伝達されないように動作する。なお基準となるセンター値の電圧のノイズによってラッチ回路が誤作動しないようにVCONT電圧の入力部にはヒステリシス機能を設けてもよい。
【0042】
上記構成による変形例2の圧電発振器10Bは、図1と同様に補償電圧検出回路40において基準電圧1,2と温度補償電圧に基づいて調整信号をスイッチ制御回路64に出力している。このとき、変形例2の圧電発振器10Bは、複数の可変容量素子を並列接続させているため、変形例1に示すように、基準電圧に対して温度補償電圧により第1の可変容量素子の容量値が増加したとき、増幅回路50のゲインを増加させ、または基準電圧に対して温度補償電圧により第1の可変容量素子の容量値を増減制御したことにより第1の可変容量素子の容量値が減少したとき、増幅回路50のゲインを減少させる調整信号を出力している。
【0043】
そしてスイッチ制御回路64は、図2(1)に示すように温度補償領域が基準領域Aの場合、外部制御電圧自体が出力される調整信号を出力する。具体的に本実施例では、スイッチ制御回路64からスイッチ素子62bをオン状態とし、スイッチ素子62a及び62cをオフ状態とするスイッチ制御信号が後段のラッチ回路100へ出力される。
【0044】
また温度補償電圧が領域Cでは、領域Bと領域Cとに挟まれた基準領域AのときよりもAFCゲインを減少させる調整信号を出力する。具体的に本実施例では、スイッチ制御回路64からスイッチ素子62cをオン状態とし、スイッチ素子62a及び62bをオフ状態とするスイッチ制御信号が後段のラッチ回路100へ出力される。
【0045】
一方、温度補償電圧が領域Bでは、領域Bと領域Cとに挟まれた基準領域AのときよりもAFCゲインを増加させる調整信号を出力する。具体的に本実施例では、スイッチ制御回路64からスイッチ素子62aをオン状態とし、スイッチ素子62b及び62cをオフ状態とするスイッチ制御信号が後段のラッチ回路100へ出力される。
【0046】
ラッチ回路100では、前段のスイッチ制御回路64からのスイッチ制御信号と、外部制御電圧入力端子70から外部制御電圧が入力され、予め定めた外部制御電圧のセンター値が入力されたとき、スイッチ制御回路64からのスイッチ制御信号をスイッチ素子62a,62b,62cへ出力している。
【0047】
このような変形例2の圧電発振器10Bによれば、ゲインを調整するタイミングを外部制御電圧がセンター値のときに合わせることができ、周波数変動を抑制することができる。したがって外部制御電圧がセンター値以外の状態でゲインを変えることによるAFC電圧が変化して周波数が変動することを防止できる。
【符号の説明】
【0048】
1………温度補償型水晶発振器、2………発振回路、3………AFC回路、4………温度補償回路、10、10A、10B………圧電発振器、20………発振回路、22………帰還抵抗、24………インバーター素子、26………圧電振動子、28………可変容量素子、30………温度補償電圧発生回路、32………1次電圧発生回路、34………3次電圧発生回路、36………温度センサー、40………補償電圧検出回路、42………第1の比較器、44………第2の比較器、50………増幅回路、52………第1のオペアンプ、54………第2のオペアンプ、60………ゲイン調整回路、62………スイッチ素子、64………スイッチ制御回路、66………可変抵抗回路、70………外部制御電圧入力端子、80………補償電圧制御回路、90………AFC回路、100………ラッチ回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と、発振用増幅回路と、電圧制御型の第1及び第2の可変容量素子と、を備えた発振回路と、
前記第1の可変容量素子の値を増減制御して前記発振回路の周波数温度特性を補償するための温度補償電圧を出力する温度補償電圧発生回路と、
前記温度補償電圧により制御した調整信号を出力する補償電圧検出回路と、
前記調整信号を受けて外部制御電圧の増幅率の調整を行なうゲイン調整回路を備え、前記第2の可変容量素子を制御するための周波数制御電圧を出力する増幅回路と、
を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記温度補償電圧が前記第1の可変容量素子の値を増減制御したことで基準状態のときよりも前記外部制御電圧の単位電圧における周波数変化量が増減するとき、前記周波数変化量の増減を抑えるように前記第2の可変容量素子を制御するための前記周波数制御電圧を発生させるように前記補償電圧検出回路が前記ゲイン調整回路を制御して前記増幅回路のゲインを調整する前記調整信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧電発振器において、
前記増幅回路は、オペアンプと、可変抵抗回路と、を備え、
前記ゲイン調整回路は、前記調整信号により前記可変抵抗回路の抵抗値を制御することを特徴とする圧電発振器。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の圧電発振器において、
前記増幅回路は、オペアンプと、複数の抵抗からなる直列抵抗と、を備え、
前記ゲイン調整回路は、前記直列抵抗の抵抗間と前記オペアンプの入力端子との間に前記調整信号によりスイッチ素子のオンオフ状態を制御するスイッチ制御回路を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項5】
前記増幅回路と前記補償電圧検出回路との間に、前記外部制御電圧が入力され、前記外部制御電圧のセンター値の出力になるまでラッチするラッチ回路を備えたことを特徴とする請求項4に記載の圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−161532(P2010−161532A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1379(P2009−1379)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】