説明

型枠保持用支保工

【課題】施工が容易で、支保工の架設、撤去が能率的で、作業空間の確保も容易な、型枠保持用支保工を提供する。
【解決手段】電気防食工用支保工100は、桁20の下フランジ21の上面211に載置する懸架部111を上端に備えた上方開放のコの字状の複数の形鋼製支保材110と、複数の形鋼製支保材110それぞれの下辺上に載設され、モルタル充填型枠40を支持すると共に形鋼製支保材110を桁20に固定する簡易ジャッキ120とから構成され、コの字状の形鋼製支保材110は、桁20の下フランジ21の上面211に載置する懸架部111と、懸架部111から垂下する2本の形鋼材112,113と、2本の形鋼材112,113の下端近傍同士を着脱自在に剛結する水平な結合形鋼材114とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠保持用支保工に関し、さらに詳しくは、コンクリート製のT桁またはI桁の内部鉄筋の電気防食工の施工時のモルタル注入や、コンクリート製の桁の補修時のモルタルや樹脂等の注入または補修コンクリートの打設に用いる、型枠を支持する型枠保持用支保工の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食環境下で用いられるコンクリート構造物は、その内部鉄筋を保護し構造物の長寿命と安全性を図るため、電気防食を施すことが行われ、チタン電極を用いる外部電源方式の電気防食工が賞用されている(例えば特許文献1,2参照。)。
【0003】
コンクリート構造物に外部電源方式の電気防食を施す場合、コンクリート部材の外面に切削等により溝を形成し、その溝内に陽極を装着し、これを外部と絶縁し、この陽極に電極を付与することができるようにする。このため、陽極を埋め込んだ溝をモルタルで覆う作業が必要である。
【0004】
陽極を埋設する場所は、桁の下面や側面又は床版の下面となることが多く、モルタル充填には、モルタル充填型枠を用いて慎重に行う必要がある。
【0005】
また、従来、コンクリート製の桁や桟橋等のひび割れ、コンクリートの欠落部その他の補修のためモルタルやエポキシ樹脂等の注入又は補修コンクリートの打設等を必要とする場合があった。
【0006】
従来、T桁またはI桁の下面や側面やその他の部分の電気防食工用陽極埋設部にモルタル充填を行うための足場として、角材等の木材を現場加工し、桁に掛け渡し、これらを全ネジで連結して支保工を形成していた。このため、支保工全体としてバランスが悪く、また強度が弱く、モルタル充填型枠を押さえつける力も弱く、作業空間における支保工の占める割合が多いことから注入作業や作業位置の移動の際行動が制約される環境にあり、さらには、支保工の架設および撤去に手間と時間がかかるという問題があった。
【特許文献1】特開2001−11666号公報
【特許文献2】特許第4008891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コンクリート製のT桁またはI桁に電気防食工を施す際に、従来は大量の木材を現場加工して足場としての支保工を形成していたので、施工が困難で、支保工の架設、撤去に手間と時間がかかり、非能率的であると共に、作業空間の確保にも問題があった。また、木材は、長期間保管すると腐食を生じ強度が低下するため、繰り返し使用が困難であるという問題もあった。本発明はこのような問題を解決した型枠保持用支保工を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その技術手段は、桁の下面側のコンクリートに係止する係止部材と、この係止部材から吊下した複数の上方開放のコの字状の形鋼製支保材と、それら複数の形鋼製支保材に架け渡され型枠を支持する支持部材とから成ることを特徴とする型枠保持用支保工である。
【0009】
ここで、本発明において形鋼は、山形鋼、溝形鋼等をいう。
【0010】
本発明の型枠保持用支保工は、主としてコンクリート製の桁に適用されるもので、例えば、T桁またはI桁の下フランジの上面、下面、および側面、ウェブの側面、並びに上フランジのハンチ部から選ばれた1又は複数位置に埋設する電気防食工用陽極の施工時のモルタル注入や、桁の補修(ひび割れや欠落)時のモルタルや樹脂等の注入または補修コンクリートの打設に好適に用いられる。また、本発明は、このような電気防食工や桁の補修のみならず、海洋構造物(桟橋等)の断面修復時のモルタルやエポキシ樹脂等の注入または補修コンクリートの打設等にも巾広く応用することが可能である。
【0011】
本発明の型枠保持用支保工は形鋼を主材とした支保工であるので、強度が高く耐久性に富み、繰返し使用でき、設置や撤去作業が容易であり、1人で取扱うことも可能である。また、形鋼は強度があり、組み上がった型枠保持用支保工のバランスもよく、型枠を押さえる力が強くなった。これにより、例えばモルタル充填型枠の押さえ不足によるモルタルの流出を減少させることができた。
【0012】
本発明の型枠保持用支保工において、上記係止部材は、桁の下フランジの上面に載置する懸架部とし、上記支持部材は、型枠を支持すると共に上記形鋼製支保材と桁間に介装した支保工固定用ジャッキとすれば、好適である。このように、桁の下フランジの上面に載置する懸架部を備え、支保工固定用ジャッキを形鋼製支保材と桁間に張設することにより、型枠保持用支保工が桁に容易かつ確実に固定される。
【0013】
また、上記係止部材を懸架部とした型枠保持用支保工において、その懸架部は、上記コの字状の形鋼製支保材の開放端に着脱自在又は回動固定自在に取り付けられ、その形鋼製支保材は、上記懸架部から垂下する2本の形鋼材と、これら2本の形鋼材の下端近傍同士を着脱自在に剛結する水平な結合形鋼材とから成るものとすれば、さらに好適である。回動固定自在とは、ボルトナット等により固定可能であって、その中の1つのボルトナットを中心として回動自在に取付け、他のボルトナットで固定するものとすることによって、取り付け、取り外しが容易である。また、保管時に懸架部と2本の形鋼材と水平な結合形鋼材とを解体しておくことによって保管場所が小さい場所で済み、好適である。
【0014】
また、上記係止部材を懸架部とした型枠保持用支保工は、上記懸架部の上面に、桁の上フランジのハンチ部に設置した型枠を支持する桟木の下端を受ける受け材の支持部を設けると、その桟木の設置が容易かつ確実であり、ハンチ部のモルタルやエポキシ樹脂等の注入が容易となり、好適である。
【0015】
また、本発明の型枠保持用支保工において、上記係止部材は、桁の下面側のコンクリート面に取り付けるブラケットであると、下フランジの存在しない桁であっても、型枠保持用支保工を桁に容易かつ確実に固定することができ、好適である。
【発明の効果】
【0016】
従来の工法では2寸角・3寸角・桟木などの木材を現場加工して使用しなければならなかったが、本発明の型枠保持用支保工は形鋼を主材とするので、木材の使用量が少なくなる。また従来工法は材料の転用が困難であったが、本発明の型枠保持用支保工は材料の転用が容易である。よって経済面・環境面において効果が大きい。
【0017】
また、本発明の型枠保持用支保工は従来よりも作業空間を多くとれるので、作業がしやすい。また、加工が不要であり運搬材料も従来工法より少なくすむ。よって作業工程の短縮が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態として、桁の電気防食工用支保工を例に挙げて説明する。この説明に先立って、上述した従来の桁の電気防食工用支保工の問題点について図7を参照して分析する。
【0019】
図7は、従来の桁の電気防食工用支保工900が設置された桁の正面図である。
【0020】
図7に示すように、従来の電気防食工用支保工900の施工では、角材(例えば3寸角)90を桁81,82間の距離や下フランジ811,821の幅に合わせて切断する。角材90の切断後、全ネジ95を通す穴を開ける加工を行う。この角材90を2mピッチ程度で配置し、角材90を全ネジ95を用いて連結する。別の角材91を橋軸方向に通し、この別の角材91を土台にして桟木92を立てモルタル充填型枠40を押さえつける。
【0021】
モルタル充填型枠設置後、手動ポンプで、例えば0.1Mpa〜0.2Mpaの圧力でモルタルを注入し、モルタル硬化後、桟木92を外し、モルタル充填型枠40、電気防食工用支保工900の順番で解体していく。
【0022】
以上説明した従来の電気防食工用支保工900では、角材90,91や桟木92など多くの木材を使用し、これらの木材は現地合わせして切断し、削孔などの加工をしなければならない。このように、木材を現地合わせで加工してしまうため、電気防食工用支保工900の転用が困難である。
【0023】
また、従来の電気防食工用支保工900は、電気防食工用支保工900を組むのに多人数の作業員が必要で、角材90,91や全ネジ95を使用して組み上げるまでに時間と労力がかかる。また、角材90,91は全ネジ95で連結されているだけなのでバランスが悪く、橋軸方向に通す角材91を固定するために釘などで留めなければならない。
【0024】
また、作業空間における支保工材の占める割合が多く、モルタル注入作業や位置の移動の際、作業がしにくく、全ネジ部が不安定であり、強度も弱いため、桟木92で突っ張る際のモルタル充填型枠40を押さえる力が弱い。モルタル充填型枠40を、押さえる力が弱いためモルタルの流出が多く、注入作業を失敗することが多かった。
【0025】
また、従来の電気防食工用支保工900は、支保工材のほとんどが木材であるため、長期間の保管をすると腐食を生じ強度が低下するため、次回の転用が難しいばかりでなく、長尺物の角材など嵩張るものが多く、広い保管場所が必要である。
【0026】
本発明は、このような従来の問題を解決したもので、以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施例である電気防食工用支保工100が設置された桁20の縦断面図である。
【0028】
図1に示す電気防食工用支保工100は、鉄筋コンクリート製の桁20の下フランジ21の上面211、下面212、および側面213、ウェブ23の側面231、並びに上フランジ22のハンチ部221から選ばれた複数位置に埋設する電気防食工用陽極の施工時のモルタル注入に用いる型枠保持用支保工である。
【0029】
この電気防食工用支保工100は、桁20の下フランジ21の上面211に載置する懸架部111と、懸架部111から吊下した上方開放のコの字状の複数の形鋼製支保材110と、複数の形鋼製支保材110に架け渡されモルタル充填型枠40を支持する簡易ジャッキ120とを備えている。そして、形鋼製支保材110は、2本の形鋼材112,113と、結合形鋼材114とから構成されている。また、懸架部111および形鋼製支保材110の全体に防錆処理が施してあり、高い耐久性を有する。
【0030】
懸架部111は、鉄筋コンクリート製の桁20の下フランジ21の上面211に載置される係止部材で、例えばL形鋼を加工してなる部材である。また、この懸架部111の上面には、桁20の上フランジ22のハンチ部221に設置したモルタル充填型枠40を支持する桟木130の下端を受ける受材(例えば2寸角などの角材)141を位置決め支持するための溝1111が形成されている。また、この懸架部111の、懸架持に桁20の下フランジ21の上面211と接する部分には、ゴム板30が接着剤で貼り付けてある。このゴム板30は、桁20の損傷を防止するとともに滑り止めの役割を果たすものである。
【0031】
また、形鋼製支保材110の2本の形鋼材112,113は、懸架部111が着脱自在かつ回動固定自在にそれぞれの上端に取り付けられ、懸架部111から垂下する部材である。これら2本の形鋼材112,113の下端近傍には、それぞれ4つの穴1121,1131が上下に並列して設けられている。このような穴1121,1131が設けられていることによって、結合形鋼材114の剛結位置を選択することができるため、形鋼製支保材110の転用が容易である。
【0032】
また、形鋼製支保材110の結合形鋼材114は、2本の形鋼材112,113の下端近傍同士を着脱自在に剛結する水平な部材である。この結合形鋼材114は、剛結にあたって形鋼材112,113それぞれの下端近傍に設けられた穴1121,1131を選択してボルトナットで固定するすることによって、剛結位置が調整される。また、この結合形鋼材114の上面には、簡易ジャッキ120の下端を受ける受材(例えば2寸角などの角材)142を位置決め支持するための、L型の断面形状を有するガイド1141が設けられている。
【0033】
また、簡易ジャッキ120は、複数の形鋼製支保材110それぞれの結合形鋼材114上に位置決め支持された受材142を土台にして載設され、下フランジ21の下面212に設置したモルタル充填型枠40を支持すると共に形鋼製支保材110を桁20に固定するジャッキである。簡易ジャッキ120としては、例えばタカナット121およびロングボルト122から成る簡易ジャッキ等を用いることができる。
【0034】
図1に示す電気防食工用支保工100の施工順序は次のとおりである。
【0035】
図2は、電気防食工用支保工100の施工を説明する説明図である。また、図3,図4は、電気防食工用陽極を埋め込む長溝の拡大横断面図であり、図5は、表面を密閉した長溝の拡大横断面図である。
【0036】
まず、電気防食工用支保工100を施工するにあたり、図2に示すように、鉄筋コンクリート製の桁20の陽極設置位置に、図示しないカッタを用いて、長溝51,52を切削する。この長溝51,52は、帯状の陽極の幅に例えば5mm程度を加えた深さを有するものとする。尚、電気防食工施工にあたっての事前調査でコンクリートかぶりが十分であるとされた陽極設置位置、ここでは例えば桁20の下フランジ21の上面211および下面212、並びに上フランジ22のハンチ部221に位置する陽極設置位置には、図3に示すように、切削する長溝51を桁20の表面に対して例えば90度の角度をもって切削する。また、電気防食工施工にあたっての事前調査でコンクリートかぶりが少ないとされた陽極設置位置、ここでは例えば桁20のウエブ23の側面231および下フランジ21の側面213に位置する陽極設置位置には、図4に示すように、切削する長溝52を桁20の表面に対して例えば60度の角度をもって切削する。
【0037】
次に、長溝51,52内に、帯状の陽極60を、その幅方向を溝深さ方向に一致させて挿入する。長溝51,52内に挿入した陽極60は、図5に示すように、例えばゴム製の陽極保持部材70を用いて長溝内に固定する。
【0038】
長溝51,52の表面を密閉するにあたっては、図5に示すように、例えば1m〜2m程度の間隔で注入口および排出口を設けたモルタル充填型枠40を取り付けて密閉する。このモルタル充填型枠40は、例えば、ゴム製、木製、樹脂製、あるいは布製など、モルタルを注入した時の圧力や浸透による漏れが生じない材料であればどのような材料であってもよい。
【0039】
次に、電気防食工用支保工100を施工する。電気防食工用支保工100の施工では、まず、懸架部111と2本の形鋼材112,113と結合形鋼材114とをボルトナットを用いて鉄工所や地上で組み立て、コの字状の開放端に着脱自在かつ回動固定自在に懸架部111が取り付けられた複数の形鋼製支保材110を製作する。2本の形鋼材112,113と結合形鋼材114との剛結にあたっては、使用する簡易ジャッキ120や受材142に応じて、形鋼材112,113それぞれの下端近傍に設けられた穴1121,1131を選択し、結合形鋼材114の剛結位置を調整する。
【0040】
次に、図2に示すように、複数の形鋼製支保材110それぞれの開放端に着脱自在かつ回動固定自在に取り付けられた懸架部111を、桁20の橋軸方向に800mm間隔以内で、桁20の下フランジ21の上面211に引っ掛けることによって、複数の形鋼製支保材110を桁20に配置する。懸架部111の載置にあたっては、回動固定自在な懸架部111を回動させて桁20の下フランジ21の上面211に引っ掛ける。このとき、懸架部111に貼り付けてあるゴム板30が、桁20の損傷を防止するとともに滑り止めの役割を果たす。
【0041】
次に、懸架部111の上面に形成された溝1111に受材141を嵌め入れることによって、受材141を橋軸方向に通す。また、結合形鋼材114の上面に設けられたガイド1141に沿って、受材142を橋軸方向に通す。
【0042】
次に、結合形鋼材114上に橋軸方向に通した受材142を土台にして、簡易ジャッキ120を100mm程度の間隔で設置し、下フランジ21の下面212に設置したモルタル充填型枠40を簡易ジャッキ120で押さえるとともに、形鋼製支保材110を桁20に固定してぐらつきを防止する。また、懸架部111上に橋軸方向に通した受材141を土台にして、桟木130を100mm程度の間隔で設置し、上フランジ22のハンチ部221に設置したモルタル充填型枠40を桟木130で押さえる。
【0043】
このように簡易ジャッキ120や桟木130でモルタル充填型枠40を押さえた後に、手動ポンプで、例えば0.1Mpa〜0.2Mpaの圧力で、長溝51,52内にモルタルを圧入する。
【0044】
モルタル硬化後、簡易ジャッキ120、桟木130、および受材141,142を外し、モルタル充填型枠40、懸架部111が取り付けられた形鋼製支保材110の順番で解体する。
【0045】
以上説明した第1の実施例である電気防食工用支保工100は、形鋼を主材とした支保工であるため木材の使用が少なくて済み、形鋼製支保材110は鉄工所で製作するため現場での加工が必要なく、長期の保存も可能な耐久性があり複数回にわたる転用が容易である。また、従来の電気防食工用支保工900に比して木材の使用量が少ないことから環境面や経済面においても優れており、現場における工期の短縮にも繋がり、経済面での効果が期待できる。
【0046】
また、第1の実施例の電気防食工用支保工100における形鋼製支保材110の設置は、開放端に着脱自在かつ回動固定自在に取り付けられた懸架部111を回動させて桁20の下フランジ21の上面211に載置するだけなので設置が容易であり、特殊な技能を有する作業員でなくとも作業が可能で、少人数で作業を行うことができ、設置時間も短縮され、経済面、工期面において優れている。また、橋軸方向に通す受材141,142を位置決め支持する溝1111やガイド1141を備えているので受材141,142の設置が容易である。また、第1の実施例の電気防食工用支保工100は、簡易ジャッキ120や桟木130でモルタル充填型枠40を確実に押さえることが出来るため、モルタル圧入作業時におけるモルタルの流出が抑制される。また、形鋼製支保材110自体に強度があり、簡易ジャッキ120で突っ張ることによって、形鋼製支保材110が桁20に、容易かつ確実に固定される。また、電気防食工用支保工100の設置後も桁20間は開いている状態なので、注入作業や位置の移動がしやすい。
【0047】
また、第1の実施例の電気防食工用支保工100における形鋼製支保材110は、保管時に懸架部111と2本の形鋼材112,113と結合形鋼材114とを解体しておくことによって保管場所が小さい場所で済む。
【0048】
以上で、本発明の第1の実施例である電気防食工用支保工100についての説明を終了し、本発明の第2の実施例である型枠保持用支保工について説明する。
【0049】
尚、以下説明する第2の実施例は、上述した第1の実施例の懸架部111を、この懸架部111とは異なる係止部材であるブラケットに置き換えてなる、コンクリート製の桁の補修(ひび割れや欠落)時のモルタルまたは樹脂等の注入または補修コンクリートの打設に用いる型枠保持用支保工である。
【0050】
以下、上述した第1の実施例における要素と同じ要素については同じ符号を付して説明を省略し、上述した第1の実施例との相違点についてのみ説明する。
【0051】
図6は、本発明の第2の実施例である型枠保持用支保工200が設置された桁25の縦断面図である。
【0052】
図6に示す型枠保持用支保工200は、桁25の下面側のコンクリート面251に取り付けるブラケット24と、ブラケット24から吊下した上方開放のコの字状の複数の形鋼製支保材110とを備えている。また、ブラケット24および形鋼製支保材110の全体に防錆処理が施してあり、高い耐久性を有する。
【0053】
ブラケット24は、コンクリート製の桁25の下面側のコンクリート面251に取り付けられる係止部材で、例えばL形鋼241を斜材242で補強してなる部材である。
【0054】
図6に示す型枠保持用支保工200の施工順序は次のとおりである。
【0055】
まず、ブラケット24と2本の形鋼材112,113と結合形鋼材114とをボルトナットを用いて鉄工所や地上で組み立て、コの字状の開放端にブラケット24が取り付けられた複数の形鋼製支保材110を製作する。
【0056】
次に、複数の形鋼製支保材110それぞれの開放端に取り付けられたブラケット24を、桁25の橋軸方向に800mm間隔以内で、桁25の下面側のコンクリート面251にボルトナットを用いて取り付けることによって、複数の形鋼製支保材110を桁25に配置する。
【0057】
次に、結合形鋼材114の上面に設けられたガイド1141に沿って、受材142を橋軸方向に通す。
【0058】
次に、結合形鋼材114上に橋軸方向に通した受材142を土台にして、桟木131を100mm程度の間隔で設置し、型枠41を桟木131で押さえるとともに、形鋼製支保材110を桁25に固定してぐらつきを防止する。また、型枠41を土台にして型枠42を設置し、設置した型枠42を桟木132で押さえる。
【0059】
このように桟木131,132で型枠41,42を押さえた後に、手動ポンプで、例えば0.1Mpa〜0.2Mpaの圧力で、補修箇所にモルタルを圧入する。
【0060】
モルタル硬化後、桟木131,132、および受材142を外し、型枠41,42、ブラケット24が取り付けられた形鋼製支保材110の順番で解体する。
【0061】
以上説明した第2の実施例である型枠保持用支保工200は、下フランジの存在しない桁であっても桁に容易かつ確実に固定することができる。また、このような型枠保持用支保工200は、海洋構造物補修(桟橋)等の断面修復(特に注入)等にも巾広く応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施例である電気防食工用支保工が設置された桁の縦断面図である。
【図2】電気防食工用支保工の施工を説明する説明図である。
【図3】電気防食工用陽極を埋め込む長溝の拡大横断面図である。
【図4】電気防食工用陽極を埋め込む長溝の拡大横断面図である。
【図5】表面を密閉した長溝の拡大横断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例である型枠保持用支保工が設置された桁の縦断面図である。
【図7】従来の桁の電気防食工用支保工が設置された桁の正面図である。
【符号の説明】
【0063】
100 電気防食工用支保工
110 形鋼製支保材
111 懸架部
1111 溝
112,113 形鋼材
1121,1131 穴
114 結合形鋼材
1141 ガイド
120 簡易ジャッキ
121 タカナット
122 ロングボルト
130,131 桟木
141,142 受材
200 型枠保持用支保工
20,25 桁
21 下フランジ
211 上面
212 下面
213 側面
22 上フランジ
221 ハンチ部
23 ウエブ
231 側面
24 ブラケット
241 L形鋼
242 斜材
251 コンクリート面
30 ゴム板
40 モルタル充填型枠
41,42 型枠
51,52 長溝
60 陽極
70 陽極保持部材
81,82 桁
900 電気防食工用支保工
90,91 角材
92 桟木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁の下面側のコンクリートに係止する係止部材と、該係止部材から吊下した複数の上方開放のコの字状の形鋼製支保材と、該複数の形鋼製支保材に架け渡され型枠を支持する支持部材とから成ることを特徴とする型枠保持用支保工。
【請求項2】
前記係止部材は、桁の下フランジの上面に載置する懸架部とし、前記支持部材は、型枠を支持すると共に前記形鋼製支保材と桁間に介装した支保工固定用ジャッキとしたことを特徴とする請求項1記載の型枠保持用支保工。
【請求項3】
前記懸架部は、前記コの字状の形鋼製支保材の開放端に着脱自在又は回動固定自在に取り付けられ、該形鋼製支保材は、前記懸架部から垂下する2本の形鋼材と、該2本の形鋼材の下端近傍同士を着脱自在に剛結する水平な結合形鋼材とから成ることを特徴とする請求項2記載の型枠保持用支保工。
【請求項4】
前記懸架部の上面に、桁の上フランジのハンチ部に設置した型枠を支持する桟木の下端を受ける受け材の支持部を設けたことを特徴とする請求項2または3記載の型枠保持用支保工。
【請求項5】
前記係止部材は、桁の下面側のコンクリート面に取り付けるブラケットであることを特徴とする請求項1記載の型枠保持用支保工。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−24766(P2010−24766A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189883(P2008−189883)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(501068569)ダイチメンテナンス株式会社 (2)
【出願人】(508222944)株式会社ニューテック康和 (1)
【Fターム(参考)】