説明

型枠構造

【課題】コンクリートの噴出を極力低減させ、低位部における柱脚基礎部の天端面を平滑に仕上げる作業を極力減らすことのできる型枠構造を提供すること。
【解決手段】この型枠構造Aは、低位部である柱脚基礎部5の天端面を覆うための蓋材10を備え、蓋材10には、アンカーボルト1に対応して設けられている挿通孔101が形成されており、複数のアンカーボルト1それぞれの所定位置に対して蓋材10を静止させることが可能であり、コンクリートの打設後においてはアンカーボルト1から蓋材10を離脱させることが可能なように構成される保持手段としてのナット22及びワッシャー20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高位部及び低位部においてコンクリートが連続的且つ一体的に打設されてなる鉄筋コンクリート構造物を構築する際に用いられる型枠構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管に代表される鋼製の柱を用いる鉄骨構造建築のコンクリート基礎では、柱の設置位置に対応してアンカーボルトを埋設した柱脚基礎部を配置すると共に、柱脚基礎部と該柱脚基礎部に接続される基礎梁部とを一体的に構成するのが一般である。
【0003】
特に、ラーメン構造の躯体では柱や柱脚部(柱を固定する為のアンカーボルト挿通穴を有するベースプレート)の寸法が大きくなる。このような躯体にALCパネルやPCパネル等のコンクリート系パネルからなる床版や外壁版を取り付けて建築物を構成する場合、柱脚基礎部と基礎梁部の天端レベルが等しいと、柱脚部に接して配置されるパネルの隅角に形成される欠込みを柱脚部の寸法に対応させてより大きく形成することが必要となり、パネルの支持に支障を来たすおそれがある。
【0004】
このため、柱脚基礎部の天端レベルを基礎梁部の天端レベルよりも低く設定し、柱脚部を床版の設置レベルよりも下方に位置させることで、パネルの隅角に於ける欠込み寸法が大きくなることを回避することが行われている。
【0005】
上述したようなコンクリート基礎を施工する場合、所定の柱脚基礎部及び基礎梁部の配置に従って型枠を配置し、この型枠で囲まれた空間にコンクリートを打設して柱脚基礎部の天端レベルと同一の天端レベルで柱脚基礎部と基礎梁部を一体的に構成する。その後、設置レベルを調整して柱脚基礎部に柱を固定している。
【0006】
上述の施工方法では、まず柱脚基礎部の天端レベルに合わせてコンクリートを打設し、コンクリートがある程度硬化し流動性が低下した後、基礎梁部については所定の天端レベルとなるように再度コンクリートを打設することが必要である。このため、コンクリート打設作業に掛かる時間が長くなるという問題が発生する。
【0007】
そこで、一度のコンクリート打設によって天端レベルの異なる柱脚基礎部と基礎梁部を一体的に構成することが出来るコンクリート基礎の施工方法として、下記特許文献1に記載のものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−59998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の技術では、型枠及びアンカーボルトを配置し、次いで、型枠内にコンクリートを打設して柱脚基礎部及び基礎梁部を一体的に構成するものである。具体的には、柱脚基礎部に対応する部位と基礎梁部に対応する部位とを有するコンクリート基礎の側壁を形成する側壁形成部を有し、且つ基礎梁部の長手方向の端部に対応する位置に設けられ側壁形成部に於ける基礎梁部に対応する部位の上端から柱脚基礎部に対応する部位の上端に至る仕切板を有する型枠を配置すると共に、柱脚基礎部の所定位置にアンカーボルトを配置する。次いで、型枠の柱脚基礎部に対応する部位以外の型枠の上方からコンクリートを打設して、基礎梁部と仕切板によって仕切られた基礎梁部よりも低い天端レベルの柱脚基礎部とを一体に構成するものである。
【0010】
この施工方法では、基礎梁部に対応する型枠の上方からコンクリートを打設すると、打設されたコンクリートは型枠に従って流動し、柱脚基礎部及び基礎梁部に充填される。打設されたコンクリートが柱脚基礎部の天端レベルまで到達すると、その後コンクリートは仕切板によって柱脚基礎部側への流動が阻止され基礎梁部のみに充填される。従って、一度のコンクリート打設によって天端レベルの異なる柱脚基礎部と基礎梁部を一体的に構成することが出来る優れた施工方法である。
【0011】
ところで、この施工方法では、比較的スランプが小さく流動性の低いコンクリートを打設する際には、通常は特段の追加作業無く工程を進行できるものである。一方、比較的スランプが大きく流動性の高いコンクリートを打設する際には、コンクリートの勢いやバイブレーターの振動等によって、低位にある柱脚基礎部の天端から(柱脚基礎部の型枠上方の開口部から)コンクリートが噴出してしまう場合がある。このような場合には、噴出したコンクリートを掻き出したり、天端面を平滑に仕上げたりする作業が必要であった。
【0012】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的スランプが大きく流動性の高いコンクリートを打設する場合であっても、コンクリートの噴出を極力低減させ、低位部における柱脚基礎部の天端面を平滑に仕上げる作業を極力減らすことのできる型枠構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係る型枠構造は、天端レベルが異なる高位部と低位部とを有し、前記低位部には複数のアンカーボルトが突設され、前記高位部及び前記低位部においてコンクリートが連続的且つ一体的に打設されてなる鉄筋コンクリート構造物を構築する際に用いられる型枠構造であって、前記低位部の側面を仕切るための低位堰板材と、前記高位部の側面を仕切るための高位堰板材と、前記低位部と前記高位部との境界に配置されるものであって、前記低位堰板材の上端から前記高位堰板材の上端に至り、前記高位部の端部の一部分を仕切るための境界堰板材と、前記低位部の天端面を覆うための蓋材と、を備え、前記蓋材には、前記複数のアンカーボルトに対応して設けられている挿通孔が形成されており、前記複数のアンカーボルトそれぞれの所定位置に対して前記蓋材を静止させることが可能であり、コンクリートの打設後においては前記アンカーボルトから前記蓋材を離脱させることが可能なように構成される保持手段を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る型枠構造は、低位部の側面を仕切るための低位堰板材と、高位部の側面を仕切るための高位堰板材と、低位部と前記高位部との境界に配置されるものであって、低位堰板材の上端から高位堰板材の上端に至り、高位部の端部の一部分を仕切るための境界堰板材とを備えている。このように構成することで、型枠の柱脚基礎部に対応する低位部以外の型枠の上方からコンクリートを打設し、高位堰板材によって仕切られた基礎梁部に対応する高位部と低位部との双方にコンクリートを流し込むことができる。低位堰板材と高位堰板材との境界には境界堰板材が配置されているので、低位部にコンクリートが満たされた後には高位部のみにコンクリートが満たされ、段差が形成されている柱脚基礎部と基礎梁部とを一体的に形成することができる。更に本発明では、低位部の天端面を覆うための蓋材と、複数のアンカーボルトそれぞれの所定位置に対して蓋材を静止させることが可能な保持手段とを備えている。蓋材には、複数のアンカーボルトに対応して設けられている挿通孔が形成されているので、その挿通孔に複数のアンカーボルトを挿通することで、低位部の天端面を覆うように配置することができる。更に保持手段は、複数のアンカーボルトそれぞれの所定位置に対して蓋材を静止させることが可能であり、コンクリートの打設後においてはアンカーボルトから蓋材を離脱させることが可能なように構成されている。従って、コンクリートの打設時には低位部の天端面からコンクリートが溢れ出ることを防止することができ、コンクリートの打設後には蓋材を離脱させることで除去し、低位部に形成される柱脚基礎部の天端面を露出させ柱脚を配置することができる。このように本発明に係る型枠構造を用いれば、比較的スランプが大きく流動性の高いコンクリートを打設する場合であっても、バイブレーターをかけた際のコンクリートの噴出を極力低減させ、低位部における柱脚基礎部の天端面を平滑に仕上げる作業を極力減らすことができる。
【0015】
また本発明に係る型枠構造では、前記保持手段の少なくとも一部は硬磁性材料によって構成され、前記蓋材は軟磁性材料によって構成されており、前記保持手段と前記蓋材とが磁力によって着脱自在に繋がれることも好ましい。
【0016】
この好ましい態様では、保持手段の少なくとも一部は硬磁性材料(アルニコ磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石、KS鋼、MK鋼といった材料)若しくは硬磁性材料を含む材料によって構成され永久磁石として機能し、蓋材は鉄といった軟磁性材料若しくは軟磁性材料を含む材料によって構成され永久磁石に引き寄せられるものとして機能する。従って、保持手段と蓋材とが磁力によって着脱自在に繋がれるので、コンクリート打設時には保持手段と蓋材とを繋げておくことで、蓋材を低位部の天端面に位置させることができ、コンクリート打設後においては保持手段と蓋材とを引き離すことで蓋材を離脱させることができる。この場合、蓋材と保持手段とは磁力によって着脱自在に繋がっているので、容易に着脱可能であると共に、磁力が続く限り再利用することが可能である。
【0017】
また本発明に係る型枠構造では、前記保持手段の少なくとも一部は前記アンカーボルトに螺合可能な螺合部を備えていることも好ましい。
【0018】
この好ましい態様では、保持手段の一部としてアンカーボルトに螺合可能なナットといった螺合部を備えるように構成しているので、アンカーボルトに螺号している螺合部を回転させることでアンカーボルトに対する保持手段の位置を容易且つ正確に調整することが可能となる。保持手段に連動して蓋材の位置も変動するので、蓋材の位置も容易且つ正確に調整することが可能となる。
【0019】
また本発明に係る型枠構造では、前記蓋材には、前記挿通孔が形成された領域内に、前記アンカーボルトには挿通されない開口部が形成されていることも好ましい。
【0020】
この好ましい態様では、コンクリートが大量に溢れ出るのを抑制しつつ、この開口部を通して固まっていないコンクリートを取り出すことができるので、そのコンクリートを取り出した部分に、柱脚を部分的に支持するための支持部材を配置することができる。開口部は支持部材を配置するのに必要十分な広さを確保すれば足りるので、開口部からのコンクリートの溢れを最小限なものとしつつ支持部材を配置するスペースを簡易に確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、比較的スランプが大きく流動性の高いコンクリートを打設する場合であっても、コンクリートの噴出を極力低減させ、低位部における柱脚基礎部の天端面を平滑に仕上げる作業を極力減らすことのできる型枠構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る施工方法を実施する際の型枠の構成を説明する斜視図である。
【図2】型枠にコンクリートを打設した後の状態を示す斜視図である。
【図3】柱脚基礎部に支持部材を配置する方法を説明するための柱脚基礎部の断面図である。
【図4】柱脚基礎部に支持部材を配置する方法を説明するための柱脚基礎部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0024】
本発明の実施形態である型枠構造を、その型枠構造を使用したコンクリート基礎の施工方法を説明するのに合わせて説明する。図1は本実施形態に係る型枠構造の構成を説明する斜視図、図2は本実施形態に係る型枠構造にコンクリートを打設した後の状態を示す斜視図である。
【0025】
本実施形態に係る型枠構造を用いたコンクリート基礎の施工方法は、基礎伏図に従って配置された型枠に対する一度のコンクリート打設によって天端レベルの異なる柱脚基礎部と基礎梁部を構成するものであり、基礎工事の合理化と工期の短縮化をはかることを可能としたものである。
【0026】
以下、説明の煩雑化を避けるために、図1に示す出隅部に於ける柱脚基礎部と基礎梁部との取合部分の型枠の構成について説明しつつ施工方法を説明する。もっとも、柱脚基礎部を有するT字型の取合部分、及び十字型の取合部分であっても実質的に同一である。
【0027】
基礎の施工に当たっては、予め通常の方法で基礎伏図に従って遣方,根伐り,地業が行なわれ、その後、基礎フーチング或いはスラブ・耐圧盤の配筋、及び基礎筋の配筋が行なわれる。
【0028】
上述のように所定の配筋を行なった後、型枠構造Aの配置及び柱脚基礎部5の形成位置に対する4本のアンカーボルト1の配置が行なわれる。アンカーボルト1は、柱脚基礎部5において対角線上に配置され、それぞれが等間隔を保つように柱脚基礎部5の中心に対して対称位置に配置される。アンカーボルト1は、その下端部が地業面(捨てコン上面)に固定されたアンカーフレームによって固定される。また、アンカーボルト1は、籠状の鉄筋(フープ筋)内側の隅部に配置されている。型枠構造A,アンカーボルト1の何れを先に配置するかは特に限定するものではなく、作業環境や作業手順に応じて適宜設定すれば良い。
【0029】
型枠構造Aは、基礎梁部4と柱脚基礎部5からなるコンクリート基礎の側壁を形成する側壁形成部2(低位堰板材、高位堰板材)と、基礎梁部4の長手方向の端部に対応する位置に設けられ側壁形成部2の上端から所定の深さを持った仕切板3(境界堰板材)とを有している。
【0030】
基礎梁部4と柱脚基礎部5が等しい幅寸法を有する場合、側壁形成部2は単位長さを持って形成された平板枠2aによって構成される。しかし、柱脚基礎部5が基礎梁部4よりも大きい幅寸法を有する本実施形態の場合には、側壁形成部2は平板枠2a(高位堰板材)と、基礎梁部4と柱脚基礎部5との接続構造に応じて選択された異形枠2b,2c(低位堰板材)を組み合わせて構成される。
【0031】
図1に示すように、柱脚基礎部5が出隅部を構成し且つ基礎梁部4の幅寸法が柱脚基礎部5の幅寸法よりも小さい場合、基礎梁部4の構成位置に対応して複数の平板枠2aが対向して配置され、隣接する平板枠2aが互いに接続されて側壁形成部2の一部が構成され、且つ柱脚基礎部5の構成位置に対応して予め選択された異形枠2b,2cが夫々形状に応じて配置され、隣接する異形枠2b,2cどうし接続されると共に平板枠2aと接続される。
【0032】
異形枠2b,2cの高さは平板枠2aの高さよりも低くなるように形成されている。即ち、柱脚基礎部5に配置されたアンカーボルト1の寸法精度を保証するための治具を設けたり、このアンカーボルト1の倒れを防止する手段を構成する場合には、これらの治具或いは手段等に応じて予め設定された寸法に対応させて異形枠2b,2cの高さを平板枠2aよりも低くしておくことが好ましい。
【0033】
基礎梁部4の長手方向の端部、即ち、基礎梁部4と柱脚基礎部5との境界に仕切板3が配置される。この仕切板3は、基礎梁部4と柱脚基礎部5の天端レベルの差に対応させて予め設定された深さを有する仕切材3aと、仕切材3aの一方の端部に溶接等の手段によって固着され平板枠2aの上端に係止される係止材3bと、仕切材3aの両端部から延出するように設けられる側板3cと、によって構成されている。
【0034】
仕切板3は基礎梁部4と柱脚基礎部5との境界となる所定位置に配置され、万力状の固定金具6によって平板枠2aに形成されたフランジに固定される。
【0035】
本実施形態の場合、柱脚基礎部5を覆うことができるように蓋材10が設けられている。蓋材10には、4本のアンカーボルト1に対応して4個の挿通孔101が形成されている。蓋材10の4個の挿通孔101が形成された領域内に位置するように、蓋材10の略中央に開口部102が形成されている。開口部102は、アンカーボルト1が挿通されない開口であって、後述する支持部材(図1及び図2においては明示しない)を配置するスペースを設けるためのものである。尚、蓋材10は、柱脚基礎部5の平面形状に対応しており、異形枠2b,2cや仕切板3と干渉しないように構成されている。従って、蓋材10は、基礎梁部4の接続数によらず汎用的に使用することができる。換言すれば、蓋材10は、異形枠2b,2cや仕切板3の配置態様や配置の有無に関わらず汎用的に使用することができるものである。
【0036】
蓋材10には、円環状の突起を有する保持部103が一対設けられている。この保持部103を持って、蓋材10の4個の挿通孔101それぞれにアンカーボルト1を挿通させる。更にアンカーボルト1のそれぞれにワッシャー20を通し、その上から更にナット22(螺号部)を螺合させる。本実施形態では、ワッシャー20は硬磁性材料で形成された永久磁石であって、ナット22は軟磁性材料である鉄(鉄を含有する鋼材を用いることも好ましい)で形成されている。従って、蓋材10とワッシャー20とを近接させると両者は磁着し、更に蓋材10が磁着したワッシャー20を近接させるとナット22とワッシャー20が磁着する。このようにすることで、ナット22とワッシャー20にて蓋材10を保持することができる。更に蓋材10を保持した状態を保ったままナットのねじ込み量を調整することで、蓋材10を異形枠2b,2cの上端に相当する所定の位置に止まらせることができる。尚、蓋材10の配置途中で誤って落下させたとしても、アンカーボルト1を囲むフープ筋によって受け止められる。尚、予め蓋材10の挿通孔101に合わせてワッシャー20を磁着させた上でアンカーボルト1を挿通させてもよい。
【0037】
上述のように、基礎伏図に示されたコンクリート基礎の配置に従って型枠構造Aを配置すると共に柱脚基礎部5の形成位置にアンカーボルト1を配置し、その後、基礎梁部4に対応する型枠構造Aの上方からのみコンクリートを打設すると、打設されたコンクリートは型枠構造Aに沿って流動し、基礎梁部4及び柱脚基礎部5に充填される。
【0038】
型枠構造Aに対するコンクリートの充填レベルが上昇して柱脚基礎部5の天端レベルに到達した後、引き続きコンクリートの打設を継続すると、打設されたコンクリートの基礎梁部4から柱脚基礎部5への流動は仕切板3によって阻止され、基礎梁部4にのみ充填される。そしてコンクリートの充填レベルが基礎梁部4の天端レベルに到達したとき、型枠構造Aに対するコンクリートの打設を停止することで、天端レベルの異なる基礎梁部4と柱脚基礎部5を同時に構成することが可能である。
【0039】
上述のように型枠構造Aにコンクリートを打設して天端レベルの異なる基礎梁部4及び柱脚基礎部5を構成し、所定の養生期間が経過した後、型枠構造Aを撤去してコンクリート基礎を露出させる。蓋材10を撤去する際には、ナット22を取り外し、蓋材10を引き上げて撤去する。
【0040】
その後、柱脚基礎部5の天端に支持部材(図1及び図2においては明示しない)を配置する。次いで、鋼製柱のベースプレート(図に明示しない)をアンカーボルト1に固定し、柱脚基礎部5に対し基礎梁部4の天端レベルと一致させるようにコンクリート或いはモルタルを充填してアンカーボルト1及びベースプレートからなる鋼製柱の柱脚部を埋設する。
【0041】
続いて、柱脚基礎部5に支持部材を配置する方法について図3及び図4を参照しながら説明する。図3及び図4は、柱脚基礎部5に支持部材35を配置する方法を説明するための柱脚基礎部5の断面図である。
【0042】
図3に示すように、図1及び図2を参照しながら説明した型枠構造Aにコンクリートを打設すると、蓋材10の開口部102からコンクリートがはみ出るようにして柱脚基礎部5に相当する部分にコンクリートが充填される。
【0043】
図4に示すように、コンクリート打設後、柱脚基礎部5中央の未硬化のコンクリートをえぐり取って凹部51を形成し、この凹部51に支持部材35を埋設するとともに、凹部51へのコンクリートの流入を防ぐ為の椀状のカバー部材511を配置する。なお、カバー部材511はコンクリート硬化後他の型枠構造Aを構成する材料とともに撤去される。支持部材35は、スクリューサポート30と、ロックナット31と、ベース部分32とを備えている。スクリューサポート30はベース部分32に対して螺合されており、回転させることでベース部分32に対して進退自在になるように構成されている。ベース部分32は、スクリューサポート30及びロックナット31がコンクリートに埋没しないようにする為に底板32aと筒状の堰板32bとを備えており、柱脚基礎部5の凹部51の底に埋め込まれている。スクリューサポート30は、鋼製柱のベースプレートを載置して鋼製柱のレベル出しをするものである。従って、コンクリートの硬化後にスクリューサポート30の上端が所定の位置となるように調整し、ロックナット31で固定した後に鋼製柱を載置する。
【0044】
上述したように本実施形態に係る型枠構造Aは、天端レベルが異なる高位部である基礎梁部4と低位部である柱脚基礎部5とを有し、低位部である柱脚基礎部5には4本のアンカーボルト1が突設され、基礎梁部4及び柱脚基礎部5においてコンクリートが連続的且つ一体的に打設されてなる鉄筋コンクリート構造物を構築する際に用いられるものである。具体的な構成としては、低位部である柱脚基礎部5の側面を仕切るための低位堰板材としての異形枠2b,2cと、高位部である基礎梁部4の側面を仕切るための高位堰板材としての平板枠2aと、基礎梁部4と柱脚基礎部5との境界に配置されるものであって、異形枠2b,2cの上端から平板枠2aの上端に至り、基礎梁部4の端部の一部分を仕切るための境界堰板材としての仕切板3と、柱脚基礎部5の天端面を覆うための蓋材10と、を備えている。蓋材10には、4本のアンカーボルト1に対応して設けられている4つの挿通孔101が形成されている。
【0045】
本実施形態では更に、4本のアンカーボルト1それぞれの所定位置に対して蓋材10を静止させることが可能であり、コンクリートの打設後においてはアンカーボルト1から蓋材10を離脱させることが可能なように構成される保持手段を備えている。本実施形態の場合、保持手段は、蓋材10の挿通孔101に挿通されたアンカーボルト1それぞれの所定位置に静止可能な位置決め部材としてのナット22と、ナット22と蓋材10とを着脱自在に繋ぐ連結部材としてのワッシャー20と、を有している。連結部材としてのワッシャー20は硬磁性材料(アルニコ磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石、KS鋼、MK鋼といった材料)によって構成され、蓋材10及び位置決め部材としてのナット22は鉄などの軟磁性材料によって構成されており、ワッシャー20と蓋材10及びワッシャー20とナット22とがそれぞれ磁力によって着脱自在に繋がれている。
【0046】
本実施形態ではこのように、保持手段を、位置決め部材(螺合部)としてのナット22と、連結部材としてのワッシャー20とによって構成しているので、蓋材10をアンカーボルト1の所定位置に静止させる機能を位置決め部材であるナット22に担わせる一方で、位置決め部材としてのナット22と蓋材10とを着脱自在に繋ぐ機能を連結部材としてのワッシャー20に担わせるので、それぞれの機能を担うのに最適な材料及び形態でそれぞれの部材を形成することができる。また、連結部材であるワッシャー20は硬磁性材料によって構成され、蓋材10及び位置決め部材であるナット22は軟磁性材料によって構成されているので、比較的高価な材料である硬磁性材料によって連結部材であるワッシャー20のみを形成することになり、この型枠構造A全体としては無駄なコストをかけずに上述した効果を奏することができる。
【0047】
更に本実施形態では、軟磁性材料で形成される位置決め部材としてアンカーボルト1に螺合可能なナット22を用いているので、鉄などで構成された汎用部材としてのナットを用いることができる。また、硬磁性材料で形成される連結部材としてアンカーボルト1に挿通可能なワッシャー20を用いているので、比較的高価な材料である硬磁性材料によって平板円環状の簡単な構造を形成すればよく、無駄なコストをかけずに上述した効果を奏することができる。
【0048】
尚、連結部材はワッシャーのような円環状のものでなくともよい。例えば、半円環状、コ(U)字状などであってもよく、このように構成することでアンカーボルトに対し横方向からの着脱が可能である。また、横方向への移動や転倒などによって連結機能が損なわれることがない限り、より単純な形状としてもよい。
【0049】
このように本実施形態では、ナット22及びワッシャー20からなる保持手段の少なくとも一部であるワッシャー20は硬磁性材料(アルニコ磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石、KS鋼、MK鋼といった材料)によって構成され永久磁石として機能し、蓋材10は鉄といった軟磁性材料(軟磁性材料を含有する鋼材を用いることも好ましい)によって構成され永久磁石に引き寄せられるものとして機能するように構成されている。従って、保持手段と蓋材10とが磁力によって着脱自在に繋がれるので、コンクリート打設時には保持手段と蓋材10とを繋げておくことで、蓋材10を低位部としての柱脚基礎部5の天端面に位置させることができ、コンクリート打設後においては保持手段と蓋材10とを引き離すことで蓋材10を離脱させることができる。この場合、蓋材10と保持手段とは磁力によって着脱自在に繋がっているので、容易に着脱可能であると共に、磁力が続く限り再利用することが可能である。
【0050】
本発明の趣旨に鑑みれば、ナット22を硬磁性材料で構成し、ワッシャー20を省略する構成を採用することも好ましいものである。このように保持手段の全てを硬磁性材料で構成し永久磁石として機能させれば、ワッシャー20を省略してナット22のみで保持手段を構成することができ、部品点数を減らすことができる。
【0051】
また、本発明の趣旨に鑑みれば、保持手段は4本のアンカーボルト1それぞれの所定位置に対して蓋材10を静止させることが可能であり、コンクリートの打設後においてはアンカーボルト1から蓋材10を離脱させることが可能なように構成されるものであれば足りるものであるから、磁力を利用しない構成も採用することができる。例えば、アンカーボルト1の所定位置に蓋材10を支え得る突起を設け、この突起に蓋材10を係合して保持する事も好ましい態様である。また、蓋材10に移動(スライド)自在な掛止片(フック)を設け、この掛止片をナット22の上端面に掛止させてもよい。また、ワッシャーの両面に粘着材を塗布し、この粘着材の粘着力でナット22と蓋材10とを繋ぐように構成することも好ましい態様である。この場合において蓋材10を再利用するにあたっては、粘着材を再塗布することが好ましいものである。また、両面テープのような粘着部材をワッシャーの両面に貼着させることも好ましい。
【0052】
上述したように本実施形態に係る型枠構造Aは、柱脚基礎部5に対応する低位部以外の型枠の上方からコンクリートを打設し、基礎梁部4に対応する高位部と柱脚基礎部5に対応する低位部との双方にコンクリートを流し込むことができる。基礎梁部4に対応する高位部と柱脚基礎部5に対応する低位部との境界には仕切板3が配置されているので、柱脚基礎部5にコンクリートが満たされた後には基礎梁部4のみにコンクリートが満たされ、段差が形成されている柱脚基礎部5と基礎梁部4とを一体的に形成することができる。
【0053】
更に本実施形態では、柱脚基礎部5の天端面を覆うための蓋材10と、4本のアンカーボルト1それぞれの所定位置に対して蓋材10を静止させることが可能な保持手段とを備えている。蓋材10には、4本のアンカーボルト1に対応して設けられている挿通孔101が形成されているので、その挿通孔101に4本のアンカーボルト1を挿通することで、柱脚基礎部5の天端面を覆うように配置することができる。更に保持手段は、4本のアンカーボルトそれぞれの所定位置に対して蓋材10を静止させることが可能であり、コンクリートの打設後においてはアンカーボルト1から蓋材10を離脱させることが可能なように構成されている。従って、コンクリートの打設時には柱脚基礎部5の天端面からコンクリートが溢れ出ることを防止することができ、コンクリートの打設後には蓋材10を離脱させることで除去し、低位部に形成される柱脚基礎部5の天端面を露出させ柱脚を配置することができる。このように本実施形態に係る型枠構造Aを用いれば、比較的スランプが大きく流動性の高いコンクリートを打設する場合であっても、バイブレーターをかけた際のコンクリートの噴出を極力低減させ、低位部における柱脚基礎部5の天端面を平滑に仕上げる作業を極力減らすことができる。
【0054】
また本実施形態に係る型枠構造Aでは、蓋材10には、挿通孔101が形成された領域内に、アンカーボルト1には挿通されない開口部102が形成されている。このように構成することで、コンクリートが大量に溢れ出るのを抑制しつつ、この開口部102を通して固まっていないコンクリートを取り出すことができるので、そのコンクリートを取り出した部分に、柱脚を部分的に支持するための支持部材35を配置することができる。開口部102は支持部材35を配置するのに必要十分な広さを確保すれば足りるので、開口部102からのコンクリートの溢れを最小限なものとしつつ支持部材35を配置するスペースを簡易に確保することができる。
【0055】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0056】
1:アンカーボルト
2:側壁形成部
2a:平板枠
2b,2c:異形枠
3:仕切板
3a:仕切材
3b:係止材
3c:側板
4:基礎梁部
5:柱脚基礎部
6:固定金具
10:蓋材
20:ワッシャー
22:ナット
35:支持部材
101:挿通孔
102:開口部
103:保持部
A:型枠構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天端レベルが異なる高位部と低位部とを有し、前記低位部には複数のアンカーボルトが突設され、前記高位部及び前記低位部においてコンクリートが連続的且つ一体的に打設されてなる鉄筋コンクリート構造物を構築する際に用いられる型枠構造であって、
前記低位部の側面を仕切るための低位堰板材と、
前記高位部の側面を仕切るための高位堰板材と、
前記低位部と前記高位部との境界に配置されるものであって、前記低位堰板材の上端から前記高位堰板材の上端に至り、前記高位部の端部の一部分を仕切るための境界堰板材と、
前記低位部の天端面を覆うための蓋材と、を備え、
前記蓋材には、前記複数のアンカーボルトに対応して設けられている挿通孔が形成されており、
前記複数のアンカーボルトそれぞれの所定位置に対して前記蓋材を静止させることが可能であり、コンクリートの打設後においては前記アンカーボルトから前記蓋材を離脱させることが可能なように構成される保持手段を備えることを特徴とする型枠構造。
【請求項2】
前記保持手段の少なくとも一部は硬磁性材料によって構成され、前記蓋材は軟磁性材料によって構成されており、前記保持手段と前記蓋材とが磁力によって着脱自在に繋がれることを特徴とする請求項1に記載の型枠構造。
【請求項3】
前記保持手段の少なくとも一部は前記アンカーボルトに螺合可能な螺合部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の型枠構造。
【請求項4】
前記蓋材には、前記挿通孔が形成された領域内に、前記アンカーボルトには挿通されない開口部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の型枠構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−157778(P2011−157778A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21825(P2010−21825)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】