説明

型締装置

【課題】 可動プラテンがストッパの先端に当接する際の衝撃が小さく、繰り返しの使用によっても、ストッパや可動プラテンが折損することがない型締装置を提供する。
【解決手段】 可動金型52の型開き量を検出する型開き量検出センサ21と、型開き量検出センサ21の検出結果に基づいて可動金型52がストッパ17に当接する際の可動金型52の速度を駆動源16を操作することによって制御する型開き制御回路30とを有している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形機に適用され、駆動源によって可動金型を固定金型に対して進退させることにより型締を行う型締装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の型締装置において、厚みの異なる金型を交換した場合には、固定プラテンに対する可動プラテンのストローク量を調整することによって、金型の型開き量を規制する必要がある。
【0003】従来、型開き量を確実に規制するために、メカニカルストッパとも呼ばれる機構が用いられている。
【0004】メカニカルストッパは、例えば特開平6−278180号公報に示されているように、可動金型を締結した可動プラテンが、その四隅部をタイバーによって案内され、駆動源を支持するサポートプレートによって固定プラテンに締結した固定金型に対して進退可能になっている。サポートプレートの両側に突出した耳部には、それぞれタイバーの軸線と平行に孔明けした孔部が設けられている。この孔部には、ネジ切りされた長尺のストッパ(ネジ棒)に螺合するナットが設けられており、これによって、ネジ棒が所定の位置に締結され、ネジ棒の一側端部に当接する可動プラテンを所定の後退位置に位置決めすることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このようなメカニカルストッパのみの制御では、可動プラテンがネジ棒の先端に当接する際の衝撃が大きく、繰り返しの使用によって、ネジ棒や可動プラテンが折損する等の問題があった。
【0006】そこで、従来でも可動プラテンがメカニカルストッパに当接する際に、可動プラテンを減速させることも行われていたが、実際上、ある程度の速度で当接していた。しかも、サイクルタイムを上げると、当接速度が上がるという問題があった。
【0007】それ故、本発明の技術的課題は、可動プラテンがストッパの先端に当接する際の衝撃が小さく、繰り返しの使用によっても、ストッパや可動プラテンが折損することがない型締装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、射出成形機に適用され、駆動源によって可動金型を固定金型に対して型開閉方向に進退させることにより型締を行う型締装置であって、前記駆動源を支持するサポートプレートと、前記固定金型を取り付けるための固定プラテンと、前記駆動源によって型開閉方向に駆動される、前記可動金型を取り付けるための可動プラテンと、前記サポートプレートおよび前記固定プラテン間に型開閉方向に延在するように取り付けられ、前記可動プラテンを型開閉方向に摺動させるためのタイバーと、前記サポートプレートに突出量可変に螺合され、前記可動プラテンに当接することで前記固定金型および前記可動金型間の型開き量を規制するストッパとを有する型締装置において、前記固定金型および前記可動金型間の型開き量を検出する型開き量検出センサと、前記型開き量検出センサの検出結果に基づいて前記可動金型が前記ストッパに当接する際の該可動金型の速度を前記駆動源を操作することによって制御する型開き制御回路とを有することを特徴とする型締装置が得られる。
【0009】本発明によればまた、前記制御に加え、前記駆動源の圧力を操作することによって型開の制御を行う前記型締装置が得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施の形態による型締装置を説明する。
【0011】図1を参照して、実施の形態1による型締装置は、従来の型締装置と同様に、射出成形機に適用され、例えば油圧ポンプおよび油圧シリンダを備える直圧式駆動源等である駆動源16によって可動金型52を固定金型51に対して型開閉方向(図中、左右方向)に進退させることにより型締を行う型締装置である。本型締装置は、基盤11上に設置され、駆動源16を支持するサポートプレート12と、基盤11上に設置され、固定金型51を取り付けるための固定プラテン14と、駆動源16によって型開閉方向に駆動され、可動金型52を取り付けるための可動プラテン15と、サポートプレート12および固定プラテン14間に型開閉方向に延在するように取り付けられ、可動プラテン15を型開閉方向に摺動案内するため4本のタイバー13と、サポートプレート12に形成された雌ネジ孔に螺合されることで型閉方向の突出量を可変に取り付けられ、可動プラテン15に当接することで可動金型52の型開き量を規制するストッパ(ネジ棒)17とを有している。
【0012】本装置はさらに、固定金型51に対する可動金型52の型開き量を検出する型開き量検出センサ21と、型開き量検出センサ21の検出結果に基づいて可動金型52がストッパ17に当接する際の可動金型52の速度を駆動源16を操作することによって制御する型開き制御回路30とを有している。また、このような速度制御に加え、型締シリンダ(駆動源16)の圧力を制御するようにしてもよい。
【0013】型開き量検出センサ21は、具体的には、固定プラテン14と可動プラテン15との間に、接触型の位置検出器を設けたり、非接触型の距離センサを設けてもよい。また、プラテン間ではなく、金型間に設けるようにしてもよい。
【0014】型開き制御回路30は、各種型厚に応じた可動プラテン15の後方面とストッパ17の先端面との距離を予め記憶したメモリを備えている。そして、型開き量検出センサ21の検出結果である型開き量に基づいて可動プラテン15とストッパ17との距離が所定値以下になったときに、駆動源16に対して、可動金型52の速度を減速するように制御信号を送出する。また、速度の減速に加え、型締シリンダの圧力を減圧するようにしてもよい。可動プラテン15とストッパ17との距離の減少に従って、可動金型52の速度を漸次的に減速するようにして、可動プラテン15がストッパ17に当接する際に、可動プラテン15の速度がゼロになるように制御する。この制御プログラムは、ソフトウエアによって構成され、パーソナルコンピュータ等によって実行される。
【0015】本型締装置においては、型開き制御回路30によってため、最低限の強度を具備するように設計することが可能である。したがって、従来のように、サポートプレートおよび可動プラテンそれぞれに延長ブロックを設けると共に、比較的大径のストッパをサポートプレートの延長ブロックに螺合し、かつサポートプレートの延長ブロックに当接するような比較的大型の構造にする必要がない。即ち、図1に示すように、ストッパ17をサポートプレート12に直接螺合させ、かつ可動プラテン15自体に当接するように装置をコンパクトに設計できる。
【0016】図1を参照して、本型締装置は、次のように動作する。
【0017】型開き制御回路30の前記メモリには、サポートプレート12と固定プラテン14との間隔距離、可動プラテン15の厚さ寸法、ならびに可動金型52の速度および型締シリンダの圧力の減速または減圧開始寸法が記憶されている。
【0018】ユーザは、型厚に応じてストッパ17のサポートプレート上の突出量を調整すると共に、型厚寸法この突出量を型開き制御回路30に入力する。
【0019】型開き制御回路30は、サポートプレート12と固定プラテン14との間隔距離から、可動プラテン15の厚さ寸法、型厚寸法、上記突出量を減算する。その値が、可動プラテン15の可動ストロークになる。
【0020】そして、射出成形機(型締装置)の稼動に際し、型開き量検出センサ21の検出結果が所定値(例えば、上記可動ストロークとの差が5cm以下)になると、型開き制御回路30は、駆動源16に対して、可動金型52の速度を減速するように制御信号を送出し、可動プラテン15がストッパ17に当接する際に可動プラテン15の速度がゼロになるように制御する。
【0021】この結果、可動プラテン15がストッパ17の先端に高速に当接することがなく、この際の衝撃も小さい。
【0022】
【発明の効果】本発明による型締装置は、可動金型の型開き量を検出する型開き量検出センサと、型開き量検出センサの検出結果に基づいて可動金型がストッパに当接する際の可動金型の速度を駆動源を操作することによって制御する型開き制御回路とを有しているため、可動プラテンがストッパの先端に当接する際の衝撃が極小化され、繰り返しの使用によっても、ストッパや可動プラテンが折損することがない。
【0023】また、ストッパにかかる応力が殆ど無くなるため、ストッパの配置を比較的自由に設計でき、装置の小型化等に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による型締装置の要部を示す概略的な側面図である。
【符号の説明】
11 基盤
12 サポートプレート
13 タイバー
14 固定プラテン
15 可動プラテン
16 駆動源
17 ストッパ
21 型開き量検出センサ
30 型開き制御回路
51 固定金型
52 可動金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】 射出成形機に適用され、駆動源によって可動金型を固定金型に対して型開閉方向に進退させることにより型締を行う型締装置であって、前記駆動源を支持するサポートプレートと、前記固定金型を取り付けるための固定プラテンと、前記駆動源によって型開閉方向に駆動される、前記可動金型を取り付けるための可動プラテンと、前記サポートプレートおよび前記固定プラテン間に型開閉方向に延在するように取り付けられ、前記可動プラテンを型開閉方向に摺動させるためのタイバーと、前記サポートプレートに突出量可変に螺合され、前記可動プラテンに当接することで前記固定金型および前記可動金型間の型開き量を規制するストッパとを有する型締装置において、前記固定金型および前記可動金型間の型開き量を検出する型開き量検出センサと、前記型開き量検出センサの検出結果に基づいて前記可動金型が前記ストッパに当接する際の該可動金型の速度を前記駆動源を操作することによって制御する型開き制御回路とを有することを特徴とする型締装置。
【請求項2】 前記制御に加え、前記駆動源の圧力を操作することによって型開の制御を行う請求項1に記載の型締装置。

【図1】
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【公開番号】特開2002−11770(P2002−11770A)
【公開日】平成14年1月15日(2002.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−194051(P2000−194051)
【出願日】平成12年6月28日(2000.6.28)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】