基板にポジパターンを形成する方法及びその方法で使用されるネガパターン形成用組成物
【課題】 安価なスクリーンマスク、ディスペンサ等を用いて、簡便な工程で、基板にポジパターンを形成する方法及びその方法で使用されるネガパターン形成用組成物を提供するものである。さらに、ネガパターンを溶解した水の特別な処理設備を必要としないネガパターン形成用組成物を提供するものである。
【解決手段】 基板にポジパターンを形成する方法であって、ネガパターン形成用組成物を用いて基板にネガパターンを形成し、これを乾燥させる工程と、ネガパターンの上から、ネガパターンとの接触角が15°以上で、基板との接触角が90°以下であり、かつネガパターンとの接触角が基板との接触角より大きい重合硬化性組成物を塗布し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成し、これを硬化する工程と、ネガパターンを水で溶解する工程と、を含むことを特徴とする。
【解決手段】 基板にポジパターンを形成する方法であって、ネガパターン形成用組成物を用いて基板にネガパターンを形成し、これを乾燥させる工程と、ネガパターンの上から、ネガパターンとの接触角が15°以上で、基板との接触角が90°以下であり、かつネガパターンとの接触角が基板との接触角より大きい重合硬化性組成物を塗布し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成し、これを硬化する工程と、ネガパターンを水で溶解する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にポジパターンを形成する方法及びその方法で使用されるネガパターン形成用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体回路、基板等にパターンを形成する方法としては、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー法、スタンパーを用いた方法等がある。
【0003】
フォトリソグラフィー法は、フォトレジストを塗布し、乾燥した後、パターンを露光し、ポストベーク、現像することによりパターンが形成される(特許文献1参照)。
【0004】
スタンパーを用いた方法では、粘性の高い溶液を塗布等し、乾燥して、柔軟性がある膜を形成した後、表面に凹凸を有するスタンパーを押圧して、任意の凹凸を成型する(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−181685号公報
【特許文献2】特開2005−310287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フォトリソグラフィー法は、工程数が多い、現像、プリベーク、ポストベーク等に時間がかかる等の課題がある。さらに、レジストがフッ素等を含有していると環境汚染防止の関連からレジストの剥離液を処理する設備が必要になるという課題も有する。さらに、フォトリソグラフィー法でリフトオフ法を使用する場合には、レジスト上のポジパターンが無駄になるという課題を有する。
【0006】
また、スタンパー法には、スタンパーが高価である、スタンパーが消耗品である等の課題がある。
【0007】
本発明は、安価なスクリーンマスク、印刷版、ディスペンサ等を用いて、簡便な工程で、基板にポジパターンを形成する方法及びその方法で使用されるネガパターン形成用組成物を提供するものである。さらに、ネガパターンを溶解した水の処理に特別な設備を必要としないネガパターン形成用組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板にポジパターンを形成する方法であって、ネガパターン形成用組成物を用いて基板にネガパターンを形成し、これを乾燥させる工程と、ネガパターンの上から、ネガパターンとの接触角(θ1)が15°以上で、基板との接触角(θ2)が90°以下であり、かつネガパターンとの接触角が基板との接触角より大きい(θ1>θ2)重合硬化性組成物を塗布し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成し、これを硬化する工程と、ネガパターンを水で溶解する工程と、を含むことを特徴とする方法に関する。
【0009】
さらに、本発明は、水溶性低分子化合物と水溶性ポリマーと溶媒とを含むネガパターン形成用組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、重合硬化性組成物を効率よく、ポジパターンに使用することができる。また、ネガパターンは、基板に直接形成可能であるため、工程が簡潔であり、水で溶解可能であるため、容易にネガパターンを除去できる製造方法を提供することができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、上記製造方法に使用可能なネガパターン形成用組成物を提供することができる。加えて、ネガパターンを溶解した水の特別な処理設備を必要としないネガパターン形成用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の基板にポジパターンを形成する方法は、ネガパターン形成用組成物を用いて基板にネガパターンを形成し、これを乾燥させる工程と、ネガパターンの上から、ネガパターンとの接触角(θ1)が15°以上で、基板との接触角(θ2)が90°以下であり、かつネガパターンとの接触角が基板との接触角より大きい(θ1>θ2)重合硬化性組成物を塗布し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成し、これを硬化する工程と、ネガパターンを水で溶解する工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0013】
まず、本発明の製造方法に使用される材料、部材、部品、装置、及び用語等について説明する。
【0014】
本発明において、「基板」とは、所望のポジパターンを支持することができるものであればよく、特に限定されない。このような基板の材料としては、Si、GaN、SiC、GaAs、InP、SiGe等の半導体、SiO 2、Al2 O3、AlN、BeO、ムライト、コーディエライト、ステアタイト、フォルステライト、サファイア、ガラス等の無機絶縁体、フェノール樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂等の樹脂、ガラス−エポキシ、紙−エポキシ、ガラス−ポリイミド等の複合材料を挙げることができる。
基板としてシリコン等の半導体を用いる場合は、表面が絶縁性の酸化膜で覆われている基板や、Si3N4やポリイミド等の絶縁物でパッシベートされている基板を好ましく使用することができる。なお、コンタクトホールや貫通電極を製造する場合には、基板上に、アルミニウム、銅、クロム、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性膜でパターニングされていることが好ましい。
【0015】
「ネガパターン形成用組成物」とは、基板にネガパターンを形成するための組成物をいい、例えば、水溶性低分子化合物と水溶性ポリマーと溶媒とを含む組成物である。ネガパターン形成用組成物は、基板との接触角(θ3)が90°以下、好ましくは20〜90°、より好ましくは40〜90°である。ここで、「接触角」は、静止液体の自由表面が固体に接する場所で液面と固体面とのなす角をいい、JIS R3257の静滴法に準じて測定する。「接触角(θ3)」の測定では、固体面には、基板を用い、液体には、ネガパターン形成用組成物を用いる。
【0016】
「水溶性低分子化合物」とは、炭素数が25以下の水溶性化合物をいい、炭素数6〜18の有機酸、又はその塩が好ましく、さらに、炭素数6〜18の飽和カルボン酸、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、飽和脂肪族直鎖アルキル硫酸、不脂肪族直鎖アルキル硫酸、若しくはこれらの混合物、又はこれらの塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩等が好ましい。炭素数が6以下では、表面自由エネルギーが比較的高くなるため、重合硬化性組成物を撥ねる能力が低下する傾向になり、炭素数が25以上では、水溶性が劣る。水溶性低分子化合物の材料として、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン酸、(6Z,9Z,12Z)−オクタデカ−6,9,12−トリエン酸、(Z)−12−ヒドロキシオクタデカ−9−エン酸、ドデシル硫酸、テトラデシル硫酸、ヘキサデシル硫酸、若しくはオレイン硫酸等の有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、ルビジウム塩、若しくはセシウム塩等の化合物を挙げることができる。
【0017】
「水溶性ポリマー」とは、実質的に水溶性であるポリマーをいい、主に、ネガパターン形成用組成物の粘度を高くするために使用する。このような水溶性ポリマーとして、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合体、アミロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、キサンタンガム等の多糖類等を挙げることができる。
【0018】
「溶媒」は、水、有機溶媒、又はこれらの混合物をいう。水は、イオン交換水が好ましく、純水が特に好ましい。水溶性低分子化合物や水溶性ポリマーなどの溶解性が高いために、溶媒として水が好適に用いられる。有機溶媒は、水と混和することが可能で、実質的に沸点が180℃以上の有機溶媒が好ましく、複数の有機溶媒を混合して用いるときには、混合系としての沸点が実質的に180℃以上であるものであればよい。この沸点180℃以上の有機溶媒は、主に、ネガパターン形成用組成物の印刷時のネガパターン用形成組成物の乾燥を抑制するために使用する。印刷時のネガパターン形成用組成物の乾燥を抑制するために、さらに好ましいのは、沸点が200℃以上の有機溶媒である。このような有機溶媒として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、リン酸トリエチル、フェノール、ベンジルアルコール、p−クレゾール、スクシノニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を挙げることができる。なお、ディスペンサ等によりネガパターン形成用組成物を形成するときには、形成中にネガパターン形成用組成物の乾燥は発生しにくいので、有機溶媒を用いなくてもよい。
【0019】
ネガパターン形成用組成物における水溶性低分子化合物と、水溶性ポリマーと、溶媒との重量比の一例は、35〜55:1〜20:50〜250である。好ましくは、45〜55:1〜5:50〜70であるが、溶媒として有機溶媒を使用せず、水を使用する場合には、30〜50:10〜20:150〜250も好ましい。水溶性低分子化合物と水溶性ポリマーの比により、ネガパターンと重合硬化性組成物との接触角(θ1)を制御することができる。水溶性低分子化合物と水溶性ポリマーと溶媒の比により、ネガパターン形成用組成物と基板との接触角(θ3)を制御することができる。また、使用する際には、この重量比の組成物に溶媒を上記比の範囲内で添加して、適宜粘度調整を行う。ここで、「接触角(θ1)」は、JIS R3257の静滴法に準じて測定する。固体面は、ネガパターン形成用組成物を基板に塗布し、乾燥させることにより作製する。液体には、重合硬化性組成物を用いる。なお、ネガパターン形成用組成物の乾燥は、ネガパターン形成用組成物に含有される溶媒が0.1%以下になるまで揮発させて行う。
【0020】
「ネガパターン形成用組成物」には、消泡剤等の添加剤を含有することができる。消泡剤としては、非イオン系、ポリエーテル系、シリコーン系、アクリル系等を使用することができる。また、ネガパターン形成用組成物の粘度及びチキソ性を調整するために、SiO2、Al2O3、ポリエチレン、ポリプロピレン等の微粒子を添加することができる。
【0021】
このネガパターン形成用組成物は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ディスペンサによる直接描画法等に使用可能である。グラビア印刷、オフセット印刷等に使用する場合には、ネガパターン形成用組成物の粘度が、2〜5Pa・sで、チキソ比が0.9〜3であると、ネガパターン形成用組成物が版残りせず、連続印刷をするのに適しており、好ましい。また、スクリーン印刷、ディスペンサによる直接描画法等には、ネガパターン形成用組成物の粘度が、2〜300Pa・sで、チキソ比が1〜10であることが、印刷特性等の観点から好ましい。なお、粘度は、RE−U型粘度計(東機産業製、型番:RE105U)を用い、温度は約25℃、ローターはR24、R14若しくはR7.7を用い、回転数は10回転/分で測定したときの値であり、チキソ比は、上記粘度計を用い、温度は25℃で、(回転数が1回転/分の粘度)/(回転数が10回転/分の粘度)の値である。
【0022】
ネガパターン形成用組成物は、ネガパターンを形成し、これを乾燥させた後に、ネガパターンを水で溶解する際に、溶解した水が、特殊な処理設備を必要とすることなく、排水可能な成分を選ぶことが好ましい。したがって、フッ素系等のように高度に有害なものでないことが好ましい。ここで、「乾燥」とは実質的に溶媒を揮発させることをいう。
【0023】
「重合硬化性組成物」は、ネガパターンとの接触角(θ1)が15°以上で、基板との接触角(θ2)が90°以下であり、かつネガパターンとの接触角が基板との接触角より大きい(θ1>θ2)ことが必要である。
【0024】
ネガパターンと重合硬化性組成物との接触角(θ1)は、15°以上であり、好ましくは30°以上、特に40°以上である。15°以上であれば、重合硬化性組成物が、ネガパターンに実質的に濡れない状態とすることができる。
【0025】
重合硬化性組成物と基板との濡れ性の観点から、基板と重合硬化性組成物との接触角(θ2)は、90°以下である。好ましくは、20°以下、より好ましくは10°以下である。ここで、「接触角(θ2)」は、JIS R3257の静滴法に準じて測定する。固体面には、基板を用い、液体には、重合硬化性組成物を用いる。
【0026】
重合硬化性組成物とネガパターンの接触角(θ1)は、重合硬化性組成物と基板との接触角(θ2)より大きい(θ1>θ2)。これにより、重合硬化性組成物がネガパターンに撥ねられ、基板に濡れ易くなる。重合硬化性組成物がネガパターンに撥ねられると、ネガパターン上の重合硬化性組成物が、ネガパターンから基板に移動し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成する。「重合硬化」は、熱、光、又は2以上の重合可能な成分の混合による反応等により行われる。
【0027】
上記の重合硬化性組成物は、重合し得るオリゴマー及びモノマーの少なくとも一つを含む。また、このオリゴマー及びモノマーの少なくとも一つとして、アクリル系、メタクリル系、スチレン系、フェノール系、エポキシ系等のオリゴマー若しくはモノマーが挙げられる。さらに、アクリル系、又はエポキシ系のオリゴマー若しくはモノマーが、簡便に光硬化できる観点から好ましい。これらのオリゴマー若しくはモノマーには、ネガパターンとの接触角や、粘度を調整するために、有機溶媒を加えることができる。これらの有機溶媒は、ネガパターンと濡れず、ネガパターンを実質的に溶解しないものであればよく、アセテート類、エステル類、エーテル類、芳香族類等を使用することができる。このような有機溶媒として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと記す)、トルエン、キシレン、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等を挙げることができる。また、重合硬化性組成物には、反応開始剤等の添加物を加えてもよい。なお、重合硬化性組成物には、オリゴマー、モノマーに加えて高分子樹脂を有機溶媒に溶解する範囲で加えてもよい。
【0028】
「ネガパターンが、重合硬化性組成物に実質的に不溶である」とは、ネガパターンの上から、ネガパターンに濡れない重合硬化性組成物を塗布し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成し、これを硬化する工程において、ネガパターンを溶解せずにポジパターンを形成することができることを意味する。ここで、「基板全体」とは、ネガパターンを有する基板において、ネガパターン以外の基板をいい、ネガパターン以外の基板にポジパターンが概略形成されていればよい。
【0029】
重合硬化性組成物の粘度は、0.5〜2000mPa・sで、チキソ比が0.8〜2であると、スピンコート法や、スリットコート法、スプレーコート法、ディップ法、バーコーター法等に適している。なお、粘度は、RE−U型粘度計(東機産業製、型番:RE105U)を用い、温度は約25℃、ローターはR24を用い、回転数は100又は10回転/分で測定したときの値である。
【0030】
ネガパターンの厚さは、ポジパターンの厚さの1〜5倍であることが好ましい。ネガパターンの厚さが、ポジパターンの厚さの1倍以上であれば、隣り合うポジパターン間のブリッジ発生を抑制することができ、5倍以下であれば、スピンコート法等を用いた場合に基板の端部まで均一に重合硬化性組成物を供給することができる。また、スリットコート法等を用いる場合には、ネガパターンの厚さは、ポジパターンの厚さの1〜10倍であることが好ましい。スリットコート法等では、10倍以下であれば、基板の端部まで均一に重合硬化性組成物を供給することができる。ネガパターンの厚さの一例は、0.5〜10μmであり、2〜10μmが好ましく、3〜10μmがさらに好ましい。
【0031】
次に、本発明の製造方法にかかる工程について、説明する。本発明の製造方法は、基板にポジパターンを形成する方法であって、基板にネガパターンを形成し、これを乾燥させる工程と、ネガパターンの上から、ネガパターンに濡れない重合硬化性組成物を塗布し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成し、これを硬化する工程と、ネガパターンを水で溶解する工程と、を含む。
【0032】
「ポジパターン」とは、所望のパターンをいい、「ネガパターン」は基板全体からポジパターン以外の部分に形成するパターンをいう。なお、製造工程上の公差等の理由により、ネガパターンは適宜修正することができる。
【0033】
図1に、本発明にかかる製造方法の模式図を示す。まず、基板2上にネガパターン形成用組成物でネガパターン1を形成し、乾燥させる(図1(A))。
【0034】
次に、ネガパターン1の上から、ネガパターン1に濡れない重合硬化性組成物3を塗布する(図1(B))。このとき、重合硬化性組成物3は、ネガパターン1よりも基板2の方に濡れ易く、また、ネガパターン1上の重合硬化性組成物3の皮膜は非常に薄いため、ネガパターン1上ではじきが起こって重合硬化性組成物3が分かれ、基板2上に移動する(図1(C))。この後、重合硬化性組成物3を熱、光、2以上の重合可能な成分の混合による反応等で重合硬化する。
【0035】
さらに、ネガパターン1を水で溶解すると、基板2上にポジパターン3が残存する(図1(D))。
【0036】
ネガパターン1の形成は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ディスペンサによる直接描画法等により行うことができる。
【0037】
ネガパターン1の乾燥は、乾燥機、ベルト炉等により行われる。ネガパターン1の乾燥により、ネガパターン1と基板2との接着強度、ネガパターン1自体の強度が向上する。乾燥温度は、例えば、80〜100℃、乾燥時間は、例えば、10〜60分である。
【0038】
ネガパターン1の端面は、図1(A)のように、基板に略垂直であってもよいが、図2に示すように、断面が基板側の広い略台形形状である方が、ネガパターン10上の重合硬化性組成物3が基板に2に移動しやすくなるため、好ましい。図3に示すように、ネガパターン11の端面が縦長の半楕円状であると、ネガパターン11の上部の面積が狭くなる観点、及びネガパターン11の端面下部が基板に垂直に近づく観点から、より好ましい。
【0039】
次に、重合硬化性組成物3の塗布は、スピンコーター法、スリットコート法、スプレーコート法、ディップ法、バーコーター法、ドクターブレード法、カーテンコート法等により行われる。ディップ法では、基板を垂直にして、重合硬化性組成物に浸漬することができるが、このときは、ネガパターンの基板に対抗する面の方向が、ネガパターンの上の方向となる。
【0040】
重合硬化性組成物3は、ネガパターン10、11の上から基板2に移動するが、後工程でのネガパターン10、11の水での溶解に、重合硬化性組成物3の存在が影響しない程度であれば、図3、4の重合硬化性組成物31のように一部がネガパターン上に残存したり、重合硬化性組成物32のように一部がネガパターンの端面上に残存しても構わない。なお、重合硬化性組成物31が、基板2に移動するためには、図3のネガパターン11のように縦長の半楕円形状をしていることが、さらに好ましい。
【0041】
また、さらに、重合硬化性組成物3は、ネガパターン10から基板2に移動した後、レベリングできる程度の粘性を有することが好ましい。なお、重合硬化性組成物3はネガパターン10、11と濡れないため、重合硬化性組成物の端部4のバリの発生を防ぐことができる。
【0042】
重合硬化性組成物3の硬化は、乾燥機等による熱、UV照射装置等による光により行うことができ、また、2以上の重合可能な成分の混合による反応による場合には、放置しても硬化が十分な速度で進行する。重合硬化性組成物3の硬化により、重合硬化性組成物3と基板2の接着強度及び重合硬化性組成物3自体の強度が向上する。加熱重合の温度は、例えば、70〜200℃であり、加熱時間は、例えば、2〜60分である。光による重合は、例えば、UV光を1000〜5000mJ照射することにより行う。なお、重合硬化の前に、乾燥工程を入れることにより、溶剤を飛散させて重合硬化性組成物3の形状を定着し、基板2に密着させることができる。ここで、「乾燥」とは、実質的に溶媒を除去することをいう。乾燥温度は、例えば、50〜100℃であり、乾燥時間は、例えば、2〜30分である。
【0043】
ネガパターン1の水での溶解は、通常の水道水で行うことができるが、イオン交換水が好ましく、純水がさらに好ましい。また、溶解速度を向上するために、温水(温度は、例えば、80℃)を使用したり、超音波洗浄機を用いることができる。
【0044】
本発明に係る製造方法は、ホールを有するポジパターンや、細い凹ライン等を有するポジパターンのように、ポジパターンの面積を広く形成する場合に特に適しているが、実施例に示すように、凸ドットのポジパターンを形成する場合や、細い凸ラインのポジパターンを形成する場合にも適している。用途の一例としては、薄膜トランジスタのコンタクトホールやイメージセンサーチップの貫通電極などが挙げられる。
【0045】
以下、実験により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
(ネガパターン組成物の作製)
水溶性低分子化合物としてオレイン酸ナトリウム、水溶性ポリマーとしてアルギン酸ナトリウム、溶媒として水を用い、表1に示す割合でネガパターン組成物1〜7、比較用ネガパターン組成物1を作製した。
【0047】
【表1】
【0048】
次に、水溶性低分子化合物として20gのオレイン酸ナトリウム、水溶性ポリマーとして1gのメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、0.25gのキサンタンガム、溶媒として5gのグリセリン、及び25gの水を100cm3のビーカー中で混合し、ネガパターン形成用組成物8を作製した。このネガパターン形成用組成物8の粘度は3.5Pa・s、チキソ比は6であった。
【0049】
さらに、水溶性化合物として1gのドデシル硫酸ナトリウム、1gのオレイン酸ナトリウム、水溶性ポリマーとして0.8gのアルギン酸ナトリウム、溶媒として10gの水を20cm3のビーカー中で混合し、ネガパターン形成用組成物9を得た。ネガパターン形成用組成物9の粘度は、2.2Pa・s、チキソ比は5であった。
【0050】
(重合硬化性組成物の作製)
0.98gのダイセル社製エポキシ化合物(製品名:セロキサイド2021P)と0.02gの光重合開始剤(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩)と999.00gのPGMEAを2000cm3のビーカー中で混合し、重合硬化性組成物1を作製した。重合硬化性組成物1の粘度は、1mPa・sであった。次に、30gのダイセル社製エポキシ化合物(製品名:セロキサイド2021P)と0.5gの光重合開始剤(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩)と70gのPGMEAを200cm3のビーカー中で混合し、重合硬化性組成物2を得た。重合硬化性組成物2の粘度は、2mPa・sであった。さらに、30gのダイセル社製エポキシ化合物(製品名:セロキサイド2021P)と0.5gの光重合開始剤(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩)を100cm3のビーカー中で混合し、重合硬化性組成物3を得た。重合硬化性組成物3の粘度は、200mPa・s、チキソ比は1であった。
【0051】
(接触角(θ1)の測定)
7枚の幅26mm、長さ76mm、厚さ1.2mmの大気圧プラズマ処理をしたスライドガラスの表面に、約0.3cm3のネガパターン形成用組成物1〜7を、それぞれ滴下し、基板表面全体に塗布した。次に、80℃で60分間乾燥し、スライドガラスの表面にネガパターンを形成した。この乾燥では、溶媒を添加量の0.1%以下になるまで揮発させた。このネガパターンに重合硬化性組成物1を用い、JIS R3257の静滴法に準拠して、接触角を測定した。同様にして、比較用ネガパターン形成用組成物1を用いたネガパターンの接触角を測定した。その結果を表1に示す。オレイン酸ナトリウムの重量を0.13gから0.015gに減少させることにより、接触角は35°から17°に変化した。オレイン酸ナトリウムを含有しない比較用ネガパターン形成用組成物1のネガパターンの接触角は9°であった。
【0052】
同様に、ネガパターン形成用組成物8、9からのネガパターンと、重合硬化性組成物1〜3との接触角を測定した。その結果を表2に示す。なお、ネガパターン形成用組成物8は、グリセリンを含有するので、乾燥を120℃で60分間行った。ネガパターン形成用組成物8からのネガパターンと重合硬化性組成物との接触角の結果より、ネガパターン形成用組成物にグリセリンを含有しても、接触角が変わらないことを確認した。ネガパターンと重合硬化性組成物の種類により、ネガパターンとの接触角を35°から81°まで制御することができた。
【0053】
【表2】
【0054】
(接触角(θ2)の測定)
次に、重合硬化性組成物と、基板の接触角(θ2)を測定した。その結果を表3に示す。重合硬化性組成物の種類により、基板との接触角を制御することができた。また、表2、表3から明らかなように、ネガパターンと重合硬化性組成物の接触角(θ1)を、基板と重合硬化性組成物の接触角(θ2)より大きくすることは可能であった。
【0055】
【表3】
【0056】
(重合硬化性組成物の基板への移動試験)
7枚の幅26mm、長さ76mm、厚さ1.2mmの大気圧プラズマ処理をしたスライドガラスの表面に、約0.1cm3のネガパターン形成用組成物1〜7を、それぞれ滴下し、基板表面の約1/2に塗布した。次に、100℃で30分間乾燥し、スライドガラスの表面の約1/2にネガパターンを形成した。ネガパターンとネガパターンが形成されていない基板表面との境界部に、約0.03cm3の重合硬化性組成物1をそれぞれ滴下し、綿棒で1cm四方に広げ、重合硬化性組成物1が、ネガパターンからネガパターンを形成していない基板表面に移動するか否かを観察した。同様にして、比較用ネガパターン形成用組成物1について観察した。その結果を表1に示す。重合硬化性組成物1が、ネガパターンから基板に移動した場合に○、ネガパターンと基板の両方に残った場合を△、基板に全く移動しない場合を×とした。重合硬化性組成物1は、ネガパターン形成用組成物1〜7によるネガパターンから基板に移動した。これに対して、比較用ネガパターン形成用組成物1によるネガパターンでは、重合硬化性組成物1が、ネガパターンから基板に十分には移動せず、一部がネガパターンに残った。
【実施例2】
【0057】
(ホールの作成)
実施例1で作製したネガパターン組成物8を用いて、幅100mm、長さ100mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、電鋳マスクを用いて、スクリーン印刷を行った。電鋳マスクには、厚さが100μmのものを用い、30μm径のドットパターンを、100μmピッチで、縦5個×横5個の計25個を形成した。印刷後、100℃で、30分間乾燥し、実施例1で作製した重合硬化性組成物2を、毎分1000回転、7秒間の条件で、スピンコートした。60℃で5分間乾燥後、UV光を3000mJ照射し、さらに150℃で30分間硬化させた。このときのネガパターンの厚さは4μmで、ポジパターンの厚さは2μmであった。次に、ガラス基板を純水で洗浄し、ネガパターンを溶解し、ホールを作製した。図5に作製したホールの斜上から見たプロファイルを、図6にホール1個の断面のプロファイルを示す。プロファイルは、ZYGO製走査型三次元顕微鏡で測定した。直径約30μmのホールを形成することができた。
【実施例3】
【0058】
(凹ラインパターンの形成1)
実施例1で作製したネガパターン組成物8を用いて、幅26mm、長さ76mm、厚さ1.2mmのスライドガラスに、ノズル径0.1mmのディスペンサにネガパターン形成用組成物8を充填し、1本の幅0.1mm、長さ50mmの凸ラインパターンを形成した。100℃で、30分間乾燥後、実施例1で作製した重合硬化性組成物2を、バーコーターを用い、ギャップ50μmで塗布した。60℃で5分間乾燥した後、UV光を3000mJ照射し、さらに150℃で30分間硬化させた。このときのネガパターンの厚さは15μmで、ポジパターンの厚さは13μmであった。次に、ガラス基板を純水で洗浄し、ネガパターンを溶解し、凹ラインを作製した。図7に作製した凹ラインの斜上から見たプロファイルを、図8に凹ラインの断面のプロファイルを示す。幅約100μm、長さ50mmの凹ラインを形成することができた。
【実施例4】
【0059】
(凹ラインパターンの形成2)
実施例1で作成したネガパターン組成物9を用いて、実施例3と同様にして、ディスペンサで、2本の幅0.2mm、長さ50mmの凸ラインパターンを0.3mmピッチで作製し、重合硬化性組成物2の凹ラインパターンを作製した。このときのネガパターンの厚さは10μmで、ポジパターンの厚さは3〜4μmであった。図9に作製した凹ラインの斜上から見たプロファイルを、図10に凹ラインの断面のプロファイルを示す。幅約200μm、長さ50mmの凹ラインを300μmピッチで形成することができた。また、ネガパターン形成用組成物9を用いることにより、実施例3とは異なる断面プロファイルのポジパターンを形成することができた。
【実施例5】
【0060】
(島状パターンの形成)
実施例1のネガパターン形成用組成物9を用い、実施例3と同様にして、ディスペンサで、縦方向に5本、横方向に5本の幅0.1mm、長さ50mmの凸ラインパターンを縦横それぞれ0.4mmピッチで形成し、重合硬化性組成物2の島状パターンを作製した。このときのネガパターンの厚さは10μmで、ポジパターンの厚さは3〜4μmであった。図11に作製した島状パターンの斜上から見たプロファイルを、図12に島状パターンの断面のプロファイルを示す。長さ400μm、幅400μmの島状パターンを縦100μm、横100μmピッチで作製することができた。
【実施例6】
【0061】
(凸ドットパターンの形成)
実施例1のネガパターン組成物8を用い、実施例3と同様にして、ディスペンサを用い、幅0.15mm、長さ50mmのラインを、0.2mmピッチで格子状に描画して、縦9本、横11本の格子状パターンを作製し、縦8個、横10個の計80個の重合硬化性組成物2の凸ドットパターンを作製した。このときのネガパターンの厚さは10μmで、ポジパターンの厚さは2.5μmであった。図13に作製した凸ドットの斜上から見たプロファイルを、図14に凸ドットの断面のプロファイルを示す。直径約150μmの凸ドットを形成することができた。
【実施例7】
【0062】
(凸ラインパターンの形成)
実施例3と同様にして、ディスペンサで、幅0.15mm、長さ50mmのネガパターン形成用組成物8の凸ラインを、50μmピッチで5本作製し、重合硬化性組成物2の3本の凸ラインを作製した。このときのネガパターンの厚さは5μmで、ポジパターンの厚さは1μmであった。図15に作製した凸ラインの斜上から見たプロファイルを、図16に凸ラインの断面のプロファイルを示す。3本の幅約50μm、長さ50mmの凸ラインを0.2mmピッチで形成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
簡潔な工程で、基板にポジパターンを形成する製造方法として幅広く利用できる。また、この製造方法に用いるネガパターン形成用組成物として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明にかかる製造方法の模式図である。
【図2】ネガパターンの断面図の一例である。
【図3】重合硬化性組成物について説明するための図である。
【図4】重合硬化性組成物について説明するための図である。
【図5】ホールのプロファイルである。
【図6】ホールの断面のプロファイルである。
【図7】凹ラインのプロファイルである。
【図8】凹ラインの断面のプロファイルである。
【図9】凹ラインのプロファイルである。
【図10】凹ラインの断面のプロファイルである。
【図11】島状パターンのプロファイルである。
【図12】島状パターンの断面のプロファイルである。
【図13】凸ドットパターンのプロファイルである。
【図14】凸ドットパターンの断面のプロファイルである。
【図15】凸ラインパターンのプロファイルである。
【図16】凸ラインパターンの断面のプロファイルである。
【符号の説明】
【0065】
1、10、11 ネガパターン形成用組成物
2 基板
3、31、32 重合硬化性組成物
4 重合硬化性組成物の端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にポジパターンを形成する方法及びその方法で使用されるネガパターン形成用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体回路、基板等にパターンを形成する方法としては、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー法、スタンパーを用いた方法等がある。
【0003】
フォトリソグラフィー法は、フォトレジストを塗布し、乾燥した後、パターンを露光し、ポストベーク、現像することによりパターンが形成される(特許文献1参照)。
【0004】
スタンパーを用いた方法では、粘性の高い溶液を塗布等し、乾燥して、柔軟性がある膜を形成した後、表面に凹凸を有するスタンパーを押圧して、任意の凹凸を成型する(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−181685号公報
【特許文献2】特開2005−310287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フォトリソグラフィー法は、工程数が多い、現像、プリベーク、ポストベーク等に時間がかかる等の課題がある。さらに、レジストがフッ素等を含有していると環境汚染防止の関連からレジストの剥離液を処理する設備が必要になるという課題も有する。さらに、フォトリソグラフィー法でリフトオフ法を使用する場合には、レジスト上のポジパターンが無駄になるという課題を有する。
【0006】
また、スタンパー法には、スタンパーが高価である、スタンパーが消耗品である等の課題がある。
【0007】
本発明は、安価なスクリーンマスク、印刷版、ディスペンサ等を用いて、簡便な工程で、基板にポジパターンを形成する方法及びその方法で使用されるネガパターン形成用組成物を提供するものである。さらに、ネガパターンを溶解した水の処理に特別な設備を必要としないネガパターン形成用組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板にポジパターンを形成する方法であって、ネガパターン形成用組成物を用いて基板にネガパターンを形成し、これを乾燥させる工程と、ネガパターンの上から、ネガパターンとの接触角(θ1)が15°以上で、基板との接触角(θ2)が90°以下であり、かつネガパターンとの接触角が基板との接触角より大きい(θ1>θ2)重合硬化性組成物を塗布し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成し、これを硬化する工程と、ネガパターンを水で溶解する工程と、を含むことを特徴とする方法に関する。
【0009】
さらに、本発明は、水溶性低分子化合物と水溶性ポリマーと溶媒とを含むネガパターン形成用組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、重合硬化性組成物を効率よく、ポジパターンに使用することができる。また、ネガパターンは、基板に直接形成可能であるため、工程が簡潔であり、水で溶解可能であるため、容易にネガパターンを除去できる製造方法を提供することができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、上記製造方法に使用可能なネガパターン形成用組成物を提供することができる。加えて、ネガパターンを溶解した水の特別な処理設備を必要としないネガパターン形成用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の基板にポジパターンを形成する方法は、ネガパターン形成用組成物を用いて基板にネガパターンを形成し、これを乾燥させる工程と、ネガパターンの上から、ネガパターンとの接触角(θ1)が15°以上で、基板との接触角(θ2)が90°以下であり、かつネガパターンとの接触角が基板との接触角より大きい(θ1>θ2)重合硬化性組成物を塗布し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成し、これを硬化する工程と、ネガパターンを水で溶解する工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0013】
まず、本発明の製造方法に使用される材料、部材、部品、装置、及び用語等について説明する。
【0014】
本発明において、「基板」とは、所望のポジパターンを支持することができるものであればよく、特に限定されない。このような基板の材料としては、Si、GaN、SiC、GaAs、InP、SiGe等の半導体、SiO 2、Al2 O3、AlN、BeO、ムライト、コーディエライト、ステアタイト、フォルステライト、サファイア、ガラス等の無機絶縁体、フェノール樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂等の樹脂、ガラス−エポキシ、紙−エポキシ、ガラス−ポリイミド等の複合材料を挙げることができる。
基板としてシリコン等の半導体を用いる場合は、表面が絶縁性の酸化膜で覆われている基板や、Si3N4やポリイミド等の絶縁物でパッシベートされている基板を好ましく使用することができる。なお、コンタクトホールや貫通電極を製造する場合には、基板上に、アルミニウム、銅、クロム、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性膜でパターニングされていることが好ましい。
【0015】
「ネガパターン形成用組成物」とは、基板にネガパターンを形成するための組成物をいい、例えば、水溶性低分子化合物と水溶性ポリマーと溶媒とを含む組成物である。ネガパターン形成用組成物は、基板との接触角(θ3)が90°以下、好ましくは20〜90°、より好ましくは40〜90°である。ここで、「接触角」は、静止液体の自由表面が固体に接する場所で液面と固体面とのなす角をいい、JIS R3257の静滴法に準じて測定する。「接触角(θ3)」の測定では、固体面には、基板を用い、液体には、ネガパターン形成用組成物を用いる。
【0016】
「水溶性低分子化合物」とは、炭素数が25以下の水溶性化合物をいい、炭素数6〜18の有機酸、又はその塩が好ましく、さらに、炭素数6〜18の飽和カルボン酸、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、飽和脂肪族直鎖アルキル硫酸、不脂肪族直鎖アルキル硫酸、若しくはこれらの混合物、又はこれらの塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩等が好ましい。炭素数が6以下では、表面自由エネルギーが比較的高くなるため、重合硬化性組成物を撥ねる能力が低下する傾向になり、炭素数が25以上では、水溶性が劣る。水溶性低分子化合物の材料として、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン酸、(6Z,9Z,12Z)−オクタデカ−6,9,12−トリエン酸、(Z)−12−ヒドロキシオクタデカ−9−エン酸、ドデシル硫酸、テトラデシル硫酸、ヘキサデシル硫酸、若しくはオレイン硫酸等の有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、ルビジウム塩、若しくはセシウム塩等の化合物を挙げることができる。
【0017】
「水溶性ポリマー」とは、実質的に水溶性であるポリマーをいい、主に、ネガパターン形成用組成物の粘度を高くするために使用する。このような水溶性ポリマーとして、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合体、アミロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、キサンタンガム等の多糖類等を挙げることができる。
【0018】
「溶媒」は、水、有機溶媒、又はこれらの混合物をいう。水は、イオン交換水が好ましく、純水が特に好ましい。水溶性低分子化合物や水溶性ポリマーなどの溶解性が高いために、溶媒として水が好適に用いられる。有機溶媒は、水と混和することが可能で、実質的に沸点が180℃以上の有機溶媒が好ましく、複数の有機溶媒を混合して用いるときには、混合系としての沸点が実質的に180℃以上であるものであればよい。この沸点180℃以上の有機溶媒は、主に、ネガパターン形成用組成物の印刷時のネガパターン用形成組成物の乾燥を抑制するために使用する。印刷時のネガパターン形成用組成物の乾燥を抑制するために、さらに好ましいのは、沸点が200℃以上の有機溶媒である。このような有機溶媒として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、リン酸トリエチル、フェノール、ベンジルアルコール、p−クレゾール、スクシノニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を挙げることができる。なお、ディスペンサ等によりネガパターン形成用組成物を形成するときには、形成中にネガパターン形成用組成物の乾燥は発生しにくいので、有機溶媒を用いなくてもよい。
【0019】
ネガパターン形成用組成物における水溶性低分子化合物と、水溶性ポリマーと、溶媒との重量比の一例は、35〜55:1〜20:50〜250である。好ましくは、45〜55:1〜5:50〜70であるが、溶媒として有機溶媒を使用せず、水を使用する場合には、30〜50:10〜20:150〜250も好ましい。水溶性低分子化合物と水溶性ポリマーの比により、ネガパターンと重合硬化性組成物との接触角(θ1)を制御することができる。水溶性低分子化合物と水溶性ポリマーと溶媒の比により、ネガパターン形成用組成物と基板との接触角(θ3)を制御することができる。また、使用する際には、この重量比の組成物に溶媒を上記比の範囲内で添加して、適宜粘度調整を行う。ここで、「接触角(θ1)」は、JIS R3257の静滴法に準じて測定する。固体面は、ネガパターン形成用組成物を基板に塗布し、乾燥させることにより作製する。液体には、重合硬化性組成物を用いる。なお、ネガパターン形成用組成物の乾燥は、ネガパターン形成用組成物に含有される溶媒が0.1%以下になるまで揮発させて行う。
【0020】
「ネガパターン形成用組成物」には、消泡剤等の添加剤を含有することができる。消泡剤としては、非イオン系、ポリエーテル系、シリコーン系、アクリル系等を使用することができる。また、ネガパターン形成用組成物の粘度及びチキソ性を調整するために、SiO2、Al2O3、ポリエチレン、ポリプロピレン等の微粒子を添加することができる。
【0021】
このネガパターン形成用組成物は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ディスペンサによる直接描画法等に使用可能である。グラビア印刷、オフセット印刷等に使用する場合には、ネガパターン形成用組成物の粘度が、2〜5Pa・sで、チキソ比が0.9〜3であると、ネガパターン形成用組成物が版残りせず、連続印刷をするのに適しており、好ましい。また、スクリーン印刷、ディスペンサによる直接描画法等には、ネガパターン形成用組成物の粘度が、2〜300Pa・sで、チキソ比が1〜10であることが、印刷特性等の観点から好ましい。なお、粘度は、RE−U型粘度計(東機産業製、型番:RE105U)を用い、温度は約25℃、ローターはR24、R14若しくはR7.7を用い、回転数は10回転/分で測定したときの値であり、チキソ比は、上記粘度計を用い、温度は25℃で、(回転数が1回転/分の粘度)/(回転数が10回転/分の粘度)の値である。
【0022】
ネガパターン形成用組成物は、ネガパターンを形成し、これを乾燥させた後に、ネガパターンを水で溶解する際に、溶解した水が、特殊な処理設備を必要とすることなく、排水可能な成分を選ぶことが好ましい。したがって、フッ素系等のように高度に有害なものでないことが好ましい。ここで、「乾燥」とは実質的に溶媒を揮発させることをいう。
【0023】
「重合硬化性組成物」は、ネガパターンとの接触角(θ1)が15°以上で、基板との接触角(θ2)が90°以下であり、かつネガパターンとの接触角が基板との接触角より大きい(θ1>θ2)ことが必要である。
【0024】
ネガパターンと重合硬化性組成物との接触角(θ1)は、15°以上であり、好ましくは30°以上、特に40°以上である。15°以上であれば、重合硬化性組成物が、ネガパターンに実質的に濡れない状態とすることができる。
【0025】
重合硬化性組成物と基板との濡れ性の観点から、基板と重合硬化性組成物との接触角(θ2)は、90°以下である。好ましくは、20°以下、より好ましくは10°以下である。ここで、「接触角(θ2)」は、JIS R3257の静滴法に準じて測定する。固体面には、基板を用い、液体には、重合硬化性組成物を用いる。
【0026】
重合硬化性組成物とネガパターンの接触角(θ1)は、重合硬化性組成物と基板との接触角(θ2)より大きい(θ1>θ2)。これにより、重合硬化性組成物がネガパターンに撥ねられ、基板に濡れ易くなる。重合硬化性組成物がネガパターンに撥ねられると、ネガパターン上の重合硬化性組成物が、ネガパターンから基板に移動し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成する。「重合硬化」は、熱、光、又は2以上の重合可能な成分の混合による反応等により行われる。
【0027】
上記の重合硬化性組成物は、重合し得るオリゴマー及びモノマーの少なくとも一つを含む。また、このオリゴマー及びモノマーの少なくとも一つとして、アクリル系、メタクリル系、スチレン系、フェノール系、エポキシ系等のオリゴマー若しくはモノマーが挙げられる。さらに、アクリル系、又はエポキシ系のオリゴマー若しくはモノマーが、簡便に光硬化できる観点から好ましい。これらのオリゴマー若しくはモノマーには、ネガパターンとの接触角や、粘度を調整するために、有機溶媒を加えることができる。これらの有機溶媒は、ネガパターンと濡れず、ネガパターンを実質的に溶解しないものであればよく、アセテート類、エステル類、エーテル類、芳香族類等を使用することができる。このような有機溶媒として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと記す)、トルエン、キシレン、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等を挙げることができる。また、重合硬化性組成物には、反応開始剤等の添加物を加えてもよい。なお、重合硬化性組成物には、オリゴマー、モノマーに加えて高分子樹脂を有機溶媒に溶解する範囲で加えてもよい。
【0028】
「ネガパターンが、重合硬化性組成物に実質的に不溶である」とは、ネガパターンの上から、ネガパターンに濡れない重合硬化性組成物を塗布し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成し、これを硬化する工程において、ネガパターンを溶解せずにポジパターンを形成することができることを意味する。ここで、「基板全体」とは、ネガパターンを有する基板において、ネガパターン以外の基板をいい、ネガパターン以外の基板にポジパターンが概略形成されていればよい。
【0029】
重合硬化性組成物の粘度は、0.5〜2000mPa・sで、チキソ比が0.8〜2であると、スピンコート法や、スリットコート法、スプレーコート法、ディップ法、バーコーター法等に適している。なお、粘度は、RE−U型粘度計(東機産業製、型番:RE105U)を用い、温度は約25℃、ローターはR24を用い、回転数は100又は10回転/分で測定したときの値である。
【0030】
ネガパターンの厚さは、ポジパターンの厚さの1〜5倍であることが好ましい。ネガパターンの厚さが、ポジパターンの厚さの1倍以上であれば、隣り合うポジパターン間のブリッジ発生を抑制することができ、5倍以下であれば、スピンコート法等を用いた場合に基板の端部まで均一に重合硬化性組成物を供給することができる。また、スリットコート法等を用いる場合には、ネガパターンの厚さは、ポジパターンの厚さの1〜10倍であることが好ましい。スリットコート法等では、10倍以下であれば、基板の端部まで均一に重合硬化性組成物を供給することができる。ネガパターンの厚さの一例は、0.5〜10μmであり、2〜10μmが好ましく、3〜10μmがさらに好ましい。
【0031】
次に、本発明の製造方法にかかる工程について、説明する。本発明の製造方法は、基板にポジパターンを形成する方法であって、基板にネガパターンを形成し、これを乾燥させる工程と、ネガパターンの上から、ネガパターンに濡れない重合硬化性組成物を塗布し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成し、これを硬化する工程と、ネガパターンを水で溶解する工程と、を含む。
【0032】
「ポジパターン」とは、所望のパターンをいい、「ネガパターン」は基板全体からポジパターン以外の部分に形成するパターンをいう。なお、製造工程上の公差等の理由により、ネガパターンは適宜修正することができる。
【0033】
図1に、本発明にかかる製造方法の模式図を示す。まず、基板2上にネガパターン形成用組成物でネガパターン1を形成し、乾燥させる(図1(A))。
【0034】
次に、ネガパターン1の上から、ネガパターン1に濡れない重合硬化性組成物3を塗布する(図1(B))。このとき、重合硬化性組成物3は、ネガパターン1よりも基板2の方に濡れ易く、また、ネガパターン1上の重合硬化性組成物3の皮膜は非常に薄いため、ネガパターン1上ではじきが起こって重合硬化性組成物3が分かれ、基板2上に移動する(図1(C))。この後、重合硬化性組成物3を熱、光、2以上の重合可能な成分の混合による反応等で重合硬化する。
【0035】
さらに、ネガパターン1を水で溶解すると、基板2上にポジパターン3が残存する(図1(D))。
【0036】
ネガパターン1の形成は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ディスペンサによる直接描画法等により行うことができる。
【0037】
ネガパターン1の乾燥は、乾燥機、ベルト炉等により行われる。ネガパターン1の乾燥により、ネガパターン1と基板2との接着強度、ネガパターン1自体の強度が向上する。乾燥温度は、例えば、80〜100℃、乾燥時間は、例えば、10〜60分である。
【0038】
ネガパターン1の端面は、図1(A)のように、基板に略垂直であってもよいが、図2に示すように、断面が基板側の広い略台形形状である方が、ネガパターン10上の重合硬化性組成物3が基板に2に移動しやすくなるため、好ましい。図3に示すように、ネガパターン11の端面が縦長の半楕円状であると、ネガパターン11の上部の面積が狭くなる観点、及びネガパターン11の端面下部が基板に垂直に近づく観点から、より好ましい。
【0039】
次に、重合硬化性組成物3の塗布は、スピンコーター法、スリットコート法、スプレーコート法、ディップ法、バーコーター法、ドクターブレード法、カーテンコート法等により行われる。ディップ法では、基板を垂直にして、重合硬化性組成物に浸漬することができるが、このときは、ネガパターンの基板に対抗する面の方向が、ネガパターンの上の方向となる。
【0040】
重合硬化性組成物3は、ネガパターン10、11の上から基板2に移動するが、後工程でのネガパターン10、11の水での溶解に、重合硬化性組成物3の存在が影響しない程度であれば、図3、4の重合硬化性組成物31のように一部がネガパターン上に残存したり、重合硬化性組成物32のように一部がネガパターンの端面上に残存しても構わない。なお、重合硬化性組成物31が、基板2に移動するためには、図3のネガパターン11のように縦長の半楕円形状をしていることが、さらに好ましい。
【0041】
また、さらに、重合硬化性組成物3は、ネガパターン10から基板2に移動した後、レベリングできる程度の粘性を有することが好ましい。なお、重合硬化性組成物3はネガパターン10、11と濡れないため、重合硬化性組成物の端部4のバリの発生を防ぐことができる。
【0042】
重合硬化性組成物3の硬化は、乾燥機等による熱、UV照射装置等による光により行うことができ、また、2以上の重合可能な成分の混合による反応による場合には、放置しても硬化が十分な速度で進行する。重合硬化性組成物3の硬化により、重合硬化性組成物3と基板2の接着強度及び重合硬化性組成物3自体の強度が向上する。加熱重合の温度は、例えば、70〜200℃であり、加熱時間は、例えば、2〜60分である。光による重合は、例えば、UV光を1000〜5000mJ照射することにより行う。なお、重合硬化の前に、乾燥工程を入れることにより、溶剤を飛散させて重合硬化性組成物3の形状を定着し、基板2に密着させることができる。ここで、「乾燥」とは、実質的に溶媒を除去することをいう。乾燥温度は、例えば、50〜100℃であり、乾燥時間は、例えば、2〜30分である。
【0043】
ネガパターン1の水での溶解は、通常の水道水で行うことができるが、イオン交換水が好ましく、純水がさらに好ましい。また、溶解速度を向上するために、温水(温度は、例えば、80℃)を使用したり、超音波洗浄機を用いることができる。
【0044】
本発明に係る製造方法は、ホールを有するポジパターンや、細い凹ライン等を有するポジパターンのように、ポジパターンの面積を広く形成する場合に特に適しているが、実施例に示すように、凸ドットのポジパターンを形成する場合や、細い凸ラインのポジパターンを形成する場合にも適している。用途の一例としては、薄膜トランジスタのコンタクトホールやイメージセンサーチップの貫通電極などが挙げられる。
【0045】
以下、実験により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
(ネガパターン組成物の作製)
水溶性低分子化合物としてオレイン酸ナトリウム、水溶性ポリマーとしてアルギン酸ナトリウム、溶媒として水を用い、表1に示す割合でネガパターン組成物1〜7、比較用ネガパターン組成物1を作製した。
【0047】
【表1】
【0048】
次に、水溶性低分子化合物として20gのオレイン酸ナトリウム、水溶性ポリマーとして1gのメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、0.25gのキサンタンガム、溶媒として5gのグリセリン、及び25gの水を100cm3のビーカー中で混合し、ネガパターン形成用組成物8を作製した。このネガパターン形成用組成物8の粘度は3.5Pa・s、チキソ比は6であった。
【0049】
さらに、水溶性化合物として1gのドデシル硫酸ナトリウム、1gのオレイン酸ナトリウム、水溶性ポリマーとして0.8gのアルギン酸ナトリウム、溶媒として10gの水を20cm3のビーカー中で混合し、ネガパターン形成用組成物9を得た。ネガパターン形成用組成物9の粘度は、2.2Pa・s、チキソ比は5であった。
【0050】
(重合硬化性組成物の作製)
0.98gのダイセル社製エポキシ化合物(製品名:セロキサイド2021P)と0.02gの光重合開始剤(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩)と999.00gのPGMEAを2000cm3のビーカー中で混合し、重合硬化性組成物1を作製した。重合硬化性組成物1の粘度は、1mPa・sであった。次に、30gのダイセル社製エポキシ化合物(製品名:セロキサイド2021P)と0.5gの光重合開始剤(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩)と70gのPGMEAを200cm3のビーカー中で混合し、重合硬化性組成物2を得た。重合硬化性組成物2の粘度は、2mPa・sであった。さらに、30gのダイセル社製エポキシ化合物(製品名:セロキサイド2021P)と0.5gの光重合開始剤(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩)を100cm3のビーカー中で混合し、重合硬化性組成物3を得た。重合硬化性組成物3の粘度は、200mPa・s、チキソ比は1であった。
【0051】
(接触角(θ1)の測定)
7枚の幅26mm、長さ76mm、厚さ1.2mmの大気圧プラズマ処理をしたスライドガラスの表面に、約0.3cm3のネガパターン形成用組成物1〜7を、それぞれ滴下し、基板表面全体に塗布した。次に、80℃で60分間乾燥し、スライドガラスの表面にネガパターンを形成した。この乾燥では、溶媒を添加量の0.1%以下になるまで揮発させた。このネガパターンに重合硬化性組成物1を用い、JIS R3257の静滴法に準拠して、接触角を測定した。同様にして、比較用ネガパターン形成用組成物1を用いたネガパターンの接触角を測定した。その結果を表1に示す。オレイン酸ナトリウムの重量を0.13gから0.015gに減少させることにより、接触角は35°から17°に変化した。オレイン酸ナトリウムを含有しない比較用ネガパターン形成用組成物1のネガパターンの接触角は9°であった。
【0052】
同様に、ネガパターン形成用組成物8、9からのネガパターンと、重合硬化性組成物1〜3との接触角を測定した。その結果を表2に示す。なお、ネガパターン形成用組成物8は、グリセリンを含有するので、乾燥を120℃で60分間行った。ネガパターン形成用組成物8からのネガパターンと重合硬化性組成物との接触角の結果より、ネガパターン形成用組成物にグリセリンを含有しても、接触角が変わらないことを確認した。ネガパターンと重合硬化性組成物の種類により、ネガパターンとの接触角を35°から81°まで制御することができた。
【0053】
【表2】
【0054】
(接触角(θ2)の測定)
次に、重合硬化性組成物と、基板の接触角(θ2)を測定した。その結果を表3に示す。重合硬化性組成物の種類により、基板との接触角を制御することができた。また、表2、表3から明らかなように、ネガパターンと重合硬化性組成物の接触角(θ1)を、基板と重合硬化性組成物の接触角(θ2)より大きくすることは可能であった。
【0055】
【表3】
【0056】
(重合硬化性組成物の基板への移動試験)
7枚の幅26mm、長さ76mm、厚さ1.2mmの大気圧プラズマ処理をしたスライドガラスの表面に、約0.1cm3のネガパターン形成用組成物1〜7を、それぞれ滴下し、基板表面の約1/2に塗布した。次に、100℃で30分間乾燥し、スライドガラスの表面の約1/2にネガパターンを形成した。ネガパターンとネガパターンが形成されていない基板表面との境界部に、約0.03cm3の重合硬化性組成物1をそれぞれ滴下し、綿棒で1cm四方に広げ、重合硬化性組成物1が、ネガパターンからネガパターンを形成していない基板表面に移動するか否かを観察した。同様にして、比較用ネガパターン形成用組成物1について観察した。その結果を表1に示す。重合硬化性組成物1が、ネガパターンから基板に移動した場合に○、ネガパターンと基板の両方に残った場合を△、基板に全く移動しない場合を×とした。重合硬化性組成物1は、ネガパターン形成用組成物1〜7によるネガパターンから基板に移動した。これに対して、比較用ネガパターン形成用組成物1によるネガパターンでは、重合硬化性組成物1が、ネガパターンから基板に十分には移動せず、一部がネガパターンに残った。
【実施例2】
【0057】
(ホールの作成)
実施例1で作製したネガパターン組成物8を用いて、幅100mm、長さ100mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、電鋳マスクを用いて、スクリーン印刷を行った。電鋳マスクには、厚さが100μmのものを用い、30μm径のドットパターンを、100μmピッチで、縦5個×横5個の計25個を形成した。印刷後、100℃で、30分間乾燥し、実施例1で作製した重合硬化性組成物2を、毎分1000回転、7秒間の条件で、スピンコートした。60℃で5分間乾燥後、UV光を3000mJ照射し、さらに150℃で30分間硬化させた。このときのネガパターンの厚さは4μmで、ポジパターンの厚さは2μmであった。次に、ガラス基板を純水で洗浄し、ネガパターンを溶解し、ホールを作製した。図5に作製したホールの斜上から見たプロファイルを、図6にホール1個の断面のプロファイルを示す。プロファイルは、ZYGO製走査型三次元顕微鏡で測定した。直径約30μmのホールを形成することができた。
【実施例3】
【0058】
(凹ラインパターンの形成1)
実施例1で作製したネガパターン組成物8を用いて、幅26mm、長さ76mm、厚さ1.2mmのスライドガラスに、ノズル径0.1mmのディスペンサにネガパターン形成用組成物8を充填し、1本の幅0.1mm、長さ50mmの凸ラインパターンを形成した。100℃で、30分間乾燥後、実施例1で作製した重合硬化性組成物2を、バーコーターを用い、ギャップ50μmで塗布した。60℃で5分間乾燥した後、UV光を3000mJ照射し、さらに150℃で30分間硬化させた。このときのネガパターンの厚さは15μmで、ポジパターンの厚さは13μmであった。次に、ガラス基板を純水で洗浄し、ネガパターンを溶解し、凹ラインを作製した。図7に作製した凹ラインの斜上から見たプロファイルを、図8に凹ラインの断面のプロファイルを示す。幅約100μm、長さ50mmの凹ラインを形成することができた。
【実施例4】
【0059】
(凹ラインパターンの形成2)
実施例1で作成したネガパターン組成物9を用いて、実施例3と同様にして、ディスペンサで、2本の幅0.2mm、長さ50mmの凸ラインパターンを0.3mmピッチで作製し、重合硬化性組成物2の凹ラインパターンを作製した。このときのネガパターンの厚さは10μmで、ポジパターンの厚さは3〜4μmであった。図9に作製した凹ラインの斜上から見たプロファイルを、図10に凹ラインの断面のプロファイルを示す。幅約200μm、長さ50mmの凹ラインを300μmピッチで形成することができた。また、ネガパターン形成用組成物9を用いることにより、実施例3とは異なる断面プロファイルのポジパターンを形成することができた。
【実施例5】
【0060】
(島状パターンの形成)
実施例1のネガパターン形成用組成物9を用い、実施例3と同様にして、ディスペンサで、縦方向に5本、横方向に5本の幅0.1mm、長さ50mmの凸ラインパターンを縦横それぞれ0.4mmピッチで形成し、重合硬化性組成物2の島状パターンを作製した。このときのネガパターンの厚さは10μmで、ポジパターンの厚さは3〜4μmであった。図11に作製した島状パターンの斜上から見たプロファイルを、図12に島状パターンの断面のプロファイルを示す。長さ400μm、幅400μmの島状パターンを縦100μm、横100μmピッチで作製することができた。
【実施例6】
【0061】
(凸ドットパターンの形成)
実施例1のネガパターン組成物8を用い、実施例3と同様にして、ディスペンサを用い、幅0.15mm、長さ50mmのラインを、0.2mmピッチで格子状に描画して、縦9本、横11本の格子状パターンを作製し、縦8個、横10個の計80個の重合硬化性組成物2の凸ドットパターンを作製した。このときのネガパターンの厚さは10μmで、ポジパターンの厚さは2.5μmであった。図13に作製した凸ドットの斜上から見たプロファイルを、図14に凸ドットの断面のプロファイルを示す。直径約150μmの凸ドットを形成することができた。
【実施例7】
【0062】
(凸ラインパターンの形成)
実施例3と同様にして、ディスペンサで、幅0.15mm、長さ50mmのネガパターン形成用組成物8の凸ラインを、50μmピッチで5本作製し、重合硬化性組成物2の3本の凸ラインを作製した。このときのネガパターンの厚さは5μmで、ポジパターンの厚さは1μmであった。図15に作製した凸ラインの斜上から見たプロファイルを、図16に凸ラインの断面のプロファイルを示す。3本の幅約50μm、長さ50mmの凸ラインを0.2mmピッチで形成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
簡潔な工程で、基板にポジパターンを形成する製造方法として幅広く利用できる。また、この製造方法に用いるネガパターン形成用組成物として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明にかかる製造方法の模式図である。
【図2】ネガパターンの断面図の一例である。
【図3】重合硬化性組成物について説明するための図である。
【図4】重合硬化性組成物について説明するための図である。
【図5】ホールのプロファイルである。
【図6】ホールの断面のプロファイルである。
【図7】凹ラインのプロファイルである。
【図8】凹ラインの断面のプロファイルである。
【図9】凹ラインのプロファイルである。
【図10】凹ラインの断面のプロファイルである。
【図11】島状パターンのプロファイルである。
【図12】島状パターンの断面のプロファイルである。
【図13】凸ドットパターンのプロファイルである。
【図14】凸ドットパターンの断面のプロファイルである。
【図15】凸ラインパターンのプロファイルである。
【図16】凸ラインパターンの断面のプロファイルである。
【符号の説明】
【0065】
1、10、11 ネガパターン形成用組成物
2 基板
3、31、32 重合硬化性組成物
4 重合硬化性組成物の端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にポジパターンを形成する方法であって、ネガパターン形成用組成物を用いて基板にネガパターンを形成し、これを乾燥させる工程と、ネガパターンの上から、ネガパターンとの接触角が15°以上で、基板との接触角が90°以下であり、かつネガパターンとの接触角が基板との接触角より大きい重合硬化性組成物を塗布し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成し、これを硬化する工程と、ネガパターンを水で溶解する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ネガパターン形成用組成物が、水溶性低分子化合物と水溶性ポリマーと溶媒とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
水溶性低分子化合物が、飽和若しくは不飽和脂肪酸塩又は飽和若しくは不飽和脂肪族直鎖アルキル硫酸塩である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
飽和若しくは不飽和脂肪酸塩又は飽和若しくは不飽和脂肪族直鎖アルキル硫酸塩の炭素数が6〜18である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ネガパターン形成用組成物の粘度が、2〜5Pa・sで、チキソ比が0.9〜3である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ネガパターン形成用組成物の粘度が、2〜300Pa・sで、チキソ比が1〜10である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
重合硬化性組成物の粘度が、0.5〜2000mPa・sで、チキソ比が0.8〜2である、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ネガパターンの厚さが、ポジパターンの厚さの1〜10倍である、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ネガパターンが、重合硬化性組成物に実質的に不溶である、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
水溶性低分子化合物と水溶性ポリマーと溶媒とを含み、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法で使用される、ネガパターン形成用組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項記載の方法で使用される、重合硬化性組成物。
【請求項1】
基板にポジパターンを形成する方法であって、ネガパターン形成用組成物を用いて基板にネガパターンを形成し、これを乾燥させる工程と、ネガパターンの上から、ネガパターンとの接触角が15°以上で、基板との接触角が90°以下であり、かつネガパターンとの接触角が基板との接触角より大きい重合硬化性組成物を塗布し、ネガパターン以外の基板全体にポジパターンを形成し、これを硬化する工程と、ネガパターンを水で溶解する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ネガパターン形成用組成物が、水溶性低分子化合物と水溶性ポリマーと溶媒とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
水溶性低分子化合物が、飽和若しくは不飽和脂肪酸塩又は飽和若しくは不飽和脂肪族直鎖アルキル硫酸塩である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
飽和若しくは不飽和脂肪酸塩又は飽和若しくは不飽和脂肪族直鎖アルキル硫酸塩の炭素数が6〜18である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ネガパターン形成用組成物の粘度が、2〜5Pa・sで、チキソ比が0.9〜3である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ネガパターン形成用組成物の粘度が、2〜300Pa・sで、チキソ比が1〜10である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
重合硬化性組成物の粘度が、0.5〜2000mPa・sで、チキソ比が0.8〜2である、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ネガパターンの厚さが、ポジパターンの厚さの1〜10倍である、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ネガパターンが、重合硬化性組成物に実質的に不溶である、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
水溶性低分子化合物と水溶性ポリマーと溶媒とを含み、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法で使用される、ネガパターン形成用組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項記載の方法で使用される、重合硬化性組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−14774(P2009−14774A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173253(P2007−173253)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000162434)協立化学産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000162434)協立化学産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
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