説明

基板に開口部を形成する方法

【課題】集束された電磁放射線を用いて基板に開口部を形成する方法に関する。
【解決手段】形成される切断線7は、切断開始線分5として、辺の線9,10,11,12によって囲まれた切断面4の領域から開始して、第一の辺の線9上の開始点13まで延びる。この開始点13は、頂点6から離れている。切断線7の終了のために再度開始点13に到達する前に、依然として残っている辺の線の短い方の部分9bとの強固な接続部が、補強作用を果たす。基板2の残った部分に対して大部分切り離された切断面4’の変形が、辺の線12に対して平行に延びない曲がり線14に沿って起こり、辺の線12は変形せずに残る。加工作業を遅らせずに切断線7の著しく改善された品質が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、薄板から成るテンプレートを製造するために規定された、電磁放射線、例えば、レーザーを用いて、基板に開口部を形成する方法であって、全ての辺によって閉じられた多角形の切断面を切断するための切断線が、開口部を囲む、頂点を介して繋がった所定の辺の線に沿って基板に形成され、その切断線が、切断開始線分として、これらの辺の線から離れた切断面の内側領域から、一つの辺の線上の始点にまで延びて、更に全ての別の辺の線に沿って延びる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法は、例えば、プリント回路基板の工業的な製作プロセスで半田ペーストを塗布する際に使用される電子産業での半田ペースト用テンプレートを製造する場合に用いられる。そのように製造されるテンプレートは、例えば、ポリイミド樹脂や鋼鉄から構成される。この方法で製造されたテンプレートを用いて、半田ペーストを速く確実に塗布できる。
【0003】
半田ペースト用テンプレートは、プリント回路基板上に半田溜りを塗布するために使用される。それに続いて、その半田溜りにSMD部品(表面実装部品)を置いて、次のリフロー半田プロセスで半田付けしている。半田ペースト用テンプレートは、顧客の要望に応じて、ブランク薄板から貫通穴を有するテンプレートとして、或いはそれを枠に張り付けた形で製造できる。そのために、個々の開口部を薄板に形成している。
【0004】
従来技術では、全ての辺によって閉じられた開口部を基板に形成するために、焦点は、凡そ辺の線上ではなく、開口部の取り去るべき切断面内に設定される。先ずは、そのような焦点を開始点として、レーザーの焦点を位置決めし、次に、切断開始片(Einstichfahne )とも呼ばれる切断開始線分が、切断線の始点としての二つの辺の線の頂点にまで延びる。それに続いて、線状の切断線が、刳り抜き部分を画定する各辺の線に沿って形成される。
【0005】
しかし、実際には、これらの辺の線に沿って完全に一周して再度始点に到達する前に、望ましくない変形が起こる。重力の作用と、溶融物を速く取り去って、再度付着することを防止するためのプロセスガスのガス流が引き起こす力学作用とのために、既に大部分切り離された切断面が下方に曲がる。
【0006】
従って、一方では、そのために溶融物が再度切削エッジに付着する可能性が有るので、溶融物の排出が妨害され、他方では、レーザー光が最早切断面に対して垂直に当たらずに、湾曲のために切断面の凸状に変形した領域において、ずれた角度で辺の線上に当たり、レーザーのプリセットされたパラメータが最早最適でなくなることによって、切削エッジが不正確となっている。
【0007】
相前後する二回の加工工程により開口部を形成することとして、先ずは大きな重量部分の内側の部分切断面を取り去り、次に、辺の線に沿って残った周縁部を正確な輪郭で取り去ることが考えられる。しかし、それによって、方法の実行時間が望ましくない程長くなり、そのため、そのような解決策の提案は、実用的でないことが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,128,546号明細書
【特許文献2】特開平7−232288号公報
【特許文献3】特開平10−249563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、部分的に切り離された切断面の向きが変形のために変化することによる不利な影響を最小化する手法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本課題は、本発明の請求項1の特徴部に基づく方法によって解決される。本発明の更に別の実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0011】
即ち、本発明では、切断開始線分が、内側の領域から、変曲点、特に、二つの辺の線を繋ぐ頂点から大きく離れた始点にまで延びて、その結果、その始点が辺の線を辺の線の長い方の部分と辺の線の短い方の部分に分割する方法を規定している。本発明は、切断開始線分が、切断面内に設定された焦点から開始して、頂点ではなく、頂点に対して所定の間隔を開けて一つの辺の線にまで延び、その結果、始点が、その辺の線を辺の線の短い方の部分と辺の線の長い方の部分に分割するとの知見に基づく。それに続いて、切断線が、全ての辺の線に沿って形成される。しかし、完全に一周して、再度始点に到達する前に、従来技術と比べて驚く程有利な効果が得られる。当初から切断線が辺の線の短い方の部分に位置しないことが、支持部分(Auflager)というの意味での補強作用を生み出す。再度始点に到達する直前に切断面が曲がって落ちる、即ち、辺の線に沿った支持部分しか残らない従来技術と異なり、切断面が、当初から辺の線の短い方の部分によって構成される追加の支持部分を依然として有する。確かに、この場合でも、外力の影響で、基板に対して大きく切り離された切断面の変形が起こるが、その曲がり線は、辺の線に対して平行ではなく、一定の角度を成して延び、特に、辺の線に対して垂直に延び、その結果、不利な効果が起こらない。
【0012】
この場合、切断線が、始点から出発して、辺の線の長い方の部分から開始し、その次の辺の線に形成され、その結果、支持部分を構成する辺の線の部分が辺の線の短い方の部分に限定されるのが特に有利であることが分かっている。驚くべきことに、本発明の利点を実現するためには、辺の線の短い方の部分の長さが非常に短くても全く十分であることが分かった。更に、当初から辺の線から外れた曲がり線に沿った有利な変形のために、辺の線の短い方の部分に沿って切断線を形成する場合でも、曲がり線が辺の線から外れることが保証される。
【0013】
この場合、辺の線の短い方の部分の長さが、辺の線の短い方の部分と辺の線の長い方の部分を合計した全長の5%〜15%、特に、約10%である本方法の実施形態は、それによって、辺の線の短い方の部分の長さが最小限になると同時に、支持部分の機能が最適に果たされるので、特別な結果をもたらすことがわかっている。
【0014】
この場合、辺の線の短い方の部分が、0.05mm〜0.25mmの長さで形成されるのが、実際にも有効であることが分かっており、そのようにして、実際に最適な結果が得られる。
【0015】
この場合、切断開始線分は、任意の経路を持つことができ、例えば、辺の線に徐々に接近したり、辺の線に対して垂直に延びるように形成することもできる。それに対して、切断開始線分が辺の線の長い方の部分に対して鋭角を成して延び、その結果、始点が一義的に規定されて、この領域での複数の切断線が交差する加工作業が防止されるのが特に有利である。
【0016】
この切断開始線分は、基本的に任意の長さを持つことができる。それに対して、この切断開始線分が、辺の線の短い方の部分又は辺の線の長い方の部分と繋がった辺の線の長さの20%〜30%の長さで形成されるのが特に有利である。
【0017】
それによって、切断線の進捗による切断面の変形を制御して予め決めることが可能な実施形態が実現される。この場合、切断開始線分の有利な長さは0.05mm〜0.25mmである。
【0018】
この切断開始線分は、任意の辺の線上の始点にまで延びることができる。それに対して、切断開始線分を最も長い辺の線上の始点と繋げるのが特に実用的である。
【0019】
本発明による方法は、所定の大きさの切断面又は基板に限定されない。それに対して、辺の線の長さが50μm〜10mmである切断面に使用するのが特に有効である。
【0020】
実際に、本発明による方法を多くの使用分野に用いることが可能である。本発明の有利な使用形態は、半田ペーストを塗布するためのテンプレートをレーザー切断することに関する。
【0021】
本発明は、様々な実施構成を許容する。以下において、その基本原理を更に説明するために、一つの実施構成を図面に図示して説明する。その原理図が、それぞれ図面に図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来技術による方法の原理図
【図2】本発明による基板に開口部を形成する方法の原理図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、従来技術により周知である、基板2に開口部1を形成する方法を図示している。切断開始線分5は、切断面4内の集束された電磁放射線8の焦点3から出発して、二つの辺の線9,12の交点としての頂点6から切断線7として延びている。この場合、全ての辺の線9,10,11,12を反時計回りに巡回しており、その結果、最後の辺の線12の中心領域では、その段階で既に大部分切り離された切断面4が変形する。図面から分かる通り、切断面4は、最後に処理される辺の線12に対してほぼ平行な方向を向いた軸の周りを折れ曲がる。その結果、集束された放射線が、変形領域内において、切断面4の凸状の表面上に当たり、そのため、切削エッジにずれが生じる。
【0024】
それに対して、図2には、そのような前記のずれが大幅に防止される、本発明による基板2に開口部1を形成する方法が図示されている。前述した通り、集束された電磁放射線8を用いて形成される切断線7は、先ず切断開始線分5として、辺の線9,10,11,12によって囲まれた切断面4の領域内から開始して、二つの辺の線9,12を繋ぐ頂点6から離れた、第一の辺の線9上の始点13にまで延びている。この場合、始点13は、辺の線9を辺の線の長い方の部分9aと辺の線の短い方の部分9bに分割しており、切断開始線分5は、辺の線の長い方の部分9aに対して角度αを成して延びている。それに続いて、切断線7は、第一の辺の線9に沿って、辺の線の長い方の部分9aに形成され、次に、第二の辺の線10と第三の辺の線11に沿って形成され、第四の辺の線12のほぼ中央にまで形成される。しかし、再度始点13に到達する前に、図1に図示されている従来技術と比べて、驚くべき程有利な効果が得られる。辺の線の短い方の部分9bとの強固な接続部によって、支持部分という意味での補強作用が生じる。この場合、図示されていないプロセスガスの流体フロー及び重力のために変形した破線で囲まれた切断面4’は、基板2の残った部分に対して、その平面内に第四の辺の線12に対して垂直な曲がり線14を有する。従って、図面から分かる通り、第四の辺の線12は、変形によって損傷されずに残り、その結果、加工作業を遅らせずに切断線7の著しく改善された品質を実現できる。
【符号の説明】
【0025】
1 開口部
2 基板
3 電磁放射線8の焦点3
4,4’ 切断面
5 切断開始線分
6 頂点
7 切断線
8 電磁放射線
9 第一の辺の線
9a 第一の辺の線9の長い方の部分
9b 第一の辺の線9の短い方の部分
10 第二の辺の線
11 第三の辺の線
12 第四の辺の線
13 始点
14 曲がり線
α 切断開始線分5と第一の辺の線9が成す角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射線(8)を用いて、基板(2)、特に、薄板に開口部(1)を形成する方法であって、多角形の切断面(4)を切断するための切断線(7)が、開口部(1)を囲む、頂点(6)を介して繋がった所定の辺の線(9,10,11,12)に沿って基板(2)に形成され、その切断線(7)が、切断開始線分(5)として、これらの辺の線(9,10,11,12)から離れた、切断面(4)の内側領域から開始して、一つの辺の線(9)上の始点(13)にまで延び、更に、そこから全ての別の辺の線(10,11,12)に沿って延びる方法において、
この切断開始線分(5)が、前記の内側領域から、変曲点、特に、二つの辺の線を繋ぐ頂点(6)から離れた始点(13)にまで延びており、その結果、この始点(13)が、辺の線(9)を辺の線の長い方の部分(9a)と辺の線の短い方の部分(9b)に分割することを特徴とする方法。
【請求項2】
切断線(7)が、始点(13)から出発して、辺の線の長い方の部分(9a)から開始して、それに続く辺の線(10,11,12)及び辺の線の短い方の部分(9b)に形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
辺の線の短い方の部分(9b)の長さが、辺の線の長い方の部分(9a)と辺の線の短い方の部分(9b)を合計した全長の5%〜15%、特に、約10%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
辺の線の短い方の部分(9b)が、0.05mm〜0.25mmの長さで形成されることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
切断開始線分(5)が、辺の線の長い方の部分(9a)に対して一定の角度(α)を成して延びることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
切断開始線分(5)が、辺の線の短い方の部分(9b)又は辺の線の長い方の部分(9a)と繋がる辺の線(10,12)の長さの20%〜30%の長さで形成されることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
切断開始線分(5)が、0.05mm〜0.25mmの長さで形成されることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
切断開始線分(5)が、最も長い辺の線(9)上の始点(13)と繋がっていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
辺の線(9,10,11,12)の長さが50μm〜10mmであることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
本方法が、半田ペーストを塗布するためのテンプレートをレーザー切断するために使用されることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−161843(P2012−161843A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20430(P2012−20430)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(399007154)エル・ピー・ケー・エフ・レーザー・ウント・エレクトロニクス・アクチエンゲゼルシヤフト (8)
【Fターム(参考)】