説明

基板の処理装置及び処理方法

【課題】 基板表面に付着又は形成した不要物を処理液で除去しながらリンス液で洗い流す際に液滴及びミストの飛散を防止して不要物を効率的に除去することが可能なコンパクト化された基板の処理装置及び処理方法を提供する。
【解決手段】 基板11の表面の不要物を除去する基板の処理装置10は、基板11を保持して回転する回転駆動手段12と、基板11の上方に移動可能に設けられ、回転している基板11の表面に不要物を除去する処理液を噴射する噴射ノズル13と、回転している基板11の表面を洗うリンス液を供給するリンスノズル15と、基板11の上方に移動可能に設けられ、回転している基板11の表面を流れるリンス液を押し退け、リンス液が噴射ノズル13から噴射された処理液に衝突するのを防止する気体を吹き付ける気体吐出ノズル17とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に付着又は形成した不要物を除去する基板の処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体基板上に金属薄膜パターンを作製する方法の一つにリフトオフ法がある。リフトオフ法では、半導体基板の表面に形成したレジストパターンを介して半導体基板上に金属薄膜を形成した後、半導体基板を低速回転させながら低圧力でレジスト剥離液を塗布し、次いで半導体基板を高速回転させながらノズルから処理液を噴射することによりレジストの表層部を膨潤させて、レジスト及びレジスト上に形成された不要物の一例である金属薄膜を除去している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この際、剥離したレジスト及び不要な金属薄膜を半導体基板の外部に排出するため、あるいは半導体基板の表面が乾燥するのを防止するために、純水等のリンス液を半導体基板上に供給している。しかし、半導体基板を高速回転させながらノズルから処理液を半導体基板に噴射すると共にリンス液を供給すると、リンス液は半導体基板上を流れて外周部から外部に排出される際に、ノズルから噴射された処理液と衝突し衝突箇所で、両液体の液滴及びミストが発生して激しく飛散するという問題が生じている。そして、液滴及びミストの発生及び飛散は半導体基板の外周部で激しく生じ、半導体基板の回転数が高い程またリンス液の流量が多い程、液滴及びミストの飛散は激しくなっている。
このため、リンス液の供給を止めて処理液を供給するノズルを直進ノズルからシャワーノズルに変更して、処理液で不要な金属薄膜を除去させたり半導体基板表面が乾燥するのを防止したりすることが試行されている。また、液滴及びミストの飛散状況に応じてリンス液の流量を減少させたり、リンス液の供給位置を変更することも行われている。更に、回転している半導体基板の周囲を飛散防止カップにより遮蔽したり、排気ファンを設けて発生した液滴及びミストを排気の流れに乗せて排出することが行われている。
【0004】
【特許文献1】特開平01−041217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、半導体基板から剥離した不要な金属薄膜の再付着による不良発生を抑えようとする場合、剥離した金属薄膜を素早く半導体基板上から排出する必要があり、このためには、例えば、リンス液の流量を多くすることが有効となる。一方、リンス液の流量を増加させると液滴及びミストの発生が増大して飛散が激しくなるため、飛散防止カップを高い位置まで移動可能な構造にして液滴及びミストの飛散を遮断したり、排気ファンの排気量を増加させて液滴及びミストを吸引して液滴及びミストの飛散を防止している。
しかし、飛散防止カップを高い位置まで移動可能な構造にする場合、飛散防止カップの昇降ストロークが長くなって飛散防止カップの駆動部が大きくなり、半導体基板の処理装置のコンパクト化が妨げられると共に、製作コストも上昇するという問題が生じる。排気ファンの排気量を増加させる場合は、排気ファンの能力を向上させねばならず製作コストが上昇するという問題が生じる。また、液滴及びミストの飛散が激しくなると、半導体基板の表面が液滴及びミストで汚染されるという危険性が新たに生じる。更に、処理液がリンス液と衝突することで処理液が金属薄膜に衝突する際の衝突力が弱められ、不要な金属薄膜を半導体基板の表面から剥がす効率が低下するという問題も生じる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、基板の表面に付着又は形成した不要物を処理液で除去しながらリンス液で洗い流す際に液滴及びミストの飛散を防止して付着又は形成した不要物を効率的に除去することが可能なコンパクト化された基板の処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る基板の処理装置は、基板の表面に付着又は形成した不要物を除去する基板の処理装置において、
前記基板を保持して回転する回転駆動手段と、
前記基板の上方に移動可能に設けられ、回転している前記基板の表面に前記不要物を除去する処理液を噴射する噴射ノズルと、
回転している前記基板の表面を洗うリンス液を供給するリンスノズルと、
前記基板の上方に移動可能に設けられ、回転している前記基板の表面を流れるリンス液を押し退け、該リンス液が前記噴射ノズルから噴射された処理液に衝突するのを防止する気体を吹き付ける気体吐出ノズルとを有する。
【0008】
第1の発明に係る基板の処理装置において、前記気体吐出ノズルから噴射する気体流量を、前記リンス液の流量に応じて変化させることが好ましい。
ここで、1枚の基板を処理する間にリンス液の流量を途中で変化させてもよく、例えば、処理液が基板の中央部に供給されている場合はリンス液の流量を少なくし、処理液が基板の外周部側に供給されている間はリンス液の流量を多くして、そのリンス液の流量に合わせて気体吐出ノズルから噴射する気体の流量を調整するようにすることもできる。
【0009】
前記目的に沿う第2の発明に係る基板の処理方法は、基板の表面に付着又は形成した不要物を除去する基板の処理方法において、
前記基板を回転して該基板の表面に前記不要物を除去する処理液を噴射すると共に該基板の表面を洗うリンス液を供給しながら、該基板の表面に気体を吹き付け、該基板の表面を流れるリンス液を押し退けて該リンス液が噴射された該基板上の処理液に衝突するのを防止する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1及び2記載の基板の処理装置においては、気体吐出ノズルから気体を噴射させてリンス液を押し退け、処理液とリンス液の衝突を防止するので、処理液とリンス液が衝突することにより発生する液滴及びミストの飛散を防止することが可能になる。その結果、液滴及びミストの飛散を防止する飛散防止カップの可動範囲を長くしたり、基板を覆うチャンバー内を排気する排気ファンの排気量を増加させる必要がなく、基板の処理装置をコンパクト化することが可能になる。
【0011】
特に、請求項2記載の基板の処理装置においては、気体吐出ノズルから噴射する気体流量を、リンス液の流量に応じて変化させるので、リンス液の流量を増加させても処理液とリンス液との衝突を確実に防止でき、基板の表面の洗浄を確実に行うことが可能になる。
【0012】
請求項3記載の基板の処理方法においては、基板の表面に気体を吹き付け、基板の表面を流れるリンス液を押し退けて、リンス液が噴射された基板上の処理液に衝突するのを防止するので、リンス液の流量を増加させても液滴及びミストの飛散を防止することが可能になる。その結果、基板の表面が液滴及びミストで汚染されたり、基板から除去した不要物を効率的に基板の外部に洗い流して不要物の付着を防止することが可能になって、製品の製造歩留りの向上が達成できる。また、リンス液が噴射された基板上の処理液に衝突するのが防止されることにより処理液を基板に直接衝突させることができ、処理液の衝突力の低下を防止することが可能になる。その結果、基板上の不要物を効率的に除去することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る基板の処理装置の説明図、図2(A)及び(B)はそれぞれ同基板の処理装置において処理液の噴射領域に接近するリンス液の流れが気体吐出ノズルから吹き出した窒素ガスで押し退けられる状態を示す側面図及び平面図、図3は同基板の処理装置において回転している半導体基板の表面に高圧ジェットノズルから処理液を噴射すると共にリンスノズルからリンス液を供給しながら気体吐出ノズルから窒素ガスを吹き付けた際の状態を示す説明図、図4は本発明の第2の実施の形態に係る基板の処理装置の説明図、図5は同基板の処理装置において回転している半導体基板の表面に高圧ジェットノズルから処理液を噴射すると共にリンスノズルからリンス液を供給しながら気体吐出ノズルから窒素ガスを吹き付けた際の状態を示す説明図、図6(A)及び(B)はそれぞれ同基板の処理装置において処理液の噴射領域に接近するリンス液の流れが気体吐出ノズルから吹き出した窒素ガスで押し退けられる状態を示す側面図及び平面図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る基板の処理装置10は、レジストパターンを介して不要物の一例である金属薄膜が表面に形成されている基板の一例である半導体基板11を水平状態に保持して半導体基板11の垂直な中心軸の周りに回転する回転駆動手段12と、半導体基板11の上方に移動可能に設けられ、回転している半導体基板11の表面に金属薄膜を除去する処理液(本実施の形態では純水を使用)を噴射する噴射ノズルの一例である高圧ジェットノズル13を備えた処理液噴射手段14と、回転している半導体基板11の表面を洗うリンス液(本実施の形態では純水を使用)を、例えば、半導体基板11の中央部に供給するリンスノズル15を備えたリンス液供給手段16とを有している。更に、基板の処理装置10は、半導体基板11の上方に移動可能に設けられ、回転している半導体基板11の表面を流れるリンス液を押し退けリンス液が高圧ジェットノズル13から噴射された処理液に衝突するのを防止する気体の一例である窒素ガスを吹き付ける気体吐出ノズル17を備えたガス吹き付け手段18とを有している。以下これらについて、詳細に説明する。
【0015】
回転駆動手段12は、半導体基板11の裏面を、例えば、圧力差を利用して吸着して保持するチャック19と、チャック19を水平に保持しその中心軸の周りに回転可能に支持する回転軸20と、回転軸20に連結し回転軸20に回転駆動力を与える回転駆動源の一例であるモータ21を有している。ここで、チャック19の表面側には複数の孔22が設けられ、各孔22はチャック19内部に形成されたチャンバ23と連通し、チャンバ23は回転軸20内に設けられた排気管24を介して、図示しない真空ポンプの吸引口と連通している。
【0016】
このような構成とすることにより、チャック19上に半導体基板11を載置し、真空ポンプを運転するとチャンバ23内が減圧状態になることにより孔22を介して半導体基板11の裏面側が減圧状態になり、半導体基板11の表面側が大気圧により押圧されることにより、半導体基板11をチャック19上に固定して保持することができる。この状態で、モータ21を駆動させると回転軸20を介してチャック19が回転することで、水平に保持された半導体基板11をその中心軸の周りに回転させることができる。
【0017】
更に、回転駆動手段12は、回転軸20が中央を貫通している底板25及び底板25の外周部に立設する第1の側壁26を備え内側にチャック19を収容しているシンク27と、第1の側壁26の上端に沿って連接して設けられ、例えば、孔あき板で形成された第2の側壁28を介してシンク27内部を排気するリング状の吸引室29及び吸引室29の下部に設けられた複数(図1では2個)の吸引口29aを備えた排気ダクト30と、第2の側壁28の内面から隙間(例えば、0.5〜1cm)を設けて配置され図示しない昇降手段により回転軸20の軸方向と平行に昇降し先部(上部)が縮径した筒状の飛散防止カップ31を有している。なお、底板25には排出口32が設けられている。
【0018】
このような構成とすることにより、半導体基板11を回転させながら高圧ジェットノズル13及びリンスノズル15から半導体基板11上にそれぞれ処理液及びリンス液を供給した際に、飛散防止カップ31の位置を調整することで、半導体基板11の回転に伴い処理液及びリンス液がシンク27の外部に飛び出すことを防止できる。そして、半導体基板11上から流出した処理液及びリンス液はシンク27で受け止められ、排出口32より排出することができる。また、気体吐出ノズル17から窒素ガスを半導体基板11に吹き付けた際に、排気ダクト30の下流端に接続された図示しない排気ファンを駆動することで、吹き付けた窒素ガスをシンク27内に流入させてから第2の側壁28を介して吸引室29に流入させ吸引口29aから排気することができる。
【0019】
処理液噴射手段14は、高圧ジェットノズル13の先端から半導体基板11の表面までの高圧ジェットノズル13の噴射方向に沿った距離が、例えば、10〜150mmの範囲に、高圧ジェットノズル13から半導体基板11に処理液を噴射する際の噴射角度が半導体基板11の垂直軸に対して、例えば、10〜45°の範囲に保持されるように高圧ジェットノズル13を半導体基板11の上方に支持する噴射ノズル支持アーム33を有している。更に、処理液噴射手段14は、噴射ノズル支持アーム33の基部に連結して噴射ノズル支持アーム33をその軸心周りに回動させ、高圧ジェットノズル13を噴射ノズル支持アーム33の軸心を中心とした円周上の一部の範囲を移動させることにより、処理液の噴射領域を回転している半導体基板11の一端から半導体基板11の中心を通過して半導体基板11の他端まで円弧に沿って移動させ駆動源としてモータを備えたアーム移動部34と、高圧ジェットノズル13に処理液を供給する図示しない液体加圧機を有している。
このような構成とすることにより、半導体基板11を回転させながら半導体基板11の一端から半導体基板11の中心を通過して半導体基板11の他端まで処理液の噴射領域を円弧に沿って移動させると、半導体基板11の表面に対して一様に処理液を2回噴射することができる。
【0020】
リンス液供給手段16は、リンス液を半導体基板11の中央部付近に供給するリンスノズル15と、リンスノズル15を保持する図示しないリンスノズル支持アームと、リンスノズル15に純水を供給する図示しない純水供給ポンプを有している。なお、リンス液は金属薄膜の剥離には直接影響を与えないため、リンスノズル支持アームを用いてリンスノズル15を半導体基板11に対して任意の位置に保持することができる。
【0021】
このような構成とすることにより、半導体基板11上に供給されたリンス液は遠心力により半導体基板11の中央部付近から放射状に外周部に向かって拡がる流れを形成し、この流れで半導体基板11の表面を一様に洗うことができる。なお、リンスノズル15は高圧ジェットノズル13の移動に同期して、例えば、リンスノズル支持アームをその軸心周りに回動させ、リンスノズル15をリンスノズル支持アームの軸心を中心とした円周上の一部の範囲を移動させることにより、リンス液の供給位置が回転している半導体基板11の一端から半導体基板11の中心を通過して半導体基板11の他端まで円弧に沿って移動するようにしてもよい。
【0022】
ガス吹き付け手段18は、気体吐出ノズル17と、気体吐出ノズル17の先端から半導体基板11表面までの気体吐出ノズル17の吐出方向に沿った距離を、例えば、10〜150mmの範囲に、気体吐出ノズル17から半導体基板11に窒素ガスを吹き付ける際の吹き付け角度を半導体基板11の垂直軸に対して、例えば、0又は0を超えて80°以下の範囲に保持して気体吐出ノズル17を半導体基板11の上方に支持する図示しない気体ノズル支持アームを有している。ここで、図2に示すように、気体吐出ノズル17は、半導体基板11上の処理液の噴射領域に接近するリンス液の流れの前方に窒素ガス吹き付け領域が形成され、処理液の噴射領域の中心と窒素ガスの吹き付け領域の中心が、例えば、5〜20mm離れるように、気体ノズル支持アームによって保持されている。また、ガス吹き付け手段18は、噴射ノズル支持アーム33に気体ノズル支持アームの基部を連結して、高圧ジェットノズル13の移動に同期して気体吐出ノズル17を移動させながら、ゴミ捕集用のフィルターを備えた図示しないガス供給機により気体吐出ノズル17に清浄な窒素ガスを供給する。ここで、気体ノズル支持アームを噴射ノズル支持アーム33に連結させずに、気体吐出ノズル17を、駆動源にモータを備えた図示しない移動部により移動するようにしてもよい。
【0023】
このような構成とすることにより、回転している半導体基板11の表面に高圧ジェットノズル13から処理液を噴射すると共にリンスノズル15からリンス液を供給した場合、気体吐出ノズル17から窒素ガスを半導体基板11の表面に吹き付けると、図2(A)、(B)に示すように、半導体基板11上で処理液の噴射領域に流れ込むリンス液の流れを、処理液との衝突直前に吹き付けられた窒素ガスで押し退けることができ、処理液とリンス液との衝突による液滴及びミストの飛散を防止できる。
【0024】
ここで、高圧ジェットノズル13による処理液の噴射領域の中心位置に対して決定する気体吐出ノズル17からの窒素ガスの吹き付け位置の中心の方向は、処理液の噴射領域の中心位置と半導体基板11上に供給されたリンス液に遠心力が作用して半導体基板11上に形成されるリンス液の流れ方向、すなわち半導体基板11の回転方向との相対関係で決定される。例えば、図3に示すように、回転している半導体基板11の表面に処理液を噴射すると共にリンス液を供給しながら気体吐出ノズル17から窒素ガスを吹き付ける場合、半導体基板11の中心に対して一方側(R領域)に処理液の噴射領域の中心が存在するときと、他方側(S領域)に処理液の噴射領域の中心位置が存在するときでは、処理液の噴射領域に向かって流れて来るリンス液の流れ方向は、半導体基板11の中心を境にして逆転する。
【0025】
従って、処理液の噴射領域の中心位置を、回転している半導体基板11の一端から半導体基板11の中心までの範囲、すなわち、R領域内で繰り返し移動させるようにする。あるいは、高圧ジェットノズル13を挟むように両側にそれぞれ気体吐出ノズルを配置し、処理液の噴射領域の中心位置に応じて、一方の気体吐出ノズルのみを作動させ、噴射領域の中心位置が半導体基板11の中心を通過するのに同期して他方の気体吐出ノズルの作動に切り換えるようにしてもよい。また、回転している半導体基板11の一端から半導体基板11の中心を通過して半導体基板11の他端までの範囲で、両側の気体吐出ノズルを同時に作動させた状態で繰り返し移動させてもよい。
【0026】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る基板の処理装置10に適用した半導体基板の処理方法について説明する。
先ず、レジストパターンを介して金属薄膜が表面に形成されている半導体基板11の中心位置とチャック19の中心位置が一致するように半導体基板11をチャック19上に載置し、真空ポンプを運転し半導体基板11の裏面側を減圧状態にして半導体基板11をチャック19上に吸着固定することにより水平に保持する。そして、モータ21を駆動させて回転軸20を介してチャック19を回転させ、半導体基板11をその中心軸の周りに回転させる。次いで、飛散防止カップ31の高さ位置を調整してから、半導体基板11の上方に設置された図示しないレジスト膨潤液の供給ノズルよりレジスト膨潤液を半導体基板11上に所定時間供給する。このとき、レジスト膨潤液の供給位置を回転している半導体基板11の一端から半導体基板11の中心を通過して半導体基板11の他端の範囲で繰り返し移動させる。これにより、金属薄膜を支持しているレジストパターンの表層部が膨潤し、付着しているレジスト及び不要な金属薄膜は剥がれ易い状態になる。ここで、レジスト膨潤液の供給位置を回転している半導体基板11の一端から半導体基板11の中心までの範囲(例えば、R領域)内で繰り返し移動させてもよい。
【0027】
続いて、図3に示すように、回転している半導体基板11の表面に高圧ジェットノズル13から処理液を噴射すると共に気体吐出ノズル17から窒素ガスを吹き付けた際に、処理液の噴射領域の中心から、半導体基板11の反回転方向に5〜20mm離れた位置に気体吐出ノズル17による窒素ガス吹き付け位置の中心が存在するように、噴射ノズル支持アーム33上の高圧ジェットノズル13の位置及び気体ノズル支持アーム上の気体吐出ノズル17の位置をそれぞれ調整する。
【0028】
次いで、チャック19で保持された半導体基板11を回転させながら排気ダクト30に接続した排気ファンを運転して、高圧ジェットノズル13から処理液を半導体基板11の表面に噴射しながらリンスノズル15によりリンス液を半導体基板11の中心付近に供給すると共に、気体吐出ノズル17により窒素ガスを半導体基板11上に吹き付ける。なお、半導体基板11の回転に伴い処理液及びリンス液がシンク27の外部に飛び出さないように飛散防止カップ31の高さ位置を調整する。ここで、処理液の噴射領域の中心位置を、回転している半導体基板11の一端から半導体基板11の中心までの範囲(R領域)内で、例えば、繰り返し移動させながら、リンス液を供給し窒素ガスを吹き付ける。
【0029】
レジスト上で剥がれ易い状態になっている金属薄膜に高圧ジェットノズル13から高圧の処理液が噴射されると、処理液の衝突により金属薄膜は細片化されてレジストの表面から脱落していく。なお、金属薄膜と衝突した処理液は半導体基板11上を外周部に向かって流れ外周部から半導体基板11外に放出される。一方、半導体基板11上には、リンスノズル15から供給されたリンス液によって半導体基板11の中央部付近から放射状に外周部に向かって拡がるリンス液の流れが形成されているため、レジストの表面から脱落した金属薄膜の細片は、リンス液の流れによって押し流されて半導体基板11の外周部まで運ばれ、リンス液と共に半導体基板11外に放出される。放出された処理液及び金属薄膜の細片を含むリンス液は飛散防止カップ31の内壁に衝突し内壁を下方に移動してシンク27内に落下する。
【0030】
ここで、高圧ジェットノズル13による処理液の噴射領域の中心位置がR領域に存在するので、半導体基板11上に形成されているリンス液の流れ方向は、処理液の噴射領域に向かって流れて来る方向になっている。一方、半導体基板11上には、リンス液の流れの方向に対抗して気体吐出ノズル17から窒素ガスが吹き付けられているので、処理液の噴射領域に向かうリンス液の流れが押し退けられ、処理液とリンス液の流れが衝突するのが防止できる。このため、処理液とリンス液の衝突により液摘及びミストが発生するのが防止される。
なお、高圧ジェットノズル13を挟むように両側にそれぞれ気体吐出ノズルを配置した場合は、処理液の噴射領域の中心位置を、回転している半導体基板11の一端から半導体基板11の中心を通過して半導体基板の他端までの範囲で、例えば、繰り返し移動させながら、処理液の噴射領域の中心位置に応じて、一方の気体吐出ノズルのみを作動させ、噴射領域の中心位置が半導体基板11の中心を通過するのに同期して他方の気体吐出ノズルの作動に切り換えるようにする。あるいは、両側の気体吐出ノズルを同時に作動させた状態で繰り返し移動させてもよい。
【0031】
また、気体吐出ノズル17から噴射する窒素ガス流量を、リンスノズル15から供給するリンス液流量の増加と共に増加させるのがよく、例えば、リンス液流量が50cc/minの場合は窒素ガス流量を5ノルマルリットル/min以上、リンス液流量が100cc/minの場合は窒素ガス流量を7ノルマルリットル/min以上、リンス液流量が200cc/minの場合は窒素ガス流量を10ノルマルリットル/min以上となるように供給すると、確実に処理液とリンス液の衝突を防止することができる。
なお、気体吐出ノズル17から噴射する窒素ガス流量を多くする程、リンス液の流れを押し退ける効果が増加するが、多量の窒素ガスを供給する場合はガス供給機の能力を向上させると共にゴミ捕集用のフィルターの交換頻度が増加しコストが上昇するため好ましくない。更に、窒素ガス流量を過剰にした場合、リンス液と衝突してリンス液を押し退ける際にリンス液の液滴やミストが発生し易くなるという問題が生じる。
【0032】
図4、図5に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る基板の処理装置35は、第1の実施の形態に係る基板の処理装置10と比較して、半導体基板11の回転方向が逆転し、高圧ジェットノズル13と気体吐出ノズル17の配置が入れ替わっていることを除くと、基板の処理装置10の構成と実質的に同一である。このため、同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
基板の処理装置35では、基板の処理装置10の場合と比較して、半導体基板11上に形成される高圧ジェットノズル13による処理液の噴射領域に対して、リンスノズル15から供給されたリンス液の流れ方向が逆転している。このため、半導体基板11の表面に対して気体吐出ノズル17から窒素ガスを、例えば、処理液の噴射方向と平行に吹き付け、リンス液の流れ方向の前方位置に窒素ガス吹き付け領域を形成して、処理液の噴射領域に流れ込むリンス液の流れを押し退ける際の状況は、図6(A)、(B)に示すようになる。また、基板の処理装置35を適用した半導体基板の処理方法は、基板の処理装置10を適用した半導体基板の処理方法と実質的に同一であるので、詳しい説明は省略する。
【0033】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の基板の処理装置及び処理方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、上述した実施の形態においては、基板として半導体基板を処理する場合について説明したが、本発明は、ガラス基板やセラミック基板等のような他の各種の基板の処理に対して広く適用することができる。
【0034】
また、気体吐出ノズルを用いて、噴射ノズルによる処理液の噴射方向と平行に窒素ガスを基板上に吹き付けリンス液の流れの前方に窒素ガス吹き付け領域を形成して、処理液の噴射領域に接近するリンス液の流れを押し退けたが、処理液の噴射領域に接近するリンス液の流れが基板の外周側に向かう流れに変化するように、気体吐出ノズルから窒素ガスをリンス液の流れの前方で基板の外周側に向けて吹き付けることにより窒素ガス吹き付け領域を形成してもよい。
【0035】
前記の実施の形態では、高圧ジェットノズルから噴射する処理液、及びリンスノズルから供給するリンス液にそれぞれ純水を使用したが、基板が水と反応し易い場合はアルコールを使用することもできる。また、処理液及びリンス液にレジスト膨潤液を使用することもできる。気体吐出ノズルから吹き付ける気体に窒素ガスを使用したが、空気又はアルゴンガス等の基板と反応しないガスであれば何を使用してもよい。更に、不要物は金属薄膜に限らず、基板の表面に付着するパーティクルや各種金属不純物(金属イオンを含む)及び有機汚染物であってもよい。また、噴射ノズルは高圧ジェットノズルに限らず、二流体ノズルやスプレーノズルであってもよい。
リフトオフ処理以外のエッチング処理や洗浄処理等の他の処理を施すものであってもよい。この場合、噴射ノズルから噴射される処理液の拡がりが大きく、1つの気体吐出ノズルでは、処理液とリンス液の衝突による液滴やミスト飛散の防止が困難であれば、複数の気体吐出ノズルを配置することで防止することができる。また、基板をチャック上に保持する方法も、圧力差を利用した吸着方式だけに限定されず、機械的なピンチャック方式を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る基板の処理装置の説明図である。
【図2】(A)及び(B)はそれぞれ同基板の処理装置において処理液の噴射領域に接近するリンス液の流れが気体吐出ノズルから吹き出した窒素ガスで押し退けられる状態を示す側面図及び平面図である。
【図3】同基板の処理装置において回転している半導体基板の表面に高圧ジェットノズルから処理液を噴射すると共にリンスノズルからリンス液を供給しながら気体吐出ノズルから窒素ガスを吹き付けた際の状態を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る基板の処理装置の説明図である。
【図5】同基板の処理装置において回転している半導体基板の表面に高圧ジェットノズルから処理液を噴射すると共にリンスノズルからリンス液を供給しながら気体吐出ノズルから窒素ガスを吹き付けた際の状態を示す説明図である。
【図6】(A)及び(B)はそれぞれ同基板の処理装置において処理液の噴射領域に接近するリンス液の流れが気体吐出ノズルから吹き出した窒素ガスで押し退けられる状態を示す側面図及び平面図である。
【符号の説明】
【0037】
10:基板の処理装置、11:半導体基板、12:回転駆動手段、13:高圧ジェットノズル、14:処理液噴射手段、15:リンスノズル、16:リンス液供給手段、17:気体吐出ノズル、18:ガス吹き付け手段、19:チャック、20:回転軸、21:モータ、22:孔、23:チャンバ、24:排気管、25:底板、26:第1の側壁、27:シンク、28:第2の側壁、29:吸引室、29a:吸引口、30:排気ダクト、31:飛散防止カップ、32:排出口、33:噴射ノズル支持アーム、34:アーム移動部、35:基板の処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に付着又は形成した不要物を除去する基板の処理装置において、
前記基板を保持して回転する回転駆動手段と、
前記基板の上方に移動可能に設けられ、回転している前記基板の表面に前記不要物を除去する処理液を噴射する噴射ノズルと、
回転している前記基板の表面を洗うリンス液を供給するリンスノズルと、
前記基板の上方に移動可能に設けられ、回転している前記基板の表面を流れるリンス液を押し退け、該リンス液が前記噴射ノズルから噴射された処理液に衝突するのを防止する気体を吹き付ける気体吐出ノズルとを有することを特徴とする基板の処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の基板の処理装置において、前記気体吐出ノズルから噴射する気体流量を、前記リンス液の流量に応じて変化させることを特徴とする基板の処理装置。
【請求項3】
基板の表面に付着又は形成した不要物を除去する基板の処理方法において、
前記基板を回転して該基板の表面に前記不要物を除去する処理液を噴射すると共に該基板の表面を洗うリンス液を供給しながら、該基板の表面に気体を吹き付け、該基板の表面を流れるリンス液を押し退けて該リンス液が噴射された該基板上の処理液に衝突するのを防止することを特徴とする基板の処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−269517(P2006−269517A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81966(P2005−81966)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000143455)株式会社高田工業所 (14)
【Fターム(参考)】