説明

基板の熱処理装置

【課題】 加熱処理後の基板を冷却することができ、かつ構造が簡単で安価な基板の熱処理装置を提供する。
【解決手段】 ウエハWの熱処理が終了後、一対のウエハ移載アーム20、20を退避位置のままで上方位置まで上昇させると、ウエハ移載アーム20、20はウエハWを支持した均熱リング10の下面を押し上げる。その結果、ウエハWは、熱処理炉80内において上部炉壁80aに3mm以内まで近接する位置まで上昇して、低温状態の上部炉壁80aと対向することによる熱伝達などにより急速に冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱処理炉内へ半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板を1枚ずつ搬入し光照射等により基板を加熱して熱処理する基板の熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、ランプアニール装置やCVD装置などのように、熱処理炉内へ基板、例えば半導体ウエハを1枚ずつ搬入し基板に光を照射するなどしてウエハを加熱し熱処理する枚葉式の熱処理装置が、各種の工程で広く使用されている。
【0003】
このような枚葉式の熱処理装置を使用する半導体デバイスの製造工程において、不純物の拡散を防ぐためには、半導体ウエハに対して昇温および降温を高速に行う必要がある。特に加熱速度を高速に行うために、最近では、キセノンフラッシュランプ等を用いて極めて短時間の間に高エネルギーのフラッシュ光を照射して基板を瞬時に高温に加熱するフラッシュランプアニール装置が提案されている。
【0004】
一方、加熱後の基板を高速で冷却する技術も提案されている。特許文献1には、基板とランプとの間に透明板で冷却用の水路を形成して熱源からの熱輻射を制御することが提案されている。また、特許文献2、特許文献3には、水冷機構により冷却される冷却プレートを設け、基板の加熱終了後に基板の上下に近接配置するように冷却プレートを移動させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−78139号公報
【特許文献2】特開2003−124134号公報
【特許文献3】特開2001−308023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら各特許文献に記載の装置は、いずれも基板の冷却のための冷却機構を設け、またそれらを移動させる機構を必要とするものであり、構造が複雑で高価なものであった。
【0007】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、加熱処理後の基板を冷却することができ、かつ構造が簡単で安価な基板の熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、内部に基板が収容される熱処理炉と、この熱処理炉に付設された加熱源と、前記熱処理炉内に配設され、基板を水平姿勢に支持する基板支持部と、前記基板支持部に支持された基板をその表面が前記熱処理炉の炉壁に近接するように移動させる移動手段と、を備えたことを特徴とする基板の熱処理装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の基板の熱処理装置において、前記移動手段が、前記基板を前記熱処理炉内に搬入および/または搬出する際に一時的に当該基板を支持するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の基板の熱処理装置において、前記加熱源が、前記熱処理炉の上部炉壁の外側に設けられた発光源であり、前記上部炉壁は前記発光源からの光を透過する材質からなり、前記移動手段は前記基板を前記上部炉壁に近接するように上昇させるものであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3記載の基板の熱処理装置において、前記基板支持部が、基板を内側に支持する薄板状リングと、該薄板状リングを支持するサセプタとからなることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の基板の熱処理装置において、前記移動手段が、前記薄板状リングに支持された前記基板の下方に位置して当該基板を持ち上げる動作と、前記薄板状リングの下方に位置して当該薄板状リングを持ち上げる動作とを、選択的に実行可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5記載の基板の熱処理装置において、前記基板支持部に支持された基板を前記熱処理炉の炉壁に対して3mm以内まで近接させることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6記載の基板の熱処理装置において、前記熱処理炉の下部炉壁の外側に設けられた副発光源をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至7に係る発明によれば、加熱処理後の基板を炉壁に近接させることで冷却することができ、かつ構造が簡単で安価な熱処理装置を提供できる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、基板を前記熱処理炉内に搬入および/または搬出する際に一時的に当該基板を支持する機構を用いて、基板の冷却のための移動を行うことができ、さらに構造が簡単で安価な熱処理装置を提供できる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、熱処理時には移動手段を薄板状リングの下方に待機させてその影響を受けずに熱処理を良好に行えるとともに、熱処理終了後には移動手段を基板の下方に移動させることなく直ちに上昇させることで直ちに冷却することができ、冷却開始時点を早めることができる利点があり、またあるいは、熱処理後に移動手段を基板の下方に位置させて上昇させることで、基板を薄板状リングから分離して基板のみを冷却でき、冷却速度を高めることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態の一例のフラッシュランプアニール装置の構成の1例を示す概略側断面図である。
【図2】図1に示したフラッシュランプアニール装置の熱処理炉内に配設される均熱リングおよびウエハ移載アームの構成を示す平面図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】図2に示したウエハ移載アームを水平面内で回動させるとともに上下方向へ移動させるアーム移動機構の構成の1例を示す断面図である。
【図5】図1に示したフラッシュランプアニール装置の動作を示す流れ図である。
【図6】図1に示したフラッシュランプアニール装置の熱処理炉内でウエハを支持する手段の、図1に示した実施形態とは異なる例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の好適な実施形態について図1ないし図6を参照しながら説明する。図1乃至図3は、この発明の実施形態の1例を示し、図1は、基板の熱処理装置、例えばフラッシュランプアニール装置の概略側断面図、図2は熱処理炉内に配設される均熱リングおよびウエハ移載アームの構成を示す平面図であり、図3は、図2のIII−III矢視断面図である。
【0020】
<<装置の構成>>
【0021】
図1に概略側断面図を示したフラッシュランプアニール装置(以下、単に熱処理装置1と称する)は、半導体ウエハW(以下単にウエハWと称する)の搬入および搬出を行うための開口82を前部側に有する熱処理炉80を備えている。熱処理炉80の炉壁は、光透過性材料、例えば石英ガラスで形成されている。熱処理炉80の開口82側には、熱処理炉80に連接して炉口ブロック84が設けられている。熱処理炉80の前端面と炉口ブロック84との接合面には、O−リング86が装着されており、熱処理炉80の内部の気密性が保たれている。
【0022】
また、図示していないが、炉口ブロック84の前面開口は、可動フランジによって開閉自在に閉塞されるようになっており、炉口ブロック84開放時の前面開口に対向して、ウエハWを水平姿勢に支持するアームを有し熱処理炉80内へ処理前のウエハWを搬入し熱処理炉80内から処理済みのウエハWを搬出するウエハ搬出入ロボット(図示せず)が設置されている。
【0023】
熱処理炉80の上方には上部炉壁80aに対向してキセノンフラッシュランプ98Xが、下方には下部炉壁80bに対向してハロゲンランプ98Hが、それぞれ複数本列設されている。なお、以下の説明においてそれらを総称する場合はランプ98と称する。
【0024】
ランプ98の背後ならびに熱処理炉80の両側面および後部側にはそれぞれ、内面側に鏡面研磨等が施されたリフレクタ(反射板)100が熱処理炉80を取り囲むように配設されている。なお、ランプ98は、熱処理炉80の上方側だけに配設するようにしてもよい。
【0025】
熱処理炉80の後部側には、ガス導入路102が形設されており、ガス導入路102は、窒素等の処理ガスの供給源に流路接続されている。また、図示さ
れていないが、炉口ブロック84には、ガス排気路が形成されている。炉口ブロック84には、取付部88が設けられており、取付部88に石英製のサセプタ12が固着されている。サセプタ12は略U字形をなす石英製であって、サセプタ12の上面には石英製の支持棒14が4本植設されている。支持棒14の上には均熱リング10が支持されている。均熱リング10は、高純度SiCで薄板状リング形状に形成されており、半導体ウエハWの外径寸法よりわずかに大きい内径寸法を有しており、均熱リング10の内周縁の下部には、全周にわたって細幅の環状支持面16が形成され、その環状支持面16上にウエハWを水平姿勢で支持しており、ウエハWの上面と均熱リング10の上面とは、僅かに高さ位置が異なっているが、ほとんど面一となっている。そしてこの均熱リング10は、U字形の石英製サセプタ12の上面に植設された4本の支持棒14によってサセプタ12上に水平姿勢で支持されている。
【0026】
さらに、炉口ブロック84の取付部88には、均熱リング10の中心を通る線分に対して互いに対称形をなす一対のウエハ移載アーム20、20が取り付けられている。各ウエハ移載アーム20の上面には、複数本、図示例では2本の当接支持ピン22がそれぞれ植設されている。各ウエハ移載アーム20は、図3には図示していないが、炉口ブロック84の取付部88に設置された図4に示すアーム移動機構26の取付シャフト70、72に基端部の支軸24がそれぞれ取着され、アーム移動機構26によって片持ち式に水平姿勢でそれぞれ保持されている。
【0027】
また、一対のウエハ移載アーム20、20は、それぞれ支軸24を回転中心とし均熱リング10の中心を通る線分に対して互いに対称にそれぞれ水平面内で回動させられ、図2に二点鎖線で示す移載動作位置と実線と破線で示す退避位置との間で往復移動する。また、一対のウエハ移載アーム20、20は、移載動作位置および退避位置において一体的に昇降させられ、図3(B)に示す下方位置と、図3(A)に示す中間位置と、図3(C)に示す上方位置との間で往復移動する。そして、ウエハ移載アーム20は、移載動作位置においてサセプタ12と干渉することなく上下方向へ移動することができるように、また、退避位置においてウエハWおよびサセプタ12と平面視で重ならず、かつ均熱リング10の下方に位置して上下方向へ移動することができるように、図2に示すような湾曲形状に形成されている。
【0028】
一対のウエハ移載アーム20、20を水平面内で回動させるとともに上下方向へ移動させるアーム移動機構26は、図4に断面図を示すように、上下駆動用モータ28、ボールねじ30、上下駆動用モータ28の回転軸とボールねじ30の軸部とを断続可能に連結するカップリング32、ボールねじ30の軸部を回転自在に支持するベアリング34、ボールねじ30に螺合するナット36、ナット36が固定される取付部材38、取付部材38に固着された回動用シリンダ40、回動用シリンダ40のロッドが連結される作動板42、作動板42に取着されたローラガイド44、ローラガイド44に係合する板カム46、板カム46に連結された第1回転軸48、第1回転軸48に固着された扇形駆動ギア50、第1回転軸48を回転自在に支持する第1ベアリング52、第1ベアリング52が固定される昇降板54、昇降板54に固定された第2ベアリング56、第2ベアリング56に回転自在に支持される第2回転軸58、第2回転軸58に固着され扇形駆動ギア50と噛合する扇形被動ギア60、昇降板54に取着された回り止め・位置決めローラ62、ならびに、炉口ブロックの取付部88に固定され第1回転軸48および第2回転軸58がそれぞれ摺動自在に挿通される一対のフィードスルー66、68から構成されている。各ウエハ移載アーム20は、各フィードスルー66、68の取付シャフト70、72に取着される。ベアリング34は、取付部88に固定されたハウジング74に固定され、カップリング32は、ハウジング74に固定されたボックス75内に収容され、上下駆動用モータ28は、ボックス75に固定された取付板76に固定されている。ハウジング74には、昇降板54に取着された回り止め・位置決めローラ62に係合する縦長孔78が形成されている。
【0029】
図4に示したアーム移動機構26により一対のウエハ移載アーム20、20を上下方向へ移動させるときは、上下駆動用モータ28でボールねじ30を回転させて昇降板54を昇降させる。これにより、昇降板54に連結されたフィードスルー66、68の取付シャフト70、72が上下方向に移動し、取付シャフト70、72にそれぞれ取着された一対のウエハ移載アーム20、20が一体的に上下方向へ移動する。ウエハ移載アーム20の上限位置および下限位置は、昇降板54の回り止め・位置決めローラ62とハウジング74の縦長孔78の上端面および下端面との当接によって決められる。そして、ウエハ移載アーム20が上限位置または下限位置に達した時に、図示しないセンサからの検出信号により所定時間後に上下駆動用モータ28が停止する。また、上下駆動用モータ28が停止するまでの間、上下駆動用モータ28の回転軸とボールねじ30の軸部との連結は、カップリング32のトルクリミット機構により滑りを生じて遮断されるようになっている。また、中間位置での停止は、図示しない位置検出センサによってウエハ移載アーム20の高さを検出することによりなされる。
【0030】
アーム移動機構26により一対のウエハ移載アーム20、20を互いに対称にそれぞれ水平面内で回動させるときは、シリンダ40を駆動させてロッドを伸縮させ、ロッドに連結されローラガイド44が取着された作動板42を直線的に往復移動させる。そして、ローラガイド44に係合した板カム46により、直線運動を微小角度の変位に変換して第1回転軸48を回転させ、その回転動作を、第1回転軸48に固着された扇形駆動ギア50から扇形被動ギア60に伝達して、扇形被動ギア60が固着された第2回転軸58を第1回転軸48と反対方向へ回転させる。これにより、フィードスルー66、68の取付シャフト70、72が互いに反対方向へ回転し、取付シャフト70、72にそれぞれ取着された一対のウエハ移載アーム20、20が互いに対称に水平面内で回動する。
【0031】
また、ランプ98、シリンダ40、上下駆動用モータ28や前記センサ等はいわゆるマイクロコンピュータからなる制御装置(図示せず)に接続され、熱処理装置1の動作時におけるそれらの駆動等の制御が実行される。
【0032】
<<装置の動作>>
【0033】
次に、本実施形態の熱処理装置1の動作を、制御装置の制御を示す図5の流れ図に従って説明する。
【0034】
<ウエハWの搬入>
【0035】
まず最初に、ウエハ移載アーム20、20を図2に二点鎖線で示す移載動作位置でかつ図3(B)に示す下方位置に位置させる(ステップS1)。
次に図示しないウエハ搬出入ロボットのハンド上にウエハWを支持し、炉口ブロック84を開放して熱処理炉80内へウエハWを搬入し、均熱リング10の上方に支持する(ステップS2)。
【0036】
次にウエハ移載アーム20、20を図3(A)に示す中間位置まで上昇移動させる。この上方移動過程で、図3(A)に示すように、ウエハ搬出入ロボットのハンド上から一対のウエハ移載アーム20、20の当接支持ピン22上へウエハWが移し替えられる(ステップS3)。
【0037】
ウエハ移載アーム20、20が上方位置に達して当接支持ピン22上にウエハWが支持されると、ウエハWと均熱リング10との間からウエハ搬出入ロボットのハンドを引き出し(ステップS4)、その後に、ウエハ移載アーム20を元の下方位置へ下降移動させる。この下方移動過程で、ウエハ移載アーム20の当接支持ピン22上から均熱リング10の環状支持面16上へウエハWが移し替えられて支持され、図3(B)に示す状態となる(ステップS5)。このとき均熱リング10は、サセプタ12の上面の4本の支持棒14によってサセプタ12上に水平姿勢で保持されている。
【0038】
そして、一対のウエハ移載アーム20、20は、外向きに回動して元の退避位置へ戻される(ステップS6)。このウエハ移載アーム20は、熱処理中においてウエハWと平面視で重ならない退避位置に保持されるので、ウエハ移載アーム20の影がウエハW面内に投射されることがない。またこのとき、ウエハWは、均熱リング10の環状支持面16により支持され、ウエハWの外側に均熱リング10がウエハWとほぼ同じ高さ位置に配置されるので、ウエハWの外周縁部での温度均一性が確保されることになる。
【0039】
<ウエハWの熱処理>
【0040】
ウエハWが均熱リング10の環状支持面16に支持された図3(B)に示す状態で、熱処理(加熱処理)が行われる(ステップS7)。具体的にはまず熱処理炉80の下方のハロゲンランプ98Hを点灯させて所定の温度まで予備加熱を行い、次に適当なタイミングで熱処理炉80の上方のキセノンフラッシュランプ98Xをフラッシュ発光させてウエハWを瞬時に高温(例えば約1000乃至1300℃)に加熱する。
【0041】
<ウエハWの冷却>
【0042】
ウエハWの熱処理が終了すると、続いてウエハWの冷却処理が行われる。このとき、まず一対のウエハ移載アーム20、20を退避位置のままで上方位置まで上昇させる。これにより、ウエハ移載アーム20、20は当接支持ピン22によって均熱リング10の下面を押し上げ、環状支持面16にウエハWを支持したままで図3(C)に示す状態まで均熱リング10を上昇させる(ステップS8)。このときウエハWは、熱処理炉80内において図1に二点鎖線で示す位置まで上昇し、ウエハWの表面(上面)が上部炉壁80aと平行に近接対向する。その距離は十分な冷却速度を得るために3mm以内が望ましく、さらに望ましくは1mm以内である。上部炉壁80aは、キセノンフラッシュランプ98Xによるフラッシュ発光に対して透明な光透過性材料、例えば石英ガラスで形成されており、その温度はウエハWと比べると十分低温(例えば約200乃至300℃以下)である。従って、その上部炉壁80aに近接させられたウエハWは、ウエハWからの熱の放射と、ウエハWが低温の炉壁と近接することによる熱伝達によって急速に冷却される。
【0043】
<ウエハWの搬出>
【0044】
ウエハWの冷却が終了すると、ウエハWを熱処理炉80から搬出する。このとき、まず一対のウエハ移載アーム20、20を退避位置のままで上方位置から下方位置まで降下させる。これにより、ウエハWを支持した均熱リング10は、サセプタ12の上面の4本の支持棒14によって支持され図3(B)に示す状態となる(ステップS9)。次に一対のウエハ移載アーム20、20は、図1に実線と破線で示す退避位置から内向きに回動して二点鎖線で示す移載動作位置にされる(ステップS10)。次にウエハ移載アーム20、20を移載動作位置において中間位置まで上昇移動させる。この上方移動過程で、図3(A)に示すように、ウエハWは均熱リング10上から一対のウエハ移載アーム20、20の当接支持ピン22上へ移し替えられる(ステップS11)。次に、炉口ブロック84を開放してウエハWと均熱リング10の間に図示しないウエハ搬出入ロボットのハンドを差し入れ(ステップS12)、その後に、ウエハ移載アーム20を下方位置へ下降移動させる。この下方移動過程で、ウエハ移載アーム20の当接支持ピン22上からウエハ搬出入ロボットのハンド上へウエハWが移し替えられて支持される(ステップS13)。しかる後に、ウエハ搬出入ロボットのハンドを熱処理炉80から引き出すことで、ウエハWの搬出が完了する。(ステップS14)。
【0045】
なお、複数枚のウエハWを処理する場合には、続いてステップS2にもどればよい。
【0046】
<<効果>>
ウエハWの裏面にはウエハWを支持する部材があるため、ウエハW裏面から冷却するためには冷却部材をウエハWを近づけることが難しく、十分な冷却速度が得られない。また冷却部材をウエハWに近づけるために支持する部材の形状を複雑にすると、それだけでコストがかかったり、また温度均一性に問題が生じるなどの不都合が生じる。
本実施形態の熱処理装置1ではウエハWの表面から冷却するので、ウエハWを支持する部材との干渉がなく、ぎりぎりまで冷却部材に近接させることができて冷却速度の点でも温度均一性の点でも有利である。また本実施形態では、熱処理炉80の上部炉壁80a側には、キセノンフラッシュランプ98Xが配置されており、ハロゲンランプ98Hが配置される下部炉壁80b側よりも温度が低いので、冷却速度の点で有利である。
【0047】
しかも本実施形態では、ウエハWを熱処理炉80内に搬入および/または搬出する際に一時的に当該ウエハWを支持するウエハ移載アーム20、20を、ウエハWの冷却のために上部炉壁80aに近接させる移動手段として兼用しているので、新たな機構の追加をすることなくウエハWの冷却をおこなうことができる。
【0048】
また、加熱当初からウエハWを上部炉壁80a側に近い位置に置いておくと、予備加熱時のハロゲンランプ98Hからの熱が上部炉壁80a側に逃げてしまって加熱効率が悪いがは、本実施形態の熱処理装置1では、予備加熱における熱が逃げにくく、効率がよい。また、ウエハWの熱処理炉80への搬入後、ウエハ移載アーム20、20は退避位置すなわち均熱リング10の下方位置にあるので、ウエハWの加熱終了後直ちにウエハ移載アーム20、20を上方位置まで上昇させるだけで、ウエハWを均熱リング10で支持したままで直ちに冷却処理することができ、加熱処理から冷却処理に短時間で移行することができて有利である。
【0049】
<<変形例>>
【0050】
上記実施形態では、加熱処理後の冷却時に、ウエハ移載アーム20、20を移載動作位置に回動させることなく、退避位置のままで直ちに上方位置まで上昇させて、ウエハWを均熱リング10で支持したままで上部炉壁80aに近接させて冷却を開始しており、冷却開始時点を早めることができているが、逆に、加熱処理終了後、ウエハ移載アーム20、20を移載動作位置に回動させてから上昇させることもできる。この場合には均熱リング10を持ち上げず、ウエハWのみを上部炉壁80aに近接させて冷却を開始することができ、熱容量が小さいウエハWのみを冷却するので、上記実施形態と比べて冷却速度を高めることができる。すなわち、本発明ではそれらいずれかの利点を選択して実現できる。
【0051】
なお、上記した実施形態では、互いに対称に水平面内で回動する一対のウエハ移載アーム20、20により基板移動手段を構成したが、基板移動手段は、
図示例の構成のものに限らない。アーム移動機構26についても、種々の機構が考えられる。また、上記実施形態では、均熱リング10の環状支持面16によりウエハWを支持するようにしているが、例えば図6(A)に断面図を示すように、均熱リング10aの内周縁に複数(例えば3個)の支持突起16aを形成し、その支持突起16a上にウエハWを支持するようにしてもよい。また、円環状の均熱リング10に代えて、板状の支持体を設けたり、サセプタ自体でウエハWを支持するようにしてもよい。例えば図6(B)に断面図を示すように、サセプタ12aの基板支持部分12sを円盤状に形成して、その上面に基板支持突起12bと基板位置規制部財12c(いずれも大きさは誇張して描いてある)を形成するとともに、その円盤部分に当接支持ピン22が出没する孔12dを形成したものが適用できる。また板状の支持体(上述の図6(B)の例における円盤部分)は上面が凸面のものでも凹面のものでもよく、またサセプタ12、12aの形状も適宜変更してもよい。
【0052】
また、上部炉壁80aのウエハWと対向する部分の熱容量は、例えば5倍以上の大きさにして、ウエハWを十分に冷却できるようにすることが望ましい。また、上部炉壁80aのウエハWと対向する部分を二重構造として、その間に冷却流体を流通させて積極的に冷却する構造としてもよい。冷却流体としては、水、ヘリウムガス、窒素ガスなどの気体、液体が利用できるが、熱伝導率が高くかつフラッシュ光の吸収が少ない物質が望ましい。上記実施形態では上部炉壁80aの温度は例えば約200乃至300℃以下であったが、このように上部炉壁80aを冷却する構造を採用すれば、さらにその温度を下げることができ、ウエハWをより効果的に冷却することができる。
【符号の説明】
【0053】
10、10a 均熱リング
12、12a サセプタ
14 サセプタの支持棒
16 均熱リングの環状支持面
16a 均熱リングの支持突起
20 ウエハ移載アーム
22 ウエハ移載アームの当接支持ピン
24 ウエハ移載アームの支軸
26 アーム移動機構
80 熱処理炉
80a 上部炉壁
W ウエハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に基板が収容される熱処理炉と、
この熱処理炉に付設された加熱源と、
前記熱処理炉内に配設され、基板を水平姿勢に支持する基板支持部と、
前記基板支持部に支持された基板をその表面が前記熱処理炉の炉壁に近接するように移動させる移動手段と、
を備えたことを特徴とする基板の熱処理装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記基板を前記熱処理炉内に搬入および/または搬出する際に一時的に当該基板を支持するものであることを特徴とする請求項1記載の基板の熱処理装置。
【請求項3】
前記加熱源は、前記熱処理炉の上部炉壁の外側に設けられた発光源であり、
前記上部炉壁は前記発光源からの光を透過する材質からなり、
前記移動手段は前記基板を前記上部炉壁に近接するように上昇させるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の基板の熱処理装置。
【請求項4】
前記基板支持部は、基板を内側に支持する薄板状リングと、該薄板状リングを支持するサセプタとからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板の熱処理装置。
【請求項5】
前記移動手段は、前記薄板状リングに支持された前記基板の下方に位置して当該基板を持ち上げる動作と、前記薄板状リングの下方に位置して当該薄板状リングを持ち上げる動作とを、選択的に実行可能に構成されていることを特徴とする請求項4記載の基板の熱処理装置。
【請求項6】
前記基板支持部に支持された基板を前記熱処理炉の炉壁に対して3mm以内まで近接させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板の熱処理装置。
【請求項7】
前記熱処理炉の下部炉壁の外側に設けられた副発光源をさらに有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の基板の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−195342(P2012−195342A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56374(P2011−56374)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】