説明

基板の製造方法及び基板

【課題】 均一な膜厚を有する塗膜を備えた基板を製造する。
【解決手段】 撥液部2aを介して基板1の一方の面に供給された塗布液5aを撥液部2aを介してその外側に逃し、基板20aの縁に近い領域に塗布液5aが溜まることを低減する。撥液部2aは、基板20aの一方の面における他の部分に比べて塗布液に対する撥液性が高いため、遠心力に応じて撥液部2aの内側に溜まる余分な塗布液を外側に逃がす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスピンコート法を用いて形成された均一な膜を備えた基板を形成するための基板の製造方法及びそのような製造方法を用いて形成された、例えば有機EL装置用の基板の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に塗布材を塗布することによって塗布膜を形成する方法としては、スピンコート法等の回転塗布方法が用いられることが多い。その理由としては、スピンコート法によって塗布膜を形成した場合、他の塗布方法を用いた場合より総じて生産性が高く、且つスピンコート法に用いられる塗布装置の構造は簡単であるため、塗布装置を様々な生産ラインに簡単に設置可能であることによる。
【0003】
スピンコート法を用いた膜形成方法では、基板の中心領域に滴下された塗布材が基板の回転により周辺部に広がっていく過程で塗布材の濃度が変化してしまうため、基板の外周領域に形成された塗膜の膜厚は、中心領域に形成された塗膜の膜厚より厚くなってしまう技術的な問題点があった。
【0004】
このような技術的問題点を解決するために、スピンコート法を用いて均一な膜厚を有する塗布膜を形成するための様々な技術が開示されている。例えば、円盤状基板の外周及び内周の温度差を設定することにより、均一な塗膜厚を有する塗布膜を形成できる回転塗布装置に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、基板の外周端付近に環状の溝を形成する技術(例えば、特許文献2参照。)、又は塗布材を基板に塗布する塗布工程を溶媒蒸気中で行うことによって塗膜の膜厚を均一にする技術も開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−185014号公報
【特許文献2】特開平5−325254号公報
【特許文献3】特開平2002−313566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術によれば、基板の内周部分及と外周部分とに温度差を設定しつつ、温度差を最適な温度差に維持する温度制御は困難である。また、特許文献2に開示された技術によれば、塗布工程において溝に塗布材が溜まるため、基板の内周領域及び外周領域で均一な塗膜を形成することは困難である。特許文献3に開示された技術では、有機溶媒蒸気を大量に使用するため製造工程における危険性が増すことになり、安全性に問題がある。
【0007】
よって、本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、スピンコート法を用いて均一な膜厚を有する塗膜が形成された基板の製造方法及びそのような製造方法に用いられる基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る基板の製造方法は上記課題を解決するために、基板の一方の面における外周領域に撥液部を形成する撥液部形成工程と、前記一方の面に交わる回転軸を中心にして前記基板を回転させながら前記一方の面に塗布液を供給することによって塗膜を形成する膜形成工程とを備える。
【0009】
本発明に係る基板の製造方法によれば、基板の一方の面の全体に渡って均一な膜が形成された基板を形成できる。例えば平板状の基板の一方の面に交わる回転軸を中心として、スピンコート法等の回転塗布方法を用いて基板を回転させながら塗布液を供給した場合、基板に供給された塗布液に遠心力が作用し、基板の外周領域における膜厚は、外周領域より内側の領域における膜厚より相対的に厚くなってしまう。
【0010】
そこで、本発明に係る基板の製造方法では、基板の一方の面、即ち塗布液が供給される側の面における外周領域に撥液部を形成することにより、一方の面の全体で塗布液によって形成される塗膜の膜厚を均一にできる。より具体的には、外周領域に形成された撥液部は、一方の面の他の領域に比べて塗布液に対する撥液性が高いため、一方の面の中心領域から外周領域に広がる塗布液が外周領域で溜まらないように塗布液を基板の外側に逃がす。これにより、外周領域で塗布液が溜まることを低減でき、一方の面の中心領域から外周領域に広がる塗布液の膜厚を均一にでき、これに伴い、そのまま、或いは乾燥工程を経て形成される塗膜の膜厚を一方の面全体で均一にすることが可能である。
【0011】
ここで、「外周領域」とは、一方の面の面内の領域であって、基板の中心から見て基板の縁に近い領域を意味する。したがって、撥液部が形成される外周領域は、塗布液を供給する際に基板の回転数、及び塗布液の粘度、並びに撥液部及び塗布液間の撥液性の程度に応じて個別具体的に設定される。また、基板は平板状であれば、円盤状、或いは矩形状等の如何なる形状のものであってもよい。
【0012】
尚、撥液部は、フッ素(CF)プラズマ処理等の各種撥液処理を施すことにより、表面に塗布液に対する撥液性を付与できる。また、塗布液は、通常トルエン等の有機溶剤を含んでいるため、撥液部は、このような有機溶剤に対して撥液性を有する材料を用いて形成されていてもよい。即ち、撥液部は塗布液に対して撥液性に優れた材料を個別具体的に選択することによって形成されている。
【0013】
撥液部が形成された基板及びこの基板に形成された膜を備えた基板は、例えばこのままで液晶装置或いは有機EL装置等の電気光学装置を構成する基板として用いられてもよいし、この基板をマザー基板として複数の小型基板に分離したのち、これら小型基板の夫々が各種電気光学装置の基板として用いられてもよい。
【0014】
本発明に係る基板の製造方法の一の態様では、前記膜形成工程に先立って前記一方の面に前記塗布液を供給してもよい。
【0015】
この態様によれば、基板を回転させる前に塗布液を一方の面に供給しておいても、均一な膜厚を有する膜を形成できる。
【0016】
本発明に係る基板の製造方法の他の態様では、前記撥液部形成工程において、前記一方の面のうち前記外周領域に延びる表面に撥液処理を施すことにより前記撥液部を形成してもよい。
【0017】
この態様によれば、前記一方の面のうち前記外周領域に延びる表面に、例えばフッ素(CF)プラズマ処理等の各種撥液処理を施すことにより、前記外周領域に延びる表面に塗布液に対する撥液性を付与できる。ここで、外周領域にプラズマ処理を施す際には、一方の面の外周領域を除く領域を覆うようにマスクを配置し、このマスクで外周領域を除く領域を保護しながらプラズマ処理を施すことにより、外周領域の表面にのみ撥液性を付与することが可能である。
【0018】
本発明に係る基板の製造方法の他の態様では、前記撥液部形成工程において、前記一方の面から前記一方の面上に向かって突出するように前記撥液部を形成してもよい。前記撥液部は、例えばアクリル樹脂からなり、フッ素(CF)プラズマ処理等の各種撥液処理を施すことにより、前記外周領域に延びる表面に塗布液に対する撥液性を付与できる。
【0019】
この態様によれば、撥液性を有する撥液部を基板に配置することにより、塗布液を基板の外側に逃がすことができる。ここで、撥液部の高さは、基板の厚みと比較して相対的に小さく、より具体的には例えば基板の厚みが数mm程度である場合、撥液部の高さは数十から数百nm程度と小さい。このような撥液部によれば、外周領域に塗布液が溜まることを低減しつつ、回転時に塗布液に作用する遠心力を利用してこの塗布液を基板の外側に逃がすことが可能であり、一方の面全体で塗膜の膜厚を均一にできる。
【0020】
本発明に係る基板の製造方法の他の態様では、前記撥液部の表面が前記一方の面側に露出するように前記基板に前記撥液部を埋め込んでおいてもよい。
【0021】
この態様によれば、一方の面に露出した撥液部の表面を介して塗布液を基板の外側に逃がすことが可能であり、塗布液によって形成される塗膜の膜厚を均一にできる。ここで、「埋め込んでおく」とは、例えば多層構造を有する基板の一部の層に撥液性を付与しておき、この層を一方の面側に露出させることを意味する。即ち、一方の面より突出した撥液部を形成する場合に限定されず、撥液部の表面が一方の面と面一、または一方の面より窪んだ溝状であってもよいことを意味する。このような撥液部によっても、塗布液に対する撥液性を有している限り、回転時に塗布液に作用する遠心力を利用して塗布液を基板の外側に逃がすことができ、塗膜の膜厚を均一にできる。
【0022】
本発明に係る基板の製造方法の他の態様では、前記外周領域は、前記一方の面における前記基板の縁に沿った領域であってもよい。
【0023】
この態様によれば、一方の面の面内領域のうち外周領域の内側の領域全体に均一な膜厚を有する塗膜を形成できる。
【0024】
本発明に係る基板の製造方法の他の態様では、前記塗膜は、有機EL層であってもよい。
【0025】
この態様によれば、基板の一方の面にスピンコート法等の回転塗布方法を用いて一括で有機EL層を均一に形成できる。この態様によれば、一方の面全体で均一な発光特性を有する有機EL層を形成でき、このような有機EL層を備えた高品質の有機EL装置用基板を簡便に形成できる。
【0026】
本発明に係る基板は上記課題を解決するために、平板状の基板本体と、前記基板本体の一方の面における外周領域に形成された撥液部とを備える。
【0027】
本発明に係る基板によれば、上述の本発明の基板の製造方法と同様に、均一な塗膜を基板本体の一方の面全体に形成できる。
【0028】
本発明に係る基板の他の態様では、前記一方の面の面内領域のうち少なくとも前記外周領域を除く領域に、回転塗布方法を用いて形成された塗膜を備えていてもよい。
【0029】
この態様によれば、例えばスピンコート法等の回転塗布法を用いて一方の面に塗膜を形成した場合、塗膜を形成するために一方の面に供給された塗布液が撥液部を介して基板本体の外側に逃がされる。これにより、一方の面の面内領域のうち少なくとも前記外周領域を除く領域において均一な膜厚を有するように塗膜が形成される。このような塗膜の膜厚は、撥液部を設けることなく塗布液を供給して塗膜を形成する場合に比べて格段に均一になる。したがって、本発明に係る基板は、例えばTFT等の素子が作りこまれた素子基板と、この素子基板上に均一な膜厚を有する有機EL層とを備えた装置基板に応用可能である。尚、本発明に係る基板の概念には、回転塗布法を用いて均一な膜厚を有する塗膜が形成された基板を更に分割してなる小型基板も含まれることに留意されたい。
【0030】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本発明に係る基板の製造方法及び基板の実施形態を説明する。
【0032】
<第1実施形態>
先ず、図1乃至図5を参照しながら本実施形態の基板の製造方法及び基板を説明する。図1は、本実施形態に係る基板の製造方法の製造工程を順に示す工程平面図であり、図2は、図1に対応する工程断面図である。図3は、図2(b)における基板の縁付近の領域Cを拡大して示した拡大図である。図4は、本実施形態に係る基板の製造方法の比較例である。
【0033】
図1(a)において、未処理基板1の一方の面に撥液部2aを形成し、基板20aを形成する。未処理基板1の形状は板状であり、その平面形状は矩形状であるが、円形等のその他の平面形状であってもよい。撥水部2aは、未処理基板1の一方の面の中心Oから見て未処理基板1の縁に近い領域に沿って延びる外周領域に形成されている。ここで、図2(a)に示すように、撥液部2aは、未処理基板1の一方の面側に配置されたマスク3(図1(a)において不図示)を介して未処理基板1の一方の面のうち外周領域に延びる表面を撥液処理することによって形成されている。ここで、撥液処理とは、後述する塗布液に対して一方の面の表面を部分的に撥液化させる処理である。撥液部2aは、例えばフッ素(CF)プラズマ処理等の各種撥液処理を一方の面に施すことによって形成され、塗布液に対する撥液性が付与される。尚、一方の面の外周領域にプラズマ処理を施す際には、一方の面の外周領域を除く領域を覆うようにマスク3が配置されているため、マスク3で外周領域を除く領域を保護しながらプラズマ処理を施すことができ、外周領域の表面にのみ撥液部2aを形成できる。撥液部2aは、塗布液に対して撥液性を有する材料で形成されていればよい。また、後述する塗布液は、通常トルエン等の有機溶剤を含んでいるため、撥液部2aは、このような有機溶剤に対して撥液性を有する材料を用いて形成されていてもよい。即ち、撥液部は塗布液に対して撥液性に優れた材料を個別具体的に選択することによって形成されている。
【0034】
また、撥液部は、その表面が未処理基板1の一方の面側に露出するように未処理基板1に埋め込まれていてもよい。未処理基板1に埋め込まれた撥液部2aによっても、上述の撥液処理によって形成された撥液部2aと同様に一方の面に露出した撥液部の表面を介して塗布液を基板の外側に逃がすことが可能であり、塗布液によって形成される塗膜の膜厚を均一にできる。このような撥液部は、例えば多層構造を有する未処理基板1の一部の層に撥液性を付与しておき、この層を一方の面側に露出させることによって形成可能である。即ち、撥液部の表面が未処理基板1の一方の面と面一、または一方の面より窪んだ溝状であってもよいことを意味する。このような撥液部によっても、塗布液に対する撥液性を有している限り、回転時に塗布液に作用する遠心力を利用して塗布液を基板の外側に逃がすことができ、塗膜の膜厚を均一にできる。
【0035】
次に、図1(b)及び図2(b)において、中心点Oを通る回転軸Aを中心として基板20aを回転させながら、ディスペンサ4から基板20aの一方の面によって塗布液5aを供給する。尚、基板20aは、スピンコート法で通常使用される回転ステージに配置されている。塗布液5aは、遠心力によって中心点Oから基板20aの外側に向かって広がり、基板20aの一方の面において撥液部2aの内側に形成された塗膜10aと、撥液部2aの外側に形成された塗膜10bとを形成する。
【0036】
ここで、図4に示すように、基板101の中心点O´を通る回転軸A´を中心にして撥液部2aが形成されていない基板101を回転させながら塗布液105aを供給した場合、基板101の縁に近い領域に塗布液が溜まってしまう。即ち、基板101の一方の面に供給された塗布液によって形成される塗膜110の膜厚は、遠心力によって中心点から見て外側に近い領域ほど相対的に厚くなる。より具体的には、基板101上に形成された塗膜110のうち中心点O´から見て外側に近い領域の膜厚t12は、中心点O´に近い領域の膜厚t11より通常厚くなってしまう。
【0037】
そこで、本実施形態では、図1(b)及び図2(b)に示すように、撥液部2aを介して基板1の一方の面に供給された塗布液5aを撥液部2aを介してその外側に逃し、基板20aの縁に近い領域に塗布液5aが溜まることを低減する。撥液部2aは、基板20aの一方の面における他の部分に比べて塗布液に対する撥液性が高いため、遠心力に応じて撥液部2aの内側に溜まる余分な塗布液を外側に逃がす。余分な塗布液は撥液部2aの外側の領域に形成された塗膜10bから遠心力に応じて基板20aの外側に排出される。
【0038】
より具体的には、図3に示すように、塗布液は遠心力に応じて塗膜10aから塗膜10bに順次撥液部2aの表面15を介して逃がされ、最終的に基板20aの外側に排出される。これにより、塗膜10aの膜厚は基板20aの一方の面側で均一となり、基板20aの一方の面の大部分の領域、即ち撥液部2aの内側の領域の形成された塗膜10aの膜厚が均一とされ、図1(c)及び図2(c)に示すように、塗膜10aを乾燥させることによって均一な膜厚を有する塗膜10を備えた基板20bを形成できる。より具体的には、塗膜10のうち中心点Oに近い領域における膜厚t1と、外側に近い領域の膜厚t2を均一にできる。
【0039】
本実施形態に係る基板の製造方法は、例えば有機EL層を備えた素子基板の製造に応用可能である。特に、素子基板の表面全体で均一な膜厚を有する有機EL層を形成することによって、素子基板の表面全体で均一な発光特性を有する有機EL層を形成でき、高品質の表示性能を有する有機EL装置の製造可能である。加えて、このよう均一な有機EL層をスピンコート法等の簡便な方法を用いて形成できるため、製造コストも低減できる。
【0040】
尚、本実施形態では、基板20aを回転させながら塗布液を供給したが、基板20aを回転させる前に塗布液を基板20aの一方の面に供給しておいてもよいし、塗布液を供給しながら基板20aの回転を開始してもよい。このように塗布液を供給しても、最終的に基板20bが備える塗膜10の膜厚を基板20bの表面全体で均一にすることが可能である。
【0041】
次に、図5を参照しながら本実施形態に係る基板の製造方法を用いて製造された基板の変形例を説明する。
【0042】
図5において、未処理基板1、撥液部2a及び塗膜10を備えた基板2bは、基板20bをマザー基板として基板20bを複数の小型基板21に分離したのち、これら小型基板21の夫々が各種電気光学装置の基板として用いられる。したがって、本実施形態に係る基板の製造方法によって製造された基板は、そのままで液晶装置或いは有機EL装置等の電気光学装置を構成する基板として用いられてもよいし、小型基板に分離されて用いられてよい。
【0043】
<第2実施形態>
次に、図6を参照しながら本実施形態に係る基板の製造方法を説明する。図6は、本実施形態に係る基板の製造方法の工程断面図である。尚、以下の各実施形態では、第1実施形態と共通する部分について共通の参照符号を付して説明し、詳細な説明を省略する。
【0044】
図6(a)において、未処理基板1の外周領域に未処理基板1の一方の面から図中上側に向かって突出するように突出部2bを形成する。該突出部2bは例えばアクリル樹脂を成膜した後、フォトリソグラフィ法等でパターニングすることで形成される。次に、突出部2bの表面に対して、フッ素(CF)プラズマ処理等の各種撥液処理を施すことにより、塗布液に対する撥液性を付与する。続いて撥液性を有する突出部2bを備えた基板30aを中心点Oを通る回転軸Aを中心として回転させながらディスペンサ4から塗布液5aを供給する。
【0045】
突出部2bの高さは、未処理基板1の厚みと比較して相対的に小さい。より具体的には例えば未処理基板1の厚みが数mm程度である場合、突出部2bの高さは数十から数百nm程度と小さい。加えて、突出部2bの断面形状は、図中上側に先細りしたテーパ形状を有しているため、塗布膜10aから突出部2bの傾斜した側面及び上面を介してその外側の塗膜10bに順次送られ、遠心力を利用して最終的に基板30aの外側に余分な塗布液5bとして排出される。これにより、図6(b)に示すように、突出部2bの内側の領域に均一な膜厚を有する塗膜10を形成でき、均一な塗膜10を備えた基板30bを形成することが可能である。
【0046】
したがって、本実施形態に係る基板の製造方法によれば、第1実施形態と同様に基板30aの外周領域に塗布液が溜まることを低減しつつ、基板30aの回転時に塗布液に作用する遠心力を利用してこの塗布液を基板30aの外側に逃がし、塗膜の膜厚を均一にできる。
【0047】
<第3実施形態>
次に、図7を参照しながら本実施形態に係る基板の製造方法を説明する。図7は、本実施形態に係る基板の製造方法の工程断面図である。
【0048】
図7(a)において、未処理基板1の一方の面における縁に沿った外周領域に撥液部2cを形成し、撥液部2cが形成された基板40aを回転軸aを中心として回転させながら塗布液5aを供給する。撥液部2cが形成された外周領域は、未処理基板1の縁に沿った領域であるため、撥液部2cの内側に形成された塗膜10aから遠心力によって外側に広がる塗布液が撥液部2cを介して基板40aの外側のそのまま排出される。したがって、図6(b)に示すように、撥液部2cの内側、即ち未処理基板1の一方の面の大部分の領域に均一な膜厚を有する塗膜10が形成された基板40bを形成できる。
【0049】
尚、撥液部2cは、第1実施形態或いは第2実施形態と同様にして形成することができる。
【0050】
したがって、本実施形態に係る基板の製造方法によれば、第1又は第2実施形態と同様に基板40aの外周領域に塗布液が溜まることを低減しつつ、基板40aの回転時に塗布液に作用する遠心力を利用してこの塗布液を基板40aの外側に逃がし、塗膜の膜厚を均一にできる。
【0051】
以上により、上述の各実施形態により均一な塗膜が形成された基板を形成できる。尚、本発明に係る基板は、撥液部及び未処理基板を備えた基板、並びに撥液部が形成された未処理基板上にスピンコート法等の回転塗布法を用いて均一な膜厚を有する塗膜が形成された基板の両方の概念を含むものであることに留意されたい。
【0052】
<電子機器>
次に、図8及び図9を参照しながら上述した基板を応用した各種電子機器について説明する。
【0053】
(A:モバイル型コンピュータ)
図8を参照しながらモバイル型のコンピュータに上述した有機EL装置を適用した例について説明する。図8は、コンピュータ1200の構成を示す斜視図である。
【0054】
図8において、コンピュータ1200は、キーボード1202を備えた本体部1204と、図示しない有機EL装置を用いて構成された表示部1005を有する表示ユニット1206とを備えている。表示部1005は、上述の基板を素子基板として備えているため、画像表示領域における有機EL層の膜厚が均一である。したがって、表示部1005における輝度勾配が低減されており、画質が高められている。また、有機EL素子を含んだ表示部1005は、素子基板上全体に均一な膜厚を有する有機EL層を備えているため、画質を低下させることなく表示ユニット1206を大型化できる。また、上述の基板の製造方法を応用して赤、緑、青の光の三原色の光を発光する有機EL層を夫々備えた基板を複数枚備えることにより、表示部1005はフルカラー表示で画像表示を行うことができる。
【0055】
(B:携帯型電話機)
更に、上述した基板を携帯型電話機に適用した例について、図9を参照して説明する。図9は、携帯型電話機1300の構成を示す斜視図である。
【0056】
図9において、携帯型電話機1300は、複数の操作ボタン1302と共に、本発明の一実施形態である有機EL装置用の基板を表示部1305として備えている。
【0057】
表示部1305は、上述の表示部1005と同様に高品質の画像を表示することができる。また、表示部1305が備える複数の有機EL装置用の基板の夫々が赤、緑、青の光の三原色の光を発光することによって、表示部1305はフルカラー表示で画像表示を行うこともできる。
【0058】
尚、本発明に係る基板を応用した電子機器は高品位の表示が可能な、投射型表示装置、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明に係る基板を応用した電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置等も実現することが可能である。
【0059】
尚、本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う基板の製造方法及びもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板の製造方法の工程平面図である。
【図2】図1に対応する工程断面図である。
【図3】図2(b)における基板の縁付近を拡大して示した拡大図である。
【図4】第1実施形態に係る基板の製造方法の比較例である。
【図5】第1実施形態に係る基板の製造方法によって形成された基板を分離した状態を模式的に示した模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る基板の製造方法の工程断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る基板の製造方法の工程断面図である。
【図8】本発明に係る基板を応用した電子機器の一例を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る基板を応用した電子機器の他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1・・・未処理基板、2a、2b、2c・・・撥液部、20a、20b、30a、30b、40a、40b・・・基板、10・・・塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面における外周領域に撥液部を形成する撥液部形成工程と、
前記一方の面に交わる回転軸を中心にして前記基板を回転させながら前記一方の面に塗布液を供給することによって塗膜を形成する膜形成工程とを備えたこと
を特徴とする基板の製造方法。
【請求項2】
前記膜形成工程に先立って前記一方の面に前記塗布液を供給すること
を特徴とする請求項1に記載の基板の製造方法。
【請求項3】
前記撥液部形成工程において、前記一方の面のうち前記外周領域に延びる表面に撥液処理を施すことにより前記撥液部を形成すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
前記撥液部形成工程において、前記一方の面から前記一方の面上に向かって突出するように前記撥液部を形成すること
を特徴とする請求項1又2に記載の基板の製造方法。
【請求項5】
前記撥液部の表面が前記一方の面側に露出するように前記基板に前記撥液部を埋め込んでおくこと
を特徴とする請求項1又は2に記載の基板の製造方法。
【請求項6】
前記外周領域は、前記一方の面における前記基板の縁に沿った領域であること
を特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の基板の製造方法。
【請求項7】
前記塗膜は、有機EL層であること
を特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の基板の製造方法。
【請求項8】
平板状の基板本体と、
前記基板本体の一方の面における外周領域に形成された撥液部とを備えたこと
を特徴とする基板。
【請求項9】
前記一方の面の面内領域のうち少なくとも前記外周領域を除く領域に、回転塗布方法を用いて形成された塗膜を備えたこと
を特徴とする請求項8に記載の基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−61761(P2007−61761A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253128(P2005−253128)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】