説明

基板上への酸窒化物薄膜の成長方法

【課題】水蒸気熱酸化を利用して酸窒化膜へ高濃度の窒素を加え、基板上へ酸窒化物薄膜を成長させる方法を提供する。
【解決手段】基板上に酸窒化膜を成長する方法は、処理チャンバ内に基板を設ける工程100、処理チャンバを加熱する工程102、並びに、水蒸気を含む湿式処理ガス及び亜酸化窒素(NO)を含む窒化ガスを処理チャンバへ流し込む工程104を有する。湿式処理ガス及び窒化ガスは、基板上に酸窒化膜が成長するように、基板と反応する処理雰囲気を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体基板処理に関する。より詳細には、本発明は、水蒸気熱酸化を利用して酸窒化膜へ高濃度の窒素を加える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板表面上の集積回路の作製においては、酸窒化膜は、たとえばシリコンのような結晶性基板表面にわたって成長すなわち堆積させることがよくある。酸窒化膜は、高電子移動度及び低電子トラップ密度を含む優れた電気特性を有する。これらの特性は、半導体用途での素子動作にとって望ましい。酸化物薄膜中に窒素を加えることの利点は以下である。p型ドープされた多結晶シリコンゲートを介したボロンの侵入が減少すること、界面の平坦性が改善されること、酸窒化膜の誘電率が上昇すること、及び金属酸化物又は金属ゲート材料が下地の基板へ拡散するのを防止するバリヤ特性が改善されることである。半導体用途向けに酸窒化膜を形成する複数の方法が開発されてきた。基板上へのこれらの膜の形成に続き、酸窒化膜は大抵の場合、その材料特性及び電気特性が改善されるように、さらにアニーリングされる。
【0003】
処理中に窒素を加える能力は、素子の特性にとって極めて重要である。一例では、酸化物薄膜が、所定の処理条件において窒素含有ガスの存在下でアニーリングされることで、窒素が気体から酸化膜へ加えられることによって酸窒化膜が形成されて良い。窒素含有ガスとはたとえば、亜酸化窒素(N2O)、アンモニア(NH3)、一酸化窒素(NO)、及び熱プラズマ窒素(N2)である。しかし現状の窒素源を用いることに関連した1つの深刻な問題は、窒素を加えるのにばらつきが生じること、及び基板への窒素の侵入を防止することが困難なことである。これらの困難のいずれも作製されるMOSFETの性能を劣化させる。他の問題には、酸窒化膜の厚さが受容できない程度にばらつくこと、及び酸窒化膜中での窒素濃度がばらつくことが含まれる。換言すると、現状の処理技術では、バッチ間でのばらつきが生じてしまう。このバッチ間でのばらつきは、酸窒化膜全体の品質、及び酸窒化膜で構築される半導体素子の品質に影響を及ぼす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって酸化膜の成長速度を制御しながら、制御された深さで高い窒素濃度を供する新たな方法が必要である。また必要なことは、窒素の付加の信頼性を改善すること、並びに酸化膜内部での窒素の濃度及び位置を調整することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基板上に酸窒化膜を成長する方法を供する。一の実施例では、当該方法は、処理チャンバ内に基板を設ける工程、処理チャンバを処理温度に加熱する工程、並びに、水蒸気を含む湿式処理ガス及び一酸化窒素(NO)を含む窒化ガスを処理チャンバへ流し込む工程を有する。湿式処理ガス及び窒化ガスは、基板上に酸窒化膜が形成されるような、処理雰囲気を形成する。
【0006】
他の実施例では、当該方法は、処理チャンバ内に基板を設ける工程、処理チャンバを少なくとも850℃の処理温度に加熱する工程、水素ガスと酸素ガスとを燃焼させることによって処理チャンバ外で水蒸気を含む湿式処理ガスを生成する工程、並びに、湿式処理ガス、窒素希釈ガス、及び酸化窒素窒化ガスを処理チャンバへ流し込む工程を有する。それにより、約0.5よりも大きな窒素ピーク濃度を有するシリコン酸窒化膜が基板上に形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書に添付されてその一部を構成する図は、上で与えられた本発明の一般的な説明と共に本発明の実施例を示している。以降で与えられる詳細な説明は、本発明を説明する役割を果たす。
【0008】
本発明の実施例は、半導体基板処理に関し、より詳細には半導体基板上への酸窒化膜の成長方法に関する。当技術分野において既知であるように、半導体基板上に成長する酸化膜は、半導体の製造においては、特にMOSデバイス用のゲート誘電体として利用される。2つの重要な半導体材料はシリコンとゲルマニウムである。high-k誘電体にとって必要なことは、製造者が、窒素を酸化膜へ加えることによって、既存の酸化膜(たとえばシリコン及びゲルマニウム上の酸化膜)を増補することである。当技術分野においては、酸化膜に窒素を加えることで加えた結果形成される酸窒化膜の誘電率が上昇し、かつこれらの半導体基板材料上に、より薄いゲート誘電体が成長可能となることが知られている。本発明は、現状の両窒素源に関連した上述の問題を解決する窒素付加方法、及び窒素を酸化膜に加える方法を供する。
【0009】
図1は、処理チャンバを有するバッチ処理システム10の断面を図示している。処理チャンバ12内には複数の基板20が設けられている。バッチ処理システムが図示及び記載されているとはいえ、当該方法が、複数の基板が一度に処理される単一基板処理にも適用されうることは、当業者にとって明らかである。図2は、図1の基板20上に酸窒化膜を形成する方法の処理フローダイヤグラムを示している。
【0010】
ここで図1及び図2を参照すると、当該方法の一の実施例においては、工程100で、複数の基板20が処理チャンバ12内に設けられる。基板20は回転可能な基板ホルダ13上に設けられて良い。バッチ処理システム10内に基板20を設ける、すなわち搬入する工程は、基板20の挿入に続いて、排気ポート15を介して処理チャンバ12を排気する工程、及び真空ポート14を介して処理チャンバ12を真空引きする工程を有して良い。それに加えて、バッチ処理システム10内に基板20を設ける工程は、たとえば窒素のような不活性ガスで処理チャンバ12をパージすることで、処理チャンバ12内の有機物の汚染を希釈する、すなわち減少させる工程をも有して良い。
【0011】
続いて処理チャンバ12は、工程102で処理温度に加熱される。処理チャンバ12の加熱中、加熱速度は、数℃/分から数百℃/分であって良い。
【0012】
加熱に続いて、工程104では、湿式処理ガスが、吸入ポート16を介して処理チャンバ12に導入される。湿式ガスは水蒸気(H2O)を有する。水蒸気からの酸素が基板20に堆積することで、各基板20上に酸化膜が成長する。さらに工程104では、湿式処理ガスを流した後に続いて、あるいは該湿式処理ガスを流すのとほぼ同時に、窒化ガスが、吸入ポート16を介して処理チャンバ12に導入される。窒化ガスは一酸化窒素(NO)を有する。それにより、一酸化窒素からの窒素が酸化膜に加えられることで、図3の1枚の基板20上に図示されているように、各基板20上に酸窒化膜30が形成される。さらに図1及び図2を参照すると、上では処理チャンバ12の加熱工程、並びに湿式処理ガス及び窒化ガスを流す工程とが、ある特定の順序で記載されているものの、処理チャンバ12の加熱工程、及びガスを流す工程は、如何なる順序で行われても良い。またその順序は、酸窒化膜30の所望の電気特性に依存して良い。ここで当該方法のさらに別な実施例について説明する。
【0013】
一の実施例では、処理チャンバ12は、約600℃よりも高温である処理温度に加熱される。600℃よりも低温で酸窒化膜30に窒素を加えるのは、速度が遅すぎると思われる。従って低温での処理は費用対効果が良くないものと思われる。それに加えて、基板20の中には、600℃よりも低温で電気特性が急速に劣化するものがある。他の実施例では、処理温度は、基板20が変形すなわち軟化する温度よりも低温である。一般的には、処理温度は約1100℃よりも低温である。他の実施例では、費用対効果の良い製造及び高品質の酸窒化膜のための処理温度は約850℃から約1100℃である。
【0014】
一の実施例では、一旦処理チャンバ12が処理温度に到達すると、水蒸気を含む湿式処理ガス及び一酸化窒素を含む窒化ガスが、処理チャンバ12に導入される。よって基板20は、処理温度の水蒸気及び一酸化窒素を含む処理環境によって取り囲まれる。処理環境は、基板20と反応することで水蒸気から酸化膜を成長させ、かつ一酸化窒素からの窒素が成長した酸化膜に加えられる。よって図3の1枚の基板20上に図示されているように、複数の基板20の各々の上には酸窒化膜30が形成される。
【0015】
処理環境を生成する湿式処理ガスと窒化ガスの流れと共に、処理環境は処理圧力を有する。その処理圧力は、大気圧から10Torr未満までの範囲であって良い。一の実施例では、処理圧力は、酸窒化膜30の成長速度を制御する処理温度と共に設定される。処理圧力及びガスの流速が酸窒化膜の成長中いつでも変化してよいことは当業者には明らかである。従って“設定”という語は、処理圧力、ガスの流速、及び処理温度を一回設定する行為に限定されるわけではない。むしろ設定とは、酸窒化膜30の成長が、内部制御による品質基準、産業界の品質基準、又は顧客によって決定される品質基準のいずれかに従うように、如何なる回数の設定又は調節を意味して良い。
【0016】
本発明の一の実施例によると、湿式処理ガスを処理チャンバ12に流す前に、図1に図示されているように、処理チャンバ12の外部で、水素ガス(H2)と酸素ガス(O2)とを燃焼させることによって、湿式処理ガスが生成される。高希釈の発熱性トーチ18による湿式処理ガスの生成の一例は、図1に図示されているように、東京エレクトロン株式会社によって開発された。高希釈発熱性トーチ18は、わずかな流れの水素及び酸素を燃焼させる。よって発熱性トーチ18は、水蒸気である湿式処理ガスを、処理チャンバ12の外部で生成する。続いて図1に図示されているように、湿式処理ガスは処理チャンバ12へ流入する。
【0017】
一の実施例では、湿式処理ガスと窒化ガスとは、ほぼ同時に処理チャンバ12へ流入する。従って窒素は、酸窒化膜30の成長につれてその膜に入り込む。
【0018】
当該方法の別な実施例では、希釈ガスは、処理環境中の湿式処理ガスを希釈するのに用いられる。希釈ガス濃度と湿式処理ガス濃度との比は、酸窒化膜30の成長速度に影響を及ぼすものと思われる。従って希釈ガスは、酸窒化膜の成長速度を制御するのに用いられて良い。一の実施例では、希釈ガスは、図示されているように窒素(N2)を有する。しかしたとえばアルゴンのような他の非反応性ガスが用いられても良い。他の実施例では、希釈ガスが処理チャンバ12に流入することで、酸窒化膜を約40Å未満の厚さで成長させることが可能となる。本発明の他の実施例によると、酸窒化膜の成長速度、又は一酸化窒素の流れのタイミングを制御することによって、制御された位置で、窒素ピーク濃度34(図4A)を有する酸窒化物薄膜30の成長が可能である。一の実施例では、当該方法は、たとえば界面状態密度のように酸窒化膜の電気特性を劣化させることなく、たとえば約2原子%よりも大きな高窒素ピーク濃度を有する酸窒化膜を成長させる。
【0019】
当該方法の他の実施例では、図3に図示されているように、一旦酸窒化膜30が各基板20上で成長すると、上に酸窒化膜30を有する基板20はアニーリングされる。当技術分野においては既知であるように、基板20上の酸窒化膜30をアニーリングすることで、素子の特性、特に膜の電気特性を変えることが可能である。当該方法の一の実施例では、アニーリング中、上述した処理環境、処理圧力、及び処理温度が変更される。たとえば湿式処理ガス及び窒化ガスを処理チャンバ12に流入させた後、処理チャンバ12は、アニーリング前に、湿式処理ガス、窒化ガス、及び希釈ガスを含む処理環境を除去するために1回以上真空パージされて良い。一旦処理環境がパージされると、アニーリングガスが導入され、かつ処理チャンバ内のアニーリング温度及びアニーリング圧力が設定されて良い。その設定には、処理温度及び処理圧力からの温度及び/又は圧力の上昇又は下降が必要となるものと思われる。あるいはその代わりに、上に酸窒化膜30を有する基板20は、アニーリング用の別な処理システムに搬送されて良い。アニーリング温度及びアニーリング圧力は、処理温度及び処理圧力と同様の範囲を有して良い。一の実施例によると、アニーリングガスは、窒素、一酸化窒素、亜酸化窒素、酸素、若しくは水、又はこれらの混合物のうちのすくなくとも1つを有する。
【0020】
前述したように、図3は、基板20及び当該方法の一実施例によって成長した酸窒化膜30の断面を図示している。例として基板20が、シリコン基板40として示されているようにシリコンを有するとき、湿式処理ガスと窒化ガスが処理チャンバ12に流入することで、シリコン酸窒化膜50が形成される。図3に図示されているように、線”A”がシリコン酸窒化膜50を貫通するようにして引かれ、その線はシリコン基板40にまで延びている。当業者にとって明らかなように、シリコン酸窒化膜50の組成は、シリコン酸窒化膜50の外側表面52から、シリコン酸窒化膜50とシリコン基板40との間の界面に至るまで変化する。たとえばシリコン酸窒化膜50については、酸素、シリコン、及び窒素それぞれの含有量は、線Aに沿って、シリコン酸窒化膜50の外側表面52から、シリコン酸窒化膜50とシリコン基板40との間の界面に至るまで変化する。しかし当業者にとって明らかなように、シリコン基板40とシリコン酸窒化膜50との間の“界面”54は急峻ではなく、シリコン酸窒化膜50の酸素含有量からシリコン基板40の酸素含有量に至るまでの酸素濃度の滑らかな連続的減少によって表すことができる。
【0021】
図4Aは、当該方法の一実施例によって成長したシリコン酸窒化膜の2次イオン質量分析(SIMS)プロットを図示している。図4Aを参照すると、x軸で示されるシリコン基板40への侵入深さに応じて3つの異なる濃度プロファイルが示される。再度図3を参照すると、線Aがシリコン酸窒化膜50の外側表面52と交差する位置は、図4Aのx軸に沿って約“0.5nm”の深さである。よって線Aに沿って下方に進むこと、つまりシリコン酸窒化膜50へ深く進むことは、図4Aのx軸に沿って右側へ移動することに対応する。
【0022】
これまで述べてきたように、図4Aは3つの濃度プロファイルを示している。シリコン酸窒化膜50に加えられた窒素についての1つのプロファイルは”N”のラベルが付されている。他の2つのプロファイルは、”N”のラベルが付されたSiについてのプロファイルと、”O”のラベルが付されたOについてのプロファイルである。窒素プロファイル32は、シリコン酸窒化膜50又はシリコン基板40内部で濃度ピーク34を示す。窒素が加えられた量は、シリコン酸窒化膜50の外側表面52ではほぼゼロである。本明細書では窒素ピーク濃度34として表されている最大窒素濃度は、シリコン酸窒化膜50の外側表面52よりも深い場所に位置する。繰り返しになるが、外側表面52はほぼ0.5nmである。
【0023】
酸素プロファイルは、シリコン酸窒化膜50の深さで、毎秒の酸素カウント数が減少していることを示している。シリコンプロファイルはSIMSプロットにわたってほぼ一定のままである。SIMSプロットからシリコン酸窒化膜50とシリコン基板40との間の界面の位置を決定するには、一般的に酸素プロファイルが参照される。本明細書を参照するとき、“界面”又は“酸窒化膜-基板界面”は、毎秒の酸素カウント数が、シリコン酸窒化膜50の外側表面での酸素含有量の1/2にまで減少する深さを意味する。従って図4AのSIMSプロットについては、シリコン酸窒化膜50とシリコン基板40との間の界面54は、約2nmの深さに位置する。当該発明の一の実施例によると、窒素ピーク濃度34は、ほぼシリコン酸窒化膜-シリコン基板界面54に位置する。これまで述べてきたように、本発明の方法は、窒素プロファイル32を、形状と位置の両方について変調させることを可能にする。ここで、形状は窒素ピーク濃度及び窒素プロファイル32の幅を含み、かつ位置は酸窒化膜-シリコン基板界面54に対する位置である。
【0024】
湿式処理ガス、窒化ガス、及び希釈ガスの流速の範囲は、湿式処理ガスについては10sccm(標準状態でのcm3/分)から20slm(標準状態でのl/分)、窒化ガスについては1から5000sccmで、かつ希釈ガスについては100sccmから20slmであって良い。本発明の方法によると、以下のような流速及び温度を用いることによって、図4Aに図示された窒素、酸素、及びシリコンプロファイルを有するシリコン酸窒化膜50はシリコン基板40上に成長した。処理温度は約900℃、処理圧力は約670Torr、窒化ガス流は約1.41slmで、かつ発熱性トーチ18から処理チャンバ12へ湿式処理ガスが流れる際の酸素及び水素流速は、それぞれ約0.2slmであった。窒化ガスは15分間流された。希釈ガスは、流速が約3.19slmの窒素である。図4Aに図示されたSIMSプロットを有するシリコン酸窒化膜50は、3×1021(3E+21)原子数/cc(立方センチメートル)から4×1021(4E+21)原子数/ccの間の窒素濃度ピーク34を示す。図示されているようにこの値は、約4.6原子%の窒素に相当する。しかも窒素プロファイル32の状態は、窒素プロファイル32の下の面積によって表現されても良い。この面積は窒素照射量とも呼ばれる。従って処理された窒素照射量は4×1014原子数/cm2であった。
【0025】
図4Aに示されたSIMSプロットを有するシリコン酸窒化膜50のキャパシタンス-電圧(CV)曲線が図4Bに示されている。このシリコン酸窒化膜50は、4.4の誘電率、-1.35Vのフラットバンド電圧、42.5mVのΔVfb、及び2.3×1012(2.3E+12)/ccの界面トラップ密度すなわちDitを示す。
【0026】
図4Aに示されたSIMSプロットを有するシリコン酸窒化膜50は、本発明の方法に係る他の実施例によってさらに処理された。その処理は、シリコン酸窒化膜50のアニーリングによって行われた。まとめると、図5A及び5Bは、処理温度900℃で、中にシリコン基板40を有する処理チャンバ12に湿式処理ガス、窒化ガス、及び希釈ガスを流すことにより成長させたシリコン酸窒化膜50の濃度プロファイル及び電気特性を示している。窒化ガスは一酸化窒素である。湿式処理ガスは、発熱性トーチ18を介して0.2slmの酸素と0.2slmの水素を流すことによって、処理チャンバ外部で生成された。また希釈ガスはN2であった。窒化ガス、湿式処理ガス、及び希釈ガスを処理チャンバ12へ15分間流すことでシリコン酸窒化膜50を成長した後、シリコン酸窒化膜50がアニーリングされた。アニーリング温度は900℃であった。シリコン酸窒化膜50は、酸素を含むアニーリングガス中で30分間、その温度で保持された。図5Aは、約2.5nmの深さで約6.4原子%の窒素ピーク濃度を示している。酸窒化膜-基板界面は約3nmの深さである。よって本発明の一の実施例によると、窒素ピーク濃度34はシリコン酸窒化膜50内である。図4Aのシリコン酸窒化膜50と図5Aのアニーリングされたシリコン酸窒化膜50とを比較すると、酸素中でシリコン酸窒化膜50をアニーリングすることによって、窒素ピーク濃度34は、4.6原子%から約6.4原子%に増大した。それに加えて、窒素照射量は、4.3×1014原子数/cm2から8.2×1014原子数/cm2に増大した。
【0027】
図5Bは、図5Aについて上述した、本発明の方法によって成長した酸素アニーリングされたシリコン酸窒化膜50のCV曲線を示している。酸素を含むアニーリングガス中でのアニーリング後、誘電率は4.28に減少し、フラットバンド電圧は-1.21Vで、ΔVfbは60mVで、かつ界面トラップ密度は1.47×1012/ccである。よって本発明の方法によってシリコン酸窒化膜50を成長させることにより、シリコン基板40へ窒素がかなり侵入するので、電気的特性を劣化させることなく、窒素プロファイル32は変調され、かつ窒素が加わる量はかなり増大する。
【0028】
当該方法の一の実施例によって成長したシリコン酸窒化膜50は、図6A及び6Bに図示されているような窒素プロファイル32及び電気特性を有する。この例では、希釈ガス流は、図4A及び5Aに図示された窒素プロファイル32を有するシリコン酸窒化膜50の成長に用いられる希釈ガス流から増大した。図6Aは、窒素プロファイル32を図示している。その窒素プロファイル32は、約2.5nmの深さで約4.3原子%の窒素ピーク濃度、及び約6×1014原子数/cm2の窒素照射量を有する。酸窒化膜-基板界面は深さ約2.75nmである。図6Bは、図6Aと同一のシリコン酸窒化膜50のCV曲線を示している。このシリコン酸窒化膜50は、つまりの4.4の誘電率、-1.29Vのフラットバンド電圧、33mVのΔVfb、及び0.75×1012/ccの界面トラップ密度を示す。
【0029】
図7A、7B、及び7Cは、本発明の一の実施例によって成長した他のシリコン酸窒化膜50の濃度プロファイルを示している。詳細には、図7Aは、図4Aに示されたSIMSプロットを有する同一のシリコン酸窒化膜50のSIMSプロットである。このSIMSプロットは、スケールがわずかに拡大されているが、以下に示す流速によって供される処理環境内で成長したシリコン酸窒化膜50の窒素プロファイル32を示す。発熱性トーチ18への酸素ガス及び水素ガスの流速はそれぞれ0.2slm、処理チャンバへの一酸化窒素の流速は1.41slmで、窒素の流速は3.19slmであった。このシリコン酸窒化膜50は、4.6原子%の窒素ピーク濃度34、及び4.3×1014原子数/cm2の窒素照射量を有する。酸窒化膜-基板界面は、約2nmから約2.25nmの間の深さであった。図7Bは、窒素を含むアニーリングガス中にて、約900℃でかつ約60分間、図7Aに示されたSIMSプロットを有するシリコン酸窒化膜50をアニーリングした効果を示している。窒素ピーク濃度34は約4.6原子%のままであるが、窒素照射量は、5.6×1014原子数/cm2に増大した。よって窒素中でアニーリングすることで、手を加えずにそのまま成長させたシリコン酸窒化膜50よりも窒素照射量は増大した。さらに合計の時間が90分になるまでアニーリングを続けることで、窒素照射量は、図7Cに示されているように、6×1014原子数/cm2に増大した。一方窒素ピーク濃度34は約4.6原子%のままである。
【0030】
図8A、8B、及び8Cはそれぞれ、図7A、7B、及び7Cに図示されたSIMSプロットを有するシリコン酸窒化膜50の電気特性を図示している。よって図8Aは、図7Aに図示されたSIMSプロットを有するシリコン酸窒化膜50のCV曲線を示している。この図は、界面状態密度が2.3×1012/ccであることを示している。窒素を含むアニーリングガス中にて、約900℃でかつ約60分間アニーリングした後、界面状態密度は1.14×1012/ccまで減少した。対応するCV曲線は図8Bに図示されている。また窒素を含むアニーリングガス中にて、約900℃でかつ約90分間アニーリングした後、界面状態密度は0.6×1012/ccで、かつ誘電率は4.51であった。窒素中での90分間アニーリング後のシリコン酸窒化膜50のCV曲線は図8Cに図示されている。
【0031】
図9は、当技術分野において既知であるN2O窒化処理を参考にした処理環境中でのシリコン酸窒化膜50の成長と、本発明の方法に係る実施例によるシリコン酸窒化膜50との成長との比較である。図9は、本発明の実施例によって成長したシリコン酸窒化膜50の粗さ(%Ra/Tox)及び界面状態密度(Dit)を、それぞれ曲線902及び904で表している。さらにさらに図9は、従来技術を参考にしたN2O窒化処理のデータ組906、及び、本発明の一実施例による、酸素中でのアニーリング後に湿式処理ガスと窒化ガスを含む処理環境を用いて成長させたシリコン酸窒化膜50のデータ組908を示す。特に当該方法の実施例によって成長させたシリコン酸窒化膜50の界面状態密度は低い。たとえば本発明の一実施例によって成長させたシリコン酸窒化膜50(データ組908で与えられている)は、6原子%を超える窒素ピーク濃度34を有し、かつ参考にしたN2O環境中で成長したシリコン酸窒化膜50の界面状態密度(データ組906で与えられていて約2.8×1012/ccである)よりもはるかに低い界面状態密度(約1.5×1012/cc未満)を有する。それに加えて、図9は、本発明の一実施例によって成長したシリコン酸窒化膜50の粗さ(%Ra/Tox)の比較を示している。その粗さは原子間力顕微鏡(AFM)によって測定された。図示されているように、本発明の実施例によって成長したシリコン酸窒化膜50は一般的に、参考にしたN2O窒化ガスによって成長させたシリコン酸窒化膜よりも平坦であることを特徴とする。
【0032】
本発明は、1以上の実施例の説明によって明らかにされ、かつその実施例は相当な程度詳細に記載されているとはいえ、これらの実施例は、「特許請求の範囲」の請求項の技術的範囲を、その詳細な程度にまで減縮すなわち限定するものと解されてはならない。他の利点及び修正型は、当業者にはすぐ明らかになる。従って本発明は、特定の詳細、典型的装置及び方法、並びに図示及び記載された例に限定されない。たとえば約0.5、2、4、6、10あるいは又は14原子%よりも大きな窒素ピーク濃度を有するシリコン酸窒化膜も考えられる。一例では、シリコン酸窒化膜は、約0.5から約14原子%の間の窒素ピーク濃度を有して良い。従って大まかな発明の構想の技術的範囲から逸脱することなく実施例以外の実施形態が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例による、複数の基板を処理するように備えられたバッチ処理システムの断面を概略的に図示している。
【図2】基板上への酸窒化膜の成長方法の一実施例に係る処理フローダイヤグラムを示している。
【図3】本発明の一実施例によって成長した酸窒化膜を有する基板の断面図である。
【図4A】当該方法の一実施例によって成長したシリコン酸窒化膜の2次イオン質量分析(SIMS)プロットを図示している。
【図4B】当該方法の一実施例によって成長したシリコン酸窒化膜のキャパシタンス-電圧曲線を図示している。
【図5A】当該方法の他の実施例によって成長したシリコン酸窒化膜のSIMSプロットを図示している。
【図5B】当該方法の他の実施例によって成長したシリコン酸窒化膜のキャパシタンス-電圧曲線を図示している。
【図6A】当該方法の一の実施例によって成長したシリコン酸窒化膜のSIMSプロットを図示している。
【図6B】当該方法の一の実施例によって成長したシリコン酸窒化膜のキャパシタンス-電圧曲線を図示している。
【図7A】当該方法の一の実施例によって成長したシリコン酸窒化膜のSIMSプロットを図示している。
【図7B】図7Aのシリコン酸窒化膜を窒素雰囲気中で約60分間アニーリングした後のSIMSプロットを図示している。
【図7C】図7Aのシリコン酸窒化膜を窒素雰囲気中で約90分間アニーリングした後のSIMSプロットを図示している。
【図8A】図7AのSIMSプロットを有するシリコン酸窒化膜のキャパシタンス-電圧曲線を図示している。
【図8B】図7BのSIMSプロットを有するシリコン酸窒化膜のキャパシタンス-電圧曲線を図示している。
【図8C】図7CのSIMSプロットを有するシリコン酸窒化膜のキャパシタンス-電圧曲線を図示している。
【図9】x軸に窒素ピーク濃度(Nのピーク(%))をとり、左側のy軸には表面粗さ(Ra/Tox(%))を、及び右側のy軸には界面状態密度(Dit(×1012/cc))をとるプロットを図示している。他の方法によって成長させたシリコン酸窒化膜の比較用データの組も載せてある。
【符号の説明】
【0034】
10 バッチ処理システム
12 処理チャンバ
13 回転可能な基板ホルダ
14 真空ポート
15 排気ポート
16 吸入ポート
18 発熱性トーチ
20 基板
30 酸窒化膜
32 窒素プロファイル
34 窒素ピーク濃度
40 シリコン基板
50 シリコン酸窒化膜
52 外側表面
54 界面
902 曲線
904 曲線
906 データ組
908 データ組

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に酸窒化膜を成長する方法であって:
前記基板を処理チャンバ内に設ける設置工程;
前記処理チャンバを処理温度に加熱する加熱工程;
前記処理チャンバへ水蒸気を含む湿式処理ガス及び一酸化窒素を含む窒化ガスを流し込む流入工程;並びに
前記基板を、前記湿式処理ガス及び前記窒化ガスと、前記処理温度で反応させることで、前記基板上に酸窒化膜を成長させる、反応工程;
を有する方法。
【請求項2】
水素ガスと酸素ガスを燃焼させることで、前記処理チャンバ外部で前記湿式処理ガスを生成する生成工程をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記湿式処理ガスと前記窒化ガスはほぼ同時に流される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記湿式処理ガスを流しながら希釈ガスを前記処理チャンバに流すことで前記酸窒化膜の成長速度を制御する工程をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記湿式処理ガス、前記窒化ガス、及び前記希釈ガスが、ほぼ同時に流される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応工程後に、前記酸窒化膜を上に有する前記基板を、窒素、一酸化窒素、亜酸化窒素、酸素、若しくは水、又はこれらの混合ガスを含むアニーリングガス中でアニーリングする工程をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記処理温度が約600℃から約1100℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記処理温度が約850℃よりも高温である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記反応工程が、前記酸窒化膜を約40Å未満の厚さに成長させる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記処理チャンバがバッチ処理システムで、かつ
前記設置工程が、前記処理チャンバ内に複数の基板を設置する工程を有し、
それにより前記酸窒化膜は、前記複数の基板の各々の上に成長する、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基板がシリコンを有し、
それにより前記反応工程は、前記基板上にシリコン酸窒化膜を成長させる、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記シリコン酸窒化膜を上に有する前記基板が、約0.5から約5原子%の窒素ピーク濃度を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記のシリコン酸窒化膜を上に有する基板が、前記シリコン酸窒化膜中で窒素ピーク濃度を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記湿式処理ガスと前記窒化ガスとの比を制御することで、前記のシリコン酸窒化膜中で窒素ピーク濃度を示すシリコン酸窒化膜を成長させる工程をさらに有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
基板上にシリコン酸窒化膜を成長する方法であって:
シリコンを含む前記基板を処理チャンバ内に設ける設置工程;
前記処理チャンバを少なくとも850℃の処理温度に加熱する加熱工程;
水素ガスと酸素ガスを燃焼させることで、前記処理チャンバ外部で水蒸気を含む前記湿式処理ガスを生成する生成工程;
前記処理チャンバへ、前記湿式処理ガス、窒素を含む希釈ガス、及び一酸化窒素を含む窒化ガスを流し込むことで、前記基板と反応させて、約0.5原子%から約14原子%の間の窒素ピーク濃度を有するシリコン酸窒化膜を前記基板上に成長させる、流入工程;
を有する方法。
【請求項16】
前記処理チャンバがバッチ処理システムで、かつ
前記設置工程が、前記処理チャンバ内に複数の基板を設置する工程を有し、
それにより前記酸窒化膜は、前記複数の基板の各々の上に成長する、
請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−258614(P2008−258614A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85284(P2008−85284)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(505390680)ト−キョ−・エレクトロン・アメリカ・インコーポレーテッド (64)
【Fターム(参考)】